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絆のあとさき 4

[1] スレッドオーナー: 小田 :2024/01/07 (日) 23:07 ID:LKPNupfo No.188184



先にも書きましたが、昨年後半から投稿ペースが失速しています。
理由は多岐に亘りますから、ここでは取り上げませんが、時間に余裕が出来れば、
引き続き投稿していきます。

終わりのない旅路のような日常ですから、確かな目標を決めて投稿を開始した
のですが、一つの出来事に捉われ過ぎ、展開が非常に遅くなっています。

今投稿している出来事の後に待っている出来事など、多くはありません。
年末に向けて、少し大きな出来事が明るみに出ます。
その前後をどのように書き表すか、悩みは尽きません。

数年来コメントを頂いている皆様、読んで頂いていると思われる読者の皆様、
時間が取れる時としか今は言えませんが、できる限り投稿を続けていきます。

では、今後も読んで頂けることを願って、進めていきたいと思います。


[2] Re: 絆のあとさき 4  修司 :2024/01/08 (月) 01:03 ID:DH6eNXlI No.188190
小田さん

2024年 あけまして おめでとうございます。

仕事はじめ そのあとの連休は・・・ゆっくりお休みされた居るのでしょうか

龍年・・・今年は 運気も上昇 登り龍になると いいですね

ご家族の皆様のご健康を願っています。

これからも・・・投稿をお待ちしています。


[3] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/01/08 (月) 11:06 ID:0zZJuRxw No.188203


修司さん、明けましておめでとうございます。

今年は例年に比して暖かいお正月でした。
ただ、コロナ前以上の忙しさが戻って来たように感じています。

読んで頂いていることに、深く感謝します。
とても長く感じられる過去を振り返っても、昨日の事の様に思い起こされます。
何時頃から読んで頂いていたのかも、思い出せないのですから、
不謹慎極まるとお叱りを受けるかもしれません。
それだけ長くお付き合い頂いていると、自分勝手に喜びを嚙みしめています。

不謹慎が許されるのなら、株の格言で”辰巳天井”というのがあります。
辰年それに続く巳年は、株価が高値を付ける事のようです。
そうであるのなら、株の相場を離れても、今年は運気が上昇すると思いたいですね。

では、今年も拙い文章に終始するかもしれませんが、読んで頂けたらと思います。


[4] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/01/08 (月) 11:10 ID:0zZJuRxw No.188205

文字化けしていますね。

ひらがなに置き換えます。

「自分勝手に喜びをかみしめています。」です。


[5] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/01/08 (月) 14:58 ID:0zZJuRxw No.188215


続きです。




「何処に・・・いずみより入口側かな?」
「そうよ。L字のカウンターって話したでしょ?そのカウンターのコーナーのところで、
入口を見る様に立っていたの。だからね、私の斜め後ろでおトイレへの狭い通路のところなの、
分かるでしょ?」
「二人のリザーブ席を用意したからだとしても、彼女のポジションに変更はなかった、
そうじゃないか?」
「そうだと思うわ。何となく慣れた場所って傍目にも分かるでしょ?だから彼女をどうこう言え
ないのは分かるんだけど、ほんの少しでいいから気配りがあったのなら、彼女の評価は違った
モノになっていたと思うわ」
「嫌い?」
「そうとまでは言えないけど、聞き耳を立てられてると勘繰っても間違っているとは言えない
でしょ?だからね、好きとは言えないかな?」
「それならオーナーもだね?」
「厨房って彼女の後ろのカウンターの奧なのね、さっき話したでしょ?その彼女と話していたと
思っていたのに、聞いていたなんてほんと油断も隙もあったものじゃないわ。
あっ?二人共ね、目線はお店の入口に向けられていたから、彼女の後ろから話しかけていたと
思っていたの。それなのに、二人は、少なくともオーナーは上の空だったってことね」
「そうなるね。オーナーとは・・・」
「ごめんね?抜けていたわ。あのね、初めて会った時、タクマさんとは二回目の時ね、その時に
紹介されたの。一回目の水曜日の帰りに、”次からこのお店で待ち合わせ”って、タクマさんから。
待ち合わせ場所は、さっき話したでしょ?
でね、その時のオーナーの印象は気さくで話しやすい人って、どちらかというと高評価だったの。
さっきね、ソフトなキスをしたでしょ?あれって初めてじゃなかったの。
お店を出る時ね、”ハグしよう”って、とても積極的なのに嫌味もなくて、爽やかな雰囲気が
距離を縮めたと思うの。何も思わずにハグして、”チュッ!”ってソフトにキスしてね、
二人共笑顔でそっと離れたの。そしたらオーナーが、”楽しんで!”って言うのよ。
どういう関係か分かっていないと言えないでしょ?タクマさんから既に聞いていたんだって。
でも、特にイヤだとも思えなくて、”えっ?・・・うふふっ、ありがとう”って、お返事したの。
初めて会ったのに、性行為をする相手でもないのに、とても身近に感じられたの。
不思議な感覚だったわ」
「垣根は低い、かい?」
「でも、それだけのことよ。お部屋の変更とかオーナーがどうとか、そんなの全く関係ないもの。
ホントだからね?」

オーナーとの接触は、蚊が止まったようなものなのでしょう。
彼とのキスも、性的なキスでない限り、挨拶みたいなものと認識している筈です。

「そう理解しておくよ。ところで、SNSの内容は?」
「そうだったわ。オーナーの人となりを話したから、遅くなりました、うふっ。
SNSのこと、立ちんぼの場所とかね、確認するために録音してるから、続きを聴いてくれる?」


[6] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/01/08 (月) 17:19 ID:0zZJuRxw No.188227



『あれ?そうだったかな?いずみちゃんも乗り気だっただろ?』
『お互いじゃない?持ち出したのはタクちゃんなのよ、覚えてる?』
『僕もお歳かな?直ぐに忘れるんだものね。信じる?』
『信じないわよ、うふっ。もういいでしょ?それよりもう一度確認するわね?』
『打合せは済んだのに、まだ何かある?・・・そうか!いずみちゃんが負けたら、即ヤルだろ?』
『その日は時間がないでしょ?直ぐ決まれば私の勝ち、時間がかかれば、もし11時前までなら、
例え私が負けたとしても、そんな時間ってないでしょ?』
『それだよ、時間を決めていなかっただろ?9時過ぎに立って11時前までなら2時間弱だろ?
そんなに長く同じ場所に居られないだろ?長くて30分くらいじゃないか?』
『えっ?短くない?何人来るかも分からないのに、時間で区切るって不公平だし、来る人にも
失礼でしょ?』
『いずみちゃんがどう思っているか分からないけど、何人も来るとは思えないよ。せいぜい5人
までだと思うけど』
『失礼ね・・・あれ?若くないから?』
『今は若い子が多いだろ?比べるなって言っても無理だろ?』
『そうだとしてもよ、私なりの”売り”はあるでしょ?』
『だからね、僕なりに考えて・・・容姿端麗、NGなし、要相談・・・歳をどうしようかって
考えたんだけど、サバ読んで30歳が限度かなって、最後に30歳。場所は洋品店の前、時間は
午後9時過ぎから』
『もっと若く見えない?ダメかしら?』
『ムリ!ムリ!嘘が大嘘になるだろ?』
『仕方ないわね。私って分かるように目印が必要じゃない?』
『あそこで”立ちんぼ”なんて見たこともないから、必要ないだろ?』
『私は必要かな?サングラスはどう?』
『他の人に見られたくないのか・・・いずみちゃんの気持ちは分かるかな?』
『でしょ?声を掛けてきたらサングラスを外して・・・うふふっ、美人のお顔を見てもらうの』
『言うよな・・・あっ?それは名案だよ。ビフォーアフターの衝撃、これだね?』
『あれ?そんなに違う?あれね、美人が超美人に変身、声も出なくて喉を詰まらせながら頷いて、
やっと出せた言葉が、”5万円でも安い”じゃない?』
『脳天気だな、そんなの妄想だろ?僕の勝ちに決まってるよ』
『分からないわよ。水曜日が楽しみね?』
『平行線だろ?それより、決めることがあるだろ?』
『時間のことね?・・・二つ案があるわね。時間と人数、30分は短いと思うのね、時間通りに
来れない人もいるかもしれないでしょ?だから、10時まで。でも、声を掛けてくる男性が途切れ
たら、そうね、10分間としようか?そこで中止。但しね、タクちゃんが言うように、少なくとも
最初の30分は立ちんぼを継続するの。どうかしら?』
『誰も来なくても、30分は立ちんぼ?そこで終了だろ?それなら、部屋に行けるね?』
『そうなればね?・・・あれよ、SNSで故意に時間を変更しないでよ。それが分かったら・・・』
『そんなのある訳ないだろ?やりたくてもやれないのは分かっているだろ?』
『お利口さんね?”ヤリたい”は分からないけど、”ヤレない”は分かるわよ、うふふっ』
『勝敗はまだ決まっていないだろ?それより、もう抜け落ちはないかな?』
『そうね・・・お洋服はどうする?私に任せてくれる?』
『目立つ服装がいいだろ?マイクロミニのワンピースとか、真っ赤なら遠くからでも判るだろ?』
『ズバリそのモノじゃない?それはないかな?・・・あのね、膝上丈のノースリーブのワンピース、
色は白ね、それにサングラスでしょ?目立たない訳がないわよ。それでいいでしょ?』
『まぁそうかな・・・これで打合せはお終いだろ?アト20分はあるから・・・あれ?』
『ダメよ・・・遅くなったわ。10時には終わらせて帰る予定だったのに、何かを決めるって大変、
そうでしょ?』
『僕も大変だ・・・だろ?』
『ダメよ、何度も言わせないの、分かった?・・・ねぇ・・・チュッ!今夜はここまで。
水曜日が楽しみね?』
『分かったよ。服装とサングラスは追加しておくから』
『お願いね?・・・じゃ、証拠の録音はここまで・・・あっ?もうダメだったら・・』


[7] Re: 絆のあとさき 4  てっちゃん :2024/01/10 (水) 01:43 ID:oZP7KzWg No.188253
小田様

今年も宜しくお願いします。
また、新スレッド立ち上げありがとうございます。

だんだんと現在に繋がる道筋が見えてきた様に思えます。

想定されているキリが付くまで、執筆される事は間違いないと思っておりますが、
お仕事も忙しくされている様で、くれぐれも無理はなさらぬ様にお願いします。

こちらは、これからも、楽しみにしつつ、静かに、焦らず、拝読させて頂きます。


[8] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/01/13 (土) 12:03 ID:DKB63IC2 No.188355


てっちゃんさん、コメントをありがとうございます。

最古参と言っても過言ではないですね?
当初の頃からお付き合い頂いているのですから、頭が下がる思いです。

投稿中の出来事は”東京編”と言えるかもしれませんが、その翌年も時を経ず
東京に出向きます。
今回はその年(投稿中)の年末までの投稿予定です。

彼女の性事情も年を追うごとに、沈静化していきます。
その過程も投稿したいとも思うのですが、時間に追われる宮仕えでは如何ともしがたく、
また、エロから離れた投稿はここには馴染まないとも思っています。
加えて、私と会わなかった"空白の3年間"についても、私なりに纏めてみたいとも
思うのですが、全てが時間との競争になりそうです。
その3年間について、てっちゃんさんも含めて他の読者の方達から、簡単に纏めたと
驚きのコメントを頂いた事は、忘れてはいません。
それよりも先に現行の投稿を優先させたのは、時系列を遵守したからなのですが、
会社経営への一歩が始まった経緯を綴りたかったのが本音なのです。
おかしなことをと思われるかもしれませんが、”空白の3年間”は3年が経過するまでは
話さないと彼女が決めていたからに他なりません。
ですから、時系列なのはそうなのですが、彼女の性事情と相まって、会社のあり様を
学べたことは大きな成果だったと思っています。

これからの出来事も纏める時間が取れなくて、四苦八苦しています。
今後も投稿頻度が少なくなるかもしれませんが、てっちゃんさんの”言葉”をお借りして、
「静かに、焦らず」その時を待って頂けたらと思います。

では、今年もお付き合いの程、宜しくお願いします。


[9] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/01/13 (土) 16:33 ID:DKB63IC2 No.188368


続きです。




待ち構えていたように、レコーダーを止めます。

「説明してもいい?」
「レコーダーを取り上げようとした?違うな、ちょっかいを出した?」
「レコーダーを止めようとした時に、オッパイを触ってきたの、ホント子供なんだから」
「真っ暗闇では想像すらできないね、はははっ」
「聞えないことが闇ってこと?そうかもしれないわ。ある意味、百聞は一見に如かず、でしょ?」
「説明がなければ推測するしかないが・・・続きがあるのかい?」
「あると言えばあるかな?おさまりが付かない状態なのね、それは分かったでしょ?
若いからそうなんだって理解できるし、求められるのは嬉しいことでもあるのね。
それを見ていたオーナーがね・・・あっ?状況を話さないと分からないわ。
タクマさんがオッパイに手を伸ばしてきたから、右手でカバーしようとしたの。
打合せだけって決めていたから、線引きはハッキリさせた方がいいのは分かっていたのよ。
でも、打ち合わせも済んで気が緩んでいたと思うの。何度か関係を持っているんだから、抵抗って
おかしいでしょ?口では”ダメ”って言っても避けることってできないもの。
少し触らせたからって落ち着くなんてあり得ないのよ。輪を掛けるって分かってるんだけど、
ホテルに行く時間もないし、タクマさんはどこかの時点で諦めるしかないでしょ?
それでも、タクマさんがもっと先を求めているのは手に取るように分かるの。
これって、私の偽らざる気持ちなのね。
思い巡らした時間ってとても短いのに、あなたに説明すると遥かに長く感じられるわ。
気持ちって秒速だと思わない?」
「確かにそうかもしれないね。説明は第三者に理解してもらうことだろ?思った通りに話せても、
それで理解を得られるとは限らないからね」
「ねぇ、今の説明で理解できた?」
「いずみの気持ちは十分に。ただし、僕用にアレンジしていないかい?」
「う〜ん、少しかな?でもね、難しいのよ、状況の変化に対応するのって。落ち着かない不安定な
気持ちだったのはそうだと思うの。推されたらそちらに向いてしまうって、そんな感じだった
かも?」
「はははっ、イケメンにはあがらえない、それが本音だろ?」
「難しい判断だったのよ、ホントだからね。時間は厳守だもの、一度でも破ったら次もってことに
なるかもしれないでしょ?心を鬼にして、ホントだからね。だから時間との競争だったの」
「分からない説明だね」
「気持ちが先行していたから、それを先に話したかったのかも?自分でもよく分からないのね、
何だか分からない内に、先に進んでしまったみたいな。あれ?分からない渦に飲み込まれてる
みたいだわ。終わったことなのに、何だかフワフワする気持ちが残っているのかもしれないの」
「ますます分からなくなるだろ?オーナーがどうとか話し出してから、いずみの秒速の気持ちに
変質してしまっただろ?」
「うん、曖昧な気持って、きっと後悔が頭から離れないからだと思うの。今から考えても、
フワフワする気持ちを思い出すのは、そうだとしか思えなくて・・・」
「後悔?」
「うん・・・あなたに聞かれたらマズいってことは何もないの。タクマさんとはそういう関係って
分かっているんだもの。私の中の中途半端な気持がくすぶっていて、その気持ちが後悔に結び付い
て抜け切れていないのかも」
「はははっ、回り過ぎるだろ?寄り道どころじゃないね?ハッキリ言えないのかい?」
「お部屋ならいいのに、お店で・・・早く済ませたかったからなんだけど、それでも私の気持ちは
そうじゃないのに、そうだったかもしれないけど、全てそうだったんじゃないの。
ごめんね?昔の纏められない私に戻ったみたいだわ」
「何となく理解出来そうだね。いずみの気持ちは理解したとして、続けてくれないか?」
「あのね、オーナーの事から話すわね。お客さんが、男性4人って話したでしょ?
遅い時間だからコーヒーだけだったみたいで、直ぐに戻って来たの。でも、私達が話しているから
邪魔したらいけないと思ったのか、傍のカウンターにもたれて、聞いていたのね。
彼女も先程のところに戻って、同じように聞いていたようなの。
後で分かったことなんだけど、先程まで居たカップルは、その男性達と入れ替わるようにお店を
出たらしいの。私からは見えないでしょ?」
「入口に背中を見せているのは分かるから、理解出来るけどね。その男性達からは、見えなかった
のかい?」


[10] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/01/13 (土) 19:21 ID:DKB63IC2 No.188373



「そうなの、入口から見て左側の壁とカウンターが交わる隅のテーブルだったの。
これって、オーナーが小声で教えてくれたのね。どうして教えてくれたのか、分からないでしょ?
兎に角、私の直ぐ左斜め後ろに彼女でしょ?だからね、その人達からは見えない位置関係なの」
「要領を得ないとはこのことだろ?よく分からないけど、店に居る人物の位置関係は分かったよ」
「良かった!どう説明したらいいのか、難しいんだもの。
あのね、じゃ、オーナーが傍にいて聞いていたところまで戻すわね。
レコーダーを止めようとした時に、タクマさんがオッパイに手を伸ばしてきたって、話したでしょ?
レコーダーをテーブルに置いたまま、あのね、レコーダーはテーブルに置いて録音していたのね。
オッパイを触らせるにしても、少しの抵抗は必要でしょ?右手で彼の手首を掴んだのね。
それって、ジェスチャーみたいなものなの。二人共目が笑っていたんだもの、”いいね?”、
”いいよ”って、以心伝心かな?だからね、レコーダーのスイッチを切らないままで・・・」
「僕以外にも?それは聞き捨てならないね、はははっ」
「ごめんね?・・・じゃ、あなたほどじゃないけど、目でお話する、に置き換えて下さい。
ほんとにごめんなさい。怒ってる?」
「いいよ。比較は同じ土俵と取れるから、遠く離れたところとしてくれないか?」
「分かりました・・・でね、ここで止めたのはね、この後からシーンが変わり始めるから、
説明が必要かなって」
「それが録音されている?そうなのか?」
「うん、スイッチを切らなかったからだけど、正しくはそのまま放置していたの。オッパイを
触られた、触らせたかな?それに気持ちが向いていたから、すっかり忘れていたの・・・
あのね、ここでオーナーが出てくるの。続けてもいい?」
「やっとだね。待った甲斐があればいいんだが、はははっ」
「うふふっ、あなたって・・・」


『セフレなんだから、受け止めてやらないと可哀想だろ?』
『えっ?・・・そうだけど』
『だろ?オーナーは理解が早いね』
『時間がないんだろ?ここは大人のいずみちゃんを見せてやらないと』
『そうね・・・まだ居るんでしょ?』
『・・・大丈夫だろ?こちらに来ないと見られることはないからね。迷ってると時間がなく
なるよ』
『タクちゃん、テコキでいい?』
『挿れたら直ぐだから、いいだろ?』
『ここでは無理でしょ?スカートじゃないのよ』
『トイレは?』
『そうね・・・オーナーは見張っててくれる?もし来たら使用中ね?』
『使用中?オマンコとトイレの同時使用か、これはいいね』
『イヤらしいんだから・・・タクちゃん、行く?』
『・・・いずみちゃん・・・いずみ・・・』
『・・・うん・・・タク・・・うぐぐっ・・・』
『早く行けよ。何ならここでするか?サポートするぞ、はははっ』


直ぐに止めて、

「お洋服の説明は?」
「パンツ?」
「うん、打合せだけだと思っていたからだけど、もしかしたらって思わないこともなかったのね。
でも、ホテルまでは無理だって思っていたのと、冷房対策も兼ねてパンツにしたの」
「タクマさんの反応は?」
「あなたと同じよ、ご不満顔を隠そうともしないの。オトコって、スカートが好きよね?」
「同じ土俵は・・・」
「あっ?ごめんなさい。ちょっと反省!うふふっ。怒らないでしょ?」
「何度も同じことを指摘する気力も薄れてるから、それなりに注意してくれればいいよ」
「うん・・・ホテルならお洋服なんて関係ないでしょ?それでも、スカートって必須みたいに
思っていない?」


[11] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/01/14 (日) 11:32 ID:J9iEAGI6 No.188393



「はははっ、ソフトタッチ?いずみも?」
「私は・・・キスくらいならって感じかな?オッパイとかは周りの目が気になるでしょ?
だから、なくてもいいかなって。あればあるでいいんだけど、誰にも見られないところなら
って注釈が付くけど」
「レストランだから・・・ん?今までもお触りOKだっただろ?」
「フェイントって話したでしょ?スカートでもパンツでも同じだと思うのに、リクエストは
スカートなの。これって、ステレオタイプじゃない?女性はスカートって」
「返そうか?男性の希望がスカートもステレオタイプだと思ってる?」
「思い込み?そうなの?」
「タクマさんと僕がそうだとしても、ほんの一握りかもしれないだろ?」
「うふふっ、もしかして・・・”握り”に意味がある?」
「はははっ、深く考えないの。意識過剰じゃないか?」
「あなただからだわ。注意散漫だったら突っ込まれるでしょ?・・・あれ?意識過剰かしら?」
「過剰も過剰だろ?それ以上もない過剰だよ」
「ほんとおかしな表現だわ。でもあれね、”握り”と”突っ込む”って。思い出すでしょ?
おトイレでのこと」
「じゃ、続きに行くかい?」
「でもね、レコーダーはテーブルに置いたままだから、おトイレでのことは録音されていないわよ。
私の善処に掛かっていると言うんでしょ?」
「分かっているのなら、しっかりと説明しろよ」
「はい、分かりました・・・あのね、いつもの事なんだけど、録音してからあなたと聴くまでは
一度も聴いていないの。だから、見えないところは見えるようにするから・・・あっ?でも、
レコーダーのスイッチを切ったのは私だから、おトイレに居る時の状況は分からないわ。
オーナーと彼女が何か話しているかも分からないから、あなたじゃないけど、乞うご期待ね?
では、続きです」


擦れるような不確かな音が聞こえて、

『・・・お願いね?』
『あいよ、楽しんで!』

微かに足音が聞こえたように感じるのですが、それは事情を知っているから、そうだろうと推測
できるのでしょう。
ドアの開く音は拾っていなかったのですが、閉まる音はハッキリと聞こえます。

『ユカ、動きはないか?』
『お客さん?・・・酔っぱらいはイヤね?』
『どうなんだ?』
『楽しそうに話してるわよ。こちらには全く関心がないみたい』
『それなら・・・ヤッてるかな?』
『見たいんでしょ?ノックして入れてもらったら?』
『今回はスルーしても、近い内に実現できるだろ?』
『賭けの事?』
『無謀過ぎるな。いくら美人だと言っても歳を考えてみろよ、あり得ないだろ?』
『そうだけど、おとなしそうに見えて、相当なやり手なんでしょ?』
『タクがそう言ってたが・・・ベッドでは変身するとか。それか分かれば妥当な売値設定かも
しれないが、初めてなら分からないだろ?どう転んでも彼女が勝つとは思えないね』
『若く見えるけど、アラフォーなんでしょ?』
『一番エロい年齢だろ?その時まで体力温存だな』
『私はどうなるの?いずみさんを抱くまでは構ってくれないの?』
『ユカも楽しみたいだろ?まずは休みの日だな』
『お休みの日なら、来週じゃない?それなら、私も無駄に使わないように・・・可笑しいわ、
あなたとは無駄ってことかしら?』
『それより、木下社長から連絡はあったのか?』
『まだ、決まらないんでしょ?忙しい人だもの』
『忙しいのにエロ小説だろ?体力なら木下社長には負けてるかもな』

何か物音が聞こえたようです。

『終ったみたい。ドアが開いたわ』

淫靡な空気の揺らぎが、微かな音のように聞こえてきます。


[12] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/01/14 (日) 15:27 ID:J9iEAGI6 No.188403



『おっ!?良かったかい?』
『わたし?・・・そうね、それはタクちゃんじゃない?』
『いずみちゃんもだろ?』
『”タク〜!イク!イク〜!”だろ?』
『残念ね。タクちゃん、逝った時なんて言ったの?』
『えっ?・・・覚えていないけど、”いずみ!イクぞ、イク〜!”だったかな?』
『ねぇ、私じゃないでしょ?』
『上手いね、タクシーを呼ぶところまではいかなかったのか、それは残念だね』
『呼ぶほど急いでいなかったのかも?うふふっ』
『余裕だね?タク、一本取られたな』
『違うでしょ?”抜かれました”でしょ?そうよね、タクちゃん?』
『これだものな、いずみちゃんには勝てないよ』
『でしょ?水曜日も同じことが起こるわよ。楽しみね?』
『負けないって、何度でも言ってやるよ』
『そう?おトイレでは?』
『・・・勝ったとは言えないかも・・・負けてはいないよ。そうだろ?いずみちゃんも逝っ
たって、あれ?嘘なの?』
『見極めは大事よ。じゃ・・・あれ?忘れてたのね?』
『大事な証拠品だろ?水曜日にはガラクタになるかも?』
『オーナーって、タクちゃんの味方なの?』
『ハグしてくれたら、気が変わるかも?』
『時間もないから・・・いい?味方になってね?・・・チュッ!』
『キスのオマケ?これならタクを裏切れるかな?はははっ』
『オーナーは騙されやすいからな。いずみちゃんには甘すぎない?』
『そうよ、乗せられるんだもの。しっかりしなさいよ』
『乗りたいね、いずみタクシーに』
『私が乗るんでしょ?オーナーのタクシーには乗ることはないもの、悪しからず・・・
タクちゃん、帰るわよ』
『じゃ、水曜日だね。いずみちゃんの健闘を祈るよ』
『オーナーは私の味方でしょ?信じてるから。おやすみなさい』


レコーダーを止めながら、

「ここまでね。”おやすみなさい”って言った後に、スイッチを切ったの。
それ迄はテーブルに置いていたのに、誰も気付かないって・・・あれ?私もそうだったから、
オーナーは録音してるって思ってなかったみたいね。貴重な会話が録れたと思わない?」
「いずみの評価?それとも・・・ハグは既知の事実だから、僕への説明が省けるということだね?」
「省略?いいのね?・・・あれでしょ?エロいオンナって決め付けてるでしょ?タクマさんが
話してるって分かっただけでも、成果があったと思わない?」
「話しててもおかしくないだろ?」
「守秘義務違反だと思わない?」
「セラピストとしてならね。そういう意味付けじゃないだろ?」
「セフレ?・・・そうなるのね。そうなら責められないわね」
「話の内容だが、タクマさんとオーナーとの親密度によるね。セラピストとしての責任感もある
だろうから、それ以外の人には、JINさんは兎も角、話していないと思いたいね」
「人柄は合格点だと思うし、セフレの設定でなければ、必要以外の事には関心を持たないと思うの」
「セフレだから?何かあるかい?」
「アレしかないでしょ?うふっ」
「そうなるか・・・そうだからトイレかい?はははっ」
「セフレですもの、うふっ。ほんと我慢できないんだから、他の女性とならどう処理してるのか
聞いてみたいわ」


[13] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/01/14 (日) 18:34 ID:J9iEAGI6 No.188409



「彼女じゃなくて、お客さんとかい?」
「セラピストの枠を超えてるのは私だけかも?そう言ってたから、我儘が出るのね?」
「甘えてる?・・・まぁ、一回り以上の歳の差なんだから、母性を感じていてもおかしくない
だろ?」
「母性と甘えは同じ土俵なの?」
「乳は甘いだろ?オッパイ好きの様に思うからね」
「オッパイに甘えるってこと?母性と母乳の共通は母ね、乳は甘い・・・甘いは乳、乳を出すのは
母、母の乳は甘い、甘えて乳に、オッパイね、吸い付くのね、連続性があるから同じ土俵かも?」
「はははっ、よく思い付くね?タクマさんはほんとにオッパイ好きなのかい?」
「あのね、若い人って少なかったでしょ?中年か初老の人達が多かったから、オッパイに執着する
人っていなかったと思うの。だから、ある意味新鮮なのね、”どうぞ!”って差し出す感じかな?」
「セフレの距離感が見えるようだね、はははっ」
「あなたね、バカにしてるでしょ?」
「感心してるんだよ。いずみがオッパイを触らせてる顔を見たいものだよ。目じりが下がって
エロい顔になってるんだろうね?」
「次の展開を考えて?そうかな?そうかも!うふっ・・・可笑しいわ。タクマさんの事で
こんなにも話せるなんて。あれでしょ?新鮮な感覚が蘇て来るんじゃない?」
「若かりし頃のいずみ?ホント懐かしいね」
「私も若かったのね。あなたを信じて疑わなかったんだもの」
「”今じゃ”って言わないだろうね?」
「今も・・・その時の気持ちとちっとも変わらないわ。これからも信じ続けるもの。
だって、あなたの奥様なんだもの」
「お後がよろしいようで、とは言わないだろうね?はははっ」
「はい、信じられるいずみを体現したいと思います・・・あれ?ナニを話せば?」

恍けてるように見せて、次の一手を考えているのです。
何度も同じ轍を踏んできた私ですから、否が応でも見えてくるものがあります。

「ブラックボックス、言い換えるとね、トイレボックスかな?」
「おかしくない?サニタリーボックスみたいだわ、うふっ」
「そうだね・・・じゃ、何て言えばいいかな?」
「おトイレでいいんじゃない?ボックスに拘り過ぎでしょ?・・・見えない事象だから、ブラック
なのね?」
「だね。ひねり過ぎました、はははっ」
「あのね、ドアを閉めて直ぐに抱き合ってキスしたの。オーナーに煽られたように見せて、少し
激しく。キスしながらお互いのパンツを。彼ね、短パンだったから直ぐにずらすことが出来たのね。
私のは私も協力して・・・キスしながらペニスとオマンコを手で刺激し合ったら、二人共直ぐに
準備完了なの。愛撫しなくてもできる状態なのは分かっているのよ。それでも、刺激し合うことで
より早く興奮を高める必要があるでしょ?時間がないんだもの。
彼もそれは分かっているから、口にしなくても伝わるのね。挿入させたら射精を早められるでょ?
でも、中出しはしたくなかったの。だって、打合せだけって思っていたのに、セックスすることに
なったでしょ?何でも許していたら、これからも彼の希望通りになるって思ってしまうもの。
彼のためにもならないでしょ?」

何処迄が本音なのか知る由もありませんが、私へのアピールに変換させていることは、疑う余地も
ありません。

「僕用にアレンジしていないかい?」
「えっ?ホントのことよ。信じられない?」
「タクマさんのためじゃなく、いずみの気持ちだろ?」
「うん・・・彼じゃなく私のためにならない、そう言いたかったんだけど、主体の変更が難しくて」
「はははっ、いずみ主体で話していいんだよ。話題はいつもいずみ中心なんだからね」
「うふふっ、あなたならではの解釈ね?タクマさんって借りてきた人って感じだわ。
そうでしょ?彼でなくても、誰でも主体を入れ替えて私を話せばいいんだもの」
「だね、そうしないといずみじゃないだろ?」
「でもね、私の一人芝居じゃないでしょ?客体にも血を通わさないといけないでしょ?」
「やさしいね?まぁ、難しい話はさておき、続きを話さないか?」


[14] Re: 絆のあとさき 4  修司 :2024/01/19 (金) 09:46 ID:6C06keGY No.188637
おはようございます。

小田さん

あげておきます 

週末は何やら天気も怪しくなりそうですね 

体調を崩さないように お気をつけてください


[15] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/01/20 (土) 10:42 ID:FRqlMzaw No.188668


修司さん、ご協力をありがとうございます。

下がっていたのですね?
今年になってから新規の投稿が増えたのがその理由でしょうから、
ここは大いに繁盛している証拠でしょうね。

当地は今朝から雨混じりの不安定な天気です。
ただ、気温は思いの他暖かいですから、凌ぎやすい一日になりそうです。

では、引き続き投稿していきます。


[16] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/01/20 (土) 12:26 ID:FRqlMzaw No.188670


続きです。




逸れたのは私が横槍を入れたと言わんばかりに、抱き付いてきます。

「分かった?」
「ん?・・・僕か?」
「でしょ?あなたがいけないのよ。そっと聞き流してくれてもいいのに、ほんとあなたって
・・・あっ?それだけ真剣に聞いてるってことね?」
「いつもと変わらないよ。いいから、話せよ」
「うん・・・ドアのすぐ傍だったでしょ?立ったまま挿入したら、私の背中がドアに当たって、
してるってバレバレでしょ?そのためのおトイレなんだから、分かってもいいんだけど、
何だか恥ずかしいでしょ?それでね、タクマさんに便座カバーに座ってもらって、私は後ろ向きで
挿入したの。それなら、してるって音は・・・私の背中でドアを押すとか叩くとかがないから、
音らしい音は何もしないでしょ?」
「何もしない?」
「えっ?・・・難しいなぁ、してる音がしないに言い直すわね?」
「それはないだろ?」
「ホントよ、直ぐだったから湿った音は何も。感じることは感じたけど、音を発するまでには、
その時までに発射したから」
「タクマさんのためになったのか?」
「違うわ、私のためになったの。中出しは絶対にダメって念押ししたし、その時は知らせるって
約束させたのね。だから、射精の瞬間にはオマンコは立ち合えないかったの。ちょっぴり残念、
嘘よ、うふふっ」
「楽しそうじゃないか?残念は残念じゃなかった?」
「嘘って言ったでしょ?お尻を上げて振り向いた時には、射精していたの。それなのに、右手で
扱きながら、左手で私の腰を抱き寄せて、”もう一度”って笑顔なの」
「はははっ、二回戦の催促?」
「長く居れないもの。心を鬼にして、これも嘘かな?”ダメ!”って強く言ったら、”フェラは?”
でしょ?そうくるとは咄嗟に思ったのよ。でも、これも拒否して、トイレットペーパーで処理して
あげたの。不満そうだったけど、彼のために・・・私のためにならないでしょ?床に落ちた精液も
拭き取ったのよ。十分でしょ?」
「なるほど。トイレの一件はそれでお終いだね?」
「うん・・・賭けの事は全てかな?」
「それなら、今後の対応になるね?」
「さっきも話したけど、月一になると思うのね。私に決定権があるんだけど、全面的に遮断は
難しいの。楊さんの要望は一方的に否定はできないもの」
「無理のないところに落ち着くのは致し方ないが、いずみの意思で楊さんに進言できるんだろ?」
「そうだけど、まだ2ヶ月余りでしょ?私が止めたいって話したら、何かあったのかって根堀り
葉堀り訊かれるのは間違いないもの。そうなったら、話したくないことも話さないといけないで
しょ?」
「流石にトイレはまずいね?はははっ」
「でしょ?ここは穏便に済ませないと。だからね、最初の予定通りに戻すの。
楊さんに賭けの事がバレなかったら、スムーズな日常だって楊さんも安心でしょ?」
「普通に考えたら、とてもそうは思えないね、はははっ」
「非日常の日常じゃない?うふっ」
「だね・・・ところで・・・」
「携帯でしょ?会って直ぐに訊かないんだもの、”いいのかな?”って。それはないでしょ?」
「切ってたんだろ?賭けの事を聞いて、むべなるかなと思ったよ、はははっ」
「うふふっ、相変わらずね?叱られるかなって思ったのよ。あなたってほんと大人だわ」
「情けないことに、僕の妻はそれを知らせないんだからね。ここは怒りの鉄拳をお見舞いしよう
かな?」
「あれ?バズーカじゃなかったの?うふっ」
「言うね、その域に達していない・・・ん?もうないかもしれないよ」
「いいの。あなたならその気持ちがあれば、どのような状態でも嬉しいもの、ほんとよ」
「はははっ、そうしとこうか?・・・ところで、気にならないか?」
「タクマさん?」


[17] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/01/20 (土) 13:34 ID:FRqlMzaw No.188671



「後をつけていただろ?僕がタクマさんなら気になるけどね」
「うん・・・もう直ぐ11時30分でしょ?」
「それが?」
「その時間までは連絡しないって決めているの。だから・・・」
「掛かってくる?そうなのか?」
「きっと・・・いつもじゃないのよ。でも、今夜の事は気にならない筈はないでしょ?」

いずみは話しながら、時間を確認していたようです。
私が持ち出さなければ、いずみから切り出す予定だったと思えるのです。
私に不信感を持たれないためにも、タクマさんからの着信迄には話しておきたかったのでしょう。

「11時30分とは何とも微妙な時間だね?」
「11時前に別れるでしょ?PPT迄何分も掛からないけど、”30分は”って話しているから、連絡
するのなら、11時30分を過ぎた頃って。でも、数分で切るのよ、私が忙しいって理由で。
11時には帰って、サワちゃんにひろ子ちゃんの様子を聞いてから、寝顔を見てホッとするのね。
それって、とても大切な時間なんだもの。誰にも邪魔されたくないでしょ?」
「納得の説明だね・・・30分を過ぎたね。さてと・・・」
「うん・・・そろそろかな?」

やはりと言えばいいのかもしれませんが、いずみの携帯に着信です。
ベッドから降りたいずみは、急ぐ風でもなく、先程のようにクローゼットから携帯を持って来ます。

私の隣に戻るまでに、


『納得した?』

前置きもなくいきなりですから、驚かされます。

『ビックリ!驚かさないでよ』

タクマさんの驚いた声が、スピーカーに設定したことを物語っています。

『つけてきたでしょ?分かってるんだからね』
『信じられないだろ?』
『5万円、それともお食事?』
『両方とも・・・食事の後は?』

不安そうな様子が窺えます。

『天ぷらのお店まで来たでしょ?』
『ほんとか確認しただけだから。睨むなんてあり得ないだろ?』
『暖簾を開けて覗く?不審者丸出しでしょ?』


[18] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/01/20 (土) 16:56 ID:FRqlMzaw No.188678



ペロッと舌を出して、ベッドに戻って来ます。

意図的とは思えないのですが、先程話さなかった事象が見えてくるのですから、この時に追加説明
を考えていたのかもしれません。

私の左腕に右手を廻して、音を立てない様に私の頬に唇を触れさせます。


『あれ?何か聞えたけど、何をしてるの?』
『ベッドよ。前にも話したでしょ?お仕事なのよ、手に持てないからスピーカーにしてるの』
『その音か・・・寂しくて一人エッチ?』
『都合のいいお耳ね、その方がいいの?』
『テレホンセックス?今は無理だよ』
『何言ってるのよ。誰もそんなこと・・・あれ?何処にいるの?』
『オーナーの店、いずみちゃんに睨まれたから、慰めてもらってるんだよ』
『賭けにも負けたんだものね、その気持ちはよく分かるわよ』
『負けは負けだけど、食事の後は?』
『お返事してなかったわね。それだけよ、お店の前で別れたの。知ってるんでしょ?』
『知らないよ。食事が本当だったし、睨まれたからオーナーの店に今まで居たんだよ』
『お利口さんね。じゃ、お食事の後の事を教えてあげるわね』
『やっぱり!そうじゃないかと思っていたよ。どうだった?』
『どうって?・・・そうね、お話がとても楽しくて、ベッドでも楽しめそうって妄想していた
のに、その人が、急遽、帰ることになってね、さっきも話したけど、お店の前で別れたの。
急いでいたから連絡先も交換できなくて、ホント残念だったわ』
『ホントに?嘘って言わないよね?』
『言って欲しいの?・・・残念だけど、そういうことね』
『良かった!・・・それは良かったけど・・・』
『これからの事?私から連絡するから、おとなしく待っててくれる?』
『いいの?断られるかと思っていた、ラッキーだよ。僕のペニスが忘れられないからだろ?』
『バカね、女の口から言わすものじゃないでしょ?』
『まぁ、そうかな・・・いずみちゃんはほんとに優しから大好きだよ』
『ありがとう!お互いでしょ?分かった?私の気持ち』
『僕と同じだって分かったよ』
『だったら、私からの連絡を待つの。いいわね?』
『分かったよ。でも・・・』
『”でも”はないでしょ?分かったのなら、今夜はここまでね?』
『了解です!優しいいずみちゃんに・・・あれ?しないの?』
『頑張ったタクちゃんに・・・チュッ!・・・うふふっ、おやすみなさい』


