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スレッドオーナー: 土屋
:2026/05/23 (土) 22:39 ID:vJIfgbDU No.32760
- 父が長期の海外出張に出た週末、我が家のリビングはいつものように母の親友たちの喧騒に包まれていた。
母・土屋千春、45歳。大手出版社でバリバリ働いている。若くしてオレを産んだから、中学の頃は友達から人気があった。要は「綺麗なオバサン」。目尻の上がった大きな目、通った鼻筋に厚めの唇。今も美貌と均整の取れたスタイルを維持している。本人も意識しているのか、見た目に手を抜くことがない。耳にかけたミディアムの髪、ゆったりとしたオフホワイトのサマーニット、Vネックにのぞく鎖骨とダイヤ。彼女には常に華やかな女の匂いが漂っていた。 そして、その母の周りには似たような女たちが集まる。IT企業で働く自由奔放で派手な美人の典子さんと、経営者の妻でおっとりとした良妻賢母タイプの薫さん。3人は学生時代からの親友で、事あるごとに我が家に集まってはワインを空けている。 オレ、裕一は20歳の冴えない大学生だ。いつものように自室に籠もっていたが、猛烈に喉が渇き、足音を忍ばせてキッチンへ向かった。 リビングとキッチンを隔てる曇りガラスのドア越しに、女たちの笑い声が響いてくる。冷蔵庫を開けようとしたオレの手は、典子さんの甲高い声にピタリと止まった。
「だからね、あれは冗談抜きで私の人生で一番のバケモノだったのよ!」 だいぶ酔っているのがわかる。オレは息を殺し、ドアの隙間からリビングを覗き込んだ。 「もう、先っぽパンパンで、血管がボコボコ浮いててさ、なんだろ、生き物っていうか凶器?それが奥までズドンって入った瞬間、脳みそがショートしたみたいになっちゃって。」 ワケのわからない話かと思ったが、言葉を咀嚼すると、まさかという気がした。その時、母と薫さんが「ちょっと典子!」「声が大きすぎるってば!」と笑いながら手を叩いている。 「でもさ、ぶっちゃけ大きさって正義じゃない?」と典子さんは身を乗り出した。 「愛だのテクニックだの言うけどさ、絶対的な質量で子宮の入り口をガンガン突かれる快感って、理屈じゃないのよ。メスとしての本能を直接殴られてるみたいでさ」 やはり、オレの勘は当たったと確信する。 と同時に、急に3人の会話に興味を引きつけられた。 「まあ……否定はしないけど」と言ったのは母だ。頬を紅潮させながらワインを煽る。 「確かに、すっごいのが入ってきた時の、あの息が詰まるような圧倒される感じは、忘れられないわよね」 「でしょ!? ねえ、薫はどうなのよ。あんた昔から清純派ぶってるけど、絶対すごいのに当たったことあるでしょ。吐きなさいよ!」 「ええっ、私!?」と矛先を向けられた薫さんは顔を真っ赤にして両手で頬を覆った。普段はおとなしく、二人の息子を育てる母親である薫さんが、身をよじって恥じらっている。 「も、もう……しょうがないなぁ。私は、夫のかな。それだって、そんなに巨大とか、そういうことじゃないんだけど」 「なによ、それ。いい子過ぎて面白くない」と典子さんが冷ややかに言う。 「そんなこと言ったって、経験がないんだから仕方ないでしょ?」 「そうそう、典子、酔い過ぎだよ」。 母が薫さんをフォローした。 「なによ、千春!それなら代わりにアンタが答えなさい。歴代ナンバーワンの男、誰?」 典子さんが容赦なく母に迫る。
