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絆のあとさき 4

[1] スレッドオーナー: 小田 :2024/01/07 (日) 23:07 ID:LKPNupfo No.188184



先にも書きましたが、昨年後半から投稿ペースが失速しています。
理由は多岐に亘りますから、ここでは取り上げませんが、時間に余裕が出来れば、
引き続き投稿していきます。

終わりのない旅路のような日常ですから、確かな目標を決めて投稿を開始した
のですが、一つの出来事に捉われ過ぎ、展開が非常に遅くなっています。

今投稿している出来事の後に待っている出来事など、多くはありません。
年末に向けて、少し大きな出来事が明るみに出ます。
その前後をどのように書き表すか、悩みは尽きません。

数年来コメントを頂いている皆様、読んで頂いていると思われる読者の皆様、
時間が取れる時としか今は言えませんが、できる限り投稿を続けていきます。

では、今後も読んで頂けることを願って、進めていきたいと思います。


[51] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/03/02 (土) 16:32 ID:KXGlItqg No.189971



「忠告なの?」
「はははっ、誰かさんじゃないが、フェイントだよ」
「そうね、それ迄はそんなこと何も感じなかったのよ。それなのに・・・フェイントに
騙されていたのかも?それが出来るのって頭が良いってこと、空気感を読む力が半端じゃ
なかったのかも?どちらにしても、私の認識力に問題があったって、少し反省したの」
「セラピスト?違うな、セフレのフレーズに酔っていたんじゃないのか?」
「少し違うかな?セフレはそうだとしても、タクマさんの存在自体が、母性本能に響いたと
言った方が正しいかもしれないの」
「心は?」
「えっ?それはないの、何度でも言えるわ。そうじゃなくて、言葉にできない微妙な感性って
あるでしょ?」
「それが母性本能だといずみは思ってるんだろ?僕にはそう思い込ませている節を感じるけどね」
「うん・・・よく分からないの。ひろ子ちゃんに感じる母性とは全く異質なの。
それは分かるでしょ?でも、タクマさんに感じる気持を言葉にできるとしたら、母性本能が
浮かび上がってくるの。これって、あなたが言うように、そう思いたい私がいるってことなの?」
「純粋には繁殖本能だろ?いずみも分っていると思うが。ところが、それを前面に出せない関係、
セフレなんだから、セックスを楽しむことから派生する展開はお互いに望まない。
理解しているのに何かフツフツと湧き上がってくる感情、それを母性本能に置き換えて自分の
気持を欺いている。こうも言えるかな?セフレから踏み出すことを望んでいないのに、不確かで
落ち着かない気持ちを、女性特有の母性本能という曖昧な括りにはめ込むことで、微妙なバランス
を保っている。どうだい?」
「母性本能って、母親の目線でもあるでしょ?ある意味、そういう見方かもしれないの。
タクマさんが言ってたでしょ?母親とセックスは考えられないって。それはそうなのよ、性行為は
母性なんて全く関係ないの。性本能のぶつかり合い・・・あれ?これって本能違いなの?」

またしても、いずみが修復への足掛かりを用意します。

「はははっ、考え過ぎみたいだね?単純明快と言いたいんだろ?」
「セックスの本能と母親の本能でしょ?タクマさんとは、二つともほど良いバランスを保って
いるかな?巷で言われるセフレとは少し違うかもしれないけど、それがタクマさんとの関係だと
思うの」
「母性はその通りってことだね?」
「うん・・・甘える子犬って、そのまま受け取って下さい。微妙な感性って言ったけど、
それは母親の気持ちだって、あなたと話してハッキリ分かったわ。
何だか深く考えさせて、ごめんね?ホントあなたならではの講義を聴けて嬉しかった。
これからも、ご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願い・・・うふふっ、堅苦しいわね?」
「引っ張られたね。もういいだろ?木下さんとの話に移らないか?」

いずみの真意は、母性本能について私に語らせること、それから浮かび上がる適宜な言葉から、
いずみ自身の気持ちを伝えること、そういうプロセスだったように思えるのです。

「うん・・・スッキリした気持で、木下さんとの会話を披露します、うふっ・・・」

そう言って、パジャマのポケットに右手を入れます。


[52] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/03/02 (土) 18:11 ID:KXGlItqg No.189977



「何だと思う?」
「パジャマのポケットの中?大きなものじゃないね?なるほど、今回も?」
「分かった?簡単すぎたわね、うふっ」
「ん?・・・前と同じ様な事例じゃないから、理由付けが難しいだろ?どのように説得したん
だい?」
「許可なくとは思わなかった?」
「こっそり録音はできないだろ?ベッドサイドに化粧ポーチを置く手法は、見破られる公算が
大きいと分かっているんだろ?」
「エロ小説でもセックスシーンまでは幾重にもシナリオがあるでしょ?その一つに隠し撮りとか
録音とかも。今までとは違った行動なら直ぐに見破られるもの。木下さんってとても繊細なのよ。
少しでも違和感を持たせたら、約束への道筋に亀裂が入らないとも限らないでしょ?」
「じゃ、正面突破?」
「突破されたのは私、私の心かな?うふっ」
「驚愕、衝撃・・・そうなのか?」

どうも大袈裟に表現させたいようです。

「どちらも・・・ほんとに驚いたのよ。でも、前段階から話さないと始まらないでしょ?」
「もったいぶってる?」
「そう思う?そうならそうかな?・・・うふふっ、ごめんね?これ以上回したら叱られそうだわ。
事の始まりは、さっきも話したけど、”スタンダールの赤と黒”なの。
プレイ中もずっとくすぶっていたのね。ずっとはちょこっと大袈裟だけど、意識が戻ればって
言えばいいかな?兎に角、気になっていたの。
それでね、お部屋を移動した時に、チャンスだと思って切り出したの。
あっ?でも、時系列じゃないから・・・”大丈夫?”って木下さんに聞いたところに戻るわね」
「セックスはしなかったから、フェラかテコキ、その両方か。どちらにしても発射させたんだろ?
その話しはオミットして、核心に迫ってくれないか?」
「お洋服を脱がせるところまで話したでしょ?それはいいのね?二人共裸になってベッドに。
あなたの指摘通り、フェラとテコキで発射させたの。今までになく早かったから、大きな興奮に
包まれていたのね。お口に発射だから、歯磨きを済ませてベッドに戻ったの。
その短い時間にもメモを取ってるのよ。射精って疲れるんでしょ?それを全く感じさせないんだ
もの。超人木下って、一瞬だけど、そう思ったの」
「はははっ、別名を授与かい?」
「ジキルとハイドに加えて・・・あなたみたいな表現だわ、うふっ」
「超人でも何でもいいから、”赤と黒”へのアプローチだろ?」

テーブルに置かれたガラス製のサーバーには、カップに入り切らなかったコーヒーが残っています。

「一息入れる?」
「ん?・・・あぁ、コーヒーかい?」

既に空になっているカップに注いでくれます。


[53] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/03/03 (日) 12:02 ID:tkPWP66A No.189998



「あなたって、ほんとにコーヒーが好きね?」
「いずみほどじゃないよ、はははっ」
「それって、私の事が好きってこと、それとも、私がコーヒー好きってこと?聞かないわ、
自明の理って返されそうだもの、うふっ」
「賢明だね、はははっ」
「うん、信じてるもの」
「ん?誰を?」
「賢明じゃない人」
「僕じゃないね、はははっ」
「どうして同じ会話になるの?これって進歩がないと思わない?」
「平凡な日常なんだよ。慌てて進む必要もないからね」
「そうね、ゆっくりとした穏やかな時間だわ。でも、今は仮の姿と言えるでしょ?
それでも、こうして話せるのって私達の日常を取り戻せる一歩かもしれないわ」
「焦らず、それでいて機敏に行動する、大変な状況だとは察して余りあるが、いずみの努力如何
に掛かっているからね」
「うん・・・お仕事でしょ?もう一つも察して余りある?」
「はははっ、同意を求める?それなら推測、ましてや理解もできないことを容認することになる
だろ?」
「ほんとだ!私の真意じゃないもの。ごめんね?失言でした、うふっ」

説明しない、できない出来事を私が認める様に示唆したとも取れるのですが、ここは真正面から
受け取ります。

「話せないような事態には至っていないね?」
「うん、大丈夫よ。全て話せるもの・・・あれ?”立ちんぼ”の事は身勝手な判断だったって
後悔しています。ほんとだからね」
「コーヒーブレイクはここまでにしようか?」
「うん・・・明日香ちゃん、今頃どうしてるんだろ?私達と同じようにコーヒータイムだった
かな?」

もう直ぐ11時になろうとしています。

「そう言えば・・・知ってるのかい?」
「今夜はお泊りなの。退社後に東京に行ったのよ・・・あれ?話さなかった?」

相変わらずですから、呆れることもありません。

「初耳だよ。まぁ、慣れっこだから怒りたくても怒れない、得な性格だよ」
「気質でしょ?・・・あのね、誰に会うのか話さないのよ。何となく推測はできるから、それは
それでいいんだけど・・・」
「引っ掛かる物言いだね?」
「うふふっ、大人の女性として見るんでしょ?邪推はダメかなって」
「邪推なら、そうだろうと推測できるだろ?」
「うん・・・柊さん・・・違ってるかもしれないけど。余計なことは考えない方がいいでしょ?」
「純粋に楽しむのなら何も言うことはないからね。それこそ余計なお世話だね」
「うん・・・明日香ちゃんね、何か感じてると思うの。それで柊さんと、それも東京でしょ?
観光なら私にお伺いを立てると思わない?」
「土、日曜日は休ませてやりたいと思ってるよ。今のいずみの状況なら、そんなことは考えも
しないだろ?」
「そうかもしれないわ。でも、気にならない?」
「どうだろ?思い過ごしと言うこともあるだろ?何かあれば、何をおいても連絡してくるのは
間違いないと思うね」
「そうね・・・私達って何時までも保護者気分が抜けきらないのね?」
「はははっ、複数は頂けないね」
「はい?うふふっ・・・では、木下さんとの会話にフォーカスします・・・」

その日は8月最後の金曜日です。
明日香ちゃんが柊さんと会っているとすれば、楊社長の動向が気になるのですが、いずみとは
9月第三週目の木曜日から金曜日と聞いていますから、まず遭遇することはない筈です。
急遽と言うことも考えられなくはないのですが、切羽詰まった事態でも発生しない限り、簡単に
予定が変更になることはないと思っています。
そうであるのなら、明日香ちゃんが3Pに巻き込まれることはない筈です。
柊さんの動向を探る目的も、彼女が系列他社に転籍したことで、いずみへの見えない圧力も、
全く気にならなくなっています。
そのことは明日香ちゃんも知っているのですから、柊さんと会う理由は、性行為を中心に展開され
ると理解しても間違っているとは思えません。


[54] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/03/03 (日) 18:23 ID:tkPWP66A No.190005



「・・・何度目かしら、”赤と黒”・・・ホント進まないわね?うふっ」
「ここらあたりでバシッと決めるんだろ?そのための録音だと思うけどね、はははっ」
「あなたね、苦労したのよ。でもね、木下さんってほんと優しいって言うの、私への気遣いは
半端じゃないわね」
「良かったじゃないか?好かれるのは有難いことだよ」
「アレを除けばもっといいんでしょ?」
「その日も遠くはないだろ?いずみの双肩にかかっているんだからね」
「ほんとだ!だから肩こりが酷いのね?うふっ」
「とても素晴らしい返答だよ。いずみの日々を考えれば、そう簡単に口を衝いて出て来るフレーズ
だとは思えないからね。安心してその日を迎えられそうだよ」
「嬉しいわ。私の過酷な・・・違うわ、これって試練なの。人生って試練の連続の上に成り立って
いるんでしょ?あなたが教えてくれたのよ、苦しくとも笑顔って」
「はははっ、だからポーカーフェイスかい?」
「えっ?・・・私は至って真剣なのに・・・あれ?だから天然なのね?」
「落ち着いたかい?」
「うん・・・でね、ベッドに戻って、メモを覗き込むように、”赤と黒の発案は誰なの?”って
聞いたのね。即答なの、”タクマさんだよ。驚いたけど、否定する理由もないし、愉快に迎えら
れるのなら、いずみちゃんも気持ち良くプレイできると思ったからね”なの。
メモから目を逸らさないのよ。だから即答だったんじゃないかな?面倒って感じだったかも。
それって、タクマさんと私の関係をスムーズにするためでしょ?木下さんは分かっているのに、
それを示唆しないって心が広いって感心したのに、それに続けて、”入れ込み過ぎに見えるけど、
大丈夫?タクマさんもいずみちゃんに傾き過ぎてると思うけど”って。
それでね、”誤解していたかもしれないの。タクマさんに文学的要素があるとは思いもしな
かったわ”って、木下さんの琴線に触れるように、ほんと言葉を選んで話したの」
「功を奏した?」
「うん・・・誰しも関心の置き所ってあるでしょ?ポリシーが適切かもしれないけど、兎に角、
いい意味での前向きな発言へと繋がったの」
「木下さんは文学では饒舌だろ?それ以外でも?」
「文学が基調にあるのは確かよ。でも、それから派生することにも、例えば、文学と歴史、
近過ぎるかな?文学と政治なら反比例することもあるでしょ?だからね、文学があれば、関連して
いない事象にも言及するのね。言葉は悪いけど、それを上手く利用して、タクマさんの人となりを
聞き出せたの」
「なるほどだね。ところで、録音へのアプローチは?」
「木下さんね、文学にはとても反応が早いの。メモから顔を上げて、”4Pは良かったよ。
いずみちゃんの本気度がよく分かったプレイだったね。タクマさんとは意気込みが空振りしていた
ようだったから、少し心配したんだが。4Pの方が真価を発揮できるようだね。次も4Pを予定して
いるんだが、タクマさんをどうしようか悩みどころだよ”って。
これって、タクマさんを外すかもしれないってことでしょ?そうなれば、知らない男性が参加する
かもしれないもの。そんなの許せないでしょ?」
「タクマさんじゃないとダメかい?」
「二つ理由があるでしょ?一つ目は、お相手の男性は増やさないと決めていること、二つ目は、
タクマさんとは自然体でプレイすること、改善の余地があるでしょ?だから理由の一つに取り
上げたの」
「木下さんの意向は?」
「私と同じ考えなの。男性を増やさないのなら、期待に応えるプレイに徹するしかないでしょ?
それには、タクマさんの人となりを知れば、対応も難しくないって話したの」
「そうくるか・・・核心に迫って来たね」
「それでね、私なりにタクマさんとの接し方を考えたいから、彼のバックグラウンドを教えて
欲しい。それと、記憶って時間と共に薄れて行くから、録音したいって、木下さんのお顔を
真っ直ぐ見て、お願いしたの」

いずみに見詰められるそれだけで、懐柔されてしまうかもしれません。
’目は口ほどに物を言う”とはよく言ったもので、情熱的な瞳で訴えかけたのでしょうから、
それに抗しきれなかった木下さんの困惑した表情が見えるようです。


[55] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/03/03 (日) 22:30 ID:tkPWP66A No.190010



「じゃ、早速聴かせてもらおうか?」
「うん・・・”録音します”なんて言っていないから、お話の途中からになるけど・・・
では、どうぞ!」


『・・・ありがとう!これって官能小説には必要不可欠でしょ?』
『そうだけどね、いずみちゃんには逆らえないよ』
『確認なんだけど、録音はOKね?』
『話せることには限りがあるから、それは了承してくれるね?』
『タクマさんの人となりが知りたいだけだもの。それがプレイの肉となり骨となる、そうでしょ?』
『肉はいいとしても、骨は痛そうだね?』
『ジョークなの?ほんと真面目過ぎない?比喩ってご存知?うふっ』
『知ってるつもりだが・・・』
『あっ?お話の時って、ナイトウエアを着るんじゃなかった?それとも裸がいいの?』
『そうだったね。じゃ・・・』
『私が・・・ちょこっと待ってね?』


レコーダーを止めて、

「分かる?」
「いずみが取りに行った、だろ?」
「うん、チェストってベッドの前でしょ?そこからナイトウエアを取り出したのね。
レコーダーを止めたのは、その説明じゃなくてね、木下さんに着せるんだけど、その情景が
拾えていないかもしれないから、先に説明しようかなって」
「ベッドから降りて?」
「そうなの。レコーダーは私が手に持っていたのね。だから、ナイトテーブルに置いてから、
着てもらったから、少し距離があるでしょ?」
「はははっ、細かいね。気にしないから続けてくれないか?」


”コトッ”と小さな堅い音が聞こえます。
ナイトテーブルにレコーダーを置いた時だと思います。
いずみも説明済みですから、何も発せず笑顔で頷いて見せます。

ほんの少し何も聞こえないのですが、

『ベッドから降りてくれる?』
『あっ?・・・そうだね』

説明がなければ、それと分からないのですが、ベッドから降りる時と思える、微かに擦れる様な音
を、拾っています。
その後は、空気の揺らぎとでも言えばいいかもしれませんが、話し声など全く聞こえません。

「やはりだわ。先にお話して正解ね?」
「だね。そう考えれば、音から景色を類推するのは、非常に難しいと証明してるみたいだね」
「あなたね、ほんとこねくり回していない?」
「正論は単純じゃないってことだよ」
「木下さんに聞かせてやりたいわ。あなたのように持って回らないから、単純すぎるところが
少し物足りないって感じることもあるのね。でも、こうして相対する二人を観れば、どっちも
どっちね?」
「はははっ、同じ土俵?」
「相対するって言ったでしょ?文系と理系なんて水と油だもの」
「その二人と交わるんだから、何らかのコメントをしないといけないだろ?」
「えっ?・・・そうねゴルディロックスかな?」
「ん?分かって使ってるのか?それとも曖昧模糊なのに敢えて使うのかい?」
「経済用語でしょ?私なりにお勉強してるって言いたかったの」
「適温?どっちつかずを表しているのかい?」
「水と油って何となく温度差があると思わない?だからね、その中間に位置すると言う意味で
ゴルディロックス、おかしい?・・・それじゃ、ペーハー7かな?」
「適温相場なら株取引では時々耳にするけど、意味合いは全く違うだろ?まぁ、意図するところは
何となく理解出来るよ。中立を強調するのならペーハー7(ph7)でいいと思うけどね、いずみの
立ち位置が中間は頂けないね、はははっ」
「うふふっ、どっちつかずって言いたいんでしょ?でも、二人の間、真ん中なのは間違いないで
しょ?どちらにもいい顔をする、アレ?八方美人?ちょこっとまずかったかな?うふふっ」

危険水域と判断したのでしょう、駆け足で逃げ出します。






注記

本文中のゴルディロックスは、証券業界では、過熱感のない適度な相場、「適温相場」として
使われています。


[56] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/03/09 (土) 11:52 ID:lRxF4OqQ No.190151