返事を待たずに切ってしまいます。

「疲れるでしょ?お子ちゃまを納得させるのは大変なのよ」
「普通に話している時はそうだろうけどね」
「見え過ぎる?」
「あぁ、その時々にお互いの立場を入れ替える、仲良しカップルに見えるね」
「あなたの言いたいことって、分かっているのに反論できないの。間違っていると言えればいい
のに、そうならセフレって何なのって思ってしまうでしょ?」
「いいんだよ、いずみに任せているんだから、好きなように楽しめばいいからね」
「私ね、タクマさんの事を話す時ね、あなたの心情を考えて話してるみたいなの。どうしてそう
なのか、よく分からないんだけど、タクマさんとの年齢差が私の気持ちに働いているみたいで、
意識してじゃないのよ、そうじゃないかって、何だか複雑な気持になるの」
「それこそ二面性の現れじゃないか?」


[19] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/01/21 (日) 22:05 ID:x8bomWrk No.188717



「そうかな?そうかもしれないわ。あのね、行為中は年齢差なんて関係ないでしょ?
快楽を求めて貪るって感じなのね。でも、ベッドを離れたら、どうしても年齢差を意識して
しまうの。あなたがさっき普通の時って話したでしょ?今のタクマさんとの会話ね、
これって普通でしょ?普通じゃない時ってベッドの中?そう考えれば、真逆の私が見えてくるの。
これって二面性なのね?」
「だね。推測でしかないが、そう思っても間違ってるとは思えないね」
「推測?・・・私ね、いつも言ってることだけど、あなたには隠し事、今回の場合は特にそう
したくないの。だから・・・そうだわ、私からの提案なんだけど、その二面性をあなたに分って
もらいたいの。どう思う?」
「さっきも言っただろ?いずみに任せるよ」
「うん・・・行為中だけど、いいのね?」
「見せたいのか?」
「そうできればいいんだけど、ハードルが高いでしょ?だからね、今回の様に録音するのは?」
「いずみが納得できる方法でいいからね。手段も設定もいずみが考えて実行するように、
いいかい?」
「うん・・・聞きたくないって言わないでね?」
「全て理解しての上だから、大丈夫だよ」

正直なところ、いずみの意図が分かるようで分からないのです。
いずみには過去の忌まわしい事例が数多くあり、それを理解している私ですから、隠し事はしない
という強い気持ちを前面に出せると思えるのです。
そういう観点からすれば、タクマさんとの性行為の詳細を話すことに大きな抵抗はない、と推測
できるのです。
加えて、過去にも私の前で痴態を披露した事実があるのですから、相手が代っても性行為に大きな
差異があるとは思えないのに、この提案です。
それには、少なくない驚きを感じるのです。
それは、生々しいセックスシーンではなく、その時々に交わす言葉の抑揚から、いずみの心情を
伝えたいのかもしれません。
推測の域を出ないとは言え、タクマさんへの並々ならぬ思い入れがあるように思えるのですが、
それを指摘されることで、必要以上に登り詰めた高揚感にクサビを打ちたい、否、打たなくては
ならない、と考えているようにも思えるのです。
どちらにしても、年齢差からくる日常と非日常のギャップに二面性を感じ取っていることは、
容易に推測できます。
二面性の心の置き所に戸惑っているいずみが、見えてくるようです。

「うん・・・どうなるか分からないけど、あなたに見える様な景色が録れればいいかなって。
あのね、タクマさんのことね、好きって言える以上の気持ちかもしれないの。
きっと彼もそうだと思うのね。確認したんじゃないのよ、それでも、そう思えるのってお互いに
感じるものがあるからだと思うの。でも、あなた以外の人を心から愛することって絶対にないって
・・・あれ?絶対はないんでしょ?そうだとしても、間違ったことにはならないって誓えるの。
それは信じてね?」
「いずみのオンナの部分と母性が葛藤している様にも思えるけど、そこは勘違いしないように、
いいかい?」
「うん・・・その見極めでしょ?今も話したように、会うのは一ヶ月に一回、それ以上は・・・
でも、木下さんに呼ばれたら、それは仕方ないでしょ?だから、会う回数が増えるかもしれないの」
「木下さんとは約束だからね。そうなれば、二人で会うのは延期するとか、方法はあるだろ?」
「ほんとだ!私が決められるんだもの。臨機応変でしょ?」
「だね・・・ところで、録音の中で気になるところはなかったかい?」
「タクマさんとのことなら、録音って関係ないでしょ?・・・えっ?あれのこと?木下さんの
名前が・・・オーナーとユカさんの会話ね?」
「心当たりはあるかい?」
「何にも・・・木下さんと知り合いって初めて知ったわ」
「そうか・・・エロ小説って話していたから、彼女もモデルの約束をしているかも・・・ん?
もしかしたら、いずみと絡ませる予定かもしれないね」
「えっ?・・・そうかもしれないわ。タクマさんとも仲良しみたいだもの」
「オーナーといずみがキスをするんだから、既に仲間に入っていると思われているかもね?」
「うふふっ、フェイントでしょ?軽いジャブみたいなものだもの。タクマさんとオーナーとの
関係を良好に保つためだもの。これって私の役目みたいなものでしょ?」
「セフレだから?」
「そう、ほんとはそう言いたかったんだけど、少し遠慮しました、うふっ。
でもね、気になる事が・・・」

いずみの懸念が私のそれと被さります。


[20] Re: 絆のあとさき 4  にせ医者 :2024/01/23 (火) 11:48 ID:Vds1kf5E No.188761
小田さん、いつも拝見しています。
週明けに見るのが楽しみになっています。

いずみさんとタクマさん(君?)との関係は、今までとは違うような気がしていますが、勘違いでしょうか。
若者は時に一途になり、周りが見えなくなるような事態を引き起こさないことを祈っています。
いずみさんも、過去に年下から慕われたりした(単純にプレーとしての性行為だけではなく)経験が少なければ、
案外深みにハマるんじゃあないかと言う不安もあります。

次から次へといろんなことがあって、ついていけなくなっています。


[21] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/01/27 (土) 16:20 ID:U8u3oWpA No.188885


にせ医者さん、コメントをありがとうございます。

彼女には・・・色々ありましたね。
収束への道は見えていると思っているのですが、いつ何時、何が起こるかも
分かりません。
そうは言っても、年齢の壁は非常に大きなファクターでしょうから、
いつまでも続く道程ではないことは、間違いないでしょう。

タクマさんについては、これからの投稿で意外な?一面が分かってきます。
その時まで待って頂ければ、”驚き”を共有できるかもしれません。
”事実は小説よりも・・・”かもしれませんが、頑張って読み続けて下さい。

では、週明けのお楽しみまで、あと少しお待ち下さい。


[22] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/01/27 (土) 19:15 ID:U8u3oWpA No.188892


続きです。




「モデルの実態だろ?」
「タクマさんは現役でしょ?オーナーは元モデル兼セラピストね。彼女はヌードモデル、
話してなかったわ、ごめんね?タクマさんから聞いていたの。
三人共新旧のモデルでしょ?これって、気になる事があっても不思議じゃないもの。
今のところは何も見えないんだけど、仮によ、賭けに負けてオーナーのマンションに行ったと
したら、考え過ぎかも分からないけど、キメセクも考えられるでしょ?
普通の媚薬ならまだしも、薬物となると大問題だもの」
「同じだね。モデルと言っても薬物に手を出しているとは限らないが、用心することに越した
ことはないからね。ただね、オーナーとその彼女は分からないが、タクマさんは木下さんからの
紹介だからね、少なくとも二人の時に薬物を持ち出すとは考えにくいだろ?もしそうなら、
いずみが阻止することは難しくないだろ?」
「うん・・・二人なら・・・オーナーの素性は分からないから、深みに嵌らない様に注意する
わね?」
「タクマさんの先輩というだけで、安心はできないが、会話からは陽気な人柄のように思えるね」
「うん・・・初対面でも気さくに話せる人って感じだもの。でも、念には念を、でしょ?」
「ん?・・・手を打った?そうなのか?」
「あなたは次の日曜日から出張でしょ?だからね、賭けの事も併せて金曜日の夜に話すつもり
だったの。ほんとだからね」
「後出しかい?」
「そうなるかな?うふっ・・・あのね、マリアさんに調査を依頼したの。
今日のお昼休みに連絡したのね。そしたら、”久し振りだから会わない?”って、
ほんと久し振りなんだもの。それでね、日曜日に私が東京に行くって約束したの。
怒らないでしょ?」
「大事なことだからね。ひろ子は問題ないんだね?」
「うん、明日香ちゃんにお願いしたから、大丈夫よ」
「詳細は日曜日に?」
「概略は話したの。日曜日までに途中経過を報告してくれるって。これって早くない?」
「いずみは遅くない?はははっ」
「えっ?・・・ナニが?」
「調査依頼だよ。オーナーと初めて会った時にハグしたんだろ?その時から懸念はなかったのか?」
「うん・・・さっきも話したけど、セフレの立場でしょ?だから、その時は何も思わなかったの。
でも、賭けの事で月曜日に打合せした時ね、変更するお部屋がオーナーのマンションって分かった
でしょ?これは少し危ないかなって思ったの。でも、その日も火曜日もモヤモヤしてはいたのよ、
でも、大袈裟かなとも思ったの。それでもね、今夜の賭けのことを考えたら負けるかもしれない
って、不安が大きくなってきたのね。それで、お昼休みにマリアさんに連絡したの」
「ギリギリセーフかな?負けていてもオーナーのマンションには、来週とか話していただろ?」
「ほんとだわ。これって怪我の功名ね?うふっ」
「はははっ、それより僕に感謝だろ?」
「うふふっ、ご主人様はいつも私の味方だもの。愛してるわ・・・チュッ!・・・
ねぇ、どうする?」
「これで全てかな?」
「そうだと思うけど・・・まだ気になる事があるの?」
「ないとは言えないが・・・まぁ、月曜日の事もあるからね、全て前向きとはいかないよ」
「うふふっ、相変わらずね?三日ルールに変更はないけど、中出しじゃなかったのよ。
挿入だけでもNGなの?やはりそうよね?」
「だね・・・寝てしまうかもしれないが、綺麗なお口を借りれるかな?」
「もう!あなたのものなのよ。借りるなんて言わないで!寂しくなるでしょ?」
「マリアさんじゃないが、久し振りだからね。言いたいことは分かるだろ?」
「うん、分かり過ぎるくらい。でも、あなたも・・・」
「はははっ、理解しているからね。少し言い過ぎたよ、悪かった」
「ううん、ごめんね?愛してるのはあなただけだもの。他の人の事はその時だけ、それが過ぎ
れば記憶にすら残らないの。見えるのはあなただけ、ほんとだからね?」
「はははっ、もういいよ・・・いいかい?」
「うん・・・あれ?ご立派になってるわ。もっと凛々しくしてあげる、うふっ・・・
あっ?忘れてたわ。この場面で思い出すなんて、チョッピリ恥ずかしいかな?」
「恥ずかしくないんだろ?この場面で思い出す事?ナニかな?」
「あのね、毎日が言葉にできない程忙しいのね。あなたにも話しているでしょ?
朝の時間帯ってもう戦争状態、だからね、ピルを飲み忘れそうになる事もしばしばなの。
まだ大丈夫なんだけど、不安でしょ?それでね、マリアさんに会ったら薬物の事とね、避妊リング
のクリニックを紹介してもらおうと思うの。いいでしょ?」
「大事なことだからね。仮にも孕むことがあったらそれこそ一大事だろ?」
「うん・・・大事が二回って、ほんと大事なことね?うふっ」
「はははっ・・・僕の一物も大事にしてくれないか?」
「うふふっ、優しく・・・ね?」


[23] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/01/28 (日) 14:21 ID:oCUlTrYE No.188921



第二ステージの東京滞在がスタートしたことは、マリアさんも大森会長から連絡を受けていると
推測できます。
正式にはそうでしょうが、それ以前に、石黒さんからいずみに関する情報は逐一届いている
筈ですから、マリアさんが最新の情報を握っていることは、疑う余地もありません。
もしかしたら、私との関係も報告されているかもしれません。

次の日曜日に、いずみから石黒さんの立ち位置を問い質されるとしたら、マリアさんがどのように
返答するのか、興味津々です。
ただ、いずみもバカではありませんから、依頼事項のみに集中し、敢えて、取り上げないかも
しれません。
いくらマリアさんがいずみの味方であったとしても、この時点で、石黒さんとの関係を訊かれる
のは苦痛でしかないと、いずみも理解していると思われるからです。
ところが、それ以前に、いずみがウィークディの東京滞在をどのように説明するのか、それには
大いに関心を持つのですが、その事を私に話すのか、それとも何事もなかったかのようにスルー
するのか、それにも興味が尽きません。


あくる朝、いずみは急いでPPTに帰って行きます。

「あなた、日曜日の事ね、おやすみメールで報告するから、それでいいでしょ?」
「急がないよ。いずみも早く寝ないといけないだろ?時間が出来た時でいいから。
問題があれば相談に乗るから、それでいいね?」
「うん・・・あのね、話さなかったけど、羽田空港で会うことになったの。
マリアさんね、夕方の便で沖縄に行くって。よく分からないんだけど、現地で会長と合流する
みたいなの。私には関係ない事だから何も聞かなかったし、聞かない方がいいんでしょ?」
「正解だよ。大森グループとは繋がっているとしても、ほんの少しかする程度だと思っていれば
いいからね。表現は良くないが、”厄介な絆”かもしれない、そう理解していればいいよ」
「うん・・・だから、とんぼ返りなの。それでもお土産っておかしと思わない?」
「明日香ちゃんか?」
「ひろ子ちゃんのことがあるでしょ?だから、明日香ちゃんのご希望のお土産を買うって
約束したの。何だと思う?」
「分かる訳ないだろ?」
「うふふっ・・・失言でした・・・じゃ、行くわね?」


日曜日の夜の”おやすみメール”は、そっけないものでした。
私がそう指示したのですから、それはそれで納得できるものです。
”詳細は後日”でしたが、その報告を受けたのは、日曜日からの出張に引き続き、東京本社での
会議後、金曜日の夜から土曜日の午前中まで、石黒さんと過ごして帰って来たその夜の事です。
薬物については、途中経過とのことわりがあったとしても、特に問題になるような事例は見つか
っていないとの報告には、一安心です。
クリニックは直ぐにでも紹介できるから、日にちを決めたら連絡して欲しいとの事でした。

石黒さんとのベッドインも特に変わったこともなく、いずみの見えざる事情も、私の知り得る事柄
と大きく乖離はしていない様でした。

必要最小限の報告に始終したのは、”やはり”と思わせる配慮が垣間見られるのですが、
それには言及せず、いつか、いずみが口を開くその日まで待つことにします。



それからの数週間は、不穏な空気を感じることもなく、静かに流れていきます。
毎週ではないのですが、金曜日の夜に顔を合わせた時のいずみの表情には、複雑に絡み合った
安堵と焦燥が浮かび上がっているようです。

「疲れたとは言いたくないけど、ほんとに大変なの。会社経営って一筋縄ではいかないのね」

潤いと癒しは、一切口には出しません。
私も敢えて訊くこともありませんから、それには触れずに日にちだけが過ぎて行きます。


[24] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/01/28 (日) 15:53 ID:oCUlTrYE No.188925



8月最後の金曜日、いずみが帰って来るその日、私が出張から戻って来る日でもあったのです。

大阪空港に着いたのは、午後2時を回った頃です。
いずみとひろ子は、午後4時頃到着予定と連絡がありましたから、ここで落ち合って一緒に帰宅
すると決めていました。
その到着時間は毎週末とほぼ同じですから、予定が立て易いのは有難いことです。

搭乗前に昼食を摂っていましたから、カフェで時間を潰すつもりでした。
以前にも入った2階の店と決めていたのですが、1階の到着ロビーを出たところで、椅子に座って
こちらを見ているるみさんに気付きます。
ところが、目が合っていると思ったのは、私だけだったようです。
焦点が合わないような、それでいて目を見張るように見詰めるその様は、眠らない様に気力を
奮い起こしている様に見えるのです。
一瞬、スルーしようかとも思ったのですが、以前の様に偶然会ったとしたら、無視したと指摘
されないとも限りませから、ここは意を決して、こちらから声を掛けることにします。

「るみさん?」

少しのタイムラグがあります。

「・・・えっ?・・・小田さん?」
「久し振りだね。あれから・・・確か5月初めだったね、また同じ空港で会うなんて驚きだよ」
「・・・ほんとだわ。あれから4カ月近く経ってるのね?」
「どうしたんだい?何だか疲れている様だけど」
「今何時なの?・・・」

左手の腕時計を見せます。

「・・・2時過ぎね?少し時間があるから・・・昼食は?」

食事はまだのようですが、ここに居るのですから誰かの出迎えなのでしょう。

「お迎えじゃないのかい?」
「あっ?・・・可笑しいわ。眠くて・・・機内でも寝ていたのよ。でも、1時間足らずでしょ?
目を瞑ってるって感じだわ。だから、眠くて・・・この椅子に座ったのはいいんだけど、
寝てしまったら困るでしょ?」
「見えないね。お迎えじゃないのかい?」
「そうよ、お迎えされる方かな?」
「それじゃ、その人が遅れてるんだね?」
「違うの。予定より早く着いてしまったから、ここに・・・ねぇ、昼食は?」
「済ませたよ」
「そうか・・・2時過ぎだものね。小田さんはこれから?それとも・・・」
「るみさんと反対だね」
「お出迎え?・・・何時なの?」

るみさんといずみが遭遇することは、避けなければなりません。

「るみさんは?」
「わたし?・・・3時に出発ロビーで・・・覚えてる?」
「ナニかな?」
「いいわ、後でも・・・ねぇ、何時なの?」
「4時過ぎだよ。少し早いけど、時間の都合で仕方なくね」
「よく分からないけど、コーヒーなら付き合えるでしょ?」


[25] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/01/28 (日) 18:32 ID:oCUlTrYE No.188933



出発ロビーは2階ですし、以前のカフェなら同じフロアーになります。
時間差はありますし、到着ロビーは1階ですから、いずみとの遭遇は考えられませんが、
そのカフェなら、不安感を取り除けると思ったのです。

「時間潰し?・・・そうだね、前に入ったカフェは?」
「それだけじゃないのよ。前に話したこと、覚えてる?」
「落ち着いてから聞こうか?」
「いいわよ。落ち着いて聞けるかな?うふっ」

意味ありげな表情には、何かを示唆しているように感じます。


コーヒーを口に運びながら、パンケーキを美味しそうに食べるるみさんに、目線が向いてしまい
ます。

「何か付いてる?」
「ん?・・・あぁ、疲れがズッシリって感じだね」
「そう!そう!それなのよ。覚えてる?」

“覚えてる?”の連発です。
一回目と二回目は全く違うと思うのですが、三回目は二回目を示唆しているようです。

「三回目だね?さてと、ヒントをくれないか?」
「三回目?そうだわ・・・最初のはね、5月にここで会った時の男性の事なの。まだ続いていてね、
これから愛欲旅行、前もそう言ったでしょ?」
「そうだったかな?ん?今から?・・・お疲れのようだけど、大丈夫なの?」
「私はオンナよ。ヤレないことはないでしょ?」
「まぁ、そうだが・・・二回目は?」
「それなのよ・・・」

同じフレーズが戻って来ます。

「・・・ここで話したこと、まさか忘れてはいないでしょ?」

直ぐにいずみの事だと理解します。

「鑑賞会だったかな?」
「嬉しいわ、覚えていて・・・その帰りなの。場所は東京になったのね、だから到着ロビーで
疲れた体を休めていたの。分かったでしょ?」
「頑張り過ぎた?徹夜かい?」
「少しは休んだけど、寝させてくれないのよ。木下さんは指示を出すだけだからお疲れじゃない
かもしれないけど。もう分かったでしょ?」
「鑑賞会には招待されなかったからね。妄想するにも元ネタがないと何も浮かばないよ」
「それがね、鑑賞会じゃなかったの。あの時はそう思っていたのよ。だから、小田さんも招待
されると思って話したのに、かすりもしなかったわ、ごめんね?余計なお世話だったわ」
「はははっ、気にしていないから、気を遣わなくてもいいよ」
「知りたい?いずみさんも参加したのよ。あの時もそう話したでしょ?女性はいずみさんと私、
男性は二人だから、4Pなの。妄想できそう?」
「漠然とはね。それを知ったからと言って僕には全く関係ない事だろ?」
「全く?いずみさんなのよ、元愛人でしょ?今の彼女の状況って知りたくないの?」
「気にならないと言ったら嘘になるけどね、元気ならそれが一番だよ」
「元気?・・・元気だったわよ、お顔に似合わずとてもエロいの。小田さんとも変態行為を
したんでしょ?」
「線引きが難しい行為だろ?どのように理解するかは当事者間の問題だよ。それより、その話しを
聞いた時からかなり時間が経ってるだろ?もしかしたら、その間にもプレーをしたんじゃないの?」
「それがね、木下さんが言うにはね、いずみさんの反対で東京になったのね。それはいいんだけど、
今度は木下さんといずみさんとの時間調整が付かなくて、それで昨夜から今朝までになったの。
プレーの時間帯は、いずみさんの都合に合わせたらしいの。
よく分からなかったけど、いずみさんは超多忙だから、時間調整に苦労させられたとか、それは
木下さんね。いずみさんは木下さんに合わせたのよ、とか、二人にしか分からない会話なんだもの。
私には関係ないから気にはならないんだけど、木下さんがいずみさんにとても気を遣っているのは、
男性陣にも分かったと思うわ。
でもね、始めたら木下さんの指示通りに、それ以上かな?とても前向きなのよ、木下さんに
好かれるのも理解出来るって思ったわ」
「木下さんの愛人じゃないだろ?」
「楊さんもそうでしょ?他にもいるかもしれないわ。超多忙ってそういうことじゃない?」


[26] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/02/03 (土) 12:05 ID:tkPWP66A No.189127



そう解釈するのも、尤もなことです。
会社経営のノウハウを学んでいると話しても、目の前で繰り広げられる性行為からは、
その一端も感じる事は出来ないと思います。

「そうかもね。それなら男性陣もタジタジじゃなかったかい?」
「違うのよ。受けて立つ・・・あっ?”タツ”って分かるでしょ?いずみさんも強調していたから、
記憶に残っているんだわ」

行為中とは考えられませんから、休憩を取った時の雑談での一コマでしょう。
ここでも、掛詞を披露するのですから、雰囲気に馴染んでいることも併せて、非常に落ち着いて
いる様子が窺えます。

「ほ〜っ、掛詞か、リラックスしている証拠だね」
「掛詞って言うの?初めて聞いたわ。木下さんね、なるほどって真顔で頷いていたから、
それが可笑しくて。JINさんなんか・・・あっ?あのね、男性はJINさんとタクマさんの二人
だったの。JINさんとは何度か、タクマさんは初めてだったのね。二人共いずみさんとはセックス
してるって、サンドイッチも経験済みだって言うのよ。驚いたけど、私も同じようなことを
してるから、木下さんには普通のことなんだって思ったわ」
「徹夜と言っただろ?その話しは休憩の時なの?」
「いくら体力があるって言っても、休まないと木下さんの希望通りにはいかないわよ。
いずみさんも私も声が枯れてしまう程逝かされるし、何度も失神するから、木下さんにすれば
その過程を観察したいのに、逝って失神すればそこで終わりでしょ?それなら絵にならないって、
ご不満なの。それでね、休憩を挟んで・・・”ハサム”って、これもいずみさんなのよ。
頭の回転が速いって感心するわ。木下さんへのプレゼントって、抱き付いてキスするのよ。
でもね、媚びるって感じじゃなくて、とても清々しいって感じかな?セックスって、それも
乱交でしょ?陰湿なイメージがあるじゃない?彼女がいるだけで、その雰囲気がガラッと変わる
って言えばいいかな?得な性格だなって。羨ましいわ」
「性格?・・・あれだろ?持って生まれた気質ってヤツだよ」
「少し天然が入ってるかも?それがいいのかもね?」
「だろうね。妄想のネタも聞いたから、ここまでだね?」
「あれ?聞きたくないの?」
「はははっ、何を聞くんだい?」
「いずみさんの今の事情、知りたいでしょ?」
「木下さんとの会話から何か気付いたのかい?」
「そんなのどうでもいいの。何人かの愛人になってるのは、ほぼ確定だと思うのよ。
それなのに、一回り以上も歳の離れたタクマさんととても親密なの。どう説明すればいいの?
って思うでしょ?」
「さて、僕には関係ない事だからね。彼女の交遊関係など気にならないよ。
ん?愛人だったから?」
「そうよ。オンナって割り切ってるって思われてるでしょ?でもね、好きになった人のことは、
別れても心にくすぶり続けてるの。いずみさんね、小田さんの事を今も愛してると思うわ」

噴いて湧いたようなるみさんの一言です。
私にとっては、核心を突いていると受け取れるのですが、それが当然であっても、るみさんには
話せる訳もありません。

「驚くだろ?彼女から何か聞いたのかい?」
「何も・・・それでも、そう感じるんだから、不思議だわ」
「はははっ、るみさんの中で、そう思いたい何かがあるんだろ?そうとしか思えないだろ?」
「小田さんなのよ、きっと・・・去年の11月だった?料理旅館でのことね、小田さんとは距離を
置いてる様に見えたのね、それって、意識的だと思ったの。オンナの感は鋭いんだから」

明日香ちゃんの笑顔が飛び込んでくるようです。


[27] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/02/03 (土) 17:26 ID:tkPWP66A No.189136



「同じようなことを言った女性もいるにはいたけどね。ところが現実はそうじゃないだろ?」
「現実なのよ。戻るけど、話してもいいかしら?」
「乱交?」
「鑑賞なら間違っていなかったの。お互いのセックスを見せること、これって鑑賞でしょ?」
「他に観客がいなければ、木下さんだけだね。それなら鑑賞会とは言えないか、なるほど」
「でしょ?いずみさんとタクマさん、JINさんと私ね、恋人としてセックスするように、木下さん
から。いずみさんね、楽しんでいる様に見えるし、タクマさんを気持ち良く受け入れてるのは、
よく分かるの。でも、違うの、心から楽しんでいるとは思えなくて。それは私もそうなのよ、
見せるセックスに徹すると言えばいいかな?JINさんも同じ思いだと思うのね。
私達はプロのお仕事に徹してるって感じなの。それなのよ、いずみさんもそうじゃないかって。
木下さんに喜んでもらえる様に見せている、お相手はタクマさんだけど、その気持ちは変わらない
と思うの。
どうしてそう思ったかでしょ?休憩を挟んで・・・あれ?まただわ。いずみさんって見掛けより
印象が強いわ。それでね、休憩の後、入れ替わって、いずみさんとJINさんが絡んだのね。
同じなのよ、タクマさんとのセックスと。そう感じたのは、私だけじゃないのよ。
木下さんがね、”やはり・・・”って、呟いたの。”やはり”の後は聞き取れなかったんだけど、
”同じ”だと思うの。いずみさんね、タクマさんと仲良しに見えるけど、意識的だとその時に
確信したの。そうでしょ?木下さんもそう感じたみたいだから。
ほんとに親密な関係ならセックスに表れると思うのね。どこがどうって言えないけど、絡んでる
体の雰囲気とか空気感、あれ?これもいずみさんが。私って言葉足らずでしょ?いずみさんに
教えられることばかりだわ。そうそれなの、”空気感って、人それぞれね”って休憩の時に、
木下さんと話していたのよ。そういう風に表現できるって凄いと思ったの」
「はははっ、受け売りでも自分のモノになってるじゃないか?これからは堂々と使えばいいと
思うよ」
「ほんとに?嬉しいわ。それじゃ、もう一つ教えちゃおうかな?」
「もう一つ?」
「そうよ。いずみさんが小田さんを愛してるって実感したことね。知りたいでしょ?」
「気に掛けてくれるのは嬉しいからね。まぁ、参考に聞こうか?」
「本音は?・・・聞かないわ。私の妄想だと思って聞き流してもいいわよ」
「流れなくて止まればいいね?」
「ナニ?意味が分からないわ。徹夜って話したでしょ?だからね、三回戦も。凄いでしょ?
一回目と二回目はお相手を入れ替えて鑑賞だったのね。木下さんは見られることで変化が
表れるかが知りたかったと思うの。
三回目はね、それこそ乱交なの。パートナーは決めなくて、でも、最初と同じカップルから
スタートしたの」
「最初から話すのかい?そろそろ時間だろ?肝心なシーンだけでもいいと思うけどね」
「ほんとに?・・・それじゃ、そのところね。いずみさんがタクマさんと繋がってる状態ね、
体位だけど、あれって名称があるのか分からないけど、いずみさんが仰向けね、
タクマさんがいずみさんの、どっちだったかな?右足だったかも?彼の肩に乗せて挿入ね、
深く挿入できるからとても気持ちいいのよ、知ってるでしょ?」
「あれだろ?”松葉崩し”じゃないかな?」
「そう言うのね?でも、覚えられないわ。私はね、四つん這いになって、JINさんが後ろから
挿入してるの。4人の状態は分かったでしょ?」
「想像できるよ。話したいのは位置関係かい?」
「そうなの。いずみさんに私が乗っかるようにしてキスしたのね。これって、木下さんの指示じゃ
ないのよ。いずみさんも私も興奮してるから、もっとって思うでしょ?と言うか、そんなの考え
なくても自然と求めるって感じなの。それでね、キスした時に、喘いでいるいずみさんの頭を
抱えていたの。だって、昂奮してるし、ピストンされてるからお顔も動くでしょ?
それでね、唇を離した時に、”小田さんを愛してるでしょ?”って、小さく呟いたの。
どうしてそう言ったのか、私にも分からないの。今から考えれば、私の頭の中でくすぶっていた
ことが、つい出てしまったって感じなの。
意識してではないのよ。どう説明したらいいのか分からないけど、兎に角、そう言ったの。
そしたらね、目を瞑って喘いでいたのに、”えっ?”って目を見開いたの。
一瞬の事だったけど、直ぐに喘ぎ出して逝ってしまったの。ほとんど同じタイミングだったけど、
間違っていなかったと確信できた安心感からかな?気持ち良く逝けたわ。
いずみさんはどう思ったか分からないけど、少し複雑な気持ちだと思うから、見た目よりも
深くは逝けなかったんじゃないかな?」
「寸止めを無理矢理逝ったみたいだね?」
「おかしな表現ね?苦し紛れに逝ったように見せかけたのかな?いずみさんならそう難しいこと
じゃないと思うわ。それ以上話したくなかったから、逝ったように偽装したのかも?
私にはそう見えたわ」


[28] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/02/04 (日) 11:38 ID:3U5hAgGs No.189160



いずみならあり得ることです。
全てのシーンとは言えないかもしれませんが、ことセックスに関しては、百戦錬磨を遺憾なく
発揮する術(すべ)を身に付けていると思えるからです。

「そうだとしても、素面の時じゃないと確信は持てないだろ?」
「二人で話すのはとても無理ね。休憩中は、木下さんと話す以外はタクマさんとべったり
だったのよ。
でも、どちらかと言うと、タクマさんからくっ付いていくみたいで、いずみさんは”よしよし”
って感じね。母性本能をくすぐられて、”仕方ないわね”ってアピールしてるようにも感じたわ」
「そもそもだけど、男性陣とはどういった関係なの?」
「話さなかった?5月に会った時に立派な持ち物の・・・これじゃ分からないわね、ごめんなさい。
二人共モデルでセラピスト、性風俗のだけどね。分かるよね?」

知っていて知らない振りも慣れてくるものです。

「モデル?雑誌とかの?」
「JINさんは雑誌にも載ったらしいの。タクマさんはまだみたいね。モデルのお仕事って、
そうあるものじゃないって。だから、セラピストを掛け持ち、そんな感じね」
「タクマさんとは初対面だろ?」
「木下さんから聞いていたの。体を合わすのよ、その前に知りたいでしょ?
いずみさんの参加は前から決まっていたでしょ?延期になったからどうなのかなって心配したけど、
変わってなくて安心したわ」
「良かったね。変わらない姿を見られて・・・ん?裸かな?はははっ」
「小田さんもイヤらしい中年なのね?」
「はははっ、そうしとこうか?・・・じゃ、ここまでだね?」
「時間でしょ?少しだけいい?」
「僕はまだ余裕があるからね。いいのかい?」
「少しならいいかな?・・・小田さんはどうなの?」
「モデルでもセラピストでもないからね。お二人さんを満足させるには役不足だよ」
「しらけるわ。恍けないで、真剣に聞いているのよ。いずみさんをどう思ってるの?」
「さっきも話したけど、もう終ったことだから、気にしても始まらないね」
「そうね・・・よく分かったわ。次に会った時に聞いてみようかな?小田さんとお似合いだと
思うから」
「じゃ、また会うことがあったら、その時に聞かせてくれないか?るみさんの希望通りなら
驚愕どころじゃないね」
「何か知ってるのね?次って言ったけど、来月にまた乱交の予定なのよ。いずみさんと話せたら、
その理由も分るかも?楽しみだわ」
「彼女は口が堅いよ。無理矢理こじ開けないと、こじ開けても話さないかも?まぁ、頑張るんだね」
「ヤリがいがあるわね。私のテクニックでメロメロにすれば、白状するんじゃない?
どちらも楽しみだわ」
「愛欲旅行だろ?まずはそれだろ?」
「ホントだわ。じゃ、またね?・・・あっ?お勘定は?」
「はははっ、いい話を聞かせてもらったからね、ご馳走するよ」
「嬉しいわ。いずみさんに聞けたら・・・あれ?連絡は?」
「いつかまた会った時に、それでいいよ」
「直ぐ会えそうな気がするわ。来月の・・・ねぇ?分かるでしょ?」
「まぁ、神のみぞ知るだね?」
「そうね。じゃ、ご馳走様!」


[29] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/02/04 (日) 16:12 ID:3U5hAgGs No.189163



カフェから出て行くるみさんの後姿を目で追いながら、ドッと疲れが噴出してくる感覚に
なります。

木下さんと過ごすとは聞いていたのですが、4Pとは初耳です。
いったん断った鑑賞会でしたが、東京となると断る理由などある筈もありません。
乱交などの性行為は、いずみが予測していた事ですし、関係を持つ人物も増やさないとの約束です
から、予測範囲外だったかもしれないるみさんが加わったとしても、特に慌てることなく、冷静に
対応出来たと思います。

冷めたコーヒーを飲み干しながら、いずみがそのことを切り出すのか、それへと気持ちが移って
いきます。

7月末の”立ちんぼ”の一件からは、性行為についての言及はありません。
先週は楊社長と過ごしたとは聞いているのですが、特に変わったこともなかったと、あっさりした
ものです。

その一ヶ月間は、JINさんともタクマさんとも会っていないと、カレンダーを見せながら説明して
くれます。

「そうでしょ?先週は女の子の日・・・あれ?それは卒業ね?アラフォーが”女の子の日”って、
”あらま〜”でしょ?」
「はははっ、どちらでもいいよ。それで?」
「だからね、誰とも会っていないの。生理好きの変態もいるけど、ごく少数でしょ?」
「連絡はしなかった?そうかい?」
「うん・・・来週は木下さんとだもの。でもね、あなたがサワちゃんと会ったでしょ?
だからね、その前にJINさんもいいかなって思ったのよ。でも、それなら二週も続くでしょ?」
「整理しないと分からないね。7月末が”立ちんぼ”だっただろ?石黒さんと僕は8月第一週の
金曜日から土曜日、だから、その週ってことだね?」
「ねぇ、二週続けてセラピストでしょ?ここはグッと我慢して、嘘よ。お仕事が大変で、
潤いと癒しどころじゃなかったの。ほんとだからね」

石黒さんを愛人と認めているのですから、気持ちの揺らぎはあったとしても、口にはできなかった
と思います。
JINさんを求める気持ちがその表れだと推測できるのですが、いずみの真意となると、自主性に
任せるしかありません。


るみさんが同じ階の出発ロビーに向かったのは、3時を少し過ぎた頃です。
いずみとの約束の時間までは、1時間弱なのですが、先程まで話していたるみさんの存在感が
大き過ぎて、一人になると空気が抜けた風船のように、心までしぼんでしまいそうです。
一人取り残された思いが、真っ黒な雲になって、私の心に覆い被さってくるようです。
環境を変えること、それは、気運転換へのアプローチにもなりますから、席を追われるように
カフェを出て、一階の到着ロビーに降りて行きます。


先程、るみさんが座っていた椅子の直ぐ後ろに腰を下ろします。
到着ロビーに出て来るいずみとひろ子が、最初に目にする位置に身を置きたかったのですが、
出迎える人にとっては、それは最適な場所でしょうから、誰しも思うことは同じだと、
小さく苦笑いです。

愛用の雑誌を取り出して、その時間まで過ごすことにするのですが、るみさんから聴取した内容が、
何故か頭の中を駆け巡るのは、7月の”立ちんぼ”を事前に知らせなかったいずみの心情に、
小さくない疑念があったからです。
今回の事も進んで話さなければ、いずみの中で何かが芽生えていると思っても不思議ではないと
思えるのですが、そう考える私自身にも疑念を感じるのですから、落ち着かない気持が広がって
きます。
いずみにすれば、他愛ない出来事として咀嚼されている筈ですから、私が疑問を投げかけても
サラッとかわされることは請け合いです。
いずみがそうであっても、性行為には相手がいるのですから、自分の存在を身勝手にも必然と
思い込む輩が、いないとも限りません。
いずみの意図を拡大解釈することで、望まない方向へと舵を切ることもあり得るのです。
性行為の相手は偶然の産物でしかないのですから、必要以上の思い込みは、迷惑以外の何ものでも
ない筈です。
そのような事態にならないためにも、事前に連絡することを約束させているのですが、前回の様に
必要ないと判断されるのは、甚だ不愉快でしかありません。
それとて、”立ちんぼ”の件では、大袈裟には反応しなかった私ですから、今回も同じような
イントロかもしれません。
ただ、前回は”現行犯”、今回は”事前漏洩”、その差の説明にいずみの力量が試されるでしょう
から、大いに期待を持っても裏切られることはないと思えるのです。


[30] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/02/04 (日) 17:40 ID:3U5hAgGs No.189165



曖昧な思いを巡らしながら、雑誌を読むでもなく眺めている状況が、一気に解消されます。
いずみとひろ子の搭乗便は、定刻通り到着とのサインが電光掲示板に表示されて、そう時間も
かからずに、到着ロビーへ乗客が途切れることなく出てきます。

二人は手荷物もありませんから、比較的早く姿を見せます。
立ち上がった私が目に入ったのか、直ぐに掛け寄ってきます。

「待った?」
「少しね。時間潰しが出来たから、まぁ、そう長くは」
「良かったわ・・・パパに”ただいま”って」
「・・・パパ、ただいま!」
「お帰り!・・・おりこうにしてたかい?」
「うん・・・お手て」

