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落花枝に帰らず

[1] スレッドオーナー: ジプシー Y :2025/12/22 (月) 00:00 ID:uUBZOVe2 No.2028
コチラに流れてきました。ゆっくりと自分のペースで更新していきたいと思います。どうかよろしくお願い致します。
あらためて物語の概要です。

まず、登場する人物の紹介です。

■ 主人公:私 = 矢部 正則(やべ まさのり)

57歳。医療機器メーカー「ジェボ」営業係長。年収約600万円。
出世コースからは外れ、現在はマイペースに仕事を続けている。
性格は穏やかで真面目。典型的O型。

映画鑑賞、ウォーキング、スポーツ観戦が趣味。
学生時代は旅行研究会に所属していた。
身長165cm、中肉中背。
妻と軽自動車(ダイハツ・タント)を共有している。
ごく一般的な中高年男性。
家庭では強い愛情を持つ愛妻家。
夫婦関係はとても円満だが、セックスレスや最近では
EDに悩み 戸惑いと落ち込みを抱えている。

■ 矢部 由紀(やべ ゆき/旧姓:沢野)
54歳。隣町のスーパーでレジ業務のパート社員。B型。
明るく器量の良い女性だが、やや人見知り。
真面目で負けず嫌い、芯が強い性格をしている。
身長155cm。体型は若い頃からほとんど変わらず、
年齢より若く見られることを密かな自負としている。
華美な装いは好まず、実用的で無難な服装を好む。
黒髪ボブ、薄化粧、チノパン、スニーカー、エプロン、
自転車 のイメージ。
趣味はガーデニング。学生時代は園芸部。
綺麗系というより、笑顔が印象的な「可愛らしい」タイプ。
結婚前に地元のスナックで働いていた経験がある。

■ 夫婦の関係
お互い、「カアサン」「トウサン」と呼び合う。
長年連れ添った夫婦らしく、穏やかでのんびりとした生活を
送っている。
子どもは二人。いずれも成人し、現在は県外で勤務中。
長男:弘幸(27歳)長女:麻里奈(25歳)
郊外ニュータウンの一軒家、住宅ローンの残りはあと3年。
リフォームや外壁塗装も視野に入れており、経済的な余裕は
決して大きくない。

■ 平尾 明正(ひらお あきまさ)
57歳。「ジェボ」の関連子会社「ジェボインターナショナル」
代表取締役副社長。 推定年収約1000万円。 A型。
私と同期入社で、入社以来の唯一無二の親友。
直近4年間はスイスの関連子会社でCFOを務め、
半月前に帰国、現職に至る。
5年前、最愛の妻(直美さん)を心疾患で突然亡くしており、
現在も独り身。
ベイエリアの高級タワーマンション上層階で一人暮らしを
している。
性格は明るくユーモアに富み、天真爛漫。
人情味があり、部下からの信頼も厚い仕事のできる男。
身長172cm、やや小太り。学生時代はアメフト部。
趣味は山歩き、史跡巡り、グルメ。
現在は立場上、身だしなみにも気を配っている。
愛車はアウディのクーペ。

■私と平尾の関係
仕事上では大きな職位差があるが、私生活では何でも
言い合える親友同士。
かつては3か月に一度のペースで、飲みや日帰り温泉に
出かける仲。
私はこれまで家庭内で平尾の話題を頻繁に出しており、
由紀も平尾の人柄や過去についてはよく知っている。
また、平尾の妻 直美さんの葬儀にも由紀は参列した。
私と平尾の友情は、今後も揺らぐことはないと思っている。

【物語の説明】

私の会社の同期であり、大親友でもある平尾明正は、五年前に最愛の妻を亡くしました。
それ以来、彼はずっと、どこか空洞を抱えたまま生きているように見えていました。

海外赴任中は、異国の環境と激務に救われていたのだと思います。
しかし帰国し、慣れ親しんだ日本の日常に戻った途端、かえって孤独は色濃くなりました。
酒を飲めば笑い、冗談も言います。
それでも夜が更けるにつれ、彼はぽつりぽつりと本音を漏らすようになっていきました。

寂しい。辛い。何を楽しみに生きているのか分からない、と。

それは、親友だからこそ見せる弱さでした。
時には、私の前で涙をこぼすこともありました。

そんなある日、私たち二人で食事をしていた席で、私は半ば冗談のつもりで口にしました。
「たまには誰かと映画でも観て、ドライブでもしてこいよ」
「気晴らしは大事だ。特に今のお前にはな」

