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絆のあとさき 4

[1] スレッドオーナー: 小田 :2024/01/07 (日) 23:07 ID:LKPNupfo No.188184



先にも書きましたが、昨年後半から投稿ペースが失速しています。
理由は多岐に亘りますから、ここでは取り上げませんが、時間に余裕が出来れば、
引き続き投稿していきます。

終わりのない旅路のような日常ですから、確かな目標を決めて投稿を開始した
のですが、一つの出来事に捉われ過ぎ、展開が非常に遅くなっています。

今投稿している出来事の後に待っている出来事など、多くはありません。
年末に向けて、少し大きな出来事が明るみに出ます。
その前後をどのように書き表すか、悩みは尽きません。

数年来コメントを頂いている皆様、読んで頂いていると思われる読者の皆様、
時間が取れる時としか今は言えませんが、できる限り投稿を続けていきます。

では、今後も読んで頂けることを願って、進めていきたいと思います。


[2] Re: 絆のあとさき 4  修司 :2024/01/08 (月) 01:03 ID:DH6eNXlI No.188190
小田さん

2024年 あけまして おめでとうございます。

仕事はじめ そのあとの連休は・・・ゆっくりお休みされた居るのでしょうか

龍年・・・今年は 運気も上昇 登り龍になると いいですね

ご家族の皆様のご健康を願っています。

これからも・・・投稿をお待ちしています。


[3] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/01/08 (月) 11:06 ID:0zZJuRxw No.188203


修司さん、明けましておめでとうございます。

今年は例年に比して暖かいお正月でした。
ただ、コロナ前以上の忙しさが戻って来たように感じています。

読んで頂いていることに、深く感謝します。
とても長く感じられる過去を振り返っても、昨日の事の様に思い起こされます。
何時頃から読んで頂いていたのかも、思い出せないのですから、
不謹慎極まるとお叱りを受けるかもしれません。
それだけ長くお付き合い頂いていると、自分勝手に喜びを嚙みしめています。

不謹慎が許されるのなら、株の格言で”辰巳天井”というのがあります。
辰年それに続く巳年は、株価が高値を付ける事のようです。
そうであるのなら、株の相場を離れても、今年は運気が上昇すると思いたいですね。

では、今年も拙い文章に終始するかもしれませんが、読んで頂けたらと思います。


[4] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/01/08 (月) 11:10 ID:0zZJuRxw No.188205

文字化けしていますね。

ひらがなに置き換えます。

「自分勝手に喜びをかみしめています。」です。


[5] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/01/08 (月) 14:58 ID:0zZJuRxw No.188215


続きです。




「何処に・・・いずみより入口側かな?」
「そうよ。L字のカウンターって話したでしょ?そのカウンターのコーナーのところで、
入口を見る様に立っていたの。だからね、私の斜め後ろでおトイレへの狭い通路のところなの、
分かるでしょ?」
「二人のリザーブ席を用意したからだとしても、彼女のポジションに変更はなかった、
そうじゃないか?」
「そうだと思うわ。何となく慣れた場所って傍目にも分かるでしょ?だから彼女をどうこう言え
ないのは分かるんだけど、ほんの少しでいいから気配りがあったのなら、彼女の評価は違った
モノになっていたと思うわ」
「嫌い?」
「そうとまでは言えないけど、聞き耳を立てられてると勘繰っても間違っているとは言えない
でしょ?だからね、好きとは言えないかな?」
「それならオーナーもだね?」
「厨房って彼女の後ろのカウンターの奧なのね、さっき話したでしょ?その彼女と話していたと
思っていたのに、聞いていたなんてほんと油断も隙もあったものじゃないわ。
あっ?二人共ね、目線はお店の入口に向けられていたから、彼女の後ろから話しかけていたと
思っていたの。それなのに、二人は、少なくともオーナーは上の空だったってことね」
「そうなるね。オーナーとは・・・」
「ごめんね?抜けていたわ。あのね、初めて会った時、タクマさんとは二回目の時ね、その時に
紹介されたの。一回目の水曜日の帰りに、”次からこのお店で待ち合わせ”って、タクマさんから。
待ち合わせ場所は、さっき話したでしょ?
でね、その時のオーナーの印象は気さくで話しやすい人って、どちらかというと高評価だったの。
さっきね、ソフトなキスをしたでしょ?あれって初めてじゃなかったの。
お店を出る時ね、”ハグしよう”って、とても積極的なのに嫌味もなくて、爽やかな雰囲気が
距離を縮めたと思うの。何も思わずにハグして、”チュッ!”ってソフトにキスしてね、
二人共笑顔でそっと離れたの。そしたらオーナーが、”楽しんで!”って言うのよ。
どういう関係か分かっていないと言えないでしょ?タクマさんから既に聞いていたんだって。
でも、特にイヤだとも思えなくて、”えっ?・・・うふふっ、ありがとう”って、お返事したの。
初めて会ったのに、性行為をする相手でもないのに、とても身近に感じられたの。
不思議な感覚だったわ」
「垣根は低い、かい?」
「でも、それだけのことよ。お部屋の変更とかオーナーがどうとか、そんなの全く関係ないもの。
ホントだからね?」

オーナーとの接触は、蚊が止まったようなものなのでしょう。
彼とのキスも、性的なキスでない限り、挨拶みたいなものと認識している筈です。

「そう理解しておくよ。ところで、SNSの内容は?」
「そうだったわ。オーナーの人となりを話したから、遅くなりました、うふっ。
SNSのこと、立ちんぼの場所とかね、確認するために録音してるから、続きを聴いてくれる?」


[6] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/01/08 (月) 17:19 ID:0zZJuRxw No.188227



『あれ?そうだったかな?いずみちゃんも乗り気だっただろ?』
『お互いじゃない?持ち出したのはタクちゃんなのよ、覚えてる?』
『僕もお歳かな?直ぐに忘れるんだものね。信じる?』
『信じないわよ、うふっ。もういいでしょ?それよりもう一度確認するわね?』
『打合せは済んだのに、まだ何かある?・・・そうか!いずみちゃんが負けたら、即ヤルだろ?』
『その日は時間がないでしょ?直ぐ決まれば私の勝ち、時間がかかれば、もし11時前までなら、
例え私が負けたとしても、そんな時間ってないでしょ?』
『それだよ、時間を決めていなかっただろ?9時過ぎに立って11時前までなら2時間弱だろ?
そんなに長く同じ場所に居られないだろ?長くて30分くらいじゃないか?』
『えっ?短くない?何人来るかも分からないのに、時間で区切るって不公平だし、来る人にも
失礼でしょ?』
『いずみちゃんがどう思っているか分からないけど、何人も来るとは思えないよ。せいぜい5人
までだと思うけど』
『失礼ね・・・あれ?若くないから?』
『今は若い子が多いだろ?比べるなって言っても無理だろ?』
『そうだとしてもよ、私なりの”売り”はあるでしょ?』
『だからね、僕なりに考えて・・・容姿端麗、NGなし、要相談・・・歳をどうしようかって
考えたんだけど、サバ読んで30歳が限度かなって、最後に30歳。場所は洋品店の前、時間は
午後9時過ぎから』
『もっと若く見えない?ダメかしら?』
『ムリ!ムリ!嘘が大嘘になるだろ?』
『仕方ないわね。私って分かるように目印が必要じゃない?』
『あそこで”立ちんぼ”なんて見たこともないから、必要ないだろ?』
『私は必要かな?サングラスはどう?』
『他の人に見られたくないのか・・・いずみちゃんの気持ちは分かるかな?』
『でしょ?声を掛けてきたらサングラスを外して・・・うふふっ、美人のお顔を見てもらうの』
『言うよな・・・あっ?それは名案だよ。ビフォーアフターの衝撃、これだね?』
『あれ?そんなに違う?あれね、美人が超美人に変身、声も出なくて喉を詰まらせながら頷いて、
やっと出せた言葉が、”5万円でも安い”じゃない?』
『脳天気だな、そんなの妄想だろ?僕の勝ちに決まってるよ』
『分からないわよ。水曜日が楽しみね?』
『平行線だろ?それより、決めることがあるだろ?』
『時間のことね?・・・二つ案があるわね。時間と人数、30分は短いと思うのね、時間通りに
来れない人もいるかもしれないでしょ?だから、10時まで。でも、声を掛けてくる男性が途切れ
たら、そうね、10分間としようか?そこで中止。但しね、タクちゃんが言うように、少なくとも
最初の30分は立ちんぼを継続するの。どうかしら?』
『誰も来なくても、30分は立ちんぼ?そこで終了だろ?それなら、部屋に行けるね?』
『そうなればね?・・・あれよ、SNSで故意に時間を変更しないでよ。それが分かったら・・・』
『そんなのある訳ないだろ?やりたくてもやれないのは分かっているだろ?』
『お利口さんね?”ヤリたい”は分からないけど、”ヤレない”は分かるわよ、うふふっ』
『勝敗はまだ決まっていないだろ?それより、もう抜け落ちはないかな?』
『そうね・・・お洋服はどうする?私に任せてくれる?』
『目立つ服装がいいだろ?マイクロミニのワンピースとか、真っ赤なら遠くからでも判るだろ?』
『ズバリそのモノじゃない?それはないかな?・・・あのね、膝上丈のノースリーブのワンピース、
色は白ね、それにサングラスでしょ?目立たない訳がないわよ。それでいいでしょ?』
『まぁそうかな・・・これで打合せはお終いだろ?アト20分はあるから・・・あれ?』
『ダメよ・・・遅くなったわ。10時には終わらせて帰る予定だったのに、何かを決めるって大変、
そうでしょ?』
『僕も大変だ・・・だろ?』
『ダメよ、何度も言わせないの、分かった?・・・ねぇ・・・チュッ!今夜はここまで。
水曜日が楽しみね?』
『分かったよ。服装とサングラスは追加しておくから』
『お願いね?・・・じゃ、証拠の録音はここまで・・・あっ?もうダメだったら・・』


[7] Re: 絆のあとさき 4  てっちゃん :2024/01/10 (水) 01:43 ID:oZP7KzWg No.188253
小田様

今年も宜しくお願いします。
また、新スレッド立ち上げありがとうございます。

だんだんと現在に繋がる道筋が見えてきた様に思えます。

想定されているキリが付くまで、執筆される事は間違いないと思っておりますが、
お仕事も忙しくされている様で、くれぐれも無理はなさらぬ様にお願いします。

こちらは、これからも、楽しみにしつつ、静かに、焦らず、拝読させて頂きます。


[8] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/01/13 (土) 12:03 ID:DKB63IC2 No.188355


てっちゃんさん、コメントをありがとうございます。

最古参と言っても過言ではないですね?
当初の頃からお付き合い頂いているのですから、頭が下がる思いです。

投稿中の出来事は”東京編”と言えるかもしれませんが、その翌年も時を経ず
東京に出向きます。
今回はその年(投稿中)の年末までの投稿予定です。

彼女の性事情も年を追うごとに、沈静化していきます。
その過程も投稿したいとも思うのですが、時間に追われる宮仕えでは如何ともしがたく、
また、エロから離れた投稿はここには馴染まないとも思っています。
加えて、私と会わなかった"空白の3年間"についても、私なりに纏めてみたいとも
思うのですが、全てが時間との競争になりそうです。
その3年間について、てっちゃんさんも含めて他の読者の方達から、簡単に纏めたと
驚きのコメントを頂いた事は、忘れてはいません。
それよりも先に現行の投稿を優先させたのは、時系列を遵守したからなのですが、
会社経営への一歩が始まった経緯を綴りたかったのが本音なのです。
おかしなことをと思われるかもしれませんが、”空白の3年間”は3年が経過するまでは
話さないと彼女が決めていたからに他なりません。
ですから、時系列なのはそうなのですが、彼女の性事情と相まって、会社のあり様を
学べたことは大きな成果だったと思っています。

これからの出来事も纏める時間が取れなくて、四苦八苦しています。
今後も投稿頻度が少なくなるかもしれませんが、てっちゃんさんの”言葉”をお借りして、
「静かに、焦らず」その時を待って頂けたらと思います。

では、今年もお付き合いの程、宜しくお願いします。


[9] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/01/13 (土) 16:33 ID:DKB63IC2 No.188368


続きです。




待ち構えていたように、レコーダーを止めます。

「説明してもいい?」
「レコーダーを取り上げようとした?違うな、ちょっかいを出した?」
「レコーダーを止めようとした時に、オッパイを触ってきたの、ホント子供なんだから」
「真っ暗闇では想像すらできないね、はははっ」
「聞えないことが闇ってこと?そうかもしれないわ。ある意味、百聞は一見に如かず、でしょ?」
「説明がなければ推測するしかないが・・・続きがあるのかい?」
「あると言えばあるかな?おさまりが付かない状態なのね、それは分かったでしょ?
若いからそうなんだって理解できるし、求められるのは嬉しいことでもあるのね。
それを見ていたオーナーがね・・・あっ?状況を話さないと分からないわ。
タクマさんがオッパイに手を伸ばしてきたから、右手でカバーしようとしたの。
打合せだけって決めていたから、線引きはハッキリさせた方がいいのは分かっていたのよ。
でも、打ち合わせも済んで気が緩んでいたと思うの。何度か関係を持っているんだから、抵抗って
おかしいでしょ?口では”ダメ”って言っても避けることってできないもの。
少し触らせたからって落ち着くなんてあり得ないのよ。輪を掛けるって分かってるんだけど、
ホテルに行く時間もないし、タクマさんはどこかの時点で諦めるしかないでしょ?
それでも、タクマさんがもっと先を求めているのは手に取るように分かるの。
これって、私の偽らざる気持ちなのね。
思い巡らした時間ってとても短いのに、あなたに説明すると遥かに長く感じられるわ。
気持ちって秒速だと思わない?」
「確かにそうかもしれないね。説明は第三者に理解してもらうことだろ?思った通りに話せても、
それで理解を得られるとは限らないからね」
「ねぇ、今の説明で理解できた?」
「いずみの気持ちは十分に。ただし、僕用にアレンジしていないかい?」
「う〜ん、少しかな?でもね、難しいのよ、状況の変化に対応するのって。落ち着かない不安定な
気持ちだったのはそうだと思うの。推されたらそちらに向いてしまうって、そんな感じだった
かも?」
「はははっ、イケメンにはあがらえない、それが本音だろ?」
「難しい判断だったのよ、ホントだからね。時間は厳守だもの、一度でも破ったら次もってことに
なるかもしれないでしょ?心を鬼にして、ホントだからね。だから時間との競争だったの」
「分からない説明だね」
「気持ちが先行していたから、それを先に話したかったのかも?自分でもよく分からないのね、
何だか分からない内に、先に進んでしまったみたいな。あれ?分からない渦に飲み込まれてる
みたいだわ。終わったことなのに、何だかフワフワする気持ちが残っているのかもしれないの」
「ますます分からなくなるだろ?オーナーがどうとか話し出してから、いずみの秒速の気持ちに
変質してしまっただろ?」
「うん、曖昧な気持って、きっと後悔が頭から離れないからだと思うの。今から考えても、
フワフワする気持ちを思い出すのは、そうだとしか思えなくて・・・」
「後悔?」
「うん・・・あなたに聞かれたらマズいってことは何もないの。タクマさんとはそういう関係って
分かっているんだもの。私の中の中途半端な気持がくすぶっていて、その気持ちが後悔に結び付い
て抜け切れていないのかも」
「はははっ、回り過ぎるだろ?寄り道どころじゃないね?ハッキリ言えないのかい?」
「お部屋ならいいのに、お店で・・・早く済ませたかったからなんだけど、それでも私の気持ちは
そうじゃないのに、そうだったかもしれないけど、全てそうだったんじゃないの。
ごめんね?昔の纏められない私に戻ったみたいだわ」
「何となく理解出来そうだね。いずみの気持ちは理解したとして、続けてくれないか?」
「あのね、オーナーの事から話すわね。お客さんが、男性4人って話したでしょ?
遅い時間だからコーヒーだけだったみたいで、直ぐに戻って来たの。でも、私達が話しているから
邪魔したらいけないと思ったのか、傍のカウンターにもたれて、聞いていたのね。
彼女も先程のところに戻って、同じように聞いていたようなの。
後で分かったことなんだけど、先程まで居たカップルは、その男性達と入れ替わるようにお店を
出たらしいの。私からは見えないでしょ?」
「入口に背中を見せているのは分かるから、理解出来るけどね。その男性達からは、見えなかった
のかい?」


[10] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/01/13 (土) 19:21 ID:DKB63IC2 No.188373



「そうなの、入口から見て左側の壁とカウンターが交わる隅のテーブルだったの。
これって、オーナーが小声で教えてくれたのね。どうして教えてくれたのか、分からないでしょ?
兎に角、私の直ぐ左斜め後ろに彼女でしょ?だからね、その人達からは見えない位置関係なの」
「要領を得ないとはこのことだろ?よく分からないけど、店に居る人物の位置関係は分かったよ」
「良かった!どう説明したらいいのか、難しいんだもの。
あのね、じゃ、オーナーが傍にいて聞いていたところまで戻すわね。
レコーダーを止めようとした時に、タクマさんがオッパイに手を伸ばしてきたって、話したでしょ?
レコーダーをテーブルに置いたまま、あのね、レコーダーはテーブルに置いて録音していたのね。
オッパイを触らせるにしても、少しの抵抗は必要でしょ?右手で彼の手首を掴んだのね。
それって、ジェスチャーみたいなものなの。二人共目が笑っていたんだもの、”いいね?”、
”いいよ”って、以心伝心かな?だからね、レコーダーのスイッチを切らないままで・・・」
「僕以外にも?それは聞き捨てならないね、はははっ」
「ごめんね?・・・じゃ、あなたほどじゃないけど、目でお話する、に置き換えて下さい。
ほんとにごめんなさい。怒ってる?」
「いいよ。比較は同じ土俵と取れるから、遠く離れたところとしてくれないか?」
「分かりました・・・でね、ここで止めたのはね、この後からシーンが変わり始めるから、
説明が必要かなって」
「それが録音されている?そうなのか?」
「うん、スイッチを切らなかったからだけど、正しくはそのまま放置していたの。オッパイを
触られた、触らせたかな?それに気持ちが向いていたから、すっかり忘れていたの・・・
あのね、ここでオーナーが出てくるの。続けてもいい?」
「やっとだね。待った甲斐があればいいんだが、はははっ」
「うふふっ、あなたって・・・」


『セフレなんだから、受け止めてやらないと可哀想だろ?』
『えっ?・・・そうだけど』
『だろ?オーナーは理解が早いね』
『時間がないんだろ?ここは大人のいずみちゃんを見せてやらないと』
『そうね・・・まだ居るんでしょ?』
『・・・大丈夫だろ?こちらに来ないと見られることはないからね。迷ってると時間がなく
なるよ』
『タクちゃん、テコキでいい?』
『挿れたら直ぐだから、いいだろ?』
『ここでは無理でしょ?スカートじゃないのよ』
『トイレは?』
『そうね・・・オーナーは見張っててくれる?もし来たら使用中ね?』
『使用中?オマンコとトイレの同時使用か、これはいいね』
『イヤらしいんだから・・・タクちゃん、行く?』
『・・・いずみちゃん・・・いずみ・・・』
『・・・うん・・・タク・・・うぐぐっ・・・』
『早く行けよ。何ならここでするか?サポートするぞ、はははっ』


直ぐに止めて、

「お洋服の説明は?」
「パンツ?」
「うん、打合せだけだと思っていたからだけど、もしかしたらって思わないこともなかったのね。
でも、ホテルまでは無理だって思っていたのと、冷房対策も兼ねてパンツにしたの」
「タクマさんの反応は?」
「あなたと同じよ、ご不満顔を隠そうともしないの。オトコって、スカートが好きよね?」
「同じ土俵は・・・」
「あっ?ごめんなさい。ちょっと反省!うふふっ。怒らないでしょ?」
「何度も同じことを指摘する気力も薄れてるから、それなりに注意してくれればいいよ」
「うん・・・ホテルならお洋服なんて関係ないでしょ?それでも、スカートって必須みたいに
思っていない?」