母は「えー」と濁そうとしたが、両脇から二人がわかりきったような顔をしている。 母は観念したらしい。 「もぉ、何度も話したでしょ?……澤田!」 その苗字が出た瞬間、典子さんも薫さんも「だよねーー!!」と、声を揃えて爆笑した。 「ごめんごめん、千春のこの話は定番だから、やっぱり言わせちゃった」 助けられたはずの薫さんも笑っている。 「ホント、毎回言わせるの、やめて」。 どうやら3人の間で、母はこの話をさせられるのはいつものことらしい。 すると典子さんが突っ込んだ。 「でも千春、口でした時はどうだったの?それはあんまり聞いてないわよ!」 典子さんの追及に、母はワイングラスの縁を指でなぞりながら、困ったような笑みを浮かべた。 「もう20年以上前だからなぁ。えー、うーん。顎が外れるかと思うぐらい口を開けたのと、がんばって根元までくわえようとしたら喉の奥に当たって、えずいたのは覚えてる」。 「うわー、いやらしい! で、味は? どんな味したのよ?」 典子さんが悪ノリする。 「バカじゃないの!味なんて覚えてないって!」母が吹き出しながら答えた。 「で? で? 入れた時はどうだったのよ!」 典子さんは止まる気配がない。 「もう、前にも話したじゃない!」 母は照れ隠しのように笑いながらも、その顔は完全に昔の記憶をたどっていた。 母が、昔の男との行為を、その男たるモノを思い起こしている。 「……だいたい、典子の言ったのと同じ感じかな。熱くて硬い肉の塊に、中の狭いところを強引にこじ開けられて、内臓を全部押し上げられるみたいな圧迫感で。奥の奥の、一番敏感なところをゴリゴリされて、足の指が勝手に丸まって……。ガクガク、痙攣、しちゃったの……」 母の口から紡がれる、あまりにも生々しい牝としての記憶。 オレは暗闇の中で、自分の股間がちぎれるほど勃起しているのを感じていた。あの、綺麗で、優しくオレを育ててくれた完璧な母が、得体の知れない『澤田』という男の巨大な肉棒に犯され、快感のあまり身体を痙攣させていた。その事実が、オレの脳髄を麻痺させるほどの嫉妬と、狂おしいほどの興奮を呼び起こしていた。
やがてお開きになり、 「もう典子ったら、調子に乗り過ぎよ」と薫さんが嗜めながら帰っていく声が聞こえた。 オレはベッドに横たわっても、まったく眠れなかった。 母の過去。オレの知らない、女としての『千春』。 もっと知りたい。澤田とは何者なのか。母はどんな顔で男に抱かれていたのか。 ふと、典子さんの顔が浮かんだ。 物心ついた頃から『親戚の陽気なおばさん』のごとく接してくれた彼女なら、オレのこの歪んだ欲望を笑い飛ばして、真実を教えてくれるのではないか。母の全てを知るであろう典子さんに、縋ってみようと思った。
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Re: 遍歴
土屋
:2026/08/16 (日) 09:06 ID:/H4q4jlc No.33085
- 一寸法師様 お言葉、嬉しいです。進めて参ります。
カッツ様 楽しんで頂けて心から喜んでおります。 現在、表現の一部がコードに引っかかっているようで、試しながら投稿しております。読みにくくなってしまい、ご迷惑をおかけいたします。
藤野が、腰の振りを大きくした。 『はぁんあ、あぁぁ、あっ、あっ、あぁっ』 「好きだよね?もう、好きでしょ?俺のこと」 『す、す、好きじゃ、ないっ!あぁん、好きじゃないっ』 「なんで?なんでだっ、くっ、こんなに気持ち、いいのに。感じてるんだろ?」 乳首を摘み上げる。 『ひやぁぁっ、んっ、感じるっ、感じてるっ』 「やっぱり。ん、じゃあ、好きなんだろぉっ」
藤野は腰を前後させながら、手を使ってクリトリスへの刺激を始めた。 『ダメダメ、それは、だめぇっ。おっ、おっ、おおぉっ、おぉぉっ』 「水野さん、これ、好きなんだね?」 『ぐっ、おぉっ、おかしくなっちゃうっ。おおぉ』 「俺のこのやり方、好きでしょ?」 『こ、これは、す、すきっ』 藤野は早くなったり遅くなったりしながら出し入れした。その間ずっと、クリトリスへの刺激は途切れなかった。 『おぉーっ、おっ、ごっ、おおぉっ、おぉぉ』
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Re: 遍歴
土屋