そして、勢いに任せて、さらに言ってしまったのです。
「じゃあさ……相手を、うちのカミさんにしてみたら?」

平尾は最初、完全に冗談だと思って笑って断りました。
ですが私は、「気楽に」「半日だけ」「昼食後から夕食前まで」という条件を繰り返しました。
休日の午後を、ただ昼寝で終わらせる現状を変えたい――
そんな思いが、平尾の心を少しずつ揺らしていったのです。

「……由紀さんがいいなら、その話、乗ってもいいか?」

半信半疑のまま、彼はそう口にしました。

こうして日曜日の午後、わずか5時間ほどの“デートごっこ”が始まることになりました。
それは、私が公認し、私が段取りし、私が仕掛けた時間でした。

もちろん、妻の由紀も最初は乗り気ではありませんでした。
しかし、夫の親友を気遣う気持ちと、私の頼みを受け入れ、最終的には了承してくれました。

私たちは、表向きには、何の不満もない仲の良い夫婦でした。
ただ一つ、私の中には、誰にも言えない歪みがありました。

自分でも認めたくない無力感。
それを押し殺すどころか、あえて直視し、刺激に変えようとする矛盾した欲望。
私は、その危うい期待を、最も信頼できる親友に託してしまったのです。

軽いショッピング。
映画鑑賞。
ドライブ。

本来なら、それだけで終わるはずの、取るに足らない休日でした。
しかしその選択は、三人それぞれの思惑を孕みながら、静かに日常を揺らし始めていきます。


【物語の流れ】
4年ぶりに再会した親友・平尾明正は、以前と変わらぬ明るさを
装いながら、その奥に深い影を抱えていました。
5年前に最愛の妻を亡くし、仕事では成功を収めながらも、
心の空白だけは埋まらないままだったのです。

平尾と酒を酌み交わすうち、彼は少しずつ本音をこぼしました。
寂しさ、虚しさ、生きがいのなさ・・・
そんな親友に私は何かしなければならない、と思ってしまった
のです。

そこで私は、冗談とも本気ともつかない提案をしたのです。
「うちのカミさんと、半日だけデートしてみたら?」

その言葉は、思いのほか現実味を帯びていきました。
私自身、妻との長年のセックスレスと、最近はEDにも悩んで
いたことから、その計画は次第に私の中で別の意味を持ち
はじめていたのです。

当然、妻 由紀は強く拒みました。
だが、私の苦悩と、私の親友の孤独を前に、葛藤の末に
条件付きで了承したのです。
こうして三人それぞれの思惑が、かろうじて均衡を保ったまま、
“デートごっこ”は動き出したのです。

由紀と平尾の初めてのデートは、驚くほど日常的なものでした。
駅で見送る私の胸に去来したのは、安堵と同時に 言葉には
できない喪失感でした。
何も起きていないはずなのに、心はざわついていたのです。

二人からのデートの報告は穏やかで、むしろ自然でした。
その「自然さ」が、私の中に小さな棘を残したのです。
報告の中で、私は、由紀の過去、私との結婚前の姿や、
私の知らなかった一面に触れ、遅れてきた嫉妬を覚えました。

二度目のデートでは、ほんのわずかな変化が、私の心を大きく
揺らしました。
装いの違い(ストッキングやキャミソール)、何気ない仕草、
語られなかった会話。
報告される内容は平穏でしたが、語られない部分が想像を
膨らませていったのです。

平尾から聞かされた話の中には、亡き妻との過去や 彼の趣味
であるBDSMの話をした、と告白がありました。
それを由紀が静かに聞いていたと知ったとき、私は強い動揺を
覚えました。
しかし由紀の報告からは、その話題は出てこなかったのです。