「はははっ、自分のモノになるまでは使わない方がいいだろ?僕以外の人にはね?」
「うん・・・まだまだだわ。あなたのゴーサイン待ちね?」
「続けようか?」


まだ少しの空白が続いて、小さくいずみの声が聞こえます。

『・・・いいのね?じゃ穿くわよ・・・』

木下さんの存在は見えないのですが、いずみの問い掛けから、直ぐ傍にいるのでしょう。

『・・・はい、ベッドに戻る?』
『いずみちゃんにはいつも癒されるよ』
『セラピストでしょ?』

それには返答はありません。
先程よりももっと小さく、気にしていなければ聞き逃してしまうような音が聞こえます。


「聞えた?」
「今の?」
「うん、”コソッ”って聞こえたでしょ?ナイトテーブルからレコーダーを手に取った音だと
思うの。少し空白があったでしょ?」
「その前なら、ナイトウエアを着ていた時だろ?それにしたら少し長いね」
「うん、裸だったでしょ?着せている時にキスしてお互いに愛撫したの。興奮するとかじゃなくて、
”頑張ったね、ご苦労様”って感じかな?」
「だから無言か?はははっ」
「パンツを穿いて、ベッドに。木下さんのは穿かせたのよ。いつもと同じパターンね、
だからその時もお話はしていないの」
「その一連の動作に”癒される”のか、いずみの心遣いが見えるようだね」
「でしょ?セラピストって聞いてるのに無視でしょ?ちょこっとお灸を据えてあげたの」
「この後?」


今度も同じように布の擦れる様な音が聞こえるのですが、最初よりは大きく、その直ぐ後に
少し小さく波打つように聞こえます。

『聞こえなかったの?』
『ナニかな?考え事をしていたからかな?無視したんじゃないからね』
『そうなの?寂しいなって思ったのよ。今は私達の時間でしょ?短い時間は大事にしないとって、
そう言ったのは木下さんなのよ。覚えてる?』
『これは、僕としたことが。謝るよ』
『いいわよ。何を考えていたの?イヤらしいことでしょ?』
『いずみちゃんが言った”肉と骨”・・・意味付けはあるんだろ?』
『うふふっ、スルーしてもいいのに、官能小説に使いたいの?』
『”血となり肉となる”は聞いた事があるが、どういうことかな?』
『比喩でしょ?それって、栄養になるってことでしょ?知識が付くとも言えるけど。だからね、
肉はオマンコ、骨は硬くなったペニス。いい?タクマさんのバックグラウンドを知ったら、それに
沿ってもっと親密になれるから、木下さんのご希望のセックスプレイができるってことなの。
分かるかしら?』


[57] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/03/09 (土) 15:43 ID:lRxF4OqQ No.190161



『比喩ね・・・少し無理があると思うけど、いずみちゃんなら納得だね』
『ナンなの?それって否定されてるのと同じなのよ。そうなの?』
『そうじゃないよ。それより、タクマさんの事だろ?』
『うふふっ、優しいんだもの。木下さんって私の理解者なんでしょ?』
『だから密約が生きてくる、そう言っただろ?』
『相互理解でしょ?・・・それはいいとして、タクマさんの事ね、ほんとに木下さんと同じ大学
なの?』
『後輩だよ、と言っても親子ほどの歳の差だけどね。彼と知り合った経緯から話そうか?』
『モデルでしょ?雑誌社と関係が深い、そうじゃないの?』
『今はそうだね。数年前に遡るけど、異業種交流会、会社経営者の交流会でね、そこで知り合った
社長の息子なんだよ。驚いたかな?』
『う〜ん、特に・・・今の状況とマッチしないのはどうしてなの?』
『話せば長くなると言うだろ?だから簡略して話すからね。父親と折り合いが悪くて、詳細は
省くけど、彼が家を出たのが今の状況だね』
『就職しないのは何か理由でもあるの?』
『反抗だろうね。いつかは親の跡を継ぐ、社長でなくてもそれなりのポジションを与えられる
だろ?イヤなら完全拒否すればいいのに、そうじゃないらしいんだね。親は嫌いでも仕事には
魅力を感じている。やりたい仕事だからいつかは親の会社に入るつもりらしいよ』
『何だか身勝手ね。それまではオンナ遊びなの?』
『道楽息子じゃないのは、いずみちゃんも分かるだろ?イケメンだからスカウトされる、自立する
ための避難場所がモデルでありセラピストなんだね。女好きは父親の血を受け継いでいるんだから、
そうかもしれない』
『女好きじゃないオトコっている?』
『生物学的にはだろ?』
『婚外子も?萌音さんは愛人だものね。木下さんも女好きね?』
『いずみちゃんに言われたくないね。同じ穴の狢、知ってるだろ?』
『うふふっ、知らないとは言えないわね。淫乱って思ってるでしょ?』
『そう見えないところがいずみちゃんなんだね。そうだから、色々とプレイ内容を考え、作品に
落とし込む楽しみも増えるんだね』
『褒めてるの?それなら嬉しいわ・・・チュッ!うふふっ・・・タクマさんの事は?』
『初めて会ったのは、JINさんに紹介された日、萌音との3P、前回のいずみちゃんと同じDPだったね。非常に礼儀正しくてね、育ちが出るとか言うだろ?正にそれなんだね。今とはかなり違って
いるかもしれないが、本質は変わるものじゃない、だから今は仮の姿だと思っても間違いないよ』
『そうなのね・・・誤解していたわ。謝らないといけないかな?』
『気にしないよ。いずみちゃんとの距離が近過ぎると言っただろ?引け目は入り込ませる理由に
なるからね、今まで通りの・・・何て言えばいいかな?セックスは恋人のように、そうじゃない
時は、母性本能で優しく接すれば、タクマさんも満足できると思うよ』
『そうね。官能小説の一つのチャプターとして登場させるんでしょ?』
『いずみちゃんだからね。いくつものチャプターを展開できる素質を持っている、多様な性を
描けるのは嬉しいことだよ』


[58] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/03/09 (土) 17:42 ID:lRxF4OqQ No.190165



『タクマさんの本質がそうなら、今の姿は作品用にアレンジしてるってことなの?』
『今夜の”赤と黒”もそういうシナリオだと言ったら、どう思う?』
『タクマさんの発案なんでしょ?・・・あれなの、作品作りに協力しているってこと?』
『そうだけどね。一歩も二歩も踏み込んでくれるんだから、いずみちゃん程じゃないが、
大いに助けられてるね』
『それなのに、近過ぎるってどういうこと?』
『冷静さを欠いたら、感情が先に出るだろ?どのシーンも同じ空気感になってしまう。
裏を返せば、異なる景色を設定しても同じ情景にしか見えなくなる。それを避ける意味でも、
距離感は非常に大事なファクターなんだね』
『分かるわ、とても。木下さんの危惧はしっかり受け止めたから、今後の展開にはシーン毎に
違った私、私達かな?見せられるように努力するわね・・・あっ?もしかして、今夜会った時の
二人のパフォーマンスも作品にするつもりなの?』
『いずみちゃんの様子もしっかり見させてもらったから、乱交のイントロとしては、かなりのもの
だと思うよ。タクマさんが父親の仕事を継がなければ、シナリオをお願いしたいものだよ』
『学部も同じなの?』
『理系だよ。惜しいとは思うけど、仕方ないね』
『そうなのね。聞いてもいい?・・・お父さんのお仕事って?』
『IT関連かな?詳しくは話せないが。こういった繋がりだからね、知られたくないだろ?』
『そういうことなのね?エロ繋がりなのね?そうなら木下さんもそうでしょ?』
『話すまでもないだろ?彼とも適温な距離感を保ってたから、彼の誘いに乗ったのは一度だけだね』
『スワップなの?』
『これも詳しくは・・・好事家、いや、好色家が正しいかな?ナンて言ったかな?
そういったカップルがスワップする場所を提供、どちらにしても主宰していたようだね』
『憶測なの?参加したんでしょ?』
『見学にね。カップルでとの要請だったので、萌音とね。淫乱の美人の姿態を見せるだったかな?
その女性を見せれば僕の心が動くと思ったようだよ。僕がスワップに二の足を踏んでいたのが
その理由だと思うけど、萌音を抱きたかったのが本音だと思ったよ』
『じゃ、純粋に見学だけ?参考までに聞いてもいい?』
『ナニかな?話せることなら』
『その女性に心を動かされなかったから、スワップは断った、そうなの?』
『心か・・・動かされたね。清楚に見えるのに性行為は淫乱そのもの、相手の男性に完全に
溶け込んでいたね。この女性だと思ったよ、僕の小説の集大成にしたいと。心からね』
『条件を満たさなかったから、叶わなかったのね?』
『端からスワップは・・・己の立場を考えたら余りにも危険だからね。分かるだろ?』
『社長だものね。それなのに、タクマさんのお父さんはとても大胆ね?』
『だから・・・やめとこうか。彼の事はここまででいいかな?』
『うん・・・その女性のその後は?』
『何も・・・いずみちゃんに似て美人だったよ』
『ほんとに?・・・チュッ!嬉しいわ・・・でもね、二人が親子ってどうして分かったの?』
『それか・・・彼からイケメンの紹介依頼があってね、数人から選びたいからと写真を要請
されてね。スワップは断ったが、その美人の姿態を観た後だったから、断わり難いだろ?
それでね、後日、JINさん、タクマさん、もう一人、計三人の写真を見せたらね、驚いたと言えば
いいのか、かなり厳しい表情になってね、彼は除外したい、他の二人は会って決めると。
気になるだろ?知り合いかと思ったから聞くだろ?暫く考えてから、息子だと言うだろ?
驚いたのは僕の方だったかもしれないよ』


[59] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/03/10 (日) 11:50 ID:kiqzlcSU No.190179



レコーダーを止めたいずみは、

「奇遇って言えない程の衝撃だったと思わない?」
「タクマさんのお父さん?」

その時の状況は、全てではないとしても、萌音さんから聴取しています。
それと知らないいずみも、その時の様子もタイムリーとは言えない程遅れたのですが、
私に聞かせてくれたのです。
今度は、木下さんからの証言ですから、三者三様の立場から異なった情景が見えてきます。

「そうでしょ?家を出たのは仕方ないとしても、モデルだけじゃなく性風俗に身を置いて
いるのよ、何とも言えない気持だったと思うわ」
「いずみならと考えないか?」
「ほんとだ!親には知られたくないわね。もう過去の事だとしても、そうでしょ?
今は立派な伴侶が居るんだもの、何があっても大丈夫って思っていると思うわ」
「過去は過去でも今は進行形じゃないか?心してかからないと、ふとしたはずみでほころびから
漏れ出したら大変だからね、いいかい?」
「うん・・・そういう意味では東京で良かったのかもね」
「安心するには、もう少し時間が必要だろ?」
「うん、長くても、来年の春までには軌道に乗せられる予定だから、それ迄はあなたにも
大きな負担になるかもしれないけど、ご協力をお願いします」
「はははっ、しおらしいね?・・・録音はもう終わりかい?」
「少しあるかな?」


『ほんとに?声が出ないってこういう時を言うのね?』
『その通りだね。一瞬、耳を疑ったけど、現実は過酷なモノだと改めて認識させられたよ』
『それなら、タクマさんは木下さんとお父さんが知人とは知らないのね?』
『言えないだろ?彼から口止めされなくてもね』
『何だか複雑ね?タクマさんのバックグラウンドもそれなりに分ったから、私なりに対応を
考えるわね』
『そうだね。今夜のタクマさんとのプレイには、力が入り過ぎていたように感じたね』
『タクマさんの熱意に応えられるように頑張ったのよ。でも少し空振りだったかも?』
『最高とは言えないかもしれないが、いずみちゃんの努力には頭が下がるよ。どちらかと言うと、
4Pの方がリラックスできるようだね』
『タクマさんを意識してるのかな?そう言うつもりはないのに』
『そう見えるけどね。タクマさんが気にならない程、プレイに没頭して欲しいね』
『るみさんのように?』
『やはりDPは外さない方がいいかもしれない。いずみちゃんはもうできないだろ?』
『約束でしょ?』
『そうだね。次回はプレイだけに集中できるように頑張ってもらおうかな?』
『タクマさんとは近過ぎるんでしょ?でも、そうしないとほんとの恋人のような空気感を
出せないもの。それでも、親密なようで親密でない、近くて遠い関係を演出できれば・・・
そうか!るみさんとJINさんとの関係、これがそうなのね?』
『彼らはプロの絡み、いずみちゃんはプロであって欲しくない。そういう微妙なプレイが
いずみちゃんの神髄だよ』
『難しいわね。でも、期待に応えられるように頑張るとしか言えないかな?』
『いずみちゃんの自然な姿態が観れるのなら、何も言うことはないからね』
『無意識の意識でしょ?』
『ん?難しい表現だね?』
『木下さんに満足してもらえるプレイは難しい。でも、意識せずにできればそう難しいことじゃ
ない、ってことなの』
『そうだね、それが自然体、いずみちゃん独自の姿態だよ。楽しみにしているからね』
『うふふっ、乞うご期待でいい?』
『じゃ、少しでも寝るかな?』
『うん・・・いいのね?』
『無理はできないからね?』
『じゃ、おやすみなさい』

その後は何も聞こえませんから、録音はこの時に終了したのでしょう。


[60] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/03/10 (日) 15:20 ID:kiqzlcSU No.190182



「ここまでだったわ。直ぐに寝てしまって。あなたとは逆かな?」
「逆?いずみが先に?」
「うん、そうだと思うの。抱きしめられて腕の中で・・・目が覚めた時ね、木下さんは
ベッドにいなかったの。時間が気になってナイトテーブルの時計を確認しようとした時ね、
”間に合うから大丈夫だよ”って。昨夜からの木下さんのポジションで、何やら執筆中って
感じなの。
私が間に合うように起こしてくれたみたいで、”直ぐに起きないから少し揺すったら、
訳の分からないうわ言を言ってたよ”って。何だか恥かしいでしょ?」
「訳が分かったのなら、それこそ一大事だね?」
「えっ?知らない振り?それはないかな?木下さんに限って・・・あったらどうしよう?」
「はははっ、問い質さなかったのか?」
「ボンヤリした頭って薄い空気の中って感じでしょ?気付くのが遅れると言うか、その時は
何も思わなかったの。目が覚めたら、セックスプレイは遠い彼方かな?過ぎ去ったことだもの。
気持はひろ子ちゃんなのよ。早く支度してPPTに帰る事だけ。ひろ子ちゃんを起して、一緒に
朝食でしょ?それしかないもの」
「あっさりしたものだね?いつものことかい?」
「そうよ、木下さんも理解してくれてるの。ほんと優しいのよ、それもこれもエロ小説のため
って割り切っていると思うの。清々しいでしょ?」
「はははっ、朝は清々しいものだろ?淫靡な空気は払拭してもらいたいね」
「そうでしょ?だから、そのようなお話は一切しないの。暗黙の了解かな?」
「流石だね。木下さんの意気込みが伝わってくるようだよ」
「楊さんは少し違うかな?」
「それこそ二面性?」
「そうかな?お部屋を出るまでは、イチャイチャしていたいみたいなの。一旦、お仕事になると
ガラッと変わるのよ。変り身が早いかな?」
「いずみと同じじゃないか?」
「あれ?・・・藪蛇なの?うふっ」
「そうしないと前に進めないんだろ?過ぎ去ったことには拘らない、そういう気質だよ」
「だから抜けてるって指摘されるんだもの。ちょこっと心配なところもあるのよ」
「それが分かるだけでも大したものだよ、はははっ」
「笑わないでね?・・・えっと、何か質問とかあるかしら?」
「るみさんは徹夜とか言ってたけど、大袈裟に話したのかな?」
「お部屋を出てからの事は何も分からないのね。るみさんが徹夜って言ったのなら、そうじゃ
ない?」
「続きを?・・・考えられないが」
「来月も乱交って木下さんが話していたでしょ?るみさんも参加すると思うから、聞いて
みようか?」
「特に気にならないから、どちらでもいいよ。徹夜の意味はレコーダーが教えてくれたからね。
それにしても、2時間も寝れなかったんだろ?」
「うん・・・4Pが終わったのは4時頃って話したでしょ?それからお隣のお部屋に木下さんと。
暫くお話してからだから、1時間少しかな?」
「眠いだろ?」
「少し・・・でも、あなたに話さないといけないもの、それが先。眠くなるのはその後、
そう決めたから、それ迄は大丈夫よ、うふっ」
「じゃ、それ迄を急ごうか?」
「はい・・・木下さんとはお部屋を出る時に、”チュッ!”って、頬に、唇じゃないの。
別れの挨拶、ハグと同じかな?」
「朝を強調かい?」
「うふふっ、そうかな?・・・起きたのが6時30分過ぎなのね、分かってると思うけど。
お部屋を出たのが50分頃ね、タクマさんとの約束は守らないといけないでしょ?」
「復活セフレだものね」
「それは私の中だけでしょ?彼はそんなの全く意識していないのよ。でも、”赤と黒”までは
少し心配したって。可愛いでしょ?」
「何でもいいけど、携帯だろ?」
「うん・・・エレベーターを降りて玄関までには、いつ会うか決めていたの。それでね、難しい
かもしれないって話したことね、”実現できるかも?”って思ったの」
「ん?・・・ナニかな?」


[61] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/03/10 (日) 16:55 ID:kiqzlcSU No.190189



「タクマさんと二人でいるところを見てもらうってこと、覚えてるでしょ?」
「トーンダウンしてたね、それが実現できる?」
「あなたがOKしてくれないと何も始まらないんだけど、相談する時間もなかったでしょ?
それでね、来週の金曜日は東京本社で会議、その後サワちゃんとでしょ?
それを思い出して、サワちゃんとの時間を少し遅らせてもらったら、イタリアンレストランでの
様子を観てもらえると思ったの」
「タクマさんとは約束済みだね?」
「うん・・・金曜日は帰る日だけど、一日延ばして土曜日にあなたと一緒に帰ることにすれば
問題ないかなって。私一存で決めたけど、怒らないでね?」
「パンツを返してもらったんだから、約束は守らないと、はははっ」
「パンツから離れてくれない?うふっ」
「ひろ子、石黒さんとの段取りが出来るのなら、それでいいよ」
「良かった!・・・あなたを意識しない様に、少しはするかな?でも、限りなくいつも通りに
・・・」
「できないかも?と聞こえるよ、はははっ」
「そうかな?そうかも!・・・愛してるの、あなただけ・・・チュッ!」
「”ほんとだからね”は言わないのかい?」
「何度もって真実味がないでしょ?」
「だね。じゃ、寝ようか?・・・今夜は先に寝ろよ。いいかい?」
「ダメなの。あなたが寝るまでは・・・大丈夫だと思うけど」

そうは言ったものの、耐えられなかったのでしょう。
布団に入るや否や寝息を立てていたのですから、強靭な精神力を持っているとしても、疲れ切った
体に抗すことはできなかったようです。

いずみの寝息を聞きながら、レコーダーの会話を思い起こします。
木下さんとの関係は、問題なく進んで行くと確信が持てそうです。
12月以降、来年に持ち越すことも確認済みですが、いずみも私の思いと同じように、春頃まで
には、何がしかの結論に達していると自信の程を見せています。
それも、信じられるだろうと思えるのは、予想以上の木下さんの紳士的な態度からも読み解ける
からです。