:2026/08/16 (日) 09:40 ID:LHsnDDSY No.33086
- お読み頂いている皆様
ご迷惑をおかけしましたが、投稿できました。すみませんでした。続けます。
藤野がキスをする。 唸る口に舌を入れて、生温い唾液を流し込んだ。 『おんぐ、ぐっ、んん』 「俺の愛だよ。飲み込んで」 『んっく、ぐん』
私は異様な行為にぞっとしながら、きいた。 「唾液って、嫌じゃなかった?」 『わからないよ。わからないけど、私、藤野くんに乗っ取られる気がした』
「水野さん、ここ、ここがいいんでしょ?」 『おぉぉん、おっ、いいっ、いいっ、そこ。そこ』 「どこ?なんていうの?ここ。ほら、何、ここ?」 『くっ、ぐっ、クリ、クリっ』 「じゃあ、この、俺が入ってるトコは?」 『いやぁ、おぉん、い、言わないぃ、んぐ』 「言わないなら、やめちゃうよ?」 『い、いい、いいもんっ』 「水野さん、俺のこと愛してるって言うか、どこがいいのか、どっちかだよ。どっちか言わなくちゃ。俺、水野さんの愛情感じられないよ」 『んんぐぅ。おぉ、ヤバい。ぐっ、ヤバいぃ』 「どっちか言って。言えって」 『いや、んぐっ、言うの?んんっ。ねえ、言うの?』 「言うんだよ、水野さん」 『いや、言いたく、な、ないっ』 「言わないなら、この気持ちいいのも終わりだよ。言って。言うんだよ」 『おおぉっ、あっ、言う、言うから。…ま、ま、んぐっ、まんこ、まんごぉっ』 「誰の?」 『わ、わたしの、まぁっ、まんこがいいのっ。あぁ、言っちゃった。ヤバいっ、どうしよ、藤野くん』
言わされた。それが千春ちゃんを更に高めた。
「どうしたの?水野さん?」 『イッ、わたし、イッちゃい、そう。おおん、おっ、ヤバい、ヤバい、イッ、イッ』 「イクの?水野さん!いいよ、一緒に、イこうっ。俺も、もう、イクよ。水野さん、出してあげるからねっ。俺の全部、あげるからねっ」 『ヤーバっ、ヤバいいぃ』 「また、俺の、俺の精子、欲しいでしょ?言って、水野さん」 『ふぅっ、藤野くんのぉ。おっ、ぐおっ、せっ、せっ、せー、しっ。藤野くんの精子、くださいっ』 「どこにっ?」 『まんこっ、私のまんこにぃ』 「全部言えって」 『わた、わだしのまんこに、ふじ、のくんのせーし、だしてぇっ。あー、ヤバヤバヤバ、イク、イグっ、イッグゥあぁーおぁー』 「だっ、出すよっ、水野さんっ、がっ、ぐぅっ、で、出るっっ、あごぁ」 藤野の咆哮とともに、熱いものが千春ちゃんの奥深くにほとばしった。 『おっ、おっ、おぉ、おぉ、ん』 千春ちゃんは白目を剥いていた。何もわからなかった。ただ、身体が激しく痙攣している。それだけだった。
「その後、身体は大丈夫だった?」 『うん、…生理きた』 「それにしても、なぜまた出させたの?」 『…どうなるんだろうって。このままどこにいっちゃうんだろうって、そう思ったら、そうされたくなっちゃった』 吹き出すのをこらえるので大変だったわ。この子、自分が何言ってるかわかってないんだって。過去も未来も二度とない今も、試しに全部賭けてみたってことじゃない。愚かよ、愚かで、傲慢よ。
行為の後、千春ちゃんは藤野の腕枕で、ぼんやりと白い天井を見つめていた。まだ身体は汗ばんでいた。 藤野は左手で千春ちゃんの入り口をまさぐりながら、「俺の出したヤツ、水野さんの中でぐちゃぐちゃだ」と満足そうに笑みを浮かべた。 「一緒にイケたね。中に出すと、確かめ合った感じがするでしょ?じっくり愛し合えて、水野さんもうれしい?」 千春ちゃんは、無言を守った。