[11] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/01/14 (日) 11:32 ID:J9iEAGI6 No.188393



「はははっ、ソフトタッチ?いずみも?」
「私は・・・キスくらいならって感じかな?オッパイとかは周りの目が気になるでしょ?
だから、なくてもいいかなって。あればあるでいいんだけど、誰にも見られないところなら
って注釈が付くけど」
「レストランだから・・・ん?今までもお触りOKだっただろ?」
「フェイントって話したでしょ?スカートでもパンツでも同じだと思うのに、リクエストは
スカートなの。これって、ステレオタイプじゃない?女性はスカートって」
「返そうか?男性の希望がスカートもステレオタイプだと思ってる?」
「思い込み?そうなの?」
「タクマさんと僕がそうだとしても、ほんの一握りかもしれないだろ?」
「うふふっ、もしかして・・・”握り”に意味がある?」
「はははっ、深く考えないの。意識過剰じゃないか?」
「あなただからだわ。注意散漫だったら突っ込まれるでしょ?・・・あれ?意識過剰かしら?」
「過剰も過剰だろ?それ以上もない過剰だよ」
「ほんとおかしな表現だわ。でもあれね、”握り”と”突っ込む”って。思い出すでしょ?
おトイレでのこと」
「じゃ、続きに行くかい?」
「でもね、レコーダーはテーブルに置いたままだから、おトイレでのことは録音されていないわよ。
私の善処に掛かっていると言うんでしょ?」
「分かっているのなら、しっかりと説明しろよ」
「はい、分かりました・・・あのね、いつもの事なんだけど、録音してからあなたと聴くまでは
一度も聴いていないの。だから、見えないところは見えるようにするから・・・あっ?でも、
レコーダーのスイッチを切ったのは私だから、おトイレに居る時の状況は分からないわ。
オーナーと彼女が何か話しているかも分からないから、あなたじゃないけど、乞うご期待ね?
では、続きです」


擦れるような不確かな音が聞こえて、

『・・・お願いね?』
『あいよ、楽しんで!』

微かに足音が聞こえたように感じるのですが、それは事情を知っているから、そうだろうと推測
できるのでしょう。
ドアの開く音は拾っていなかったのですが、閉まる音はハッキリと聞こえます。

『ユカ、動きはないか?』
『お客さん?・・・酔っぱらいはイヤね?』
『どうなんだ?』
『楽しそうに話してるわよ。こちらには全く関心がないみたい』
『それなら・・・ヤッてるかな?』
『見たいんでしょ?ノックして入れてもらったら?』
『今回はスルーしても、近い内に実現できるだろ?』
『賭けの事?』
『無謀過ぎるな。いくら美人だと言っても歳を考えてみろよ、あり得ないだろ?』
『そうだけど、おとなしそうに見えて、相当なやり手なんでしょ?』
『タクがそう言ってたが・・・ベッドでは変身するとか。それか分かれば妥当な売値設定かも
しれないが、初めてなら分からないだろ?どう転んでも彼女が勝つとは思えないね』
『若く見えるけど、アラフォーなんでしょ?』
『一番エロい年齢だろ?その時まで体力温存だな』
『私はどうなるの?いずみさんを抱くまでは構ってくれないの?』
『ユカも楽しみたいだろ?まずは休みの日だな』
『お休みの日なら、来週じゃない?それなら、私も無駄に使わないように・・・可笑しいわ、
あなたとは無駄ってことかしら?』
『それより、木下社長から連絡はあったのか?』
『まだ、決まらないんでしょ?忙しい人だもの』
『忙しいのにエロ小説だろ?体力なら木下社長には負けてるかもな』

何か物音が聞こえたようです。

『終ったみたい。ドアが開いたわ』

淫靡な空気の揺らぎが、微かな音のように聞こえてきます。


[12] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/01/14 (日) 15:27 ID:J9iEAGI6 No.188403



『おっ!?良かったかい?』
『わたし?・・・そうね、それはタクちゃんじゃない?』
『いずみちゃんもだろ?』
『”タク〜!イク!イク〜!”だろ?』
『残念ね。タクちゃん、逝った時なんて言ったの?』
『えっ?・・・覚えていないけど、”いずみ!イクぞ、イク〜!”だったかな?』
『ねぇ、私じゃないでしょ?』
『上手いね、タクシーを呼ぶところまではいかなかったのか、それは残念だね』
『呼ぶほど急いでいなかったのかも?うふふっ』
『余裕だね?タク、一本取られたな』
『違うでしょ?”抜かれました”でしょ?そうよね、タクちゃん?』
『これだものな、いずみちゃんには勝てないよ』
『でしょ?水曜日も同じことが起こるわよ。楽しみね?』
『負けないって、何度でも言ってやるよ』
『そう?おトイレでは?』
『・・・勝ったとは言えないかも・・・負けてはいないよ。そうだろ?いずみちゃんも逝っ
たって、あれ?嘘なの?』
『見極めは大事よ。じゃ・・・あれ?忘れてたのね?』
『大事な証拠品だろ?水曜日にはガラクタになるかも?』
『オーナーって、タクちゃんの味方なの?』
『ハグしてくれたら、気が変わるかも?』
『時間もないから・・・いい?味方になってね?・・・チュッ!』
『キスのオマケ?これならタクを裏切れるかな?はははっ』
『オーナーは騙されやすいからな。いずみちゃんには甘すぎない?』
『そうよ、乗せられるんだもの。しっかりしなさいよ』
『乗りたいね、いずみタクシーに』
『私が乗るんでしょ?オーナーのタクシーには乗ることはないもの、悪しからず・・・
タクちゃん、帰るわよ』
『じゃ、水曜日だね。いずみちゃんの健闘を祈るよ』
『オーナーは私の味方でしょ?信じてるから。おやすみなさい』


レコーダーを止めながら、

「ここまでね。”おやすみなさい”って言った後に、スイッチを切ったの。
それ迄はテーブルに置いていたのに、誰も気付かないって・・・あれ?私もそうだったから、
オーナーは録音してるって思ってなかったみたいね。貴重な会話が録れたと思わない?」
「いずみの評価?それとも・・・ハグは既知の事実だから、僕への説明が省けるということだね?」
「省略?いいのね?・・・あれでしょ?エロいオンナって決め付けてるでしょ?タクマさんが
話してるって分かっただけでも、成果があったと思わない?」
「話しててもおかしくないだろ?」
「守秘義務違反だと思わない?」
「セラピストとしてならね。そういう意味付けじゃないだろ?」
「セフレ?・・・そうなるのね。そうなら責められないわね」
「話の内容だが、タクマさんとオーナーとの親密度によるね。セラピストとしての責任感もある
だろうから、それ以外の人には、JINさんは兎も角、話していないと思いたいね」
「人柄は合格点だと思うし、セフレの設定でなければ、必要以外の事には関心を持たないと思うの」
「セフレだから?何かあるかい?」
「アレしかないでしょ?うふっ」
「そうなるか・・・そうだからトイレかい?はははっ」
「セフレですもの、うふっ。ほんと我慢できないんだから、他の女性とならどう処理してるのか
聞いてみたいわ」


[13] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/01/14 (日) 18:34 ID:J9iEAGI6 No.188409



「彼女じゃなくて、お客さんとかい?」
「セラピストの枠を超えてるのは私だけかも?そう言ってたから、我儘が出るのね?」
「甘えてる?・・・まぁ、一回り以上の歳の差なんだから、母性を感じていてもおかしくない
だろ?」
「母性と甘えは同じ土俵なの?」
「乳は甘いだろ?オッパイ好きの様に思うからね」
「オッパイに甘えるってこと?母性と母乳の共通は母ね、乳は甘い・・・甘いは乳、乳を出すのは
母、母の乳は甘い、甘えて乳に、オッパイね、吸い付くのね、連続性があるから同じ土俵かも?」
「はははっ、よく思い付くね?タクマさんはほんとにオッパイ好きなのかい?」
「あのね、若い人って少なかったでしょ?中年か初老の人達が多かったから、オッパイに執着する
人っていなかったと思うの。だから、ある意味新鮮なのね、”どうぞ!”って差し出す感じかな?」
「セフレの距離感が見えるようだね、はははっ」
「あなたね、バカにしてるでしょ?」
「感心してるんだよ。いずみがオッパイを触らせてる顔を見たいものだよ。目じりが下がって
エロい顔になってるんだろうね?」
「次の展開を考えて?そうかな?そうかも!うふっ・・・可笑しいわ。タクマさんの事で
こんなにも話せるなんて。あれでしょ?新鮮な感覚が蘇て来るんじゃない?」
「若かりし頃のいずみ?ホント懐かしいね」
「私も若かったのね。あなたを信じて疑わなかったんだもの」
「”今じゃ”って言わないだろうね?」
「今も・・・その時の気持ちとちっとも変わらないわ。これからも信じ続けるもの。
だって、あなたの奥様なんだもの」
「お後がよろしいようで、とは言わないだろうね?はははっ」
「はい、信じられるいずみを体現したいと思います・・・あれ?ナニを話せば?」

恍けてるように見せて、次の一手を考えているのです。
何度も同じ轍を踏んできた私ですから、否が応でも見えてくるものがあります。

「ブラックボックス、言い換えるとね、トイレボックスかな?」
「おかしくない?サニタリーボックスみたいだわ、うふっ」
「そうだね・・・じゃ、何て言えばいいかな?」
「おトイレでいいんじゃない?ボックスに拘り過ぎでしょ?・・・見えない事象だから、ブラック
なのね?」
「だね。ひねり過ぎました、はははっ」
「あのね、ドアを閉めて直ぐに抱き合ってキスしたの。オーナーに煽られたように見せて、少し
激しく。キスしながらお互いのパンツを。彼ね、短パンだったから直ぐにずらすことが出来たのね。
私のは私も協力して・・・キスしながらペニスとオマンコを手で刺激し合ったら、二人共直ぐに
準備完了なの。愛撫しなくてもできる状態なのは分かっているのよ。それでも、刺激し合うことで
より早く興奮を高める必要があるでしょ?時間がないんだもの。
彼もそれは分かっているから、口にしなくても伝わるのね。挿入させたら射精を早められるでょ?
でも、中出しはしたくなかったの。だって、打合せだけって思っていたのに、セックスすることに
なったでしょ?何でも許していたら、これからも彼の希望通りになるって思ってしまうもの。
彼のためにもならないでしょ?」

何処迄が本音なのか知る由もありませんが、私へのアピールに変換させていることは、疑う余地も
ありません。

「僕用にアレンジしていないかい?」
「えっ?ホントのことよ。信じられない?」
「タクマさんのためじゃなく、いずみの気持ちだろ?」
「うん・・・彼じゃなく私のためにならない、そう言いたかったんだけど、主体の変更が難しくて」
「はははっ、いずみ主体で話していいんだよ。話題はいつもいずみ中心なんだからね」
「うふふっ、あなたならではの解釈ね?タクマさんって借りてきた人って感じだわ。
そうでしょ?彼でなくても、誰でも主体を入れ替えて私を話せばいいんだもの」
「だね、そうしないといずみじゃないだろ?」
「でもね、私の一人芝居じゃないでしょ?客体にも血を通わさないといけないでしょ?」
「やさしいね?まぁ、難しい話はさておき、続きを話さないか?」


[14] Re: 絆のあとさき 4  修司 :2024/01/19 (金) 09:46 ID:6C06keGY No.188637
おはようございます。

小田さん

あげておきます 

週末は何やら天気も怪しくなりそうですね 

体調を崩さないように お気をつけてください


[15] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/01/20 (土) 10:42 ID:FRqlMzaw No.188668


修司さん、ご協力をありがとうございます。

下がっていたのですね?
今年になってから新規の投稿が増えたのがその理由でしょうから、
ここは大いに繁盛している証拠でしょうね。

当地は今朝から雨混じりの不安定な天気です。
ただ、気温は思いの他暖かいですから、凌ぎやすい一日になりそうです。

では、引き続き投稿していきます。


[16] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/01/20 (土) 12:26 ID:FRqlMzaw No.188670


続きです。




逸れたのは私が横槍を入れたと言わんばかりに、抱き付いてきます。

「分かった?」
「ん?・・・僕か?」
「でしょ?あなたがいけないのよ。そっと聞き流してくれてもいいのに、ほんとあなたって
・・・あっ?それだけ真剣に聞いてるってことね?」
「いつもと変わらないよ。いいから、話せよ」
「うん・・・ドアのすぐ傍だったでしょ?立ったまま挿入したら、私の背中がドアに当たって、
してるってバレバレでしょ?そのためのおトイレなんだから、分かってもいいんだけど、
何だか恥ずかしいでしょ?それでね、タクマさんに便座カバーに座ってもらって、私は後ろ向きで
挿入したの。それなら、してるって音は・・・私の背中でドアを押すとか叩くとかがないから、
音らしい音は何もしないでしょ?」
「何もしない?」
「えっ?・・・難しいなぁ、してる音がしないに言い直すわね?」
「それはないだろ?」
「ホントよ、直ぐだったから湿った音は何も。感じることは感じたけど、音を発するまでには、
その時までに発射したから」
「タクマさんのためになったのか?」
「違うわ、私のためになったの。中出しは絶対にダメって念押ししたし、その時は知らせるって
約束させたのね。だから、射精の瞬間にはオマンコは立ち合えないかったの。ちょっぴり残念、
嘘よ、うふふっ」
「楽しそうじゃないか?残念は残念じゃなかった?」
「嘘って言ったでしょ?お尻を上げて振り向いた時には、射精していたの。それなのに、右手で
扱きながら、左手で私の腰を抱き寄せて、”もう一度”って笑顔なの」
「はははっ、二回戦の催促?」
「長く居れないもの。心を鬼にして、これも嘘かな?”ダメ!”って強く言ったら、”フェラは?”
でしょ?そうくるとは咄嗟に思ったのよ。でも、これも拒否して、トイレットペーパーで処理して
あげたの。不満そうだったけど、彼のために・・・私のためにならないでしょ?床に落ちた精液も
拭き取ったのよ。十分でしょ?」
「なるほど。トイレの一件はそれでお終いだね?」
「うん・・・賭けの事は全てかな?」
「それなら、今後の対応になるね?」
「さっきも話したけど、月一になると思うのね。私に決定権があるんだけど、全面的に遮断は
難しいの。楊さんの要望は一方的に否定はできないもの」
「無理のないところに落ち着くのは致し方ないが、いずみの意思で楊さんに進言できるんだろ?」
「そうだけど、まだ2ヶ月余りでしょ?私が止めたいって話したら、何かあったのかって根堀り
葉堀り訊かれるのは間違いないもの。そうなったら、話したくないことも話さないといけないで
しょ?」
「流石にトイレはまずいね?はははっ」
「でしょ?ここは穏便に済ませないと。だからね、最初の予定通りに戻すの。
楊さんに賭けの事がバレなかったら、スムーズな日常だって楊さんも安心でしょ?」
「普通に考えたら、とてもそうは思えないね、はははっ」
「非日常の日常じゃない?うふっ」
「だね・・・ところで・・・」
「携帯でしょ?会って直ぐに訊かないんだもの、”いいのかな?”って。それはないでしょ?」
「切ってたんだろ?賭けの事を聞いて、むべなるかなと思ったよ、はははっ」
「うふふっ、相変わらずね?叱られるかなって思ったのよ。あなたってほんと大人だわ」
「情けないことに、僕の妻はそれを知らせないんだからね。ここは怒りの鉄拳をお見舞いしよう
かな?」
「あれ?バズーカじゃなかったの?うふっ」
「言うね、その域に達していない・・・ん?もうないかもしれないよ」
「いいの。あなたならその気持ちがあれば、どのような状態でも嬉しいもの、ほんとよ」
「はははっ、そうしとこうか?・・・ところで、気にならないか?」
「タクマさん?」


[17] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/01/20 (土) 13:34 ID:FRqlMzaw No.188671



「後をつけていただろ?僕がタクマさんなら気になるけどね」
「うん・・・もう直ぐ11時30分でしょ?」
「それが?」
「その時間までは連絡しないって決めているの。だから・・・」
「掛かってくる?そうなのか?」
「きっと・・・いつもじゃないのよ。でも、今夜の事は気にならない筈はないでしょ?」

いずみは話しながら、時間を確認していたようです。
私が持ち出さなければ、いずみから切り出す予定だったと思えるのです。
私に不信感を持たれないためにも、タクマさんからの着信迄には話しておきたかったのでしょう。

「11時30分とは何とも微妙な時間だね?」
「11時前に別れるでしょ?PPT迄何分も掛からないけど、”30分は”って話しているから、連絡
するのなら、11時30分を過ぎた頃って。でも、数分で切るのよ、私が忙しいって理由で。
11時には帰って、サワちゃんにひろ子ちゃんの様子を聞いてから、寝顔を見てホッとするのね。
それって、とても大切な時間なんだもの。誰にも邪魔されたくないでしょ?」
「納得の説明だね・・・30分を過ぎたね。さてと・・・」
「うん・・・そろそろかな?」

やはりと言えばいいのかもしれませんが、いずみの携帯に着信です。
ベッドから降りたいずみは、急ぐ風でもなく、先程のようにクローゼットから携帯を持って来ます。

私の隣に戻るまでに、


『納得した?』

前置きもなくいきなりですから、驚かされます。

『ビックリ!驚かさないでよ』

タクマさんの驚いた声が、スピーカーに設定したことを物語っています。

『つけてきたでしょ?分かってるんだからね』
『信じられないだろ?』
『5万円、それともお食事?』
『両方とも・・・食事の後は?』

不安そうな様子が窺えます。

『天ぷらのお店まで来たでしょ?』
『ほんとか確認しただけだから。睨むなんてあり得ないだろ?』
『暖簾を開けて覗く?不審者丸出しでしょ?』


[18] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/01/20 (土) 16:56 ID:FRqlMzaw No.188678



ペロッと舌を出して、ベッドに戻って来ます。

意図的とは思えないのですが、先程話さなかった事象が見えてくるのですから、この時に追加説明
を考えていたのかもしれません。

私の左腕に右手を廻して、音を立てない様に私の頬に唇を触れさせます。


『あれ?何か聞えたけど、何をしてるの?』
『ベッドよ。前にも話したでしょ?お仕事なのよ、手に持てないからスピーカーにしてるの』
『その音か・・・寂しくて一人エッチ?』
『都合のいいお耳ね、その方がいいの?』
『テレホンセックス?今は無理だよ』
『何言ってるのよ。誰もそんなこと・・・あれ?何処にいるの?』
『オーナーの店、いずみちゃんに睨まれたから、慰めてもらってるんだよ』
『賭けにも負けたんだものね、その気持ちはよく分かるわよ』
『負けは負けだけど、食事の後は?』
『お返事してなかったわね。それだけよ、お店の前で別れたの。知ってるんでしょ?』
『知らないよ。食事が本当だったし、睨まれたからオーナーの店に今まで居たんだよ』
『お利口さんね。じゃ、お食事の後の事を教えてあげるわね』
『やっぱり!そうじゃないかと思っていたよ。どうだった?』
『どうって?・・・そうね、お話がとても楽しくて、ベッドでも楽しめそうって妄想していた
のに、その人が、急遽、帰ることになってね、さっきも話したけど、お店の前で別れたの。
急いでいたから連絡先も交換できなくて、ホント残念だったわ』
『ホントに?嘘って言わないよね?』
『言って欲しいの?・・・残念だけど、そういうことね』
『良かった!・・・それは良かったけど・・・』
『これからの事?私から連絡するから、おとなしく待っててくれる?』
『いいの?断られるかと思っていた、ラッキーだよ。僕のペニスが忘れられないからだろ?』
『バカね、女の口から言わすものじゃないでしょ?』
『まぁ、そうかな・・・いずみちゃんはほんとに優しから大好きだよ』
『ありがとう!お互いでしょ?分かった?私の気持ち』
『僕と同じだって分かったよ』
『だったら、私からの連絡を待つの。いいわね?』
『分かったよ。でも・・・』
『”でも”はないでしょ?分かったのなら、今夜はここまでね?』
『了解です!優しいいずみちゃんに・・・あれ?しないの?』
『頑張ったタクちゃんに・・・チュッ!・・・うふふっ、おやすみなさい』