理解しようとする理性と、抑えきれない感情の間で、私は
揺れ続けました。

そんな折、娘の麻里奈が帰省し、家族で訪れたカフェで、
思いがけず二人(由紀と平尾)の痕跡に出会ったのです。
偶然の再確認は、私の中の疑念と現実を結びつけました。

三度目のデートは、電車で向かう紅葉狩りでした。
事前に二人の直接のやり取りがあったことを知り、私は怒りと
不安、そして奇妙な高揚を同時に抱えました。

デート当日、由紀は相変わらず控えめな装いで現れました。
駅前を並んで歩く二人の後ろ姿は、あまりにも自然で、
胸が締めつけられたのです。

その日、平尾は私に「デートは年内で終わらせたい」と告げて
きました。
その理由を深く聞くこともできないまま、帰路につきました。

帰宅後に届いた、デート最中の短い映像と数枚の写真。
そこに映る由紀のささやかな変化は、私の心をかき乱しました。

夕刻、由紀は予定通り帰宅し、私にデートの報告をしました。
圧巻の紅葉の景色、途中で「夫婦と間違われた」出来事。
その瞬間、平尾は亡き妻を思い出し、感情を抑えきれずに
泣き崩れたとのことでした。

その時、由紀は彼を支えながら、まだ彼の心の傷は癒えて
いないと感じ、デートのもう少し時間が必要かもしれない、と
私に言いました。
由紀の言葉に、安堵とも期待ともつかない感情を抱いたのです。

物語は続きます。


[2] Re: 落花枝に帰らず  ジプシー Y :2025/12/22 (月) 00:06 ID:uUBZOVe2 No.2029
平尾は 懐かしさで感極まったのか、こみ上げる寂しさ
からなのか、堰を切ったように泣き出したそうです。

「わたし、止めようがなかったよ・・・」

それもすすり泣くのではなく、思い切り嗚咽しながら
ポタポタと涙を落していたらしく、由紀もどうしたら
よいのか 戸惑ったそうです。

由紀の話、少々 盛り過ぎのような気もしましたが、
私は聞きました。

「ホントに 目の前でポタポタと涙が落ちて・・・」

由紀は両手を胸の前で組み、言葉を探していました。

そして・・・

「わたし、びっくりしたけど、かわいそうに思って」

「ま、男が 声出して泣いたら びっくりするわなぁ」

「んー それでね、なんていうかな・・・」

艶のある爪に視線を落としながら 由紀は言い難そうに、
それでも さらに詳しくその時の事を話してくれました。

嗚咽をもらすほど泣く平尾に、ベンチで隣に座る由紀は、
その横でどうすれば良いのか戸惑ったそうです。

たしかにこの場面、誰しも戸惑うのではないでしょうか。

「わたし、オロオロしてしまって・・・」と由紀。

そして・・・ なぜか? 無意識のうちに? 自然と? 

彼女は男泣きする平尾に手を伸ばした、伸びてしまった、
いや 伸ばすしかなかった、と。

「わたし、仕方なくというか・・・」
「平尾さんの手を握って・・・ それで ハンカチをね、
 渡してあげて・・・」
「というか・・・ うん・・・」

「うん?」私も どう返して良いのか緊張していました。

「あー 少しだけ、肩を抱いてあげた感じで・・・」

「えぇ?」 私は息が止まるような反応になりました。

「あっ、だから、なんていうかな・・・」
「横から肩だけを ちょっとだけハグ? そっと抱えた?
 みたいな・・・」

由紀は“だいた”と言ったことを すぐに訂正して、
“ハグ”“かかえた”と言い直したのがわかりました。

恥ずかしかったのか、それとも言い過ぎたと思ったのか、
少々慌てていた由紀は俯いて、ふぅーっと、溜息を
吐きました。

私は胸の奥で、予想外の焦りが一気に湧いていました。

平尾の様子を見て、横に座っていた由紀が、手を携え、
肩を抱いたという事実!

(マジか? うそやろ!)

思わぬ形で由紀と平尾が初めて触れ合ったという現実を
由紀の口から直接 聞かされてしまい、私は急激な
ショックを受けました。

いままで恋愛小説や動画やドラマの世界にあるように、
(少しくらい そうなってほしい)と思っていながら、
実際にそうなったという真実に直面すると、
何とも言えない大きな焦りが込み上げてきたのです。