翌朝、千春ちゃんが目を覚ますと、キッチンから香ばしい匂いが漂ってきた。 リビングへ行くと、藤野が朝食を用意していた。 「あ、おはよう。ごめん、勝手に冷蔵庫開けて支度しちゃった」。 『…藤野くん。…どうして』 「水野さん疲れてるだろうから、元気にさせようと思って」 手つきは慣れていた。 ただ、キッチンには、食材の端切れや調味料が散っていた。 二人で食卓に着き朝食を食べ、何気ない会話を交わした。まるで、恋人かのように。 『……そろそろ行かなきゃ。遅刻しちゃう』 千春ちゃんが声をかける。 きのうと同じように二人で家を出て、別れる。その時、藤野が言った。 「ねえ、……今夜も、いいかな?」 千春ちゃんは答えられなかった。 藤野はそれを肯定と受け取り、彼女の唇に短く軽くキスをした。
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Re: 遍歴
カッツ
:2026/08/18 (火) 22:19 ID:tWqoIdSY No.33097
- 執筆、いろいろと制約あって大変そうですね。
こちらはただ待つだけで申し訳ない、いえ ありがとう ですね。
俺も藤野みたいになりたいよ、なれないけどね・・・
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Re: 遍歴
土屋
:2026/08/19 (水) 00:53 ID:hMYiKxsw No.33098
- カッツ様 お言葉を励みに続けて参ります。ありがとうございます。
ここまでが、社会人1年目の年末、赤坂で話した話。 話してみるものね、20年以上経って私も発見があった。 藤野とのこと、要は千春ちゃんにとっての恋バナみたいなものだったんだわ。もちろん、藤野に恋なんかしていなかったけど、自分がどれだけ身を焦がしているか、それを語りたかったのよ。私が根掘り葉掘りきいたこともあるけれど、下着の色まで明かすぐらいよく話したんだから。悲劇のヒロインじゃ陳腐過ぎるけど、翻弄されて変わってしまうこと自体にドラマを感じていたんじゃないかしら。
千春ちゃんとは、それからしばらく顔を合わせなかった。お互いに忙しくて。 ただ、社会人2年目になった春頃から、プロジェクト内で千春ちゃんを心配する声が聞かれるようになった。どうやら些細なミスがあったみたいでね。「水野が疲れている」とか「水野に無理させ過ぎ」とか、管理職を中心とした男たちが彼女を気遣っていた。私は内心、セックス疲れでしょって思ったけどね。 ところが、プロジェクト全体の集まりがあって久しぶりに見た千春ちゃんは、変わっていた。目の下にクマをつくって、面やつれしていた。本人は変わらぬ振る舞いを心がけていたのだろうけど、疲れているという評価はその通りに思えた。 みんなは彼女を働かせ過ぎだと思っているみたいだけど、違う。藤野と何かあるんだって思った。
「千春ちゃん」 『芽衣ちゃん、…ひさしぶり』 「今週、飲み行かない?」 『あ、うん。そうだね。うん、行きたい』 彼女はあまり乗り気でなさそうだったけど、行くことになった。
前と同じ赤坂の店。 「千春ちゃんと二人なんて、あれ以来ね、彼は?まだいるの?」 『…うん、いる』 「そろそろちゃんと付き合い始めた?」 『やめてよぉ、本当に最低なんだから』 恋人になっていないことは表情でわかった。嫌悪しながらともにいる、本当に理解に苦しむ。 しばらくはプロジェクトの話をした。小さなミスがあったにしても、彼女の仕事がプロジェクトの柱として機能していることが話からわかった。当然、私は教わることばかりだった。必要なことだからよかったけれど、でも、自らの仕事を自信満々に語る姿に私は憧れた。それが、一番口惜しかった。 だから、藤野の話は蜜だった。その話に持ち込めば、一瞬で、彼女をどん底の女にできるのだから。