返事を待たずに切ってしまいます。

「疲れるでしょ?お子ちゃまを納得させるのは大変なのよ」
「普通に話している時はそうだろうけどね」
「見え過ぎる?」
「あぁ、その時々にお互いの立場を入れ替える、仲良しカップルに見えるね」
「あなたの言いたいことって、分かっているのに反論できないの。間違っていると言えればいい
のに、そうならセフレって何なのって思ってしまうでしょ?」
「いいんだよ、いずみに任せているんだから、好きなように楽しめばいいからね」
「私ね、タクマさんの事を話す時ね、あなたの心情を考えて話してるみたいなの。どうしてそう
なのか、よく分からないんだけど、タクマさんとの年齢差が私の気持ちに働いているみたいで、
意識してじゃないのよ、そうじゃないかって、何だか複雑な気持になるの」
「それこそ二面性の現れじゃないか?」


[19] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/01/21 (日) 22:05 ID:x8bomWrk No.188717



「そうかな?そうかもしれないわ。あのね、行為中は年齢差なんて関係ないでしょ?
快楽を求めて貪るって感じなのね。でも、ベッドを離れたら、どうしても年齢差を意識して
しまうの。あなたがさっき普通の時って話したでしょ?今のタクマさんとの会話ね、
これって普通でしょ?普通じゃない時ってベッドの中?そう考えれば、真逆の私が見えてくるの。
これって二面性なのね?」
「だね。推測でしかないが、そう思っても間違ってるとは思えないね」
「推測?・・・私ね、いつも言ってることだけど、あなたには隠し事、今回の場合は特にそう
したくないの。だから・・・そうだわ、私からの提案なんだけど、その二面性をあなたに分って
もらいたいの。どう思う?」
「さっきも言っただろ?いずみに任せるよ」
「うん・・・行為中だけど、いいのね?」
「見せたいのか?」
「そうできればいいんだけど、ハードルが高いでしょ?だからね、今回の様に録音するのは?」
「いずみが納得できる方法でいいからね。手段も設定もいずみが考えて実行するように、
いいかい?」
「うん・・・聞きたくないって言わないでね?」
「全て理解しての上だから、大丈夫だよ」

正直なところ、いずみの意図が分かるようで分からないのです。
いずみには過去の忌まわしい事例が数多くあり、それを理解している私ですから、隠し事はしない
という強い気持ちを前面に出せると思えるのです。
そういう観点からすれば、タクマさんとの性行為の詳細を話すことに大きな抵抗はない、と推測
できるのです。
加えて、過去にも私の前で痴態を披露した事実があるのですから、相手が代っても性行為に大きな
差異があるとは思えないのに、この提案です。
それには、少なくない驚きを感じるのです。
それは、生々しいセックスシーンではなく、その時々に交わす言葉の抑揚から、いずみの心情を
伝えたいのかもしれません。
推測の域を出ないとは言え、タクマさんへの並々ならぬ思い入れがあるように思えるのですが、
それを指摘されることで、必要以上に登り詰めた高揚感にクサビを打ちたい、否、打たなくては
ならない、と考えているようにも思えるのです。
どちらにしても、年齢差からくる日常と非日常のギャップに二面性を感じ取っていることは、
容易に推測できます。
二面性の心の置き所に戸惑っているいずみが、見えてくるようです。

「うん・・・どうなるか分からないけど、あなたに見える様な景色が録れればいいかなって。
あのね、タクマさんのことね、好きって言える以上の気持ちかもしれないの。
きっと彼もそうだと思うのね。確認したんじゃないのよ、それでも、そう思えるのってお互いに
感じるものがあるからだと思うの。でも、あなた以外の人を心から愛することって絶対にないって
・・・あれ?絶対はないんでしょ?そうだとしても、間違ったことにはならないって誓えるの。
それは信じてね?」
「いずみのオンナの部分と母性が葛藤している様にも思えるけど、そこは勘違いしないように、
いいかい?」
「うん・・・その見極めでしょ?今も話したように、会うのは一ヶ月に一回、それ以上は・・・
でも、木下さんに呼ばれたら、それは仕方ないでしょ?だから、会う回数が増えるかもしれないの」
「木下さんとは約束だからね。そうなれば、二人で会うのは延期するとか、方法はあるだろ?」
「ほんとだ!私が決められるんだもの。臨機応変でしょ?」
「だね・・・ところで、録音の中で気になるところはなかったかい?」
「タクマさんとのことなら、録音って関係ないでしょ?・・・えっ?あれのこと?木下さんの
名前が・・・オーナーとユカさんの会話ね?」
「心当たりはあるかい?」
「何にも・・・木下さんと知り合いって初めて知ったわ」
「そうか・・・エロ小説って話していたから、彼女もモデルの約束をしているかも・・・ん?
もしかしたら、いずみと絡ませる予定かもしれないね」
「えっ?・・・そうかもしれないわ。タクマさんとも仲良しみたいだもの」
「オーナーといずみがキスをするんだから、既に仲間に入っていると思われているかもね?」
「うふふっ、フェイントでしょ?軽いジャブみたいなものだもの。タクマさんとオーナーとの
関係を良好に保つためだもの。これって私の役目みたいなものでしょ?」
「セフレだから?」
「そう、ほんとはそう言いたかったんだけど、少し遠慮しました、うふっ。
でもね、気になる事が・・・」

いずみの懸念が私のそれと被さります。


[20] Re: 絆のあとさき 4  にせ医者 :2024/01/23 (火) 11:48 ID:Vds1kf5E No.188761
小田さん、いつも拝見しています。
週明けに見るのが楽しみになっています。

いずみさんとタクマさん(君?)との関係は、今までとは違うような気がしていますが、勘違いでしょうか。
若者は時に一途になり、周りが見えなくなるような事態を引き起こさないことを祈っています。
いずみさんも、過去に年下から慕われたりした(単純にプレーとしての性行為だけではなく)経験が少なければ、
案外深みにハマるんじゃあないかと言う不安もあります。

次から次へといろんなことがあって、ついていけなくなっています。


[21] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/01/27 (土) 16:20 ID:U8u3oWpA No.188885


にせ医者さん、コメントをありがとうございます。

彼女には・・・色々ありましたね。
収束への道は見えていると思っているのですが、いつ何時、何が起こるかも
分かりません。
そうは言っても、年齢の壁は非常に大きなファクターでしょうから、
いつまでも続く道程ではないことは、間違いないでしょう。

タクマさんについては、これからの投稿で意外な?一面が分かってきます。
その時まで待って頂ければ、”驚き”を共有できるかもしれません。
”事実は小説よりも・・・”かもしれませんが、頑張って読み続けて下さい。

では、週明けのお楽しみまで、あと少しお待ち下さい。


[22] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/01/27 (土) 19:15 ID:U8u3oWpA No.188892


続きです。




「モデルの実態だろ?」
「タクマさんは現役でしょ?オーナーは元モデル兼セラピストね。彼女はヌードモデル、
話してなかったわ、ごめんね?タクマさんから聞いていたの。
三人共新旧のモデルでしょ?これって、気になる事があっても不思議じゃないもの。
今のところは何も見えないんだけど、仮によ、賭けに負けてオーナーのマンションに行ったと
したら、考え過ぎかも分からないけど、キメセクも考えられるでしょ?
普通の媚薬ならまだしも、薬物となると大問題だもの」
「同じだね。モデルと言っても薬物に手を出しているとは限らないが、用心することに越した
ことはないからね。ただね、オーナーとその彼女は分からないが、タクマさんは木下さんからの
紹介だからね、少なくとも二人の時に薬物を持ち出すとは考えにくいだろ?もしそうなら、
いずみが阻止することは難しくないだろ?」
「うん・・・二人なら・・・オーナーの素性は分からないから、深みに嵌らない様に注意する
わね?」
「タクマさんの先輩というだけで、安心はできないが、会話からは陽気な人柄のように思えるね」
「うん・・・初対面でも気さくに話せる人って感じだもの。でも、念には念を、でしょ?」
「ん?・・・手を打った?そうなのか?」
「あなたは次の日曜日から出張でしょ?だからね、賭けの事も併せて金曜日の夜に話すつもり
だったの。ほんとだからね」
「後出しかい?」
「そうなるかな?うふっ・・・あのね、マリアさんに調査を依頼したの。
今日のお昼休みに連絡したのね。そしたら、”久し振りだから会わない?”って、
ほんと久し振りなんだもの。それでね、日曜日に私が東京に行くって約束したの。
怒らないでしょ?」
「大事なことだからね。ひろ子は問題ないんだね?」
「うん、明日香ちゃんにお願いしたから、大丈夫よ」
「詳細は日曜日に?」
「概略は話したの。日曜日までに途中経過を報告してくれるって。これって早くない?」
「いずみは遅くない?はははっ」
「えっ?・・・ナニが?」
「調査依頼だよ。オーナーと初めて会った時にハグしたんだろ?その時から懸念はなかったのか?」
「うん・・・さっきも話したけど、セフレの立場でしょ?だから、その時は何も思わなかったの。
でも、賭けの事で月曜日に打合せした時ね、変更するお部屋がオーナーのマンションって分かった
でしょ?これは少し危ないかなって思ったの。でも、その日も火曜日もモヤモヤしてはいたのよ、
でも、大袈裟かなとも思ったの。それでもね、今夜の賭けのことを考えたら負けるかもしれない
って、不安が大きくなってきたのね。それで、お昼休みにマリアさんに連絡したの」
「ギリギリセーフかな?負けていてもオーナーのマンションには、来週とか話していただろ?」
「ほんとだわ。これって怪我の功名ね?うふっ」
「はははっ、それより僕に感謝だろ?」
「うふふっ、ご主人様はいつも私の味方だもの。愛してるわ・・・チュッ!・・・
ねぇ、どうする?」
「これで全てかな?」
「そうだと思うけど・・・まだ気になる事があるの?」
「ないとは言えないが・・・まぁ、月曜日の事もあるからね、全て前向きとはいかないよ」
「うふふっ、相変わらずね?三日ルールに変更はないけど、中出しじゃなかったのよ。
挿入だけでもNGなの?やはりそうよね?」
「だね・・・寝てしまうかもしれないが、綺麗なお口を借りれるかな?」
「もう!あなたのものなのよ。借りるなんて言わないで!寂しくなるでしょ?」
「マリアさんじゃないが、久し振りだからね。言いたいことは分かるだろ?」
「うん、分かり過ぎるくらい。でも、あなたも・・・」
「はははっ、理解しているからね。少し言い過ぎたよ、悪かった」
「ううん、ごめんね?愛してるのはあなただけだもの。他の人の事はその時だけ、それが過ぎ
れば記憶にすら残らないの。見えるのはあなただけ、ほんとだからね?」
「はははっ、もういいよ・・・いいかい?」
「うん・・・あれ?ご立派になってるわ。もっと凛々しくしてあげる、うふっ・・・
あっ?忘れてたわ。この場面で思い出すなんて、チョッピリ恥ずかしいかな?」
「恥ずかしくないんだろ?この場面で思い出す事?ナニかな?」
「あのね、毎日が言葉にできない程忙しいのね。あなたにも話しているでしょ?
朝の時間帯ってもう戦争状態、だからね、ピルを飲み忘れそうになる事もしばしばなの。
まだ大丈夫なんだけど、不安でしょ?それでね、マリアさんに会ったら薬物の事とね、避妊リング
のクリニックを紹介してもらおうと思うの。いいでしょ?」
「大事なことだからね。仮にも孕むことがあったらそれこそ一大事だろ?」
「うん・・・大事が二回って、ほんと大事なことね?うふっ」
「はははっ・・・僕の一物も大事にしてくれないか?」
「うふふっ、優しく・・・ね?」


[23] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/01/28 (日) 14:21 ID:oCUlTrYE No.188921



第二ステージの東京滞在がスタートしたことは、マリアさんも大森会長から連絡を受けていると
推測できます。
正式にはそうでしょうが、それ以前に、石黒さんからいずみに関する情報は逐一届いている
筈ですから、マリアさんが最新の情報を握っていることは、疑う余地もありません。
もしかしたら、私との関係も報告されているかもしれません。

次の日曜日に、いずみから石黒さんの立ち位置を問い質されるとしたら、マリアさんがどのように
返答するのか、興味津々です。
ただ、いずみもバカではありませんから、依頼事項のみに集中し、敢えて、取り上げないかも
しれません。
いくらマリアさんがいずみの味方であったとしても、この時点で、石黒さんとの関係を訊かれる
のは苦痛でしかないと、いずみも理解していると思われるからです。
ところが、それ以前に、いずみがウィークディの東京滞在をどのように説明するのか、それには
大いに関心を持つのですが、その事を私に話すのか、それとも何事もなかったかのようにスルー
するのか、それにも興味が尽きません。


あくる朝、いずみは急いでPPTに帰って行きます。

「あなた、日曜日の事ね、おやすみメールで報告するから、それでいいでしょ?」
「急がないよ。いずみも早く寝ないといけないだろ?時間が出来た時でいいから。
問題があれば相談に乗るから、それでいいね?」
「うん・・・あのね、話さなかったけど、羽田空港で会うことになったの。
マリアさんね、夕方の便で沖縄に行くって。よく分からないんだけど、現地で会長と合流する
みたいなの。私には関係ない事だから何も聞かなかったし、聞かない方がいいんでしょ?」
「正解だよ。大森グループとは繋がっているとしても、ほんの少しかする程度だと思っていれば
いいからね。表現は良くないが、”厄介な絆”かもしれない、そう理解していればいいよ」
「うん・・・だから、とんぼ返りなの。それでもお土産っておかしと思わない?」
「明日香ちゃんか?」
「ひろ子ちゃんのことがあるでしょ?だから、明日香ちゃんのご希望のお土産を買うって
約束したの。何だと思う?」
「分かる訳ないだろ?」
「うふふっ・・・失言でした・・・じゃ、行くわね?」


日曜日の夜の”おやすみメール”は、そっけないものでした。
私がそう指示したのですから、それはそれで納得できるものです。
”詳細は後日”でしたが、その報告を受けたのは、日曜日からの出張に引き続き、東京本社での
会議後、金曜日の夜から土曜日の午前中まで、石黒さんと過ごして帰って来たその夜の事です。
薬物については、途中経過とのことわりがあったとしても、特に問題になるような事例は見つか
っていないとの報告には、一安心です。
クリニックは直ぐにでも紹介できるから、日にちを決めたら連絡して欲しいとの事でした。

石黒さんとのベッドインも特に変わったこともなく、いずみの見えざる事情も、私の知り得る事柄
と大きく乖離はしていない様でした。

必要最小限の報告に始終したのは、”やはり”と思わせる配慮が垣間見られるのですが、
それには言及せず、いつか、いずみが口を開くその日まで待つことにします。



それからの数週間は、不穏な空気を感じることもなく、静かに流れていきます。
毎週ではないのですが、金曜日の夜に顔を合わせた時のいずみの表情には、複雑に絡み合った
安堵と焦燥が浮かび上がっているようです。

「疲れたとは言いたくないけど、ほんとに大変なの。会社経営って一筋縄ではいかないのね」

潤いと癒しは、一切口には出しません。
私も敢えて訊くこともありませんから、それには触れずに日にちだけが過ぎて行きます。


[24] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/01/28 (日) 15:53 ID:oCUlTrYE No.188925



8月最後の金曜日、いずみが帰って来るその日、私が出張から戻って来る日でもあったのです。

大阪空港に着いたのは、午後2時を回った頃です。
いずみとひろ子は、午後4時頃到着予定と連絡がありましたから、ここで落ち合って一緒に帰宅
すると決めていました。
その到着時間は毎週末とほぼ同じですから、予定が立て易いのは有難いことです。

搭乗前に昼食を摂っていましたから、カフェで時間を潰すつもりでした。
以前にも入った2階の店と決めていたのですが、1階の到着ロビーを出たところで、椅子に座って
こちらを見ているるみさんに気付きます。
ところが、目が合っていると思ったのは、私だけだったようです。
焦点が合わないような、それでいて目を見張るように見詰めるその様は、眠らない様に気力を
奮い起こしている様に見えるのです。
一瞬、スルーしようかとも思ったのですが、以前の様に偶然会ったとしたら、無視したと指摘
されないとも限りませから、ここは意を決して、こちらから声を掛けることにします。

「るみさん?」

少しのタイムラグがあります。

「・・・えっ?・・・小田さん?」
「久し振りだね。あれから・・・確か5月初めだったね、また同じ空港で会うなんて驚きだよ」
「・・・ほんとだわ。あれから4カ月近く経ってるのね?」
「どうしたんだい?何だか疲れている様だけど」
「今何時なの?・・・」

左手の腕時計を見せます。

「・・・2時過ぎね?少し時間があるから・・・昼食は?」

食事はまだのようですが、ここに居るのですから誰かの出迎えなのでしょう。

「お迎えじゃないのかい?」
「あっ?・・・可笑しいわ。眠くて・・・機内でも寝ていたのよ。でも、1時間足らずでしょ?
目を瞑ってるって感じだわ。だから、眠くて・・・この椅子に座ったのはいいんだけど、
寝てしまったら困るでしょ?」
「見えないね。お迎えじゃないのかい?」
「そうよ、お迎えされる方かな?」
「それじゃ、その人が遅れてるんだね?」
「違うの。予定より早く着いてしまったから、ここに・・・ねぇ、昼食は?」
「済ませたよ」
「そうか・・・2時過ぎだものね。小田さんはこれから?それとも・・・」
「るみさんと反対だね」
「お出迎え?・・・何時なの?」

るみさんといずみが遭遇することは、避けなければなりません。

「るみさんは?」
「わたし?・・・3時に出発ロビーで・・・覚えてる?」
「ナニかな?」
「いいわ、後でも・・・ねぇ、何時なの?」
「4時過ぎだよ。少し早いけど、時間の都合で仕方なくね」
「よく分からないけど、コーヒーなら付き合えるでしょ?」


[25] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/01/28 (日) 18:32 ID:oCUlTrYE No.188933



出発ロビーは2階ですし、以前のカフェなら同じフロアーになります。
時間差はありますし、到着ロビーは1階ですから、いずみとの遭遇は考えられませんが、
そのカフェなら、不安感を取り除けると思ったのです。

「時間潰し?・・・そうだね、前に入ったカフェは?」
「それだけじゃないのよ。前に話したこと、覚えてる?」
「落ち着いてから聞こうか?」
「いいわよ。落ち着いて聞けるかな?うふっ」

意味ありげな表情には、何かを示唆しているように感じます。


コーヒーを口に運びながら、パンケーキを美味しそうに食べるるみさんに、目線が向いてしまい
ます。

「何か付いてる?」
「ん?・・・あぁ、疲れがズッシリって感じだね」
「そう!そう!それなのよ。覚えてる?」

“覚えてる?”の連発です。
一回目と二回目は全く違うと思うのですが、三回目は二回目を示唆しているようです。

「三回目だね?さてと、ヒントをくれないか?」
「三回目?そうだわ・・・最初のはね、5月にここで会った時の男性の事なの。まだ続いていてね、
これから愛欲旅行、前もそう言ったでしょ?」
「そうだったかな?ん?今から?・・・お疲れのようだけど、大丈夫なの?」
「私はオンナよ。ヤレないことはないでしょ?」
「まぁ、そうだが・・・二回目は?」
「それなのよ・・・」