タクマさんとの関係も、今年末までといずみとも確認しているのですが、少しの揺らぎを
感じるのは、思いの他、いずみの感情が高ぶっていると思えるからです。
と言っても、レッドラインを大きく超えることはあり得ないと分かっているのですが、微細な
隙間からでも滑り出さないとも限りません。
そうならないように、可能な限り彼との状況を報告させなければなりません。
その一助として、来週末に二人の様子を見せると提案したことは、大いに意義のある事です。
いずみ自身も微かに感じていると思える小さな揺らぎの芽を、私を介して摘み取りたいと思って
いると推測するのですが、そこまで考えていないかもしれません。
それ程重大に思っていないのがいずみであり、いずみなのです。
天然気質のいずみだからこそ、気負いなく自然体を装うことが出来るのでしょうが、私にとっては
痛し痒しです。

ここで気になるのが、タクマさんの父親です。
萌音さん、いずみ、木下さん、三者からの聴取内容を合わせると、ある人物が浮かび上がって
きます。萌音さんとの会話から推測はしていたのですが、情景の説明がなく、いずみの告白と
結び付けることで、その人物をより鮮明に描けていた事に加えて、今回の木下さんの証言から、
ほぼ間違いないと結論できるのです。
とは言っても、推論でしかないのですから、全くの的外れかもしれません。
木下さんは意識的にその人物を避けていると思えるのですが、それには全く反応を示さなかった
いずみですが、気付いていない振りをしていたのかもしれません。
天然気質であっても、非常に慎重な一面も併せ持っていますから、確証が取れるまでは口を開か
ない事も考えられます。
私に対しても、何のアプローチも見せなかったのですから、私からの反応を見定めてから、
重い腰を上げる作戦かもしれません。


[62] Re: 絆のあとさき 4  :2024/03/10 (日) 21:49 ID:FjlqljP6 No.190198
小田さん、こんばんは。 
  タクマさんの父親が矢島ですか。うーん。
 タクマさんの父親がIT関係の社長と言ったところで、ピーンときました。
 事実は小説よりも奇なり、世の中広いようで狭いですね。
  もう一つ、輪姦に参加したのは、JINさんとレストランのオーナーですかね。
 レストランのオーナーは予想ですが、妙になれなれしいので・・・

 木下さんがここまで話したのであれば、いずみさんも気がつくはずです。
 小田さんもすぐ気がついたはずです。確定するまではふれないつもりですかね。
 また、木下さんの官能小説にかける情熱が矢島と矢島の息子のタクマさんと
 関係を持たせることに繋がっているのでしょうか?
 タクマさんの出所がはっきりしているところに安心を覚えたのでしょうか。
  
 木下さんは最初の行為からの変遷を考えると(最初は4年前の事を思い出して)
 いずみさんと直に接して小説の主演女優にふさわしいと思ったのでしょう。

 楊は矢島の女を使ったサロンの事も木下さんから聞いたのかも・・・
 さらに、タクマさんが矢島の息子と知っているのかも・・・
 ここまで知っている木下さんは、小田さんといずみさんの関係もうすうす感じているのかも。

 最後は思いついたことばかり書きました。
 全くの勘違いかも知れません。お許しください。


[63] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/03/10 (日) 22:34 ID:kiqzlcSU No.190199



その日、9月最初の金曜日は、タクマさんといずみが約束した日であり、私が二人の様子を
観ると決めた日でもあるのです。

東京本社での会議に出席後、事前に打ち合わせしていた通り、午後6時過ぎにホテルに
チェックインします。
いずみの提案で、石黒さんと過ごす時間に狂いが生じるのですが、そこはいずみです、
石黒さんの不満を解消できないとしても、最小限に抑えられると思えるプランを用意します。

タクマさんとの約束の時間は、いつも通りの午後9時過ぎです。
いずみがひろ子と夕食後のシャワーを経て添い寝から、イタリアンレストランに着くのが
9時過ぎなのです。
従来通りなら、いずみがPPTを出た後は、石黒さんがひろ子の様子を見ることになっています。
私が石黒さんと会う時は、いずみはPPTでひろ子と一緒なのですが、その日は変則な時間割に
なります。

チェックイン後、6時30分にロビーで石黒さんと会います。
以前と同じなら、ホテルのレストランで食事後部屋に戻るのですが、その日は9時までに
イタリアンレストランに行き、いずみ達を待つ予定なのです。

石黒さんと食事後、

「済まないね。急にこんなことになって申し訳ない」
「気にしないで下さい。後で会えるのでしょ?」
「遅くとも10時には。あれだよ、いずみ次第だからその通りになるかは分からないがね」
「でも、いずみさんってホント大胆なんだもの。予想を遥かに超える、違うわ、予想もできない
ことをシラッと進めていくでしょ?」
「だね。常識とは何なのか聞きたくなるだろ?」
「タクマさんと、セフレの設定でしょ?会っているところを見せるなんて、いずみさんの常識
って非常識ってことですか?」
「はははっ、普通の神経ならとっくにまいっているだろうね」
「小田さんだから?」
「”普通のいずみ”からの付き合いだからね」
「普通の時ってあったのですか?」
「はははっ、そう言えば、そんな時もあったんだと懐かしく思い出されるよ」
「のんきなんですね?」
「そうじゃないと付き合い切れないよ」
「そうですね・・・」

午後8時30分を待たずに、ホテルのレストランを出ます。
石黒さんはPPTに帰って、いずみと交代するのです。
幾つかのレストランが軒を並べる小さな広場を通って、石黒さんを坂道の歩道まで送って
行きます。
後で入るイタリアンレストランの前を通る時、チラッと店の中を覗いたのですが、リザーブ席
には誰の姿も見られません。
店はそう広くもなく、店の前のテラスにもテーブルを並べていますが、店の中のテーブルを
確保できれば、二人の様子は観察できるといずみは強調します。
金曜日のこの時間ですから、そう簡単に確保できるのかと思っていたのですが、店の中には、
一組のカップルしかいないのですから、私には好都合です。
ヨーロッパのレストランで見かけるように、テラス席はおしゃれなのでしょう、二組のカップルが、
そのテラス席でワイン片手に食事中ですから、私に関心を払うとは思えないのも有難いことです。

車道を渡って行く石黒さんを見送ってから、いずみに掛けます。
全て、いずみの計画通りなのです。


[64] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/03/10 (日) 22:52 ID:kiqzlcSU No.190200


シンさん、コメントをありがとうございます。

シンさんの推測通りかは、これから判明していきます。
と言うか、もう分かっていると言ってもいいでしょうね?

申し訳ないのですが、時間がありませんから、ここまでにさせて下さい。


[65] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/03/16 (土) 12:24 ID:vMmUPaEE No.190353



『石黒さんと別れたからね』
『うん、スタンバイOKよ。あのね、お話の途中で連絡したいことが出来たら、おトイレから
メールするわね。携帯ならリアルタイムでしょ?タクマさんからあなたが見えるんだもの、
おかしいと思われるかもしれないでしょ?』
『そうだね。レストランには10分前でいいんだね?』
『うん、タクマさんは時間厳守だから9時少し前に来ているみたいよ。私は予定通り9時過ぎに
行くから。何だか緊張してきたかな?』
『そう見えないところがいずみなんだろ?』
『うふふっ、いつも通りにするから、気になることもあると思うのね。でも、気にしないでしょ?』
『僕の事は何も考えなくていいから。差し詰め赤の他人か、透明人間と思えば何も恐れることは
ないだろ?』
『うん・・・オーナーがちょっかいを掛けてくるかもしれないけど、彼の人となりが分かる
かもね?』
『レコーダー通りなら、そう心配は要らないだろ?それと・・・』
『ユカさん?・・・気を付けてね?私達のブロックになるから、それなりに神経を使ってる
みたいよ』
『彼女が動いたら、何かしてる証拠だね?』
『見えない様にしたら、そうかな?うふっ』
『想定済みだから、その時は目線を合わさないようにするよ』
『うん、バレない様に観察してね?』
『じゃ、その時に』
『うん・・・愛してるわ、うふっ』


腕時計は8時40分を指しています。
ホテルの玄関からそのレストランまでは数分の距離ですし、そこから石黒さんと別れた坂道までは
1分程なのです。
ホテルから非常に近く、多くの人が行き交う賑やかなエリアですが、一度、坂道まで出ると
急に人影が少なくなります。

坂道を少し上がり、いずみが”立ちんぼ”をしていた洋品店の前を通り、時間を見計って目的の
レストランへと下って行きます。
時間通りに、そのレストランに入ります。
先程通過した時に目にした状況と変わらないのですが、テーブルを選べるのかが気になり、
直ぐにやって来たユカさんに、それを確認します。

「はい、お好きなテーブルを・・・」
「じゃ、ここで・・・」

いずみ達のテーブルの斜め後ろで、一番近いテーブルに決めます。
このレストランでも食するつもりでしたから、石黒さんとの夕食はかなり抑えていました。
それは偏に、雰囲気に馴染む必要があると思っていたからに他なりません。
コーヒーのみで居座るには、場違いなように思えたのと、逆に目立つとも考えたからです。

注文した食事がテーブルに運ばれたと時を同じくして、背格好の高いイケメンが入って来ます。
馴染みの様子で、ユカさんに軽く挨拶して、リザーブ席の入口が見える側に腰を下ろします。
直ぐに携帯を取り出して、眺めている様に見えます。

店内はラウンドテーブルなのですが、そのリザーブ席は大きくない長方形のテーブルです。
いずみから聞いていた通り、カウンターと壁に挟まれたかなり狭い空間に、無理矢理設置した
ように見えます。

パスタとビールを口に運びながら目を上げると、右斜め前にタクマさんが見える位置関係です。
リザーブ席は壁に接して配置されていますが、ラウンドテーブルには4脚の椅子が用意されており、
壁側にその一脚が置かれていますから、テーブルと壁の間にはその椅子を置くスペースが必要です。
ですから、タクマさんと私は真正面にはならない位置関係なのです。


[66] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/03/16 (土) 17:31 ID:vMmUPaEE No.190362



腕時計を見ると9時を回ったところです。
いずみが話した通りだと思う間もなく、彼の携帯に着信です。
ハッキリは聞こえないのですが、にこやかに話す様子は、好感が持てる好青年と言えそうです。
半袖のポロシャツに短パンなのは、以前にも聞いていますから、特に気にもなりません。
いずみはどのような装いなのか、彼の意向を反映させたスカートだろうと、要らぬ想像も
時間潰しになります。

数分も経たずに、携帯で話しながらいずみが現れます。
タクマさんの相手はいずみだったのですが、そうかもしれないとは思っていたので、驚くことも
ありません。

私の後ろにいずみの視線を感じた時、

「あっ?ごめんなさい」
「えっ?いや・・・」

携帯に気を取られて、私に接触したように装ったのです。
いずみが到着を知らせたのでしょうが、それは全く意味のない事です。
それ以外にと考えるのですが、何も思い付きません。
ところが、いずみに注目させたいのだと、直ぐに理解します。
短いやり取りですが、そのような接触ですから、相手の行動に意識が向かうのは正常な感覚だと、
いずみは分かっているのです。

携帯はそのままで、ユカさんとハグして言葉を交わしたようですが、当然聞き取ることは
出来ません。
リザーブ席はすぐ傍なのですから、腰を下ろすと思いきや、タクマさんの右肩に右手を置いて
彼を一瞥するのですが、直ぐに顔を上げカウンター越しに声を掛けたようです。
一瞬、タクマさんに目線を移すのですが、厨房から姿を見せた男性、当然オーナーの筈ですが、
彼に抱き付いて頬にキスしたようです。
彼は体に比例して、かなり大きな声ですから、彼の反応が聞き取れます。
それに呼応して、いずみも大きな声で返答します。

「いずみちゃん、それはないだろ?ここが寂しいって怒ってるぞ、あはははっ」
「タクちゃん、いいの?」
「寝てる子を起こしたらダメだろ?」
「だって!ごめんなさいね?」
「タクの彼女だから、まぁ、これで勘弁してやるよ」

言い終るや否や、いずみの腰を抱き寄せて、キスを求めたようです。
左手に携帯を持ったままですから、簡単には抵抗できそうもありませんが、元々その意思はない
ようです。
”チュッ!”とソフトにキスして、オーナーから離れます。
挨拶のパフォーマンスとして、常態化していると見ていいようです。

笑顔のオーナーは満足したのか厨房に、いずみは何事もなかったように、タクマさんの前に座り、
腰を浮かせてキスします。
ここまでは何度も踏んできた流れのように感じるのですが、自然な雰囲気からもそれは事実だろう
と推測できます。

その後は、何を話しているのかは全く聞き取れないのですが、先程の挨拶がパフォーマンスと
認識すれば、一際大きな声なのは十分理解できます。


[67] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/03/17 (日) 11:43 ID:3ZgMVBeY No.190382



いずみの服装はタクマさんに合わせたのか、カジュアルに纏められています。
ノースリーブのブラウス、膝上のフレアースカート、小ぶりなショルダーバッグ、パンプス、
腕に掛けた半袖のカーディガンなど、ブルーの濃淡でコーディネートされています。
服装は全てがRLだろうと推測できます。
服装については何の言及もなかったのですが、会えば分ると判断したとしたら、それこそいずみの
気質を表していると思えるのです。
ところが、タクマさんのポロシャツもRLなのですから、その本質は、単に話したくなかったのかも
しれません。

先週の乱交まで会っていないと聞いていたのですが、不自然さを全く感じさせないパフォーマンス
には、少々驚かされます。
私が来ることを想定して、登場人物が口裏を合わせたのかと、あり得ない発想も浮かび上がって
きます。
会えない日々が過ぎたとしても、以前と変わらない風景を描き出せるのは、非常に親密な関係を
築いていると考えられるのですが、それはいずみの気質に大いに助けられている一面もあると
思うのです。

真正面ではないにしても、顔を上げれば自然と目線はいずみの背中、タクマさんの顔にいって
しまいます。
時折と言い聞かせながらも、ついつい目線が向かってしまうのは、致し方ないことです。
いずみ達の様子を観察するためにこのレストランに居るのですから、しっかり見定めないと
後でいずみに叱られそうです。
私とすれば、タクマさんの人となりが分かればそれでいいのですから、食事が終われば腰を落ち
着かせることなく、退散しようかと思っていたのです。

持参した愛用の雑誌もカモフラージュになると信じて、食事中の読書は褒められたものでないで
しょうが、この場合は例外として是認されると思いたいのです。

少しして顔を上げると、ユカさんが二人のテーブルの傍に居るのです。
屈んでいずみに話し掛け、それにいずみが返答しているのですが、微かにいずみの笑い声が聞こえ、
それに呼応するようにタクマさんの笑顔が見え隠れします。
そのテーブルは、食事するには広くはないと思うのですが、それを物語るように、タクマさんの
手にはワイングラスが見て取れます。
飲めないいずみは何を注文したのか、ソフトドリンクの類だろうと推測しても、いずみの背中しか
見えないのです。
ところが、ユカさんが”カンパイ!”とそれ程大きな声ではないのですが、私には聞き取れたの
です。
それと同時に、掲げられた二つのワイングラスが宙を舞うように交差し、二人が腕を絡めて
自分のグラスに口を付けたように見えます。
いずみもワイングラスを手にしていたことが分かるのですが、その理由は推測もできません。
ただ、事実だけが疑問符と共に宙に舞っている感覚になります。

そのアト、ユカさんがチラッとこちらを見て、いずみの後ろに移動します。
その理由は直ぐに理解するのですが、二人の動きは見えるようで見えません。
ユカさんが後ろからいずみに話し掛けている風を装っていますが、いつ振り返るか分からないの
ですから、長くは顔を上げる事など不可能です。
見えないものを見える様にするには、何がしかのヒントが必要ですが、それすら提示されない
のですから、不条理だと自分勝手に小さく憤慨するのですが、それが可笑しくて笑いそうになり
ます。
何をしていても驚くことはないのですが、見えない事実が気になるのです。

時折、いずみの腕が見えるのですが、それが何を意味しているのか判別できないとしても、
いずみの動きからブラウスを脱いでいるように見えるのです。
タクマさんもほとんど見えないのですから、彼の意図は全くもってブラックボックスです。

何時までも見ている訳にはいきませんから、そこまでで食事に戻ります。


[68] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/03/17 (日) 16:32 ID:3ZgMVBeY No.190394



少しして顔を上げると、ユカさんはこちら、私ではなく店の入口に顔を向けているのです。
いずみ達は何事もなかったかのように話しているのですが、先程手に持っていたカーディガンを
着ているのです。
クーラー対策だろうと理解出来るのですが、それを着るためにユカさんが遮蔽することなど、
非常に不自然です。
ところが、私から見えるいずみは間違いなくカーディガンを着ているのですから、結論から
言えば、不自然なところはあろう筈もありません。
この違和感は、後でいずみから説明があるだろうと、ここは一旦胸に納めることにします。

食事も終わり、ビールの昂揚感も手伝って、少し気持ちも大きくなってきます。
タクマさんの人となりもそれなりに理解できたとして、店を出ようかと思っていると、
いずみが席を立ってトイレに行くようです。
知らせたいことがあればメールすると、いずみは話していたのです。
携帯は事前に消音モードに設定していましたから、何気なく携帯を見る風を装います。

少しして、いずみからメールの着信です。


[お洋服のことは後で。タクマさんがお部屋に誘いたいって。あなたの指示に従います]
[了解]


タクマさんの意向が何なのか、その時までは推測するしかありません。
まさかと思う反面、あり得ないとも思えるのですから、小さくない動揺に心が乱されます。
軽い気持ちで話したことが、実現に向かって歩みを進めているのかもしれません。
いずみが示唆したかは分からないとしても、タクマさんを動かした理由がある筈です。

いずみが戻って来ても、楽しそうな様子が伝わってくるだけで、一向にその動きはありません。
ふと腕時計に目を落すと、9時30分になろうとしています。
その時間は、いずみから聞いているタイムリミットなのですが、私に接触してこないのは、
気が変わったと判断するしかないようです。

支払いを済ませ、店の外に出て歩き出した時に、後ろから呼び止められます。

「すみません・・・少しお時間を頂けませんか?」

非常に丁寧な言葉遣いです。
振り返って、

「僕ですか?」

タクマさんと分かっていたのですが、少し恍けて見せます。
タクマさんの左腕に右手を浅く巻き付けたいずみが、笑顔で寄り添っています。

「えぇ、先程から私達を観られていましたね?」
「特に・・・顔を上げると見える、それだけのことです。それが何か?」
「あっ?いや、不躾な声掛けで困惑されているかもしれませんが、僕達は決して怪しい者では
ありません」
「見るからに仲の良いカップルとお見受けしますが、どのようなご用件ですか?」
「単刀直入にお話してもいいでしょうか?」

店の前のテラス席には二組のカップルが居るのですが、何となく視線を感じるのです。

「いいですが・・・歩きながらでも?」
「どちらに?」
「目の前のホテルです。出張でここに・・・」

カットされます。

「そうですか!僕達もこのホテルですから、奇遇ですね?」
「まぁ、そうですが・・・ところで・・・」


[69] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/03/17 (日) 18:49 ID:3ZgMVBeY No.190402