「千春ちゃん、ちょっと、疲れていそうだけど大丈夫?」 『うん、ありがとう。そんなわけで最近忙しくて』 「藤野は、いたわってくれてる?」 『どうだろ、正直、いたわられたくもないけど。まぁ、優しい時もあるかな』 「ベッドは相変わらず激しいの?」 『もぉ、芽衣ちゃん、やめて』 「きっと、色んな要求に答えてるんでしょ?」 『…ええ?…うん』 「シない日、ある?」 『え、そうだね、あんまり、…ないかも』 「千春ちゃん、大変ね。ただでさえ仕事が忙しいのに。疲れるでしょ?」 『うん、ちょっと疲れているかも。でも大丈夫』 千春ちゃんは笑った。 まるで、それで話を終えたいみたいに。 「千春ちゃん、言われたくないだろうけど、実はね、みんな心配しているの。会社のオヤジたちなんて千春ちゃんが大事だから、水野を働かせ過ぎなんじゃないかって言っている」 『そう、だったの。会社の人に疲れがバレるようじゃダメよね……。もっとちゃんとメイクしなきゃ』 「茶化さないで。確かによく働いているんだろうけど、千春ちゃんはそれで参るタイプじゃないでしょう?何か、あるの?」 『…ごめんね。うん』 「藤野じゃなくて、ご家族に何かあった?」 『違う違う、そうじゃないの』 ここで、私は引いて待つことにした。
『…芽衣ちゃん、ごめん。…藤野くんに、毎月お金を渡していたら、お金がなくなっちゃって。貯金も取り崩してたんだけど、もう本当になくなっちゃったの。でも、彼には就活とかお金が必要だから……だから、それで、私、仕事の後に、夜も働いているの』 私、言葉を失ったわ。夜も働いている? 出版社の激務の後に? 「…何やってるのよ。どんな仕事?」 千春ちゃん、弁解するように早口になった。 『変な仕事じゃないの。藤野くんが紹介してくれて。経営者とか、富裕層の懇親会に参加して、一緒に飲むだけ。触られるとかはないし、その場で手渡しでお金をもらえるから、会社にもバレないの』 目眩がしたわ。要は、ギャラ飲みよ。そこまでバカだったなんて。女として消費されるって意味では身体を売る一歩手前。それを紹介したのが、自分のヒモだって言っているんだから、どういう能天気よ。
「ねぇ、千春ちゃん、わかってるの?会社にバレなければいいって話じゃないでしょ。いくらもらってるかなんて聞かないけど、そういうの、汚い金っていうんでしょ。すべて失うよ?」 『わかってる。わかってるの。とにかくお金がなくて』 「わかってないわ!」 私は柄にもなく大きな声を出した。 「千春ちゃん、藤野が最低だって理解してるのよね?」 『理解してる』 「底辺の男の養分になって、終わるつもり?お金がなくなって、次に仕事をなくしたら、どう?想像するの。藤野しか残らないじゃない。全て失った千春ちゃんを、藤野は求める?考えるまでもないって思わない?」 『だからって、私から見切りをつけるなんて。信じられる相手がいれば、藤野くんもまだ変われるかもしれないじゃない』 「ねぇ、そんなに藤野のペニスが欲しい?」 『え?なに?なによ、芽衣ちゃん』 「客観的には、そういう風にしか見えない。藤野のペニスを入れて欲しいから、お金も仕事も未来も渡しているって」 『そんな、酷いよ、芽衣ちゃん。そんなわけ、ないじゃない』 千春ちゃん、震えていたわ。怒りではなかったわね、あれは、失望かしら。私なのか、自分なのか。 「いろんな感情があるのはわかってあげる。だけど、合理的なのは、千春ちゃんにとって一番大事なのは、藤野に入れてもらってワケがわからなくなる快感だってことよ」 『なんで、そんなこと言うの?』 「理由なんて。セックスなしでも藤野といられるのか、それだけはっきりさせなさい」 いま思えば最低だったわ。千春ちゃんをもっと貶めるつもりだったのに。だけどあのままじゃ、私の世界まで、底辺の住人に汚される気がしたのよね。
千春ちゃんは、それっきり黙った。怒るか泣くかで出ていくと思ったけど、考えていた。
『…芽衣ちゃんの言うとおりだ。私、藤野くんの思い通りにぐちゃぐちゃになるのが、気持ちよかっただけだ。藤野くんがシてくれないなら、絶対に一緒にいないよ』 「逃げられそう?また抱かれたくなっちゃうなら、ウチに来たっていいの。どうする?」 『うん、ありがとう。でも、がんばってみる。別れ方はわかっているから、がんばってみる』
千春ちゃんをすぐに信じられたわけではないけれど、でも、目つきからは確かな意志が感じられた。