同じフレーズが戻って来ます。

「・・・ここで話したこと、まさか忘れてはいないでしょ?」

直ぐにいずみの事だと理解します。

「鑑賞会だったかな?」
「嬉しいわ、覚えていて・・・その帰りなの。場所は東京になったのね、だから到着ロビーで
疲れた体を休めていたの。分かったでしょ?」
「頑張り過ぎた?徹夜かい?」
「少しは休んだけど、寝させてくれないのよ。木下さんは指示を出すだけだからお疲れじゃない
かもしれないけど。もう分かったでしょ?」
「鑑賞会には招待されなかったからね。妄想するにも元ネタがないと何も浮かばないよ」
「それがね、鑑賞会じゃなかったの。あの時はそう思っていたのよ。だから、小田さんも招待
されると思って話したのに、かすりもしなかったわ、ごめんね?余計なお世話だったわ」
「はははっ、気にしていないから、気を遣わなくてもいいよ」
「知りたい?いずみさんも参加したのよ。あの時もそう話したでしょ?女性はいずみさんと私、
男性は二人だから、4Pなの。妄想できそう?」
「漠然とはね。それを知ったからと言って僕には全く関係ない事だろ?」
「全く?いずみさんなのよ、元愛人でしょ?今の彼女の状況って知りたくないの?」
「気にならないと言ったら嘘になるけどね、元気ならそれが一番だよ」
「元気?・・・元気だったわよ、お顔に似合わずとてもエロいの。小田さんとも変態行為を
したんでしょ?」
「線引きが難しい行為だろ?どのように理解するかは当事者間の問題だよ。それより、その話しを
聞いた時からかなり時間が経ってるだろ?もしかしたら、その間にもプレーをしたんじゃないの?」
「それがね、木下さんが言うにはね、いずみさんの反対で東京になったのね。それはいいんだけど、
今度は木下さんといずみさんとの時間調整が付かなくて、それで昨夜から今朝までになったの。
プレーの時間帯は、いずみさんの都合に合わせたらしいの。
よく分からなかったけど、いずみさんは超多忙だから、時間調整に苦労させられたとか、それは
木下さんね。いずみさんは木下さんに合わせたのよ、とか、二人にしか分からない会話なんだもの。
私には関係ないから気にはならないんだけど、木下さんがいずみさんにとても気を遣っているのは、
男性陣にも分かったと思うわ。
でもね、始めたら木下さんの指示通りに、それ以上かな?とても前向きなのよ、木下さんに
好かれるのも理解出来るって思ったわ」
「木下さんの愛人じゃないだろ?」
「楊さんもそうでしょ?他にもいるかもしれないわ。超多忙ってそういうことじゃない?」


[26] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/02/03 (土) 12:05 ID:tkPWP66A No.189127



そう解釈するのも、尤もなことです。
会社経営のノウハウを学んでいると話しても、目の前で繰り広げられる性行為からは、
その一端も感じる事は出来ないと思います。

「そうかもね。それなら男性陣もタジタジじゃなかったかい?」
「違うのよ。受けて立つ・・・あっ?”タツ”って分かるでしょ?いずみさんも強調していたから、
記憶に残っているんだわ」

行為中とは考えられませんから、休憩を取った時の雑談での一コマでしょう。
ここでも、掛詞を披露するのですから、雰囲気に馴染んでいることも併せて、非常に落ち着いて
いる様子が窺えます。

「ほ〜っ、掛詞か、リラックスしている証拠だね」
「掛詞って言うの?初めて聞いたわ。木下さんね、なるほどって真顔で頷いていたから、
それが可笑しくて。JINさんなんか・・・あっ?あのね、男性はJINさんとタクマさんの二人
だったの。JINさんとは何度か、タクマさんは初めてだったのね。二人共いずみさんとはセックス
してるって、サンドイッチも経験済みだって言うのよ。驚いたけど、私も同じようなことを
してるから、木下さんには普通のことなんだって思ったわ」
「徹夜と言っただろ?その話しは休憩の時なの?」
「いくら体力があるって言っても、休まないと木下さんの希望通りにはいかないわよ。
いずみさんも私も声が枯れてしまう程逝かされるし、何度も失神するから、木下さんにすれば
その過程を観察したいのに、逝って失神すればそこで終わりでしょ?それなら絵にならないって、
ご不満なの。それでね、休憩を挟んで・・・”ハサム”って、これもいずみさんなのよ。
頭の回転が速いって感心するわ。木下さんへのプレゼントって、抱き付いてキスするのよ。
でもね、媚びるって感じじゃなくて、とても清々しいって感じかな?セックスって、それも
乱交でしょ?陰湿なイメージがあるじゃない?彼女がいるだけで、その雰囲気がガラッと変わる
って言えばいいかな?得な性格だなって。羨ましいわ」
「性格?・・・あれだろ?持って生まれた気質ってヤツだよ」
「少し天然が入ってるかも?それがいいのかもね?」
「だろうね。妄想のネタも聞いたから、ここまでだね?」
「あれ?聞きたくないの?」
「はははっ、何を聞くんだい?」
「いずみさんの今の事情、知りたいでしょ?」
「木下さんとの会話から何か気付いたのかい?」
「そんなのどうでもいいの。何人かの愛人になってるのは、ほぼ確定だと思うのよ。
それなのに、一回り以上も歳の離れたタクマさんととても親密なの。どう説明すればいいの?
って思うでしょ?」
「さて、僕には関係ない事だからね。彼女の交遊関係など気にならないよ。
ん?愛人だったから?」
「そうよ。オンナって割り切ってるって思われてるでしょ?でもね、好きになった人のことは、
別れても心にくすぶり続けてるの。いずみさんね、小田さんの事を今も愛してると思うわ」

噴いて湧いたようなるみさんの一言です。
私にとっては、核心を突いていると受け取れるのですが、それが当然であっても、るみさんには
話せる訳もありません。

「驚くだろ?彼女から何か聞いたのかい?」
「何も・・・それでも、そう感じるんだから、不思議だわ」
「はははっ、るみさんの中で、そう思いたい何かがあるんだろ?そうとしか思えないだろ?」
「小田さんなのよ、きっと・・・去年の11月だった?料理旅館でのことね、小田さんとは距離を
置いてる様に見えたのね、それって、意識的だと思ったの。オンナの感は鋭いんだから」

明日香ちゃんの笑顔が飛び込んでくるようです。


[27] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/02/03 (土) 17:26 ID:tkPWP66A No.189136



「同じようなことを言った女性もいるにはいたけどね。ところが現実はそうじゃないだろ?」
「現実なのよ。戻るけど、話してもいいかしら?」
「乱交?」
「鑑賞なら間違っていなかったの。お互いのセックスを見せること、これって鑑賞でしょ?」
「他に観客がいなければ、木下さんだけだね。それなら鑑賞会とは言えないか、なるほど」
「でしょ?いずみさんとタクマさん、JINさんと私ね、恋人としてセックスするように、木下さん
から。いずみさんね、楽しんでいる様に見えるし、タクマさんを気持ち良く受け入れてるのは、
よく分かるの。でも、違うの、心から楽しんでいるとは思えなくて。それは私もそうなのよ、
見せるセックスに徹すると言えばいいかな?JINさんも同じ思いだと思うのね。
私達はプロのお仕事に徹してるって感じなの。それなのよ、いずみさんもそうじゃないかって。
木下さんに喜んでもらえる様に見せている、お相手はタクマさんだけど、その気持ちは変わらない
と思うの。
どうしてそう思ったかでしょ?休憩を挟んで・・・あれ?まただわ。いずみさんって見掛けより
印象が強いわ。それでね、休憩の後、入れ替わって、いずみさんとJINさんが絡んだのね。
同じなのよ、タクマさんとのセックスと。そう感じたのは、私だけじゃないのよ。
木下さんがね、”やはり・・・”って、呟いたの。”やはり”の後は聞き取れなかったんだけど、
”同じ”だと思うの。いずみさんね、タクマさんと仲良しに見えるけど、意識的だとその時に
確信したの。そうでしょ?木下さんもそう感じたみたいだから。
ほんとに親密な関係ならセックスに表れると思うのね。どこがどうって言えないけど、絡んでる
体の雰囲気とか空気感、あれ?これもいずみさんが。私って言葉足らずでしょ?いずみさんに
教えられることばかりだわ。そうそれなの、”空気感って、人それぞれね”って休憩の時に、
木下さんと話していたのよ。そういう風に表現できるって凄いと思ったの」
「はははっ、受け売りでも自分のモノになってるじゃないか?これからは堂々と使えばいいと
思うよ」
「ほんとに?嬉しいわ。それじゃ、もう一つ教えちゃおうかな?」
「もう一つ?」
「そうよ。いずみさんが小田さんを愛してるって実感したことね。知りたいでしょ?」
「気に掛けてくれるのは嬉しいからね。まぁ、参考に聞こうか?」
「本音は?・・・聞かないわ。私の妄想だと思って聞き流してもいいわよ」
「流れなくて止まればいいね?」
「ナニ?意味が分からないわ。徹夜って話したでしょ?だからね、三回戦も。凄いでしょ?
一回目と二回目はお相手を入れ替えて鑑賞だったのね。木下さんは見られることで変化が
表れるかが知りたかったと思うの。
三回目はね、それこそ乱交なの。パートナーは決めなくて、でも、最初と同じカップルから
スタートしたの」
「最初から話すのかい?そろそろ時間だろ?肝心なシーンだけでもいいと思うけどね」
「ほんとに?・・・それじゃ、そのところね。いずみさんがタクマさんと繋がってる状態ね、
体位だけど、あれって名称があるのか分からないけど、いずみさんが仰向けね、
タクマさんがいずみさんの、どっちだったかな?右足だったかも?彼の肩に乗せて挿入ね、
深く挿入できるからとても気持ちいいのよ、知ってるでしょ?」
「あれだろ?”松葉崩し”じゃないかな?」
「そう言うのね?でも、覚えられないわ。私はね、四つん這いになって、JINさんが後ろから
挿入してるの。4人の状態は分かったでしょ?」
「想像できるよ。話したいのは位置関係かい?」
「そうなの。いずみさんに私が乗っかるようにしてキスしたのね。これって、木下さんの指示じゃ
ないのよ。いずみさんも私も興奮してるから、もっとって思うでしょ?と言うか、そんなの考え
なくても自然と求めるって感じなの。それでね、キスした時に、喘いでいるいずみさんの頭を
抱えていたの。だって、昂奮してるし、ピストンされてるからお顔も動くでしょ?
それでね、唇を離した時に、”小田さんを愛してるでしょ?”って、小さく呟いたの。
どうしてそう言ったのか、私にも分からないの。今から考えれば、私の頭の中でくすぶっていた
ことが、つい出てしまったって感じなの。
意識してではないのよ。どう説明したらいいのか分からないけど、兎に角、そう言ったの。
そしたらね、目を瞑って喘いでいたのに、”えっ?”って目を見開いたの。
一瞬の事だったけど、直ぐに喘ぎ出して逝ってしまったの。ほとんど同じタイミングだったけど、
間違っていなかったと確信できた安心感からかな?気持ち良く逝けたわ。
いずみさんはどう思ったか分からないけど、少し複雑な気持ちだと思うから、見た目よりも
深くは逝けなかったんじゃないかな?」
「寸止めを無理矢理逝ったみたいだね?」
「おかしな表現ね?苦し紛れに逝ったように見せかけたのかな?いずみさんならそう難しいこと
じゃないと思うわ。それ以上話したくなかったから、逝ったように偽装したのかも?
私にはそう見えたわ」


[28] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/02/04 (日) 11:38 ID:3U5hAgGs No.189160



いずみならあり得ることです。
全てのシーンとは言えないかもしれませんが、ことセックスに関しては、百戦錬磨を遺憾なく
発揮する術(すべ)を身に付けていると思えるからです。

「そうだとしても、素面の時じゃないと確信は持てないだろ?」
「二人で話すのはとても無理ね。休憩中は、木下さんと話す以外はタクマさんとべったり
だったのよ。
でも、どちらかと言うと、タクマさんからくっ付いていくみたいで、いずみさんは”よしよし”
って感じね。母性本能をくすぐられて、”仕方ないわね”ってアピールしてるようにも感じたわ」
「そもそもだけど、男性陣とはどういった関係なの?」
「話さなかった?5月に会った時に立派な持ち物の・・・これじゃ分からないわね、ごめんなさい。
二人共モデルでセラピスト、性風俗のだけどね。分かるよね?」

知っていて知らない振りも慣れてくるものです。

「モデル?雑誌とかの?」
「JINさんは雑誌にも載ったらしいの。タクマさんはまだみたいね。モデルのお仕事って、
そうあるものじゃないって。だから、セラピストを掛け持ち、そんな感じね」
「タクマさんとは初対面だろ?」
「木下さんから聞いていたの。体を合わすのよ、その前に知りたいでしょ?
いずみさんの参加は前から決まっていたでしょ?延期になったからどうなのかなって心配したけど、
変わってなくて安心したわ」
「良かったね。変わらない姿を見られて・・・ん?裸かな?はははっ」
「小田さんもイヤらしい中年なのね?」
「はははっ、そうしとこうか?・・・じゃ、ここまでだね?」
「時間でしょ?少しだけいい?」
「僕はまだ余裕があるからね。いいのかい?」
「少しならいいかな?・・・小田さんはどうなの?」
「モデルでもセラピストでもないからね。お二人さんを満足させるには役不足だよ」
「しらけるわ。恍けないで、真剣に聞いているのよ。いずみさんをどう思ってるの?」
「さっきも話したけど、もう終ったことだから、気にしても始まらないね」
「そうね・・・よく分かったわ。次に会った時に聞いてみようかな?小田さんとお似合いだと
思うから」
「じゃ、また会うことがあったら、その時に聞かせてくれないか?るみさんの希望通りなら
驚愕どころじゃないね」
「何か知ってるのね?次って言ったけど、来月にまた乱交の予定なのよ。いずみさんと話せたら、
その理由も分るかも?楽しみだわ」
「彼女は口が堅いよ。無理矢理こじ開けないと、こじ開けても話さないかも?まぁ、頑張るんだね」
「ヤリがいがあるわね。私のテクニックでメロメロにすれば、白状するんじゃない?
どちらも楽しみだわ」
「愛欲旅行だろ?まずはそれだろ?」
「ホントだわ。じゃ、またね?・・・あっ?お勘定は?」
「はははっ、いい話を聞かせてもらったからね、ご馳走するよ」
「嬉しいわ。いずみさんに聞けたら・・・あれ?連絡は?」
「いつかまた会った時に、それでいいよ」
「直ぐ会えそうな気がするわ。来月の・・・ねぇ?分かるでしょ?」
「まぁ、神のみぞ知るだね?」
「そうね。じゃ、ご馳走様!」


[29] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/02/04 (日) 16:12 ID:3U5hAgGs No.189163



カフェから出て行くるみさんの後姿を目で追いながら、ドッと疲れが噴出してくる感覚に
なります。

木下さんと過ごすとは聞いていたのですが、4Pとは初耳です。
いったん断った鑑賞会でしたが、東京となると断る理由などある筈もありません。
乱交などの性行為は、いずみが予測していた事ですし、関係を持つ人物も増やさないとの約束です
から、予測範囲外だったかもしれないるみさんが加わったとしても、特に慌てることなく、冷静に
対応出来たと思います。

冷めたコーヒーを飲み干しながら、いずみがそのことを切り出すのか、それへと気持ちが移って
いきます。

7月末の”立ちんぼ”の一件からは、性行為についての言及はありません。
先週は楊社長と過ごしたとは聞いているのですが、特に変わったこともなかったと、あっさりした
ものです。

その一ヶ月間は、JINさんともタクマさんとも会っていないと、カレンダーを見せながら説明して
くれます。

「そうでしょ?先週は女の子の日・・・あれ?それは卒業ね?アラフォーが”女の子の日”って、
”あらま〜”でしょ?」
「はははっ、どちらでもいいよ。それで?」
「だからね、誰とも会っていないの。生理好きの変態もいるけど、ごく少数でしょ?」
「連絡はしなかった?そうかい?」
「うん・・・来週は木下さんとだもの。でもね、あなたがサワちゃんと会ったでしょ?
だからね、その前にJINさんもいいかなって思ったのよ。でも、それなら二週も続くでしょ?」
「整理しないと分からないね。7月末が”立ちんぼ”だっただろ?石黒さんと僕は8月第一週の
金曜日から土曜日、だから、その週ってことだね?」
「ねぇ、二週続けてセラピストでしょ?ここはグッと我慢して、嘘よ。お仕事が大変で、
潤いと癒しどころじゃなかったの。ほんとだからね」

石黒さんを愛人と認めているのですから、気持ちの揺らぎはあったとしても、口にはできなかった
と思います。
JINさんを求める気持ちがその表れだと推測できるのですが、いずみの真意となると、自主性に
任せるしかありません。


るみさんが同じ階の出発ロビーに向かったのは、3時を少し過ぎた頃です。
いずみとの約束の時間までは、1時間弱なのですが、先程まで話していたるみさんの存在感が
大き過ぎて、一人になると空気が抜けた風船のように、心までしぼんでしまいそうです。
一人取り残された思いが、真っ黒な雲になって、私の心に覆い被さってくるようです。
環境を変えること、それは、気運転換へのアプローチにもなりますから、席を追われるように
カフェを出て、一階の到着ロビーに降りて行きます。


先程、るみさんが座っていた椅子の直ぐ後ろに腰を下ろします。
到着ロビーに出て来るいずみとひろ子が、最初に目にする位置に身を置きたかったのですが、
出迎える人にとっては、それは最適な場所でしょうから、誰しも思うことは同じだと、
小さく苦笑いです。

愛用の雑誌を取り出して、その時間まで過ごすことにするのですが、るみさんから聴取した内容が、
何故か頭の中を駆け巡るのは、7月の”立ちんぼ”を事前に知らせなかったいずみの心情に、
小さくない疑念があったからです。
今回の事も進んで話さなければ、いずみの中で何かが芽生えていると思っても不思議ではないと
思えるのですが、そう考える私自身にも疑念を感じるのですから、落ち着かない気持が広がって
きます。
いずみにすれば、他愛ない出来事として咀嚼されている筈ですから、私が疑問を投げかけても
サラッとかわされることは請け合いです。
いずみがそうであっても、性行為には相手がいるのですから、自分の存在を身勝手にも必然と
思い込む輩が、いないとも限りません。
いずみの意図を拡大解釈することで、望まない方向へと舵を切ることもあり得るのです。
性行為の相手は偶然の産物でしかないのですから、必要以上の思い込みは、迷惑以外の何ものでも
ない筈です。
そのような事態にならないためにも、事前に連絡することを約束させているのですが、前回の様に
必要ないと判断されるのは、甚だ不愉快でしかありません。
それとて、”立ちんぼ”の件では、大袈裟には反応しなかった私ですから、今回も同じような
イントロかもしれません。
ただ、前回は”現行犯”、今回は”事前漏洩”、その差の説明にいずみの力量が試されるでしょう
から、大いに期待を持っても裏切られることはないと思えるのです。


[30] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/02/04 (日) 17:40 ID:3U5hAgGs No.189165



曖昧な思いを巡らしながら、雑誌を読むでもなく眺めている状況が、一気に解消されます。
いずみとひろ子の搭乗便は、定刻通り到着とのサインが電光掲示板に表示されて、そう時間も
かからずに、到着ロビーへ乗客が途切れることなく出てきます。

二人は手荷物もありませんから、比較的早く姿を見せます。
立ち上がった私が目に入ったのか、直ぐに掛け寄ってきます。

「待った?」
「少しね。時間潰しが出来たから、まぁ、そう長くは」
「良かったわ・・・パパに”ただいま”って」
「・・・パパ、ただいま!」
「お帰り!・・・おりこうにしてたかい?」
「うん・・・お手て」

ひろ子を真ん中に三人が手を繋いで歩く様は、傍目(はため)からは幸せな家族に見えるでしょう。
私達もその認識なのですが、人には話せない性事情を抱えているのですから、表面だけで判断
するには些か勇み足と言わざる負えません。
偽りの家族と定義付けてもおかしくない日常なのですから、平常心で話すいずみと私は、
虚構の中で作られた役を演じているようにも思えてきます。