私と並んで歩き出したタクマさんですが、意を決したような雰囲気が伝わってきます。

「ご覧の通り、僕達は歳の差カップルですが、お互いを大事に思っていますし、心から愛し合って
います。そうだろ?」

確認するのは、自信の無さの表れです。

「タクちゃん、私達のことなど今は関係ないでしょ?・・・すみません。失礼な物言いを
許して下さい」
「あっ?いや、気になさらずに・・・どういったご用件ですか?」
「お願いなのですが・・・どのように説明したらいいのか・・・いずみちゃん、どうする?」

私から助け船を出します。

「要領を得ないようですが、僕から話しましょうか?」
「えっ?分かりますか?」
「以前にも同じようなことがありましたね。このホテルでは時々耳にしますから、そう珍しい
ことではないでしょ?」
「そうですか・・・よくあるのですね?」
「はははっ、初めてですか?」
「そうなんです。とっかかりが難しくて・・・あの〜、お名前をお聞きしても?」
「タクちゃん、そんなこと失礼でしょ?」
「こういった関係なら呼称も必要ないでしょうが、一度きりだとしても、呼称がなければ話し難い
こともあるでしょうね」
「何だかホッとしました・・・僕達は・・・」
「タクちゃんといずみちゃんですね?」
「お恥ずかしいです、名乗らないでお願いするなんて。それでは・・・」
「お二人の名前が本名か分かりませんから、僕も、”ちゃん”と付けるほど若くないですから、
そうですね、戸田として下さい」
「戸田さんですね?」
「えぇ、僕からと言ったでしょ?続けますか?」
「それなら・・・」

ホテルのエントランスを通過して、ロビーに入ろうとしています。

そこで立ち止まって、いずみに目線を向け、小さく瞬きます。
理解したのでしょう、そっとウインクを返してきます。

「彼女さんは美人ですから、3万円が相場でしょ?」
「えっ?性行為はそうなのですが、観るだけで・・・お願いしたいことは・・・」

最後まで聞かずに、

「観るだけ?・・・それなら、僕以外の人に頼んで下さい。お互い無駄な時間だった、
失礼するよ」

怒ったように受け取られたのでしょう。
歩みを早くした私と、立ち止まった二人とに少しの隔たりが出来るのですが、いずみが足早に
駆け寄って来ます。

タクマさんに聞こえるように、少し大きな声で、

「待って下さい!お話はまだ終わっていません・・・」


[70] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/03/20 (水) 11:22 ID:FRqlMzaw No.190485



振り返った私の左腕に手を掛けていますから、いずみとの距離はほとんどありません。

声を潜めて、

「・・・どうするの?」
「ゼスチャーだよ。いずみが追いかけてくると思ってね」
「読まれてるのね?それじゃ・・・」
「あぁ、了解したと彼に伝えてくれないか?」
「いいのね?こんな形で実現できるなんて、ほんと驚きね?」
「早く行けよ、不安そうに見てるぞ」

当然ですが、タクマさんからはいずみの後姿しか見えません。
私を説得していると思っている筈です。

「大丈夫?後悔しない?」
「はははっ、今更。言いだしたのは僕だからね。軽い気持ちだったが、まさかだね?」
「うん・・・話してくるわね?」


立ち止まったまま、二人がやってくるのを待ちます。
笑顔に戻ったタクマさんといずみが腕を組んで、近付いて来ます。

「すみません。上手く話せなくて、誤解させてしまったようです。彼女がお相手をするのではなく、
僕達の性行為を観て頂きたいのです。彼女からお聞きになったでしょ?」

いずみの隠された交渉力に感嘆したかは不明ですが、先程とは打って変わって、立て板に水の
如く滑らかな口調です。

いずみに目線を移して、

「美人に頼まれると断れないでしょ?それに、誠実そうなお二人だから、ここは清水の舞台から
飛び降りるしかないと。まぁ、彼女に免じて了解した訳だね」
「大袈裟だわ。あっ?ごめんなさい」
「はははっ、普通に話そうか?いいだろ?」
「その方が話しやすいです。でも、僕達からのお願いですし、年齢差を考えると少し難しいかな?
とか思いますよ」
「それでいいのね?戸田さん?」
「だね。ところで・・・」
「あっ?チェックインを済まさないと。少し待ってくれますか?」
「いいよ、いつまでも・・・ん?それはないか?」
「うふふっ、おかしな人って言われませんか?」
「妻にはね?はははっ」


この時間帯でも、フロントにはチェックイン待ちの客がいるのですから、上のホテルとは雲泥の
差です。

「ところで、どうして僕を?」
「彼女と相談して決めたと理解して下さい。僕一存ではないですから、無理矢理ではありません。
彼女は振り返って・・・戸田さんでしたね?戸田さんの様子を見ることはできない。
ただ、店に入った時に体が当たったでしょ?その時の印象が良かったと。それと、僕から見える
戸田さんの様子も、僕達の希望に適う人だと思ったからです」
「よく分からない判断だね?」


[71] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/03/20 (水) 14:59 ID:FRqlMzaw No.190494



「えぇ、インスピレーション・・・彼女がそう言ったのと、僕もそう感じるものが、何がどう
とかはハッキリ分からないのですが、兎に角、お願いしても大丈夫だろうと思ったのです。
これは僕の推測ですが、3Pとか乱交も経験されている、そう感じるものがあるんです。
間違っていたら・・・」
「人を見る目はそれなりの経験を踏まないと養われないでしょ?今話したことは、彼女の受け売り
だと思えるが、違うかな?」
「・・・すみません、年齢は隠すことは出来ないですね。彼女の体験は僕の想像を遥かに超えて
います。ですから、彼女の判断に大きな間違いはないと。それで戸田さんに・・・」
「はははっ、軽く接触しただけでそう判断できるとは、それこそ想像を超えているでしょ?
そんな軽はずみな意思決定など、小さくない判断ミスに繋がりますよ」
「そうですが・・・少し違うかもしれないのですが、彼女はキャリアウーマンで、来年には
取締役に、決まった訳ではないのですが、確かな判断力がないとそう評価はされないでしょ?」
「それはそうだね。先程の僕を説得する時の話術には感服したよ。そういうことなら、酸いも
甘いも数多くの経験を積んでいると思えるね」
「どうですか?彼女の判断は?」
「はははっ、それなりに言い当ててると返答しますよ。それにしても、まだ若いと見受けられるが、
取締役とは」
「アラフォーですから、そう若くも・・・」

私達はロビーの対極に位置する壁の傍で話しているのですが、壁を背に私ですから、いずみが
近付いて来るのは、タクマさんには見えていません。

「・・・誰なの?若くないアラフォーって?」

タクマさんの左腕に右手を添えながら、覗き込みます。

「あれ?聞こえてた?」
「そうよ、地獄耳って知ってる?」
「いずみちゃんのことを話していたから、20代じゃないとそう話そうとしたのに、驚くだろ?」
「うふふっ、悪口ってどうして聞こえるのかしら?ねぇ、タクちゃん?」
「イヤだな、戸田さんに笑われるだろ?」
「はははっ、仲良しだね?それが・・・まぁ、それは後で聞こうかな?」


腕を組んだ二人と一緒に、部屋に移動します。
エレベーターに乗っても、私が傍に居ることを忘れたのかと思う程、小さくない接触を繰り返し
ます。

「・・・戸田さんが・・・チュッ!・・・ダメでしょ?」
「はははっ、もう始まってるのかい?」
「観られると興奮する二人なのね?」

それにしても、カーディガンが体に張り付いているのは、不自然です。
ノースリーブのブラウスの上に着るとなると、フロントボタンを全て留める事など考えられません。
いずみが理解していない筈はありませんから、左手に持っている小さなレジ袋が、その答えを
教えてくれそうです。


このホテルの上層階は、一クラス上の料金設定です。
ですから、私の出張費用で賄える金額ではありません。

部屋に入ると、ベッドの正面には比較的大きな窓が設置されていて、夜景が一望できます。
窓に接するように、ソファーベンチとその前に小さ目のラウンドテーブルが、セットされています。
ソファーベンチと壁との小さな隙間に、これも小型のTVが設置されています。
ベッドから観るには余りにも小さ過ぎるのは、ソファーベンチに座って観る設定なのでしょう。


[72] Re: 絆のあとさき 4  :2024/03/22 (金) 22:14 ID:XeTSY7W. No.190547
小田さん、こんばんは。
私の頭では理解でいないことが多くあります。
この話の続きで判明するのであれば、スルーしてください。
じっと待っている読者の皆さんに申し訳がありません。

タクマさんが、「キャリアウーマンのこと、更に来年、取締役になる事」
も知っていたのは、木下さんからの情報でしょう。
また、「彼女の体験は僕の想像を遥かに超えています。」
個人情報を何故教えたのでしょうか?(約束?違反ではないでしょうか。)
どこまで木下さんから聞いているのでしょうか?
その他にも木下さんからいずみさんのことで相談されているのかも知れませんね。
イタリアンレストランのユカさん、マスターは木下さんと繋がっています。
来年度、再度上京するのにタクマさんも絡んでいるのでしょうか。

何か、揚さんよりもこれからのいずみさんとのことを続けたくて仕方が無い
木下さんの言動のように感じます。(私の戯れの妄想ですが。)


[73] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/03/23 (土) 12:22 ID:kyJyjI0c No.190560


シンさん、コメントをありがとうございます。

先日は時間が取れなくて満足な返答もできず、申し訳ありませんでした。
といって、今回も同じように舌足らずの返答になるかもしれません。

前にも書いたのですが、多忙な日々に追われているのが現状です。
ですから、今後も多くの言葉でお返事は出来ないかもしれません。

さて、疑問に思われている件ですが、
”今後の展開を読んで頂きたい”と言いたいところなのですが、少し開示?しますね。

タクマさんが彼女の情報を知っている理由ですが、これについては私の憶測です。
彼女の性事情を説明する必要性からだと思います。
仕事については、楊社長との関係性を強調する意味合いだろうと思いますし、
楊社長から木下さんに指示があったと思っています。

木下さんの思惑は来年に引き継がれていくのですが、今回の投稿は年末までと
決めていますから、それには言及はしません。
ただ、誠実に約束は実行したとだけ付け加えておきます。
申し訳ないのですが、妄想?で我慢して下さい。

タクマさんの今後については、彼の要望で私と二人だけで会う機会があります。
今投稿している展開の後になりますから、そう多くの時間はかからないと思います。

”多くの出来事はない”と先に書きましたが、小さくて目立たない事例は多々あります。
ピックアップしてどのように展開の中に落とし込むのか、判断に苦しむことは少なくありません。
そうなると時間との兼ね合いになりますから、スルーしてしまうことにもなります。

満足なお返事ではないかもしれませんが、健康のためには”腹八分目”とか言うでしょ?
続けて、”医者いらず”とも言いますから、”妄想”もそこそこに元気な毎日を過ごして
下さい。

まぁ、妄想は命の泉(いずみ)かも?ですね。
蛇足ですが、ひらがな表記の”いずみ”は名前です(汗)


[74] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/03/23 (土) 15:23 ID:kyJyjI0c No.190565


続きです。





「戸田さんはソファーでいいですね?」

互いの腰に腕を廻して密着しているのですが、二人の身長差は優に20cmはありそうですから、
いずみの身長から判断すれば、タクマさんは180cmはあってもおかしくはありません。
部屋に来るまでにも、タクマさんの体格には圧倒されそうでしたが、柔らかな表情と丁寧な
話し方など、第一印象と大きく乖離していないのですから、見掛けよりは安心感があります。

「えぇ・・・変則的なベッドの配置だが、ベッドから夜景を楽しむ設定なの?」
「そうでしょ?テレビはベッドの正面ってありふれてるもの。愛し合う二人なら、綺麗な夜景に
包まれて・・・その方がロマンチックでしょ?」
「はははっ、濁しましたね?」
「分かります?」

愉快な掛け合いは、慣れたものです。
加えて、柔らかな会話には、緊張を和らげるエッセンスが含まれていると、いずみも理解して
いる筈です。

「いずみちゃん、余り時間がないから・・・」
「ほんとだ!・・・じゃ、どうする?」
「時間がないのなら早く始めないとダメだろ?で、何時までなの?」

分っていて聞くのですから、いずみに目線がいってしまいます。
ところが、全く表情に変化はありません。

タクマさんがいずみに代わって、

「遅くとも10時50分には・・・今夜も?」

タクマさんに返答せずに、私に返してきます。
分かり切ったことには反応しないいずみの気質が現れています。

「お願いしたのに時間が短くて、戸田さんにはご迷惑?・・・あれ?お楽しみかな?短くて
すみません、うふっ」
「はははっ、余裕だね?」
「うふふっ・・・濁したところは、”セックス”・・・”セックスプレイ”ではないの。
本気で愛し合うところを観て下さい」

本気なのかフェイントなのか、不確かな物言いには何かが隠されていると思えるのです。
セックスプレイとは思っていないタクマさんへの恭順なのか、いずみ自身に言い聞かせているのか、
いずみの真意を推し量ることもできません。


ソファーに腰を下ろした私に、ポロシャツを脱ぎながら、

「一つだけいいですか?」
「ナニかな?」
「興奮しても参加はNGでお願いします」
「タクちゃんね、言ったでしょ?そんな人じゃないって。私の眼力に間違いはないの、分かった?」
「流石だね。そう言われたら参加もできないね。じゃ、かぶりつきは?」
「同じでしょ?息がかかる位置って参加と同じよ・・・」

カーディガンのボタンを外しながら、ラウンドテーブル越しに上半身を屈めて、顔を近付けて
来ます。


[75] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/03/23 (土) 18:35 ID:kyJyjI0c No.190573



「・・・ねぇ、そうでしょ?」
「この距離?」
「そうよ・・・ここまでならOKかな?・・・」

胸元を見せるために近づいて来たことは明白です。
カーディガンのボタンを全て外して、レースであしらわれたブラを見せます。
ノースリーブのブラウスにそれとなく言及するのかと思いきや、その素振りも見せません。
ただ、小さく呟く様に、

「・・・ワイン・・・」

飲めないワイン?口を付けるだけ、その時に・・・そう考えれば、自ずと答えは分かってきます。

「ここまでとは?ブラの下は?はははっ」
「これからでしょ?・・・タクちゃん!脱がせてくれないの?」

ウインクして、直ぐに振り返りタクマさんに抱き付きます。
いつもと同じ光景なのかもしれませんが、いずみが主導しているとアピールしているのかも
しれません。

鍛えられた体を誇示するように抱き締めた彼の腕は、マッチョマンと呼べるほどの筋肉で覆われて
いると言えそうです。
いずみの背中に廻した腕が、ブラのホックを外しながら、彼の首に腕を巻き付けたいずみと激しく
キスを交わします。
既に始まっているのでしょう。
私には見慣れた情景ですが、二人にとっては、快楽への階段へと踏み出す合図のキスなのかも
しれません。

窓を背にソファーベンチに座っている私とは、ラウンドテーブルを挟んで2m程しか離れていません。
ダブルベッドとの広くはない空間で抱き合う二人には、何故か好感が持てます。
特に推測もしていなかったタクマさんですが、相性が良いと言ったいずみの言葉が思い出され、
いずみの真意が分かったように思います。


スカートを脱がされたいずみは、タクマさんの厚い胸から下腹部へと唇を這わしていきます。
私が好まない行為ですから、いずみは何を思っているのか聞きたくなります。
タクマさんは既にビキニパンツ姿ですから、いずみのTバックと合わさって、臨戦態勢の様相です。

下腹部に辿り着いたいずみは、彼の顔を見上げてから、パンツをそっと下ろしていきます。
既にマックス迄膨張しているペニスが、ピンと反り返ってお腹まで届きそうです。
脱がしたパンツはそのまま床に置き、キュッと締まった睾丸にそっと唇を添えて、ペニスを握り
ます。

以前に、いずみから聞いていたのですが、フェラは不要な行為と言えるほど、完璧な勃起です。
ところが、それはセックスへの扉を開く最初の行為の位置付けでしょうから、不要であろうと
なかろうと、通過儀礼なのかとそれとなく納得させられます。

抱き付いてキスした時は後ろ姿だったいずみですが、唇を這わし始めると体をゆっくり廻して、
横顔が観れるようにします。
当然、タクマさんもそれに合わすのですが、いずみの演出なのは間違いありません。
見せて興奮する前提ですから、そのような展開は想定済みです。

数分も咥えなかったペニスを大事そうに右手で持って、そっと立ち上がります。
タクマさんはペニスからいずみの手を放し、首に巻き付けさせてキスの後直ぐに、少し屈んで
右手でいずみの両脚を持って抱き起します。
”お姫様抱っこ”なのでしょうが、年齢差を考えるとかなり無理があると言わざる負えません。
それでも、笑顔を絶やさず、左手も彼の首に巻き付けて体を預けるいずみは、お姫様になり切って
いるのかもしれません。
その時、もし恥じらいを見せていたのなら、私がそれ以上に恥ずかしい思いをしただろうと、
今振り返っても笑いが込み上げてきます。


[76] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/03/24 (日) 12:06 ID:w0nkkFsM No.190602



タクマさんが、すぐ傍のベッドに移動しようとしたその時、彼の首に巻き付けていた左手を
放したいずみは、

「戸田さん、30分になったら声を掛けて下さいね」

先程よりも少し丁寧な言葉は、”必ず”との願いが込められている様に感じます。
それは、行為中では時間の観念が飛ぶことがあると示唆している様に思えるのです。
過去数回の性行為の時は、タイマーでも用意したのかと、ふと頭に浮かびます。

「その時に止められるのかい?」
「頑張りま〜す、うふふっ」

二つの意味を持たせる発言だなと、いずみの心情に寄り添えば、理解出来そうです。
セックスとそれの停止を頑張ると意思を示したようですが、相反する行為には難しさが見え隠れ
します。
敢えて私に依頼することで、性行為の事実を追認させる狙いがあるのかもしれません。
私を共犯者として認識させたいとの思いもあるようです。

射精もなく終了宣言も難しいだろうと、オトコの性に寄り添った思いが頭をもたげます。
それなら、事前に知らせるのが観客の優しさだと思えるのです。

少し大きな声で、

「あれだよ、終了5分前に声を掛けるからね。5分もあれば大丈夫だろ?」

一瞬、時間が止まったように、二人共理解出来ないような表情を見せるのですが、

「・・・そういうことね?タクちゃん、分かった?」
「それまでに・・・その時だよ。いずみちゃん次第かな?」
「戸田さん、そういうことだから・・・ねぇ、は・や・く・・・」


ベッドに寝かされたいずみは、タクマさんの首に両腕を巻き付けて、先程よりも激しくキスを
交わします。唾液がもたらす湿った音が激しさを物語っているのですが、私からはその様子を
観ることは出来ません。
目線の先には、大きく開いたいずみの脚の間に、膝を付いたタクマさんが乗っている構図です。
何度も観た前戯から性交に入って行く過程の図式のようです。
私も含めて、多くの男女の性交へのルートなのは間違いないと思います。
それが同じだとしても、浮世絵の交接図を彷彿させるタクマさんのペニスには、少なからず畏怖を
感じます。
太さも長さも、以前にいずみが体験したビッグサイズとさして変わらないと思うのですが、
勃起力は並のペニスとは比べることもできないと思います。
推測でしかないのですが、硬さも未経験の域に達していると思えるのです。