ただ、ひるんだ自分を由紀に悟られてはいけない、
すぐに私は切り替えて、器の大きい、余裕のある男を
演じていました。

「まぁ、そうするのが 普通やろ・・・」
「みんな、そうするやろな・・・」 と。

私は見栄を張ってその言葉を発すると、不思議なもので、
そのシーンをイメージしているうちに、たしかに由紀の
とった行動は決して不自然ではないと思えてきたのです。

彼女がそうせざるを得ない状況だったのも、なんとなく
理解できたのです。

涙を溢す平尾の横に座って、ただ ボォーっと放っておく
わけにはいかない、彼が 亡妻のことで凹んでいることは
わかっているだけに。

だからこそ、胸の奥に ざわつきも 焦りもありましたが
違和感はなく、嘆きや怒りの感情もありませんでした。

「目の前で、男の人があんなふうになると、どうしたら
 いいのか わからないよね・・・」

あらためて そのシーンを回想していたのか、彼女の声も
低くなり沈んでいるような感じになっていました。

由紀が続けて、

「そんな時でもね・・・ 本当はこんなこと思っては
 いけなかったのだけど・・・」

「なんや?(おぃ! まだあるんか?)」と私。

「んーー、わたしね けっこう冷静にね・・・
 あー この人はまだ治ってないな、って思ってて」

私だったら慌てふためいて、まずは彼を全力で慰めること
だけに没頭して、とにかくこの場を収束させたいと思った
でしょう。

しかし由紀は平尾を慰めながらも、状況を冷静に観ていた
のです。
(女特有のしたたかさでしょうか? 怒られますね;;)

そんなことを思いながら 彼女の二重性に、別の意味で
私は胸の奥がざわつきました。

由紀は、自分のその時の気持ちを素直に話せたのか、
ここから先、語る声も幾分か穏やかになりました。

「だから、これまでしてきた平尾さんへの気晴らしとか
 元気づけも、まだ要るのかな、って」

さらに由紀は、

「でも前もね、平尾さん、もうデートみたいなことは
 終わりにしたいって・・・」

「おぉ、言うてたな」 私も駅で そのことを聞きました。

「うん、でも、あの姿 見たら、まだ早いかな って・・・
 トウサン どう思う?」

平尾が「デートは終わりにしたい」と言ってきたことに
対して、彼女なりに「時期尚早」という答えを出していた
のでした。

私は内心、願ったり叶ったりでした。

ただ私は、

「んー、その場におらんかったし、何とも言えんよ」

と、逸る気持ちを押し隠しながら、冷静さを装いました。

由紀のほうから“まだ続ける”ということを言い出した
ことに驚きながらも、むしろ それをうまく利用したいと
姑息にも考えていたのを覚えています。

つまり、デートの継続は“彼女の方から言い出した”と。

「あっ デートみたいなことだけじゃなくて、平尾さんを
 混ぜて楽しく過ごせる機会を作ってあげれば、って」

と 由紀は続けたのでした。

「そやな、まぁ えんちゃうか・・・ でも・・・
 もっと楽しませてやらんと あかんよな(笑)」

「まぁ、そうよねー」と由紀。

スリルやリスクから興奮や刺激というクスリを求めたい、
私の気持ち。
一方で、平尾のメンタルがまだ回復していないと感じる、
由紀の思い。
形や目的は違えど、デートごっこをやめられない点では、
私と由紀の意見は一致していたのです。

いつのまにか、平尾のかわいそうな話が 程よいスパイス
になり、デート報告の場の雰囲気を和らげてくれました。

その後は、お互いの入浴の時間を挟んだのですが、その
状態や空気は変わりませんでした。

風呂上り、いつもの日曜日の夜と同じように、私たちは
どちらともなくリビングに集って、バラエティ番組を
観たり観なかったり、まったりと過ごしていました。

この流れで私は、本当に聞きたかった3回目のデートの
報告を聞けることになったのです。

「あっ カアサン、ヒラと ほかにどんな話 したん?」

由紀は、今回の紅峰山からの絶景のほかに、
・平尾が海外赴任先で見た絶景の話
・平尾副社長としての仕事の話
・私と平尾の過去のエピソード(おい!)
・ウチの二人の子どもの話
・最近読んだ本の話
・ゴミ出しの話・・・

くらいかなと、淡々と簡単に報告をしてきました。

私はしっかりと聞き耳を立てていたのですが、
正直、退屈してしまうほど普通の会話がされていた
みたいでした。

が・・・

「あ、それとね・・・」と由紀。


[3] Re: 落花枝に帰らず  西門 :2025/12/23 (火) 10:30 ID:/MCCMYT2 No.2031
落花枝に帰らず、辛い(?)標題を選ばれましたね。