ひろ子を真ん中に三人が手を繋いで歩く様は、傍目(はため)からは幸せな家族に見えるでしょう。
私達もその認識なのですが、人には話せない性事情を抱えているのですから、表面だけで判断
するには些か勇み足と言わざる負えません。
偽りの家族と定義付けてもおかしくない日常なのですから、平常心で話すいずみと私は、
虚構の中で作られた役を演じているようにも思えてきます。

非日常が日常と化してから、既に数ヶ月が過ぎ去っています。
ところが、いずみとの非日常は、交際をスタートさせたその日から、始まっていたと言えるかも
しれません。


リムジンバスで市街地に戻って来ます。
相変わらず、ひろ子御用達のファミレスで、少し早い夕食後、いずみのマンションに帰ります。
ひろ子を寝かせてから、DKのテーブルでコーヒーを飲むのも、いつしか日常になってきます。

「疲れただろ?」
「うん・・・木下さん?」
「そうだっただろ?」
「それがね・・・あのね、変わらないのなら聞いても仕方ないって、いつの間にかそうなって
いたでしょ?」
「同じなら聞く必要もないからね。その機微が難しいだろうけど、変わったことがあれば、
前向きにと話しただろ?」
「あれでしょ?”立ちんぼ”のことでしょ?一人で対処できると思ったし、あなたに話したら
バカにさせそうだって思ったんだもの」
「分かるから大袈裟なことにはならなかっただろ?」
「うん・・・大いに反省しています、うふっ」

相変わらずの対応です。

「はははっ、反省の意味が分かっているのか?」
「はい、十二分に・・・だからね・・・それでだわ。木下さんって酷いのよ、と言うか、
ずるいんだもの」
「相変わらず変化球からだね?直球を要求しているのは分からないのか?」
「あなたのサインって、見にくいんだも、嘘よ・・・あのね、昨夜、木下さんとお食事の時にね、
”今夜は趣向を変えるからね”って。木下さんの都合で7月は会えなかったでしょ?
だから、タクマさんと・・・”立ちんぼ”なんてことに。その間、タクマさんにもJINさんにも
会わなかったのよ。話したでしょ?」
「超多忙なんだろ?」
「アレ?・・・私は強調するようには話したこともないでしょ?だって、あなたに心配掛けたく
ないから。それなのに、あなたが”超多忙”って、それって大袈裟に言ってるんでしょ?」
「現実だろ?東京でのいずみの様子は何も見えないんだからね。推測するしかないが、それを助長
する実例が見えれば、そう言っても間違ってはいないだろ?」
「見えるって?・・・木下さんと会っていないでしょ?彼が”超多忙”って。
楊さんもそのようには話さないもの」


[31] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/02/10 (土) 11:27 ID:kiqzlcSU No.189297



「去年の料理旅館以来、会うことも話すこともなかったからね」
「それなら・・・あれね!以心伝心ね?うふっ」
「はははっ、あり得ないだろ?誤魔化すのは止めろよ」
「うん・・・そういうつもりじゃ・・・ねぇ、何か知ってるの?」
「木下さんが酷いとかずるいとか、話さないのか?」
「そうだったわ。ホントに驚いたの。それを話す前に、教えてくれない?」
「話すのなら、教えてもいいが・・・直球を約束するかい?」
「うん、約束します。だって、あなたに話すつもりだったんだもの。そうでしょ?変わったことが
あれば話すって、約束だもの」
「変わったことと認識したのかい?」
「”立ちんぼ”の事はホントに悪かったと思ってるの。私の認識が甘かったって反省したのよ。
だから、今回の事は絶対に話そうと決めていたの」
「分かったよ。ある人に空港であってね、時間潰しが出来たと話しただろ?」
「ある人って?・・・萌音さん?」
「木下さんの愛人だから?」
「そうじゃないのね?・・・えっ?!まさかだけど・・・」
「そのまさかだよ・・・もう分かっただろ?」
「るみさん?」
「僕だからだと思うけど、口が軽いと思ったね」
「地元だもの、会っても不思議じゃないわ」
「そうと分かれば、話しやすいだろ?変な小細工は出来ないと悟ったかい?」
「えっ?・・・小細工も何もありのままを話すもの。ほんとだからね」

観念した様子に見えないのは、隠すこともなく話すと決めているからでしょう。

「どうする?さわりを話そうか?」
「それって、端緒のこと?それなら間違った使い方でしょ?」
「そういうつもりだが・・・あれか?肝心なところってことだね?」
「はい、お利口さんね!あっ?ちょこっと勇み足でした、ごめんね?」
「タクマさんとの日常かい?」

タクマさんに振って反応を見ます。

「ほんとダメなの。私が教えるっておかしいでしょ?・・・あれ?でも、昨夜までは会って
いないのよ。日常っておかしいでしょ?」
「数回会ったからって日常とは言わないか、まぁ、そうだね」
「ナンなの?奥歯にものが挟まったような言い方って」
「いずみにやましいところがなければ、撤回するよ」
「ある訳ないでしょ?・・・もしかしたら、るみさん?」
「それも含めて、聞かせてくれないか?」
「うん、誤解があったのなら、訂正しないといけないもの・・・お食事の時に聞いたのは、
サプライズだったのね。お部屋に入ったところからで、いい?」
「そうだね・・・9時過ぎであってるかい?」
「うん、ロビーで木下さんと会ってお部屋に。エレベーターの中でね、”懐かしい人を呼んでる
からね”って、訊いても教えてくれないの。”一人だけ?”って訊いたらね、”久し振りに
なるかな?5月以来だからね”なの。
それって直ぐに分かるでしょ?直ぐに浮かんだのがタクマさん、JINさんじゃないの。
正直に話してるのは分かるでしょ?タクマさんの事が気になっていたってことじゃなくてね、
会う回数を減らすって決めてから、まだ連絡していなかったの。だから、心の隅っこに引っかかる
モノがあったからなの」


[32] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/02/10 (土) 17:03 ID:kiqzlcSU No.189306



正直な気持ちでしょう。
いずみは非常に責任感が強いのですが、時々抜けることもあり、それが可愛いと思う私は、
いずみフリークなのは間違いありません。

「それがいずみだね。変わらないいずみを見て嬉しいよ」
「ほんとに?気になっていたのは本当なの。でも、木下さんが何か計画している様に思っていた
から、今回の事はある程度予測していたの。
一ヶ月飛んだことね、もしかしたら、三人の予定が合わなかったのかもって、後で考えた事よ。
あなたに返されそうだけど、そうなら木下さん一人でもいいでしょ?
だから、ほんとの事は分からないって結論です、うふっ」
「おいおい、もう締めくくるのか?端緒も話していないんだぞ、はははっ」
「あなたって、お調子者ね?」
「それこそタクマさんだろ?」
「ホントだわ!・・・”立ちんぼ”の時の録音からそう思ったのね?」
「会って話したことがないから、人となりは分からないがね。そう理解しているよ」
「お調子者の甘えんぼなの。気が付いたらくっ付いている子犬、イケメンの子犬って感じかな?」
「気に入ってるんだろ?」
「うん、正直な気持ちは。でも、好き以上は絶対にあり得ないの。セフレは解消したのよ、
でも、セックスは相性がとてもいいかな?」
「はははっ、正直すぎるだろ?主人の前では遠慮するモノだろ?はははっ」
「だって〜、あなたには正直に、そうでしょ?嘘はつかないって誓ったんだもの」

嘘も方便とは思わないのかもしれません。

「正直も考えものだね、はははっ」
「嘘で取り繕った方がいいの?」
「以前の様に?」
「もう!認識の行き違いでしょ?それって嘘とは言わないわ」
「はははっ、お冠かい?まぁ、その時々の気持ちは、全てが合致することはないかもしれないね」
「そうでしょ?うふっ・・・続けてもいい?」
「部屋に入ったところからだね?」
「うん・・・カードキーでドアを開けたのね、木下さんが私にって。忘れてたわ、エレベーターに
乗る前に木下さんが携帯で、”いずみちゃんと行くから”って、私の名前を出すのよ。
私って分かってるのに、おかしいでしょ?念を押す必要ってある?」
「そういうことなら、ドアを開けた時に、その答えが分かる仕掛けじゃなかったかい?」
「うふふっ、答えを話してしまったかな?」
「あまりにも無防備だろ?はははっ」
「それ!それなのよ。無防備、ほんとにそうなのよ。脇が甘い、隙間だらけ、そうでしょ?」
「それこそ念押しだろ?」
「だからなの、それってドアを開けた時にも。驚いたのよ、”えっ?”って声が出てしまったもの。
でも、それだけじゃなくてね、無防備って、剝き出しとか露わ、露骨ね、そういう意味もある
でしょ?ホントそうだったのよ。あなたなら驚天動地だわ、うふっ」
「見せない様に見せてるのかい?」
「あなたなら、読み解けるでしょ?」
「普通じゃない光景が目に飛び込んできた、だろ?それが何か・・・ドアのところからはベッドは
見えないだろ?それを考慮すれば、アレじゃないか、三人が全裸で出迎えた、違うかな?」
「うふふっ、そこまでは。あれ?そうなら驚天動地じゃないかな?うふっ」
「大袈裟に言った?それの方が面白いのは分かるが、僕の立場がないだろ?」
「ちょこっとかな?ごめんね?・・・あのね、ドアを開けたら、るみさんが抱き付いてきてキス、
これって驚くでしょ?」
「意表を突くじゃないか?少しニュアンスが違うと思うけどね」
「言い直すわね。意表を突かれて驚いた、これでいいでしょ?・・・あのね、意表を突かれるは
使わない方がいいかなって。だって、”突く”って連想するでしょ?」
「敢えて使わなかった?いずみらしくないじゃないか?掛詞は不発かい?」
「だって、思い付かないんだもの。もう少し後なら使えたかも?」
「分かるよ。そのシーンまでは待たせないんだろ?」
「待たせて欲しいのに、直球なんだもの。あれ?少し行き過ぎました・・・驚いたのはね、
キスじゃないの、これは”意表を突かれる”なのね。るみさんが半裸だったことと、”久し振りね。
ねぇ、オッパイ大きくなった?”って、揉むんだもの。驚くでしょ?」
「半裸?上半身?」
「そうよ。るみさんはオッパイが大きいでしょ?嫌味だと思わない?」


[33] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/02/11 (日) 11:45 ID:6hNJOGzk No.189321



いずみが特に気にしている部位ですから、直球をまともに受けた衝撃は、私の予想を遥かに
越えると思われます。

「オッパイね・・・気にしなくていいんじゃないか?」
「あなたはちょうどいい大きさだって慰めてくれるでしょ?でも、あれよ、世間では標準以下
って思われてるから、るみさんの第一声がオッパイなのよ。
去年の11月以来なのに、それって酷くない?」
「はははっ、気にしてくれるんだから、有難く受け取ればいいんだよ」
「そこ?・・・でも、隠しようもないから自然体でプレーに臨みました。お終い!」
「はははっ、世間が出てくるとは。いずみのオッパイのサイズは、知れ渡っていると自覚して
るんだから反論もできない、だろ?」
「はい・・・良いの、あなたがそれでいいって言えば、それが一番だもの」
「一番が分かったところで、次に行かないか?」
「うん、気を取り直して・・・ちょこっと大袈裟ね?・・・でね、るみさんに手を引かれて、
ベッドルームに入ったら、”ナニ?ナンなの?”って、呟いて直ぐに笑ってしまったの。
驚きより滑稽って感じで、笑顔で迎えてくれるセレモニーみたいな、そんな感じだったの」
「滑稽?・・・説明が必要だろ?」
「うん、二人共、JINさんとタクマさんね、ボディビルダーになったみたいに、筋肉を誇示する
ポーズを取ってるのよ。上手く表現できないけど、”ムッ!”って筋肉に力が入っている様子って
分かるかしら?」
「愉快な設定だね?そのポーズが滑稽だった?」
「うん、可笑しいでしょ?吹きそうなお顔なんだもの。特にタクマさんなんか、もう我慢できない
みたいで、真っ赤なお顔で倒れ込みそうなんだもの」
「支えたんだろ?」
「うふふっ、分かるんだ!」
「そう見せてるじゃないか?」
「久し振りでしょ?それに連絡しなかった負い目も少しかな?」
「優しいいずみ?」
「そうなるでしょ?そのような雰囲気なんだもの」
「演出の賜物だね?久し振りの気まずさを感じさせない様に配慮したんだね」
「木下さんが考えたと思ったのよ。でね、少し後でそれとなく訊いたらね、”僕じゃないよ。
分かるだろ?”って、そう言われたらそれ以上聞けないでしょ?」
「直ぐに理解した、だろ?」
「うん、JINさんとは思えないでしょ?るみさんなんて、とても考えられないもの」
「だね。分かってるのに聞いた?確認したかったんだろ?」
「あなたね・・・そういう見方って間違ってはいないわよ。でも、ほんとに確信が持てなかったの。
だってね、これも可笑しいのよ、それもあって木下さんだって思っていたの」
「またまた説明が必要だね?」
「あのね、ボディビルダーだからビキニパンツね?それしか身に着けていないのは分かるでしょ?
それがね、私がタクマさんを抱き支えた時にね、腰に廻した私の腕をそっと放して、クルって
回るの。”どうしたの?”って訊いたらね、振り返ってお尻を突き出すようにビキニパンツを
見せてね、”分かる?”って、満面の笑顔なのね。”パンツ?・・・ナンなの?”と返したら、
”色だよ”なの。直ぐに理解できなくて、疑問符が飛び交っている状況、ほんの少しの時間なのよ、
おかしな表情だったと思うのね。タクマさんは体を戻して、抱きしめてきたの。
私の耳に唇を付けて、”大好きだよ。いずみちゃんは?”なの。”ヒントなの?”って思ったのと、
好きな気持ちは変わっていなかったから、”同じよ”って小さくお返事したら、キスされて、
”前と後ろ、違うだろ?”なの。前が黒、後ろが赤のツートンカラーなの。それは分かったのに、
何を言っているのか分からなかったのね。
そしたらね、木下さんが”赤と黒と言えば分かるだろ?”って後ろから助け船なの。
木下さんなら文学でしょ?これしかないって直ぐに分かったのよ。でも、少しの間、その意味が
分からなくて・・・あなたは分かる?」
「はははっ、スタンダールの赤と黒、高校生の時に読んだ記憶があるよ」
「古典だものね、私も読んだわ。木下さんが説明する前に、意味が分かったんだけど、あなたは?」


[34] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/02/11 (日) 16:12 ID:6hNJOGzk No.189331



「小説の通りと理解すれば、黒は聖職者、赤は軍人だろ?それが意味するところか・・・
聖職者は人を導き、教えを説くだろ?軍人は攻撃そのものだとたら・・・なるほど、いずみを
ベッドに誘い、快楽を与える。そういう意思表示じゃないか?」
「うふふっ、あなたね、イヤらしいことは直ぐに分かるんだもの。ほんとエロには頭の回転が
速いのね?私はね、”聖職者の様に優しく導き、軍人の様に激しく責める”ってお返事したの。
意味するところは同じでしょ?」
「木下さんが考えたと言っても全く不自然じゃないが、タクマさんがとなると、何らかの思い
違いをしていないか?」
「うん、私もそう思うの。もしかしたら、隠されたものが・・・”能ある鷹は爪を隠す”って
言うでしょ?」
「そうだとしたら、セラピストは仮の姿?」
「そんな風には見えないし、セラピストに扮する理由も分からないわ」
「だね。まぁ、今後も会う予定なら、徐々に分ってくるんじゃないか?」
「うん・・・気になるでしょ?時間をみて会ってみようかって・・・あのね、時系列でお話した
いの。それでいい?」
「任せるよ・・・注意を惹く作戦なら大成功だね。いずみが思っているより、ずっと大人かも
しれないよ」
「私が連絡しなかったから、今回の事を利用したのね?」
「大成功だろ?いずみは会ってみようと思っているんだろ?」
「ほんとだわ。まんまと嵌められたのかしら?うふっ」
「楽しそうじゃないか?」
「嵌められたところなのに、また嵌められたいいずみって、思ってるでしょ?」
「当たらずとも遠からず、だろ?」
「気になるでしょ?それが先かな?・・・でも、嵌められるかも?うふっ」
「はははっ、彼の人となりはある程度の憶測はあるんだろ?それを信じてもいいんじゃないか?」
「うん、表のタクマさんはセラピストの卵って分かったでしょ?裏は・・・想像以上の知識を
持ったインテリかもしれないわ。それを確認するために会うのもいいかも?」
「理由付け?必要ないだろ?それがなくても会いたいんだろ?」
「うん・・・あなたに叱られないか気になるのに、会いたいかな?」
「本音は?」
「言わせないで・・・昨夜を思い出すでしょ?うふっ」
「そうなら、セフレ復活かい?」
「話してはいないけど、そうなりたいかな?彼はまだ解消したと思っていないみたいなの」
「それなら話は早いが、分かってるね?」
「うん、前に決めたように会うのは一ヶ月に一回、回数は増やさないし、変な賭けもしないわ。
会ってベッドを楽しむ、それに徹するから、それがセフレだもの。タクマさんにもはっきりと
認識させるから、心配しないでね?」
「信じる、信じられること、それが最初の一歩なら、僕達は次の展開に進んでいる、分かるね?」
「うん・・・タクマさんとのこと、あなたが知りたいこと、変わったこともあったら、あなた次第
だけど、全て話すから」
「こうしようか、性行為だけじゃなく、いずみが感じた違和感があればそれも、いいね?」
「はい・・・あなた、認めてくれてほんとにありがとう」
「はははっ、それは楊さんに・・・木下さんかな?僕の出る幕はないんだからね。ここで確認
することもないんだが、僕の一押しが欲しかった、そうかい?」
「うん、楊さんが決めた事だから、それに従う約束でしょ?でも、あなたにも笑顔で送り出して
欲しいんだもの、うふっ」
「大袈裟だね?・・・まぁ、楽しめればそれでいいからね。あれだね、二人が仲良くしている
ところも観たいかも?はははっ」
「えっ?それは無理かも?だって・・・」
「セックス?話しだけで十分だよ。僕が・・・」
「分かったわ。お話してるところでしょ?いつものレストランなら、大丈夫かな?
タクマさんにもオーナーにも知られていないんだし、お客としてなら誰も疑わないわ。
でも、セフレだから少しの接触はあるかも?それはいいでしょ?」
「確認済みだろ?二人の雰囲気が分かればそれで十分だよ」
「はい・・・嬉しいわ。こんなにわだかまりもなく話せるのって、あなただけだもの。
私の最高の理解者だもの、愛してるわ・・・チュッ!・・・ほんとだからね?」


[35] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/02/12 (月) 11:24 ID:XkAga69A No.189353



いずみが気になる人物としてタクマさんが浮上しているのですから、私が知らないとなると
彼女の真意を見逃すことにもなり兼ねません。
”百聞は一見に如かず”の格言通りではないのですが、姿形を観るだけも、彼の望むところが
分かるかもしれないと思ったのです。
私が気になるのは年齢差もさることながら、いずみへの気持ちがどの程度なのかと言うことに
尽きます。
楊社長、木下さんなら欲望も欲求も理解の内なのですから、問題になるような事はあり得ないと
断言できるのですが、タクマさんについては、まだ見えないことが多過ぎる様に思えるのです。
取り越し苦労かもしれませんが、いずみにとっては毛色の変わたセフレなのは間違いありません
から、それなりの注意喚起は必要だと判断したのです。

「言わなくてもいいから・・・イントロが長くなっただろ?」
「ホントだわ。タクマさんの事に注力し過ぎたかも?うふふっ、し過ぎね?」
「いずみの気持ちが聞けたからね。無駄な時間じゃなかった、だろ?」
「うん、話せて良かったわ・・・ではでは、続きね・・・
”当然と言えば当然だね。いずみちゃんならスタンダールはとっくに読破してると思っていたよ”
って、木下さんが。
タクマさんとは手を取り合っていたから、振り返って、特にお返事もしなくて笑顔で返したの。
”赤と黒”って木下さんが考えたと思うでしょ?冷静に考えれば木下さんとは思えないのに、
思い込んでいたんだわ。”赤と黒”の発想だけならそうかもしれないけど、そこまで手の込んだ
ことをするとは思えないもの。ちょこっと勇み足でした、うふっ」
「後の祭り?その方がいずみには好感が持てたんだろ?」
「驚きでしょ?信じられないを信じるって、何だか嬉しくなるでしょ?」
「好きなタクマさんだから?」
「はい!そこまでにします、うふっ・・・でね、”JINさんも?”って思うでしょ?
それが分かったのね、”僕はワンカラ―だよ”って、振り返ってお尻を突き出すのよ。
その仕草がとても可笑しくて、JINさんってお茶目なところもあるんだって、私には高評価なの。
二人共ね、空気を読むのは上手だし、楽しませる手段も豊富に持っているって感じたわ」
「”たかがセラピスト、されどセラピスト”だね、はははっ」
「褒めてるの?お二人さんに聞かせてやりたいわ、うふっ」
「可能ならね?まぁ、タクマさんには黒子として関わるから、顔が割れているJINさんなら
構わないよ」
「あり得ないでしょ?あなたってほんと変な気質の持ち主だわ」
「その方がしっくりくるね。真面目だと言われると何だか落ち着かないよ。いずみもそうだろ?」
「わたし?至って真面目なのに、変に作り上げられるんだもの。損な気質だわ、うふっ」
「お互いかい?」
「似たもの夫婦なら、とても安心していられるわ・・・もう!前に進めないでしょ?
続けるから、横槍は入れないでね?」
「はははっ、良しなに」

この頃のいずみには、全幅の信頼を寄せていたと言っても、過言ではありません。
不安がないとは言えない状況も難なく乗り切っていくのですから、頼もしいの一言です。
ところが、歳の差のセフレについては、対応方法をマスターしていないどころか、初心者でしか
ないのですから、一抹の不安がなかった訳ではありません。
いずみに接する表の顔、まだ見せていない裏の顔、裏があるとすればなのですが、スタンダール
が出現するまでの彼とは全く異質な知識の持ち主だとすれば、木下さんとの文学談義の悦楽が、
タクマさんへの渇望に置き換えられないとも限りません。
いずみはハッキリとは感じていないかもしれませんが、今まで以上に彼への関心度が高まった
要因は、言うまでもなく、文学の知識の一端を見せられたからに他ならないと思います。


[36] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/02/12 (月) 15:28 ID:XkAga69A No.189361



「いいのね?・・・それでね、るみさんが、”いずみさんも同じにならない?”って、
お洋服を脱ぐように促すのね。ハッと気付いたの、私だけでしょ?
木下さんと二人だと思ってホテルに来たのに、乱交の設定なんだもの、とても驚いたのよ。
でも、愉快な出迎えでしょ?気持ちもそれに向かっていたと思うの。脱ぐのはいいとしても、
皆に観られながらって恥ずかしいでしょ?ほんの少し戸惑ったのね。そしたら、タクマさんが
何も話さずに私を抱き寄せて、背中のジッパーをそっと下げたの。
キッカケって大事でしょ?それだけで恥ずかしさもどこかに飛んで行ったみたいで、その場で
お洋服を脱ぐことが出来たの。あっ?お洋服ってワンピースなの、定番でしょ?
話さなくても良かったわね」
「まぁ、そうだろうとは思ったが・・・それで?」
「ワンピース?違うでしょ?・・・でも、話そうかな?話したいかも?うふっ」
「いいよ、お任せだよ」
「半袖のフレアースカート、淡いブルーね、私の大好きなワンピースなの。
何故って聞くでしょ?久し振りだもの、木下さんとの文学談義なのよ。ちょこっとおしゃれしよう
かなって。木下さんに響かないことは分かっていたのよ。でも、オンナってそうでしょ?」
「ワンピースはいずみの自己満足だけだろ?ピロートークにワンピースはないだろ?はははっ」
「ほんとデリカシーがないんだから。オンナって微妙な空気感に気持ちが癒されるのよ。
あなたもセラピスト・・・あれ?失言だわ、ごめんね?」
「セラピストならデリカシーが理解できる、だろ?タクマさんを見習えかい?」
「そこまでは・・・ホントにごめんね。比較したんじゃないから、分かってくれるでしょ?」
「僕は僕なんだろ?聞き飽きた言い訳だね」
「怒ってる?」
「はははっ、正直な気持だろ?そう言えばいいんだよ」
「うん・・・でも、あなたはあなただもの。唯一無二のあなた、誰とも比べられないもの、うふっ」
「理解したことにするから、進めろよ」

タクマさんを意識しながら、話しの間合いを取っている様に感じます。

「下着姿、Tバックだけになったの。脱いだお洋服はるみさんがクローゼットに運んでくれたのね。
これで同じになったって少し落ち着いたの。それもつかの間かな?木下さんが、”プレー内容を
話すからね”って、窓の傍の椅子に私を座らせたの。るみさん達は既に説明を受けていたようで、
ベッドの端に座ってるのね。るみさんとJINさんは抱き合うように話してるのに、タクマさんは
一人寂しくって様子なの。話している私達に、私かも?彼の視線を感じたわ」
「カップルは事前に決まっていたようだね」
「うん。タクマさんの視線は、”早く!”って感じだったのかもね?」
「はははっ、意識過剰だろ?」
「うふふっ、そうかも?そうだったかも?これの方が現実的だわ」
「その通りかい?」
「うん・・・先に木下さんの説明ね、”最初はカップル同士で、その後に乱交だから。
カップルは見ての通り決めたけど、異論は?”って。”反論はないだろ?”って、
さわやかな笑顔が”いいね”って、念押しみたいに。
”当然そうなると分かっていたからね。話す必要もないだろ?”なの。
タクマさんがごり押ししたのかもしれないけど、JINさんとるみさんは以前にも絡んでいたよう
だし、反対する理由もないでしょ?分からないけど、タクマさんがJINさんに私とのカップルを
嘆願していてもおかしくないもの」
「正に正論かい?」
「正論って言う?当然が自然ってことじゃない?」
「自然を装った当然だろ?はははっ」
「そうかもしれないわ。タクマさんのアピールが効いたんじゃないかな?」
「いずみも望むところだろ?」
「うん、最善の選択だったかも?」


[37] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/02/12 (月) 17:33 ID:XkAga69A No.189366



「言うね?セフレ復活ののろしかい?」
「ごめんね?あなたの言う通りセフレならタクマさん、だから最善って。他意はないから」
「あればナンだろうね?」
「えっ?・・・裏はないってことでしょ?・・・あれのこと?タクマさんの裏が他意ってこと?」
「気が廻るね?それがいずみだから信用できるんだよ」
「あなたに褒められるってホントに嬉しいのよ。彼の裏を、あるとしたら何とか暴いてみせるわ」
「頼もしいね。何もない事を祈りたいし、いずみに危害が及ぶことがあったら大変だからね」
「大袈裟でしょ?でもあれね、見せているようで見せないのなら、セフレ以上の感情には程遠い
距離感で接するわね」
「難しい表現だが、飲み込まれない程度のセフレを演じる、これに尽きるだろ?」
「うん、楽しむことが最優先だし、それ以上でも以下でもない、ただただ、快楽の時間を共有する、それが潤いと癒しを与えてくれる、これでしょ?」
「だね・・・続けないか?」
「うふふっ、あなたがいけないのよ、”正論”なんて言うから。前に進めないでしょ?」
「曲論が良かった?僕達にはお似合いのフレーズだろ?」
「斜めからの視点でしょ?曲論は行き過ぎよ。もう!議論してる場合?うふっ」
「はははっ、済まないね。いずみが愛おしいから、どうしても逆らいたくなる、分かるだろ?」
「そういう人ってホントは寂しがりなんでしょ?あなたは違うのにそう見せるのは・・・そうか!
そういうところを掘り下げて真意を掴む、そういうことね?」
「正に正論だよ、はははっ」
「ホント懲りないお人だこと、うふっ・・・続きを話すわね・・・
木下さんは分かっていたのね、話し終わると直ぐにタクマさんを呼んだの。タクマさんの視線は
木下さんにも注がれていたなんて、何だか損しちゃった気分だわ」
「独り占めしたかった?」
「だって、セフレなんだもの、うふっ」

本心でないことは理解出来るとしても、うわべだけでもセフレを演じたいいずみの気持ちも、
分かる気がします。

「はははっ、むべなるかな、だね?」
「嬉しいわ。あなたが肯定してくれるんだもの・・・あれ?違うの?」
「揶揄だよ。そう言って欲しいって顔に描いているからね。ご期待に応えたまでだよ」
「フェイクでしょ?セフレ復活ってそういう風に見せただけだもの。タクマさんには何も話して
いないのよ。”その空気感が分からないの?”って感じで接したのよ。あれ?そう読めていたの
かな?うふっ」
「いずみの言う、”以身伝身”、心が身の、だろ?」
「あなたには勝てないかな?ベッドでは・・・体でお話したかな?うふっ」
「楽しそうで良かったね?そういう風に話せる間は、特に問題はないと理解できるからね」
「うん、これからも愉快にお話しできると思うの。それが私の目指すセフレのあるべき姿、
ちょこっと大袈裟でした、うふっ」
「まぁ、そうだと理解しておくよ。さてと、本題は?」
「はい、戻します・・・タクマさんってとても嬉しそうなお顔で私の傍に。木下さんが呼んだ
のによ、おかしいでしょ?」
「我慢できなかった?」
「まだでしょ?待たされる時間が辛かったんじゃない?」
「そう言ったんだが、そこに結び付ける?はは〜ん、我慢できなかったのはいずみだろ?」
「誘導って酷くない?でも、そうだったかも?うふふっ」
「合わせるね?本音が見えないのは困ったものだよ」
「真面目にお返事するわね?あのね、全然よ、木下さんとのお話に集中していたから、
タクマさんの心情って何も思わなかったの。ペアになる事は想定済みでしょ?だから落ち着いた
ものよ、矢でも何でもって心境かな?」
「開き直った?まぁ、平常心で臨めるんだから、その後の性行為とのギャップが、木下さんの心に
大きく響く、それが欲しくて、乱交を設定したと思うね」
「うん、それと私の気持ちの変化、それを見定めたくて、とも取れるでしょ?」


[38] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/02/17 (土) 20:28 ID:3ZgMVBeY No.189454



るみさんから聴取した内容を思い出します。

「分かっていたのなら、木下さんに喜んでもらえる様に演技したんだろ?」
「うん、全てではないのよ、興奮すると思い通りにはならない事もあるのね。
それがまた木下さんの心に訴えかけられるから、演技だけでは薄ぺらなモノになっていたと
思うの」
「気遣いのいずみだね?」
「ホントそうよ。セックスを楽しみながら見せ方も考えないといけないんだもの、とても大変なの」
「”大変なの”を”興奮する”に置き換えるのなら、信じられるけどね、はははっ」
「興奮?逝っても完全には逝っていないのよ。そうしてるって、木下さんには分かるのね?
そこが一番難しいところ、表現者としては悩みどころね?」
「注意されたのかい?」
「注意というか、”完全に逝っていないね?”って。分かるんだもの、誤魔化せないでしょ?」
「ん?・・・じゃぁ・・・」
「うん、4Pの時に意識がなくなる程・・・演技じゃなくて、そうしようと思ったから。
我慢ってやはり私だったのね?」
「正直な気持ちを聞けて良かったよ。木下さんには通じないと分かったことは大きな成果、
果実かな?得るものがあったね?」
「豊作?大漁かな?一杯釣れたって感じだったの。”これね?”って心に刻み付けたわ。
凄いでしょ?」

本題に進まない、進めないのかと、ふと疑問符が頭に浮かびます。
るみさんがいずみに囁いたフレーズへの戸惑いが、今も残っているのかもしれません。
性行為の真っただ中で喘いでいたその時に、私への本心を訊かれたのですから、戸惑いどころか
頭が真っ白になったのだろうと推測しても、間違っているとは思えません。
ほんの一瞬、現実に戻されたとしても、それもつかの間、快楽の渦と共に飲み込まれて行ったと
思えるのです。
ところが、それを認識していなかったと仮説を立てる事も出来ます。
木下さんの要望を全力で果たすべく性行為に集中していた時ですから、るみさんの問い掛けに
反応したとまでは言えないのかもしれません。
意識が薄れている時だったとしたら、彼女のフレーズは記憶にすら残っていないとも考えられます。
目を開いたその瞬間は、エクタシーを迎えるその一瞬と偶然にも重なったのかもしれません。
そうであるのなら、臆することなく話せると思うのですが、それを知っている私ですから、
ひがんではいないのですが、邪推とも取れる思いに行き着いてしまいます。

「何だか大袈裟じゃないか?そこまでほんとに思ったのかい?」
「チョッピリかな?ほんとに逝ったってあなたには話したくなかったの。あなた以外の人とは、
ナニがあっても100%はあり得ないと思っていたのに、純粋に逝ってしまたんだもの。
それも私が望んだのよ。いくら木下さんの要望であっても、誤魔化せなかった私の心情には、
大きな後悔が残ったの」
「後悔?・・・そうなら、まだ許せるだろ?いずみ自身を褒めてやらないと。
完全に取り込まれたんじゃないと証明してるんだから。それも演技だと言い聞かせればいいと
思わないか?」
「そうかな?・・・あっ?アレでしょ?純金とか純プラチナって純度が100%じゃないんでしょ?
99.99%とか、そうでしょ?純粋に逝ったって言ったことね、そう考えれば、100%ってあり得ない
と思わない?」
「かなり無理があるだろ?混じりけがないと言う意味なら同じ扱いになると思うね。
ただね、純粋には心の面持ち、人の温もりがあるだろ?そういう観点からなら、いずみの気持ち
の持ち方じゃないか?」
「えっ?・・・そうか、そうならあなたには100%、今回のことは100%って表現したけど、
ほんとは99.99%・・・もっと少なかったかも?四捨五入で100%って、変な拘りかな?うふっ」
「はははっ、もういいよ。木下さんが満足できる逝き方だったのなら、それはそれで良しと
しないと」
「うん・・・何だかスッキリしたわ。あなたの言う通り100%じゃないから、それも演技だって
言えるもの。ホントあなたってお助け旦那様だわ」
「木下さんには、お助けいずみだろ?はははっ」
「うふふっ・・・喉のつかえが取れたみたい。ではでは、セックスシーンへと進めていきます」

拘った理由が分かったとしても、るみさんのフレーズを認識していなかったのか、そこに焦点が
移って行きます。
4Pまではその話しはしないでしょうから、その時まで大人しくいずみの説明を聞くことにします。


[39] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/02/18 (日) 11:47 ID:f9nBfaWM No.189469



「詳しくはいいからね?」
「うふふっ、聞きたくないの?そうよね、愛する妻があなた以外の男性とセックスするんだもの。
でも、逆なら、私がされる側だったら、どうなんだろう?・・・思うのよ、あなたなら誰としても
気にしないって何度も話してきたでしょ?これって、もしかしたら詭弁じゃないかって。
今そう思ったんじゃないの。昨夜かな?ふとそう思ったの、おかしいでしょ?」
「ん?心境の変化?昨夜に何か・・・乱交の時?それ以外に何かあったのかい?」
「その時・・・理由がない想いってないと思わない?」
「難しい表現だね?」
「少し下がって・・・冷静がいいかな?冷静になって考えたらね、それって帰りの飛行機の中で
うとうとしながら・・・殆ど寝ていないの。セックスシーンの後で話そうと思っていたんだけど、
気持が先走りしたのかも?4Pの後ね、木下さんとお隣のお部屋に移動したの。
木下さんの指示なのよ、分かるでしょ?」
「乱交を終えた直ぐ後のいずみの気持ちを聞きたかった?それとも・・・」
「セックス?していないし、できないでしょ?二人に中出しされたオマンコなのよ。
木下さんの辞書にはあり得ないと思うもの。あれ?文学的?」
「はははっ、フェイントかい?」

これから話す内容を吟味している様にも見えます。

「ちょこっと間合いが欲しかったかな?・・・あのね、あなたが言ったこともそうなのね、
私の気持ちの移り変わり、揺らぎ・・・そんなところかな?タクマさんとJINさんとの比較、
木下さんが感じた事ね、それに私の思いとどの程度マッチしているとか、性行為と気持ちの
起伏とか、そのようなことを聞かれたの」
「木下さんの気質が分かるようだね」
「とても繊細なのよ。ジギルとハイドって認定した事が嘘の様なの。ほんとは二面性って
全くの演技じゃないかって、そう思うのよ。私みたいでしょ?」
「演技?そうなのか?」
「異質な演技かな?」
「はははっ、性行為とエロ小説だろ?異質とは到底思えないけどね」
「分かってるんでしょ?行為と文章なのよ、異質じゃない?」
「純粋が当てはまるのなら、そうだろうね。ところが切り離せない深い繋がりがある、それを異質
とは言えないだろ?」
「拘るんだから。それがあなたって分かるのに、とても勝てるとは思えないのに、逆らいたく
なるの。でもあれね?純粋じゃない行為、不純異性交遊?純文学じゃないエロ小説?
ほんとだ!切り離せないかな?うふっ」
「分かってるんだろ?いずみのフレーズをそのまま返すよ」
「はい、受け取りました、うふっ。でも、異質違いって分かってるんでしょ?」
「ジギルとハイドを性行為と文章に当てはめるのは無理があるね。いずみが正しいと思うよ」
「認識の行き違いでしょ?何度もあったもの。それでもこうして一緒に話せるのよ、お互いを
理解してるからだもの。間違いは素直に認めましょうね?」
「はははっ、気を付けろよ」
「うふふっ、ほんとだわ。木下さんとのお話しに飛んでしまったけど・・・」
「詭弁だろ?」
「うん・・・木下さんとのお話には後付が、そう言ってもいいと思うの。それは後で話すわね?」
「それが頭にあったから、時系列を逸脱したんだね?寝ていないのなら不思議じゃないが、
大丈夫かい?」
「うん、あなたに話さないといけないって使命感が・・・信じる?」
「信じたいね。それがいずみだろ?だけどね、霧の掛かった頭なら記憶も曖昧にならないか?
ポロッと本音を漏らしたらそれこそ大変だぞ、はははっ」
「今の私には真実と現実を混同するって考えられないわ。全て本音、曖昧な記憶でも明確な言葉で
その場の事実と真実の私の気持ちを話せるわ。少しの記憶があれば、枝葉を探して全てを
つまびらかにできるもの」
「そうか・・・大丈夫なら、無理はしていないね?」
「うん、話し終わったら死んだように眠るかも?でも、あなたが寝付くまで起きているの。
マイルールは不変なのよ」
「強い意思は分かるが・・・聞かせてくれないか?」


[40] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/02/18 (日) 16:01 ID:f9nBfaWM No.189477



「詭弁って言ったけど、昨夜まではほんとに気にならなかったのよ。愛する人が他の女性と
セックスするって普通なら容認なんてできないでしょ?それって、私がそうだから気にしない様に
自分にいい聞かせていたのかもしれないって、ふとそう思ったの」
「じゃ、今は違う?」
「違わないでしょ?楊さん、木下さん・・・それにJINさん、タクマさん、セックスしてるのよ。
それなのにあなたの事が気になるって、おかしいと思わない?」
「心境の変化か・・・昨夜、何かのキッカケがあった、そうだろ?」
「それがね、ハッキリとは言えないの。楊さんも木下さんも立ち位置がはっきりしてるでしょ?
それにJINさんも・・・」
「タクマさんか・・・JINさんはセラピストから逸脱しないが、タクマさんとはセフレの関係、
その違いかい?」
「もやもやとした気持かな?あなたを愛してるのに、”この気持ちって何なの?”って問い掛けて
も何にも返ってこないの。私が理解できないのに、説明できないでしょ?」
「”理由がない想いはない”と言っただろ?その理由が曖昧でもそれがキッカケになったんだろ?」
「・・・うん、あのね、4Pの時ね、また時系列じゃないけど、るみさんがね、あなたを”愛してる
でしょ?”って呟いたの、そう聞こえたと思ったんだけど。”えっ?”って思って直ぐに逝って
しまったから、ほんとにそう言ったのかは、とても曖昧なの。それでも、それが心の隅っこで
ザワザワって何とも言えない不安な気持になったの」