性行為の相性と相まって、性格の面でもその相性に触れていたことに気付かなかったのは、
小さくない悔悟を感じます。
いずみが好きになるのには、それ相応の理由があることを思い出します。
性行為で満たされても、好きになる理由にならないと、何度も聞かされていたのですから、
タクマさんへの気持ちも理解できます。
いずみの心も体も満たしてくれるのなら、私にとって必要悪だとしても、タクマさんをセフレ
として迎えることの意義は、小さくないと認めざる負えません。
いずみはそれを示唆してはいないのですが、感じるものがあったと言えば、そうかもしれません。
少なくとも、今年末までは楊社長の指示ですから、タクマさんとの契約?そういったものがあれば
ですが、その終了後、年明けの都合の良い日を見計って、いずみとの交際をスタートさせることも
視野に入れておく必要がありそうです。


[77] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/03/24 (日) 17:14 ID:w0nkkFsM No.190613



目の前で繰り広げられる性行為は、いずみと言う名の見知らぬ女性が、性的興奮の真っただ中で、
嬌声とともに体を震わせている。その姿態に、妻のいずみを重ねたくない私がいるのです。
強制的に見せられていると言い聞かせても、事実を変えることは出来ません。
そうはいっても、非常に冷静に観れるのですから、違和感はあっても忌避したい程でもないのです。
相反する気持ちが交差しながら、体位を変え、続けられる性交を目で追いながら、止めどもなく
発せられる熱情に、胸が熱くなるのを隠すこともできません。

ネトラレではなくこのような設定なら、私自身を満足させられるのかなと、ある仮説を立てます。
それは、よくある設定で俗な言い方かもしれませんが、”自分の女を抱かせて満足する”、
非常に自分勝手な発想なのですが、それなら安心できると思えるのです。
相手の男性は、私に恭順している設定ですから、何ら心配な事態にはならない。そのような妄想は
現実的ではないかもしれませんが、いずみとなら実現への道のりは難しくないと思えるのです。

思いを巡らしながらも、一歩下がって観ることができるのですから、差し詰め、眺めている感覚
です。
少なくとも、凝視ではありません。そうなら、肉の交わりにのめり込み、何も思い浮かばない状態
でしょうから、やはり冷静さは失われていないと熱くなった胸を撫で下ろします。
感情の高ぶりは、性的な興奮ではありません。タクマさんを受け入れると決めた高揚感で、心が満
たされたからです。
ですから、”性的興奮”を求めるのではありませんから、ネトラレの定義とは乖離していると
思います。

今夜の事は、いずみの発案だったかもしれません。
問い質しても、すんなりとは認めないでしょうが、タクマさんを受け入れると表明すれば、
事の始まりを話すかもしれませんが、”それはあなたでしょ?”と返されることは請け合いです。

タクマさんとの体位は、私とのそれとさして変わらないと話していたいずみの言葉を思い出します。
確かに順序立っていると見られますが、その差は歴然です。
力強く腰を振る姿は、過去の経験からでは語られない程の衝撃だろうと推測できます。
”異次元の衝撃”と表現してもしきれないかもしれません。
それを証明するかのように、強弱をつけた喘ぎ声が、悲鳴とも取れる叫び声に変わった瞬間、
逝ってしまいます。
体を震わせて逝くその様は、いずみではないと表現したくなる程の衝撃です。
逝った後の様子が、今までとは全く違うのです。
小さく大きく打ち寄せる波のように小刻みに震えたかと思いきや、大きく反り返って、また体を
波のように震わせるのです。
その時も、強弱をつけた喘ぎ声を発しているのですが、大きく反り返った瞬間、断末魔と表現して
も決しておかしくない叫び声を上げるのです。
私に話していた様子とは、全く異質だと疑問を呈しても返答できないでしょう。
今夜の情景だけだと言えないことは、明白です。
後でどのように説明するのか、いずみの真意の揺らぎが聞けるかもしれません。

正常位から始まって騎乗位、後背位、最後に正常位に戻して、射精の流れだろうとその様子を
見詰めるのですが、その体位毎に逝き狂うのですから、いずみの体を支えるのは並大抵の力では、
抗することもできない筈です。タクマさんの体力には感服しかありません。

いずみは、その全てにおいて失神している様に見えます。
ダラッとした両腕、力の入らない両脚など、体も支えられないと重力に負けてしまう状態です。
それでも、体位を変えた後直ぐに、高速ピストンの洗礼を受けると、体を震わせて絶叫と共に
反り返って逝くのですから、いずみを支えるタクマさんが強靭な体力の持ち主であっても、
疲れが見えてくると思うのですが、一向に衰える事を知らないマシーンのようです。
感情のないマシーンなら、いずみをここまで逝き狂わせることは出来ないでしょう。
何を置いても、求め合う二人の気持ちが一つにならないと、こうはならないと思えるのです。
性行為の全てにおいて、私がタクマさんより勝るものは何一つないと言えそうです。


[78] Re: 絆のあとさき 4  にせ医者 :2024/03/26 (火) 09:08 ID:ykhe1Z3o No.190679
小田さんへ
こうなることは自明でしたね。
アラフォーからアラフィフ(もっと?)までは長いですね。
タクマさんの執着も一時のものかもしれませんが、子供にオモチャ(失礼)を持たせると、壊れるまで使い倒さないかと心配です。
いずみさんは、僕の想像以上の人だとは思いますが、、、

いつも思っていますが、最後は小田さんのハッピーエンドがのぞみです。


[79] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/03/30 (土) 11:10 ID:GJAcknbc No.190803


にせ医者さん、コメントをありがとうございます。

オモチャは思い付かなかったですね。

オモチャにオモチャにされるシーンを観ていたとは、考えも及ばなかったですね。
視点が変わると、見えてくるものに差異がある事を物語っていますね。

タクマさんの体力に至っては、私の想像し得る限界を遥かに超えています。
あれですね、超人?かもしれません。

シンさんへのお返事でも書きましたが、彼と二人だけで会うことになります。
その時に彼の去就が判明しますから、感想などありましたら、教えて頂ければと思います。

どのような結末がハッピーエンドなのかは、当事者の意識に大きく関わって
くる事象だと思います。
結末が来るのか、曖昧なまま流れていくのか、それが見えてくるまでには、
長い時間が必要かもしれません。


[80] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/03/30 (土) 18:58 ID:GJAcknbc No.190817


続きです。




私が観ていることは分かり切っているのですが、二人だけの世界に没頭していることは、
体位の取り方からでも分かります。
正常位から騎乗位に移る時には、いずみを抱き起して上に乗せなければなりません。
意識もままならないいずみは彼に支えられても、直ぐに倒れそうになります。
タクマさんは体を起こして座位の体勢から突き上げるのですが、いずみを支えるには限界が
来ます。
ふらふらしたいずみの体を、背中に廻した両腕で支えながら、仰向けに寝た彼の上に倒れ込ませ
ます。
私が手を伸ばしても届く距離ではないのですが、正常位では観れなかったいずみの顔がこちらを
見ているのです。
といっても、目を開けている訳ではないのですから、私を意識しているとは到底思えないのです。

いずみの背中に廻した両腕で、体の動きを止めようとしているのですが、反り返って絶叫ですから、
そう長くは続けられません。
いずみを抱き起して挿入したまま後ろに倒します。背中に廻していた両腕を腰に持ち替えて
抱き起こし、また座位に戻り、凄まじい速さで突き上げるのです。
直ぐに反り返って逝くのですが、体を震わせ喘いでいるのですから、意識がないとは思えない
のです。それでも、グタッとしたままなのですから、何とも不思議な情景です。
無意識の意識と話していたいずみの真意はここにあったのかと、不確かであっても、そう理解しな
いと、説明がつかないと思えるのです。

ここまではペニスを膣に挿入したまま体位を変えていたのですが、いずみを後ろにゆっくり倒し、
結合を一旦解きます。
伸ばしていた足から膝を付く体勢に移行したタクマさんは、抱き起しながらクルッと体を廻して
腹這いにします。
いずみは相変わらず全く動こうとはしません。
この部分を切り取れば、眠っていると言っても間違っているとは思えないのですが、失神状態が
続いているとも思えないのです。
体を動かされても全く反応しないのですが、一旦、ペニスを挿入されれば、直ぐに喘ぎ声を
発するのです。
どう説明すればいいのか、困惑の空間に疑問符が飛び交うだけで、そこに入れる言葉が見つかり
ません。

腹這いのいずみの腰に右腕を廻して、腰を浮かせ膝を付かせるのですが、自立できないのですから、
ともすると元に戻りそうになります。
タイミングを見計らって、左手に持ったペニスを一気に挿入するのですが、その情景は後ろに位置
する私からは、丸見えです。
筋肉質の臀部の動きにも、いずみは体を動かそうとしません。
今までのいずみなら、快感を求めて腰を動かしていた筈です。それに反応しないのは、できない
のではなく、エクスタシーが堰を切って溢れるまでは、快感を閉じ込めている様に思えるのです。
体を震わせ嬌声を発しながら、噴出させるその時へと昇華させていく、感極まった時に絶叫と
共に、体が反り返ると推測できるのです。

膝を付かせて後背位で逝き狂ういずみを支えるには、やはり限界があるのでしょう。
ペニスを抜き、腰に廻して倒れ込むのを支えていた両腕を放すと、いずみはベッドに崩れ落ちます。
今までと違って少し手荒な扱いですが、タクマさんの体力に限界が近付いているのかもしれません。
それでもいずみには、何の変化も現れません。
うつ伏せのいずみの右足を持ち上げて、体を横向きにします。
いずみの股の間に両脚を入れてペニスを挿入すると、直ぐに喘ぎ出すのですから、いずみに取って
は最高のペニスなのだと思わずにはいられません。
ゆっくりとそれも深く挿入し、体を前に倒して、右手でいずみの首を起こし引き付けます。
いずみの体がくの字に曲げられます。

くの字に曲げられたいずみの顔に近づき何かつぶやいたと思ったのですが、その状態からそう見え
たのかもしれません。
微かにいずみの声にならない声が聞こえたと思ったのも、それを後押しします。
いずみの頭の傍で役目を待っているピローを手に取り、本来の使い方ではなく、いずみの顔に
被せます。
ピローを右手で押えたまま、助走なく一気にピストンを開始します。
今までとは比べることもできない程の速さですから、いずみをくの字に固定した理由は理解でき
ます。体の震えも反り返りも許さない、快感を体に閉じ込めて解放させない、圧縮された快感を
一気に昇華させ、放出させる時、彼も我慢の限界を乗り越えて射精する、そういう図式だと
理解します。
愛し合うことの意味を、体で表現することに他ならないと言っているようです。


[81] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/03/31 (日) 12:40 ID:rhgaMG7s No.190839



凝視していたのではなく、性行為の流れに目をやっていると、色々と想いが湧き上がってきます。
それが先程の感想なのですが、ふと時間が気になります。
10時30分に声を掛けて欲しいといずみから頼まれているのです。
その5分前にと気を廻した私が申し出たのですから、依頼よりも比重が大きい筈です。
約束は可能な限り守るのが信条と言っている私ですから、夢遊病者のようないずみであっても、
それを信じて性行為に没入しているでしょうから、その重みを感じます。
所要時間内に性行為を終わらせる、そうでなくても約束の時間厳守は私のセオリーですから、
幾度となく腕時計にも目線を落します。

約束の時間に差し掛かった時、松葉崩しを崩したと表現しても二人には響かないかもしれない
体位で、エクタシーへの階段を上っている最中です。
ここで声賭けは信義則に反するかな?と変な拘りが頭をもたげるのですが、約束は約束です。

ピローを被せられたいずみの嬌声は、ほとんど聞こえません。
動くに動けませんから、”うぐぐっ”と、こもった低い響きが聞こえるだけです。
それだけ強く押さえられているようですが、息ができない程でもないようです。
背中が汗で光っているタクマさんに、タイムアップを知らせなければなりません。

「タクマさん?」

二度呼びかけても返事はありません。
立ち上がって、ラウンドテーブルの前に出た時、私の動きを察したのか、時間を気にしていた
のかは、定かではないのですが、兎に角、振り返ったのです。

「時間・・・」

言い掛けた私に、汗だくの笑顔を見せて頷きます。
そのような状況でも、爽やかさを失っていないのですから、疲れを知らないとはこのことだと、
感心の余り、次の言葉を繋げられずに、小さく頷いてソファーに戻ります。
その短い時間の間に、変則?松葉崩しから正常位に移り、ピローはそのままに猛スピードで
腰を振っているのです。
所定時間内へのクライマックスに向かって、ひた走るタクマさんを応援したくなります。
何度逝ったか分からないいずみは、タクマさんの発射を今かと待っていると推測もできない
のですが、無意識の意識なら、そう思っていても的外れではないと思えるのです。

”うお〜っ!”と小さくない雄たけびを上げて発射したのでしょう、”ハァハァ・・・”と
苦しそうな息遣いには、先程の爽やかさは見て取れません。
それでも、ピローをはぎ取っていずみに覆い被さり、途切れる様な息遣いでも、キスを交わす
のですから、彼の体力の凄まじさを見せつけられた思いです。
いずみも自由になった体一杯に喜びを表すように、彼の背中に両腕を廻して、強く抱き締めて
いるようです。
”頑張ったね”、”うん”と囁き合っているのでしょう、推測でもこのようであって欲しいと
思わせる様子がとても微笑ましく、こちらも頬が緩んできます。

ほんの少し言葉を交わして、タクマさんはバスルーム側からベッドを降ります。
何を話したのか聞き取ることはできないのですが、その雰囲気からは淫靡な空気は流れてきません。
”とても”と表現しても誰も異論はないだろうと思えるほど、爽やかな空気感に包まれている
のです。
いずみを抱き起すその一瞬、いずみがこちらを見たように感じます。
それもつかの間、ベッドインの時と同じように、お姫様抱っこでバスルームに消えていきます。
バスルームのドアは閉じられていますから、シャワー音は聞こえても、会話となると何も聞こえ
ません。
私の存在など全く意識しない自然な振る舞いは、二人の息がピッタリ合っていないと不可能で
しょう。
穏やかに広がってくる爽やかな空気の中で、私は空気のような存在だなと、可笑しくなって
きます。


[82] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/03/31 (日) 15:49 ID:rhgaMG7s No.190842



立ち上がり、振り返って窓の外の夜景を眺めます。
このホテルは何度も利用しているのですが、今夜の夜景には特別な意味があるように思える
のです。
まさか二人の性行為を観る羽目になるとは、青天の霹靂どころではないと思っても、正に事実
なのですから、以前から決められていたのかと不思議な気持になります。

腕時計に目をやると、40分を回ろうとしています。
50分に部屋を出るとしたら、直ぐにでも着替えないといけない時間です。
それも計算しての事だろうと思っていると、ドアの開く音と共に、急ぎ足で二人が戻って来ます。
振り返った私の目には、体にバスタオルを巻き付けたいずみ、同じように腰に巻いたタクマさんが、
満面の笑顔で手を繋いでいるのです。

タクマさんが、

「時間がないので・・・少し待って下さい」

いずみは、小さくウインクして、

「ごめんなさい・・・できれば窓の外を・・・」
「あっ?そうだね。気が付かなくて済まないね」

それには返答もありません。
時間厳守は崩すことはできないとタクマさんに言明しているいずみですし、私がいるのですから、
迂闊にその時間を変える事などできない筈です。

少しの時間がとても長く感じられます。
二人は話すこともなく、着替えに集中しているのでしょう。
特に緊迫感は感じないのですが、何となくそうだろうと意識が働きます。

「完了です・・・戸田さん、どうでしたか?」
「タクちゃん、感想を求めるなんて、失礼でしょ?・・・戸田さん、ごめんなさい」
「あっ?いやいや、お役に立てたかな?はははっ」
「えぇ、ほんとにありがとうございました・・・いずみちゃん、これでいいよね?」
「もう!ダメでしょ?まだまだこれからなの、私に免じて許して下さいね」
「はははっ、頼もしいね。金(かね)のわらじどころじゃないね?」
「歳の差?一つどころじゃないってことね?」
「気を悪くしたかな?」
「うふふっ、おかしな人だわ、戸田さんって」
「いずみちゃん、時間が・・・」
「ホントだ!・・・どうしますか?」
「部屋に戻ってもいいんだが、一度外の空気に触れたいかな?」
「分かりますわ、うふっ・・・じゃ、ロビー迄ご一緒します」


下りエレベーター内での様子は、部屋に向かう時とは違って、腰に手を廻すほどの密着感は
ありません。手を繋いで見つめ合いながら、時折、私にも柔らかな視線を送ってきます。
エレベーターの狭い空間に幸せの光が広がってくるようです。
いずみが妻でなければ、こちらまでその光のお裾分けに浸れるのですから、演技とも思えない
自然な振る舞いには、不思議な気持になってきます。
私の軽い気持ちがキッカケですが、自然体の様子を見せるのは、いずみは使命だと思っている
のかもしれませんし、今後の事も含めて私へのアピールなのかもしれません。

一言も話さず笑顔を絶やさない二人の時間も、エレベーターがロビー階に着いた時に、終わりを
告げます。


[83] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/03/31 (日) 17:02 ID:rhgaMG7s No.190846



二人に続いてエレベーターホールに出ます。

「じゃ、僕はここで・・・」
「今夜はお付き合い頂き、ありがとうございました」
「ご丁寧に・・・まぁ、こんなことはそう再々あるものじゃない、いい経験をさせてもらい
ましたよ」
「そう言って頂ければ・・・タクちゃん、お礼を言いなさいよ」
「えっ?・・・いずみちゃんが代弁してくれたので、いいかなって」
「ダメでしょ?・・・すみません。非常識極まるでしょ?それでも・・・これはいいかな?」
「見え見えですね?はははっ」
「うふふっ・・・時間がないので、私達はここで・・・」

繋いでいた手を放して、私の目を見詰めてそっと左手に触れます。
何かの合図かと思ったのですが、そうではなかったようです。


二人を背に、玄関ホールに歩き出した時、

「戸田さん・・・」

タクマさんが駆け寄って来ます。

「ん?・・・まだ何か?」
「話したいことが、時間を取れませんか?」
「いずみさんは?」
「僕だけです。彼女には内緒で・・・」

私の真意とは違った返答です。

「あっ?はははっ、いずみさんはどこに?」
「・・・えっ?あっ?そうですよね。チェックアウトでフロントへ、それを確認して直ぐに。
都合のいい日があれば、できるだけ早くが良いのですが」
「今夜の事で?」
「少しはあるかもしれませんが、関係ないと思って下さい」
「何か不都合なことがあるとか、僕に関係する事なら会うのもやぶさかではないが」
「問題とか、そういうことではないですから、安心して下さい」
「そう言われてもね。まぁ、先程の様子なら怖いお兄さんが出てくることもなさそうだから、
ここはタクマさんを信じることにしますか?」
「出るのならとっくに出てるでしょ?」
「はははっ、分かったよ・・・それじゃ、夜でいいね?再来週の月曜日の夜、ここのロビーで。
時間は午後6時30分に、どうかな?」
「了解です。東京にはよく来られるのですか?」
「まぁ、その時だね?食事しながら話そうか?」
「えぇ、ではその時に・・・捜してるかもしれないな?」
「大事な彼女だろ?」
「ずっとそうだといいんですが。じゃ、その時に」