非日常が日常と化してから、既に数ヶ月が過ぎ去っています。
ところが、いずみとの非日常は、交際をスタートさせたその日から、始まっていたと言えるかも
しれません。


リムジンバスで市街地に戻って来ます。
相変わらず、ひろ子御用達のファミレスで、少し早い夕食後、いずみのマンションに帰ります。
ひろ子を寝かせてから、DKのテーブルでコーヒーを飲むのも、いつしか日常になってきます。

「疲れただろ?」
「うん・・・木下さん?」
「そうだっただろ?」
「それがね・・・あのね、変わらないのなら聞いても仕方ないって、いつの間にかそうなって
いたでしょ?」
「同じなら聞く必要もないからね。その機微が難しいだろうけど、変わったことがあれば、
前向きにと話しただろ?」
「あれでしょ?”立ちんぼ”のことでしょ?一人で対処できると思ったし、あなたに話したら
バカにさせそうだって思ったんだもの」
「分かるから大袈裟なことにはならなかっただろ?」
「うん・・・大いに反省しています、うふっ」

相変わらずの対応です。

「はははっ、反省の意味が分かっているのか?」
「はい、十二分に・・・だからね・・・それでだわ。木下さんって酷いのよ、と言うか、
ずるいんだもの」
「相変わらず変化球からだね?直球を要求しているのは分からないのか?」
「あなたのサインって、見にくいんだも、嘘よ・・・あのね、昨夜、木下さんとお食事の時にね、
”今夜は趣向を変えるからね”って。木下さんの都合で7月は会えなかったでしょ?
だから、タクマさんと・・・”立ちんぼ”なんてことに。その間、タクマさんにもJINさんにも
会わなかったのよ。話したでしょ?」
「超多忙なんだろ?」
「アレ?・・・私は強調するようには話したこともないでしょ?だって、あなたに心配掛けたく
ないから。それなのに、あなたが”超多忙”って、それって大袈裟に言ってるんでしょ?」
「現実だろ?東京でのいずみの様子は何も見えないんだからね。推測するしかないが、それを助長
する実例が見えれば、そう言っても間違ってはいないだろ?」
「見えるって?・・・木下さんと会っていないでしょ?彼が”超多忙”って。
楊さんもそのようには話さないもの」


[31] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/02/10 (土) 11:27 ID:kiqzlcSU No.189297



「去年の料理旅館以来、会うことも話すこともなかったからね」
「それなら・・・あれね!以心伝心ね?うふっ」
「はははっ、あり得ないだろ?誤魔化すのは止めろよ」
「うん・・・そういうつもりじゃ・・・ねぇ、何か知ってるの?」
「木下さんが酷いとかずるいとか、話さないのか?」
「そうだったわ。ホントに驚いたの。それを話す前に、教えてくれない?」
「話すのなら、教えてもいいが・・・直球を約束するかい?」
「うん、約束します。だって、あなたに話すつもりだったんだもの。そうでしょ?変わったことが
あれば話すって、約束だもの」
「変わったことと認識したのかい?」
「”立ちんぼ”の事はホントに悪かったと思ってるの。私の認識が甘かったって反省したのよ。
だから、今回の事は絶対に話そうと決めていたの」
「分かったよ。ある人に空港であってね、時間潰しが出来たと話しただろ?」
「ある人って?・・・萌音さん?」
「木下さんの愛人だから?」
「そうじゃないのね?・・・えっ?!まさかだけど・・・」
「そのまさかだよ・・・もう分かっただろ?」
「るみさん?」
「僕だからだと思うけど、口が軽いと思ったね」
「地元だもの、会っても不思議じゃないわ」
「そうと分かれば、話しやすいだろ?変な小細工は出来ないと悟ったかい?」
「えっ?・・・小細工も何もありのままを話すもの。ほんとだからね」

観念した様子に見えないのは、隠すこともなく話すと決めているからでしょう。

「どうする?さわりを話そうか?」
「それって、端緒のこと?それなら間違った使い方でしょ?」
「そういうつもりだが・・・あれか?肝心なところってことだね?」
「はい、お利口さんね!あっ?ちょこっと勇み足でした、ごめんね?」
「タクマさんとの日常かい?」

タクマさんに振って反応を見ます。

「ほんとダメなの。私が教えるっておかしいでしょ?・・・あれ?でも、昨夜までは会って
いないのよ。日常っておかしいでしょ?」
「数回会ったからって日常とは言わないか、まぁ、そうだね」
「ナンなの?奥歯にものが挟まったような言い方って」
「いずみにやましいところがなければ、撤回するよ」
「ある訳ないでしょ?・・・もしかしたら、るみさん?」
「それも含めて、聞かせてくれないか?」
「うん、誤解があったのなら、訂正しないといけないもの・・・お食事の時に聞いたのは、
サプライズだったのね。お部屋に入ったところからで、いい?」
「そうだね・・・9時過ぎであってるかい?」
「うん、ロビーで木下さんと会ってお部屋に。エレベーターの中でね、”懐かしい人を呼んでる
からね”って、訊いても教えてくれないの。”一人だけ?”って訊いたらね、”久し振りに
なるかな?5月以来だからね”なの。
それって直ぐに分かるでしょ?直ぐに浮かんだのがタクマさん、JINさんじゃないの。
正直に話してるのは分かるでしょ?タクマさんの事が気になっていたってことじゃなくてね、
会う回数を減らすって決めてから、まだ連絡していなかったの。だから、心の隅っこに引っかかる
モノがあったからなの」


[32] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/02/10 (土) 17:03 ID:kiqzlcSU No.189306



正直な気持ちでしょう。
いずみは非常に責任感が強いのですが、時々抜けることもあり、それが可愛いと思う私は、
いずみフリークなのは間違いありません。

「それがいずみだね。変わらないいずみを見て嬉しいよ」
「ほんとに?気になっていたのは本当なの。でも、木下さんが何か計画している様に思っていた
から、今回の事はある程度予測していたの。
一ヶ月飛んだことね、もしかしたら、三人の予定が合わなかったのかもって、後で考えた事よ。
あなたに返されそうだけど、そうなら木下さん一人でもいいでしょ?
だから、ほんとの事は分からないって結論です、うふっ」
「おいおい、もう締めくくるのか?端緒も話していないんだぞ、はははっ」
「あなたって、お調子者ね?」
「それこそタクマさんだろ?」
「ホントだわ!・・・”立ちんぼ”の時の録音からそう思ったのね?」
「会って話したことがないから、人となりは分からないがね。そう理解しているよ」
「お調子者の甘えんぼなの。気が付いたらくっ付いている子犬、イケメンの子犬って感じかな?」
「気に入ってるんだろ?」
「うん、正直な気持ちは。でも、好き以上は絶対にあり得ないの。セフレは解消したのよ、
でも、セックスは相性がとてもいいかな?」
「はははっ、正直すぎるだろ?主人の前では遠慮するモノだろ?はははっ」
「だって〜、あなたには正直に、そうでしょ?嘘はつかないって誓ったんだもの」

嘘も方便とは思わないのかもしれません。

「正直も考えものだね、はははっ」
「嘘で取り繕った方がいいの?」
「以前の様に?」
「もう!認識の行き違いでしょ?それって嘘とは言わないわ」
「はははっ、お冠かい?まぁ、その時々の気持ちは、全てが合致することはないかもしれないね」
「そうでしょ?うふっ・・・続けてもいい?」
「部屋に入ったところからだね?」
「うん・・・カードキーでドアを開けたのね、木下さんが私にって。忘れてたわ、エレベーターに
乗る前に木下さんが携帯で、”いずみちゃんと行くから”って、私の名前を出すのよ。
私って分かってるのに、おかしいでしょ?念を押す必要ってある?」
「そういうことなら、ドアを開けた時に、その答えが分かる仕掛けじゃなかったかい?」
「うふふっ、答えを話してしまったかな?」
「あまりにも無防備だろ?はははっ」
「それ!それなのよ。無防備、ほんとにそうなのよ。脇が甘い、隙間だらけ、そうでしょ?」
「それこそ念押しだろ?」
「だからなの、それってドアを開けた時にも。驚いたのよ、”えっ?”って声が出てしまったもの。
でも、それだけじゃなくてね、無防備って、剝き出しとか露わ、露骨ね、そういう意味もある
でしょ?ホントそうだったのよ。あなたなら驚天動地だわ、うふっ」
「見せない様に見せてるのかい?」
「あなたなら、読み解けるでしょ?」
「普通じゃない光景が目に飛び込んできた、だろ?それが何か・・・ドアのところからはベッドは
見えないだろ?それを考慮すれば、アレじゃないか、三人が全裸で出迎えた、違うかな?」
「うふふっ、そこまでは。あれ?そうなら驚天動地じゃないかな?うふっ」
「大袈裟に言った?それの方が面白いのは分かるが、僕の立場がないだろ?」
「ちょこっとかな?ごめんね?・・・あのね、ドアを開けたら、るみさんが抱き付いてきてキス、
これって驚くでしょ?」
「意表を突くじゃないか?少しニュアンスが違うと思うけどね」
「言い直すわね。意表を突かれて驚いた、これでいいでしょ?・・・あのね、意表を突かれるは
使わない方がいいかなって。だって、”突く”って連想するでしょ?」
「敢えて使わなかった?いずみらしくないじゃないか?掛詞は不発かい?」
「だって、思い付かないんだもの。もう少し後なら使えたかも?」
「分かるよ。そのシーンまでは待たせないんだろ?」
「待たせて欲しいのに、直球なんだもの。あれ?少し行き過ぎました・・・驚いたのはね、
キスじゃないの、これは”意表を突かれる”なのね。るみさんが半裸だったことと、”久し振りね。
ねぇ、オッパイ大きくなった?”って、揉むんだもの。驚くでしょ?」
「半裸?上半身?」
「そうよ。るみさんはオッパイが大きいでしょ?嫌味だと思わない?」


[33] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/02/11 (日) 11:45 ID:6hNJOGzk No.189321



いずみが特に気にしている部位ですから、直球をまともに受けた衝撃は、私の予想を遥かに
越えると思われます。

「オッパイね・・・気にしなくていいんじゃないか?」
「あなたはちょうどいい大きさだって慰めてくれるでしょ?でも、あれよ、世間では標準以下
って思われてるから、るみさんの第一声がオッパイなのよ。
去年の11月以来なのに、それって酷くない?」
「はははっ、気にしてくれるんだから、有難く受け取ればいいんだよ」
「そこ?・・・でも、隠しようもないから自然体でプレーに臨みました。お終い!」
「はははっ、世間が出てくるとは。いずみのオッパイのサイズは、知れ渡っていると自覚して
るんだから反論もできない、だろ?」
「はい・・・良いの、あなたがそれでいいって言えば、それが一番だもの」
「一番が分かったところで、次に行かないか?」
「うん、気を取り直して・・・ちょこっと大袈裟ね?・・・でね、るみさんに手を引かれて、
ベッドルームに入ったら、”ナニ?ナンなの?”って、呟いて直ぐに笑ってしまったの。
驚きより滑稽って感じで、笑顔で迎えてくれるセレモニーみたいな、そんな感じだったの」
「滑稽?・・・説明が必要だろ?」
「うん、二人共、JINさんとタクマさんね、ボディビルダーになったみたいに、筋肉を誇示する
ポーズを取ってるのよ。上手く表現できないけど、”ムッ!”って筋肉に力が入っている様子って
分かるかしら?」
「愉快な設定だね?そのポーズが滑稽だった?」
「うん、可笑しいでしょ?吹きそうなお顔なんだもの。特にタクマさんなんか、もう我慢できない
みたいで、真っ赤なお顔で倒れ込みそうなんだもの」
「支えたんだろ?」
「うふふっ、分かるんだ!」
「そう見せてるじゃないか?」
「久し振りでしょ?それに連絡しなかった負い目も少しかな?」
「優しいいずみ?」
「そうなるでしょ?そのような雰囲気なんだもの」
「演出の賜物だね?久し振りの気まずさを感じさせない様に配慮したんだね」
「木下さんが考えたと思ったのよ。でね、少し後でそれとなく訊いたらね、”僕じゃないよ。
分かるだろ?”って、そう言われたらそれ以上聞けないでしょ?」
「直ぐに理解した、だろ?」
「うん、JINさんとは思えないでしょ?るみさんなんて、とても考えられないもの」
「だね。分かってるのに聞いた?確認したかったんだろ?」
「あなたね・・・そういう見方って間違ってはいないわよ。でも、ほんとに確信が持てなかったの。
だってね、これも可笑しいのよ、それもあって木下さんだって思っていたの」
「またまた説明が必要だね?」
「あのね、ボディビルダーだからビキニパンツね?それしか身に着けていないのは分かるでしょ?
それがね、私がタクマさんを抱き支えた時にね、腰に廻した私の腕をそっと放して、クルって
回るの。”どうしたの?”って訊いたらね、振り返ってお尻を突き出すようにビキニパンツを
見せてね、”分かる?”って、満面の笑顔なのね。”パンツ?・・・ナンなの?”と返したら、
”色だよ”なの。直ぐに理解できなくて、疑問符が飛び交っている状況、ほんの少しの時間なのよ、
おかしな表情だったと思うのね。タクマさんは体を戻して、抱きしめてきたの。
私の耳に唇を付けて、”大好きだよ。いずみちゃんは?”なの。”ヒントなの?”って思ったのと、
好きな気持ちは変わっていなかったから、”同じよ”って小さくお返事したら、キスされて、
”前と後ろ、違うだろ?”なの。前が黒、後ろが赤のツートンカラーなの。それは分かったのに、
何を言っているのか分からなかったのね。
そしたらね、木下さんが”赤と黒と言えば分かるだろ?”って後ろから助け船なの。
木下さんなら文学でしょ?これしかないって直ぐに分かったのよ。でも、少しの間、その意味が
分からなくて・・・あなたは分かる?」
「はははっ、スタンダールの赤と黒、高校生の時に読んだ記憶があるよ」
「古典だものね、私も読んだわ。木下さんが説明する前に、意味が分かったんだけど、あなたは?」


[34] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/02/11 (日) 16:12 ID:6hNJOGzk No.189331



「小説の通りと理解すれば、黒は聖職者、赤は軍人だろ?それが意味するところか・・・
聖職者は人を導き、教えを説くだろ?軍人は攻撃そのものだとたら・・・なるほど、いずみを
ベッドに誘い、快楽を与える。そういう意思表示じゃないか?」
「うふふっ、あなたね、イヤらしいことは直ぐに分かるんだもの。ほんとエロには頭の回転が
速いのね?私はね、”聖職者の様に優しく導き、軍人の様に激しく責める”ってお返事したの。
意味するところは同じでしょ?」
「木下さんが考えたと言っても全く不自然じゃないが、タクマさんがとなると、何らかの思い
違いをしていないか?」
「うん、私もそう思うの。もしかしたら、隠されたものが・・・”能ある鷹は爪を隠す”って
言うでしょ?」
「そうだとしたら、セラピストは仮の姿?」
「そんな風には見えないし、セラピストに扮する理由も分からないわ」
「だね。まぁ、今後も会う予定なら、徐々に分ってくるんじゃないか?」
「うん・・・気になるでしょ?時間をみて会ってみようかって・・・あのね、時系列でお話した
いの。それでいい?」
「任せるよ・・・注意を惹く作戦なら大成功だね。いずみが思っているより、ずっと大人かも
しれないよ」
「私が連絡しなかったから、今回の事を利用したのね?」
「大成功だろ?いずみは会ってみようと思っているんだろ?」
「ほんとだわ。まんまと嵌められたのかしら?うふっ」
「楽しそうじゃないか?」
「嵌められたところなのに、また嵌められたいいずみって、思ってるでしょ?」
「当たらずとも遠からず、だろ?」
「気になるでしょ?それが先かな?・・・でも、嵌められるかも?うふっ」
「はははっ、彼の人となりはある程度の憶測はあるんだろ?それを信じてもいいんじゃないか?」
「うん、表のタクマさんはセラピストの卵って分かったでしょ?裏は・・・想像以上の知識を
持ったインテリかもしれないわ。それを確認するために会うのもいいかも?」
「理由付け?必要ないだろ?それがなくても会いたいんだろ?」
「うん・・・あなたに叱られないか気になるのに、会いたいかな?」
「本音は?」
「言わせないで・・・昨夜を思い出すでしょ?うふっ」
「そうなら、セフレ復活かい?」
「話してはいないけど、そうなりたいかな?彼はまだ解消したと思っていないみたいなの」
「それなら話は早いが、分かってるね?」
「うん、前に決めたように会うのは一ヶ月に一回、回数は増やさないし、変な賭けもしないわ。
会ってベッドを楽しむ、それに徹するから、それがセフレだもの。タクマさんにもはっきりと
認識させるから、心配しないでね?」
「信じる、信じられること、それが最初の一歩なら、僕達は次の展開に進んでいる、分かるね?」
「うん・・・タクマさんとのこと、あなたが知りたいこと、変わったこともあったら、あなた次第
だけど、全て話すから」
「こうしようか、性行為だけじゃなく、いずみが感じた違和感があればそれも、いいね?」
「はい・・・あなた、認めてくれてほんとにありがとう」
「はははっ、それは楊さんに・・・木下さんかな?僕の出る幕はないんだからね。ここで確認
することもないんだが、僕の一押しが欲しかった、そうかい?」
「うん、楊さんが決めた事だから、それに従う約束でしょ?でも、あなたにも笑顔で送り出して
欲しいんだもの、うふっ」
「大袈裟だね?・・・まぁ、楽しめればそれでいいからね。あれだね、二人が仲良くしている
ところも観たいかも?はははっ」
「えっ?それは無理かも?だって・・・」
「セックス?話しだけで十分だよ。僕が・・・」
「分かったわ。お話してるところでしょ?いつものレストランなら、大丈夫かな?
タクマさんにもオーナーにも知られていないんだし、お客としてなら誰も疑わないわ。
でも、セフレだから少しの接触はあるかも?それはいいでしょ?」
「確認済みだろ?二人の雰囲気が分かればそれで十分だよ」
「はい・・・嬉しいわ。こんなにわだかまりもなく話せるのって、あなただけだもの。
私の最高の理解者だもの、愛してるわ・・・チュッ!・・・ほんとだからね?」


[35] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/02/12 (月) 11:24 ID:XkAga69A No.189353



いずみが気になる人物としてタクマさんが浮上しているのですから、私が知らないとなると
彼女の真意を見逃すことにもなり兼ねません。
”百聞は一見に如かず”の格言通りではないのですが、姿形を観るだけも、彼の望むところが
分かるかもしれないと思ったのです。
私が気になるのは年齢差もさることながら、いずみへの気持ちがどの程度なのかと言うことに
尽きます。
楊社長、木下さんなら欲望も欲求も理解の内なのですから、問題になるような事はあり得ないと
断言できるのですが、タクマさんについては、まだ見えないことが多過ぎる様に思えるのです。
取り越し苦労かもしれませんが、いずみにとっては毛色の変わたセフレなのは間違いありません
から、それなりの注意喚起は必要だと判断したのです。