それで、次に千春ちゃんに会ったのは、ひと月かふた月後。 彼女、本当に藤野を追い出していた。
「え?」 オレは意外な展開に驚いた。 「それじゃ、藤野のことは解決したってことですか?」 「そうよ。解決。でもね、問題は結果じゃなかった。どうやって別れたかにあった。そのプロセスこそが、千春ちゃんの本当の墓場だったのよ」
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Re: 遍歴
スナフキン
:2026/08/21 (金) 13:20 ID:3ZQX3F52 No.33106
- ゾクゾクします。。。
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Re: 遍歴
カッツ
:2026/08/21 (金) 23:17 ID:cyGpnSgc No.33107
- 連日の投稿ありがたしです。
もっとひどいことになるのかなぁ??? 期待してます。
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Re: 遍歴
土屋
:2026/08/22 (土) 00:32 ID:wUnHta3Y No.33108
- スナフキン様 お言葉うれしいです。ありがとうございます。
カッツ様 こちらこそ毎回のお言葉、本当にありがとうございます。
秀島は、ゆっくりとカップを置いた。次に何を語るのか、オレは彼女の顔から目が離せない。
「もう一度だけ聞いておくわ。君は、千春ちゃんの最悪の過去を知りたい?もしも彼女が罪を犯していたとしても、それでも知りたい?」
オレの答えは決まっていた。だが、即答しては軽く見られると思い考えた。ここまでの話で母の人生の闇をのぞいてきたが、オレにとっては欲望を刺激される話ばかりだった。そして、ますます母親を愛おしく思えた。罪を犯したか。例えば藤野を殺したとか。それはあるわけがない。母は今も同じ会社で働いている。 考えるフリはこれぐらいで十分だった。
「大丈夫です。聞かせてください」と言った。
「そう。…『別れるためにがんばってみる』と宣言して2か月ぐらいしてからだった。千春ちゃんが劇的に変わったのよ」 秀島が再び語り始めた。
社内で見かける彼女の顔には力があふれていた。それまでの彼女になかった、ギラギラした印象を受けた。過労を心配していたオヤジたちも、最近の水野はすごいってウワサしてね、辣腕を振るうようになったなんて評価した人もいたわ。居酒屋ではあんなに取り乱していたのにね。 ある日、廊下で彼女に呼び止められた。 『芽衣ちゃん!』って、駆け寄ってきた時の顔、晴れやかだった。それで、声をひそめて言った。
『あのね、……藤野くん、追い出せた。もう連絡もとっていないの。部屋の鍵も返してもらったし、彼、本当に消えたの』
それで声を弾ませた。
『本当に、芽衣ちゃんのおかげよ。あの時、芽衣ちゃんが厳しく言ってくれなかったら、私、ずっとあのままだった。ありがとう。本当に、本当にありがとう!』
何度も何度も頭を下げる千春ちゃんに、「よかったじゃない」と口では祝福したけど、心の中はひどく白けていた。せっかく特等席で彼女の転落を眺めていられたのに、それも終わりかってね。
でもね、彼女を見ながら気づいたの。笑顔が、どこか前と違うって。 上手に笑っているのよ。口角も上がっているし、声も明るい。でも……彼女が本来持っていた、底抜けの明るさや、自分を信じて疑わない無邪気な光が感じられなかった。まるで、感情のスイッチを無理やりオンにして、必死に普通の水野千春を演じているような……そんな笑顔だったわ。 これは何かあるって、得体の知れない期待感が膨らんだ。
「千春ちゃん、お祝いさせて。今夜、いつもの居酒屋に行こうよ。もちろんご馳走するわ」 親友の顔をつくって千春ちゃんを誘ったの。彼女は一瞬考えて、OKした。