るみさんのフレーズは認識していたようですが、遠くの雷鳴が直ぐにフェードアウトしていった
ような記憶だろうと思われます。

「るみさんが?」
「うん・・・見えないでしょ?その時の様子を話さないと何も見えないもの。
4Pの時って話したでしょ?その前の事は後でお話するけど、兎に角、4Pの時にね、タクマさんと
私、るみさんとJINさんが性行為ね。あの時は・・・私が仰向けに寝て、タクマさんが私の足を
・・・どっちだったかな?片足を彼が肩に、右足だったわ、乗せてねピストンしてたの。
もう逝く寸前だったその時に、るみさんが。さっきも話したけど、演技じゃなく、ホントは演技
でしょ?その時は純粋に逝くことに集中してたその時なの、”ハッ!”と目を開けたけど、
逝く時ってそうなる事ってあるでしょ?るみさんの声だって分ったのよ。
でも、ナニも見えなかったの。キスされたこともハッキリしないけど、きっとそうだろうって。
だって、お顔がくっ付くくらいだったから、そうならキスするって分かるんだもの。
だから曖昧なことばかりだけど、るみさんの声だけが、ハッキリと残ってるの」
「それが不安?いずみの気持ちが読めないが」

るみさんから聞いたその時の状況が、いずみの説明と一致しなくても、同じ空気感であれば、
それは彼女等が共有していたその時その場所と理解出来ます。
視点が同じならいざ知らず、少しでも差異があるのなら、全てにおいて一致するとは思えない
からです。

「うん・・・帰りの飛行機の中でね、眠いのに寝れないの、るみさんの言葉が妙に引っ掛かって。
るみさんとは去年から会っていないのよ。それなのに、あなたの事を口にするなんて。
地元だからって、あなたと会ってるとは思えないし、それならどうして・・・自問するでしょ?」
「昨日まで会っていないからね。るみさんの発言は理解出来ないが、僕達が夫婦だとは知らない
だろ?」
「あっ?知ってたとしたら・・・それはないわね。木下さんも知らないのよ、楊さんが話すとは
考えられないし・・・じゃ、どうして?」
「柊さんなら・・・どう思う?」
「それは分かるけど、るみさんに教える理由も意味もないでしょ?二人の間に利害があるとは
思えないし、もし楊さんの耳に入ったらタダでは済まないでしょ?そんな危険を冒すとは思え
ないもの」
「だね、いずみの言う通りかもしれない。それじゃ・・・るみさんの意図はいずみになりに理解
している、確証はないとしても特定してるだろ?だから不安になる、違うか?」


[41] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/02/18 (日) 17:56 ID:f9nBfaWM No.189480



いずみと話しながら、るみさんの意図とは全く別の思いが浮かんできます。
それは、るみさんの発言をいずみが独自に解釈したことで、不安に駆られているように
思えるのです。

「ねぇ、るみさんからは聞いているの?」
「そう言ったとは聞いたけどね、その理由迄は・・・ほんとだからね、はははっ」
「あなた!・・・うふふっ、真面目に話してるのに。あれね?フェイントでしょ?」
「神経をすり減らすほどの事でも、そこまでは考えていないだろうけど、言い換えようか?
るみさんの発言で気付かされたことがあるんだろ?それが不安を煽っている、違うか?」
「あのね、その時は直ぐに逝ったでしょ?逝かされたように見せたけど、私から進んで。
話したでしょ?4Pが終わっても、その後は木下さんとお話でしょ?だから、考える時間も何も
なかったの。もやもやした気持ちを引きずりながら、飛行機まで。その時に急に不安が襲って
きたの。最初に思ったことはね、今も話したけど、るみさんとあなたが会っている、それは直ぐに
打ち消したのね。あり得ないもの、そうでしょ?・・・でね、次がそうだろうって。
でも、私の現状は把握しているだろうから、そうだとしたら、あの発言って何だろうって考えた
のね。あなたとは以前愛人関係にあった、楊さんがるみさんにそう説明したでしょ?
終ったことなのに、それを持ち出すのはどう考えても不自然なのね。あなたが全く関与していない
とすれば、彼女の目の前で、直ぐ傍でセックスしている私達、タクマさんとの関係に何かを
言いたかった、そこまでは間違っていないとしたら、どうしてあなたの名前を聞かせる、
それが分からないの」

ヒントを見せないといずみも浮かばれないでしょう。

「るみさんの発言を少し追加するとね、いずみが僕を愛してると思っているから、つい口を衝いて
出てしまった、と言ってたね」
「どうして?何かあるってこと?」
「分からないが、そう思ったからだと。間違ってはいないだろ?見る目があると思わないか?」
「そうだけど・・・あなた、何か知ってるの?」
「”ほんとだ!”って、納得の笑顔が返ってくると思ったが、不穏な表情とはね」

私が感じている以上に、いずみの浮かない表情は、深刻さを物語っているようです。

「だって見えないでしょ?るみさんの真意って何なの?私には分からないわ」

いずみには珍しく、かなりムキになっているようです。

「どうしたんだ?いずみらしくないだろ?フェイントも効かないほど深刻なのかい?」
「ごめんね?何も分らないって不安が先に立つでしょ?」
「はははっ、分かってるだろ?彼女は見る目がある、ただそれだけのことだよ。深い意味はない
と思うよ」
「深い意味?あるとしたら・・・タクマさんと私との関係しかないでしょ?」

超多忙の意味を話さないと、おさまりが付かないかもしれません。

「超多忙って話しただろ?」
「うん・・・木下さんが話したのよ。るみさんは傍で聞いていたから、それをあなたに話した
んでしょ?」
「その意味は理解しているだろ?」
「お仕事でしょ?」
「だろ?るみさんはそうは思わなかった。愛人関係が超多忙と理解したようだけど、僕から
それは違うって言えないだろ?るみさんの認識なら間違っていないどころか、それが正解じゃ
ないか?」
「そうかも?・・・私の思い過ごしかもしれないわ。でも、聞き流す事ってできないと思ったの。
間違った理解だったかもしれないけど、るみさんが警鐘を鳴らしてくれたと思えばいいんだわ。
そうでしょ?」


[42] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/02/23 (金) 14:29 ID:kyJyjI0c No.189674



るみさんといずみの認識には、計り知れない程の距離感があるように思えるのです。
ところが、るみさんの指摘が、いずみの懸念に影を落としたことは間違いないようです。
タクマさんとの距離感に一抹の不安を抱えていなければ、いずみが不安に襲われることは
全くない筈です。

「そういうことなら・・・アレか、いずみの宣言とは違った距離感になっていた、何となく
そう思っていたところにるみさんの問い掛けか、なるほどね」
「私はそうだとは思っていないのよ。でも、そういう目で見られたら、そうかなとも思えるの。
ほんとは少し心配になっていたところに、るみさんでしょ?驚きよりも怖さを感じたの。
帰りの飛行機の中で思い返したのね、その時までも落ち着かない気持は引きずっていたのよ。
驚きよりも何と言えばいいかな、不穏かな?徐々に怖さが襲ってくる感じだったの。
今もその気持ちが蘇ってきて、落ち着かない気持なの。でも、あなたからるみさんの真意が聞けた
から、少しずつだけど、不安が後退していくように感じるわ」
「言っただろ?るみさんの目は節穴じゃないって、はははっ」
「ホントだ!・・・少し戻ったかな?」

今度は明るく反応してくれます。
気持ちの切り替えが早いいずみですが、今回ばかりは、一気にとはいかないようです。

「無理もないか、何となく不安を感じる事ってあるからね。その原因がハッキリしていなくても、
そうだろうとは推測できるのに、そこまではまだ大丈夫とか、自分にいい聞かせることって
あるだろ?」
「あなたは違うでしょ?そんな中途半端な気持ならエンジニアは勤まらないって言っていたもの。
今のは私の代弁でしょ?」
「まぁ、そうかな?そうかも!はははっ」
「うふふっ、あなたって・・・今度るみさんに会ったらお礼を言わなきゃ、そうでしょ?」
「なんて言うんだ?”愛する旦那様”、かい?」
「言えないでしょ?だからね、”気付かせてくれてありがとう”、かな?」
「はははっ、それも言えないだろ?るみさんが困惑するだけだろ?」
「るみさんの意図に沿ったお返事だと思わない?」
「だとしてもだよ、終わった関係に水を差すことにもなり兼ねないだろ?」
「アレ?それじゃ最初に私が感じた懸念通りってこと?あり得ないんでしょ?」
「るみさんと僕?考えるまでもないだろ?」
「うん・・・それじゃ、あれね?聞こえなかった、知らなかったを通せばいいのね?」
「何事もなかった、それしかないだろ?」
「うん、三猿じゃなくて二猿ね?うふっ」
「ん?・・・サンエン?・・・はははっ、日光東照宮の?・・・ん?二猿?」
「三猿は、”見ざる、聞かざる、言わざる”でしょ?るみさんの声は聞こえなかった、だから、
お返事できないでしょ?でね、”聞かざる、言わざる”、二猿だと思わない?」
「はははっ、三猿は前にも話した記憶が・・・まぁ、僕達だけの無駄話としようか?」
「無駄なお話って、とても有益だと思わない?」
「僕達だけならね、分かるだろ?」
「うん・・・理解し合っているのはあなただけ、雑談も楽しいものね?」
「雑談はそこまでだね。詭弁は何処に行ったんだい?論点がズレていると思わないか?」


[43] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/02/23 (金) 17:16 ID:kyJyjI0c No.189684



そうだったと言う風に、目を見開き、

「詭弁って、自分を偽る事でもあるでしょ?間違ったことを正論と思わせること、そうだとしたら、
私の本意ではないってことでしょ?」
「だから詭弁なんだろ?」
「もしかしたら、何年も自分を騙し続けていたことになると思わない?そうとは自覚していなか
ったのに、るみさんの一言で目が覚めたと言っても不思議じゃないもの。
この場合は、タクマさんとの関係から派生したことでしょ?るみさんの本意って、”タクマさん、
それも一回り以上も年下の彼と仲良くし過ぎじゃない?小田さんを愛してるのなら、できない
ことでしょ?”って、そのような感じに聞こえたの。でも、これって後付なのね、その時は、
興奮が勝っていたから何も思わなくて。私の理解って間違ってないでしょ?」
「前にも話したが、いずみが決めることだよ。今までの発言も間違っていたとは思えないし、
思いたくもない、全てがいずみなんだから。言い換えるのなら、僕にとってはいずみが全て、
代わりなんていない、ただそれだけのことだよ」
「気にならないってこと?」
「詭弁を撤回しても、それはそれで受け入れるからね」
「うん・・・今の状況はまだ続くでしょ?だから、撤回は難しいかな?だって、サワちゃんは
あなたと私の愛人だもの。今思ったんだけど、タクマさんとの距離が想定以上に近かったのね、
久し振りってこともあるんだけど。それは間違いだって、るみさんに忠告されたと思いたいし、
るみさんの真意とはかけ離れているかもしれないけど、自分を戒めるキッカケにしたいの。
だからね、私が言った詭弁は、少し見方を変えて、タクマさんとの関係も、あなたから見れば
詭弁だって、ほんとは容認などしていないのに、私の性事情を考えれば仕方なく・・・
そう思えるの。あなたの真意は分かっているのに、あなたは理解していると自分を偽っていたの。
それって詭弁でしょ?」
「難しいね。詭弁でも何でもいいんだよ。いずみがいずみでいられるのなら、全て容認する。
僕のスタンスに変わりはないからね」
「うん・・・ありがとう。るみさんが気付かせてくれたって話したけど、ほんとはあなたなのね?
あなたの存在がるみさんを動かしたって、そう思えるでしょ?」
「はははっ、もういいよ。詭弁はここまでにしようか?」
「うん・・・何だかスッキリしたかな?タクマさんとは正しい距離感を持ってお付き合いするから、
るみさんにも誰にも不愉快な気持にさせないって誓います」

思わぬ提言とか行動を受けて、何かに気付かされることは、往々にしてあるものです。
るみさんの発言の真意を取り違えたとしても、いずみの琴線に触れたことは、間違いありません。
このように思い違いであっても、心の片隅に追いやられていた不穏な心理が、一気に改善される
ことを示す恰好の例えなのかもしれません。

5月にるみさんと会ったことは伏せたまま話を進めてきたのですが、今更その事を持ち出す理由も
ありません。仮に、るみさんが次回の乱交時にその事を話したとして、それをいずみが私に
問い質すことがあっても、単に確認する程度だろうと推測できますし、全く気にもせずスルー
するかもしれません。
結論が出ていることには、注力しないどころか気にも留めないのですから、戸惑うこともしばしば
ですが、いずみの心理の不可解さは、年月を経ても尚、脈々と続いていると言わざる負えません。


[44] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/02/24 (土) 11:50 ID:w0nkkFsM No.189716



「はははっ、そんなに大袈裟なものかい?」
「だって〜、イヤでしょ?不愉快な気持って。私はイヤだもの」
「まぁ、そうだろうけど、程度モノだろ?」
「私にはとても・・・琴線に触れたかな?」
「良い意味でなら、るみさんに感謝だね?」
「あなたにも?うふふっ・・・ではでは、元に戻して、カップルのセックスシーンを話すわね?」
「それだが、もう聞いたようなものだろ?詳細は必要ないから、必要最小限でお願いできない
かい?」
「分かったわ・・・るみさんとJINさんはベッドの端っこに座っていると話したでしょ?
だからそうなんだろうけど、私達は見学ってことになったの。
ほんと普通のセックス、恋人が愛し合うって感じかな?AVのように交接部分を強調するような体位
じゃないのね、あくまでも”愛”を前提とした性行為なの。
だから、あなたに指示されなくても、特にお話するようなことって、ないかな?」
「木下さんの観察は?」
「二人を見詰める私の様子かな?反省はしたでしょ?でも、それ以前の状況だから、それは考慮
してくれるでしょ?」
「ん?・・・タクマさんと?」
「うん、タクマさんね、椅子に座ってる私の左隣に寄り添って立っていたの・・・
あのね、聞かれる前にお話するわね、アレも勃っていたの。”ダブルタチね?”って私が彼を
見上げるように。
木下さんは少し離れて、どう言えばいいかな?ベッドと私が観れる位置関係、両方を交互に
観察できるところ、でも、私にはとても近いの。分かるかしら?」
「三角形かな?木下さんを頂点としたら、いずみへは短く、ベッドの二人へは長い辺で表せる
かな?いずみから二人までは一番長い辺、そうだろ?」
「不等辺三角形でいいんじゃない?私って小学生なの?うふっ」
「はははっ、済まない。微に入り細に入り過ぎたね?」
「おかしな人ね?ホント私のご主人様だわ、うふっ」
「同類?それなら喜ばないといけないね、はははっ」
「バカにしてるでしょ?」
「同類だろ?それなら僕自身をバカにしてることになるだろ?」
「じゃぁ、ないってことね?」
「ない!ない!はははっ・・・ダブルタチの続きを聞こうか?」
「えっ?それだけ・・・じゃないわね、分かるんだもの。あなたって、”その場に居たの?”って
聞きたくなるでしょ?」
「推測できるだろ?いずみの一番近くに居るんだから。いずみの行動は目に浮かぶかな?はははっ」
「だからご主人様なの。隠し事なんて無意味って知らしめてるんでしょ?」
「理解が早いから、次の展開も駆け足で進めてくれないか?」
「駆け足?アレも速かったかな?うふっ。その前にダブルタチでしょ?私達も”恋人のセックス”
ってタクマさんが少し屈んで。私が来る前に打合せしていたのね、”ほんとの恋人だろ?”って、
少し間を取ったけど、”そうね”って返したの。本気じゃないのよ、木下さんの指示ならそのよう
に見せないといけないでしょ?」
「本気じゃない?」
「本気じゃないけど、本気なの。木下さんの眼力に適うようにしないといけないもの。
理解してくれるでしょ?」
「恋人なら、絡んでいる二人を観ながらスムーズに進められるように愛撫した、だろ?」
「うん・・・タクマさんの腰に左腕を廻して、右手で・・・ソフトタッチかな?テントを張るって
言うんでしょ?もう待ちきれないって感じだったの」
「危ない?それはないだろ?」
「そう見せていたのかも?だって恋人なんですもの、うふっ」
「はははっ、よく分かったから、急ぎ足で進めようか?」

水を得た魚の如く、滑舌も生き生きとしてきます。
先程の苦渋に満ちた表情は、何処に行ったのか、聞きたくなる程です。
どうこう言っても、これがいずみであり、いずみなのです。


[45] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/02/24 (土) 19:03 ID:w0nkkFsM No.189730



「詳しくは・・・どうする?」
「お任せだよ。いずみの好きなように、それでも急ぎ足かな?」
「うん・・・あのね、セックスシーンはあなたにでしょ?私には終わったことだもの。
それよりも好奇心がそそられる、あれ?これって私かな?あなたなら関心を持つかな?
そのお話を聞いたの。あなたならきっと興味を持つと思うわ」
「それなら尚のこと急がないと、だろ?」
「うん・・・30分か40分程だったかな?木下さんの指示でJINさんとるみさんの絡みが終わったの。
終ったと言っても、少し前に”そろそろ終わろうか”って木下さんが。
だから、それからラストスパートかな?るみさんの喘ぎ声ってホント大きいのよ。
”私もそうなら恥ずかしいなぁ”とか思いながら、屈んだタクマさんとキスしたり、オッパイを
触られたり、相互愛撫かな?」

タクマさんとの行為中の淫靡な湿った音と合わさって、二人が交わす切なく途切れ途切れで
弱々しく、それでいて明確な意味を持った言葉を私に聞かせたいと話したのは、7月末の
”立ちんぼ”未遂が発覚したその夜の事です。
二人の性行為の様子は、当然推測でしかないのですが、相手が誰であれ、変態行為に及ばなけ
れば、大きな差異はないと思えるのです。
ですから、推測としたのですが、事実との乖離は大きくないと思います。

「それで思い出したが、覚えてるかい?」
「えっ?・・・それでって?・・・あっ?行為中の録音のこと?」
「二人で会っていないんだから、無理な話だね」
「うん、まだその機会ってないでしょ?これからもあるかは分からないし。私にお任せでしょ?
あなたの指示じゃないもの。だから、”機会があれば”に訂正してもいい?」
「はははっ、弱気だね?・・・ん?宗旨替え?違和感があるね」
「あなただわ。ほんとに私の話を真剣に聞いてくれるんだもの。迂闊なことは言えないわね」
「だったら、説明しろよ」
「好奇心がそそられるとか興味を持つとか話したでしょ?木下さんから聞いたのね、だから、
その時でいい?」
「時系列?まぁ、任せるよ」
「うん・・・それでね、私達がベッドに・・・どうしよう、性行為なんて話しても興味もない
でしょ?そうだわ、私が感じていたことね、あなたが聞いたら不愉快かもしれないけど、
そうだろうって思っていたから話さなかったのかもしれないけど、自分の気持ちに正直になり
過ぎかも?」
「見ないね、正直ないずみなら遠回りは不要だろ?」
「うふふっ、一緒ってイヤでしょ?同じ土俵は大嫌いだもの、そうでしょ?」
「そうだから話さなかった?それが今とは、どういう風の吹き回しなんだ?」
「避けられなくなったかな?その時が来たのかも?」
「はははっ、避けて欲しいとは言わないから、話せよ」
「あのね、体位って人それぞれだと思うでしょ?でもね、そんなに変わらないものなの。
変態とか変わった行為じゃなければ、そうだって思うの。これって、私の経験から導き出した
結論だから、かなり信憑性があると思うの。あれ?そんなに沢山の経験をしたのかな?うふっ」
「まぁ、普通じゃないだろ?その経験から導き出したことかい?」

一呼吸を入れるように、少しの間合いを取ります。


[46] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/02/25 (日) 11:52 ID:YuiHDxyM No.189756



「あなたが中心なの。それは分かるでしょ?・・・だからね、比べてるんじゃないのよ。
それは分かってね?」
「回すなよ、目が廻るだろ?はははっ」
「体位って話したでしょ?タクマさんも私の結論から逸脱していなくて、”アレ?同じだ!”
って思ったの」
「比較してるじゃないか?」
「あなたは唯一無二の存在・・・そうか!あなた以外は人間だと思わなければいいんだわ。
それなら同じ土俵じゃないでしょ?」
「比較心理学?・・・それで動物かい?」
「タクマさんは差し詰め子犬って感じかな?・・・あのね、動物以外も比較対象になるのよ。
知ってた?」
「正常な人間と異常者の心理だろ?」
「あなたは正常?・・・アレ?変態の入口に佇んでいるんだもの変態予備軍ね、タクマさんは、
DPも経験してるから普通じゃないわ。彼も変態予備軍ね?それなら比較心理には当てはまらない
から、比較なんてできないでしょ?」
「持って回ったが、同じ土俵に戻ったじゃないか?はははっ」
「変態予備軍同士の比較?ほんとだ!損しちゃったな、うふふっ。気を遣うって疲れるわね?
あなたなのに、あなただからかな?」
「変態予備軍の人間と子犬かい?どうでもいいから進めてくれないか?」
「うん・・・性行為ってどうしても男性主導でしょ?体位もそうだもの。恋人同士のセックスが
課題なんだもの、そうなるのは仕方ないの。あのね、正常位で挿入、少ししてから私を抱き起こ
して騎乗位、私を廻してお尻を彼に向けさせて体を倒させるの。挿入部分が見えるでしょ?
それから彼が体を起こしてバックの体勢に。その間一度も抜いていないの。あなたと同じでしょ?」
「はははっ、最近ならいざ知らず、遠い昔の事じゃないか?」
「でも、そうだったでしょ?だからね、体位って話し難いかなって。心配し過ぎ?」
「昔の僕を体現?タクマさんが想起させたとはね、彼を通じて昔のいずみを見たと思ったが、
僕も引き出されるとは、タクマさんは只者じゃないね?はははっ」
「一人二役?雌雄同体ね?」
「いずみと同じじゃないか?」
「バイってこと?」
「見解は?」
「ストレートだと思うけど、甘える子犬のようなところもあるから、もしかしたら、かな?」
「見えないのなら見えるように。まぁ、暴露までは必要ないだろ?自然体で見えるのなら、
いずみに気を許している証拠だろうからね」
「うん、何も見えない方がいいかな?雌雄異体であって欲しいわ」
「はははっ、入れ込み過ぎには気を付けるように。いいね?」
「はい、”御意”で良かった?うふふっ」
「ラジャー!」
「あなたってほんとおかしな人、出会えたことが奇跡だわ」
「奇跡はいいから続きを軌跡しろよ、はははっ」
「トレースね?体位の続きね、バッグから正常位に戻して、そこまではあなたと同じなんだけど、
それまでに何度か逝ってるの。それはいいかなって思ったんだけど、話さないといかないかなって。
でね、そこからが違うのね、私の後ろに回って横向きで挿入、体を密着させるの。
お顔は見れないけど、後ろから抱かれるって、とても安心感があるの。全てを預けてるって感じ
かな?でも、体だけ、心はそこにはないの。分かるでしょ?」
「分かったことにするから、ラストスパートに入れよ」
「それでお終いなの。そのまま発射して・・・」
「木下さんの指示は?」
「正常位の時に、アレ?何て言うんだろ?後ろ横から挿入する体位って」
「側位だろ?」
「そう言うのね?木下さんが”終わろうか?”って正常位の時に。逝きそうだった時なのよ、
酷いでしょ?観察ってほんと自分勝手な行為、監視って感じだわ」
「サーベイの方がマッチするかもね?」
「調査ってこと?」
「あれだよ、性行為の実態を究明することが木下さんの真意だろ?そうならサーベイと言っても
間違ってはいないだろ?」
「観察は単に観るだけ、エロ小説に反映させるには観るからの派生、想像が必要ね?
そのためには調査ね?だから、録音も録画もしない、木下さんの感性、想像力と観た光景が
ハーモニーとなって言葉を紡ぎ出す、そうでしょ?」
「はははっ、やはり詩人だね?」
「私の感性って、突き詰めれば夢の中に漂っているみたいなの。ふとしたキッカケで自然と
言葉が浮かんでくるの。それって詩的でしょ?」
「成り切っていないか?はははっ」
「だって、木下さんには私はヒロインなんだもの、うふっ」

こういう纏め方は秀逸そのものです。
上手くオチへと導いていくのですから、次の言葉が出ないどころか、ここで終了と示唆している
のです。


[47] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/02/25 (日) 15:21 ID:YuiHDxyM No.189767



「単なるヒロインじゃないだろ?」
「えっ?・・・どういう意味なの?」
「エロ全開だろ?単にヒロインじゃ物足りないだろ?」
「・・・そうか!スーパーヒロインね?うふっ」
「スーパーエロウーマン?これの方がしっくりくるね」
「ラストスパートって意味がないわね?うふっ」
「はははっ、済まないね。じゃ、続けてくれるか?」

私が迂回したのですから、いずみの示唆には実感がこもっています。

「はい、ストレートにお話しますから、真正面から受け取って下さいね、うふっ」
「はははっ、気になる事象がそこに来ているのに、寸止めしたんだから、申し訳ないね」
「寸止め?セックス用語から離れられないの?・・・アレ?その話だもの、ちょこっと勇み足
でした。
それでね、私達が絡んでいる時ね、JINさんとるみさんはシャワーを済ませて、JINさんが後ろから
抱きしめる体勢で、空いた椅子に座っていたの。
タクマさんと絡んでいる時は分からなかったのよ。終わってベッドを降りた時に、目に飛び込んで
きたって感じかな?」
「木下さんと話していた?」
「そのようには見えなかったけど、行為中は集中してるから何も見えないし、見たいとも思わない
もの。終わって初めて、”そうなんだ”って感じなのよ」
「まぁ、そうだろうね」
「でね、木下さんが”シャワーを済ませたら少し休憩しようか?”って。それで、るみさん達も
シャワーを終えて鑑賞してたって分かったの。
それでね、休憩は30分程だったかな?バスルームから出て直ぐに木下さんに呼ばれたの。
タクマさんは不満そうなお顔でベッドの端に座っていたわ。だって、るみさん達ってラブラブなん
だもの、面白くないでしょ?一人ぼっちなんだもの。
でもね、木下さんのお話って直ぐに終わったのね、”肩の力を抜いて自然体で、いいね?”って。
分かるんだもの、次は頑張ろうって思ったのよ。でも、二回戦はお相手を代えてJINさんと恋人
だもの、余り変わり映えしない情景しか描けなかったかな?って。ベッドを降りて直ぐに木下さん
の表情を見たのね、何とも言えない複雑なお顔なの、気になるでしょ?JINさんに”後から行くから
先にシャワーを”って、木下さんのところに行ったの。
タクマさんとるみさんは、先程のるみさん達のように椅子に座って私達を観ていたのね。
ベッドを降りた時から、彼の視線が付きまとうって感じで、どうしても意識してしまうの。
でもね、木下さんの傍に行く前に、タクマさんとるみさんに、”スタンバイするように”って
木下さんが。お人払いって感じだと思ったわ」
「二人に?タクマさんかな?聞かれたくないと思った、そうかい?」
「それは分からないけど、直ぐ近くに居るのよ、普通に話せば間違いなく聞こえる距離だもの」
「木下さんの反応は?」
「”変わらないね。タクマさんとの距離は近過ぎると思っていたが、そうでもないの?”なの。
どうお返事したらいいのか迷ったのよ。でも、”JINさんより少し距離が近いかな?”って、
正直に話したの」
「ん?正直?」
「だって、とても近いって言えないもの。あっ?るみさんから何か聞いたでしょ?」
「正直に?」
「あなたは嘘をつかないもの・・・アレ?わたし?それって過去の事でしょ?認識の違いで嘘じゃ
ないもの」
「都合のいい言葉だね?はははっ」
「過去は振り返らないんでしょ?今を生きるんだもの、気にしないのに拘ってない?」
「そうだね・・・るみさんか・・・仲良しに見えると言ってたね」
「それだけ?」
「聞きたいかい?」
「あれば・・・どうなの?」
「意識的だと。タクマさんはいずみにすり寄っているけど、いずみは”よしよし”って感じ。
だからね、仲良しは意識的だと。彼女は見る目があるね」
「ほんとだ!あなたを愛してるって見抜くんだもの。人って見た目で判断できないわね」
「ん?正直過ぎないか?」
「えっ?・・・ほんとだわ、るみさんに叱られそう、うふっ。真実を見抜く鋭い視線を持った女性、それはるみさん、ほんとそうでしょ?」
「だね。性行為に関わる仕事に身を置いているからって、色眼鏡で見たらしっぺ返しをお見舞い
されるかもしれない。いずみだって見方を変えれば、そう言えるかもしれないんだからね」
「うん・・・あなたとだから、このようなお話ができるの。他の人とはそのようなお話はしない
って、約束するわ。信じてくれるでしょ?」
「理解している。ただね、安売りはしない様に、いいかい?」
「信用の安売り?・・・そうか!口にしなくても実行することね?不言実行、これね?」
「分かってるのなら、尚更だろ?」
「はい、分かりました・・・続けるでしょ?」

るみさんから聴取したプレイでは、この後は4Pの展開だと思われます。


[48] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/02/25 (日) 17:01 ID:YuiHDxyM No.189770



「交代の次なら乱交かい?」
「うん・・・4Pはそうなのよ。でも、その前にるみさんがDP・・・私が来る前から決めていた
みたいなの。とてもスムーズにそうなって行くんだもの、”アレ?”って感じでズンズン進んで
行くのね。木下さんから何も指示されていなかったし、想定もしていなかったというか、
それって何も思わないのね。セックスプレイその一言だもの。それ以上も以下もないただただ
性行為に没入する、それが木下さんの感性に訴えかけられれば何も言うことはないって、
そんな感じで臨んでいたから、るみさんのプレイがDPでも驚かないんだけど、私が”アレ?”
って思ったのはね、”私じゃないの?”って強い気持ちがあったからなの」
「いずみの弁を借りれば、”スーパーヒロイン”かい?」
「あなたなら、”スーパーエロウーマン”でしょ?」
「フレーズは違っても、その意味するところに大きな差異はないだろ?」
「看板だけでは分からないってこと?」
「我々以外はそうだろうね。そうあって欲しいだろ?」
「私達にしか通じ合えないフレーズ、それって”心の絆”でしょ?」
「誰にも見えない絆だからこそ、見えないものまで見えるんじゃないか?」
「真実の心ね?心が繋がっていれば・・・アレ?心だけ?うふっ」
「はははっ、それは・・・充填途中だからね、石黒さんの努力に報いたいね」
「うふふっ、待つもの楽しみでしょ?ずっと待たせて欲しいわ、うふっ」
「何度か聞いたフレーズだね。僕に向けられるとは思わなかったよ」
「フェイントでしょ?あなたはあなたなの・・・アレ?何度も・・・しつこいいずみでした、
うふっ」

話を逸らすのも、タイムリーに軌道修正するのもお手のモノです。

「続きはサラッと進めないか?」
「うふふっ・・・るみさんのDPね、私の時と同じなの。JINさんに乗っかった彼女のアナルには
タクマさんが挿入、ねぇ、同じでしょ?」
「そこから見えてくるのは?少しの不安だろ?」
「バイ?私だけなら決め付けるって不謹慎だと思っていたの。でも、目の前で・・・
やはりそうなんだって、少しの確信が芽生えてきたの。
でも、でもね、タクマさんに確認したんじゃないから、ほんとの事は分からないもの。
そうでしょ?木下さんの指示だと思うから、JINさんでもおかしくないでしょ?」
「尤もな見解だね」
「私ね、バイなら許せるんだけど、ホモは許容できないの。だって、彼ってバイでしょ?
私としてるんだもの。特にアナルに関心があるとは思えないし・・・愛撫する時にアナルを刺激
する事もあるのよ。それって私を興奮させる一つのアイテムだから、そうとは言えないでしょ?」
「全面擁護かい?」
「不安があるからそうなんでしょ?でも、全面的じゃないわ。バイだと確信はないけど、事実を
事実として見れば、やはりバイに行き着くの」
「いずみからの一方的な見解だが、それを信じるのなら、バイかもしれないね。でもあれだよ、
絵を描くためのアナルならバイとは言えないだろ?」
「そうだわ!きっとそうよ、バイなんてあり得ないもの。あっ?あなただってアナルに挿入した
でしょ?でも、バイじゃないでしょ?」

特に拘る理由もないのですが、バイであって欲しくない気持が全面に出ているのでしょう。


[49] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/02/25 (日) 21:51 ID:YuiHDxyM No.189789



「おい!おい!疑問かい?完全無垢なヘテロになんという言い草だよ、はははっ」
「おかしいわ。それを言うのなら完全無欠でしょ?そんな熟語ってないわよ」
「完璧を強調したかったんだが、勇み足でした、はははっ」
「あなたって、ほんと自己中の塊ね?」
「そうだとしても気にならないだろ?さてと、タクマさんへの疑問が晴れたのなら、ほんとの
ラストスパートに入らないか?」
「うん・・・4Pだけど、るみさんが私に囁いたことを話したでしょ?だから特に話すことも
ないかな?プレイのことは話さなくてもいいんでしょ?」
「推測できるからね。変わったことがあればと話したが、他になければ・・・」
「じゃ、木下さんとお話したこと、それを話すわね。
4Pが終わったのは、午前4時頃だったの。お隣のお部屋って話したでしょ?二部屋が続いている
んじゃなくて、ほんとにお隣のお部屋なの。だから、私達の会話は誰にも聞かれることは
ないのね。タクマさん、JINさん、るみさんは、そのままお部屋に朝まで居たと思うけど、
ハッキリしたことは分からないの。カップルの絡みは30〜40分程で、シャワーと休憩を合わせ
ても30分くらいだったかな?だから、10時前から始めたから時間を計算すると、4Pは・・・
1時間30分程かな?途中で木下さんの指示があって、ちょこっと中断することもあったから、
カップルよりも長くなったのね。ほんとにいいの?プレイを話さなくても」
「はははっ、話したいのかい?」
「だって、ガラス張りのいずみなんですもの、うふっ」
「今も言っただろ?いずみ次第だよ」
「うん・・・あなたなら分かっていることばかりだから、お話に移ります。
最初は、当然だけど、木下さんが観た私の様子とその時の私の気持ちを聞かれたの。
これって、木下さんとした時も、その時によるんだけど、聞かれることもあったの。
だって、エロ小説のネタでしょ?」
「それは分かるんだが、オミットしていないかい?」
「えっ?・・・木下さんとのことを話すの?」
「時系列なら、ショートし過ぎだろ?」
「分かるのね?流石あなただわ」
「はははっ、いずみだからだよ。何もないとは思えないだろ?」
「うん・・・お部屋に入って、私はシャワーを済ませていたから直ぐにでもお相手できる状態
だし、木下さんの様子が気になるでしょ?興奮してる様に見えるんだもの。
先程まで4Pの激しい絡みを観ていたのよ、興奮しないってあり得ないでしょ?
ましてや木下さんなんだもの」
「ハイドに変身したのかい?」
「ジキルを少し拡大させたって感じかな?でも、話したでしょ?洗ったって言っても、二人に
中出しされたんだもの、木下さんがハイドに変身したのなら分からないでもないけど、
そこまでは望まないかな?ってちょこっと聞いたの」
「やはりいずみだね、優しさが前面に出ているのは嬉しい限りだよ、あはははっ」
「これって約束だもの。交換条件を全うしてもらうための前戯みたいなモノでしょ?うふっ」
「ん?前戯?・・・テコキかい?」
「そうかな?あのね、抱き付いて耳元で、”大丈夫?”って聞いたのね。そしたら、”頼める
かな?”って。本番はしないって思っていたけど、興奮すると予想外の行動に出ることも
あるでしょ?それならそれでいいんだけど、どちらにしても、お洋服を脱いでもらわないと
いけないでしょ?スーツなんだもの、裸まで時間が・・・うふふっ、そんなに変わらないわね、
ちょこっと大袈裟に言いました」
「いずみは?まさか裸じゃないだろ?」
「お隣と言っても廊下に出るのよ、真夜中でもそんなのできないでしょ?」
「危険性の何たるかが分かってきたようだね」
「持って回るんだもの。4年の歳月は人を成長させるのよ。ましてや私なのよ、成長著しいん
だから、うふっ」
「二人羽織が懐かしいだろ?はははっ」


[50] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/03/02 (土) 12:00 ID:KXGlItqg No.189962



「もう!・・・ウッ!つい名前を言いそうになったわ。忘れていたのに思い出させるって
どういう魂胆なの?」
「思い出さないと思ったが、まだくすぶっているんじゃないだろうね?」
「アレのこと?確かに大きかったけど、それだけじゃ満足できないでしょ?心がないとダメなの。
分って・・・あっ?それを・・・私の愛する人はあなただけなの、ご満足?」
「はははっ、記憶とは厄介なモノだね?」
「ホントそう思うわ。忘れてると思っていても、何かのキッカケで思い出すんだもの。
ホント面倒くさいモノだわ」
「面倒くさいついでに、見えるように聞かせれくれないか?」
「お洋服でしょ?すぐ隣なんだもの、裸でも問題ないかなって思ったの。信じられない?」
「ついさっき否定したのに?」
「”思った”って言ったでしょ?木下さんはほんとに紳士よ。”下着はいいけど、ワンピースは
着るように。いずみちゃんはそのままでいいと思っただろ?”なの。ホント読まれてるのよ。
でも、そう思ったのは、木下さんに裸のままって指示されたらって、先回りして心の準備を
していたの」
「そうだろうね、信じるよ」
「嬉しいわ・・・でね、キャミとワンピースはクローゼットに、バッグとヒールも。
だけど、パンツはプレイの時に脱いだままで放置されていたから、見付からないの。
探してたら、タクマさんが”お土産にもらったよ”って、ヒラヒラって振るんだもの、恥ずかしい
でしょ?直ぐに取ろうとしたのね、彼ね、ベッドの端に座っていたんだけど、仰向けに寝るの。
木下さんはドアのところまで移動していたから、早く返してもらわないといけないでしょ?
振り返って、”用意するから少し待ってくれる?”って少し大きな声で。ベッドに乗っかったら
抱き締められて”いつ会える?”って。そんなの考えられないでしょ?ほんと困ったのよ。
それでね、苦し紛れってこういう状態を言うのね?”7時前に掛けるから”って、それしか思い付
かなくて。”チュッ!”ってキスして、パンツを返してもらったの」
「狼狽えるとは、いずみらしくないね」
「そうでしょ?これも予想外、ほんと酷いんだから。私の窮地を楽しんでいるとしか思えないわ」
「予想外?もう一つあるんじゃないのか?」
「二度あることは三度ある、あれのこと?」
「なるほど、真打はこれからだね?」
「うふふっ、これから話すことがそれになるかな?誘導したんじゃないのよ、お話の流れだから
そう思ってね?」
「いいよ。続きは?」
「慌てて用意してたら、木下さんが戻って来たのね。でも、キスしてるところは見られなかった
から、ホッと一安心。るみさんとJINさんは椅子に座って、意味深な含み笑いなの。
木下さんが気付いたかは分からないけど、その時は何も言わなかったから、心の中で”セーフ!”
って。それでね、下着とバッグとヒールを持って、お隣のお部屋に移動したの」
「そこで、木下さんに”大丈夫?”と訊いた場面に繋がっていく、だろ?」
「なんかお芝居みたいね?あれ?そういう目でみたらお芝居かもしれないわ。エロ小説家と
ストーリーを体現する女優、女優は言い過ぎね?うふっ」
「まぁ、僕以外なら・・・予想外には気を付けるように、いいかい?」