「言わなくてもいいから・・・イントロが長くなっただろ?」
「ホントだわ。タクマさんの事に注力し過ぎたかも?うふふっ、し過ぎね?」
「いずみの気持ちが聞けたからね。無駄な時間じゃなかった、だろ?」
「うん、話せて良かったわ・・・ではでは、続きね・・・
”当然と言えば当然だね。いずみちゃんならスタンダールはとっくに読破してると思っていたよ”
って、木下さんが。
タクマさんとは手を取り合っていたから、振り返って、特にお返事もしなくて笑顔で返したの。
”赤と黒”って木下さんが考えたと思うでしょ?冷静に考えれば木下さんとは思えないのに、
思い込んでいたんだわ。”赤と黒”の発想だけならそうかもしれないけど、そこまで手の込んだ
ことをするとは思えないもの。ちょこっと勇み足でした、うふっ」
「後の祭り?その方がいずみには好感が持てたんだろ?」
「驚きでしょ?信じられないを信じるって、何だか嬉しくなるでしょ?」
「好きなタクマさんだから?」
「はい!そこまでにします、うふっ・・・でね、”JINさんも?”って思うでしょ?
それが分かったのね、”僕はワンカラ―だよ”って、振り返ってお尻を突き出すのよ。
その仕草がとても可笑しくて、JINさんってお茶目なところもあるんだって、私には高評価なの。
二人共ね、空気を読むのは上手だし、楽しませる手段も豊富に持っているって感じたわ」
「”たかがセラピスト、されどセラピスト”だね、はははっ」
「褒めてるの?お二人さんに聞かせてやりたいわ、うふっ」
「可能ならね?まぁ、タクマさんには黒子として関わるから、顔が割れているJINさんなら
構わないよ」
「あり得ないでしょ?あなたってほんと変な気質の持ち主だわ」
「その方がしっくりくるね。真面目だと言われると何だか落ち着かないよ。いずみもそうだろ?」
「わたし?至って真面目なのに、変に作り上げられるんだもの。損な気質だわ、うふっ」
「お互いかい?」
「似たもの夫婦なら、とても安心していられるわ・・・もう!前に進めないでしょ?
続けるから、横槍は入れないでね?」
「はははっ、良しなに」

この頃のいずみには、全幅の信頼を寄せていたと言っても、過言ではありません。
不安がないとは言えない状況も難なく乗り切っていくのですから、頼もしいの一言です。
ところが、歳の差のセフレについては、対応方法をマスターしていないどころか、初心者でしか
ないのですから、一抹の不安がなかった訳ではありません。
いずみに接する表の顔、まだ見せていない裏の顔、裏があるとすればなのですが、スタンダール
が出現するまでの彼とは全く異質な知識の持ち主だとすれば、木下さんとの文学談義の悦楽が、
タクマさんへの渇望に置き換えられないとも限りません。
いずみはハッキリとは感じていないかもしれませんが、今まで以上に彼への関心度が高まった
要因は、言うまでもなく、文学の知識の一端を見せられたからに他ならないと思います。


[36] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/02/12 (月) 15:28 ID:XkAga69A No.189361



「いいのね?・・・それでね、るみさんが、”いずみさんも同じにならない?”って、
お洋服を脱ぐように促すのね。ハッと気付いたの、私だけでしょ?
木下さんと二人だと思ってホテルに来たのに、乱交の設定なんだもの、とても驚いたのよ。
でも、愉快な出迎えでしょ?気持ちもそれに向かっていたと思うの。脱ぐのはいいとしても、
皆に観られながらって恥ずかしいでしょ?ほんの少し戸惑ったのね。そしたら、タクマさんが
何も話さずに私を抱き寄せて、背中のジッパーをそっと下げたの。
キッカケって大事でしょ?それだけで恥ずかしさもどこかに飛んで行ったみたいで、その場で
お洋服を脱ぐことが出来たの。あっ?お洋服ってワンピースなの、定番でしょ?
話さなくても良かったわね」
「まぁ、そうだろうとは思ったが・・・それで?」
「ワンピース?違うでしょ?・・・でも、話そうかな?話したいかも?うふっ」
「いいよ、お任せだよ」
「半袖のフレアースカート、淡いブルーね、私の大好きなワンピースなの。
何故って聞くでしょ?久し振りだもの、木下さんとの文学談義なのよ。ちょこっとおしゃれしよう
かなって。木下さんに響かないことは分かっていたのよ。でも、オンナってそうでしょ?」
「ワンピースはいずみの自己満足だけだろ?ピロートークにワンピースはないだろ?はははっ」
「ほんとデリカシーがないんだから。オンナって微妙な空気感に気持ちが癒されるのよ。
あなたもセラピスト・・・あれ?失言だわ、ごめんね?」
「セラピストならデリカシーが理解できる、だろ?タクマさんを見習えかい?」
「そこまでは・・・ホントにごめんね。比較したんじゃないから、分かってくれるでしょ?」
「僕は僕なんだろ?聞き飽きた言い訳だね」
「怒ってる?」
「はははっ、正直な気持だろ?そう言えばいいんだよ」
「うん・・・でも、あなたはあなただもの。唯一無二のあなた、誰とも比べられないもの、うふっ」
「理解したことにするから、進めろよ」

タクマさんを意識しながら、話しの間合いを取っている様に感じます。

「下着姿、Tバックだけになったの。脱いだお洋服はるみさんがクローゼットに運んでくれたのね。
これで同じになったって少し落ち着いたの。それもつかの間かな?木下さんが、”プレー内容を
話すからね”って、窓の傍の椅子に私を座らせたの。るみさん達は既に説明を受けていたようで、
ベッドの端に座ってるのね。るみさんとJINさんは抱き合うように話してるのに、タクマさんは
一人寂しくって様子なの。話している私達に、私かも?彼の視線を感じたわ」
「カップルは事前に決まっていたようだね」
「うん。タクマさんの視線は、”早く!”って感じだったのかもね?」
「はははっ、意識過剰だろ?」
「うふふっ、そうかも?そうだったかも?これの方が現実的だわ」
「その通りかい?」
「うん・・・先に木下さんの説明ね、”最初はカップル同士で、その後に乱交だから。
カップルは見ての通り決めたけど、異論は?”って。”反論はないだろ?”って、
さわやかな笑顔が”いいね”って、念押しみたいに。
”当然そうなると分かっていたからね。話す必要もないだろ?”なの。
タクマさんがごり押ししたのかもしれないけど、JINさんとるみさんは以前にも絡んでいたよう
だし、反対する理由もないでしょ?分からないけど、タクマさんがJINさんに私とのカップルを
嘆願していてもおかしくないもの」
「正に正論かい?」
「正論って言う?当然が自然ってことじゃない?」
「自然を装った当然だろ?はははっ」
「そうかもしれないわ。タクマさんのアピールが効いたんじゃないかな?」
「いずみも望むところだろ?」
「うん、最善の選択だったかも?」


[37] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/02/12 (月) 17:33 ID:XkAga69A No.189366



「言うね?セフレ復活ののろしかい?」
「ごめんね?あなたの言う通りセフレならタクマさん、だから最善って。他意はないから」
「あればナンだろうね?」
「えっ?・・・裏はないってことでしょ?・・・あれのこと?タクマさんの裏が他意ってこと?」
「気が廻るね?それがいずみだから信用できるんだよ」
「あなたに褒められるってホントに嬉しいのよ。彼の裏を、あるとしたら何とか暴いてみせるわ」
「頼もしいね。何もない事を祈りたいし、いずみに危害が及ぶことがあったら大変だからね」
「大袈裟でしょ?でもあれね、見せているようで見せないのなら、セフレ以上の感情には程遠い
距離感で接するわね」
「難しい表現だが、飲み込まれない程度のセフレを演じる、これに尽きるだろ?」
「うん、楽しむことが最優先だし、それ以上でも以下でもない、ただただ、快楽の時間を共有する、それが潤いと癒しを与えてくれる、これでしょ?」
「だね・・・続けないか?」
「うふふっ、あなたがいけないのよ、”正論”なんて言うから。前に進めないでしょ?」
「曲論が良かった?僕達にはお似合いのフレーズだろ?」
「斜めからの視点でしょ?曲論は行き過ぎよ。もう!議論してる場合?うふっ」
「はははっ、済まないね。いずみが愛おしいから、どうしても逆らいたくなる、分かるだろ?」
「そういう人ってホントは寂しがりなんでしょ?あなたは違うのにそう見せるのは・・・そうか!
そういうところを掘り下げて真意を掴む、そういうことね?」
「正に正論だよ、はははっ」
「ホント懲りないお人だこと、うふっ・・・続きを話すわね・・・
木下さんは分かっていたのね、話し終わると直ぐにタクマさんを呼んだの。タクマさんの視線は
木下さんにも注がれていたなんて、何だか損しちゃった気分だわ」
「独り占めしたかった?」
「だって、セフレなんだもの、うふっ」

本心でないことは理解出来るとしても、うわべだけでもセフレを演じたいいずみの気持ちも、
分かる気がします。

「はははっ、むべなるかな、だね?」
「嬉しいわ。あなたが肯定してくれるんだもの・・・あれ?違うの?」
「揶揄だよ。そう言って欲しいって顔に描いているからね。ご期待に応えたまでだよ」
「フェイクでしょ?セフレ復活ってそういう風に見せただけだもの。タクマさんには何も話して
いないのよ。”その空気感が分からないの?”って感じで接したのよ。あれ?そう読めていたの
かな?うふっ」
「いずみの言う、”以身伝身”、心が身の、だろ?」
「あなたには勝てないかな?ベッドでは・・・体でお話したかな?うふっ」
「楽しそうで良かったね?そういう風に話せる間は、特に問題はないと理解できるからね」
「うん、これからも愉快にお話しできると思うの。それが私の目指すセフレのあるべき姿、
ちょこっと大袈裟でした、うふっ」
「まぁ、そうだと理解しておくよ。さてと、本題は?」
「はい、戻します・・・タクマさんってとても嬉しそうなお顔で私の傍に。木下さんが呼んだ
のによ、おかしいでしょ?」
「我慢できなかった?」
「まだでしょ?待たされる時間が辛かったんじゃない?」
「そう言ったんだが、そこに結び付ける?はは〜ん、我慢できなかったのはいずみだろ?」
「誘導って酷くない?でも、そうだったかも?うふふっ」
「合わせるね?本音が見えないのは困ったものだよ」
「真面目にお返事するわね?あのね、全然よ、木下さんとのお話に集中していたから、
タクマさんの心情って何も思わなかったの。ペアになる事は想定済みでしょ?だから落ち着いた
ものよ、矢でも何でもって心境かな?」
「開き直った?まぁ、平常心で臨めるんだから、その後の性行為とのギャップが、木下さんの心に
大きく響く、それが欲しくて、乱交を設定したと思うね」
「うん、それと私の気持ちの変化、それを見定めたくて、とも取れるでしょ?」


[38] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/02/17 (土) 20:28 ID:3ZgMVBeY No.189454



るみさんから聴取した内容を思い出します。

「分かっていたのなら、木下さんに喜んでもらえる様に演技したんだろ?」
「うん、全てではないのよ、興奮すると思い通りにはならない事もあるのね。
それがまた木下さんの心に訴えかけられるから、演技だけでは薄ぺらなモノになっていたと
思うの」
「気遣いのいずみだね?」
「ホントそうよ。セックスを楽しみながら見せ方も考えないといけないんだもの、とても大変なの」
「”大変なの”を”興奮する”に置き換えるのなら、信じられるけどね、はははっ」
「興奮?逝っても完全には逝っていないのよ。そうしてるって、木下さんには分かるのね?
そこが一番難しいところ、表現者としては悩みどころね?」
「注意されたのかい?」
「注意というか、”完全に逝っていないね?”って。分かるんだもの、誤魔化せないでしょ?」
「ん?・・・じゃぁ・・・」
「うん、4Pの時に意識がなくなる程・・・演技じゃなくて、そうしようと思ったから。
我慢ってやはり私だったのね?」
「正直な気持ちを聞けて良かったよ。木下さんには通じないと分かったことは大きな成果、
果実かな?得るものがあったね?」
「豊作?大漁かな?一杯釣れたって感じだったの。”これね?”って心に刻み付けたわ。
凄いでしょ?」

本題に進まない、進めないのかと、ふと疑問符が頭に浮かびます。
るみさんがいずみに囁いたフレーズへの戸惑いが、今も残っているのかもしれません。
性行為の真っただ中で喘いでいたその時に、私への本心を訊かれたのですから、戸惑いどころか
頭が真っ白になったのだろうと推測しても、間違っているとは思えません。
ほんの一瞬、現実に戻されたとしても、それもつかの間、快楽の渦と共に飲み込まれて行ったと
思えるのです。
ところが、それを認識していなかったと仮説を立てる事も出来ます。
木下さんの要望を全力で果たすべく性行為に集中していた時ですから、るみさんの問い掛けに
反応したとまでは言えないのかもしれません。
意識が薄れている時だったとしたら、彼女のフレーズは記憶にすら残っていないとも考えられます。
目を開いたその瞬間は、エクタシーを迎えるその一瞬と偶然にも重なったのかもしれません。
そうであるのなら、臆することなく話せると思うのですが、それを知っている私ですから、
ひがんではいないのですが、邪推とも取れる思いに行き着いてしまいます。

「何だか大袈裟じゃないか?そこまでほんとに思ったのかい?」
「チョッピリかな?ほんとに逝ったってあなたには話したくなかったの。あなた以外の人とは、
ナニがあっても100%はあり得ないと思っていたのに、純粋に逝ってしまたんだもの。
それも私が望んだのよ。いくら木下さんの要望であっても、誤魔化せなかった私の心情には、
大きな後悔が残ったの」
「後悔?・・・そうなら、まだ許せるだろ?いずみ自身を褒めてやらないと。
完全に取り込まれたんじゃないと証明してるんだから。それも演技だと言い聞かせればいいと
思わないか?」
「そうかな?・・・あっ?アレでしょ?純金とか純プラチナって純度が100%じゃないんでしょ?
99.99%とか、そうでしょ?純粋に逝ったって言ったことね、そう考えれば、100%ってあり得ない
と思わない?」
「かなり無理があるだろ?混じりけがないと言う意味なら同じ扱いになると思うね。
ただね、純粋には心の面持ち、人の温もりがあるだろ?そういう観点からなら、いずみの気持ち
の持ち方じゃないか?」
「えっ?・・・そうか、そうならあなたには100%、今回のことは100%って表現したけど、
ほんとは99.99%・・・もっと少なかったかも?四捨五入で100%って、変な拘りかな?うふっ」
「はははっ、もういいよ。木下さんが満足できる逝き方だったのなら、それはそれで良しと
しないと」
「うん・・・何だかスッキリしたわ。あなたの言う通り100%じゃないから、それも演技だって
言えるもの。ホントあなたってお助け旦那様だわ」
「木下さんには、お助けいずみだろ?はははっ」
「うふふっ・・・喉のつかえが取れたみたい。ではでは、セックスシーンへと進めていきます」

拘った理由が分かったとしても、るみさんのフレーズを認識していなかったのか、そこに焦点が
移って行きます。
4Pまではその話しはしないでしょうから、その時まで大人しくいずみの説明を聞くことにします。


[39] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/02/18 (日) 11:47 ID:f9nBfaWM No.189469



「詳しくはいいからね?」
「うふふっ、聞きたくないの?そうよね、愛する妻があなた以外の男性とセックスするんだもの。
でも、逆なら、私がされる側だったら、どうなんだろう?・・・思うのよ、あなたなら誰としても
気にしないって何度も話してきたでしょ?これって、もしかしたら詭弁じゃないかって。
今そう思ったんじゃないの。昨夜かな?ふとそう思ったの、おかしいでしょ?」
「ん?心境の変化?昨夜に何か・・・乱交の時?それ以外に何かあったのかい?」
「その時・・・理由がない想いってないと思わない?」
「難しい表現だね?」
「少し下がって・・・冷静がいいかな?冷静になって考えたらね、それって帰りの飛行機の中で
うとうとしながら・・・殆ど寝ていないの。セックスシーンの後で話そうと思っていたんだけど、
気持が先走りしたのかも?4Pの後ね、木下さんとお隣のお部屋に移動したの。
木下さんの指示なのよ、分かるでしょ?」
「乱交を終えた直ぐ後のいずみの気持ちを聞きたかった?それとも・・・」
「セックス?していないし、できないでしょ?二人に中出しされたオマンコなのよ。
木下さんの辞書にはあり得ないと思うもの。あれ?文学的?」
「はははっ、フェイントかい?」

これから話す内容を吟味している様にも見えます。

「ちょこっと間合いが欲しかったかな?・・・あのね、あなたが言ったこともそうなのね、
私の気持ちの移り変わり、揺らぎ・・・そんなところかな?タクマさんとJINさんとの比較、
木下さんが感じた事ね、それに私の思いとどの程度マッチしているとか、性行為と気持ちの
起伏とか、そのようなことを聞かれたの」
「木下さんの気質が分かるようだね」
「とても繊細なのよ。ジギルとハイドって認定した事が嘘の様なの。ほんとは二面性って
全くの演技じゃないかって、そう思うのよ。私みたいでしょ?」
「演技?そうなのか?」
「異質な演技かな?」
「はははっ、性行為とエロ小説だろ?異質とは到底思えないけどね」
「分かってるんでしょ?行為と文章なのよ、異質じゃない?」
「純粋が当てはまるのなら、そうだろうね。ところが切り離せない深い繋がりがある、それを異質
とは言えないだろ?」
「拘るんだから。それがあなたって分かるのに、とても勝てるとは思えないのに、逆らいたく
なるの。でもあれね?純粋じゃない行為、不純異性交遊?純文学じゃないエロ小説?
ほんとだ!切り離せないかな?うふっ」
「分かってるんだろ?いずみのフレーズをそのまま返すよ」
「はい、受け取りました、うふっ。でも、異質違いって分かってるんでしょ?」
「ジギルとハイドを性行為と文章に当てはめるのは無理があるね。いずみが正しいと思うよ」
「認識の行き違いでしょ?何度もあったもの。それでもこうして一緒に話せるのよ、お互いを
理解してるからだもの。間違いは素直に認めましょうね?」
「はははっ、気を付けろよ」
「うふふっ、ほんとだわ。木下さんとのお話しに飛んでしまったけど・・・」
「詭弁だろ?」
「うん・・・木下さんとのお話には後付が、そう言ってもいいと思うの。それは後で話すわね?」
「それが頭にあったから、時系列を逸脱したんだね?寝ていないのなら不思議じゃないが、
大丈夫かい?」
「うん、あなたに話さないといけないって使命感が・・・信じる?」
「信じたいね。それがいずみだろ?だけどね、霧の掛かった頭なら記憶も曖昧にならないか?
ポロッと本音を漏らしたらそれこそ大変だぞ、はははっ」
「今の私には真実と現実を混同するって考えられないわ。全て本音、曖昧な記憶でも明確な言葉で
その場の事実と真実の私の気持ちを話せるわ。少しの記憶があれば、枝葉を探して全てを
つまびらかにできるもの」
「そうか・・・大丈夫なら、無理はしていないね?」
「うん、話し終わったら死んだように眠るかも?でも、あなたが寝付くまで起きているの。
マイルールは不変なのよ」
「強い意思は分かるが・・・聞かせてくれないか?」


[40] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/02/18 (日) 16:01 ID:f9nBfaWM No.189477



「詭弁って言ったけど、昨夜まではほんとに気にならなかったのよ。愛する人が他の女性と
セックスするって普通なら容認なんてできないでしょ?それって、私がそうだから気にしない様に
自分にいい聞かせていたのかもしれないって、ふとそう思ったの」
「じゃ、今は違う?」
「違わないでしょ?楊さん、木下さん・・・それにJINさん、タクマさん、セックスしてるのよ。
それなのにあなたの事が気になるって、おかしいと思わない?」
「心境の変化か・・・昨夜、何かのキッカケがあった、そうだろ?」
「それがね、ハッキリとは言えないの。楊さんも木下さんも立ち位置がはっきりしてるでしょ?
それにJINさんも・・・」
「タクマさんか・・・JINさんはセラピストから逸脱しないが、タクマさんとはセフレの関係、
その違いかい?」
「もやもやとした気持かな?あなたを愛してるのに、”この気持ちって何なの?”って問い掛けて
も何にも返ってこないの。私が理解できないのに、説明できないでしょ?」
「”理由がない想いはない”と言っただろ?その理由が曖昧でもそれがキッカケになったんだろ?」
「・・・うん、あのね、4Pの時ね、また時系列じゃないけど、るみさんがね、あなたを”愛してる
でしょ?”って呟いたの、そう聞こえたと思ったんだけど。”えっ?”って思って直ぐに逝って
しまったから、ほんとにそう言ったのかは、とても曖昧なの。それでも、それが心の隅っこで
ザワザワって何とも言えない不安な気持になったの」