自分の蒔いた種で掌中の花を散らしてしまった。
しかしながら、蒔いた種から大きな花が咲いた。

悲嘆にくれるべきか、喜びを共有するべきか。

男の美学は痩せ我慢と言うらしいけれど。


[4] Re: 落花枝に帰らず  矢部 :2025/12/27 (土) 12:53 ID:ziTb7cCw No.2032
西門様 いつも深いコメントをくださりありがとうございます。
>落花枝に帰らず、辛い(?)標題を選ばれましたね。
・これまでの「覆水盆に返らず」も愛着があったのですが、読者様から意味違いでは?とのご指摘もあったので、
ニュアンスの近そうなタイトルに変えて心機一転することにいたしました。
今後もご愛読をよろしくお願い致します。

*****

「あ、それとね・・・」と、ついでに思い出したような
感じの由紀の言葉に、すでに退屈さを感じていた私は、
正直なところ「もうええわ」と投げ出したい気持ちに
なっていました。

「まだ、あるん?」
「はよ、言うて」 と私。

努めて軽いトーンで聞き返すと、由紀は少しだけ視線を
泳がせました。

「あっ・・・ それとね、趣味の話とかも」

(趣味?)

その瞬間、私の脳内のスイッチが入りました。

前回のデート報告・・・
あの時、平尾と由紀の間に生じた決定的な情報のズレ。
私を戸惑いと嫉妬の底に突き落とし、しかし一方では
その後の“賢者の時間”まで味わせてくれた、
あの不穏な話題。
その記憶が、瞬時に私の意識を支配し始めたのでした。

ここで焦ってはいけない。この話は終わらせたくない。

私は動揺を押し隠し、あくまで「親友の奇癖を笑う男」
という無関心を装いました。

「趣味? あー、カアサンのガーデニング?」
「まっ、あいつも暇やから、プランター買って野菜でも
 作ったらええのにな〜」
「カアサン、教えてやったら?」

それでも饒舌になってしまった私。

正直、続く由紀からの野菜の話やプランターの話など、
今の私にはどうでもよかったのです。
それよりも とにかく、もっとこの「話しやすい雰囲気」
を煮詰めて、彼女自身が核心を口にしやすい雰囲気を
作らなければ。

私は、これでもかと言うほど相槌を打ち、適当に笑い、

「で? ヒラはなんて言うてた?」
「おすすめの夏野菜とか、えんちゃうか?」

ところどころに私は合いの手まで挟んだりして、
一層 由紀の口を滑らかにさせていきました。

「あ、でもそんな話もしたよ(笑)トマトとか・・・」

由紀も平尾と交わした趣味トークの時間を反芻している
のか、本当に楽しそうに報告を続けてくれました。

「そんな感じかなー」と由紀。

「そうなんや・・・ オレも焼酎貰ったし、あいつに
 スコップをプレゼントしとこうか (笑)」

「あはは、それ良いかもね〜」と由紀。

ふっと話が途切れ、リビングに微かにカチリ、カチリと
壁掛け時計の音だけが響く「間」が空きました。

なんとなく潮目が変わるタイミングだ と察しました。

「あ、で、あいつの趣味のことは?」

その瞬間、由紀の表情が「ハッ」と強張ったような気が
しました。

「んーー」と彼女は口籠りました。

私は笑顔を崩さず、冗談を飛ばすような軽いトーンで
追い打ちをかけます。

「あいつ、変な・・・というか、クソ難しいことを
 趣味や、言うてるやろ〜? あはは」

「あ・・・うん、そう」
「なんか でも すごく思い入れがあるみたいよね」

由紀もどこか傍観者を装うような口振りでした。

「あ〜 やっぱり、それ話してたんか」と私。

由紀は隠すことが前提で 言い難いというよりも、
あの平尾の熱烈で哲学的なBDSM論をどう説明すれば
よいのか、その難しさに困惑しているようでした。

以前、平尾が私に語ったようなウンチクを、
平尾なりに熱く、由紀へもぶつけたのでしょう。

「相変わらずやなー (笑)」
「あいつの言っとること、ぜんぜん頭に入らんやろー」
「行動心理とか、人間の本性がどうとか・・・(笑)」

以前、平尾から聞かされた時のことを思い出しながら、
こんなことを言っては彼に怒られるのですが、私はわざと
茶化し気味に話を振っていたのです。

由紀もつられるように少し含み笑いをしながら、

「うんうん、芸術的とか倫理とか学術的にとか・・・ね」
「今日も文献や文学作品の紹介までしてくれて・・・」
「まぁ、直美さんも大変だったかもね・・・」

「あかん、あいつ病気や。 あはは!」
「いや〜 奥さんも、けっこう頭のええ感じやったしな」

こんなやりとりを由紀と数回繰り返したと思います。

平尾の真面目な探求を、私たちは夫婦の笑い話として
消費していく・・・
今思えば、人の真面目な趣味を、お笑いのネタに
しているのは良くないですね・・・ 反省です(汗)