少し曖昧な返答ですが、気にしないことにします。
いずみとどのような話をしているかは推測もできませんが、少なくとも私の妻ですし、そこは、
それなりの立ち位置を明確にしている筈ですから、”気にしない”と言い切れるのです。


[84] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/04/06 (土) 11:46 ID:9RWvaVJA No.191012



玄関を出て、イタリアンレストランの前を通って、なだらかな坂道を上がっていきます。
いずみが”立ちんぼ”をしていた洋品店の前に差し掛かった時、ふと気になって振り返ります。
目線の先は、午後11時前のこの時間でも、私の居る洋品店の前とは比べることもできない程、
明かりに包まれています。

手を繋いだ男女が歩道に姿を見せます。
身長差、服装などからタクマさんといずみなのは間違いないでしょう。
回りは見えないのか、見ないのか、傍を通る人には全く関心を払うこともなく、抱き合ってキス
を交わしている様に見えます。
繋いだ手をそっと放して、車道を渡るいずみの姿が徐々に影となり、見えなくなります。
その間、一度も振り返らないいずみなのですが、タクマさんは見えなくなるまででしょうか、
見送ってからJRの駅方面へと歩き出します。

私は、上の新館のホテルへの正面玄関ではなく、坂の途中に設けられている、地下一階に通じる
入口の前で折り返し、同じ歩道を下りて行きます。
残暑の季節ですが、夜はかなり凌ぎやすく汗ばむこともありません。

淫靡とは言えない性行為だったとしても、性行為に何ら変わりはありませんから、体に溜まった
その時の空気感を入れ替えるために、少し歩くことにしたのです。
歩き出した時に、いずみのパフォーマンスに気付きます。
別れ際に、私の目を見詰めて左手に触れたいずみの真意は、外の空気に触れたいと話した私への
返答だろうと推測したのです。
11時30分を回れば、タクマさんから着信があるかもしれないと聞いていたのですから、坂を下って
ホテルに着くまでには、いずみの意味するところが分かる筈です、
案の定、イタリアンレストランの前を通過して、ホテルの玄関まで帰って来た時に着信です。


『お散歩はどう?』
『余裕だね。思ったより凌ぎやすいかな?』
『うん・・・観るに堪えなかった?』
『だから言っただろ?凌ぎやすかったと、はははっ』
『良かった!あのね、アトでお部屋に行ってもいい?』
『石黒さんとの時間だからね。約束を守るのが、僕の信条なんだが』
『愛人さんとの時間を少し借りるの。サワちゃんには了解をもらっているから、あなたが良ければ
・・・』
『強制かい?』
『できれば・・・いい?』
『タクマさんから掛かってくるんじゃなかったのか?』
『だからそれまでにあなたの傍に・・・早く行きたいの』
『ん?戻らなかったのか?』
『車道を渡って見えなくなるところまで。そこからタクマさんの姿を確認したの。だから大丈夫よ』
『はははっ、直ぐ傍に居るんだろ?』
『バレた?うふっ』

振り返ると、ホテルの玄関に通じる歩道で、いずみが微笑んでいます。

駆け寄って来るのかと思いきや、レジ袋を持った左手を掲げて、私を呼びます。
5mも離れていませんから、容易いことなのですが、何か企んでいる様です。

近付くと抱き付いてきます。

「あっ?・・・ごめんね?」
「カーディガン?」
「うん・・・タクマさんと・・・でも、脱げないもの・・・あっ?あなたが脱げって言ったら、
”さにあらず”よ、うふっ」

”郷に入れば郷に従え”を地で行っているいずみです。


[85] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/04/06 (土) 18:00 ID:9RWvaVJA No.191020



「はははっ、変わり身の早さは・・・そうだな、さっき観た”逝く速さ”といい勝負じゃないか?」
「ハヤサ?・・・字が違うでしょ?比べられないと思わない?」
「はははっ、面目ない。この分野では勝てそうにないね」
「今は勝ってるでしょ?変わり身の早さって・・・when in Rome,do as the Romans do・・・
違った?」
「攻めるね。僕の心の内が読めるんだから、敵に回したくない・・・はははっ、それはないか?
僕の妻なんだからね」
「そうよ。ナニがあってもあなたの妻、だからあなたのルールに直ぐに馴染めるの。
たとえタクマさんと・・・そうだったけど、あなたの元に帰れば全て過去のことだもの」
「僕はローマ人じゃないが、”郷に入れば郷に従え”は教訓だね」
「諺でしょ?小田に戻れば、戸田じゃなくて・・・そうだもの、うふっ」
「その逆も?」
「なりすましかな?真のいずみではないの。分かるでしょ?」
「そう見えないところがいずみなんだね?はははっ」
「難しいのよ。どちらが私なのか・・・あれ?なりすましだから二面性?」

はぐらかすのも、見え透いた常套手段です。
何度遭遇しても、新鮮さを失っていないのですから、感心すること然りです。

「はははっ、呼び付けた理由を話さないのかい?」
「うん・・・ユーモラスはいいのね?いいんだ!・・・はい、これなの?」

先程のレジ袋を差し出します。

「ブラウスだろ?ワインのシミが付いた、だろ?」
「ワインって示唆したんだもの。それにカーディガンでしょ?あなたなら直ぐに分かると思った
のよ。それよりも、”あり得ない”って指摘されそうで、チョッピリ恥ずかしかったの」
「それを持ち出すのは・・・はは〜ん、これかい?」

照明を落としたウインドウの内側に飾られているノースリーブのブラウスに目をやります。
ホテルには多くの出店がありますが、ホテルの外側から見れるその店は、エントランスへと向かう
歩道に面しています。

「あのね、お洋服に気付いて立ち止まるかなって思っていたのに、寂しいでしょ?」
「なるほどね。欲しいのか?」
「この時期でも飾ってるって売れ残りでしょ?それにRLじゃないもの。クリーニングに出すって
決めていたの。でも、シミ取りの真似事はしないと、薄くなるだけでもいいもの」

私はスーツなのですが、ネクタイは外していました。
仕事では、年中同じ様な服装ですが、いずみと同じブランドではありません。
RLはカジュアル限定と決めています。

歩き出した私の左腕に、そっと右手を廻して、

「お洋服だから・・・直接じゃないから、いいでしょ?」
「先程、別れる時に手に触ったのは?」
「合図だもの。目で訴えたのよ、分かった?」
「不可抗力かい?」
「仕方なかったの。マイルールも時として破らないといけない時ってあるでしょ?
あれ?あなたみたいだわ、うふっ」
「分からなかったね、歩き出すまでは。可能な限り早く掛けてくると思ったが、変り身より
遅くないかい?」
「逝く速さとは?」
「比較もできないだろ?逝き続けるんだから、異次元だろ?宇宙人かと思ったよ、はははっ」
「そうでしょ?タクマさんの超人的な体力は異次元だもの・・・あれ?違うの?わたし?」

何かにつけて、このように話せるのは、いずみだからです。
天然の素質が、ユーモアのセンスを引き出しているのかもしれません。


[86] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/04/07 (日) 12:18 ID:LKPNupfo No.191031



エレベーターに乗っても、腕を組んでいるのですが、

「あなたとなら手を繋ぎたいのに・・・」
「はははっ、二番煎じだろ?」
「そうだけど・・・寂しいんだもの、ほんとだからね」
「無理しなくてもいいよ。先程の温もりが残ってるんだろ?」
「オンナって直ぐに醒めないでしょ?でも、あなたとなのよ、こんなのって不謹慎だわ」
「はははっ、誰だよ、お願いしたのは?」
「そうだけど、本を正せば・・・言えないかな?」
「僕かい?」
「タクマさんは何も知らないのよ。私が誘導したって思ってない?」
「あってもおかしくないだろ?真実は闇の中かい?」
「難しいな?アトでいいでしょ?時間がないもの」
「タクマさんか・・・不安だから、弁明に来たってことかい?」
「それもあるかな?」


部屋に入るなり、

「あなた、お洋服を脱いでもいい?」
「ほてりを冷ます?」
「体はそうだけど、心はあなたと共に、なのよ。信じる?」
「はははっ、これも二番煎じだが、信じたいね」
「タクマさんと接した下着も・・・体はシャワー・・・あっ?もう一度しないと。心は洗う必要も
ないの、何度逝ってもあなたのもの、信じてね?」
「あぁ、そうだね。好きにしたらいいが、時間だろ?」
「あっ?ホントだ!・・・窓側のベッドに坐ってお話しするけど、いいよね?」
「約束したのか?」
「何も・・・でも、戸田さんっていう中年のスキモノさんにセックスシーンを観てもらったでしょ?
きっと掛かってくると思うの・・・でも、いつもかな?うふっ」
「やはりそうじゃないか?暗黙の了解だろ?」
「そうかな?うふふっ・・・まだ掛かって来ないから、裸になるわね?」
「今日は二回目だね、いずみのストリップは。はははっ」

窓の傍の椅子に坐って、見るでもなくいずみに目線を向けるのですが、いずみと認識できない程、
ぼやけているのです。
いずみという名の知り得ない女性と認識したいのかもしれません。

いずみは、脱いだ服と下着、バッグなど、それとレジ袋と私の上着も併せて、クローゼットに
収納します。

弁明のためだけに、石黒さんとの時間を割いたのではないと思うのですが、もしそうなら、
11時30分過ぎに掛かってくるタクマさんとの会話を聴かせたいのだと思えるのです。
話し難いことなど何もないと宣言しても、完璧な説明など不可能に近いでしょう。
それを求めているのではないのですが、いずみ自身が納得できないと思っていたとしたら、
今回は絶好の機会です。
ところが、いずみの真意が何処にあっても、私にはどうでもいいことなのです。
今ここに居るのは、信じられるいずみなのですから、全くもって無駄な時間だと思えてきます。

「あなた、ホテルのパンフレットを取ってくれない?」
「宿泊約款だろ?」
「それ!それ!ごめんね?」


[87] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/04/07 (日) 16:00 ID:LKPNupfo No.191036



素肌にナイトウエアを着たいずみは、ベッドボードにもたれて足を投げ出しています。
その時に必要とする準備をしているのでしょう。
宿泊約款は、ハードカバーに収まっていますが、中身がその役に立つと判断したようです。

「あっ?大変だ〜!」

慌ててベッドを降ります。
クローゼットに納めたショルダーバッグから、携帯を取り出したのでしょう、右手に持って
私に見せます。

「ダメね?まだまだだわ、うふっ」
「だね、はははっ」


ベッドに戻って、先程と同じようにリラックスした様子を演出します。
ナイトテーブルに置いた携帯には目もくれずに、約款の内容を読んでいる様に見えます。

「いずみ、約款を読んでるのか?」
「うふふっ、この時間はお仕事の時間なの。タクマさんは、そう思ってるのね。
ほんとにそうなんだけど、今は偽装でやり過ごさないといけないでしょ?
だからね、作成途中の書類のチェックとか、そうだわ、今夜はこれでいこうかな?うふっ」
「楽しそうじゃないか?」
「嫌味なの?ほんと大変なんだから・・・あれ?これも二面性?」
「はははっ、二面性が多くて大変だね?」
「もう!多面性でしょ?それは今度ね?・・・あなた、ベッドの方に移動してくれない?
スピーカーにするけど、近くの方が良く聞こえるでしょ?」

いずみとの距離は、テーブルを挟んで2m程ですが、椅子をベッド寄りに移動すれば、その距離は
1.5m弱とかなり近くなります。


腕時計は、11時35分を回ったところです。

「何だか緊張するかな?うふっ」

そうは見えないのですが、内心は穏やかではないのかもしれません。
タクマさんとの会話を私に聴かせること、それは一大イベントとは思っていないでしょうし、
以前にも録音した会話を聴かせているのですから、緊張感があるとしても、それ程の事でもないと
思うのですが、性行為を見せた後となると、少なくない不安も感じているのかもしれません。

私が口を開こうとした時、静寂の中で携帯の着信音が響き渡ります。
少し引き締まった顔を私に見せてから、そっと手を伸ばして携帯を取り上げます。

「あなた、ちょこっとイヤらしいお話もすると思うけど、気にしないでしょ?」
「あぁ、良しなに。僕が話題に上るのかな?」
「かな?・・・出るわね?」

ホテルの宿泊約款はベッドに置き、携帯は左手で持ったまま、下腹部の少し上に乗せます。


『大丈夫?』

いずみの第一声は、タクマさんへの気遣いです。


[88] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/04/07 (日) 18:59 ID:LKPNupfo No.191039



『少しかな?いずみちゃんこそ、腰を抜かしていない?』
『一回だったから、もっと抜きたかったでしょ?』
『時間がなかったから。いつもよりも興奮した?』
『どうかな?誰だったっけ?お名前を聞いたのに・・・』

何度も口にしていたのですから、忘れているとは思えないのですが、特に意識していなかったと
強調したいようです。

『忘れてもいいと思うよ。仮みたいに言ってただろ?』
『そうね・・・タクちゃんは?』
『初めてだろ?戸惑ったけど、いずみちゃんの一言でスムーズにできたかな?』
『じゃ、興奮したのね?』
『眠っている様に見せるって凄いと思ったよ。それだけで興奮するとは思わなかった』
『それ?・・・ほら、お名前がないと話せないでしょ?覚えていないの?』
『そうか・・・戸田さんだよ』
『そうだったかな?・・・その戸田さんに観られてじゃないの?興奮したのは』
『それもあるかな?いずみちゃんだからだと思うけど』
『ほんと?ねぇ、戸田さんってどう思う?』
『どうって・・・中年ってイヤらしいけど、優しそうって言っただろ?』
『私じゃないでしょ?』
『戸田さんで良かったかな?いずみちゃんは美人だから、興奮して参加しないか気になったけど、
思ったよりも紳士だったね』
『私は見る余裕もなかったけど、とても冷静って感じだったわね』
『きっと初めてじゃないと思うな。慣れているように思わなかった?』
『そうかな?そうかも!うふっ』
『はははっ、お気に入りだろ?また頼もうか?』
『無理でしょ?連絡先も分からないのよ。一回限りだから興奮したのよ、そうでしょ?』
『やっぱり!いずみちゃんも興奮したんだ!そうだと思ったよ。いつもとは違っていただろ?』
『タクちゃんね、少し間違っていない?いつもっていつのいつもなの?』
『えっ?・・・いつもは・・・いつもと違うかな?』
『うふふっ、いつも興奮してるもの。だからいつのいつもでもいいの、会えば楽しいのよ、お話も
アレも、でしょ?』
『アレ?おおっ!アレが待ちきれないって、いずみちゃんのアレと話したいってムクムク大きく
なってきたよ』
『扱いてるの?何だかお声が変だと思っていたの、それなの?』
『思い出すだろ?いずみちゃんは?』
『同じよ・・・でも、妄想って好きじゃないの。物理的じゃないと、分かるでしょ?』
『物理的だろ?いずみちゃんにしてもらえないから仕方ないだろ?』
『そうね、タクちゃんだと思えばいいのね?』
『いつものように・・・いいだろ?』
『また、いつもね?・・・いいわよ。でも、私の質問に答えてから、それでいい?』
『蒸し返しなら・・・』
『そうよ。話してくれないなんて寂しいでしょ?』
『もう少し待ってくれないかな?必ず話すから』
『ほんとね?約束よ、いい?』
『僕は準備完了だよ。いずみちゃんは?』
『出してるのね?』
『いずみちゃんの大好きな大きさに近づいてる・・・あれ?もうマックスかな?』
『待ってね?・・・』

顔を上げて、困った表情を見せます。
目線は携帯に注がれていますが、時々私に顔を向けながら話しているのです。
私は何のアクションも見せません。
それは、いずみに任せているからです。

結論を出したのか、携帯を持ってベッドを手で押え脚も動かして、何かの動きを携帯の向こう側に
伝えます。


[89] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/04/13 (土) 11:10 ID:DKB63IC2 No.191187



『・・・パンツを脱いだわよ。触るんでしょ?』
『僕の指と舌が・・・あれ?いずみちゃんも話してくれないと』
『いいわよ・・・ゆっくり・・・そうよ、タクちゃん・・・あっ?待ってくれない?・・・』

私にウインクして、

『・・・大変だわ、娘が起きたみたい。後で掛けるから切るわね?』

返事も聞かずに、切ってしまいます。


「おい!おい!いいのかい?」
「寸止め?私には彼よりも大事なモノがあるって知らさないと。そうでしょ?」

ベッドを降りたいずみは、ナイトウエアを脱いで、

「少し時間が出来たから、シャワーと歯磨きね?ないと思うけど、掛かってきても知らせない
でね?」
「あぁ、そういうことなら。悪党だないずみは?はははっ」
「うふふっ、タクマさんも大事なのよ、ベッドではね。悪いオンナかもしれないけど、
彼も楽しめるんだもの、お互い様でしょ?セフレですもの、うふっ」

納得の返答に、ぐうの音も出ません。


バスルームから聞こえるシャワーの音が、タクマさんとの滓を洗い流し、いずみを再生している
ように聞こえます。

一人取り残された思いなのですが、そう待たずにいずみは抱き付いてくる筈です。
二人の会話から読み取れるのは、イヤらしい中年の私とテレホンセックスが二大テーマのようで
したが、解けない疑問も提示されているのです。
それについては、後で説明があるでしょうが、結論に達していないようですから、何も言及しない
かもしれません。

立ち上がって窓の外に目をやるのですが、先程のダブルベッドの部屋とは、夜景が全く違って
見えます。
当然下の階なのですが、見る位置が変わると景色もこれほどまでに変わるのかと、少し大袈裟
かもしれませんが、驚愕と表現したくなります。


10分が経過した頃に、いずみが戻って来ます。

「掛かってきた?」

待たせているのですから、気になるのは当然でしょうし、タクマさん以外の他の人でも同じ対応
だと思います。

「イヤ・・・いずみ、来てみないか?」
「良かったわ・・・ナニか見えるの?」

体に巻き付けたバスタオルが落ちないように、胸元を押さえています。
私の腰に手を廻して、窓の外を見るのですが、

「どこ?何が見えるの?」
「見えるだろ?見えないのは心が汚れているからじゃないか?はははっ」
「えっ?・・・あっ?そういうことね?私にも見えるからまだ大丈夫?」


[90] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/04/13 (土) 16:47 ID:DKB63IC2 No.191192



私達が窓に映っているのに、気付いたようです。

「こうして映るんだから、悪女じゃない証明みたいだね?」
「そうよ、嘘も方便でしょ?大事な人と一緒なのに、映らないなんてあり得ないでしょ?うふっ」
「タクマさんも大事だろ?」
「大事違いよ。彼となら映るのは私だけ、そうじゃない?セフレはそれだけの関係だもの。
肉欲と愛情は同じテーブルには載せれないの」
「好きでもかい?」
「うん・・・好きよ、ほんとに好きなの。でも、愛してるんじゃないもの。
話したことはないけど、彼も分っていると思うし、それ以上踏み込んでこないと思うの。
そういう関係なの、私達って。求め合う気持ちに嘘はないのよ、でもそれだけ。信じてくれる
でしょ?」