るみさんのフレーズは認識していたようですが、遠くの雷鳴が直ぐにフェードアウトしていった
ような記憶だろうと思われます。

「るみさんが?」
「うん・・・見えないでしょ?その時の様子を話さないと何も見えないもの。
4Pの時って話したでしょ?その前の事は後でお話するけど、兎に角、4Pの時にね、タクマさんと
私、るみさんとJINさんが性行為ね。あの時は・・・私が仰向けに寝て、タクマさんが私の足を
・・・どっちだったかな?片足を彼が肩に、右足だったわ、乗せてねピストンしてたの。
もう逝く寸前だったその時に、るみさんが。さっきも話したけど、演技じゃなく、ホントは演技
でしょ?その時は純粋に逝くことに集中してたその時なの、”ハッ!”と目を開けたけど、
逝く時ってそうなる事ってあるでしょ?るみさんの声だって分ったのよ。
でも、ナニも見えなかったの。キスされたこともハッキリしないけど、きっとそうだろうって。
だって、お顔がくっ付くくらいだったから、そうならキスするって分かるんだもの。
だから曖昧なことばかりだけど、るみさんの声だけが、ハッキリと残ってるの」
「それが不安?いずみの気持ちが読めないが」

るみさんから聞いたその時の状況が、いずみの説明と一致しなくても、同じ空気感であれば、
それは彼女等が共有していたその時その場所と理解出来ます。
視点が同じならいざ知らず、少しでも差異があるのなら、全てにおいて一致するとは思えない
からです。

「うん・・・帰りの飛行機の中でね、眠いのに寝れないの、るみさんの言葉が妙に引っ掛かって。
るみさんとは去年から会っていないのよ。それなのに、あなたの事を口にするなんて。
地元だからって、あなたと会ってるとは思えないし、それならどうして・・・自問するでしょ?」
「昨日まで会っていないからね。るみさんの発言は理解出来ないが、僕達が夫婦だとは知らない
だろ?」
「あっ?知ってたとしたら・・・それはないわね。木下さんも知らないのよ、楊さんが話すとは
考えられないし・・・じゃ、どうして?」
「柊さんなら・・・どう思う?」
「それは分かるけど、るみさんに教える理由も意味もないでしょ?二人の間に利害があるとは
思えないし、もし楊さんの耳に入ったらタダでは済まないでしょ?そんな危険を冒すとは思え
ないもの」
「だね、いずみの言う通りかもしれない。それじゃ・・・るみさんの意図はいずみになりに理解
している、確証はないとしても特定してるだろ?だから不安になる、違うか?」


[41] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/02/18 (日) 17:56 ID:f9nBfaWM No.189480



いずみと話しながら、るみさんの意図とは全く別の思いが浮かんできます。
それは、るみさんの発言をいずみが独自に解釈したことで、不安に駆られているように
思えるのです。

「ねぇ、るみさんからは聞いているの?」
「そう言ったとは聞いたけどね、その理由迄は・・・ほんとだからね、はははっ」
「あなた!・・・うふふっ、真面目に話してるのに。あれね?フェイントでしょ?」
「神経をすり減らすほどの事でも、そこまでは考えていないだろうけど、言い換えようか?
るみさんの発言で気付かされたことがあるんだろ?それが不安を煽っている、違うか?」
「あのね、その時は直ぐに逝ったでしょ?逝かされたように見せたけど、私から進んで。
話したでしょ?4Pが終わっても、その後は木下さんとお話でしょ?だから、考える時間も何も
なかったの。もやもやした気持ちを引きずりながら、飛行機まで。その時に急に不安が襲って
きたの。最初に思ったことはね、今も話したけど、るみさんとあなたが会っている、それは直ぐに
打ち消したのね。あり得ないもの、そうでしょ?・・・でね、次がそうだろうって。
でも、私の現状は把握しているだろうから、そうだとしたら、あの発言って何だろうって考えた
のね。あなたとは以前愛人関係にあった、楊さんがるみさんにそう説明したでしょ?
終ったことなのに、それを持ち出すのはどう考えても不自然なのね。あなたが全く関与していない
とすれば、彼女の目の前で、直ぐ傍でセックスしている私達、タクマさんとの関係に何かを
言いたかった、そこまでは間違っていないとしたら、どうしてあなたの名前を聞かせる、
それが分からないの」

ヒントを見せないといずみも浮かばれないでしょう。

「るみさんの発言を少し追加するとね、いずみが僕を愛してると思っているから、つい口を衝いて
出てしまった、と言ってたね」
「どうして?何かあるってこと?」
「分からないが、そう思ったからだと。間違ってはいないだろ?見る目があると思わないか?」
「そうだけど・・・あなた、何か知ってるの?」
「”ほんとだ!”って、納得の笑顔が返ってくると思ったが、不穏な表情とはね」

私が感じている以上に、いずみの浮かない表情は、深刻さを物語っているようです。

「だって見えないでしょ?るみさんの真意って何なの?私には分からないわ」

いずみには珍しく、かなりムキになっているようです。

「どうしたんだ?いずみらしくないだろ?フェイントも効かないほど深刻なのかい?」
「ごめんね?何も分らないって不安が先に立つでしょ?」
「はははっ、分かってるだろ?彼女は見る目がある、ただそれだけのことだよ。深い意味はない
と思うよ」
「深い意味?あるとしたら・・・タクマさんと私との関係しかないでしょ?」

超多忙の意味を話さないと、おさまりが付かないかもしれません。

「超多忙って話しただろ?」
「うん・・・木下さんが話したのよ。るみさんは傍で聞いていたから、それをあなたに話した
んでしょ?」
「その意味は理解しているだろ?」
「お仕事でしょ?」
「だろ?るみさんはそうは思わなかった。愛人関係が超多忙と理解したようだけど、僕から
それは違うって言えないだろ?るみさんの認識なら間違っていないどころか、それが正解じゃ
ないか?」
「そうかも?・・・私の思い過ごしかもしれないわ。でも、聞き流す事ってできないと思ったの。
間違った理解だったかもしれないけど、るみさんが警鐘を鳴らしてくれたと思えばいいんだわ。
そうでしょ?」


[42] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/02/23 (金) 14:29 ID:kyJyjI0c No.189674



るみさんといずみの認識には、計り知れない程の距離感があるように思えるのです。
ところが、るみさんの指摘が、いずみの懸念に影を落としたことは間違いないようです。
タクマさんとの距離感に一抹の不安を抱えていなければ、いずみが不安に襲われることは
全くない筈です。

「そういうことなら・・・アレか、いずみの宣言とは違った距離感になっていた、何となく
そう思っていたところにるみさんの問い掛けか、なるほどね」
「私はそうだとは思っていないのよ。でも、そういう目で見られたら、そうかなとも思えるの。
ほんとは少し心配になっていたところに、るみさんでしょ?驚きよりも怖さを感じたの。
帰りの飛行機の中で思い返したのね、その時までも落ち着かない気持は引きずっていたのよ。
驚きよりも何と言えばいいかな、不穏かな?徐々に怖さが襲ってくる感じだったの。
今もその気持ちが蘇ってきて、落ち着かない気持なの。でも、あなたからるみさんの真意が聞けた
から、少しずつだけど、不安が後退していくように感じるわ」
「言っただろ?るみさんの目は節穴じゃないって、はははっ」
「ホントだ!・・・少し戻ったかな?」

今度は明るく反応してくれます。
気持ちの切り替えが早いいずみですが、今回ばかりは、一気にとはいかないようです。

「無理もないか、何となく不安を感じる事ってあるからね。その原因がハッキリしていなくても、
そうだろうとは推測できるのに、そこまではまだ大丈夫とか、自分にいい聞かせることって
あるだろ?」
「あなたは違うでしょ?そんな中途半端な気持ならエンジニアは勤まらないって言っていたもの。
今のは私の代弁でしょ?」
「まぁ、そうかな?そうかも!はははっ」
「うふふっ、あなたって・・・今度るみさんに会ったらお礼を言わなきゃ、そうでしょ?」
「なんて言うんだ?”愛する旦那様”、かい?」
「言えないでしょ?だからね、”気付かせてくれてありがとう”、かな?」
「はははっ、それも言えないだろ?るみさんが困惑するだけだろ?」
「るみさんの意図に沿ったお返事だと思わない?」
「だとしてもだよ、終わった関係に水を差すことにもなり兼ねないだろ?」
「アレ?それじゃ最初に私が感じた懸念通りってこと?あり得ないんでしょ?」
「るみさんと僕?考えるまでもないだろ?」
「うん・・・それじゃ、あれね?聞こえなかった、知らなかったを通せばいいのね?」
「何事もなかった、それしかないだろ?」
「うん、三猿じゃなくて二猿ね?うふっ」
「ん?・・・サンエン?・・・はははっ、日光東照宮の?・・・ん?二猿?」
「三猿は、”見ざる、聞かざる、言わざる”でしょ?るみさんの声は聞こえなかった、だから、
お返事できないでしょ?でね、”聞かざる、言わざる”、二猿だと思わない?」
「はははっ、三猿は前にも話した記憶が・・・まぁ、僕達だけの無駄話としようか?」
「無駄なお話って、とても有益だと思わない?」
「僕達だけならね、分かるだろ?」
「うん・・・理解し合っているのはあなただけ、雑談も楽しいものね?」
「雑談はそこまでだね。詭弁は何処に行ったんだい?論点がズレていると思わないか?」


[43] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/02/23 (金) 17:16 ID:kyJyjI0c No.189684



そうだったと言う風に、目を見開き、

「詭弁って、自分を偽る事でもあるでしょ?間違ったことを正論と思わせること、そうだとしたら、
私の本意ではないってことでしょ?」
「だから詭弁なんだろ?」
「もしかしたら、何年も自分を騙し続けていたことになると思わない?そうとは自覚していなか
ったのに、るみさんの一言で目が覚めたと言っても不思議じゃないもの。
この場合は、タクマさんとの関係から派生したことでしょ?るみさんの本意って、”タクマさん、
それも一回り以上も年下の彼と仲良くし過ぎじゃない?小田さんを愛してるのなら、できない
ことでしょ?”って、そのような感じに聞こえたの。でも、これって後付なのね、その時は、
興奮が勝っていたから何も思わなくて。私の理解って間違ってないでしょ?」
「前にも話したが、いずみが決めることだよ。今までの発言も間違っていたとは思えないし、
思いたくもない、全てがいずみなんだから。言い換えるのなら、僕にとってはいずみが全て、
代わりなんていない、ただそれだけのことだよ」
「気にならないってこと?」
「詭弁を撤回しても、それはそれで受け入れるからね」
「うん・・・今の状況はまだ続くでしょ?だから、撤回は難しいかな?だって、サワちゃんは
あなたと私の愛人だもの。今思ったんだけど、タクマさんとの距離が想定以上に近かったのね、
久し振りってこともあるんだけど。それは間違いだって、るみさんに忠告されたと思いたいし、
るみさんの真意とはかけ離れているかもしれないけど、自分を戒めるキッカケにしたいの。
だからね、私が言った詭弁は、少し見方を変えて、タクマさんとの関係も、あなたから見れば
詭弁だって、ほんとは容認などしていないのに、私の性事情を考えれば仕方なく・・・
そう思えるの。あなたの真意は分かっているのに、あなたは理解していると自分を偽っていたの。
それって詭弁でしょ?」
「難しいね。詭弁でも何でもいいんだよ。いずみがいずみでいられるのなら、全て容認する。
僕のスタンスに変わりはないからね」
「うん・・・ありがとう。るみさんが気付かせてくれたって話したけど、ほんとはあなたなのね?
あなたの存在がるみさんを動かしたって、そう思えるでしょ?」
「はははっ、もういいよ。詭弁はここまでにしようか?」
「うん・・・何だかスッキリしたかな?タクマさんとは正しい距離感を持ってお付き合いするから、
るみさんにも誰にも不愉快な気持にさせないって誓います」

思わぬ提言とか行動を受けて、何かに気付かされることは、往々にしてあるものです。
るみさんの発言の真意を取り違えたとしても、いずみの琴線に触れたことは、間違いありません。
このように思い違いであっても、心の片隅に追いやられていた不穏な心理が、一気に改善される
ことを示す恰好の例えなのかもしれません。

5月にるみさんと会ったことは伏せたまま話を進めてきたのですが、今更その事を持ち出す理由も
ありません。仮に、るみさんが次回の乱交時にその事を話したとして、それをいずみが私に
問い質すことがあっても、単に確認する程度だろうと推測できますし、全く気にもせずスルー
するかもしれません。
結論が出ていることには、注力しないどころか気にも留めないのですから、戸惑うこともしばしば
ですが、いずみの心理の不可解さは、年月を経ても尚、脈々と続いていると言わざる負えません。


[44] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/02/24 (土) 11:50 ID:w0nkkFsM No.189716



「はははっ、そんなに大袈裟なものかい?」
「だって〜、イヤでしょ?不愉快な気持って。私はイヤだもの」
「まぁ、そうだろうけど、程度モノだろ?」
「私にはとても・・・琴線に触れたかな?」
「良い意味でなら、るみさんに感謝だね?」
「あなたにも?うふふっ・・・ではでは、元に戻して、カップルのセックスシーンを話すわね?」
「それだが、もう聞いたようなものだろ?詳細は必要ないから、必要最小限でお願いできない
かい?」
「分かったわ・・・るみさんとJINさんはベッドの端っこに座っていると話したでしょ?
だからそうなんだろうけど、私達は見学ってことになったの。
ほんと普通のセックス、恋人が愛し合うって感じかな?AVのように交接部分を強調するような体位
じゃないのね、あくまでも”愛”を前提とした性行為なの。
だから、あなたに指示されなくても、特にお話するようなことって、ないかな?」
「木下さんの観察は?」
「二人を見詰める私の様子かな?反省はしたでしょ?でも、それ以前の状況だから、それは考慮
してくれるでしょ?」
「ん?・・・タクマさんと?」
「うん、タクマさんね、椅子に座ってる私の左隣に寄り添って立っていたの・・・
あのね、聞かれる前にお話するわね、アレも勃っていたの。”ダブルタチね?”って私が彼を
見上げるように。
木下さんは少し離れて、どう言えばいいかな?ベッドと私が観れる位置関係、両方を交互に
観察できるところ、でも、私にはとても近いの。分かるかしら?」
「三角形かな?木下さんを頂点としたら、いずみへは短く、ベッドの二人へは長い辺で表せる
かな?いずみから二人までは一番長い辺、そうだろ?」
「不等辺三角形でいいんじゃない?私って小学生なの?うふっ」
「はははっ、済まない。微に入り細に入り過ぎたね?」
「おかしな人ね?ホント私のご主人様だわ、うふっ」
「同類?それなら喜ばないといけないね、はははっ」
「バカにしてるでしょ?」
「同類だろ?それなら僕自身をバカにしてることになるだろ?」
「じゃぁ、ないってことね?」
「ない!ない!はははっ・・・ダブルタチの続きを聞こうか?」
「えっ?それだけ・・・じゃないわね、分かるんだもの。あなたって、”その場に居たの?”って
聞きたくなるでしょ?」
「推測できるだろ?いずみの一番近くに居るんだから。いずみの行動は目に浮かぶかな?はははっ」
「だからご主人様なの。隠し事なんて無意味って知らしめてるんでしょ?」
「理解が早いから、次の展開も駆け足で進めてくれないか?」
「駆け足?アレも速かったかな?うふっ。その前にダブルタチでしょ?私達も”恋人のセックス”
ってタクマさんが少し屈んで。私が来る前に打合せしていたのね、”ほんとの恋人だろ?”って、
少し間を取ったけど、”そうね”って返したの。本気じゃないのよ、木下さんの指示ならそのよう
に見せないといけないでしょ?」
「本気じゃない?」
「本気じゃないけど、本気なの。木下さんの眼力に適うようにしないといけないもの。
理解してくれるでしょ?」
「恋人なら、絡んでいる二人を観ながらスムーズに進められるように愛撫した、だろ?」
「うん・・・タクマさんの腰に左腕を廻して、右手で・・・ソフトタッチかな?テントを張るって
言うんでしょ?もう待ちきれないって感じだったの」
「危ない?それはないだろ?」
「そう見せていたのかも?だって恋人なんですもの、うふっ」
「はははっ、よく分かったから、急ぎ足で進めようか?」

水を得た魚の如く、滑舌も生き生きとしてきます。
先程の苦渋に満ちた表情は、何処に行ったのか、聞きたくなる程です。
どうこう言っても、これがいずみであり、いずみなのです。


[45] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/02/24 (土) 19:03 ID:w0nkkFsM No.189730



「詳しくは・・・どうする?」
「お任せだよ。いずみの好きなように、それでも急ぎ足かな?」
「うん・・・あのね、セックスシーンはあなたにでしょ?私には終わったことだもの。
それよりも好奇心がそそられる、あれ?これって私かな?あなたなら関心を持つかな?
そのお話を聞いたの。あなたならきっと興味を持つと思うわ」
「それなら尚のこと急がないと、だろ?」
「うん・・・30分か40分程だったかな?木下さんの指示でJINさんとるみさんの絡みが終わったの。
終ったと言っても、少し前に”そろそろ終わろうか”って木下さんが。
だから、それからラストスパートかな?るみさんの喘ぎ声ってホント大きいのよ。
”私もそうなら恥ずかしいなぁ”とか思いながら、屈んだタクマさんとキスしたり、オッパイを
触られたり、相互愛撫かな?」

タクマさんとの行為中の淫靡な湿った音と合わさって、二人が交わす切なく途切れ途切れで
弱々しく、それでいて明確な意味を持った言葉を私に聞かせたいと話したのは、7月末の
”立ちんぼ”未遂が発覚したその夜の事です。
二人の性行為の様子は、当然推測でしかないのですが、相手が誰であれ、変態行為に及ばなけ
れば、大きな差異はないと思えるのです。
ですから、推測としたのですが、事実との乖離は大きくないと思います。

「それで思い出したが、覚えてるかい?」
「えっ?・・・それでって?・・・あっ?行為中の録音のこと?」
「二人で会っていないんだから、無理な話だね」
「うん、まだその機会ってないでしょ?これからもあるかは分からないし。私にお任せでしょ?
あなたの指示じゃないもの。だから、”機会があれば”に訂正してもいい?」
「はははっ、弱気だね?・・・ん?宗旨替え?違和感があるね」
「あなただわ。ほんとに私の話を真剣に聞いてくれるんだもの。迂闊なことは言えないわね」
「だったら、説明しろよ」
「好奇心がそそられるとか興味を持つとか話したでしょ?木下さんから聞いたのね、だから、
その時でいい?」
「時系列?まぁ、任せるよ」
「うん・・・それでね、私達がベッドに・・・どうしよう、性行為なんて話しても興味もない
でしょ?そうだわ、私が感じていたことね、あなたが聞いたら不愉快かもしれないけど、
そうだろうって思っていたから話さなかったのかもしれないけど、自分の気持ちに正直になり
過ぎかも?」
「見ないね、正直ないずみなら遠回りは不要だろ?」
「うふふっ、一緒ってイヤでしょ?同じ土俵は大嫌いだもの、そうでしょ?」
「そうだから話さなかった?それが今とは、どういう風の吹き回しなんだ?」
「避けられなくなったかな?その時が来たのかも?」
「はははっ、避けて欲しいとは言わないから、話せよ」
「あのね、体位って人それぞれだと思うでしょ?でもね、そんなに変わらないものなの。
変態とか変わった行為じゃなければ、そうだって思うの。これって、私の経験から導き出した
結論だから、かなり信憑性があると思うの。あれ?そんなに沢山の経験をしたのかな?うふっ」
「まぁ、普通じゃないだろ?その経験から導き出したことかい?」

一呼吸を入れるように、少しの間合いを取ります。


[46] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/02/25 (日) 11:52 ID:YuiHDxyM No.189756