ただ、その背徳的な連帯感に背中を押されてしまい、
私の中の「悪い虫」が目を覚ましました。

もちろん冗談のトーンにして、逃げ道は用意した上で、

「じゃぁ カアサンも、体を縛ってもらったら?(笑)」

笑顔を混ぜて、何気ない声質で、ついに禁断の領域に
踏み込んだのです。
微かな、けれど確かな期待を込めて・・・。

「ううん なんかね、平尾さんは・・・」

由紀は、下世話な冗談をまったく相手にする様子もなく、
どこか遠くを見るような目で言いました。

「体じゃなく、心を縛る、って 言ってたよ、たしか」

由紀は、そういうのが理解できないとでも言うような
口ぶりだったのが印象的でした。

「また アイツ、難しいこと言いよるな〜 あはは」

私はかろうじて笑ってみせました。

「ま、あいつも話すことができてよかったやろ。
 こんなの、なかなか人には言えんしな」
「これからも、つまらん話 聞いてやってな」

他意はなく、この時は 半分はかわいそうな平尾のことを
思っての言葉でした。
でも半分は どこか 小バカにしていたのかもしれません。

「え〜、聞くのは聞くけど、理解するの大変よー」

「わからんかっても、聞いてるフリでOKやから」と私。

笑う由紀の指先は、すでにベージュピンクの艶を落とし、
いつもの平凡無垢な爪に戻っていました。

こうして報告の時間は、穏やかに終わりました。

ずっとモヤモヤしていた“BDSMの話”が共有できた
ことで、私は確かに安堵していました。

けれど、何かが違う・・・

由紀が平尾に触れたという衝撃的な告白も、
平尾の深淵な趣味の話も、
今の私の下半身を震わせるには、至りませんでした。

喉元を過ぎれば、毒は薄まってしまったのです。

由紀が彼女の部屋に戻る背中を見送りながら、
私は 言いようのない物足りなさを感じていました。
もっとスリリングで、もっともっとリスクを求めたい
気持ちが私の中に湧き出していたのです。

そんな時に、由紀が言っていた平尾からのセリフを
思い出しました。

「体を縛るのではなく、心を縛る・・・」。

あらためて振り返った時に、この言葉は、私の心臓を
冷たく撫で上げました。
ロープや鎖よりも ずっと深く、逃げられない場所に
平尾の手が伸びているような、そんな戦慄を覚える
フレーズ。
もしかしたら由紀にも、と思うと ゾクゾクして
下半身に熱を与えてくれたのです。

そしてその翌日、平尾から連絡がありました。


[5] Re: 落花枝に帰らず  たかし :2025/12/27 (土) 23:43 ID:YGRdO8kg No.2033
矢部さんお疲れ様ま!ついに奥さまが他人棒で… 
楽しみ待って居ます.


[6] Re: 落花枝に帰らず  小太郎 :2025/12/28 (日) 05:19 ID:qSCDxKS2 No.2034
矢部さん、こちらに復活されていたんですね。
平尾さんからのBDSMの話を矢部さんに話していなかった
由紀さんの気持ち、身体を縛るのではなく、心を縛るという
平尾さんの言葉に魅せられているように見える由紀さん。
BDSMが二人を結びつけるのでしょうか?
続きを楽しみにしています。


[7] Re: 落花枝に帰らず  :2025/12/29 (月) 15:10 ID:nvTCiLfA No.2036
楽しみにしておりました。
BDSMを哲学的に語る文学青年に、母性本能、魔性性、知的感性に不倫という背徳感が加算されて沼に入り込む女の性が湧き出てくるのでしょうか。期待しております。