赤坂にある薄暗い居酒屋の個室。 私は必要以上に明るく振る舞って、彼女の社内での活躍のウワサを振った。 「聞いたわよ、また企画通したって。プロジェクトも抱えながら、千春ちゃんが本当は2人いるんじゃないかって、みんな言ってるわ」 千春ちゃんは謙遜しながら、『これからもっと仕事に集中したい。やりたい企画がたくさんあるの』と、前向きな展望を語った。 「うんうん、その意気よ!」と、私は本音を隠して盛り上げながら、タイミングを見計らっていた。
グラスの氷が溶けて、グラスを鳴らす音だけが響いた。
「……でも、本当に藤野が消えてよかった。私、千春ちゃんなら絶対にできるって信じていたわ」 彼女の目をじっと見つめた。真実への扉はまだ開かない。 「……で? いったい、どうやってあの底辺の寄生虫を追い出したの?」 千春ちゃんがビクッと肩を揺らして、グラスを持ったまま固まった。
『……えっと、それは……芽衣ちゃんが助けてくれたからよ。芽衣ちゃんが背中を押してくれたから、芽衣ちゃんのおかげで、私、決心できたの』
同じような言葉を繰り返す千春ちゃんは、壊れたロボットみたいだった。私の名前と礼しか言わない姿に、私は確信した。この女、何かとんでもない泥をかぶったんだって。 消えかけていたドス黒い炎がまた立った。心の内はワクワクして仕方なかった。美しく完璧な水野千春を、もう一度引き摺り下ろしたい。彼女の抱える致命的な汚点を暴き出し、踏みつけてやりたいって。
「本当にすごいわ、千春ちゃん。誰にでもできることじゃないもの」 私は彼女の手を握り、称賛の言葉を浴びせながら、逃げ道を塞いでいった。 「でも、どう言いくるめたの? あんなに執着していた男が、素直に引き下がるはずないじゃない。もしかして、手切れ金でも渡したの? 」 『…違うよ。だって、…そんなお金、もうなかったもの。だから…。ううん、わかってもらった。出て行ってくれたの』 「そんな風にできるなら、苦労はなかったでしょ?また戻ってくるんじゃない?」 千春ちゃんの視線が激しく揺らいだ。
『それは……大丈夫。二度と来ないように約束させたから……。もう、大丈夫なの』
「どうやって!? 約束なんて、守らないでしょ?どうやってあの男を納得させたのよ!これじゃ、私まで不安だわ」 私は心配と自身の不安を装って、千春ちゃんの良心に訴えた。 「ねえ、千春ちゃん。本当に大丈夫なの?中途半端なやり方で、またあの男が戻ってきたら、それこそ大変でしょ。ちゃんと納得させる方法があったんだよね?納得させたんだよね?私だって、心配だったのよ」 それが引き金だった。 彼女は身を硬くして、やがてその大きな瞳から、ポロポロと大粒の涙をこぼし始めた。
『……っ、……うぅ……っ』
扉が開いた気がしたわ。もうひと押しするつもりで、背中をさすった。
「ご、ごめん! 嫌なこと思い出させた?無理しなくていいから……!いいのよ、言いたくないことは言わなくて」
言葉とは裏腹にね、私の耳は千春ちゃんの次の言葉を逃すまいと全神経を集中させていた。 彼女、両手で顔を覆い、嗚咽を漏らしながら絞り出すように言ったわ。
『……違うの、芽衣ちゃん……。私、本当に彼を追い出したの……。だって…藤野くんと別れるためにね……藤野くんに消えてもらうために、私、一度死んだのよ……っ』
死んだ。 この女は何を言っているんだって思ったわ。さすがに想定外だった。状況は差し迫っている。でも、焦れば心が閉じてしまう。私は落ち着くまで待つことにした。 泣き止んだ千春ちゃんは、ハンカチで涙を拭うと、どこか吹っ切れたような表情を見せた。
『……芽衣ちゃんにだけは、話すわ。私の、恩人だから』
そこまで言うと、秀島はオレの顔をじっと見据えた。心中を確かめるように。
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Re: 遍歴