「あなたが中心なの。それは分かるでしょ?・・・だからね、比べてるんじゃないのよ。
それは分かってね?」
「回すなよ、目が廻るだろ?はははっ」
「体位って話したでしょ?タクマさんも私の結論から逸脱していなくて、”アレ?同じだ!”
って思ったの」
「比較してるじゃないか?」
「あなたは唯一無二の存在・・・そうか!あなた以外は人間だと思わなければいいんだわ。
それなら同じ土俵じゃないでしょ?」
「比較心理学?・・・それで動物かい?」
「タクマさんは差し詰め子犬って感じかな?・・・あのね、動物以外も比較対象になるのよ。
知ってた?」
「正常な人間と異常者の心理だろ?」
「あなたは正常?・・・アレ?変態の入口に佇んでいるんだもの変態予備軍ね、タクマさんは、
DPも経験してるから普通じゃないわ。彼も変態予備軍ね?それなら比較心理には当てはまらない
から、比較なんてできないでしょ?」
「持って回ったが、同じ土俵に戻ったじゃないか?はははっ」
「変態予備軍同士の比較?ほんとだ!損しちゃったな、うふふっ。気を遣うって疲れるわね?
あなたなのに、あなただからかな?」
「変態予備軍の人間と子犬かい?どうでもいいから進めてくれないか?」
「うん・・・性行為ってどうしても男性主導でしょ?体位もそうだもの。恋人同士のセックスが
課題なんだもの、そうなるのは仕方ないの。あのね、正常位で挿入、少ししてから私を抱き起こ
して騎乗位、私を廻してお尻を彼に向けさせて体を倒させるの。挿入部分が見えるでしょ?
それから彼が体を起こしてバックの体勢に。その間一度も抜いていないの。あなたと同じでしょ?」
「はははっ、最近ならいざ知らず、遠い昔の事じゃないか?」
「でも、そうだったでしょ?だからね、体位って話し難いかなって。心配し過ぎ?」
「昔の僕を体現?タクマさんが想起させたとはね、彼を通じて昔のいずみを見たと思ったが、
僕も引き出されるとは、タクマさんは只者じゃないね?はははっ」
「一人二役?雌雄同体ね?」
「いずみと同じじゃないか?」
「バイってこと?」
「見解は?」
「ストレートだと思うけど、甘える子犬のようなところもあるから、もしかしたら、かな?」
「見えないのなら見えるように。まぁ、暴露までは必要ないだろ?自然体で見えるのなら、
いずみに気を許している証拠だろうからね」
「うん、何も見えない方がいいかな?雌雄異体であって欲しいわ」
「はははっ、入れ込み過ぎには気を付けるように。いいね?」
「はい、”御意”で良かった?うふふっ」
「ラジャー!」
「あなたってほんとおかしな人、出会えたことが奇跡だわ」
「奇跡はいいから続きを軌跡しろよ、はははっ」
「トレースね?体位の続きね、バッグから正常位に戻して、そこまではあなたと同じなんだけど、
それまでに何度か逝ってるの。それはいいかなって思ったんだけど、話さないといかないかなって。
でね、そこからが違うのね、私の後ろに回って横向きで挿入、体を密着させるの。
お顔は見れないけど、後ろから抱かれるって、とても安心感があるの。全てを預けてるって感じ
かな?でも、体だけ、心はそこにはないの。分かるでしょ?」
「分かったことにするから、ラストスパートに入れよ」
「それでお終いなの。そのまま発射して・・・」
「木下さんの指示は?」
「正常位の時に、アレ?何て言うんだろ?後ろ横から挿入する体位って」
「側位だろ?」
「そう言うのね?木下さんが”終わろうか?”って正常位の時に。逝きそうだった時なのよ、
酷いでしょ?観察ってほんと自分勝手な行為、監視って感じだわ」
「サーベイの方がマッチするかもね?」
「調査ってこと?」
「あれだよ、性行為の実態を究明することが木下さんの真意だろ?そうならサーベイと言っても
間違ってはいないだろ?」
「観察は単に観るだけ、エロ小説に反映させるには観るからの派生、想像が必要ね?
そのためには調査ね?だから、録音も録画もしない、木下さんの感性、想像力と観た光景が
ハーモニーとなって言葉を紡ぎ出す、そうでしょ?」
「はははっ、やはり詩人だね?」
「私の感性って、突き詰めれば夢の中に漂っているみたいなの。ふとしたキッカケで自然と
言葉が浮かんでくるの。それって詩的でしょ?」
「成り切っていないか?はははっ」
「だって、木下さんには私はヒロインなんだもの、うふっ」

こういう纏め方は秀逸そのものです。
上手くオチへと導いていくのですから、次の言葉が出ないどころか、ここで終了と示唆している
のです。


[47] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/02/25 (日) 15:21 ID:YuiHDxyM No.189767



「単なるヒロインじゃないだろ?」
「えっ?・・・どういう意味なの?」
「エロ全開だろ?単にヒロインじゃ物足りないだろ?」
「・・・そうか!スーパーヒロインね?うふっ」
「スーパーエロウーマン?これの方がしっくりくるね」
「ラストスパートって意味がないわね?うふっ」
「はははっ、済まないね。じゃ、続けてくれるか?」

私が迂回したのですから、いずみの示唆には実感がこもっています。

「はい、ストレートにお話しますから、真正面から受け取って下さいね、うふっ」
「はははっ、気になる事象がそこに来ているのに、寸止めしたんだから、申し訳ないね」
「寸止め?セックス用語から離れられないの?・・・アレ?その話だもの、ちょこっと勇み足
でした。
それでね、私達が絡んでいる時ね、JINさんとるみさんはシャワーを済ませて、JINさんが後ろから
抱きしめる体勢で、空いた椅子に座っていたの。
タクマさんと絡んでいる時は分からなかったのよ。終わってベッドを降りた時に、目に飛び込んで
きたって感じかな?」
「木下さんと話していた?」
「そのようには見えなかったけど、行為中は集中してるから何も見えないし、見たいとも思わない
もの。終わって初めて、”そうなんだ”って感じなのよ」
「まぁ、そうだろうね」
「でね、木下さんが”シャワーを済ませたら少し休憩しようか?”って。それで、るみさん達も
シャワーを終えて鑑賞してたって分かったの。
それでね、休憩は30分程だったかな?バスルームから出て直ぐに木下さんに呼ばれたの。
タクマさんは不満そうなお顔でベッドの端に座っていたわ。だって、るみさん達ってラブラブなん
だもの、面白くないでしょ?一人ぼっちなんだもの。
でもね、木下さんのお話って直ぐに終わったのね、”肩の力を抜いて自然体で、いいね?”って。
分かるんだもの、次は頑張ろうって思ったのよ。でも、二回戦はお相手を代えてJINさんと恋人
だもの、余り変わり映えしない情景しか描けなかったかな?って。ベッドを降りて直ぐに木下さん
の表情を見たのね、何とも言えない複雑なお顔なの、気になるでしょ?JINさんに”後から行くから
先にシャワーを”って、木下さんのところに行ったの。
タクマさんとるみさんは、先程のるみさん達のように椅子に座って私達を観ていたのね。
ベッドを降りた時から、彼の視線が付きまとうって感じで、どうしても意識してしまうの。
でもね、木下さんの傍に行く前に、タクマさんとるみさんに、”スタンバイするように”って
木下さんが。お人払いって感じだと思ったわ」
「二人に?タクマさんかな?聞かれたくないと思った、そうかい?」
「それは分からないけど、直ぐ近くに居るのよ、普通に話せば間違いなく聞こえる距離だもの」
「木下さんの反応は?」
「”変わらないね。タクマさんとの距離は近過ぎると思っていたが、そうでもないの?”なの。
どうお返事したらいいのか迷ったのよ。でも、”JINさんより少し距離が近いかな?”って、
正直に話したの」
「ん?正直?」
「だって、とても近いって言えないもの。あっ?るみさんから何か聞いたでしょ?」
「正直に?」
「あなたは嘘をつかないもの・・・アレ?わたし?それって過去の事でしょ?認識の違いで嘘じゃ
ないもの」
「都合のいい言葉だね?はははっ」
「過去は振り返らないんでしょ?今を生きるんだもの、気にしないのに拘ってない?」
「そうだね・・・るみさんか・・・仲良しに見えると言ってたね」
「それだけ?」
「聞きたいかい?」
「あれば・・・どうなの?」
「意識的だと。タクマさんはいずみにすり寄っているけど、いずみは”よしよし”って感じ。
だからね、仲良しは意識的だと。彼女は見る目があるね」
「ほんとだ!あなたを愛してるって見抜くんだもの。人って見た目で判断できないわね」
「ん?正直過ぎないか?」
「えっ?・・・ほんとだわ、るみさんに叱られそう、うふっ。真実を見抜く鋭い視線を持った女性、それはるみさん、ほんとそうでしょ?」
「だね。性行為に関わる仕事に身を置いているからって、色眼鏡で見たらしっぺ返しをお見舞い
されるかもしれない。いずみだって見方を変えれば、そう言えるかもしれないんだからね」
「うん・・・あなたとだから、このようなお話ができるの。他の人とはそのようなお話はしない
って、約束するわ。信じてくれるでしょ?」
「理解している。ただね、安売りはしない様に、いいかい?」
「信用の安売り?・・・そうか!口にしなくても実行することね?不言実行、これね?」
「分かってるのなら、尚更だろ?」
「はい、分かりました・・・続けるでしょ?」

るみさんから聴取したプレイでは、この後は4Pの展開だと思われます。


[48] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/02/25 (日) 17:01 ID:YuiHDxyM No.189770



「交代の次なら乱交かい?」
「うん・・・4Pはそうなのよ。でも、その前にるみさんがDP・・・私が来る前から決めていた
みたいなの。とてもスムーズにそうなって行くんだもの、”アレ?”って感じでズンズン進んで
行くのね。木下さんから何も指示されていなかったし、想定もしていなかったというか、
それって何も思わないのね。セックスプレイその一言だもの。それ以上も以下もないただただ
性行為に没入する、それが木下さんの感性に訴えかけられれば何も言うことはないって、
そんな感じで臨んでいたから、るみさんのプレイがDPでも驚かないんだけど、私が”アレ?”
って思ったのはね、”私じゃないの?”って強い気持ちがあったからなの」
「いずみの弁を借りれば、”スーパーヒロイン”かい?」
「あなたなら、”スーパーエロウーマン”でしょ?」
「フレーズは違っても、その意味するところに大きな差異はないだろ?」
「看板だけでは分からないってこと?」
「我々以外はそうだろうね。そうあって欲しいだろ?」
「私達にしか通じ合えないフレーズ、それって”心の絆”でしょ?」
「誰にも見えない絆だからこそ、見えないものまで見えるんじゃないか?」
「真実の心ね?心が繋がっていれば・・・アレ?心だけ?うふっ」
「はははっ、それは・・・充填途中だからね、石黒さんの努力に報いたいね」
「うふふっ、待つもの楽しみでしょ?ずっと待たせて欲しいわ、うふっ」
「何度か聞いたフレーズだね。僕に向けられるとは思わなかったよ」
「フェイントでしょ?あなたはあなたなの・・・アレ?何度も・・・しつこいいずみでした、
うふっ」

話を逸らすのも、タイムリーに軌道修正するのもお手のモノです。

「続きはサラッと進めないか?」
「うふふっ・・・るみさんのDPね、私の時と同じなの。JINさんに乗っかった彼女のアナルには
タクマさんが挿入、ねぇ、同じでしょ?」
「そこから見えてくるのは?少しの不安だろ?」
「バイ?私だけなら決め付けるって不謹慎だと思っていたの。でも、目の前で・・・
やはりそうなんだって、少しの確信が芽生えてきたの。
でも、でもね、タクマさんに確認したんじゃないから、ほんとの事は分からないもの。
そうでしょ?木下さんの指示だと思うから、JINさんでもおかしくないでしょ?」
「尤もな見解だね」
「私ね、バイなら許せるんだけど、ホモは許容できないの。だって、彼ってバイでしょ?
私としてるんだもの。特にアナルに関心があるとは思えないし・・・愛撫する時にアナルを刺激
する事もあるのよ。それって私を興奮させる一つのアイテムだから、そうとは言えないでしょ?」
「全面擁護かい?」
「不安があるからそうなんでしょ?でも、全面的じゃないわ。バイだと確信はないけど、事実を
事実として見れば、やはりバイに行き着くの」
「いずみからの一方的な見解だが、それを信じるのなら、バイかもしれないね。でもあれだよ、
絵を描くためのアナルならバイとは言えないだろ?」
「そうだわ!きっとそうよ、バイなんてあり得ないもの。あっ?あなただってアナルに挿入した
でしょ?でも、バイじゃないでしょ?」

特に拘る理由もないのですが、バイであって欲しくない気持が全面に出ているのでしょう。


[49] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/02/25 (日) 21:51 ID:YuiHDxyM No.189789



「おい!おい!疑問かい?完全無垢なヘテロになんという言い草だよ、はははっ」
「おかしいわ。それを言うのなら完全無欠でしょ?そんな熟語ってないわよ」
「完璧を強調したかったんだが、勇み足でした、はははっ」
「あなたって、ほんと自己中の塊ね?」
「そうだとしても気にならないだろ?さてと、タクマさんへの疑問が晴れたのなら、ほんとの
ラストスパートに入らないか?」
「うん・・・4Pだけど、るみさんが私に囁いたことを話したでしょ?だから特に話すことも
ないかな?プレイのことは話さなくてもいいんでしょ?」
「推測できるからね。変わったことがあればと話したが、他になければ・・・」
「じゃ、木下さんとお話したこと、それを話すわね。
4Pが終わったのは、午前4時頃だったの。お隣のお部屋って話したでしょ?二部屋が続いている
んじゃなくて、ほんとにお隣のお部屋なの。だから、私達の会話は誰にも聞かれることは
ないのね。タクマさん、JINさん、るみさんは、そのままお部屋に朝まで居たと思うけど、
ハッキリしたことは分からないの。カップルの絡みは30〜40分程で、シャワーと休憩を合わせ
ても30分くらいだったかな?だから、10時前から始めたから時間を計算すると、4Pは・・・
1時間30分程かな?途中で木下さんの指示があって、ちょこっと中断することもあったから、
カップルよりも長くなったのね。ほんとにいいの?プレイを話さなくても」
「はははっ、話したいのかい?」
「だって、ガラス張りのいずみなんですもの、うふっ」
「今も言っただろ?いずみ次第だよ」
「うん・・・あなたなら分かっていることばかりだから、お話に移ります。
最初は、当然だけど、木下さんが観た私の様子とその時の私の気持ちを聞かれたの。
これって、木下さんとした時も、その時によるんだけど、聞かれることもあったの。
だって、エロ小説のネタでしょ?」
「それは分かるんだが、オミットしていないかい?」
「えっ?・・・木下さんとのことを話すの?」
「時系列なら、ショートし過ぎだろ?」
「分かるのね?流石あなただわ」
「はははっ、いずみだからだよ。何もないとは思えないだろ?」
「うん・・・お部屋に入って、私はシャワーを済ませていたから直ぐにでもお相手できる状態
だし、木下さんの様子が気になるでしょ?興奮してる様に見えるんだもの。
先程まで4Pの激しい絡みを観ていたのよ、興奮しないってあり得ないでしょ?
ましてや木下さんなんだもの」
「ハイドに変身したのかい?」
「ジキルを少し拡大させたって感じかな?でも、話したでしょ?洗ったって言っても、二人に
中出しされたんだもの、木下さんがハイドに変身したのなら分からないでもないけど、
そこまでは望まないかな?ってちょこっと聞いたの」
「やはりいずみだね、優しさが前面に出ているのは嬉しい限りだよ、あはははっ」
「これって約束だもの。交換条件を全うしてもらうための前戯みたいなモノでしょ?うふっ」
「ん?前戯?・・・テコキかい?」
「そうかな?あのね、抱き付いて耳元で、”大丈夫?”って聞いたのね。そしたら、”頼める
かな?”って。本番はしないって思っていたけど、興奮すると予想外の行動に出ることも
あるでしょ?それならそれでいいんだけど、どちらにしても、お洋服を脱いでもらわないと
いけないでしょ?スーツなんだもの、裸まで時間が・・・うふふっ、そんなに変わらないわね、
ちょこっと大袈裟に言いました」
「いずみは?まさか裸じゃないだろ?」
「お隣と言っても廊下に出るのよ、真夜中でもそんなのできないでしょ?」
「危険性の何たるかが分かってきたようだね」
「持って回るんだもの。4年の歳月は人を成長させるのよ。ましてや私なのよ、成長著しいん
だから、うふっ」
「二人羽織が懐かしいだろ?はははっ」


[50] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/03/02 (土) 12:00 ID:KXGlItqg No.189962



「もう!・・・ウッ!つい名前を言いそうになったわ。忘れていたのに思い出させるって
どういう魂胆なの?」
「思い出さないと思ったが、まだくすぶっているんじゃないだろうね?」
「アレのこと?確かに大きかったけど、それだけじゃ満足できないでしょ?心がないとダメなの。
分って・・・あっ?それを・・・私の愛する人はあなただけなの、ご満足?」
「はははっ、記憶とは厄介なモノだね?」
「ホントそう思うわ。忘れてると思っていても、何かのキッカケで思い出すんだもの。
ホント面倒くさいモノだわ」
「面倒くさいついでに、見えるように聞かせれくれないか?」
「お洋服でしょ?すぐ隣なんだもの、裸でも問題ないかなって思ったの。信じられない?」
「ついさっき否定したのに?」
「”思った”って言ったでしょ?木下さんはほんとに紳士よ。”下着はいいけど、ワンピースは
着るように。いずみちゃんはそのままでいいと思っただろ?”なの。ホント読まれてるのよ。
でも、そう思ったのは、木下さんに裸のままって指示されたらって、先回りして心の準備を
していたの」
「そうだろうね、信じるよ」
「嬉しいわ・・・でね、キャミとワンピースはクローゼットに、バッグとヒールも。
だけど、パンツはプレイの時に脱いだままで放置されていたから、見付からないの。
探してたら、タクマさんが”お土産にもらったよ”って、ヒラヒラって振るんだもの、恥ずかしい
でしょ?直ぐに取ろうとしたのね、彼ね、ベッドの端に座っていたんだけど、仰向けに寝るの。
木下さんはドアのところまで移動していたから、早く返してもらわないといけないでしょ?
振り返って、”用意するから少し待ってくれる?”って少し大きな声で。ベッドに乗っかったら
抱き締められて”いつ会える?”って。そんなの考えられないでしょ?ほんと困ったのよ。
それでね、苦し紛れってこういう状態を言うのね?”7時前に掛けるから”って、それしか思い付
かなくて。”チュッ!”ってキスして、パンツを返してもらったの」
「狼狽えるとは、いずみらしくないね」
「そうでしょ?これも予想外、ほんと酷いんだから。私の窮地を楽しんでいるとしか思えないわ」
「予想外?もう一つあるんじゃないのか?」
「二度あることは三度ある、あれのこと?」
「なるほど、真打はこれからだね?」
「うふふっ、これから話すことがそれになるかな?誘導したんじゃないのよ、お話の流れだから
そう思ってね?」
「いいよ。続きは?」
「慌てて用意してたら、木下さんが戻って来たのね。でも、キスしてるところは見られなかった
から、ホッと一安心。るみさんとJINさんは椅子に座って、意味深な含み笑いなの。
木下さんが気付いたかは分からないけど、その時は何も言わなかったから、心の中で”セーフ!”
って。それでね、下着とバッグとヒールを持って、お隣のお部屋に移動したの」
「そこで、木下さんに”大丈夫?”と訊いた場面に繋がっていく、だろ?」
「なんかお芝居みたいね?あれ?そういう目でみたらお芝居かもしれないわ。エロ小説家と
ストーリーを体現する女優、女優は言い過ぎね?うふっ」
「まぁ、僕以外なら・・・予想外には気を付けるように、いいかい?」

予想外とは予想と違った成り行きでしょうが、この場合は、思いがけない展開と理解するのが
正解のように思うのですが、木下さんの弁が待たれます。



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