[8] Re: 落花枝に帰らず  倍胡坐 :2025/12/29 (月) 19:52 ID:iBUgjpcw No.2037
矢部さん、お待ちしておりました。

これまでとは違った新たな展開になりそうですね。
こちらへの移動も一読者として首肯しております。

「覆水盆に返らず」改め「落花枝に帰らず」に至るまでの
登場人物の言動には目が離せません。

特に、由紀さんの心情がどのように変化していくのか、
他のスレッドで味わうことのできない特別なものを感じています。

矢部さんの登場人物の心象描写と文章構成に引き込まれ
ささやかながらも、エールをお送りしてきたつもりです。
どうか、最後までよろしくお願い致します。


[9] Re: 落花枝に帰らず  ある男 :2026/01/10 (土) 10:20 ID:mpQV3az2 No.2044
自分の妻を置き換えて楽しめるぐらい現実的な流れがいいですね!
全部本当の事とは思いませんが妻を置き換えるのには充分です。
文学系のAIでこの物語を読ませたら絶賛でしたね。主人公の心理が現実的だと分析でした。
たのしみです。


[10] Re: 落花枝に帰らず  ジプシー Y :2026/01/10 (土) 16:29 ID:dlh6H.Uk No.2046
たかし様 コメントをくださりありがとうございます。
>ついに奥さまが他人棒で…
・うーん、まだご期待に沿うような展開にならないような気がします。(スミマセン;汗)

小太郎様 いつも鋭いコメントをくださりありがとうございます。
>平尾さんの言葉に魅せられているように見える由紀さん。
・深い言葉なので、どこかで彼女が理解できるのか、というところでしょうか。

健一様 コメントをくださりありがとうございます。
>沼に入り込む女の性が湧き出てくるのでしょうか
・エロ小説の流れなら、そうなる気がしますが・・・ どうなりますかね、
ご期待に沿えれば良いのですが。

倍胡坐様 いつも深いコメントをくださりありがとうございます。
>他のスレッドで味わうことのできない特別なものを感じています。
・励みになるお言葉をいただき、とても嬉しいです。ありがとうございます。

ある男様 コメントをくださりありがとうございます。
>自分の妻を置き換えて楽しめるぐらい現実的な流れがいいですね
・作者冥利に尽きるお言葉です、とても嬉しいです。ありがとうございます。


遅くなってしまいましたが、
いつも応援してくださる読者の皆様、明けましておめでとうございます。
相変わらず、日記のような、しかも遅筆でエロなしですが、
本年もご愛読いただけたら幸いでございます。

新春第一弾は、まさにそんな変哲もないシーンですが、アップさせていただきます。


*****


平尾からLINEで連絡があったのは翌日の午後でした。

定時で退社後、私は平尾と待ち合わせをしていました。
場所はオフィス街の裏通りにある、少し古びた、けれど
落ち着いた佇まいの喫茶店です。

深い焙煎の香りとクラシックの調べを耳に入れ、窓の外を
行き交うビジネスマンたちの姿を何気に眺めながら、
昔は良く通ったものだと懐かしさが込み上げてきました。

(読者の皆様も そんな思い出の一軒、お持ちでは?)
 
それでも私は、10数年?ご無沙汰で、この店自体があった
というか残っていたことに、安心していました。
(勝手ですよね(笑))。

今からここで平尾から3回目のデートの報告を聞く・・・

私の頭の中は、昨夜 由紀から聞いた報告と相違や漏れが
ないか、そしてBDSMについてのもっと深いやりとりは
なかったのか、といった 疑心と下心が前提になって、
彼の報告を待っていたのです。

こんな自分は正直 嫌でしたが、一方では もっと強い
刺激、スリルとリスクを求めていた、というのが本音です。

由紀や平尾の都合よりも、私自身の欲望を満たすことだけ
しか考えていなかったのです。

それでも10分弱は待ったでしょうか、平尾が向かい側の
席に座りました。

「おおっ 早いな! すまん すまん」駆け込んだ平尾。

相変わらず忙しそうな彼の口からは、早速 仕事の愚痴、
特に取引先との契約とかバタついているみたいで、
私の職位では到底味わうことのないプレッシャーを
彼が抱えていることは理解できました。