予想外とは予想と違った成り行きでしょうが、この場合は、思いがけない展開と理解するのが
正解のように思うのですが、木下さんの弁が待たれます。


[51] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/03/02 (土) 16:32 ID:KXGlItqg No.189971



「忠告なの?」
「はははっ、誰かさんじゃないが、フェイントだよ」
「そうね、それ迄はそんなこと何も感じなかったのよ。それなのに・・・フェイントに
騙されていたのかも?それが出来るのって頭が良いってこと、空気感を読む力が半端じゃ
なかったのかも?どちらにしても、私の認識力に問題があったって、少し反省したの」
「セラピスト?違うな、セフレのフレーズに酔っていたんじゃないのか?」
「少し違うかな?セフレはそうだとしても、タクマさんの存在自体が、母性本能に響いたと
言った方が正しいかもしれないの」
「心は?」
「えっ?それはないの、何度でも言えるわ。そうじゃなくて、言葉にできない微妙な感性って
あるでしょ?」
「それが母性本能だといずみは思ってるんだろ?僕にはそう思い込ませている節を感じるけどね」
「うん・・・よく分からないの。ひろ子ちゃんに感じる母性とは全く異質なの。
それは分かるでしょ?でも、タクマさんに感じる気持を言葉にできるとしたら、母性本能が
浮かび上がってくるの。これって、あなたが言うように、そう思いたい私がいるってことなの?」
「純粋には繁殖本能だろ?いずみも分っていると思うが。ところが、それを前面に出せない関係、
セフレなんだから、セックスを楽しむことから派生する展開はお互いに望まない。
理解しているのに何かフツフツと湧き上がってくる感情、それを母性本能に置き換えて自分の
気持を欺いている。こうも言えるかな?セフレから踏み出すことを望んでいないのに、不確かで
落ち着かない気持ちを、女性特有の母性本能という曖昧な括りにはめ込むことで、微妙なバランス
を保っている。どうだい?」
「母性本能って、母親の目線でもあるでしょ?ある意味、そういう見方かもしれないの。
タクマさんが言ってたでしょ?母親とセックスは考えられないって。それはそうなのよ、性行為は
母性なんて全く関係ないの。性本能のぶつかり合い・・・あれ?これって本能違いなの?」

またしても、いずみが修復への足掛かりを用意します。

「はははっ、考え過ぎみたいだね?単純明快と言いたいんだろ?」
「セックスの本能と母親の本能でしょ?タクマさんとは、二つともほど良いバランスを保って
いるかな?巷で言われるセフレとは少し違うかもしれないけど、それがタクマさんとの関係だと
思うの」
「母性はその通りってことだね?」
「うん・・・甘える子犬って、そのまま受け取って下さい。微妙な感性って言ったけど、
それは母親の気持ちだって、あなたと話してハッキリ分かったわ。
何だか深く考えさせて、ごめんね?ホントあなたならではの講義を聴けて嬉しかった。
これからも、ご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願い・・・うふふっ、堅苦しいわね?」
「引っ張られたね。もういいだろ?木下さんとの話に移らないか?」

いずみの真意は、母性本能について私に語らせること、それから浮かび上がる適宜な言葉から、
いずみ自身の気持ちを伝えること、そういうプロセスだったように思えるのです。

「うん・・・スッキリした気持で、木下さんとの会話を披露します、うふっ・・・」

そう言って、パジャマのポケットに右手を入れます。


[52] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/03/02 (土) 18:11 ID:KXGlItqg No.189977



「何だと思う?」
「パジャマのポケットの中?大きなものじゃないね?なるほど、今回も?」
「分かった?簡単すぎたわね、うふっ」
「ん?・・・前と同じ様な事例じゃないから、理由付けが難しいだろ?どのように説得したん
だい?」
「許可なくとは思わなかった?」
「こっそり録音はできないだろ?ベッドサイドに化粧ポーチを置く手法は、見破られる公算が
大きいと分かっているんだろ?」
「エロ小説でもセックスシーンまでは幾重にもシナリオがあるでしょ?その一つに隠し撮りとか
録音とかも。今までとは違った行動なら直ぐに見破られるもの。木下さんってとても繊細なのよ。
少しでも違和感を持たせたら、約束への道筋に亀裂が入らないとも限らないでしょ?」
「じゃ、正面突破?」
「突破されたのは私、私の心かな?うふっ」
「驚愕、衝撃・・・そうなのか?」

どうも大袈裟に表現させたいようです。

「どちらも・・・ほんとに驚いたのよ。でも、前段階から話さないと始まらないでしょ?」
「もったいぶってる?」
「そう思う?そうならそうかな?・・・うふふっ、ごめんね?これ以上回したら叱られそうだわ。
事の始まりは、さっきも話したけど、”スタンダールの赤と黒”なの。
プレイ中もずっとくすぶっていたのね。ずっとはちょこっと大袈裟だけど、意識が戻ればって
言えばいいかな?兎に角、気になっていたの。
それでね、お部屋を移動した時に、チャンスだと思って切り出したの。
あっ?でも、時系列じゃないから・・・”大丈夫?”って木下さんに聞いたところに戻るわね」
「セックスはしなかったから、フェラかテコキ、その両方か。どちらにしても発射させたんだろ?
その話しはオミットして、核心に迫ってくれないか?」
「お洋服を脱がせるところまで話したでしょ?それはいいのね?二人共裸になってベッドに。
あなたの指摘通り、フェラとテコキで発射させたの。今までになく早かったから、大きな興奮に
包まれていたのね。お口に発射だから、歯磨きを済ませてベッドに戻ったの。
その短い時間にもメモを取ってるのよ。射精って疲れるんでしょ?それを全く感じさせないんだ
もの。超人木下って、一瞬だけど、そう思ったの」
「はははっ、別名を授与かい?」
「ジキルとハイドに加えて・・・あなたみたいな表現だわ、うふっ」
「超人でも何でもいいから、”赤と黒”へのアプローチだろ?」

テーブルに置かれたガラス製のサーバーには、カップに入り切らなかったコーヒーが残っています。

「一息入れる?」
「ん?・・・あぁ、コーヒーかい?」

既に空になっているカップに注いでくれます。


[53] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/03/03 (日) 12:02 ID:tkPWP66A No.189998



「あなたって、ほんとにコーヒーが好きね?」
「いずみほどじゃないよ、はははっ」
「それって、私の事が好きってこと、それとも、私がコーヒー好きってこと?聞かないわ、
自明の理って返されそうだもの、うふっ」
「賢明だね、はははっ」
「うん、信じてるもの」
「ん?誰を?」
「賢明じゃない人」
「僕じゃないね、はははっ」
「どうして同じ会話になるの?これって進歩がないと思わない?」
「平凡な日常なんだよ。慌てて進む必要もないからね」
「そうね、ゆっくりとした穏やかな時間だわ。でも、今は仮の姿と言えるでしょ?
それでも、こうして話せるのって私達の日常を取り戻せる一歩かもしれないわ」
「焦らず、それでいて機敏に行動する、大変な状況だとは察して余りあるが、いずみの努力如何
に掛かっているからね」
「うん・・・お仕事でしょ?もう一つも察して余りある?」
「はははっ、同意を求める?それなら推測、ましてや理解もできないことを容認することになる
だろ?」
「ほんとだ!私の真意じゃないもの。ごめんね?失言でした、うふっ」

説明しない、できない出来事を私が認める様に示唆したとも取れるのですが、ここは真正面から
受け取ります。

「話せないような事態には至っていないね?」
「うん、大丈夫よ。全て話せるもの・・・あれ?”立ちんぼ”の事は身勝手な判断だったって
後悔しています。ほんとだからね」
「コーヒーブレイクはここまでにしようか?」
「うん・・・明日香ちゃん、今頃どうしてるんだろ?私達と同じようにコーヒータイムだった
かな?」

もう直ぐ11時になろうとしています。

「そう言えば・・・知ってるのかい?」
「今夜はお泊りなの。退社後に東京に行ったのよ・・・あれ?話さなかった?」

相変わらずですから、呆れることもありません。

「初耳だよ。まぁ、慣れっこだから怒りたくても怒れない、得な性格だよ」
「気質でしょ?・・・あのね、誰に会うのか話さないのよ。何となく推測はできるから、それは
それでいいんだけど・・・」
「引っ掛かる物言いだね?」
「うふふっ、大人の女性として見るんでしょ?邪推はダメかなって」
「邪推なら、そうだろうと推測できるだろ?」
「うん・・・柊さん・・・違ってるかもしれないけど。余計なことは考えない方がいいでしょ?」
「純粋に楽しむのなら何も言うことはないからね。それこそ余計なお世話だね」
「うん・・・明日香ちゃんね、何か感じてると思うの。それで柊さんと、それも東京でしょ?
観光なら私にお伺いを立てると思わない?」
「土、日曜日は休ませてやりたいと思ってるよ。今のいずみの状況なら、そんなことは考えも
しないだろ?」
「そうかもしれないわ。でも、気にならない?」
「どうだろ?思い過ごしと言うこともあるだろ?何かあれば、何をおいても連絡してくるのは
間違いないと思うね」
「そうね・・・私達って何時までも保護者気分が抜けきらないのね?」
「はははっ、複数は頂けないね」
「はい?うふふっ・・・では、木下さんとの会話にフォーカスします・・・」

その日は8月最後の金曜日です。
明日香ちゃんが柊さんと会っているとすれば、楊社長の動向が気になるのですが、いずみとは
9月第三週目の木曜日から金曜日と聞いていますから、まず遭遇することはない筈です。
急遽と言うことも考えられなくはないのですが、切羽詰まった事態でも発生しない限り、簡単に
予定が変更になることはないと思っています。
そうであるのなら、明日香ちゃんが3Pに巻き込まれることはない筈です。
柊さんの動向を探る目的も、彼女が系列他社に転籍したことで、いずみへの見えない圧力も、
全く気にならなくなっています。
そのことは明日香ちゃんも知っているのですから、柊さんと会う理由は、性行為を中心に展開され
ると理解しても間違っているとは思えません。


[54] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/03/03 (日) 18:23 ID:tkPWP66A No.190005



「・・・何度目かしら、”赤と黒”・・・ホント進まないわね?うふっ」
「ここらあたりでバシッと決めるんだろ?そのための録音だと思うけどね、はははっ」
「あなたね、苦労したのよ。でもね、木下さんってほんと優しいって言うの、私への気遣いは
半端じゃないわね」
「良かったじゃないか?好かれるのは有難いことだよ」
「アレを除けばもっといいんでしょ?」
「その日も遠くはないだろ?いずみの双肩にかかっているんだからね」
「ほんとだ!だから肩こりが酷いのね?うふっ」
「とても素晴らしい返答だよ。いずみの日々を考えれば、そう簡単に口を衝いて出て来るフレーズ
だとは思えないからね。安心してその日を迎えられそうだよ」
「嬉しいわ。私の過酷な・・・違うわ、これって試練なの。人生って試練の連続の上に成り立って
いるんでしょ?あなたが教えてくれたのよ、苦しくとも笑顔って」
「はははっ、だからポーカーフェイスかい?」
「えっ?・・・私は至って真剣なのに・・・あれ?だから天然なのね?」
「落ち着いたかい?」
「うん・・・でね、ベッドに戻って、メモを覗き込むように、”赤と黒の発案は誰なの?”って
聞いたのね。即答なの、”タクマさんだよ。驚いたけど、否定する理由もないし、愉快に迎えら
れるのなら、いずみちゃんも気持ち良くプレイできると思ったからね”なの。
メモから目を逸らさないのよ。だから即答だったんじゃないかな?面倒って感じだったかも。
それって、タクマさんと私の関係をスムーズにするためでしょ?木下さんは分かっているのに、
それを示唆しないって心が広いって感心したのに、それに続けて、”入れ込み過ぎに見えるけど、
大丈夫?タクマさんもいずみちゃんに傾き過ぎてると思うけど”って。
それでね、”誤解していたかもしれないの。タクマさんに文学的要素があるとは思いもしな
かったわ”って、木下さんの琴線に触れるように、ほんと言葉を選んで話したの」
「功を奏した?」
「うん・・・誰しも関心の置き所ってあるでしょ?ポリシーが適切かもしれないけど、兎に角、
いい意味での前向きな発言へと繋がったの」
「木下さんは文学では饒舌だろ?それ以外でも?」
「文学が基調にあるのは確かよ。でも、それから派生することにも、例えば、文学と歴史、
近過ぎるかな?文学と政治なら反比例することもあるでしょ?だからね、文学があれば、関連して
いない事象にも言及するのね。言葉は悪いけど、それを上手く利用して、タクマさんの人となりを
聞き出せたの」
「なるほどだね。ところで、録音へのアプローチは?」
「木下さんね、文学にはとても反応が早いの。メモから顔を上げて、”4Pは良かったよ。
いずみちゃんの本気度がよく分かったプレイだったね。タクマさんとは意気込みが空振りしていた
ようだったから、少し心配したんだが。4Pの方が真価を発揮できるようだね。次も4Pを予定して
いるんだが、タクマさんをどうしようか悩みどころだよ”って。
これって、タクマさんを外すかもしれないってことでしょ?そうなれば、知らない男性が参加する
かもしれないもの。そんなの許せないでしょ?」
「タクマさんじゃないとダメかい?」
「二つ理由があるでしょ?一つ目は、お相手の男性は増やさないと決めていること、二つ目は、
タクマさんとは自然体でプレイすること、改善の余地があるでしょ?だから理由の一つに取り
上げたの」
「木下さんの意向は?」
「私と同じ考えなの。男性を増やさないのなら、期待に応えるプレイに徹するしかないでしょ?
それには、タクマさんの人となりを知れば、対応も難しくないって話したの」
「そうくるか・・・核心に迫って来たね」
「それでね、私なりにタクマさんとの接し方を考えたいから、彼のバックグラウンドを教えて
欲しい。それと、記憶って時間と共に薄れて行くから、録音したいって、木下さんのお顔を
真っ直ぐ見て、お願いしたの」

いずみに見詰められるそれだけで、懐柔されてしまうかもしれません。
’目は口ほどに物を言う”とはよく言ったもので、情熱的な瞳で訴えかけたのでしょうから、
それに抗しきれなかった木下さんの困惑した表情が見えるようです。


[55] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/03/03 (日) 22:30 ID:tkPWP66A No.190010



「じゃ、早速聴かせてもらおうか?」
「うん・・・”録音します”なんて言っていないから、お話の途中からになるけど・・・
では、どうぞ!」


『・・・ありがとう!これって官能小説には必要不可欠でしょ?』
『そうだけどね、いずみちゃんには逆らえないよ』
『確認なんだけど、録音はOKね?』
『話せることには限りがあるから、それは了承してくれるね?』
『タクマさんの人となりが知りたいだけだもの。それがプレイの肉となり骨となる、そうでしょ?』
『肉はいいとしても、骨は痛そうだね?』
『ジョークなの?ほんと真面目過ぎない?比喩ってご存知?うふっ』
『知ってるつもりだが・・・』
『あっ?お話の時って、ナイトウエアを着るんじゃなかった?それとも裸がいいの?』
『そうだったね。じゃ・・・』
『私が・・・ちょこっと待ってね?』


レコーダーを止めて、

「分かる?」
「いずみが取りに行った、だろ?」
「うん、チェストってベッドの前でしょ?そこからナイトウエアを取り出したのね。
レコーダーを止めたのは、その説明じゃなくてね、木下さんに着せるんだけど、その情景が
拾えていないかもしれないから、先に説明しようかなって」
「ベッドから降りて?」
「そうなの。レコーダーは私が手に持っていたのね。だから、ナイトテーブルに置いてから、
着てもらったから、少し距離があるでしょ?」
「はははっ、細かいね。気にしないから続けてくれないか?」


”コトッ”と小さな堅い音が聞こえます。
ナイトテーブルにレコーダーを置いた時だと思います。
いずみも説明済みですから、何も発せず笑顔で頷いて見せます。

ほんの少し何も聞こえないのですが、

『ベッドから降りてくれる?』
『あっ?・・・そうだね』

説明がなければ、それと分からないのですが、ベッドから降りる時と思える、微かに擦れる様な音
を、拾っています。
その後は、空気の揺らぎとでも言えばいいかもしれませんが、話し声など全く聞こえません。

「やはりだわ。先にお話して正解ね?」
「だね。そう考えれば、音から景色を類推するのは、非常に難しいと証明してるみたいだね」
「あなたね、ほんとこねくり回していない?」
「正論は単純じゃないってことだよ」
「木下さんに聞かせてやりたいわ。あなたのように持って回らないから、単純すぎるところが
少し物足りないって感じることもあるのね。でも、こうして相対する二人を観れば、どっちも
どっちね?」
「はははっ、同じ土俵?」
「相対するって言ったでしょ?文系と理系なんて水と油だもの」
「その二人と交わるんだから、何らかのコメントをしないといけないだろ?」
「えっ?・・・そうねゴルディロックスかな?」
「ん?分かって使ってるのか?それとも曖昧模糊なのに敢えて使うのかい?」
「経済用語でしょ?私なりにお勉強してるって言いたかったの」
「適温?どっちつかずを表しているのかい?」
「水と油って何となく温度差があると思わない?だからね、その中間に位置すると言う意味で
ゴルディロックス、おかしい?・・・それじゃ、ペーハー7かな?」
「適温相場なら株取引では時々耳にするけど、意味合いは全く違うだろ?まぁ、意図するところは
何となく理解出来るよ。中立を強調するのならペーハー7(ph7)でいいと思うけどね、いずみの
立ち位置が中間は頂けないね、はははっ」
「うふふっ、どっちつかずって言いたいんでしょ?でも、二人の間、真ん中なのは間違いないで
しょ?どちらにもいい顔をする、アレ?八方美人?ちょこっとまずかったかな?うふふっ」

危険水域と判断したのでしょう、駆け足で逃げ出します。






注記

本文中のゴルディロックスは、証券業界では、過熱感のない適度な相場、「適温相場」として
使われています。


[56] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/03/09 (土) 11:52 ID:lRxF4OqQ No.190151



「はははっ、自分のモノになるまでは使わない方がいいだろ?僕以外の人にはね?」
「うん・・・まだまだだわ。あなたのゴーサイン待ちね?」
「続けようか?」


まだ少しの空白が続いて、小さくいずみの声が聞こえます。

『・・・いいのね?じゃ穿くわよ・・・』

木下さんの存在は見えないのですが、いずみの問い掛けから、直ぐ傍にいるのでしょう。

『・・・はい、ベッドに戻る?』
『いずみちゃんにはいつも癒されるよ』
『セラピストでしょ?』

それには返答はありません。
先程よりももっと小さく、気にしていなければ聞き逃してしまうような音が聞こえます。


「聞えた?」
「今の?」
「うん、”コソッ”って聞こえたでしょ?ナイトテーブルからレコーダーを手に取った音だと
思うの。少し空白があったでしょ?」
「その前なら、ナイトウエアを着ていた時だろ?それにしたら少し長いね」
「うん、裸だったでしょ?着せている時にキスしてお互いに愛撫したの。興奮するとかじゃなくて、
”頑張ったね、ご苦労様”って感じかな?」
「だから無言か?はははっ」
「パンツを穿いて、ベッドに。木下さんのは穿かせたのよ。いつもと同じパターンね、
だからその時もお話はしていないの」
「その一連の動作に”癒される”のか、いずみの心遣いが見えるようだね」
「でしょ?セラピストって聞いてるのに無視でしょ?ちょこっとお灸を据えてあげたの」
「この後?」


今度も同じように布の擦れる様な音が聞こえるのですが、最初よりは大きく、その直ぐ後に
少し小さく波打つように聞こえます。

『聞こえなかったの?』
『ナニかな?考え事をしていたからかな?無視したんじゃないからね』
『そうなの?寂しいなって思ったのよ。今は私達の時間でしょ?短い時間は大事にしないとって、
そう言ったのは木下さんなのよ。覚えてる?』
『これは、僕としたことが。謝るよ』
『いいわよ。何を考えていたの?イヤらしいことでしょ?』
『いずみちゃんが言った”肉と骨”・・・意味付けはあるんだろ?』
『うふふっ、スルーしてもいいのに、官能小説に使いたいの?』
『”血となり肉となる”は聞いた事があるが、どういうことかな?』
『比喩でしょ?それって、栄養になるってことでしょ?知識が付くとも言えるけど。だからね、
肉はオマンコ、骨は硬くなったペニス。いい?タクマさんのバックグラウンドを知ったら、それに
沿ってもっと親密になれるから、木下さんのご希望のセックスプレイができるってことなの。
分かるかしら?』


[57] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/03/09 (土) 15:43 ID:lRxF4OqQ No.190161



『比喩ね・・・少し無理があると思うけど、いずみちゃんなら納得だね』
『ナンなの?それって否定されてるのと同じなのよ。そうなの?』
『そうじゃないよ。それより、タクマさんの事だろ?』
『うふふっ、優しいんだもの。木下さんって私の理解者なんでしょ?』
『だから密約が生きてくる、そう言っただろ?』
『相互理解でしょ?・・・それはいいとして、タクマさんの事ね、ほんとに木下さんと同じ大学
なの?』
『後輩だよ、と言っても親子ほどの歳の差だけどね。彼と知り合った経緯から話そうか?』
『モデルでしょ?雑誌社と関係が深い、そうじゃないの?』
『今はそうだね。数年前に遡るけど、異業種交流会、会社経営者の交流会でね、そこで知り合った
社長の息子なんだよ。驚いたかな?』
『う〜ん、特に・・・今の状況とマッチしないのはどうしてなの?』
『話せば長くなると言うだろ?だから簡略して話すからね。父親と折り合いが悪くて、詳細は
省くけど、彼が家を出たのが今の状況だね』
『就職しないのは何か理由でもあるの?』
『反抗だろうね。いつかは親の跡を継ぐ、社長でなくてもそれなりのポジションを与えられる
だろ?イヤなら完全拒否すればいいのに、そうじゃないらしいんだね。親は嫌いでも仕事には
魅力を感じている。やりたい仕事だからいつかは親の会社に入るつもりらしいよ』
『何だか身勝手ね。それまではオンナ遊びなの?』
『道楽息子じゃないのは、いずみちゃんも分かるだろ?イケメンだからスカウトされる、自立する
ための避難場所がモデルでありセラピストなんだね。女好きは父親の血を受け継いでいるんだから、
そうかもしれない』
『女好きじゃないオトコっている?』
『生物学的にはだろ?』
『婚外子も?萌音さんは愛人だものね。木下さんも女好きね?』
『いずみちゃんに言われたくないね。同じ穴の狢、知ってるだろ?』
『うふふっ、知らないとは言えないわね。淫乱って思ってるでしょ?』
『そう見えないところがいずみちゃんなんだね。そうだから、色々とプレイ内容を考え、作品に
落とし込む楽しみも増えるんだね』
『褒めてるの?それなら嬉しいわ・・・チュッ!うふふっ・・・タクマさんの事は?』
『初めて会ったのは、JINさんに紹介された日、萌音との3P、前回のいずみちゃんと同じDPだったね。非常に礼儀正しくてね、育ちが出るとか言うだろ?正にそれなんだね。今とはかなり違って
いるかもしれないが、本質は変わるものじゃない、だから今は仮の姿だと思っても間違いないよ』
『そうなのね・・・誤解していたわ。謝らないといけないかな?』
『気にしないよ。いずみちゃんとの距離が近過ぎると言っただろ?引け目は入り込ませる理由に
なるからね、今まで通りの・・・何て言えばいいかな?セックスは恋人のように、そうじゃない
時は、母性本能で優しく接すれば、タクマさんも満足できると思うよ』
『そうね。官能小説の一つのチャプターとして登場させるんでしょ?』
『いずみちゃんだからね。いくつものチャプターを展開できる素質を持っている、多様な性を
描けるのは嬉しいことだよ』


[58] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/03/09 (土) 17:42 ID:lRxF4OqQ No.190165



『タクマさんの本質がそうなら、今の姿は作品用にアレンジしてるってことなの?』
『今夜の”赤と黒”もそういうシナリオだと言ったら、どう思う?』
『タクマさんの発案なんでしょ?・・・あれなの、作品作りに協力しているってこと?』
『そうだけどね。一歩も二歩も踏み込んでくれるんだから、いずみちゃん程じゃないが、
大いに助けられてるね』
『それなのに、近過ぎるってどういうこと?』
『冷静さを欠いたら、感情が先に出るだろ?どのシーンも同じ空気感になってしまう。
裏を返せば、異なる景色を設定しても同じ情景にしか見えなくなる。それを避ける意味でも、
距離感は非常に大事なファクターなんだね』
『分かるわ、とても。木下さんの危惧はしっかり受け止めたから、今後の展開にはシーン毎に
違った私、私達かな?見せられるように努力するわね・・・あっ?もしかして、今夜会った時の
二人のパフォーマンスも作品にするつもりなの?』
『いずみちゃんの様子もしっかり見させてもらったから、乱交のイントロとしては、かなりのもの
だと思うよ。タクマさんが父親の仕事を継がなければ、シナリオをお願いしたいものだよ』
『学部も同じなの?』
『理系だよ。惜しいとは思うけど、仕方ないね』
『そうなのね。聞いてもいい?・・・お父さんのお仕事って?』
『IT関連かな?詳しくは話せないが。こういった繋がりだからね、知られたくないだろ?』
『そういうことなのね?エロ繋がりなのね?そうなら木下さんもそうでしょ?』
『話すまでもないだろ?彼とも適温な距離感を保ってたから、彼の誘いに乗ったのは一度だけだね』
『スワップなの?』
『これも詳しくは・・・好事家、いや、好色家が正しいかな?ナンて言ったかな?
そういったカップルがスワップする場所を提供、どちらにしても主宰していたようだね』
『憶測なの?参加したんでしょ?』
『見学にね。カップルでとの要請だったので、萌音とね。淫乱の美人の姿態を見せるだったかな?
その女性を見せれば僕の心が動くと思ったようだよ。僕がスワップに二の足を踏んでいたのが
その理由だと思うけど、萌音を抱きたかったのが本音だと思ったよ』
『じゃ、純粋に見学だけ?参考までに聞いてもいい?』
『ナニかな?話せることなら』
『その女性に心を動かされなかったから、スワップは断った、そうなの?』
『心か・・・動かされたね。清楚に見えるのに性行為は淫乱そのもの、相手の男性に完全に
溶け込んでいたね。この女性だと思ったよ、僕の小説の集大成にしたいと。心からね』
『条件を満たさなかったから、叶わなかったのね?』
『端からスワップは・・・己の立場を考えたら余りにも危険だからね。分かるだろ?』
『社長だものね。それなのに、タクマさんのお父さんはとても大胆ね?』
『だから・・・やめとこうか。彼の事はここまででいいかな?』
『うん・・・その女性のその後は?』
『何も・・・いずみちゃんに似て美人だったよ』
『ほんとに?・・・チュッ!嬉しいわ・・・でもね、二人が親子ってどうして分かったの?』
『それか・・・彼からイケメンの紹介依頼があってね、数人から選びたいからと写真を要請
されてね。スワップは断ったが、その美人の姿態を観た後だったから、断わり難いだろ?
それでね、後日、JINさん、タクマさん、もう一人、計三人の写真を見せたらね、驚いたと言えば
いいのか、かなり厳しい表情になってね、彼は除外したい、他の二人は会って決めると。
気になるだろ?知り合いかと思ったから聞くだろ?暫く考えてから、息子だと言うだろ?
驚いたのは僕の方だったかもしれないよ』


[59] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/03/10 (日) 11:50 ID:kiqzlcSU No.190179



レコーダーを止めたいずみは、

「奇遇って言えない程の衝撃だったと思わない?」
「タクマさんのお父さん?」

その時の状況は、全てではないとしても、萌音さんから聴取しています。
それと知らないいずみも、その時の様子もタイムリーとは言えない程遅れたのですが、
私に聞かせてくれたのです。
今度は、木下さんからの証言ですから、三者三様の立場から異なった情景が見えてきます。

「そうでしょ?家を出たのは仕方ないとしても、モデルだけじゃなく性風俗に身を置いて
いるのよ、何とも言えない気持だったと思うわ」
「いずみならと考えないか?」
「ほんとだ!親には知られたくないわね。もう過去の事だとしても、そうでしょ?
今は立派な伴侶が居るんだもの、何があっても大丈夫って思っていると思うわ」
「過去は過去でも今は進行形じゃないか?心してかからないと、ふとしたはずみでほころびから
漏れ出したら大変だからね、いいかい?」
「うん・・・そういう意味では東京で良かったのかもね」
「安心するには、もう少し時間が必要だろ?」
「うん、長くても、来年の春までには軌道に乗せられる予定だから、それ迄はあなたにも
大きな負担になるかもしれないけど、ご協力をお願いします」
「はははっ、しおらしいね?・・・録音はもう終わりかい?」
「少しあるかな?」


『ほんとに?声が出ないってこういう時を言うのね?』
『その通りだね。一瞬、耳を疑ったけど、現実は過酷なモノだと改めて認識させられたよ』
『それなら、タクマさんは木下さんとお父さんが知人とは知らないのね?』
『言えないだろ?彼から口止めされなくてもね』
『何だか複雑ね?タクマさんのバックグラウンドもそれなりに分ったから、私なりに対応を
考えるわね』
『そうだね。今夜のタクマさんとのプレイには、力が入り過ぎていたように感じたね』
『タクマさんの熱意に応えられるように頑張ったのよ。でも少し空振りだったかも?』
『最高とは言えないかもしれないが、いずみちゃんの努力には頭が下がるよ。どちらかと言うと、
4Pの方がリラックスできるようだね』
『タクマさんを意識してるのかな?そう言うつもりはないのに』
『そう見えるけどね。タクマさんが気にならない程、プレイに没頭して欲しいね』
『るみさんのように?』
『やはりDPは外さない方がいいかもしれない。いずみちゃんはもうできないだろ?』
『約束でしょ?』
『そうだね。次回はプレイだけに集中できるように頑張ってもらおうかな?』
『タクマさんとは近過ぎるんでしょ?でも、そうしないとほんとの恋人のような空気感を
出せないもの。それでも、親密なようで親密でない、近くて遠い関係を演出できれば・・・
そうか!るみさんとJINさんとの関係、これがそうなのね?』
『彼らはプロの絡み、いずみちゃんはプロであって欲しくない。そういう微妙なプレイが
いずみちゃんの神髄だよ』
『難しいわね。でも、期待に応えられるように頑張るとしか言えないかな?』
『いずみちゃんの自然な姿態が観れるのなら、何も言うことはないからね』
『無意識の意識でしょ?』
『ん?難しい表現だね?』
『木下さんに満足してもらえるプレイは難しい。でも、意識せずにできればそう難しいことじゃ
ない、ってことなの』
『そうだね、それが自然体、いずみちゃん独自の姿態だよ。楽しみにしているからね』
『うふふっ、乞うご期待でいい?』
『じゃ、少しでも寝るかな?』
『うん・・・いいのね?』
『無理はできないからね?』
『じゃ、おやすみなさい』

その後は何も聞こえませんから、録音はこの時に終了したのでしょう。


[60] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/03/10 (日) 15:20 ID:kiqzlcSU No.190182



「ここまでだったわ。直ぐに寝てしまって。あなたとは逆かな?」
「逆?いずみが先に?」
「うん、そうだと思うの。抱きしめられて腕の中で・・・目が覚めた時ね、木下さんは
ベッドにいなかったの。時間が気になってナイトテーブルの時計を確認しようとした時ね、
”間に合うから大丈夫だよ”って。昨夜からの木下さんのポジションで、何やら執筆中って
感じなの。
私が間に合うように起こしてくれたみたいで、”直ぐに起きないから少し揺すったら、
訳の分からないうわ言を言ってたよ”って。何だか恥かしいでしょ?」
「訳が分かったのなら、それこそ一大事だね?」
「えっ?知らない振り?それはないかな?木下さんに限って・・・あったらどうしよう?」
「はははっ、問い質さなかったのか?」
「ボンヤリした頭って薄い空気の中って感じでしょ?気付くのが遅れると言うか、その時は
何も思わなかったの。目が覚めたら、セックスプレイは遠い彼方かな?過ぎ去ったことだもの。
気持はひろ子ちゃんなのよ。早く支度してPPTに帰る事だけ。ひろ子ちゃんを起して、一緒に
朝食でしょ?それしかないもの」
「あっさりしたものだね?いつものことかい?」
「そうよ、木下さんも理解してくれてるの。ほんと優しいのよ、それもこれもエロ小説のため
って割り切っていると思うの。清々しいでしょ?」
「はははっ、朝は清々しいものだろ?淫靡な空気は払拭してもらいたいね」
「そうでしょ?だから、そのようなお話は一切しないの。暗黙の了解かな?」
「流石だね。木下さんの意気込みが伝わってくるようだよ」
「楊さんは少し違うかな?」
「それこそ二面性?」
「そうかな?お部屋を出るまでは、イチャイチャしていたいみたいなの。一旦、お仕事になると
ガラッと変わるのよ。変り身が早いかな?」
「いずみと同じじゃないか?」
「あれ?・・・藪蛇なの?うふっ」
「そうしないと前に進めないんだろ?過ぎ去ったことには拘らない、そういう気質だよ」
「だから抜けてるって指摘されるんだもの。ちょこっと心配なところもあるのよ」
「それが分かるだけでも大したものだよ、はははっ」
「笑わないでね?・・・えっと、何か質問とかあるかしら?」
「るみさんは徹夜とか言ってたけど、大袈裟に話したのかな?」
「お部屋を出てからの事は何も分からないのね。るみさんが徹夜って言ったのなら、そうじゃ
ない?」
「続きを?・・・考えられないが」
「来月も乱交って木下さんが話していたでしょ?るみさんも参加すると思うから、聞いて
みようか?」
「特に気にならないから、どちらでもいいよ。徹夜の意味はレコーダーが教えてくれたからね。
それにしても、2時間も寝れなかったんだろ?」
「うん・・・4Pが終わったのは4時頃って話したでしょ?それからお隣のお部屋に木下さんと。
暫くお話してからだから、1時間少しかな?」
「眠いだろ?」
「少し・・・でも、あなたに話さないといけないもの、それが先。眠くなるのはその後、
そう決めたから、それ迄は大丈夫よ、うふっ」
「じゃ、それ迄を急ごうか?」
「はい・・・木下さんとはお部屋を出る時に、”チュッ!”って、頬に、唇じゃないの。
別れの挨拶、ハグと同じかな?」
「朝を強調かい?」
「うふふっ、そうかな?・・・起きたのが6時30分過ぎなのね、分かってると思うけど。
お部屋を出たのが50分頃ね、タクマさんとの約束は守らないといけないでしょ?」
「復活セフレだものね」
「それは私の中だけでしょ?彼はそんなの全く意識していないのよ。でも、”赤と黒”までは
少し心配したって。可愛いでしょ?」
「何でもいいけど、携帯だろ?」
「うん・・・エレベーターを降りて玄関までには、いつ会うか決めていたの。それでね、難しい
かもしれないって話したことね、”実現できるかも?”って思ったの」
「ん?・・・ナニかな?」


[61] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/03/10 (日) 16:55 ID:kiqzlcSU No.190189



「タクマさんと二人でいるところを見てもらうってこと、覚えてるでしょ?」
「トーンダウンしてたね、それが実現できる?」
「あなたがOKしてくれないと何も始まらないんだけど、相談する時間もなかったでしょ?
それでね、来週の金曜日は東京本社で会議、その後サワちゃんとでしょ?
それを思い出して、サワちゃんとの時間を少し遅らせてもらったら、イタリアンレストランでの
様子を観てもらえると思ったの」
「タクマさんとは約束済みだね?」
「うん・・・金曜日は帰る日だけど、一日延ばして土曜日にあなたと一緒に帰ることにすれば
問題ないかなって。私一存で決めたけど、怒らないでね?」
「パンツを返してもらったんだから、約束は守らないと、はははっ」
「パンツから離れてくれない?うふっ」
「ひろ子、石黒さんとの段取りが出来るのなら、それでいいよ」
「良かった!・・・あなたを意識しない様に、少しはするかな?でも、限りなくいつも通りに
・・・」
「できないかも?と聞こえるよ、はははっ」
「そうかな?そうかも!・・・愛してるの、あなただけ・・・チュッ!」
「”ほんとだからね”は言わないのかい?」
「何度もって真実味がないでしょ?」
「だね。じゃ、寝ようか?・・・今夜は先に寝ろよ。いいかい?」
「ダメなの。あなたが寝るまでは・・・大丈夫だと思うけど」

そうは言ったものの、耐えられなかったのでしょう。
布団に入るや否や寝息を立てていたのですから、強靭な精神力を持っているとしても、疲れ切った
体に抗すことはできなかったようです。

いずみの寝息を聞きながら、レコーダーの会話を思い起こします。
木下さんとの関係は、問題なく進んで行くと確信が持てそうです。
12月以降、来年に持ち越すことも確認済みですが、いずみも私の思いと同じように、春頃まで
には、何がしかの結論に達していると自信の程を見せています。
それも、信じられるだろうと思えるのは、予想以上の木下さんの紳士的な態度からも読み解ける
からです。

タクマさんとの関係も、今年末までといずみとも確認しているのですが、少しの揺らぎを
感じるのは、思いの他、いずみの感情が高ぶっていると思えるからです。
と言っても、レッドラインを大きく超えることはあり得ないと分かっているのですが、微細な
隙間からでも滑り出さないとも限りません。
そうならないように、可能な限り彼との状況を報告させなければなりません。
その一助として、来週末に二人の様子を見せると提案したことは、大いに意義のある事です。
いずみ自身も微かに感じていると思える小さな揺らぎの芽を、私を介して摘み取りたいと思って
いると推測するのですが、そこまで考えていないかもしれません。
それ程重大に思っていないのがいずみであり、いずみなのです。
天然気質のいずみだからこそ、気負いなく自然体を装うことが出来るのでしょうが、私にとっては
痛し痒しです。

ここで気になるのが、タクマさんの父親です。
萌音さん、いずみ、木下さん、三者からの聴取内容を合わせると、ある人物が浮かび上がって
きます。萌音さんとの会話から推測はしていたのですが、情景の説明がなく、いずみの告白と
結び付けることで、その人物をより鮮明に描けていた事に加えて、今回の木下さんの証言から、
ほぼ間違いないと結論できるのです。
とは言っても、推論でしかないのですから、全くの的外れかもしれません。
木下さんは意識的にその人物を避けていると思えるのですが、それには全く反応を示さなかった
いずみですが、気付いていない振りをしていたのかもしれません。
天然気質であっても、非常に慎重な一面も併せ持っていますから、確証が取れるまでは口を開か
ない事も考えられます。
私に対しても、何のアプローチも見せなかったのですから、私からの反応を見定めてから、
重い腰を上げる作戦かもしれません。


[62] Re: 絆のあとさき 4  :2024/03/10 (日) 21:49 ID:FjlqljP6 No.190198
小田さん、こんばんは。 
  タクマさんの父親が矢島ですか。うーん。
 タクマさんの父親がIT関係の社長と言ったところで、ピーンときました。
 事実は小説よりも奇なり、世の中広いようで狭いですね。
  もう一つ、輪姦に参加したのは、JINさんとレストランのオーナーですかね。
 レストランのオーナーは予想ですが、妙になれなれしいので・・・

 木下さんがここまで話したのであれば、いずみさんも気がつくはずです。
 小田さんもすぐ気がついたはずです。確定するまではふれないつもりですかね。
 また、木下さんの官能小説にかける情熱が矢島と矢島の息子のタクマさんと
 関係を持たせることに繋がっているのでしょうか?
 タクマさんの出所がはっきりしているところに安心を覚えたのでしょうか。
  
 木下さんは最初の行為からの変遷を考えると(最初は4年前の事を思い出して)
 いずみさんと直に接して小説の主演女優にふさわしいと思ったのでしょう。

 楊は矢島の女を使ったサロンの事も木下さんから聞いたのかも・・・
 さらに、タクマさんが矢島の息子と知っているのかも・・・
 ここまで知っている木下さんは、小田さんといずみさんの関係もうすうす感じているのかも。

 最後は思いついたことばかり書きました。
 全くの勘違いかも知れません。お許しください。


[63] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/03/10 (日) 22:34 ID:kiqzlcSU No.190199



その日、9月最初の金曜日は、タクマさんといずみが約束した日であり、私が二人の様子を
観ると決めた日でもあるのです。

東京本社での会議に出席後、事前に打ち合わせしていた通り、午後6時過ぎにホテルに
チェックインします。
いずみの提案で、石黒さんと過ごす時間に狂いが生じるのですが、そこはいずみです、
石黒さんの不満を解消できないとしても、最小限に抑えられると思えるプランを用意します。

タクマさんとの約束の時間は、いつも通りの午後9時過ぎです。
いずみがひろ子と夕食後のシャワーを経て添い寝から、イタリアンレストランに着くのが
9時過ぎなのです。
従来通りなら、いずみがPPTを出た後は、石黒さんがひろ子の様子を見ることになっています。
私が石黒さんと会う時は、いずみはPPTでひろ子と一緒なのですが、その日は変則な時間割に
なります。

チェックイン後、6時30分にロビーで石黒さんと会います。
以前と同じなら、ホテルのレストランで食事後部屋に戻るのですが、その日は9時までに
イタリアンレストランに行き、いずみ達を待つ予定なのです。

石黒さんと食事後、

「済まないね。急にこんなことになって申し訳ない」
「気にしないで下さい。後で会えるのでしょ?」
「遅くとも10時には。あれだよ、いずみ次第だからその通りになるかは分からないがね」
「でも、いずみさんってホント大胆なんだもの。予想を遥かに超える、違うわ、予想もできない
ことをシラッと進めていくでしょ?」
「だね。常識とは何なのか聞きたくなるだろ?」
「タクマさんと、セフレの設定でしょ?会っているところを見せるなんて、いずみさんの常識
って非常識ってことですか?」
「はははっ、普通の神経ならとっくにまいっているだろうね」
「小田さんだから?」
「”普通のいずみ”からの付き合いだからね」
「普通の時ってあったのですか?」
「はははっ、そう言えば、そんな時もあったんだと懐かしく思い出されるよ」
「のんきなんですね?」
「そうじゃないと付き合い切れないよ」
「そうですね・・・」

午後8時30分を待たずに、ホテルのレストランを出ます。
石黒さんはPPTに帰って、いずみと交代するのです。
幾つかのレストランが軒を並べる小さな広場を通って、石黒さんを坂道の歩道まで送って
行きます。
後で入るイタリアンレストランの前を通る時、チラッと店の中を覗いたのですが、リザーブ席
には誰の姿も見られません。
店はそう広くもなく、店の前のテラスにもテーブルを並べていますが、店の中のテーブルを
確保できれば、二人の様子は観察できるといずみは強調します。
金曜日のこの時間ですから、そう簡単に確保できるのかと思っていたのですが、店の中には、
一組のカップルしかいないのですから、私には好都合です。
ヨーロッパのレストランで見かけるように、テラス席はおしゃれなのでしょう、二組のカップルが、
そのテラス席でワイン片手に食事中ですから、私に関心を払うとは思えないのも有難いことです。

車道を渡って行く石黒さんを見送ってから、いずみに掛けます。
全て、いずみの計画通りなのです。


[64] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/03/10 (日) 22:52 ID:kiqzlcSU No.190200


シンさん、コメントをありがとうございます。

シンさんの推測通りかは、これから判明していきます。
と言うか、もう分かっていると言ってもいいでしょうね?