私の目を見詰めるいずみの腰に手を廻して、キスを交わします。

「バスタオルが邪魔だって怒ってるわ、いい?」

私の返事など気にならないという風に床に落として、首に両手を廻してきます。

「丸見えだぞ。カーテンを閉めろよ」

窓を覗き込む様に立っていたいずみですから、抱き寄せた時に背中が窓側になったのです。

「うん・・・」

レースカーテンと内側の遮光カーテンも開けていたのですから、近くても離れていても、
同じ高さのビルからなら、見えるかもしれません。

振り返って、カーテンを閉めます。

「・・・見て欲しいのはあなただけだもの。他の人は・・・それぞれ理由があるでしょ?
タクマさんは少し違うけど、健康維持に必要かな?うふっ」
「はははっ、潤いと癒しだろ?」
「そうかな?うふっ。あっ?いけない!彼の精神衛生に良くないわ。潤いも癒しも封印するわね?
それにしても、待たせ過ぎたかな?」
「そうだね。いずみの手腕を見せてもらうよ、はははっ」
「あなたね・・・お静かに、いい?」

先程のポジションに戻って、携帯を操作します。
タクマさんは待っていたのですから、直ぐに出ます。


『遅いなぁ。掛けようかと思っていたんだぞ』
『ごめんね?なかなか寝てくれなくて。タクちゃんの事が気になるから、急ぎ過ぎたのね。
やっとよ、ホントにごめんね』

何かにつけて”ダシ”なるものを持っているのは、かなりの強みと言えます。
その強みは、相手の弱みにもなるのですから、使い方一つで、思惑通りに進めることも不可能では
ありません。
言うまでもなく、いずみはひろ子を”ダシ”に使っているのです。

『それなら・・・続けるだろ?』
『まだ元気なの?嘘でしょ?』
『超人タクマを知らないのか?はははっ』
『信じられないわ、うふっ・・・ねぇ、もうとっくに醒めてしまったの。ごめんなさい』

語尾は、さも恐縮したようにフェードアウトさせます。
タクマさんは、一瞬言葉が出てきません。


[91] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/04/13 (土) 22:02 ID:DKB63IC2 No.191204



『・・・ほんとに?そうだろうとは思ったんだけど。いいよ、次まで溜めておくかな?』
『ほんとにごめんなさい。頑張ってくれたタクちゃんには申し訳なくて』
『もういいって・・・さっきね、戸田さんのこと、気にしていただろ?』
『いいのね?・・・戸田さん?何だった?』
『戸田さんの名前を聞いただろ?だから何かなって』

タクマさんの優しさなのでしょう、いずみのへりくだった様子から、先程の懸念に言及したのだと
思われます。
加えて、私に話しがあると言ったことにも関係があるのかと、邪推してしまいます。

考える素振りなのでしょう、直ぐに返答しません。
纏まったのか、私に顔を向けてウインクします。

『・・・気になるっていうか、あのね、オーナーのレストランに入った時ね、ほんと驚いたのよ』
『それ?話しただろ?今は無理だって』
『違うの。タクちゃんを見た瞬間よ、ほんとに驚いたのね、だから戸田さんが見えなかったの。
携帯で話しながらだったでしょ?戸田さんの肩に当たったのに、満足な謝罪もできなかったのよ。
それだけビックリしたって分かるでしょ?』
『驚愕?それとも驚天動地?』
『難しい熟語を知ってるのね?もしかしたら・・・』
『有名大卒?はははっ、話していて分からないのなら、節穴だろ?』
『やっぱり!そうじゃないかと思っていたの。タクちゃんのヘアースタイルが変わり過ぎだもの。
疑問から確信に変わったかな?だから・・・後日ね?それまでは封印しておくから、必ず教え
てね?』
『激変だろ?思うことがあって・・・いつかのいつかかな?』
『曖昧なのね?・・・ねぇ、長くなってしまったから、今夜はここまでにしたいかな?』
『いずみちゃんは忙しいから。今からも?』
『そうよ・・・聞こえる?』

傍に置いていたホテルの約款を取り上げ、ハードカバーを開いて、約款を記した用紙を携帯の
近くでパラパラとめくります。

『プレゼン用なの?』
『あるプロジェクトの計画書・・・分からないわね?』
『僕も・・・はははっ、分かる筈もないだろ?』
『そうね・・・じゃ、いいいわね?』
『いつ会えるかな?』
『いつかのいつかね?うふっ・・・一ヶ月後かしら?木下さんとの兼ね合いね?』
『そうだな・・・じゃ、連絡を待ってるよ』
『おやすみなさい・・・大好きよ、うふっ』
『同じく・・・はははっ、おやすみ』


爽やかに締めくくります。
セフレとしての資質は十分に備わっていると判断できることに加えて、粘着質な気質でもない
ことは、いずみにとっては有難いことです。
タクマさんの出自は、ある程度の推測は出来ていますが、私に話しがあるとは、皆目見当も付き
ません。

いずみの表情からは、余韻が残っている様が読み取れます。
ベッドでの後遺症ではない事は、一目瞭然です。

上手く纏められた安堵感か、ホッとした表情でベッドを降り、抱き付いてきます。


[92] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/04/14 (日) 11:13 ID:J9iEAGI6 No.191214



「上手く纏めたね」
「うん、いつもと少し違うかな?アレ?またいつもって、うふっ」
「はははっ、完璧な再現は不可能だろ?いつもの?はははっ、雰囲気が見れればそれでいいよ」
「あなたまで。いつもはいつもじゃないのよ、話していたでしょ?聞こえなかった?」
「僕達にはいつもはいつでもいつも、分かるね?」
「うん、愛してるわ」

いずみは私の膝の上に乗って、両腕を首に巻き付けているのです。

「いずみね、タクマさんじゃないからね?」
「えっ?・・・あっ?ごめんね?重い?」
「比較はしたくないが、超人タクマじゃどうあがいても敵わないからね、はははっ」
「うふふっ、そのお話しは・・・あっ?忘れてたわ。大変だ〜!サワちゃんに叱られるわ」

言葉とは裏腹に、急いでいる様には見えません。
私の頬にソフトに唇を付けてから膝から降りたいずみは、もう一つの椅子を私の右傍に移動させ
ます。

「これでいいわ・・・サワちゃんに掛けてもいいでしょ?」
「交代の連絡?遅くなったのかい?」
「少しかな?」

全く気にしていない様に見えるのは、いずみを熟知している私だからかもしれません。


『いずみさん、遅いじゃないですか?』
『ごめんね?でも、まだ12時にはなっていないわよ』
『”11時を回るかも?”って。それを信じていたのに』
『だから謝ってるでしょ?ハッキリと約束したんじゃないでしょ?』
『そうですけど・・・いつもと同じかなって。時間には厳しいいずみさんって思っていたのに、
見方が変わりそうです』
『あのね、いつもはいつも一緒じゃないのよ。いつもそうなるように努力してても、いつもそう
なるとは限らないの。いつもとはそいうものなの、分かる?』

先程の”いつも”が独り歩きしているようです。
いずみ本人も制御できなくなっている様に見えても、押し切る強い気持ちが感じられます。
石黒さんにすれば、返答の機会を探すにも、その隙も見付けられない様に感じます。

『いつもはもういいです。何時になるんですか?』
『うふふっ、怒った?』
『体がいくつあっても足らないって言うでしょ?真剣に受け止めていませんから、怒る理由も
ないでしょ?』
『お利口さんね?それがサワちゃんだものね?・・・そうね、もう少し主人と話したいから、
遅くとも1時までには、ダメかしら?』
『小田さんの声を聞かせてくれたら、いいかな?』

以前にも同じパターンがあったことを思い出します。

『待ってね?・・・』


「あなた、出てくれない?」

携帯を差し出して、”チュッ!”と頬に唇を触れさせます。
”上手く纏めてね?”と示唆しているようです。


[93] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/04/14 (日) 15:16 ID:J9iEAGI6 No.191216



『いずみが無理なお願いをしたようで申し訳ないね。後で叱っておくから』
『これってスピーカーでしょ?』
『分かっていたんだろ?』
『いつものいつもはいつもなんですね?』
『はははっ、ご明察だよ。石黒さんには隠し事などできないね』
『でしょ?いずみさんって今夜の事を詳しく教えてくれないの。小田さんとタクマさんを
遭遇させるだけ、どういう設定なのかもナニも。それなのに小田さんとの大事な時間を割かれた
のに、いつものいつもって訳の分からない言い訳なんだもの。酷いと思いませんか?』
『いずみも分っていないんだよ。成り行きで仕方なく、そう思ってくれないか?』
『勢いですね?それならありがちなことだわ・・・いずみさん!素直になりましょうね?』

携帯をいずみに渡します。

『反省してるから、そんなに責めないでよ。今夜の事は必ず話すから、もういいでしょ?』
『うふふっ、小田さんと話せたから、今夜はいずみさんに譲ります。明日の朝まで仲良くして
下さいね』
『えっ?いいの?一か月先まで会えないのよ』
『待つのも楽しいモノなんでしょ?・・・小田さん!待たせて下さいね?』

携帯を私に渡そうとして、

「おかしいわ、スピーカーにしてるのに」

顔を寄せあった二人の前のテーブルに置きます。

『いずみに聞いたのかい?自信はないが、頑張るとしておこうか?はははっ』
『いずみさんってボキャブラリーが豊富でしょ?教えられる事ばかり、尊敬しているんです
・・・聞こえます?』
『言わないでね?お鼻が高くなるでしょ?うふふっ』
『はい、今度はオッパイって言えるようになればいいですね?うふふっ』
『もう!寄ってたかって・・・あれ?あなたは言わないから、失言でした。でも、嬉しいわ、
譲ってくれたこと。何かお返ししないといけないわね』

私が割って入ります。
タクマさんと約束した日なら、その後で石黒さんと会うことは可能です。

『再来週の月曜日はこちらに来ているからね、夜の少し遅い時間に。どうかな?』
『えっ?ほんとに?・・・』
『ほんとですか?』

二人ほぼ同時に驚きの声です。

『・・・あなた、出張なの?』
『嬉しいです。何時でも待っています・・・いずみさん、特に予定はないですね?』
『分かったわ・・・その日はサワちゃん用に空けておくから。それでいいでしょ?』
『はい、お願いします。嬉しいな!』
『はははっ、纏まったようだから、僕とはその時に。いずみとは仲良くしてくれるね?』
『はい・・・いずみさん、仲良しでしょ?』
『そうね、これからも宜しくね?・・・じゃ、明日は7時前に帰るから。いいわね?』
『はい、小田さんと仲良くして下さい。おやすみなさい』
『そうね、おやすみ』


[94] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/04/14 (日) 19:17 ID:J9iEAGI6 No.191219



私の顔を覗き込んで、

「仲良く?今夜は無理って言えないもの。説明するには時間が必要でしょ?私達の時間が
割かれるもの。あれ?サワちゃんの時間を割いたのに、少し説明すれば良かったかな?」

その気もないのは、丸分りです。

「まぁ、驚いた時間だったが、時間が経つと何事もなかったように思えてくるよ」
「それって自然体ってこと?」
「タクマさんと?」
「違うの?」
「いずみかな?」
「わたし?・・・いつもと変わらない姿態を見せたかったのよ。でも、変更したから、いつもの
いつもじゃなかったの」
「そうか・・・後で聞こうか?」
「あっ?ごめんなさい。シャワーでしょ?」

私は何も話さず、立ち上がります。
私の様子が気になるのでしょう、直ぐにドレスシャツのボタンに手を掛けてきます。

「気付くのが遅くなって、ほんとにごめんなさい。怒ってないでしょ?」
「怒る?それはないよ。それ以前の問題かな?終わったことには拘らないとしても、何かの
サインは欲しかったね」
「あなたの様子は見えないし、合図もできない状況で話しだけが進んでしまって」
「後で聞こうか?納得させるのは得意だろ?はははっ」
「得意?そんなんじゃないの。いつものようにありのままに、いつもと変わらず・・・あれ?
うふふっ、空気を変えようかなって」
「はははっ、いずみ節に追加するか?」
「まぁ!久し振りだわ。懐かしい響きね、うふっ」


体を洗ってもらいながらも、心なしかいつもよりも丁寧に感じるのは、いずみが気を遣っていると
思ったからですが、本人は至って冷静に見えるのです。
そう感じるのは、私が気を廻し過ぎなのかもしれません。
それもいずみなのですから、ベッドでの弁明まで気付かない振りを通します。


「ねぇ、ベッドは?」

いずみは先程のナイトウエアを、私も同じようにナイトウエアを着ます。
考えようでは、いずみはピロートーク、私は差し詰めベッドトークかと、可笑しくなってきます。

「ん?聞く?」
「えっ?そうよね、聞くまでもないわ。ごめんね?」

先程、いずみがタクマさんと携帯で話したベッドではなく、バスルーム側のベッドに並んで座り
ます。

「あれ?脚の長さってあまり変わらないと思わない?」

本題に入る前の緊張緩和を狙ったようですが、タクマさんとの性行為を観られた後では、臆する
ものがあるのでしょう。

「ん?・・・狙いは分かるけどね、フェイントは必要ないだろ?」
「はい、指摘されるって分かるのよ。でも・・・とっかかりが難しくて・・・チュッ!うふふっ
・・・これでいいわ」
「はははっ、いずみらしく話してくれないか?」


[95] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/04/21 (日) 13:40 ID:x8bomWrk No.191376



「うん・・・レストランで話したことでしょ?観られて興奮する事ね?・・・あっ?その前に
ブラウスをワインで汚したことを話すわね」
「それか・・・ウエイトレスの女性、名前を聞いたが・・・まぁ、それはいいとしても、
前に聞いたように上手く隠すね。いずみの腕が時折見えたけど、ブラウスを脱いでいるとは
思えなかったし、カーディガンも着るんだから、何だかマジックを見ているようだったね」
「アレでしょ?直視できないものね。時々なら断続的でしょ?現実と推測のどちらが勝るか?
妄想ってそういうことでしょ?」
「なるほどね。ここでもいずみマジックかい?」
「ほんとだ!そう言えば良かったかな?うふっ」
「タクマさんがこちらを見ているから、顔を上げるタイミングが難しかったね。
そもそもワインの理由だが、飲めないのにと思うだろ?」
「あのね、タクマさんが再会を祝ってって、それで。飲めないのは知っているのよ。
それでもって、仕方なかったの、口を付けるだけならって。でも、見えなかったかもしれないけど、
腕を絡まして飲むの、何て言うの?」
「クロス呑みかな?経験がないから間違っているかもしれないが、友情の証とか言うらしいよ」
「腕を交差するから、そう言うのね?タクマさんは再会の祝福とか言ってたけど、ワインに
口を付けたのはいいのよ、直ぐにキスしてくるんだもの。”えっ?”って思った時にはワインが
ブラウスに。少しだけだったけど、シミになるでしょ?でね、カーディガンを着ることになったの。
カーディガンの着方って変だと思ったでしょ?」
「まぁ、あり得ないね。分かる人にはセンスがないと思われるだろうけど、ブラウスを脱いだと
なると、選択肢はそれしかないものね、はははっ」
「笑わないでね?あなた以外の人って鈍感なのかな?特に変な目で見られなかったわよ」
「見て見ぬ振りだろうね?それはいいから、続けろよ」

恥ずかしいという風に、抱き付いてきます。

「ねぇ、もっとくっついてもいい?」
「今もかなりだろ?乗っかるのかい?」
「それは・・・あっ?タクマさんを想起したでしょ?」
「彼とはそうしてるのかい?」
「いつもじゃないのよ。その時によるけど、してるかな?」

正直も考えものですが、嘘も方便は使って欲しくない状況ですから、納得するしかないようです。

「全て話すのは難しいとか言ってただろ?乗っかるのは思い出したからなのか?」
「うん・・・ほんと難しいでしょ?隠すとかじゃなくても、全てなんて無理って分かるもの。
だからね、話していて”あれ?”って思い出すことってあるでしょ?今のはそうなの。
あのね、乗っかるって繋がったまま・・・挿入したままでお話しするの。
セックスしてるのにしていないような、そんな状態なの」
「やはりだね。彼の体力、チン力かな?侮れないね、はははっ」
「あなたね、笑うところじゃないでしょ?ほんとは話したくないでしょ?だって、あなたに悪い
ことしてるって思ってしまうんだもの。それでもお話しする私っておかしいと思わない?」
「僕が容認しているからだろ?そう理解しているのなら今更だろ?」
「あなたは聞きたくないのは分かっているのよ。でも、話すのが私の義務なんだもの。
セフレとは所詮セフレなの。あなたとは次元が違うんだもの」
「だから話す?それでいいんだよ。僕が仮に聞き流したとしても、いずみは誠意を示したことに
なるからね。大いに発言してくれたまえ、はははっ」
「開き直ってるの?そうなの?」
「何も・・・無の境地だよ。いずみに任せているんだから、いずみの責任で行動すればいい。
間違ったことにはならないと信じているからね」
「うん、”絶対に絶対はない”ってあなたは言うでしょ?でも、声を大にして言えるもの。
”問題になるような事は絶対にない”って、何度でも言えるもの。
あれ?聞き流しって無視されてるってこと?うふっ」
「その方が好都合だろ?僕に気を遣わなくて済むからね」
「そうだとしても、セックスの詳細は話したくないかな?それなら今夜のように観られる方が
いいかな?あなたを意識せずに話すのってほんとに難しいもの。あっ?でも、独り言だと思えば
いいのね?あなたは傍に居るのに居ないと思えば・・・できるかな?できる限り事実を事実として
話すように努力するから・・・でも、聞き流す事ってできるの?」


[96] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/04/21 (日) 19:59 ID:x8bomWrk No.191386



「まぁ、その時だよ。任せると言っても僕が関与できる余地は欲しいかな?」
「うん、何でも言ってね?あなたのいずみだもの。指示とか注意事項があればそれに従うの、
それが私の誠意だもの。愛してるのはあなただけだもの」
「僕が言いたいのは、分かっていることは事前に知らせる、事後連絡なら可能な限り早く、
判断に困った時は即断しない、僕に相談してから決める、そういうことだよ。
今言ったことは一例だが、理解出来るだろ?」
「うん・・・あのね、性行為は?」
「タクマさんと楽しく過ごせるのなら、特に口出しはしないよ。セフレの範囲で最大限に
楽しめばいいからね?」
「うん・・・でも、独り言は聞いてくれるでしょ?あなたに話さないって自分を欺いている
みたいで、気持ち悪いんだもの」
「思い出せればだろ?そうだろ?」
「あれ?疑ってるの?・・・でもね、睦言って二人だけの世界でしょ?それを話すのって
勇気がいるかな?話したくないってことじゃなくて、ちょこっと恥ずかしいかなって。
分かるでしょ?」
「はははっ、お任せだよ・・・ん?恥ずかしいことを話してるのか?」
「だって・・・話すとバカにされるみたいな、あの時って愛を語るって感じなんだもの。
でも、将来とかそんなお話はしないわよ。二人で見る夢、見たい夢かな?」
「ピロートークは愛情を高めるとか言うだろ?」
「うん・・・高揚感の後で訪れる安らぎって、何にも代えがたいものなのね。それに浸かって、
あれ?ピロートークじゃないの。乗っかりトーク、ライディングトークかしら?」
「だから睦言か、なるほどね。ピローを使う時間もない程?はははっ・・・ん?乗っかりトークは
分かるけどね、ライディングトークはいずみ製かい?」
「だって、時間厳守だもの。これも絶対に譲れないでしょ?鋼鉄の心はここでも健在なんだから。
あのね、ライディングトークは思い付きなの。”get on top of him"かな?あれなの、馬に乗る
って感じなのね。だから、”riding a horse"でしょ?”どうして馬なの?”って聞かないの?」
「言わせたいのか?」
「あれ?失言?・・・気分は如何?うふっ」
「僕の比じゃないのは分かっているからね。そこから導き出せるのは?」
「わたし?・・・暴れ馬かな?そう思ったから。意味はいいでしょ?」
「遠慮しなくていいんだよ。現実を観たばかりだから、間違ってるとはとても言えないからね」
「うん・・・乗りこなせないのは分かるでしょ?一時の安息がライディングトークね、ほんの少し
なの。直ぐに暴れ出すのよ、時間厳守だから。お終いかな?」
「はははっ、短く纏めたね?・・・じゃ、鑑賞会へのアプローチを聞かせてくれないか?」