カッツ
:2026/08/22 (土) 23:01 ID:VLbAUOZY No.33113
- そんな内容なんだろう、ワクワクします。
連投ありがたく、つづきが待ち遠しい。
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Re: 遍歴
土屋
:2026/08/23 (日) 01:08 ID:XBsTOTNU No.33114
- カッツ様 続きが待ち遠しいとは、本当にうれしいです。ありがとうございます。
関係の終わりを望んだ千春ちゃんに、藤野は一つの「条件」を出した。 「お前に捨てられたら、俺は生きていけない。どうしても別れたいなら、手切れ金としてまとまった金を用意してほしい」
理不尽な要求。だけど、腐敗した関係を清算できるなら、千春ちゃんにとっては合理的だった。でも、すでに藤野に給料を吸い尽くされ、貯金も底を尽いていた千春ちゃんに、まとまったお金なんて用意できるはずもない。 途方に暮れる彼女に、ある日、藤野は悪魔の囁きをした。
「金がないなら、俺に協力してくれ。そうすれば、別れてやってもいい」 『協力って……?』 「ギャラ飲みでお前を呼んだ金持ちの中で、お前を特別に気に入った奴がいるんだ。そいつが、自分のためだけの特別なサービスを望んでる。俺がそれをセッティングすれば、仲介料としてまとまった金が入る。お前に捨てられても、それならなんとかできる」
特別なサービス、容易に想像つく話よね。察した千春ちゃんが震える声でその意味をきく。藤野は鼻で笑って軽く言い放った。
「決まってんだろ。金持ちのオッサンを一晩、ベッドで慰めてやればいいだけだよ。減るもんじゃねえだろ?」
売春よ。 本来なら、千春ちゃんの生きる世界に現れるはずもない話。金銭と尊厳を引き換えにするのだから。だけど、千春ちゃんは、即座には断れなかった。 『……考えさせて』 すぐに藤野が追い討ちをかけた。 「いいぜ。でも、断るなら俺はずっとお前の所に居座るからな。俺を養えよ」
それからの数日間、千春ちゃんの頭の中は狂気の葛藤に支配された。 一生ヒモの奴隷として生きるか。それとも、身体を売って自由を買うか。 そんな極限状態の最中に、赤坂の居酒屋で私と飲んだ。私は彼女に発破をかけた。 秀島は、自嘲気味に笑った。
「それで、追い詰められていた彼女は、崖から飛び降りることにした。私との別れ際、確かにこう言った。『別れ方はわかっている』って。それはそういうことだったのよ」
私と赤坂で飲んだ翌日。千春ちゃんは藤野に『あの話、受ける』と伝えた。 藤野はすぐに、下劣な笑みを浮かべた。 「よく決心したな、千春! さすが俺の女だ。お前なら絶対にやってくれるって信じてたぜ!」 自分の身体を売る女を「応援」する、狂ったヒモの言葉。 そして、藤野は、意外な提案を持ちかけた。
「それじゃあ、週末、買い物に行こうぜ。客からコスプレの希望が届いてるんだ」
週末、藤野に連れて行かれたのはスポーツ用品店だった。水泳のコーナーに行く。 藤野は店員の男性に声をかけた。
「連れが水泳始めるんだけど、競技用の水着、いろいろ見せてくれる?」
50前後の体格のいい、頭の薄くなった男性店員が女性店員を呼んでくると言う。
「いや、いいよ、店員サンが付き合ってよ」
恭しかった店員が千春ちゃんを見た。 顔、胸、ウエスト、脚、一瞬でベッタリと見られた。 次に店員が顔を上げた時、その表情は、破廉恥で下卑たものに変わっていた。
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Re: 遍歴
スナフキン
:2026/08/23 (日) 08:52 ID:KMgZ8AcU No.33115
- ハラハラして息がつけません。。。
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