申し訳ないのですが、時間がありませんから、ここまでにさせて下さい。


[65] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/03/16 (土) 12:24 ID:vMmUPaEE No.190353



『石黒さんと別れたからね』
『うん、スタンバイOKよ。あのね、お話の途中で連絡したいことが出来たら、おトイレから
メールするわね。携帯ならリアルタイムでしょ?タクマさんからあなたが見えるんだもの、
おかしいと思われるかもしれないでしょ?』
『そうだね。レストランには10分前でいいんだね?』
『うん、タクマさんは時間厳守だから9時少し前に来ているみたいよ。私は予定通り9時過ぎに
行くから。何だか緊張してきたかな?』
『そう見えないところがいずみなんだろ?』
『うふふっ、いつも通りにするから、気になることもあると思うのね。でも、気にしないでしょ?』
『僕の事は何も考えなくていいから。差し詰め赤の他人か、透明人間と思えば何も恐れることは
ないだろ?』
『うん・・・オーナーがちょっかいを掛けてくるかもしれないけど、彼の人となりが分かる
かもね?』
『レコーダー通りなら、そう心配は要らないだろ?それと・・・』
『ユカさん?・・・気を付けてね?私達のブロックになるから、それなりに神経を使ってる
みたいよ』
『彼女が動いたら、何かしてる証拠だね?』
『見えない様にしたら、そうかな?うふっ』
『想定済みだから、その時は目線を合わさないようにするよ』
『うん、バレない様に観察してね?』
『じゃ、その時に』
『うん・・・愛してるわ、うふっ』


腕時計は8時40分を指しています。
ホテルの玄関からそのレストランまでは数分の距離ですし、そこから石黒さんと別れた坂道までは
1分程なのです。
ホテルから非常に近く、多くの人が行き交う賑やかなエリアですが、一度、坂道まで出ると
急に人影が少なくなります。

坂道を少し上がり、いずみが”立ちんぼ”をしていた洋品店の前を通り、時間を見計って目的の
レストランへと下って行きます。
時間通りに、そのレストランに入ります。
先程通過した時に目にした状況と変わらないのですが、テーブルを選べるのかが気になり、
直ぐにやって来たユカさんに、それを確認します。

「はい、お好きなテーブルを・・・」
「じゃ、ここで・・・」

いずみ達のテーブルの斜め後ろで、一番近いテーブルに決めます。
このレストランでも食するつもりでしたから、石黒さんとの夕食はかなり抑えていました。
それは偏に、雰囲気に馴染む必要があると思っていたからに他なりません。
コーヒーのみで居座るには、場違いなように思えたのと、逆に目立つとも考えたからです。

注文した食事がテーブルに運ばれたと時を同じくして、背格好の高いイケメンが入って来ます。
馴染みの様子で、ユカさんに軽く挨拶して、リザーブ席の入口が見える側に腰を下ろします。
直ぐに携帯を取り出して、眺めている様に見えます。

店内はラウンドテーブルなのですが、そのリザーブ席は大きくない長方形のテーブルです。
いずみから聞いていた通り、カウンターと壁に挟まれたかなり狭い空間に、無理矢理設置した
ように見えます。

パスタとビールを口に運びながら目を上げると、右斜め前にタクマさんが見える位置関係です。
リザーブ席は壁に接して配置されていますが、ラウンドテーブルには4脚の椅子が用意されており、
壁側にその一脚が置かれていますから、テーブルと壁の間にはその椅子を置くスペースが必要です。
ですから、タクマさんと私は真正面にはならない位置関係なのです。


[66] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/03/16 (土) 17:31 ID:vMmUPaEE No.190362



腕時計を見ると9時を回ったところです。
いずみが話した通りだと思う間もなく、彼の携帯に着信です。
ハッキリは聞こえないのですが、にこやかに話す様子は、好感が持てる好青年と言えそうです。
半袖のポロシャツに短パンなのは、以前にも聞いていますから、特に気にもなりません。
いずみはどのような装いなのか、彼の意向を反映させたスカートだろうと、要らぬ想像も
時間潰しになります。

数分も経たずに、携帯で話しながらいずみが現れます。
タクマさんの相手はいずみだったのですが、そうかもしれないとは思っていたので、驚くことも
ありません。

私の後ろにいずみの視線を感じた時、

「あっ?ごめんなさい」
「えっ?いや・・・」

携帯に気を取られて、私に接触したように装ったのです。
いずみが到着を知らせたのでしょうが、それは全く意味のない事です。
それ以外にと考えるのですが、何も思い付きません。
ところが、いずみに注目させたいのだと、直ぐに理解します。
短いやり取りですが、そのような接触ですから、相手の行動に意識が向かうのは正常な感覚だと、
いずみは分かっているのです。

携帯はそのままで、ユカさんとハグして言葉を交わしたようですが、当然聞き取ることは
出来ません。
リザーブ席はすぐ傍なのですから、腰を下ろすと思いきや、タクマさんの右肩に右手を置いて
彼を一瞥するのですが、直ぐに顔を上げカウンター越しに声を掛けたようです。
一瞬、タクマさんに目線を移すのですが、厨房から姿を見せた男性、当然オーナーの筈ですが、
彼に抱き付いて頬にキスしたようです。
彼は体に比例して、かなり大きな声ですから、彼の反応が聞き取れます。
それに呼応して、いずみも大きな声で返答します。

「いずみちゃん、それはないだろ?ここが寂しいって怒ってるぞ、あはははっ」
「タクちゃん、いいの?」
「寝てる子を起こしたらダメだろ?」
「だって!ごめんなさいね?」
「タクの彼女だから、まぁ、これで勘弁してやるよ」

言い終るや否や、いずみの腰を抱き寄せて、キスを求めたようです。
左手に携帯を持ったままですから、簡単には抵抗できそうもありませんが、元々その意思はない
ようです。
”チュッ!”とソフトにキスして、オーナーから離れます。
挨拶のパフォーマンスとして、常態化していると見ていいようです。

笑顔のオーナーは満足したのか厨房に、いずみは何事もなかったように、タクマさんの前に座り、
腰を浮かせてキスします。
ここまでは何度も踏んできた流れのように感じるのですが、自然な雰囲気からもそれは事実だろう
と推測できます。

その後は、何を話しているのかは全く聞き取れないのですが、先程の挨拶がパフォーマンスと
認識すれば、一際大きな声なのは十分理解できます。


[67] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/03/17 (日) 11:43 ID:3ZgMVBeY No.190382



いずみの服装はタクマさんに合わせたのか、カジュアルに纏められています。
ノースリーブのブラウス、膝上のフレアースカート、小ぶりなショルダーバッグ、パンプス、
腕に掛けた半袖のカーディガンなど、ブルーの濃淡でコーディネートされています。
服装は全てがRLだろうと推測できます。
服装については何の言及もなかったのですが、会えば分ると判断したとしたら、それこそいずみの
気質を表していると思えるのです。
ところが、タクマさんのポロシャツもRLなのですから、その本質は、単に話したくなかったのかも
しれません。

先週の乱交まで会っていないと聞いていたのですが、不自然さを全く感じさせないパフォーマンス
には、少々驚かされます。
私が来ることを想定して、登場人物が口裏を合わせたのかと、あり得ない発想も浮かび上がって
きます。
会えない日々が過ぎたとしても、以前と変わらない風景を描き出せるのは、非常に親密な関係を
築いていると考えられるのですが、それはいずみの気質に大いに助けられている一面もあると
思うのです。

真正面ではないにしても、顔を上げれば自然と目線はいずみの背中、タクマさんの顔にいって
しまいます。
時折と言い聞かせながらも、ついつい目線が向かってしまうのは、致し方ないことです。
いずみ達の様子を観察するためにこのレストランに居るのですから、しっかり見定めないと
後でいずみに叱られそうです。
私とすれば、タクマさんの人となりが分かればそれでいいのですから、食事が終われば腰を落ち
着かせることなく、退散しようかと思っていたのです。

持参した愛用の雑誌もカモフラージュになると信じて、食事中の読書は褒められたものでないで
しょうが、この場合は例外として是認されると思いたいのです。

少しして顔を上げると、ユカさんが二人のテーブルの傍に居るのです。
屈んでいずみに話し掛け、それにいずみが返答しているのですが、微かにいずみの笑い声が聞こえ、
それに呼応するようにタクマさんの笑顔が見え隠れします。
そのテーブルは、食事するには広くはないと思うのですが、それを物語るように、タクマさんの
手にはワイングラスが見て取れます。
飲めないいずみは何を注文したのか、ソフトドリンクの類だろうと推測しても、いずみの背中しか
見えないのです。
ところが、ユカさんが”カンパイ!”とそれ程大きな声ではないのですが、私には聞き取れたの
です。
それと同時に、掲げられた二つのワイングラスが宙を舞うように交差し、二人が腕を絡めて
自分のグラスに口を付けたように見えます。
いずみもワイングラスを手にしていたことが分かるのですが、その理由は推測もできません。
ただ、事実だけが疑問符と共に宙に舞っている感覚になります。

そのアト、ユカさんがチラッとこちらを見て、いずみの後ろに移動します。
その理由は直ぐに理解するのですが、二人の動きは見えるようで見えません。
ユカさんが後ろからいずみに話し掛けている風を装っていますが、いつ振り返るか分からないの
ですから、長くは顔を上げる事など不可能です。
見えないものを見える様にするには、何がしかのヒントが必要ですが、それすら提示されない
のですから、不条理だと自分勝手に小さく憤慨するのですが、それが可笑しくて笑いそうになり
ます。
何をしていても驚くことはないのですが、見えない事実が気になるのです。

時折、いずみの腕が見えるのですが、それが何を意味しているのか判別できないとしても、
いずみの動きからブラウスを脱いでいるように見えるのです。
タクマさんもほとんど見えないのですから、彼の意図は全くもってブラックボックスです。

何時までも見ている訳にはいきませんから、そこまでで食事に戻ります。


[68] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/03/17 (日) 16:32 ID:3ZgMVBeY No.190394



少しして顔を上げると、ユカさんはこちら、私ではなく店の入口に顔を向けているのです。
いずみ達は何事もなかったかのように話しているのですが、先程手に持っていたカーディガンを
着ているのです。
クーラー対策だろうと理解出来るのですが、それを着るためにユカさんが遮蔽することなど、
非常に不自然です。
ところが、私から見えるいずみは間違いなくカーディガンを着ているのですから、結論から
言えば、不自然なところはあろう筈もありません。
この違和感は、後でいずみから説明があるだろうと、ここは一旦胸に納めることにします。

食事も終わり、ビールの昂揚感も手伝って、少し気持ちも大きくなってきます。
タクマさんの人となりもそれなりに理解できたとして、店を出ようかと思っていると、
いずみが席を立ってトイレに行くようです。
知らせたいことがあればメールすると、いずみは話していたのです。
携帯は事前に消音モードに設定していましたから、何気なく携帯を見る風を装います。

少しして、いずみからメールの着信です。


[お洋服のことは後で。タクマさんがお部屋に誘いたいって。あなたの指示に従います]
[了解]


タクマさんの意向が何なのか、その時までは推測するしかありません。
まさかと思う反面、あり得ないとも思えるのですから、小さくない動揺に心が乱されます。
軽い気持ちで話したことが、実現に向かって歩みを進めているのかもしれません。
いずみが示唆したかは分からないとしても、タクマさんを動かした理由がある筈です。

いずみが戻って来ても、楽しそうな様子が伝わってくるだけで、一向にその動きはありません。
ふと腕時計に目を落すと、9時30分になろうとしています。
その時間は、いずみから聞いているタイムリミットなのですが、私に接触してこないのは、
気が変わったと判断するしかないようです。

支払いを済ませ、店の外に出て歩き出した時に、後ろから呼び止められます。

「すみません・・・少しお時間を頂けませんか?」

非常に丁寧な言葉遣いです。
振り返って、

「僕ですか?」

タクマさんと分かっていたのですが、少し恍けて見せます。
タクマさんの左腕に右手を浅く巻き付けたいずみが、笑顔で寄り添っています。

「えぇ、先程から私達を観られていましたね?」
「特に・・・顔を上げると見える、それだけのことです。それが何か?」
「あっ?いや、不躾な声掛けで困惑されているかもしれませんが、僕達は決して怪しい者では
ありません」
「見るからに仲の良いカップルとお見受けしますが、どのようなご用件ですか?」
「単刀直入にお話してもいいでしょうか?」

店の前のテラス席には二組のカップルが居るのですが、何となく視線を感じるのです。

「いいですが・・・歩きながらでも?」
「どちらに?」
「目の前のホテルです。出張でここに・・・」

カットされます。

「そうですか!僕達もこのホテルですから、奇遇ですね?」
「まぁ、そうですが・・・ところで・・・」


[69] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/03/17 (日) 18:49 ID:3ZgMVBeY No.190402



私と並んで歩き出したタクマさんですが、意を決したような雰囲気が伝わってきます。

「ご覧の通り、僕達は歳の差カップルですが、お互いを大事に思っていますし、心から愛し合って
います。そうだろ?」

確認するのは、自信の無さの表れです。

「タクちゃん、私達のことなど今は関係ないでしょ?・・・すみません。失礼な物言いを
許して下さい」
「あっ?いや、気になさらずに・・・どういったご用件ですか?」
「お願いなのですが・・・どのように説明したらいいのか・・・いずみちゃん、どうする?」

私から助け船を出します。

「要領を得ないようですが、僕から話しましょうか?」
「えっ?分かりますか?」
「以前にも同じようなことがありましたね。このホテルでは時々耳にしますから、そう珍しい
ことではないでしょ?」
「そうですか・・・よくあるのですね?」
「はははっ、初めてですか?」
「そうなんです。とっかかりが難しくて・・・あの〜、お名前をお聞きしても?」
「タクちゃん、そんなこと失礼でしょ?」
「こういった関係なら呼称も必要ないでしょうが、一度きりだとしても、呼称がなければ話し難い
こともあるでしょうね」
「何だかホッとしました・・・僕達は・・・」
「タクちゃんといずみちゃんですね?」
「お恥ずかしいです、名乗らないでお願いするなんて。それでは・・・」
「お二人の名前が本名か分かりませんから、僕も、”ちゃん”と付けるほど若くないですから、
そうですね、戸田として下さい」
「戸田さんですね?」
「えぇ、僕からと言ったでしょ?続けますか?」
「それなら・・・」

ホテルのエントランスを通過して、ロビーに入ろうとしています。

そこで立ち止まって、いずみに目線を向け、小さく瞬きます。
理解したのでしょう、そっとウインクを返してきます。

「彼女さんは美人ですから、3万円が相場でしょ?」
「えっ?性行為はそうなのですが、観るだけで・・・お願いしたいことは・・・」

最後まで聞かずに、

「観るだけ?・・・それなら、僕以外の人に頼んで下さい。お互い無駄な時間だった、
失礼するよ」

怒ったように受け取られたのでしょう。
歩みを早くした私と、立ち止まった二人とに少しの隔たりが出来るのですが、いずみが足早に
駆け寄って来ます。

タクマさんに聞こえるように、少し大きな声で、

「待って下さい!お話はまだ終わっていません・・・」


[70] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/03/20 (水) 11:22 ID:FRqlMzaw No.190485



振り返った私の左腕に手を掛けていますから、いずみとの距離はほとんどありません。

声を潜めて、

「・・・どうするの?」
「ゼスチャーだよ。いずみが追いかけてくると思ってね」
「読まれてるのね?それじゃ・・・」
「あぁ、了解したと彼に伝えてくれないか?」
「いいのね?こんな形で実現できるなんて、ほんと驚きね?」
「早く行けよ、不安そうに見てるぞ」

当然ですが、タクマさんからはいずみの後姿しか見えません。
私を説得していると思っている筈です。

「大丈夫?後悔しない?」
「はははっ、今更。言いだしたのは僕だからね。軽い気持ちだったが、まさかだね?」
「うん・・・話してくるわね?」


立ち止まったまま、二人がやってくるのを待ちます。
笑顔に戻ったタクマさんといずみが腕を組んで、近付いて来ます。

「すみません。上手く話せなくて、誤解させてしまったようです。彼女がお相手をするのではなく、
僕達の性行為を観て頂きたいのです。彼女からお聞きになったでしょ?」

いずみの隠された交渉力に感嘆したかは不明ですが、先程とは打って変わって、立て板に水の
如く滑らかな口調です。

いずみに目線を移して、

「美人に頼まれると断れないでしょ?それに、誠実そうなお二人だから、ここは清水の舞台から
飛び降りるしかないと。まぁ、彼女に免じて了解した訳だね」
「大袈裟だわ。あっ?ごめんなさい」
「はははっ、普通に話そうか?いいだろ?」
「その方が話しやすいです。でも、僕達からのお願いですし、年齢差を考えると少し難しいかな?
とか思いますよ」
「それでいいのね?戸田さん?」
「だね。ところで・・・」
「あっ?チェックインを済まさないと。少し待ってくれますか?」
「いいよ、いつまでも・・・ん?それはないか?」
「うふふっ、おかしな人って言われませんか?」
「妻にはね?はははっ」


この時間帯でも、フロントにはチェックイン待ちの客がいるのですから、上のホテルとは雲泥の
差です。

「ところで、どうして僕を?」
「彼女と相談して決めたと理解して下さい。僕一存ではないですから、無理矢理ではありません。
彼女は振り返って・・・戸田さんでしたね?戸田さんの様子を見ることはできない。
ただ、店に入った時に体が当たったでしょ?その時の印象が良かったと。それと、僕から見える
戸田さんの様子も、僕達の希望に適う人だと思ったからです」
「よく分からない判断だね?」


[71] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/03/20 (水) 14:59 ID:FRqlMzaw No.190494



「えぇ、インスピレーション・・・彼女がそう言ったのと、僕もそう感じるものが、何がどう
とかはハッキリ分からないのですが、兎に角、お願いしても大丈夫だろうと思ったのです。
これは僕の推測ですが、3Pとか乱交も経験されている、そう感じるものがあるんです。
間違っていたら・・・」
「人を見る目はそれなりの経験を踏まないと養われないでしょ?今話したことは、彼女の受け売り
だと思えるが、違うかな?」
「・・・すみません、年齢は隠すことは出来ないですね。彼女の体験は僕の想像を遥かに超えて
います。ですから、彼女の判断に大きな間違いはないと。それで戸田さんに・・・」
「はははっ、軽く接触しただけでそう判断できるとは、それこそ想像を超えているでしょ?
そんな軽はずみな意思決定など、小さくない判断ミスに繋がりますよ」
「そうですが・・・少し違うかもしれないのですが、彼女はキャリアウーマンで、来年には
取締役に、決まった訳ではないのですが、確かな判断力がないとそう評価はされないでしょ?」
「それはそうだね。先程の僕を説得する時の話術には感服したよ。そういうことなら、酸いも
甘いも数多くの経験を積んでいると思えるね」
「どうですか?彼女の判断は?」
「はははっ、それなりに言い当ててると返答しますよ。それにしても、まだ若いと見受けられるが、
取締役とは」
「アラフォーですから、そう若くも・・・」

私達はロビーの対極に位置する壁の傍で話しているのですが、壁を背に私ですから、いずみが
近付いて来るのは、タクマさんには見えていません。

「・・・誰なの?若くないアラフォーって?」

タクマさんの左腕に右手を添えながら、覗き込みます。

「あれ?聞こえてた?」
「そうよ、地獄耳って知ってる?」
「いずみちゃんのことを話していたから、20代じゃないとそう話そうとしたのに、驚くだろ?」
「うふふっ、悪口ってどうして聞こえるのかしら?ねぇ、タクちゃん?」
「イヤだな、戸田さんに笑われるだろ?」
「はははっ、仲良しだね?それが・・・まぁ、それは後で聞こうかな?」


腕を組んだ二人と一緒に、部屋に移動します。
エレベーターに乗っても、私が傍に居ることを忘れたのかと思う程、小さくない接触を繰り返し
ます。

「・・・戸田さんが・・・チュッ!・・・ダメでしょ?」
「はははっ、もう始まってるのかい?」
「観られると興奮する二人なのね?」

それにしても、カーディガンが体に張り付いているのは、不自然です。
ノースリーブのブラウスの上に着るとなると、フロントボタンを全て留める事など考えられません。
いずみが理解していない筈はありませんから、左手に持っている小さなレジ袋が、その答えを
教えてくれそうです。


このホテルの上層階は、一クラス上の料金設定です。
ですから、私の出張費用で賄える金額ではありません。

部屋に入ると、ベッドの正面には比較的大きな窓が設置されていて、夜景が一望できます。
窓に接するように、ソファーベンチとその前に小さ目のラウンドテーブルが、セットされています。
ソファーベンチと壁との小さな隙間に、これも小型のTVが設置されています。
ベッドから観るには余りにも小さ過ぎるのは、ソファーベンチに座って観る設定なのでしょう。


[72] Re: 絆のあとさき 4  :2024/03/22 (金) 22:14 ID:XeTSY7W. No.190547
小田さん、こんばんは。
私の頭では理解でいないことが多くあります。
この話の続きで判明するのであれば、スルーしてください。
じっと待っている読者の皆さんに申し訳がありません。

タクマさんが、「キャリアウーマンのこと、更に来年、取締役になる事」
も知っていたのは、木下さんからの情報でしょう。
また、「彼女の体験は僕の想像を遥かに超えています。」
個人情報を何故教えたのでしょうか?(約束?違反ではないでしょうか。)
どこまで木下さんから聞いているのでしょうか?
その他にも木下さんからいずみさんのことで相談されているのかも知れませんね。
イタリアンレストランのユカさん、マスターは木下さんと繋がっています。
来年度、再度上京するのにタクマさんも絡んでいるのでしょうか。

何か、揚さんよりもこれからのいずみさんとのことを続けたくて仕方が無い
木下さんの言動のように感じます。(私の戯れの妄想ですが。)


[73] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/03/23 (土) 12:22 ID:kyJyjI0c No.190560


シンさん、コメントをありがとうございます。

先日は時間が取れなくて満足な返答もできず、申し訳ありませんでした。
といって、今回も同じように舌足らずの返答になるかもしれません。

前にも書いたのですが、多忙な日々に追われているのが現状です。
ですから、今後も多くの言葉でお返事は出来ないかもしれません。

さて、疑問に思われている件ですが、
”今後の展開を読んで頂きたい”と言いたいところなのですが、少し開示?しますね。

タクマさんが彼女の情報を知っている理由ですが、これについては私の憶測です。
彼女の性事情を説明する必要性からだと思います。
仕事については、楊社長との関係性を強調する意味合いだろうと思いますし、
楊社長から木下さんに指示があったと思っています。

木下さんの思惑は来年に引き継がれていくのですが、今回の投稿は年末までと
決めていますから、それには言及はしません。
ただ、誠実に約束は実行したとだけ付け加えておきます。
申し訳ないのですが、妄想?で我慢して下さい。

タクマさんの今後については、彼の要望で私と二人だけで会う機会があります。
今投稿している展開の後になりますから、そう多くの時間はかからないと思います。

”多くの出来事はない”と先に書きましたが、小さくて目立たない事例は多々あります。
ピックアップしてどのように展開の中に落とし込むのか、判断に苦しむことは少なくありません。
そうなると時間との兼ね合いになりますから、スルーしてしまうことにもなります。

満足なお返事ではないかもしれませんが、健康のためには”腹八分目”とか言うでしょ?
続けて、”医者いらず”とも言いますから、”妄想”もそこそこに元気な毎日を過ごして
下さい。

まぁ、妄想は命の泉(いずみ)かも?ですね。
蛇足ですが、ひらがな表記の”いずみ”は名前です(汗)


[74] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/03/23 (土) 15:23 ID:kyJyjI0c No.190565


続きです。





「戸田さんはソファーでいいですね?」

互いの腰に腕を廻して密着しているのですが、二人の身長差は優に20cmはありそうですから、
いずみの身長から判断すれば、タクマさんは180cmはあってもおかしくはありません。
部屋に来るまでにも、タクマさんの体格には圧倒されそうでしたが、柔らかな表情と丁寧な
話し方など、第一印象と大きく乖離していないのですから、見掛けよりは安心感があります。

「えぇ・・・変則的なベッドの配置だが、ベッドから夜景を楽しむ設定なの?」
「そうでしょ?テレビはベッドの正面ってありふれてるもの。愛し合う二人なら、綺麗な夜景に
包まれて・・・その方がロマンチックでしょ?」
「はははっ、濁しましたね?」
「分かります?」

愉快な掛け合いは、慣れたものです。
加えて、柔らかな会話には、緊張を和らげるエッセンスが含まれていると、いずみも理解して
いる筈です。

「いずみちゃん、余り時間がないから・・・」
「ほんとだ!・・・じゃ、どうする?」
「時間がないのなら早く始めないとダメだろ?で、何時までなの?」

分っていて聞くのですから、いずみに目線がいってしまいます。
ところが、全く表情に変化はありません。

タクマさんがいずみに代わって、

「遅くとも10時50分には・・・今夜も?」

タクマさんに返答せずに、私に返してきます。
分かり切ったことには反応しないいずみの気質が現れています。

「お願いしたのに時間が短くて、戸田さんにはご迷惑?・・・あれ?お楽しみかな?短くて
すみません、うふっ」
「はははっ、余裕だね?」
「うふふっ・・・濁したところは、”セックス”・・・”セックスプレイ”ではないの。
本気で愛し合うところを観て下さい」

本気なのかフェイントなのか、不確かな物言いには何かが隠されていると思えるのです。
セックスプレイとは思っていないタクマさんへの恭順なのか、いずみ自身に言い聞かせているのか、
いずみの真意を推し量ることもできません。


ソファーに腰を下ろした私に、ポロシャツを脱ぎながら、

「一つだけいいですか?」
「ナニかな?」
「興奮しても参加はNGでお願いします」
「タクちゃんね、言ったでしょ?そんな人じゃないって。私の眼力に間違いはないの、分かった?」
「流石だね。そう言われたら参加もできないね。じゃ、かぶりつきは?」
「同じでしょ?息がかかる位置って参加と同じよ・・・」

カーディガンのボタンを外しながら、ラウンドテーブル越しに上半身を屈めて、顔を近付けて
来ます。


[75] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/03/23 (土) 18:35 ID:kyJyjI0c No.190573



「・・・ねぇ、そうでしょ?」
「この距離?」
「そうよ・・・ここまでならOKかな?・・・」

胸元を見せるために近づいて来たことは明白です。
カーディガンのボタンを全て外して、レースであしらわれたブラを見せます。
ノースリーブのブラウスにそれとなく言及するのかと思いきや、その素振りも見せません。
ただ、小さく呟く様に、

「・・・ワイン・・・」

飲めないワイン?口を付けるだけ、その時に・・・そう考えれば、自ずと答えは分かってきます。

「ここまでとは?ブラの下は?はははっ」
「これからでしょ?・・・タクちゃん!脱がせてくれないの?」

ウインクして、直ぐに振り返りタクマさんに抱き付きます。
いつもと同じ光景なのかもしれませんが、いずみが主導しているとアピールしているのかも
しれません。

鍛えられた体を誇示するように抱き締めた彼の腕は、マッチョマンと呼べるほどの筋肉で覆われて
いると言えそうです。
いずみの背中に廻した腕が、ブラのホックを外しながら、彼の首に腕を巻き付けたいずみと激しく
キスを交わします。
既に始まっているのでしょう。
私には見慣れた情景ですが、二人にとっては、快楽への階段へと踏み出す合図のキスなのかも
しれません。

窓を背にソファーベンチに座っている私とは、ラウンドテーブルを挟んで2m程しか離れていません。
ダブルベッドとの広くはない空間で抱き合う二人には、何故か好感が持てます。
特に推測もしていなかったタクマさんですが、相性が良いと言ったいずみの言葉が思い出され、
いずみの真意が分かったように思います。


スカートを脱がされたいずみは、タクマさんの厚い胸から下腹部へと唇を這わしていきます。
私が好まない行為ですから、いずみは何を思っているのか聞きたくなります。
タクマさんは既にビキニパンツ姿ですから、いずみのTバックと合わさって、臨戦態勢の様相です。

下腹部に辿り着いたいずみは、彼の顔を見上げてから、パンツをそっと下ろしていきます。
既にマックス迄膨張しているペニスが、ピンと反り返ってお腹まで届きそうです。
脱がしたパンツはそのまま床に置き、キュッと締まった睾丸にそっと唇を添えて、ペニスを握り
ます。

以前に、いずみから聞いていたのですが、フェラは不要な行為と言えるほど、完璧な勃起です。
ところが、それはセックスへの扉を開く最初の行為の位置付けでしょうから、不要であろうと
なかろうと、通過儀礼なのかとそれとなく納得させられます。

抱き付いてキスした時は後ろ姿だったいずみですが、唇を這わし始めると体をゆっくり廻して、
横顔が観れるようにします。
当然、タクマさんもそれに合わすのですが、いずみの演出なのは間違いありません。
見せて興奮する前提ですから、そのような展開は想定済みです。

数分も咥えなかったペニスを大事そうに右手で持って、そっと立ち上がります。
タクマさんはペニスからいずみの手を放し、首に巻き付けさせてキスの後直ぐに、少し屈んで
右手でいずみの両脚を持って抱き起します。
”お姫様抱っこ”なのでしょうが、年齢差を考えるとかなり無理があると言わざる負えません。
それでも、笑顔を絶やさず、左手も彼の首に巻き付けて体を預けるいずみは、お姫様になり切って
いるのかもしれません。
その時、もし恥じらいを見せていたのなら、私がそれ以上に恥ずかしい思いをしただろうと、
今振り返っても笑いが込み上げてきます。


[76] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/03/24 (日) 12:06 ID:w0nkkFsM No.190602



タクマさんが、すぐ傍のベッドに移動しようとしたその時、彼の首に巻き付けていた左手を
放したいずみは、

「戸田さん、30分になったら声を掛けて下さいね」

先程よりも少し丁寧な言葉は、”必ず”との願いが込められている様に感じます。
それは、行為中では時間の観念が飛ぶことがあると示唆している様に思えるのです。
過去数回の性行為の時は、タイマーでも用意したのかと、ふと頭に浮かびます。

「その時に止められるのかい?」
「頑張りま〜す、うふふっ」

二つの意味を持たせる発言だなと、いずみの心情に寄り添えば、理解出来そうです。
セックスとそれの停止を頑張ると意思を示したようですが、相反する行為には難しさが見え隠れ
します。
敢えて私に依頼することで、性行為の事実を追認させる狙いがあるのかもしれません。
私を共犯者として認識させたいとの思いもあるようです。

射精もなく終了宣言も難しいだろうと、オトコの性に寄り添った思いが頭をもたげます。
それなら、事前に知らせるのが観客の優しさだと思えるのです。

少し大きな声で、

「あれだよ、終了5分前に声を掛けるからね。5分もあれば大丈夫だろ?」

一瞬、時間が止まったように、二人共理解出来ないような表情を見せるのですが、

「・・・そういうことね?タクちゃん、分かった?」
「それまでに・・・その時だよ。いずみちゃん次第かな?」
「戸田さん、そういうことだから・・・ねぇ、は・や・く・・・」


ベッドに寝かされたいずみは、タクマさんの首に両腕を巻き付けて、先程よりも激しくキスを
交わします。唾液がもたらす湿った音が激しさを物語っているのですが、私からはその様子を
観ることは出来ません。
目線の先には、大きく開いたいずみの脚の間に、膝を付いたタクマさんが乗っている構図です。
何度も観た前戯から性交に入って行く過程の図式のようです。
私も含めて、多くの男女の性交へのルートなのは間違いないと思います。
それが同じだとしても、浮世絵の交接図を彷彿させるタクマさんのペニスには、少なからず畏怖を
感じます。
太さも長さも、以前にいずみが体験したビッグサイズとさして変わらないと思うのですが、
勃起力は並のペニスとは比べることもできないと思います。
推測でしかないのですが、硬さも未経験の域に達していると思えるのです。

性行為の相性と相まって、性格の面でもその相性に触れていたことに気付かなかったのは、
小さくない悔悟を感じます。
いずみが好きになるのには、それ相応の理由があることを思い出します。
性行為で満たされても、好きになる理由にならないと、何度も聞かされていたのですから、
タクマさんへの気持ちも理解できます。
いずみの心も体も満たしてくれるのなら、私にとって必要悪だとしても、タクマさんをセフレ
として迎えることの意義は、小さくないと認めざる負えません。
いずみはそれを示唆してはいないのですが、感じるものがあったと言えば、そうかもしれません。
少なくとも、今年末までは楊社長の指示ですから、タクマさんとの契約?そういったものがあれば
ですが、その終了後、年明けの都合の良い日を見計って、いずみとの交際をスタートさせることも
視野に入れておく必要がありそうです。


[77] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/03/24 (日) 17:14 ID:w0nkkFsM No.190613



目の前で繰り広げられる性行為は、いずみと言う名の見知らぬ女性が、性的興奮の真っただ中で、
嬌声とともに体を震わせている。その姿態に、妻のいずみを重ねたくない私がいるのです。
強制的に見せられていると言い聞かせても、事実を変えることは出来ません。
そうはいっても、非常に冷静に観れるのですから、違和感はあっても忌避したい程でもないのです。
相反する気持ちが交差しながら、体位を変え、続けられる性交を目で追いながら、止めどもなく
発せられる熱情に、胸が熱くなるのを隠すこともできません。

ネトラレではなくこのような設定なら、私自身を満足させられるのかなと、ある仮説を立てます。
それは、よくある設定で俗な言い方かもしれませんが、”自分の女を抱かせて満足する”、
非常に自分勝手な発想なのですが、それなら安心できると思えるのです。
相手の男性は、私に恭順している設定ですから、何ら心配な事態にはならない。そのような妄想は
現実的ではないかもしれませんが、いずみとなら実現への道のりは難しくないと思えるのです。

思いを巡らしながらも、一歩下がって観ることができるのですから、差し詰め、眺めている感覚
です。
少なくとも、凝視ではありません。そうなら、肉の交わりにのめり込み、何も思い浮かばない状態
でしょうから、やはり冷静さは失われていないと熱くなった胸を撫で下ろします。
感情の高ぶりは、性的な興奮ではありません。タクマさんを受け入れると決めた高揚感で、心が満
たされたからです。
ですから、”性的興奮”を求めるのではありませんから、ネトラレの定義とは乖離していると
思います。

今夜の事は、いずみの発案だったかもしれません。
問い質しても、すんなりとは認めないでしょうが、タクマさんを受け入れると表明すれば、
事の始まりを話すかもしれませんが、”それはあなたでしょ?”と返されることは請け合いです。