考えているのか、思い出そうとしているのか、少しのタイムラグの後、

「最初って何処からって分からないでしょ?話していてふと思い付くことってあるでしょ?」
「何かマズいことでも?」
「何も・・・何もないから、入りどころが難しいのね。そうだ!あなたの肩に当たったでしょ?
そこからだったかな?」
「何処からでもいいから進めろよ」
「うん・・・ワインでブラウスが汚れて着替えた後でね、私が驚いて当たった男性、あなたね、
その男性の事が気になるって。あっ?驚いたのはね、タクマさんと話していたの覚えてる?
何を話してるのか分からなかったでしょ?」
「説明があるだろうとは思っていたが、その理由は後日なんだろ?」
「ホントに驚いたのよ。だからあなたに・・・これはいいんだわ、ごめんね?タクマさんの
ヘアスタイルの変わりようなの。言葉を失うって言うでしょ?”えっ?”って言ったかも覚えて
いないのよ。その時にあなたの肩に当たったの」

いずみの中ではほとんど消化されていると思えるのですが、説明の難しさに直面しているようです。


[97] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/04/27 (土) 12:50 ID:U8u3oWpA No.191483



「僕の肩に当たったのが発端かい?」
「タクマさんはどう思ったのかは分らないのよ。あなたに当たっていなくても、同じだったかも
しれないわ」
「まぁ、それはいいとして、ヘアスタイルの激変を聞こうか?」
「あなたの言うように、ほんと激変なの。前はね、肩まであったのよ。それがあれでしょ?
驚愕としか表現できないと思わない?」
「はははっ、同意を求められてもね。まぁ、思うことがあってだろ?答えは分かっているのに、
しつこく聞くんだから、いずみも人が悪いね」
「木下さんから聞いていなければ、でしょ?」
「確信がないとはいないだろ?」
「うん・・・でも、本人の口から聞きたいでしょ?堅いというか、あれ?アレじゃないのよ、
お口だから。”分かってる”って、いずみの独り言でした」
「練習してるのか?はははっ」
「だって〜、本番・・・あれ?まただわ、本番違いだから。はい、そこから離れます、うふっ」
「何かあったのか?楽しくて仕方ないと聞こえるけどね」
「あなたね、私が安らげるのはあなただけなのよ。そこから見えてくるものがあるでしょ?」
「僕と一緒だから?」
「それしかないでしょ?あなたと話せる時間って多くはないもの。アレね、すれ違い夫婦って私達
の事を言うんじゃない?」
「元を正せば・・・続けるかい?」
「私でしょ?潤いと癒し・・・私が言うって真実味がないかもしれないけど、ほんと過酷な毎日
なの。だから、それが必要になるのね。でも、年末までだもの。来年からは私の思い通りに
進められるから、不要とまでは言えないかもしれないけど、必要とも言えないそんな環境になると
思うわ」
「はははっ、否定しないのがいいね。いずみの隠された欲望は理解しているつもりだからね。
セフレが必要なら話してくれていいからね。タクマさんなら進んでとは言えないが、認めない訳
にはいかないだろ?はははっ」
「うん・・・そうなるかもしれないし、他の人になるかも。でも、セフレはあなた次第、ダメなら
その時にハッキリ言ってね?あなたの指示に従うから」
「後で恨まれないか、それが心配だね、はははっ」
「うふふっ、その時はあなたが待たせてくれるんでしょ?私にはそれが最高の悦びだもの」
「話しただろ?その途中だと。石黒さんが試金石だろうね」
「話しておくわ、”しっかりさせてね”って、うふふっ」
「はははっ、情けない話になってきたから、戻そうか?」
「うん・・・だからね、お父さんの会社に入るって言えばいいのに、もったいぶってるでしょ?
あれかな、それを話すとなると、お父さんとの軋轢を話さないといけないって思ってるのかも?
でも、”何時か”って言ってたでしょ?それまでに話せる内容を整理しておくとか、でっち上げた
お話で取り繕うのか、その内容でタクマさんの私への気持ちが見えてくるかもしれないわね」
「見えない方がいいかもしれないよ。信じたい気持ちは分かるが、所詮セフレだと理解しておか
ないと、見たい景色じゃなかった時に、後悔が大きくなるからね。いいかい?」
「うん、線引きは大丈夫よ。どちらでも動揺はしない鋼鉄の心の持ち主なんだもの」
「はははっ、頼もしいね。ヘアスタイルの件は分かったとしようか?」
「タクマさんの返答待ちね?きっと希望のお仕事に就くのよ、それがお父さんの会社じゃなくても。
その理解で正しいかな?」
「待つのは得意だろ?その時まで忘れようか?」
「はい・・・じゃ、あなたに鑑賞を頼んだ経緯だけど・・・タクマさんね、さっきも話したけど、
あなたの事が気になるみたいで、チラチラ見ていたの。向き合ってるから目線って分かるでしょ?
”どうしたの?”って聞いたら、急によ、”彼に観てもらおうか?”って、切り出してきたの。
そんなお話しはしていなかったのよ。というか、カーディガンを着て直ぐだったから、何を言って
るのか分からなくて、”観てもらう?ナニを?”って言った後に性行為の事だって分ったの。
でね、”興奮したいから?”って聞いたらね、”いずみちゃんを見せたい、彼なら大丈夫だと思う”
なの。訳分かんないでしょ?でもね、私はいい機会だって思ったの。あなたの要望なんだもの、
否定なんてできないけど、そうだからって”喜んで”って言えないでしょ?
どうお返事したらいいのか、口籠ってしまったわ」


[98] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/04/27 (土) 20:08 ID:U8u3oWpA No.191487



「タクマさんから?いずみが示唆したのかと・・・それはないか、いずみから言える筈もないね」
「そうでしょ?そこは抑えて・・・うすうす気付いていたと思うけど・・・えっ?淫乱ね、
口にしたくないけど。性行為を見せたいって露出趣味があるのか気になるでしょ?
ホモじゃないって認定したのに、今度は露出プレイなんだもの。”変態の仲間なの?”って
聞きたくなったわ」
「聞かなかったんだろ?」
「聞けないもの。セフレの関係でも変態はイヤかな?性行為を楽しむ関係でも、変態って引いて
しまうもの」
「その手の趣味があるようには見えなかったね。純粋にいずみを見せたかった、それだけじゃ
ないか?」
「私もそう思ったから、渋々OKのお返事をしたの。実際は”喜んで”かな?でも、あなた以外の
人なら絶対にOKしないわよ。見た目で人は判断できないでしょ?」
「だね。”中年はイヤらしい”と言っておきながら、了承とはこれ如何にだね?」
「ホント矛盾してるって思ったけど、タクマさんはそんなの関係ないって感じなの。
私が思うことよ、見せるその行為自体に興奮する、そういう性癖じゃないかって思ったの。
あのね、観る人は誰でもいいの。観る人が昂奮すればもっと興奮できる、そういう性癖、何て言う
んだったかな?・・・性的倒錯、これね?」
「いずみも観られて興奮する性癖の持ち主だろ?タクマさんはそこまで気付いていなかったよう
だね」
「危ないかな?会う回数が多くなるとそれとなく分かってくるかもしれないから、気を付けるわね」
「普通のセフレを全うして欲しいね。普通だよ、普通だからね?」
「もう!私の暗部を見せなさいって言ってるのと同じでしょ?アレ?恥部の方が良かった?うふっ」
「はははっ、暗部でも恥部でもいいが、深入りはさせないように、いいね?」
「うん・・・そういう経緯かな?気になる事とかない?」
「いずみだろ?気にしてるのは。まぁ、僕もだが・・・話せよ」
「行為中の私の状態でしょ?」
「それしかないだろ?打合せしたのは分かるけど、その理由を知りたいね」
「元ネタは木下さんなの。あのね、次の4Pは睡眠導入剤を使いたいって、休憩の時にお話しが。
るみさんは経験があるみたいで、すんなりOKするんだもの、ほんと困ったのよ。
M.Tの調教が蘇ってくるの、あり得ないプレイだもの。絶対に受け入れられないと思ったのに、
直ぐに断れなくて、あやふやなお返事でやり過ごしたの。
でも、木下さんだけなら断り易いでしょ?お隣のお部屋に入って直ぐに抱き付いてキスしたのね。
これって効果は大きいのよ、積極的に性的な行為を仕掛けられると、ついOKしてしまうものなの。
木下さんって気遣いが半端じゃないから、”るみさんだけにしようか?”って。
私も捨てたものじゃないでしょ?」
「悪いオンナだね、いずみは。まぁ、正解だよ、悪夢が蘇ってこないとは言えないからね」
「うふふっ、それでね、私は経験がないって話していたから、”練習しようか?面白そうだろ?”
なの。木下さんに断わりを入れたことは話さなかったのね。言えないでしょ?抜け駆けみたいで。
一ヶ月後には分かることだからいいかなって。タクマさんはそんなの知らないんだもの。
私が前向きになれるように後押ししてくれたんじゃないかな?。”面白そうだろ?”は本心じゃ
ないと思うの、私を気遣ってのことだと。そう思いたいのかも?」
「仲良しだね?それはいいとして、寝たフリの感想は?」
「思っていたより楽チンだったわよ。全て受け身でしょ?フェラもテコキも何もしなくていいんだ
もの。タクマさんはほんと大変だったと思うわ。並の体力では成し得ないお仕事って感じだもの」
「誰にでもできる行為じゃない、僕には到底できない相談だよ」
「あなたに相談したかったのに?うふふっ・・・大事なあなただもの、無理は言えないわ」
「タクマさんに相談してくれないか?何なら僕からお願いしようか?はははっ」
「しないくせに!あなたってほんと能天気なんだもの。そこがいいところかな?」
「はははっ、庇ってくれるとは、持つべきものは妻だね」
「それを言うのなら、”妻”じゃなく“友”でしょ?・・・そうか?!友であり妻である、
そういうことね?」
「まぁ、いつまでもそうあって欲しいね」
「頑張ろうね?愛してるわ、うふっ」


[99] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/04/28 (日) 15:18 ID:oCUlTrYE No.191498



特に気になる程でもないのですが、推測通りか確認したくなります。

「気にするほどの事でもないんだが、僕が店を出るまでは声を掛けないと決めていたのかい?」
「どうだろ?私は振り返れないでしょ?あなたの様子はタクマさんがウオッチしていたから、
タイミングを計っていたんじゃないかな?」
「今だから言えるんだが、まさかだろ?いずみの設定通り二人の様子が観れたんだから、それで
終了なのに、追加の鑑賞会があるとは驚きを通り過ぎて唖然としたね」
「あなたってオトナだわ、表情が全く変わらないんだもの。タクマさんは”鈍感?”って思った
かもね」
「幾多の困難を乗り越えてきた実績が、顔に出てるんじゃないか?はははっ」
「自慢?・・・うふふっ、あなたらしいわ。ドーンって構られるんだもの、頼もしいの一言ね」
「褒めてるのか?あれだよ、全く繊細じゃない、鈍感極まりないの一言だよ」
「どちらでもいいの。あなたはあなた、それがあなたなの・・・チュッ!」
「これか!男を惑わす悪女いずみは?はははっ」
「木下さんには悪いオンナ、あなたには・・・何て言えばいい?うふっ」
「定義付けは要らない、可愛いオンナであればそれでいいよ」
「うん・・・いつまでもあなたのいずみだから、ご安心あれ!・・・言い過ぎね?」
「忘れないように、はははっ」
「戒めね?」
「だね。タクマさんが店内で声を掛けなかったのは、オーナーには知られたくなかった、そう思う
かい?」
「それしかないでしょ?性癖って親しい人でも知られたくないもの」
「いずみはだろ?」
「同じよ。あなただって知られたくない性事情ってあるでしょ?」
「なるほど、いずみか・・・まぁ、誰にでも付いて回る事情はあるだろうね」
「でしょ?だからお店の外で、店の中から見えないところで、あなたに声を掛けたのよ。
見え過ぎてると思わない?」
「分かり易い性格?」
「そうかな?そうだといいのに。何か隠しているでしょ?それって、見え過ぎじゃないわね」
「いずみは公明正大だろ?」
「あなたには、いつもフルオープン・・・あれ?オープン過ぎ?見え過ぎかな?」
「全て見せないところが奥ゆかしいんだろ?はははっ」
「今まではそういうこともあったかな?」
「今まで?」
「あっ?”立ちんぼ”は深く反省しています。ごめんね?」
「今夜の生々しい事象の経緯と全貌が明らかになったから、そろそろ寝ようか?」
「このままでもいい?お隣はタクマさんとお話ししたベッドだもの」
「いいのか?思い出しながら・・・はははっ、それはないか?」
「ありません!今夜は先に寝ないから、いいでしょ?」
「徹夜じゃないものね。それでも疲れただろ?」
「4Pの時とは違うでしょ?でも、少し疲れたかも?だって、激しかったんだもの、うふっ」
「主人に言う?はははっ」
「うふふっ、愛してるの・・・あなたとなら未来の夢が見れそうよ」

タクマさんと話した夢を思い描いたのか、それとも、その夢とは比べることもできない現実に
即した夢なのか、どちらにしても私との夢は、夢の夢でないことを祈りたいものです。


[100] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/04/28 (日) 22:28 ID:oCUlTrYE No.191501



翌日は土曜日です。
午前中の遅い時間のフライトなのですが、いずみ、ひろ子と同じ飛行機ではなく、意識的に
避けます。
いずみは家族三人揃ってと思っていたのですが、ひろ子にはいつもと変わらない景色を見せる
ために、午後の便を予約したのです。
このことについては、いずみと打ち合わせ済みですが、毎週末よりは少し早いフライトにします。
大阪空港での私の待ち時間を短くするためなのですが、それでも、2時間は長いと感じたのですが、
昼食を含めれば、それ程でもありません。


予定通り、7時前にいずみと一緒に客室を出ます。

「お食事って一人じゃ寂しいでしょ?」

私はホテルのレストランに、いずみはひろ子が待つPPTに帰るのです。

「ん?・・・石黒さんか?」
「譲ってもらったでしょ?お返しは必要だもの」
「それが僕との食事?」
「時間があればお部屋で。ランチはひろ子ちゃんと3人の予定だから、12時には帰して欲しいの」
「朝から?食事はいいが、その気になれないね」
「お腹一杯だから?」
「ん?・・・はははっ、それもあるかな?昨夜は特別なメニューだったからね、未だに満腹だよ」
「食べれない?朝食、それともサワちゃん?・・・うふふっ、愚問ね?」
「正直なところ、満腹もそうだが、少々疲れ気味だよ。できれば散歩でもしたいね」
「いいわね。午前中なら日本庭園もいいんじゃない?」
「石黒さんが了承してくれればだが。余計な入れ知恵をするなよ」


ホテルの玄関までいずみを送って、レストランに向かいます。
相変わらず10数人が列を成しています。
石黒さんが来る迄そう時間もかからないでしょうから、待つのは苦痛になりません。
案内されたテーブルは、料理をピックアップするには、少し離れているのですが、その反面、
客の往来を気にしなくて済みます。

少し待つのですが、一向に石黒さんは現れません。
先にと立ち上がった時に、携帯に着信です。


『ごめんね?待ってるんでしょ?』
『予定変更かい?』
『そうなの。サワちゃんね、今回は遠慮したいって。本人から話させるわね?・・・』
『そうか・・・それなら・・・』
『・・・代わりました、サワです。昨夜はいずみさんに譲ったでしょ?だから、次まで待つことに
します。お声を掛けてもらってほんとに嬉しいの。でも、お食事の後の事を考えたら、次回まで
待つ方がいいかなって。そう思ったので』
『ん?・・・散歩はダメなの?』
『えっ?・・・あれ?いずみさんはお部屋でって。違うんですか?』
『本気だったの?ジョークかと思ったわ。それじゃ・・・サワちゃん、どうする?』
『誰かさんと違って、僕はいつでも真実しか話さないからね』
『そうなの?うふっ・・・それなら大丈夫でしょ?』
『そうですけど・・・今回は・・・予定していたのに、こんなことって・・・ですから、次まで
待ちます』
『お食事の後に散歩なのよ、それならいいでしょ?』
『昨夜は、譲りたくなかったの。いずみさんだからじゃなくて、そうなんですけど、私の事情が
・・・だから・・・』
『ハッキリしないんだね?』
『昔の私に似ていない?言えないのよ、恥ずかしくて・・・そうでしょ?』
『話せない事じゃないの。でも、お食事の時に、タイミングが悪すぎるでしょ?』
『僕の事は気にしなくていいんだよ。石黒さんの気持ちが大事だからね』
『ごめんなさい・・・今回は・・・すみません』
『いいよ、二週間後迄取っておこうか?散歩は気分転換にいいからね?』
『はい、その時まで気持ちを転換させておきます。おかしい表現ですか?』
『はははっ、石黒さんらしいと言っておこうか?じゃ、その時に・・・いずみ、纏まったから
ここまでだね』
『そうね・・・サワちゃんマターだもの。お食事を楽しんでね?』
『あいよ。フライトに遅れるなよ』
『うふふっ、あなたも・・・じゃぁね?』


大阪空港に着いてすぐに食事を済ませます。
その足で、以前るみさんと入ったカフェで時間潰しです。
また会えば三回目になりますから、それはあり得ないと思いながらも、つい辺りを見渡して
しまいます。
結局、いずみとひろ子を出迎えるまでは、るみさんどころか誰にも会わないのですから、
るみさんと二回も会ったのは、奇跡に近いのかもしれません。
それにしても、いずみの実情を報告してくれるるみさんですから、非常に有難い存在だと思える
のです。


その夜は、いずみのマンションに泊まるのですが、タクマさんの事は、何に一つ口にしません。
帰ってくれば全く関係ないと言わんばかりですから、敢えて、私からも触れることもありません。



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 【例】「交際BBS(東・西)で募集している〇〇です」、または「募集板(東・西)の No.****** で募集している〇〇です」など。
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