タクマさんとの体位は、私とのそれとさして変わらないと話していたいずみの言葉を思い出します。
確かに順序立っていると見られますが、その差は歴然です。
力強く腰を振る姿は、過去の経験からでは語られない程の衝撃だろうと推測できます。
”異次元の衝撃”と表現してもしきれないかもしれません。
それを証明するかのように、強弱をつけた喘ぎ声が、悲鳴とも取れる叫び声に変わった瞬間、
逝ってしまいます。
体を震わせて逝くその様は、いずみではないと表現したくなる程の衝撃です。
逝った後の様子が、今までとは全く違うのです。
小さく大きく打ち寄せる波のように小刻みに震えたかと思いきや、大きく反り返って、また体を
波のように震わせるのです。
その時も、強弱をつけた喘ぎ声を発しているのですが、大きく反り返った瞬間、断末魔と表現して
も決しておかしくない叫び声を上げるのです。
私に話していた様子とは、全く異質だと疑問を呈しても返答できないでしょう。
今夜の情景だけだと言えないことは、明白です。
後でどのように説明するのか、いずみの真意の揺らぎが聞けるかもしれません。

正常位から始まって騎乗位、後背位、最後に正常位に戻して、射精の流れだろうとその様子を
見詰めるのですが、その体位毎に逝き狂うのですから、いずみの体を支えるのは並大抵の力では、
抗することもできない筈です。タクマさんの体力には感服しかありません。

いずみは、その全てにおいて失神している様に見えます。
ダラッとした両腕、力の入らない両脚など、体も支えられないと重力に負けてしまう状態です。
それでも、体位を変えた後直ぐに、高速ピストンの洗礼を受けると、体を震わせて絶叫と共に
反り返って逝くのですから、いずみを支えるタクマさんが強靭な体力の持ち主であっても、
疲れが見えてくると思うのですが、一向に衰える事を知らないマシーンのようです。
感情のないマシーンなら、いずみをここまで逝き狂わせることは出来ないでしょう。
何を置いても、求め合う二人の気持ちが一つにならないと、こうはならないと思えるのです。
性行為の全てにおいて、私がタクマさんより勝るものは何一つないと言えそうです。


[78] Re: 絆のあとさき 4  にせ医者 :2024/03/26 (火) 09:08 ID:ykhe1Z3o No.190679
小田さんへ
こうなることは自明でしたね。
アラフォーからアラフィフ(もっと?)までは長いですね。
タクマさんの執着も一時のものかもしれませんが、子供にオモチャ(失礼)を持たせると、壊れるまで使い倒さないかと心配です。
いずみさんは、僕の想像以上の人だとは思いますが、、、

いつも思っていますが、最後は小田さんのハッピーエンドがのぞみです。


[79] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/03/30 (土) 11:10 ID:GJAcknbc No.190803


にせ医者さん、コメントをありがとうございます。

オモチャは思い付かなかったですね。

オモチャにオモチャにされるシーンを観ていたとは、考えも及ばなかったですね。
視点が変わると、見えてくるものに差異がある事を物語っていますね。

タクマさんの体力に至っては、私の想像し得る限界を遥かに超えています。
あれですね、超人?かもしれません。

シンさんへのお返事でも書きましたが、彼と二人だけで会うことになります。
その時に彼の去就が判明しますから、感想などありましたら、教えて頂ければと思います。

どのような結末がハッピーエンドなのかは、当事者の意識に大きく関わって
くる事象だと思います。
結末が来るのか、曖昧なまま流れていくのか、それが見えてくるまでには、
長い時間が必要かもしれません。


[80] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/03/30 (土) 18:58 ID:GJAcknbc No.190817


続きです。




私が観ていることは分かり切っているのですが、二人だけの世界に没頭していることは、
体位の取り方からでも分かります。
正常位から騎乗位に移る時には、いずみを抱き起して上に乗せなければなりません。
意識もままならないいずみは彼に支えられても、直ぐに倒れそうになります。
タクマさんは体を起こして座位の体勢から突き上げるのですが、いずみを支えるには限界が
来ます。
ふらふらしたいずみの体を、背中に廻した両腕で支えながら、仰向けに寝た彼の上に倒れ込ませ
ます。
私が手を伸ばしても届く距離ではないのですが、正常位では観れなかったいずみの顔がこちらを
見ているのです。
といっても、目を開けている訳ではないのですから、私を意識しているとは到底思えないのです。

いずみの背中に廻した両腕で、体の動きを止めようとしているのですが、反り返って絶叫ですから、
そう長くは続けられません。
いずみを抱き起して挿入したまま後ろに倒します。背中に廻していた両腕を腰に持ち替えて
抱き起こし、また座位に戻り、凄まじい速さで突き上げるのです。
直ぐに反り返って逝くのですが、体を震わせ喘いでいるのですから、意識がないとは思えない
のです。それでも、グタッとしたままなのですから、何とも不思議な情景です。
無意識の意識と話していたいずみの真意はここにあったのかと、不確かであっても、そう理解しな
いと、説明がつかないと思えるのです。

ここまではペニスを膣に挿入したまま体位を変えていたのですが、いずみを後ろにゆっくり倒し、
結合を一旦解きます。
伸ばしていた足から膝を付く体勢に移行したタクマさんは、抱き起しながらクルッと体を廻して
腹這いにします。
いずみは相変わらず全く動こうとはしません。
この部分を切り取れば、眠っていると言っても間違っているとは思えないのですが、失神状態が
続いているとも思えないのです。
体を動かされても全く反応しないのですが、一旦、ペニスを挿入されれば、直ぐに喘ぎ声を
発するのです。
どう説明すればいいのか、困惑の空間に疑問符が飛び交うだけで、そこに入れる言葉が見つかり
ません。

腹這いのいずみの腰に右腕を廻して、腰を浮かせ膝を付かせるのですが、自立できないのですから、
ともすると元に戻りそうになります。
タイミングを見計らって、左手に持ったペニスを一気に挿入するのですが、その情景は後ろに位置
する私からは、丸見えです。
筋肉質の臀部の動きにも、いずみは体を動かそうとしません。
今までのいずみなら、快感を求めて腰を動かしていた筈です。それに反応しないのは、できない
のではなく、エクスタシーが堰を切って溢れるまでは、快感を閉じ込めている様に思えるのです。
体を震わせ嬌声を発しながら、噴出させるその時へと昇華させていく、感極まった時に絶叫と
共に、体が反り返ると推測できるのです。

膝を付かせて後背位で逝き狂ういずみを支えるには、やはり限界があるのでしょう。
ペニスを抜き、腰に廻して倒れ込むのを支えていた両腕を放すと、いずみはベッドに崩れ落ちます。
今までと違って少し手荒な扱いですが、タクマさんの体力に限界が近付いているのかもしれません。
それでもいずみには、何の変化も現れません。
うつ伏せのいずみの右足を持ち上げて、体を横向きにします。
いずみの股の間に両脚を入れてペニスを挿入すると、直ぐに喘ぎ出すのですから、いずみに取って
は最高のペニスなのだと思わずにはいられません。
ゆっくりとそれも深く挿入し、体を前に倒して、右手でいずみの首を起こし引き付けます。
いずみの体がくの字に曲げられます。

くの字に曲げられたいずみの顔に近づき何かつぶやいたと思ったのですが、その状態からそう見え
たのかもしれません。
微かにいずみの声にならない声が聞こえたと思ったのも、それを後押しします。
いずみの頭の傍で役目を待っているピローを手に取り、本来の使い方ではなく、いずみの顔に
被せます。
ピローを右手で押えたまま、助走なく一気にピストンを開始します。
今までとは比べることもできない程の速さですから、いずみをくの字に固定した理由は理解でき
ます。体の震えも反り返りも許さない、快感を体に閉じ込めて解放させない、圧縮された快感を
一気に昇華させ、放出させる時、彼も我慢の限界を乗り越えて射精する、そういう図式だと
理解します。
愛し合うことの意味を、体で表現することに他ならないと言っているようです。


[81] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/03/31 (日) 12:40 ID:rhgaMG7s No.190839



凝視していたのではなく、性行為の流れに目をやっていると、色々と想いが湧き上がってきます。
それが先程の感想なのですが、ふと時間が気になります。
10時30分に声を掛けて欲しいといずみから頼まれているのです。
その5分前にと気を廻した私が申し出たのですから、依頼よりも比重が大きい筈です。
約束は可能な限り守るのが信条と言っている私ですから、夢遊病者のようないずみであっても、
それを信じて性行為に没入しているでしょうから、その重みを感じます。
所要時間内に性行為を終わらせる、そうでなくても約束の時間厳守は私のセオリーですから、
幾度となく腕時計にも目線を落します。

約束の時間に差し掛かった時、松葉崩しを崩したと表現しても二人には響かないかもしれない
体位で、エクタシーへの階段を上っている最中です。
ここで声賭けは信義則に反するかな?と変な拘りが頭をもたげるのですが、約束は約束です。

ピローを被せられたいずみの嬌声は、ほとんど聞こえません。
動くに動けませんから、”うぐぐっ”と、こもった低い響きが聞こえるだけです。
それだけ強く押さえられているようですが、息ができない程でもないようです。
背中が汗で光っているタクマさんに、タイムアップを知らせなければなりません。

「タクマさん?」

二度呼びかけても返事はありません。
立ち上がって、ラウンドテーブルの前に出た時、私の動きを察したのか、時間を気にしていた
のかは、定かではないのですが、兎に角、振り返ったのです。

「時間・・・」

言い掛けた私に、汗だくの笑顔を見せて頷きます。
そのような状況でも、爽やかさを失っていないのですから、疲れを知らないとはこのことだと、
感心の余り、次の言葉を繋げられずに、小さく頷いてソファーに戻ります。
その短い時間の間に、変則?松葉崩しから正常位に移り、ピローはそのままに猛スピードで
腰を振っているのです。
所定時間内へのクライマックスに向かって、ひた走るタクマさんを応援したくなります。
何度逝ったか分からないいずみは、タクマさんの発射を今かと待っていると推測もできない
のですが、無意識の意識なら、そう思っていても的外れではないと思えるのです。

”うお〜っ!”と小さくない雄たけびを上げて発射したのでしょう、”ハァハァ・・・”と
苦しそうな息遣いには、先程の爽やかさは見て取れません。
それでも、ピローをはぎ取っていずみに覆い被さり、途切れる様な息遣いでも、キスを交わす
のですから、彼の体力の凄まじさを見せつけられた思いです。
いずみも自由になった体一杯に喜びを表すように、彼の背中に両腕を廻して、強く抱き締めて
いるようです。
”頑張ったね”、”うん”と囁き合っているのでしょう、推測でもこのようであって欲しいと
思わせる様子がとても微笑ましく、こちらも頬が緩んできます。

ほんの少し言葉を交わして、タクマさんはバスルーム側からベッドを降ります。
何を話したのか聞き取ることはできないのですが、その雰囲気からは淫靡な空気は流れてきません。
”とても”と表現しても誰も異論はないだろうと思えるほど、爽やかな空気感に包まれている
のです。
いずみを抱き起すその一瞬、いずみがこちらを見たように感じます。
それもつかの間、ベッドインの時と同じように、お姫様抱っこでバスルームに消えていきます。
バスルームのドアは閉じられていますから、シャワー音は聞こえても、会話となると何も聞こえ
ません。
私の存在など全く意識しない自然な振る舞いは、二人の息がピッタリ合っていないと不可能で
しょう。
穏やかに広がってくる爽やかな空気の中で、私は空気のような存在だなと、可笑しくなって
きます。


[82] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/03/31 (日) 15:49 ID:rhgaMG7s No.190842



立ち上がり、振り返って窓の外の夜景を眺めます。
このホテルは何度も利用しているのですが、今夜の夜景には特別な意味があるように思える
のです。
まさか二人の性行為を観る羽目になるとは、青天の霹靂どころではないと思っても、正に事実
なのですから、以前から決められていたのかと不思議な気持になります。

腕時計に目をやると、40分を回ろうとしています。
50分に部屋を出るとしたら、直ぐにでも着替えないといけない時間です。
それも計算しての事だろうと思っていると、ドアの開く音と共に、急ぎ足で二人が戻って来ます。
振り返った私の目には、体にバスタオルを巻き付けたいずみ、同じように腰に巻いたタクマさんが、
満面の笑顔で手を繋いでいるのです。

タクマさんが、

「時間がないので・・・少し待って下さい」

いずみは、小さくウインクして、

「ごめんなさい・・・できれば窓の外を・・・」
「あっ?そうだね。気が付かなくて済まないね」

それには返答もありません。
時間厳守は崩すことはできないとタクマさんに言明しているいずみですし、私がいるのですから、
迂闊にその時間を変える事などできない筈です。

少しの時間がとても長く感じられます。
二人は話すこともなく、着替えに集中しているのでしょう。
特に緊迫感は感じないのですが、何となくそうだろうと意識が働きます。

「完了です・・・戸田さん、どうでしたか?」
「タクちゃん、感想を求めるなんて、失礼でしょ?・・・戸田さん、ごめんなさい」
「あっ?いやいや、お役に立てたかな?はははっ」
「えぇ、ほんとにありがとうございました・・・いずみちゃん、これでいいよね?」
「もう!ダメでしょ?まだまだこれからなの、私に免じて許して下さいね」
「はははっ、頼もしいね。金(かね)のわらじどころじゃないね?」
「歳の差?一つどころじゃないってことね?」
「気を悪くしたかな?」
「うふふっ、おかしな人だわ、戸田さんって」
「いずみちゃん、時間が・・・」
「ホントだ!・・・どうしますか?」
「部屋に戻ってもいいんだが、一度外の空気に触れたいかな?」
「分かりますわ、うふっ・・・じゃ、ロビー迄ご一緒します」


下りエレベーター内での様子は、部屋に向かう時とは違って、腰に手を廻すほどの密着感は
ありません。手を繋いで見つめ合いながら、時折、私にも柔らかな視線を送ってきます。
エレベーターの狭い空間に幸せの光が広がってくるようです。
いずみが妻でなければ、こちらまでその光のお裾分けに浸れるのですから、演技とも思えない
自然な振る舞いには、不思議な気持になってきます。
私の軽い気持ちがキッカケですが、自然体の様子を見せるのは、いずみは使命だと思っている
のかもしれませんし、今後の事も含めて私へのアピールなのかもしれません。

一言も話さず笑顔を絶やさない二人の時間も、エレベーターがロビー階に着いた時に、終わりを
告げます。


[83] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/03/31 (日) 17:02 ID:rhgaMG7s No.190846



二人に続いてエレベーターホールに出ます。

「じゃ、僕はここで・・・」
「今夜はお付き合い頂き、ありがとうございました」
「ご丁寧に・・・まぁ、こんなことはそう再々あるものじゃない、いい経験をさせてもらい
ましたよ」
「そう言って頂ければ・・・タクちゃん、お礼を言いなさいよ」
「えっ?・・・いずみちゃんが代弁してくれたので、いいかなって」
「ダメでしょ?・・・すみません。非常識極まるでしょ?それでも・・・これはいいかな?」
「見え見えですね?はははっ」
「うふふっ・・・時間がないので、私達はここで・・・」

繋いでいた手を放して、私の目を見詰めてそっと左手に触れます。
何かの合図かと思ったのですが、そうではなかったようです。


二人を背に、玄関ホールに歩き出した時、

「戸田さん・・・」

タクマさんが駆け寄って来ます。

「ん?・・・まだ何か?」
「話したいことが、時間を取れませんか?」
「いずみさんは?」
「僕だけです。彼女には内緒で・・・」

私の真意とは違った返答です。

「あっ?はははっ、いずみさんはどこに?」
「・・・えっ?あっ?そうですよね。チェックアウトでフロントへ、それを確認して直ぐに。
都合のいい日があれば、できるだけ早くが良いのですが」
「今夜の事で?」
「少しはあるかもしれませんが、関係ないと思って下さい」
「何か不都合なことがあるとか、僕に関係する事なら会うのもやぶさかではないが」
「問題とか、そういうことではないですから、安心して下さい」
「そう言われてもね。まぁ、先程の様子なら怖いお兄さんが出てくることもなさそうだから、
ここはタクマさんを信じることにしますか?」
「出るのならとっくに出てるでしょ?」
「はははっ、分かったよ・・・それじゃ、夜でいいね?再来週の月曜日の夜、ここのロビーで。
時間は午後6時30分に、どうかな?」
「了解です。東京にはよく来られるのですか?」
「まぁ、その時だね?食事しながら話そうか?」
「えぇ、ではその時に・・・捜してるかもしれないな?」
「大事な彼女だろ?」
「ずっとそうだといいんですが。じゃ、その時に」

少し曖昧な返答ですが、気にしないことにします。
いずみとどのような話をしているかは推測もできませんが、少なくとも私の妻ですし、そこは、
それなりの立ち位置を明確にしている筈ですから、”気にしない”と言い切れるのです。


[84] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/04/06 (土) 11:46 ID:9RWvaVJA No.191012



玄関を出て、イタリアンレストランの前を通って、なだらかな坂道を上がっていきます。
いずみが”立ちんぼ”をしていた洋品店の前に差し掛かった時、ふと気になって振り返ります。
目線の先は、午後11時前のこの時間でも、私の居る洋品店の前とは比べることもできない程、
明かりに包まれています。

手を繋いだ男女が歩道に姿を見せます。
身長差、服装などからタクマさんといずみなのは間違いないでしょう。
回りは見えないのか、見ないのか、傍を通る人には全く関心を払うこともなく、抱き合ってキス
を交わしている様に見えます。
繋いだ手をそっと放して、車道を渡るいずみの姿が徐々に影となり、見えなくなります。
その間、一度も振り返らないいずみなのですが、タクマさんは見えなくなるまででしょうか、
見送ってからJRの駅方面へと歩き出します。

私は、上の新館のホテルへの正面玄関ではなく、坂の途中に設けられている、地下一階に通じる
入口の前で折り返し、同じ歩道を下りて行きます。
残暑の季節ですが、夜はかなり凌ぎやすく汗ばむこともありません。

淫靡とは言えない性行為だったとしても、性行為に何ら変わりはありませんから、体に溜まった
その時の空気感を入れ替えるために、少し歩くことにしたのです。
歩き出した時に、いずみのパフォーマンスに気付きます。
別れ際に、私の目を見詰めて左手に触れたいずみの真意は、外の空気に触れたいと話した私への
返答だろうと推測したのです。
11時30分を回れば、タクマさんから着信があるかもしれないと聞いていたのですから、坂を下って
ホテルに着くまでには、いずみの意味するところが分かる筈です、
案の定、イタリアンレストランの前を通過して、ホテルの玄関まで帰って来た時に着信です。


『お散歩はどう?』
『余裕だね。思ったより凌ぎやすいかな?』
『うん・・・観るに堪えなかった?』
『だから言っただろ?凌ぎやすかったと、はははっ』
『良かった!あのね、アトでお部屋に行ってもいい?』
『石黒さんとの時間だからね。約束を守るのが、僕の信条なんだが』
『愛人さんとの時間を少し借りるの。サワちゃんには了解をもらっているから、あなたが良ければ
・・・』
『強制かい?』
『できれば・・・いい?』
『タクマさんから掛かってくるんじゃなかったのか?』
『だからそれまでにあなたの傍に・・・早く行きたいの』
『ん?戻らなかったのか?』
『車道を渡って見えなくなるところまで。そこからタクマさんの姿を確認したの。だから大丈夫よ』
『はははっ、直ぐ傍に居るんだろ?』
『バレた?うふっ』

振り返ると、ホテルの玄関に通じる歩道で、いずみが微笑んでいます。

駆け寄って来るのかと思いきや、レジ袋を持った左手を掲げて、私を呼びます。
5mも離れていませんから、容易いことなのですが、何か企んでいる様です。

近付くと抱き付いてきます。

「あっ?・・・ごめんね?」
「カーディガン?」
「うん・・・タクマさんと・・・でも、脱げないもの・・・あっ?あなたが脱げって言ったら、
”さにあらず”よ、うふっ」

”郷に入れば郷に従え”を地で行っているいずみです。


[85] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/04/06 (土) 18:00 ID:9RWvaVJA No.191020



「はははっ、変わり身の早さは・・・そうだな、さっき観た”逝く速さ”といい勝負じゃないか?」
「ハヤサ?・・・字が違うでしょ?比べられないと思わない?」
「はははっ、面目ない。この分野では勝てそうにないね」
「今は勝ってるでしょ?変わり身の早さって・・・when in Rome,do as the Romans do・・・
違った?」
「攻めるね。僕の心の内が読めるんだから、敵に回したくない・・・はははっ、それはないか?
僕の妻なんだからね」
「そうよ。ナニがあってもあなたの妻、だからあなたのルールに直ぐに馴染めるの。
たとえタクマさんと・・・そうだったけど、あなたの元に帰れば全て過去のことだもの」
「僕はローマ人じゃないが、”郷に入れば郷に従え”は教訓だね」
「諺でしょ?小田に戻れば、戸田じゃなくて・・・そうだもの、うふっ」
「その逆も?」
「なりすましかな?真のいずみではないの。分かるでしょ?」
「そう見えないところがいずみなんだね?はははっ」
「難しいのよ。どちらが私なのか・・・あれ?なりすましだから二面性?」

はぐらかすのも、見え透いた常套手段です。
何度遭遇しても、新鮮さを失っていないのですから、感心すること然りです。

「はははっ、呼び付けた理由を話さないのかい?」
「うん・・・ユーモラスはいいのね?いいんだ!・・・はい、これなの?」

先程のレジ袋を差し出します。

「ブラウスだろ?ワインのシミが付いた、だろ?」
「ワインって示唆したんだもの。それにカーディガンでしょ?あなたなら直ぐに分かると思った
のよ。それよりも、”あり得ない”って指摘されそうで、チョッピリ恥ずかしかったの」
「それを持ち出すのは・・・はは〜ん、これかい?」

照明を落としたウインドウの内側に飾られているノースリーブのブラウスに目をやります。
ホテルには多くの出店がありますが、ホテルの外側から見れるその店は、エントランスへと向かう
歩道に面しています。

「あのね、お洋服に気付いて立ち止まるかなって思っていたのに、寂しいでしょ?」
「なるほどね。欲しいのか?」
「この時期でも飾ってるって売れ残りでしょ?それにRLじゃないもの。クリーニングに出すって
決めていたの。でも、シミ取りの真似事はしないと、薄くなるだけでもいいもの」

私はスーツなのですが、ネクタイは外していました。
仕事では、年中同じ様な服装ですが、いずみと同じブランドではありません。
RLはカジュアル限定と決めています。

歩き出した私の左腕に、そっと右手を廻して、

「お洋服だから・・・直接じゃないから、いいでしょ?」
「先程、別れる時に手に触ったのは?」
「合図だもの。目で訴えたのよ、分かった?」
「不可抗力かい?」
「仕方なかったの。マイルールも時として破らないといけない時ってあるでしょ?
あれ?あなたみたいだわ、うふっ」
「分からなかったね、歩き出すまでは。可能な限り早く掛けてくると思ったが、変り身より
遅くないかい?」
「逝く速さとは?」
「比較もできないだろ?逝き続けるんだから、異次元だろ?宇宙人かと思ったよ、はははっ」
「そうでしょ?タクマさんの超人的な体力は異次元だもの・・・あれ?違うの?わたし?」

何かにつけて、このように話せるのは、いずみだからです。
天然の素質が、ユーモアのセンスを引き出しているのかもしれません。


[86] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/04/07 (日) 12:18 ID:LKPNupfo No.191031



エレベーターに乗っても、腕を組んでいるのですが、

「あなたとなら手を繋ぎたいのに・・・」
「はははっ、二番煎じだろ?」
「そうだけど・・・寂しいんだもの、ほんとだからね」
「無理しなくてもいいよ。先程の温もりが残ってるんだろ?」
「オンナって直ぐに醒めないでしょ?でも、あなたとなのよ、こんなのって不謹慎だわ」
「はははっ、誰だよ、お願いしたのは?」
「そうだけど、本を正せば・・・言えないかな?」
「僕かい?」
「タクマさんは何も知らないのよ。私が誘導したって思ってない?」
「あってもおかしくないだろ?真実は闇の中かい?」
「難しいな?アトでいいでしょ?時間がないもの」
「タクマさんか・・・不安だから、弁明に来たってことかい?」
「それもあるかな?」


部屋に入るなり、

「あなた、お洋服を脱いでもいい?」
「ほてりを冷ます?」
「体はそうだけど、心はあなたと共に、なのよ。信じる?」
「はははっ、これも二番煎じだが、信じたいね」
「タクマさんと接した下着も・・・体はシャワー・・・あっ?もう一度しないと。心は洗う必要も
ないの、何度逝ってもあなたのもの、信じてね?」
「あぁ、そうだね。好きにしたらいいが、時間だろ?」
「あっ?ホントだ!・・・窓側のベッドに坐ってお話しするけど、いいよね?」
「約束したのか?」
「何も・・・でも、戸田さんっていう中年のスキモノさんにセックスシーンを観てもらったでしょ?
きっと掛かってくると思うの・・・でも、いつもかな?うふっ」
「やはりそうじゃないか?暗黙の了解だろ?」
「そうかな?うふふっ・・・まだ掛かって来ないから、裸になるわね?」
「今日は二回目だね、いずみのストリップは。はははっ」

窓の傍の椅子に坐って、見るでもなくいずみに目線を向けるのですが、いずみと認識できない程、
ぼやけているのです。
いずみという名の知り得ない女性と認識したいのかもしれません。

いずみは、脱いだ服と下着、バッグなど、それとレジ袋と私の上着も併せて、クローゼットに
収納します。

弁明のためだけに、石黒さんとの時間を割いたのではないと思うのですが、もしそうなら、
11時30分過ぎに掛かってくるタクマさんとの会話を聴かせたいのだと思えるのです。
話し難いことなど何もないと宣言しても、完璧な説明など不可能に近いでしょう。
それを求めているのではないのですが、いずみ自身が納得できないと思っていたとしたら、
今回は絶好の機会です。
ところが、いずみの真意が何処にあっても、私にはどうでもいいことなのです。
今ここに居るのは、信じられるいずみなのですから、全くもって無駄な時間だと思えてきます。

「あなた、ホテルのパンフレットを取ってくれない?」
「宿泊約款だろ?」
「それ!それ!ごめんね?」


[87] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/04/07 (日) 16:00 ID:LKPNupfo No.191036



素肌にナイトウエアを着たいずみは、ベッドボードにもたれて足を投げ出しています。
その時に必要とする準備をしているのでしょう。
宿泊約款は、ハードカバーに収まっていますが、中身がその役に立つと判断したようです。

「あっ?大変だ〜!」

慌ててベッドを降ります。
クローゼットに納めたショルダーバッグから、携帯を取り出したのでしょう、右手に持って
私に見せます。

「ダメね?まだまだだわ、うふっ」
「だね、はははっ」


ベッドに戻って、先程と同じようにリラックスした様子を演出します。
ナイトテーブルに置いた携帯には目もくれずに、約款の内容を読んでいる様に見えます。

「いずみ、約款を読んでるのか?」
「うふふっ、この時間はお仕事の時間なの。タクマさんは、そう思ってるのね。
ほんとにそうなんだけど、今は偽装でやり過ごさないといけないでしょ?
だからね、作成途中の書類のチェックとか、そうだわ、今夜はこれでいこうかな?うふっ」
「楽しそうじゃないか?」
「嫌味なの?ほんと大変なんだから・・・あれ?これも二面性?」
「はははっ、二面性が多くて大変だね?」
「もう!多面性でしょ?それは今度ね?・・・あなた、ベッドの方に移動してくれない?
スピーカーにするけど、近くの方が良く聞こえるでしょ?」

いずみとの距離は、テーブルを挟んで2m程ですが、椅子をベッド寄りに移動すれば、その距離は
1.5m弱とかなり近くなります。


腕時計は、11時35分を回ったところです。

「何だか緊張するかな?うふっ」

そうは見えないのですが、内心は穏やかではないのかもしれません。
タクマさんとの会話を私に聴かせること、それは一大イベントとは思っていないでしょうし、
以前にも録音した会話を聴かせているのですから、緊張感があるとしても、それ程の事でもないと
思うのですが、性行為を見せた後となると、少なくない不安も感じているのかもしれません。

私が口を開こうとした時、静寂の中で携帯の着信音が響き渡ります。
少し引き締まった顔を私に見せてから、そっと手を伸ばして携帯を取り上げます。

「あなた、ちょこっとイヤらしいお話もすると思うけど、気にしないでしょ?」
「あぁ、良しなに。僕が話題に上るのかな?」
「かな?・・・出るわね?」

ホテルの宿泊約款はベッドに置き、携帯は左手で持ったまま、下腹部の少し上に乗せます。


『大丈夫?』

いずみの第一声は、タクマさんへの気遣いです。


[88] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/04/07 (日) 18:59 ID:LKPNupfo No.191039



『少しかな?いずみちゃんこそ、腰を抜かしていない?』
『一回だったから、もっと抜きたかったでしょ?』
『時間がなかったから。いつもよりも興奮した?』
『どうかな?誰だったっけ?お名前を聞いたのに・・・』

何度も口にしていたのですから、忘れているとは思えないのですが、特に意識していなかったと
強調したいようです。

『忘れてもいいと思うよ。仮みたいに言ってただろ?』
『そうね・・・タクちゃんは?』
『初めてだろ?戸惑ったけど、いずみちゃんの一言でスムーズにできたかな?』
『じゃ、興奮したのね?』
『眠っている様に見せるって凄いと思ったよ。それだけで興奮するとは思わなかった』
『それ?・・・ほら、お名前がないと話せないでしょ?覚えていないの?』
『そうか・・・戸田さんだよ』
『そうだったかな?・・・その戸田さんに観られてじゃないの?興奮したのは』
『それもあるかな?いずみちゃんだからだと思うけど』
『ほんと?ねぇ、戸田さんってどう思う?』
『どうって・・・中年ってイヤらしいけど、優しそうって言っただろ?』
『私じゃないでしょ?』
『戸田さんで良かったかな?いずみちゃんは美人だから、興奮して参加しないか気になったけど、
思ったよりも紳士だったね』
『私は見る余裕もなかったけど、とても冷静って感じだったわね』
『きっと初めてじゃないと思うな。慣れているように思わなかった?』
『そうかな?そうかも!うふっ』
『はははっ、お気に入りだろ?また頼もうか?』
『無理でしょ?連絡先も分からないのよ。一回限りだから興奮したのよ、そうでしょ?』
『やっぱり!いずみちゃんも興奮したんだ!そうだと思ったよ。いつもとは違っていただろ?』
『タクちゃんね、少し間違っていない?いつもっていつのいつもなの?』
『えっ?・・・いつもは・・・いつもと違うかな?』
『うふふっ、いつも興奮してるもの。だからいつのいつもでもいいの、会えば楽しいのよ、お話も
アレも、でしょ?』
『アレ?おおっ!アレが待ちきれないって、いずみちゃんのアレと話したいってムクムク大きく
なってきたよ』
『扱いてるの?何だかお声が変だと思っていたの、それなの?』
『思い出すだろ?いずみちゃんは?』
『同じよ・・・でも、妄想って好きじゃないの。物理的じゃないと、分かるでしょ?』
『物理的だろ?いずみちゃんにしてもらえないから仕方ないだろ?』
『そうね、タクちゃんだと思えばいいのね?』
『いつものように・・・いいだろ?』
『また、いつもね?・・・いいわよ。でも、私の質問に答えてから、それでいい?』
『蒸し返しなら・・・』
『そうよ。話してくれないなんて寂しいでしょ?』
『もう少し待ってくれないかな?必ず話すから』
『ほんとね?約束よ、いい?』
『僕は準備完了だよ。いずみちゃんは?』
『出してるのね?』
『いずみちゃんの大好きな大きさに近づいてる・・・あれ?もうマックスかな?』
『待ってね?・・・』

顔を上げて、困った表情を見せます。
目線は携帯に注がれていますが、時々私に顔を向けながら話しているのです。
私は何のアクションも見せません。
それは、いずみに任せているからです。

結論を出したのか、携帯を持ってベッドを手で押え脚も動かして、何かの動きを携帯の向こう側に
伝えます。


[89] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/04/13 (土) 11:10 ID:DKB63IC2 No.191187



『・・・パンツを脱いだわよ。触るんでしょ?』
『僕の指と舌が・・・あれ?いずみちゃんも話してくれないと』
『いいわよ・・・ゆっくり・・・そうよ、タクちゃん・・・あっ?待ってくれない?・・・』

私にウインクして、

『・・・大変だわ、娘が起きたみたい。後で掛けるから切るわね?』

返事も聞かずに、切ってしまいます。


「おい!おい!いいのかい?」
「寸止め?私には彼よりも大事なモノがあるって知らさないと。そうでしょ?」

ベッドを降りたいずみは、ナイトウエアを脱いで、

「少し時間が出来たから、シャワーと歯磨きね?ないと思うけど、掛かってきても知らせない
でね?」
「あぁ、そういうことなら。悪党だないずみは?はははっ」
「うふふっ、タクマさんも大事なのよ、ベッドではね。悪いオンナかもしれないけど、
彼も楽しめるんだもの、お互い様でしょ?セフレですもの、うふっ」

納得の返答に、ぐうの音も出ません。


バスルームから聞こえるシャワーの音が、タクマさんとの滓を洗い流し、いずみを再生している
ように聞こえます。

一人取り残された思いなのですが、そう待たずにいずみは抱き付いてくる筈です。
二人の会話から読み取れるのは、イヤらしい中年の私とテレホンセックスが二大テーマのようで
したが、解けない疑問も提示されているのです。
それについては、後で説明があるでしょうが、結論に達していないようですから、何も言及しない
かもしれません。

立ち上がって窓の外に目をやるのですが、先程のダブルベッドの部屋とは、夜景が全く違って
見えます。
当然下の階なのですが、見る位置が変わると景色もこれほどまでに変わるのかと、少し大袈裟
かもしれませんが、驚愕と表現したくなります。


10分が経過した頃に、いずみが戻って来ます。

「掛かってきた?」

待たせているのですから、気になるのは当然でしょうし、タクマさん以外の他の人でも同じ対応
だと思います。

「イヤ・・・いずみ、来てみないか?」
「良かったわ・・・ナニか見えるの?」

体に巻き付けたバスタオルが落ちないように、胸元を押さえています。
私の腰に手を廻して、窓の外を見るのですが、

「どこ?何が見えるの?」
「見えるだろ?見えないのは心が汚れているからじゃないか?はははっ」
「えっ?・・・あっ?そういうことね?私にも見えるからまだ大丈夫?」


[90] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/04/13 (土) 16:47 ID:DKB63IC2 No.191192



私達が窓に映っているのに、気付いたようです。

「こうして映るんだから、悪女じゃない証明みたいだね?」
「そうよ、嘘も方便でしょ?大事な人と一緒なのに、映らないなんてあり得ないでしょ?うふっ」
「タクマさんも大事だろ?」
「大事違いよ。彼となら映るのは私だけ、そうじゃない?セフレはそれだけの関係だもの。
肉欲と愛情は同じテーブルには載せれないの」
「好きでもかい?」
「うん・・・好きよ、ほんとに好きなの。でも、愛してるんじゃないもの。
話したことはないけど、彼も分っていると思うし、それ以上踏み込んでこないと思うの。
そういう関係なの、私達って。求め合う気持ちに嘘はないのよ、でもそれだけ。信じてくれる
でしょ?」

私の目を見詰めるいずみの腰に手を廻して、キスを交わします。

「バスタオルが邪魔だって怒ってるわ、いい?」

私の返事など気にならないという風に床に落として、首に両手を廻してきます。

「丸見えだぞ。カーテンを閉めろよ」

窓を覗き込む様に立っていたいずみですから、抱き寄せた時に背中が窓側になったのです。

「うん・・・」

レースカーテンと内側の遮光カーテンも開けていたのですから、近くても離れていても、
同じ高さのビルからなら、見えるかもしれません。

振り返って、カーテンを閉めます。

「・・・見て欲しいのはあなただけだもの。他の人は・・・それぞれ理由があるでしょ?
タクマさんは少し違うけど、健康維持に必要かな?うふっ」
「はははっ、潤いと癒しだろ?」
「そうかな?うふっ。あっ?いけない!彼の精神衛生に良くないわ。潤いも癒しも封印するわね?
それにしても、待たせ過ぎたかな?」
「そうだね。いずみの手腕を見せてもらうよ、はははっ」
「あなたね・・・お静かに、いい?」

先程のポジションに戻って、携帯を操作します。
タクマさんは待っていたのですから、直ぐに出ます。


『遅いなぁ。掛けようかと思っていたんだぞ』
『ごめんね?なかなか寝てくれなくて。タクちゃんの事が気になるから、急ぎ過ぎたのね。
やっとよ、ホントにごめんね』

何かにつけて”ダシ”なるものを持っているのは、かなりの強みと言えます。
その強みは、相手の弱みにもなるのですから、使い方一つで、思惑通りに進めることも不可能では
ありません。
言うまでもなく、いずみはひろ子を”ダシ”に使っているのです。

『それなら・・・続けるだろ?』
『まだ元気なの?嘘でしょ?』
『超人タクマを知らないのか?はははっ』
『信じられないわ、うふっ・・・ねぇ、もうとっくに醒めてしまったの。ごめんなさい』

語尾は、さも恐縮したようにフェードアウトさせます。
タクマさんは、一瞬言葉が出てきません。


[91] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/04/13 (土) 22:02 ID:DKB63IC2 No.191204



『・・・ほんとに?そうだろうとは思ったんだけど。いいよ、次まで溜めておくかな?』
『ほんとにごめんなさい。頑張ってくれたタクちゃんには申し訳なくて』
『もういいって・・・さっきね、戸田さんのこと、気にしていただろ?』
『いいのね?・・・戸田さん?何だった?』
『戸田さんの名前を聞いただろ?だから何かなって』

タクマさんの優しさなのでしょう、いずみのへりくだった様子から、先程の懸念に言及したのだと
思われます。
加えて、私に話しがあると言ったことにも関係があるのかと、邪推してしまいます。

考える素振りなのでしょう、直ぐに返答しません。
纏まったのか、私に顔を向けてウインクします。

『・・・気になるっていうか、あのね、オーナーのレストランに入った時ね、ほんと驚いたのよ』
『それ?話しただろ?今は無理だって』
『違うの。タクちゃんを見た瞬間よ、ほんとに驚いたのね、だから戸田さんが見えなかったの。
携帯で話しながらだったでしょ?戸田さんの肩に当たったのに、満足な謝罪もできなかったのよ。
それだけビックリしたって分かるでしょ?』
『驚愕?それとも驚天動地?』
『難しい熟語を知ってるのね?もしかしたら・・・』
『有名大卒?はははっ、話していて分からないのなら、節穴だろ?』
『やっぱり!そうじゃないかと思っていたの。タクちゃんのヘアースタイルが変わり過ぎだもの。
疑問から確信に変わったかな?だから・・・後日ね?それまでは封印しておくから、必ず教え
てね?』
『激変だろ?思うことがあって・・・いつかのいつかかな?』
『曖昧なのね?・・・ねぇ、長くなってしまったから、今夜はここまでにしたいかな?』
『いずみちゃんは忙しいから。今からも?』
『そうよ・・・聞こえる?』

傍に置いていたホテルの約款を取り上げ、ハードカバーを開いて、約款を記した用紙を携帯の
近くでパラパラとめくります。

『プレゼン用なの?』
『あるプロジェクトの計画書・・・分からないわね?』
『僕も・・・はははっ、分かる筈もないだろ?』
『そうね・・・じゃ、いいいわね?』
『いつ会えるかな?』
『いつかのいつかね?うふっ・・・一ヶ月後かしら?木下さんとの兼ね合いね?』
『そうだな・・・じゃ、連絡を待ってるよ』
『おやすみなさい・・・大好きよ、うふっ』
『同じく・・・はははっ、おやすみ』


爽やかに締めくくります。
セフレとしての資質は十分に備わっていると判断できることに加えて、粘着質な気質でもない
ことは、いずみにとっては有難いことです。
タクマさんの出自は、ある程度の推測は出来ていますが、私に話しがあるとは、皆目見当も付き
ません。

いずみの表情からは、余韻が残っている様が読み取れます。
ベッドでの後遺症ではない事は、一目瞭然です。

上手く纏められた安堵感か、ホッとした表情でベッドを降り、抱き付いてきます。


[92] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/04/14 (日) 11:13 ID:J9iEAGI6 No.191214



「上手く纏めたね」
「うん、いつもと少し違うかな?アレ?またいつもって、うふっ」
「はははっ、完璧な再現は不可能だろ?いつもの?はははっ、雰囲気が見れればそれでいいよ」
「あなたまで。いつもはいつもじゃないのよ、話していたでしょ?聞こえなかった?」
「僕達にはいつもはいつでもいつも、分かるね?」
「うん、愛してるわ」

いずみは私の膝の上に乗って、両腕を首に巻き付けているのです。

「いずみね、タクマさんじゃないからね?」
「えっ?・・・あっ?ごめんね?重い?」
「比較はしたくないが、超人タクマじゃどうあがいても敵わないからね、はははっ」
「うふふっ、そのお話しは・・・あっ?忘れてたわ。大変だ〜!サワちゃんに叱られるわ」

言葉とは裏腹に、急いでいる様には見えません。
私の頬にソフトに唇を付けてから膝から降りたいずみは、もう一つの椅子を私の右傍に移動させ
ます。

「これでいいわ・・・サワちゃんに掛けてもいいでしょ?」
「交代の連絡?遅くなったのかい?」
「少しかな?」

全く気にしていない様に見えるのは、いずみを熟知している私だからかもしれません。


『いずみさん、遅いじゃないですか?』
『ごめんね?でも、まだ12時にはなっていないわよ』
『”11時を回るかも?”って。それを信じていたのに』
『だから謝ってるでしょ?ハッキリと約束したんじゃないでしょ?』
『そうですけど・・・いつもと同じかなって。時間には厳しいいずみさんって思っていたのに、
見方が変わりそうです』
『あのね、いつもはいつも一緒じゃないのよ。いつもそうなるように努力してても、いつもそう
なるとは限らないの。いつもとはそいうものなの、分かる?』

先程の”いつも”が独り歩きしているようです。
いずみ本人も制御できなくなっている様に見えても、押し切る強い気持ちが感じられます。
石黒さんにすれば、返答の機会を探すにも、その隙も見付けられない様に感じます。

『いつもはもういいです。何時になるんですか?』
『うふふっ、怒った?』
『体がいくつあっても足らないって言うでしょ?真剣に受け止めていませんから、怒る理由も
ないでしょ?』
『お利口さんね?それがサワちゃんだものね?・・・そうね、もう少し主人と話したいから、
遅くとも1時までには、ダメかしら?』
『小田さんの声を聞かせてくれたら、いいかな?』

以前にも同じパターンがあったことを思い出します。

『待ってね?・・・』


「あなた、出てくれない?」

携帯を差し出して、”チュッ!”と頬に唇を触れさせます。
”上手く纏めてね?”と示唆しているようです。


[93] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/04/14 (日) 15:16 ID:J9iEAGI6 No.191216



『いずみが無理なお願いをしたようで申し訳ないね。後で叱っておくから』
『これってスピーカーでしょ?』
『分かっていたんだろ?』
『いつものいつもはいつもなんですね?』
『はははっ、ご明察だよ。石黒さんには隠し事などできないね』
『でしょ?いずみさんって今夜の事を詳しく教えてくれないの。小田さんとタクマさんを
遭遇させるだけ、どういう設定なのかもナニも。それなのに小田さんとの大事な時間を割かれた
のに、いつものいつもって訳の分からない言い訳なんだもの。酷いと思いませんか?』
『いずみも分っていないんだよ。成り行きで仕方なく、そう思ってくれないか?』
『勢いですね?それならありがちなことだわ・・・いずみさん!素直になりましょうね?』

携帯をいずみに渡します。

『反省してるから、そんなに責めないでよ。今夜の事は必ず話すから、もういいでしょ?』
『うふふっ、小田さんと話せたから、今夜はいずみさんに譲ります。明日の朝まで仲良くして
下さいね』
『えっ?いいの?一か月先まで会えないのよ』
『待つのも楽しいモノなんでしょ?・・・小田さん!待たせて下さいね?』

携帯を私に渡そうとして、

「おかしいわ、スピーカーにしてるのに」

顔を寄せあった二人の前のテーブルに置きます。

『いずみに聞いたのかい?自信はないが、頑張るとしておこうか?はははっ』
『いずみさんってボキャブラリーが豊富でしょ?教えられる事ばかり、尊敬しているんです
・・・聞こえます?』
『言わないでね?お鼻が高くなるでしょ?うふふっ』
『はい、今度はオッパイって言えるようになればいいですね?うふふっ』
『もう!寄ってたかって・・・あれ?あなたは言わないから、失言でした。でも、嬉しいわ、
譲ってくれたこと。何かお返ししないといけないわね』

私が割って入ります。
タクマさんと約束した日なら、その後で石黒さんと会うことは可能です。

『再来週の月曜日はこちらに来ているからね、夜の少し遅い時間に。どうかな?』
『えっ?ほんとに?・・・』
『ほんとですか?』

二人ほぼ同時に驚きの声です。

『・・・あなた、出張なの?』
『嬉しいです。何時でも待っています・・・いずみさん、特に予定はないですね?』
『分かったわ・・・その日はサワちゃん用に空けておくから。それでいいでしょ?』
『はい、お願いします。嬉しいな!』
『はははっ、纏まったようだから、僕とはその時に。いずみとは仲良くしてくれるね?』
『はい・・・いずみさん、仲良しでしょ?』
『そうね、これからも宜しくね?・・・じゃ、明日は7時前に帰るから。いいわね?』
『はい、小田さんと仲良くして下さい。おやすみなさい』
『そうね、おやすみ』


[94] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/04/14 (日) 19:17 ID:J9iEAGI6 No.191219



私の顔を覗き込んで、

「仲良く?今夜は無理って言えないもの。説明するには時間が必要でしょ?私達の時間が
割かれるもの。あれ?サワちゃんの時間を割いたのに、少し説明すれば良かったかな?」

その気もないのは、丸分りです。

「まぁ、驚いた時間だったが、時間が経つと何事もなかったように思えてくるよ」
「それって自然体ってこと?」
「タクマさんと?」
「違うの?」
「いずみかな?」
「わたし?・・・いつもと変わらない姿態を見せたかったのよ。でも、変更したから、いつもの
いつもじゃなかったの」
「そうか・・・後で聞こうか?」
「あっ?ごめんなさい。シャワーでしょ?」

私は何も話さず、立ち上がります。
私の様子が気になるのでしょう、直ぐにドレスシャツのボタンに手を掛けてきます。

「気付くのが遅くなって、ほんとにごめんなさい。怒ってないでしょ?」
「怒る?それはないよ。それ以前の問題かな?終わったことには拘らないとしても、何かの
サインは欲しかったね」
「あなたの様子は見えないし、合図もできない状況で話しだけが進んでしまって」
「後で聞こうか?納得させるのは得意だろ?はははっ」
「得意?そんなんじゃないの。いつものようにありのままに、いつもと変わらず・・・あれ?
うふふっ、空気を変えようかなって」
「はははっ、いずみ節に追加するか?」
「まぁ!久し振りだわ。懐かしい響きね、うふっ」


体を洗ってもらいながらも、心なしかいつもよりも丁寧に感じるのは、いずみが気を遣っていると
思ったからですが、本人は至って冷静に見えるのです。
そう感じるのは、私が気を廻し過ぎなのかもしれません。
それもいずみなのですから、ベッドでの弁明まで気付かない振りを通します。


「ねぇ、ベッドは?」

いずみは先程のナイトウエアを、私も同じようにナイトウエアを着ます。
考えようでは、いずみはピロートーク、私は差し詰めベッドトークかと、可笑しくなってきます。

「ん?聞く?」
「えっ?そうよね、聞くまでもないわ。ごめんね?」

先程、いずみがタクマさんと携帯で話したベッドではなく、バスルーム側のベッドに並んで座り
ます。

「あれ?脚の長さってあまり変わらないと思わない?」

本題に入る前の緊張緩和を狙ったようですが、タクマさんとの性行為を観られた後では、臆する
ものがあるのでしょう。

「ん?・・・狙いは分かるけどね、フェイントは必要ないだろ?」
「はい、指摘されるって分かるのよ。でも・・・とっかかりが難しくて・・・チュッ!うふふっ
・・・これでいいわ」
「はははっ、いずみらしく話してくれないか?」


[95] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/04/21 (日) 13:40 ID:x8bomWrk No.191376



「うん・・・レストランで話したことでしょ?観られて興奮する事ね?・・・あっ?その前に
ブラウスをワインで汚したことを話すわね」
「それか・・・ウエイトレスの女性、名前を聞いたが・・・まぁ、それはいいとしても、
前に聞いたように上手く隠すね。いずみの腕が時折見えたけど、ブラウスを脱いでいるとは
思えなかったし、カーディガンも着るんだから、何だかマジックを見ているようだったね」
「アレでしょ?直視できないものね。時々なら断続的でしょ?現実と推測のどちらが勝るか?
妄想ってそういうことでしょ?」
「なるほどね。ここでもいずみマジックかい?」
「ほんとだ!そう言えば良かったかな?うふっ」
「タクマさんがこちらを見ているから、顔を上げるタイミングが難しかったね。
そもそもワインの理由だが、飲めないのにと思うだろ?」
「あのね、タクマさんが再会を祝ってって、それで。飲めないのは知っているのよ。
それでもって、仕方なかったの、口を付けるだけならって。でも、見えなかったかもしれないけど、
腕を絡まして飲むの、何て言うの?」
「クロス呑みかな?経験がないから間違っているかもしれないが、友情の証とか言うらしいよ」
「腕を交差するから、そう言うのね?タクマさんは再会の祝福とか言ってたけど、ワインに
口を付けたのはいいのよ、直ぐにキスしてくるんだもの。”えっ?”って思った時にはワインが
ブラウスに。少しだけだったけど、シミになるでしょ?でね、カーディガンを着ることになったの。
カーディガンの着方って変だと思ったでしょ?」
「まぁ、あり得ないね。分かる人にはセンスがないと思われるだろうけど、ブラウスを脱いだと
なると、選択肢はそれしかないものね、はははっ」
「笑わないでね?あなた以外の人って鈍感なのかな?特に変な目で見られなかったわよ」
「見て見ぬ振りだろうね?それはいいから、続けろよ」

恥ずかしいという風に、抱き付いてきます。

「ねぇ、もっとくっついてもいい?」
「今もかなりだろ?乗っかるのかい?」
「それは・・・あっ?タクマさんを想起したでしょ?」
「彼とはそうしてるのかい?」
「いつもじゃないのよ。その時によるけど、してるかな?」

正直も考えものですが、嘘も方便は使って欲しくない状況ですから、納得するしかないようです。

「全て話すのは難しいとか言ってただろ?乗っかるのは思い出したからなのか?」
「うん・・・ほんと難しいでしょ?隠すとかじゃなくても、全てなんて無理って分かるもの。
だからね、話していて”あれ?”って思い出すことってあるでしょ?今のはそうなの。
あのね、乗っかるって繋がったまま・・・挿入したままでお話しするの。
セックスしてるのにしていないような、そんな状態なの」
「やはりだね。彼の体力、チン力かな?侮れないね、はははっ」
「あなたね、笑うところじゃないでしょ?ほんとは話したくないでしょ?だって、あなたに悪い
ことしてるって思ってしまうんだもの。それでもお話しする私っておかしいと思わない?」
「僕が容認しているからだろ?そう理解しているのなら今更だろ?」
「あなたは聞きたくないのは分かっているのよ。でも、話すのが私の義務なんだもの。
セフレとは所詮セフレなの。あなたとは次元が違うんだもの」
「だから話す?それでいいんだよ。僕が仮に聞き流したとしても、いずみは誠意を示したことに
なるからね。大いに発言してくれたまえ、はははっ」
「開き直ってるの?そうなの?」
「何も・・・無の境地だよ。いずみに任せているんだから、いずみの責任で行動すればいい。
間違ったことにはならないと信じているからね」
「うん、”絶対に絶対はない”ってあなたは言うでしょ?でも、声を大にして言えるもの。
”問題になるような事は絶対にない”って、何度でも言えるもの。
あれ?聞き流しって無視されてるってこと?うふっ」
「その方が好都合だろ?僕に気を遣わなくて済むからね」
「そうだとしても、セックスの詳細は話したくないかな?それなら今夜のように観られる方が
いいかな?あなたを意識せずに話すのってほんとに難しいもの。あっ?でも、独り言だと思えば
いいのね?あなたは傍に居るのに居ないと思えば・・・できるかな?できる限り事実を事実として
話すように努力するから・・・でも、聞き流す事ってできるの?」


[96] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/04/21 (日) 19:59 ID:x8bomWrk No.191386



「まぁ、その時だよ。任せると言っても僕が関与できる余地は欲しいかな?」
「うん、何でも言ってね?あなたのいずみだもの。指示とか注意事項があればそれに従うの、
それが私の誠意だもの。愛してるのはあなただけだもの」
「僕が言いたいのは、分かっていることは事前に知らせる、事後連絡なら可能な限り早く、
判断に困った時は即断しない、僕に相談してから決める、そういうことだよ。
今言ったことは一例だが、理解出来るだろ?」
「うん・・・あのね、性行為は?」
「タクマさんと楽しく過ごせるのなら、特に口出しはしないよ。セフレの範囲で最大限に
楽しめばいいからね?」
「うん・・・でも、独り言は聞いてくれるでしょ?あなたに話さないって自分を欺いている
みたいで、気持ち悪いんだもの」
「思い出せればだろ?そうだろ?」
「あれ?疑ってるの?・・・でもね、睦言って二人だけの世界でしょ?それを話すのって
勇気がいるかな?話したくないってことじゃなくて、ちょこっと恥ずかしいかなって。
分かるでしょ?」
「はははっ、お任せだよ・・・ん?恥ずかしいことを話してるのか?」
「だって・・・話すとバカにされるみたいな、あの時って愛を語るって感じなんだもの。
でも、将来とかそんなお話はしないわよ。二人で見る夢、見たい夢かな?」
「ピロートークは愛情を高めるとか言うだろ?」
「うん・・・高揚感の後で訪れる安らぎって、何にも代えがたいものなのね。それに浸かって、
あれ?ピロートークじゃないの。乗っかりトーク、ライディングトークかしら?」
「だから睦言か、なるほどね。ピローを使う時間もない程?はははっ・・・ん?乗っかりトークは
分かるけどね、ライディングトークはいずみ製かい?」
「だって、時間厳守だもの。これも絶対に譲れないでしょ?鋼鉄の心はここでも健在なんだから。
あのね、ライディングトークは思い付きなの。”get on top of him"かな?あれなの、馬に乗る
って感じなのね。だから、”riding a horse"でしょ?”どうして馬なの?”って聞かないの?」
「言わせたいのか?」
「あれ?失言?・・・気分は如何?うふっ」
「僕の比じゃないのは分かっているからね。そこから導き出せるのは?」
「わたし?・・・暴れ馬かな?そう思ったから。意味はいいでしょ?」
「遠慮しなくていいんだよ。現実を観たばかりだから、間違ってるとはとても言えないからね」
「うん・・・乗りこなせないのは分かるでしょ?一時の安息がライディングトークね、ほんの少し
なの。直ぐに暴れ出すのよ、時間厳守だから。お終いかな?」
「はははっ、短く纏めたね?・・・じゃ、鑑賞会へのアプローチを聞かせてくれないか?」

考えているのか、思い出そうとしているのか、少しのタイムラグの後、

「最初って何処からって分からないでしょ?話していてふと思い付くことってあるでしょ?」
「何かマズいことでも?」
「何も・・・何もないから、入りどころが難しいのね。そうだ!あなたの肩に当たったでしょ?
そこからだったかな?」
「何処からでもいいから進めろよ」
「うん・・・ワインでブラウスが汚れて着替えた後でね、私が驚いて当たった男性、あなたね、
その男性の事が気になるって。あっ?驚いたのはね、タクマさんと話していたの覚えてる?
何を話してるのか分からなかったでしょ?」
「説明があるだろうとは思っていたが、その理由は後日なんだろ?」
「ホントに驚いたのよ。だからあなたに・・・これはいいんだわ、ごめんね?タクマさんの
ヘアスタイルの変わりようなの。言葉を失うって言うでしょ?”えっ?”って言ったかも覚えて
いないのよ。その時にあなたの肩に当たったの」

いずみの中ではほとんど消化されていると思えるのですが、説明の難しさに直面しているようです。


[97] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/04/27 (土) 12:50 ID:U8u3oWpA No.191483



「僕の肩に当たったのが発端かい?」
「タクマさんはどう思ったのかは分らないのよ。あなたに当たっていなくても、同じだったかも
しれないわ」
「まぁ、それはいいとして、ヘアスタイルの激変を聞こうか?」
「あなたの言うように、ほんと激変なの。前はね、肩まであったのよ。それがあれでしょ?
驚愕としか表現できないと思わない?」
「はははっ、同意を求められてもね。まぁ、思うことがあってだろ?答えは分かっているのに、
しつこく聞くんだから、いずみも人が悪いね」
「木下さんから聞いていなければ、でしょ?」
「確信がないとはいないだろ?」
「うん・・・でも、本人の口から聞きたいでしょ?堅いというか、あれ?アレじゃないのよ、
お口だから。”分かってる”って、いずみの独り言でした」
「練習してるのか?はははっ」
「だって〜、本番・・・あれ?まただわ、本番違いだから。はい、そこから離れます、うふっ」
「何かあったのか?楽しくて仕方ないと聞こえるけどね」
「あなたね、私が安らげるのはあなただけなのよ。そこから見えてくるものがあるでしょ?」
「僕と一緒だから?」
「それしかないでしょ?あなたと話せる時間って多くはないもの。アレね、すれ違い夫婦って私達
の事を言うんじゃない?」
「元を正せば・・・続けるかい?」
「私でしょ?潤いと癒し・・・私が言うって真実味がないかもしれないけど、ほんと過酷な毎日
なの。だから、それが必要になるのね。でも、年末までだもの。来年からは私の思い通りに
進められるから、不要とまでは言えないかもしれないけど、必要とも言えないそんな環境になると
思うわ」
「はははっ、否定しないのがいいね。いずみの隠された欲望は理解しているつもりだからね。
セフレが必要なら話してくれていいからね。タクマさんなら進んでとは言えないが、認めない訳
にはいかないだろ?はははっ」
「うん・・・そうなるかもしれないし、他の人になるかも。でも、セフレはあなた次第、ダメなら
その時にハッキリ言ってね?あなたの指示に従うから」
「後で恨まれないか、それが心配だね、はははっ」
「うふふっ、その時はあなたが待たせてくれるんでしょ?私にはそれが最高の悦びだもの」
「話しただろ?その途中だと。石黒さんが試金石だろうね」
「話しておくわ、”しっかりさせてね”って、うふふっ」
「はははっ、情けない話になってきたから、戻そうか?」
「うん・・・だからね、お父さんの会社に入るって言えばいいのに、もったいぶってるでしょ?
あれかな、それを話すとなると、お父さんとの軋轢を話さないといけないって思ってるのかも?
でも、”何時か”って言ってたでしょ?それまでに話せる内容を整理しておくとか、でっち上げた
お話で取り繕うのか、その内容でタクマさんの私への気持ちが見えてくるかもしれないわね」
「見えない方がいいかもしれないよ。信じたい気持ちは分かるが、所詮セフレだと理解しておか
ないと、見たい景色じゃなかった時に、後悔が大きくなるからね。いいかい?」
「うん、線引きは大丈夫よ。どちらでも動揺はしない鋼鉄の心の持ち主なんだもの」
「はははっ、頼もしいね。ヘアスタイルの件は分かったとしようか?」
「タクマさんの返答待ちね?きっと希望のお仕事に就くのよ、それがお父さんの会社じゃなくても。
その理解で正しいかな?」
「待つのは得意だろ?その時まで忘れようか?」
「はい・・・じゃ、あなたに鑑賞を頼んだ経緯だけど・・・タクマさんね、さっきも話したけど、
あなたの事が気になるみたいで、チラチラ見ていたの。向き合ってるから目線って分かるでしょ?
”どうしたの?”って聞いたら、急によ、”彼に観てもらおうか?”って、切り出してきたの。
そんなお話しはしていなかったのよ。というか、カーディガンを着て直ぐだったから、何を言って
るのか分からなくて、”観てもらう?ナニを?”って言った後に性行為の事だって分ったの。
でね、”興奮したいから?”って聞いたらね、”いずみちゃんを見せたい、彼なら大丈夫だと思う”
なの。訳分かんないでしょ?でもね、私はいい機会だって思ったの。あなたの要望なんだもの、
否定なんてできないけど、そうだからって”喜んで”って言えないでしょ?
どうお返事したらいいのか、口籠ってしまったわ」


[98] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/04/27 (土) 20:08 ID:U8u3oWpA No.191487



「タクマさんから?いずみが示唆したのかと・・・それはないか、いずみから言える筈もないね」
「そうでしょ?そこは抑えて・・・うすうす気付いていたと思うけど・・・えっ?淫乱ね、
口にしたくないけど。性行為を見せたいって露出趣味があるのか気になるでしょ?
ホモじゃないって認定したのに、今度は露出プレイなんだもの。”変態の仲間なの?”って
聞きたくなったわ」
「聞かなかったんだろ?」
「聞けないもの。セフレの関係でも変態はイヤかな?性行為を楽しむ関係でも、変態って引いて
しまうもの」
「その手の趣味があるようには見えなかったね。純粋にいずみを見せたかった、それだけじゃ
ないか?」
「私もそう思ったから、渋々OKのお返事をしたの。実際は”喜んで”かな?でも、あなた以外の
人なら絶対にOKしないわよ。見た目で人は判断できないでしょ?」
「だね。”中年はイヤらしい”と言っておきながら、了承とはこれ如何にだね?」
「ホント矛盾してるって思ったけど、タクマさんはそんなの関係ないって感じなの。
私が思うことよ、見せるその行為自体に興奮する、そういう性癖じゃないかって思ったの。
あのね、観る人は誰でもいいの。観る人が昂奮すればもっと興奮できる、そういう性癖、何て言う
んだったかな?・・・性的倒錯、これね?」
「いずみも観られて興奮する性癖の持ち主だろ?タクマさんはそこまで気付いていなかったよう
だね」
「危ないかな?会う回数が多くなるとそれとなく分かってくるかもしれないから、気を付けるわね」
「普通のセフレを全うして欲しいね。普通だよ、普通だからね?」
「もう!私の暗部を見せなさいって言ってるのと同じでしょ?アレ?恥部の方が良かった?うふっ」
「はははっ、暗部でも恥部でもいいが、深入りはさせないように、いいね?」
「うん・・・そういう経緯かな?気になる事とかない?」
「いずみだろ?気にしてるのは。まぁ、僕もだが・・・話せよ」
「行為中の私の状態でしょ?」
「それしかないだろ?打合せしたのは分かるけど、その理由を知りたいね」
「元ネタは木下さんなの。あのね、次の4Pは睡眠導入剤を使いたいって、休憩の時にお話しが。
るみさんは経験があるみたいで、すんなりOKするんだもの、ほんと困ったのよ。
M.Tの調教が蘇ってくるの、あり得ないプレイだもの。絶対に受け入れられないと思ったのに、
直ぐに断れなくて、あやふやなお返事でやり過ごしたの。
でも、木下さんだけなら断り易いでしょ?お隣のお部屋に入って直ぐに抱き付いてキスしたのね。
これって効果は大きいのよ、積極的に性的な行為を仕掛けられると、ついOKしてしまうものなの。
木下さんって気遣いが半端じゃないから、”るみさんだけにしようか?”って。
私も捨てたものじゃないでしょ?」
「悪いオンナだね、いずみは。まぁ、正解だよ、悪夢が蘇ってこないとは言えないからね」
「うふふっ、それでね、私は経験がないって話していたから、”練習しようか?面白そうだろ?”
なの。木下さんに断わりを入れたことは話さなかったのね。言えないでしょ?抜け駆けみたいで。
一ヶ月後には分かることだからいいかなって。タクマさんはそんなの知らないんだもの。
私が前向きになれるように後押ししてくれたんじゃないかな?。”面白そうだろ?”は本心じゃ
ないと思うの、私を気遣ってのことだと。そう思いたいのかも?」
「仲良しだね?それはいいとして、寝たフリの感想は?」
「思っていたより楽チンだったわよ。全て受け身でしょ?フェラもテコキも何もしなくていいんだ
もの。タクマさんはほんと大変だったと思うわ。並の体力では成し得ないお仕事って感じだもの」
「誰にでもできる行為じゃない、僕には到底できない相談だよ」
「あなたに相談したかったのに?うふふっ・・・大事なあなただもの、無理は言えないわ」
「タクマさんに相談してくれないか?何なら僕からお願いしようか?はははっ」
「しないくせに!あなたってほんと能天気なんだもの。そこがいいところかな?」
「はははっ、庇ってくれるとは、持つべきものは妻だね」
「それを言うのなら、”妻”じゃなく“友”でしょ?・・・そうか?!友であり妻である、
そういうことね?」
「まぁ、いつまでもそうあって欲しいね」
「頑張ろうね?愛してるわ、うふっ」


[99] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/04/28 (日) 15:18 ID:oCUlTrYE No.191498



特に気になる程でもないのですが、推測通りか確認したくなります。

「気にするほどの事でもないんだが、僕が店を出るまでは声を掛けないと決めていたのかい?」
「どうだろ?私は振り返れないでしょ?あなたの様子はタクマさんがウオッチしていたから、
タイミングを計っていたんじゃないかな?」
「今だから言えるんだが、まさかだろ?いずみの設定通り二人の様子が観れたんだから、それで
終了なのに、追加の鑑賞会があるとは驚きを通り過ぎて唖然としたね」
「あなたってオトナだわ、表情が全く変わらないんだもの。タクマさんは”鈍感?”って思った
かもね」
「幾多の困難を乗り越えてきた実績が、顔に出てるんじゃないか?はははっ」
「自慢?・・・うふふっ、あなたらしいわ。ドーンって構られるんだもの、頼もしいの一言ね」
「褒めてるのか?あれだよ、全く繊細じゃない、鈍感極まりないの一言だよ」
「どちらでもいいの。あなたはあなた、それがあなたなの・・・チュッ!」
「これか!男を惑わす悪女いずみは?はははっ」
「木下さんには悪いオンナ、あなたには・・・何て言えばいい?うふっ」
「定義付けは要らない、可愛いオンナであればそれでいいよ」
「うん・・・いつまでもあなたのいずみだから、ご安心あれ!・・・言い過ぎね?」
「忘れないように、はははっ」
「戒めね?」
「だね。タクマさんが店内で声を掛けなかったのは、オーナーには知られたくなかった、そう思う
かい?」
「それしかないでしょ?性癖って親しい人でも知られたくないもの」
「いずみはだろ?」
「同じよ。あなただって知られたくない性事情ってあるでしょ?」
「なるほど、いずみか・・・まぁ、誰にでも付いて回る事情はあるだろうね」
「でしょ?だからお店の外で、店の中から見えないところで、あなたに声を掛けたのよ。
見え過ぎてると思わない?」
「分かり易い性格?」
「そうかな?そうだといいのに。何か隠しているでしょ?それって、見え過ぎじゃないわね」
「いずみは公明正大だろ?」
「あなたには、いつもフルオープン・・・あれ?オープン過ぎ?見え過ぎかな?」
「全て見せないところが奥ゆかしいんだろ?はははっ」
「今まではそういうこともあったかな?」
「今まで?」
「あっ?”立ちんぼ”は深く反省しています。ごめんね?」
「今夜の生々しい事象の経緯と全貌が明らかになったから、そろそろ寝ようか?」
「このままでもいい?お隣はタクマさんとお話ししたベッドだもの」
「いいのか?思い出しながら・・・はははっ、それはないか?」
「ありません!今夜は先に寝ないから、いいでしょ?」
「徹夜じゃないものね。それでも疲れただろ?」
「4Pの時とは違うでしょ?でも、少し疲れたかも?だって、激しかったんだもの、うふっ」
「主人に言う?はははっ」
「うふふっ、愛してるの・・・あなたとなら未来の夢が見れそうよ」

タクマさんと話した夢を思い描いたのか、それとも、その夢とは比べることもできない現実に
即した夢なのか、どちらにしても私との夢は、夢の夢でないことを祈りたいものです。


[100] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/04/28 (日) 22:28 ID:oCUlTrYE No.191501



翌日は土曜日です。
午前中の遅い時間のフライトなのですが、いずみ、ひろ子と同じ飛行機ではなく、意識的に
避けます。
いずみは家族三人揃ってと思っていたのですが、ひろ子にはいつもと変わらない景色を見せる
ために、午後の便を予約したのです。
このことについては、いずみと打ち合わせ済みですが、毎週末よりは少し早いフライトにします。
大阪空港での私の待ち時間を短くするためなのですが、それでも、2時間は長いと感じたのですが、
昼食を含めれば、それ程でもありません。


予定通り、7時前にいずみと一緒に客室を出ます。

「お食事って一人じゃ寂しいでしょ?」

私はホテルのレストランに、いずみはひろ子が待つPPTに帰るのです。

「ん?・・・石黒さんか?」
「譲ってもらったでしょ?お返しは必要だもの」
「それが僕との食事?」
「時間があればお部屋で。ランチはひろ子ちゃんと3人の予定だから、12時には帰して欲しいの」
「朝から?食事はいいが、その気になれないね」
「お腹一杯だから?」
「ん?・・・はははっ、それもあるかな?昨夜は特別なメニューだったからね、未だに満腹だよ」
「食べれない?朝食、それともサワちゃん?・・・うふふっ、愚問ね?」
「正直なところ、満腹もそうだが、少々疲れ気味だよ。できれば散歩でもしたいね」
「いいわね。午前中なら日本庭園もいいんじゃない?」
「石黒さんが了承してくれればだが。余計な入れ知恵をするなよ」


ホテルの玄関までいずみを送って、レストランに向かいます。
相変わらず10数人が列を成しています。
石黒さんが来る迄そう時間もかからないでしょうから、待つのは苦痛になりません。
案内されたテーブルは、料理をピックアップするには、少し離れているのですが、その反面、
客の往来を気にしなくて済みます。

少し待つのですが、一向に石黒さんは現れません。
先にと立ち上がった時に、携帯に着信です。


『ごめんね?待ってるんでしょ?』
『予定変更かい?』
『そうなの。サワちゃんね、今回は遠慮したいって。本人から話させるわね?・・・』
『そうか・・・それなら・・・』
『・・・代わりました、サワです。昨夜はいずみさんに譲ったでしょ?だから、次まで待つことに
します。お声を掛けてもらってほんとに嬉しいの。でも、お食事の後の事を考えたら、次回まで
待つ方がいいかなって。そう思ったので』
『ん?・・・散歩はダメなの?』
『えっ?・・・あれ?いずみさんはお部屋でって。違うんですか?』
『本気だったの?ジョークかと思ったわ。それじゃ・・・サワちゃん、どうする?』
『誰かさんと違って、僕はいつでも真実しか話さないからね』
『そうなの?うふっ・・・それなら大丈夫でしょ?』
『そうですけど・・・今回は・・・予定していたのに、こんなことって・・・ですから、次まで
待ちます』
『お食事の後に散歩なのよ、それならいいでしょ?』
『昨夜は、譲りたくなかったの。いずみさんだからじゃなくて、そうなんですけど、私の事情が
・・・だから・・・』
『ハッキリしないんだね?』
『昔の私に似ていない?言えないのよ、恥ずかしくて・・・そうでしょ?』
『話せない事じゃないの。でも、お食事の時に、タイミングが悪すぎるでしょ?』
『僕の事は気にしなくていいんだよ。石黒さんの気持ちが大事だからね』
『ごめんなさい・・・今回は・・・すみません』
『いいよ、二週間後迄取っておこうか?散歩は気分転換にいいからね?』
『はい、その時まで気持ちを転換させておきます。おかしい表現ですか?』
『はははっ、石黒さんらしいと言っておこうか?じゃ、その時に・・・いずみ、纏まったから
ここまでだね』
『そうね・・・サワちゃんマターだもの。お食事を楽しんでね?』
『あいよ。フライトに遅れるなよ』
『うふふっ、あなたも・・・じゃぁね?』


大阪空港に着いてすぐに食事を済ませます。
その足で、以前るみさんと入ったカフェで時間潰しです。
また会えば三回目になりますから、それはあり得ないと思いながらも、つい辺りを見渡して
しまいます。
結局、いずみとひろ子を出迎えるまでは、るみさんどころか誰にも会わないのですから、
るみさんと二回も会ったのは、奇跡に近いのかもしれません。
それにしても、いずみの実情を報告してくれるるみさんですから、非常に有難い存在だと思える
のです。


その夜は、いずみのマンションに泊まるのですが、タクマさんの事は、何に一つ口にしません。
帰ってくれば全く関係ないと言わんばかりですから、敢えて、私からも触れることもありません。


[101] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/04/29 (月) 11:56 ID:D5JiWbII No.191507



9月三週目の月曜日、タクマさんとの約束の日になります。

その日は、馴染みの製作会社と打ち合わせの予定が、既に決まっていたのです。
それを利用して、タクマさんと約束したのですが、その後、石黒さんとも会う予定ですから、
私なりにはかなりハードな時間を過ごすことになりそうです。

ホテルには午後6時過ぎに着きます。
制作会社の社長がホテルまで送ってくれたのです。

「会長がいずみさんを見かけたと言ってるんですけど、こちらに来ているのですか?」
「いつのことかな?」
「一ヶ月くらい前でしたか、濃紺のスーツ姿だったので、人違いかと思ったそうです。
小田さんが泊るホテルのロビーで、何でも男性と女性、いずみさんと三人で立ち話してるよう
だったとか」

その男性と女性は、楊社長と石黒さんだろうと推測できるのですが、確かなことは分かりません。

「内緒なんだが、まぁ、何時か分かるだろうから話そうか?」
「えぇ、是非。キャリアウーマンそのものだと言ってましたよ」
「羽田の会社から派遣されてね、あるIT関係の会社のプロジェクトに参加してるんだよ。
今年末までの予定でね」
「そうですか、大変ですね?」
「はははっ、いずみ?僕?どっちだい?」
「あっ?いずみさんだと。小田さんも大変ですね?」
「付け足しかい?あれだよ、週末は帰って来るからね。行きっぱなしじゃないよ」
「そうですか、それにしても大変じゃないですか?」
「はははっ、もう少しの辛抱だね。まぁ、辛抱強いのはいずみだろうね?」
「慣れない環境なら尚更ですね?」
「姿を見かけたら声を掛けてもいいからね?」
「えぇ、その時は躊躇せずに。小田さんのお墨付きをもらったから勇気百倍ですね」

今までも何度か、会長が見掛けたと言う情報を曖昧に否定していたのですが、現状なら何も隠す
ことはありません。
正面切って対処できるのですから、有難いものです。


予想に反して、フロントでの待ち時間も殆どありません。
チェックインを済ませ、部屋で少し時間を潰してから、約束の10分前にロビーに着く様に部屋を
出ます。
広いロビーですし、多くの宿泊客等が行き交うのですから、目を凝らしていないとタクマさんを
見逃すかもしれないと思いながら、エレベーターに乗ります。
10分前を茶化しながら、いずみが”セオリーね?”と笑顔で駆け寄って来る姿が目に浮かびます。

いずみは出張と理解していますから、タクマさんと会うことは話していません。
彼が内緒だと言っていたのですから、それに合わすことにしたのです。
いずみに話せば、不確かな疑問で悩ますことにもなり兼ねません。
何も見えない事象程、心を揺さぶられるものはないと思うのですが、当然いずみも心穏やかとは
言えないでしょうから、妥当な判断だと思えるのです。

彼とは2時間もあれば十分だろうと判断して、石黒さんには9時過ぎに連絡するつもりです。
石黒さんと会うことは、いずみも知っていますし、遅い時間になる事も承知しています。


エレベーターホールに出たところで、タクマさんが待っています。

「驚いたよ。ロビーで待ち合わせだろ?」
「玄関を入って行く戸田さんを見かけたものですから」
「かなり早く来ていたのかい?」
「あっ?それが・・・ここのレストランですね?」

口籠る理由は、食事しながら話すのだと理解します。


[102] Re: 絆のあとさき 4  小田 :2024/04/29 (月) 16:52 ID:D5JiWbII No.191510



レストランはロビーを通過せず、エレベ―ターホールから玄関前を経由して数分のところです。
夕食の時間帯ですから、客が列を成しています。
待ち時間があるのはいつもの事ですから、最後尾に並ぶのは致し方ありません。

「戸田さん、テーブルは用意していますから」
「ん?・・・それなら有難いが、ホテルに知り合いでも?」
「いえ、そうではないのですが・・・」

スッキリはしないのですが、不安定な気持ちのまま彼の後について行きます。
何度も利用していますから、このレストランが、ビュッフェスタイルなのも理解しています。

最前列の入口で待機しているウエイターに話し掛けます。

「先程お願いしたタクマです。お客さんをお連れしましたので、いいですね?」
「お伺いしています。では、ミールクーポンかお部屋番号をお聞かせいただけますか?」

振り返って、

「どちらか・・・」

飛行機とホテルを同時に予約できる航空会社系列の旅行社で予約していますが、ミールクーポンは
朝食のみを選択しています。
ですから、部屋番号を伝えて、チェックアウト時に精算することにします。

タクマさんに案内されたテーブルは、料理をピックアップするには少し不便なところですが、
話をするには最適とまでは言えないとしても、それなりに静かなエリアです。

テーブルには飲みさしのコーヒーカップが、一客置かれています。
片づけられないように依頼して、私を迎えに来たのだろうと推測できます。

レストランの入口で、”タクマ”と名乗ったことに違和感を感じるのです。
タクマさんもいずみと同じように、下の名前だと信じて疑わなかったのですが、もしかして苗字
なのか、いずみはそれを知っているのか、二つの疑問が浮かび上がってきます。

「どうぞ・・・お座りになって下さい」

レストランの入口側を背に、テーブルを挟んで向き合って座ります。

「ところで・・・」
「名前でしょ?」
「はははっ、分かるかい?」
「えぇ、戸田さんの表情に不信感が浮かび上がっていましたから」
「分かり易い?それなら注意しないといけないね」
「他の人でも同じでしょうね」
「で、話さないのかい?」
「いずみさんは下の名前です。と言っても、苗字は聞いていません。そういう交際から何を想像
しますか?」
「質問?・・・性行為を見せて興奮する性癖だとしら、そのためだけに会っている?そうかい?」
「えぇ、始まりはそうでした。今は少し踏み込んだ関係だと思っています・・・」



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