仕事の話や「そういえばあいつは」といった同期社員の
消息話、定番の話題を終えて、平尾は ひとくちコーヒー
を含み 切り出しました。

「で・・・昨日は、本当にありがとうなー!」
「由紀さんに感謝してもしきれんで。 疲れてたやろ?」

「え? おい! カミさんだけか? (笑)」

私は、とぼけて 笑いを誘いながら雰囲気を整えました。

「おおお! そうやった、ヤベちゃんにも感謝や!」

平尾も前回同様、話し難いトーンではありませんでした。
こんな感じの、ざっくばらんな空気の中・・・

「大体のことはカミさんから聞いたけど、どうやった?」

という私からの誘い水から 平尾の報告が始まりました。

「人が多かった、絶景やった、意外に歩いたで・・・」

「駅弁代は? 交通費は?」と私。

「えーよ、そんなん・・・」

私にとっては面白みもなく、このあたりのことは 昨夜、
由紀から聞いた内容だっただけに、微笑みながら頷いて
この場の雰囲気を壊さないことだけを考えていました。

「いや、あいつも楽しかったみたいやで・・・」
「紅葉、綺麗やったって喜んどったわ」

私は努めて明るく、余裕のある姿を演じていました。
彼が自分の失態(号泣)を語らない以上、私から
「泣いたそうやな」など 野暮なことは聞かない、
それが大人の そして唯一無二の親友としての計らいだ、
と思っていました。

「ホンマ、由紀さんは聞き上手やな〜」
「聞いてくれるだけで、めっちゃ救われたで・・・」

平尾がふっと目を細めたのです。
そして続けて、

「年甲斐もなく、甘えすぎてしまったかもしれん。
 嫁ハン(直美さん)のことを思い出したんや・・・」

彼が言いかけた言葉を、私は手を振り制しました。

「ええんよ〜 そのための気晴らしやろ・・・
 カミさんも、そのへん心配しとったで〜」と私。

平尾は少し伏せ目がちに コーヒーを一口啜ると、
カップをソーサーに置くカチリという乾いた音とともに、
静かに切り出しました。

「いや そうやから、やっぱり このデートは今年限りに
 しようと思うてるんよ・・・」

昨日の駅前でも聞いた、彼からの一方的な終止符の提案。

「どういうことや?」 との私の問いに、

平尾は、私たちがこうして優しく寄り添ってくれれば
くれるほど、甘えてしまう、と。
3回も続けば、次は もっと、と期待をしてしまう、と。
結局、その反動で 寂しさを増幅させることになる、と。
そんな感じのことを返してきました。

反動とか 増幅とか、それはそれとして・・・

その時 私は、なんとなくですが、もしかしたら彼が
由紀という存在を「特別視」し始めているようにも
思えたのです。 だから彼なりに身を引くのだと。
(これは、もちろん想像です。)

女房の存在を特別視する親友・・・

店内のクラシックの優雅な旋律とは裏腹に
私の体の中は毒々しい熱が脈打ち始めました。
一方的な私の思い ということもあるのですが、
本来は、多少なりとも嫉妬を感じる場面ですよね?
ですが、私の背中がゾクゾクソワソワしてきたのを
覚えています。

私は、まだ反動がある とか、増幅する とかは、
彼自身が、気晴らしも 気分転換もできていない証拠だと。
今の段階は、むしろ中途半端で まだまだ回復していない、
精神的にも元気になっていない、とか “適当な”言葉で
宥めていました。

そして 結局、彼の気持ちを揺さぶったのは・・・

「昨日カミさんも まだ続けたほうが良い、って
 言ってたでー」

この時の私は、自分の言葉で由紀を平尾の懐に押し戻す
ような、奇妙な背徳感に震えていました。

私自身の言葉で、EDを治すため、いや寝取られという
昂ぶりを得たいがために、毒のあるクスリを、より濃く
より深く、しかもこの場で 彼の目の前で 精製している
という感覚。
このリスクとスリル・・・ 疎外感と被虐的な刺激は、
私の膀胱まわりから尻の穴までを縮こまらせました。

平尾は少し驚いたように眉を上げて、

「そっか・・・ うーん そっか・・・」
「由紀さんが、か・・・ やっぱり そうか、そうよな」

平尾は コロッと ガクッとした感じで頭を下げました。

「そういえば、カミさんが言うてたけど・・・」

と、私は雰囲気を崩さないように続けました。

「難しい話もしたって言うてたで、変態趣味の(笑)」

あえて冗談めかしてBDSMの話題を向けると、
平尾は苦笑いを浮かべながら頭を振って、

「アホ! ちゃうで〜 超真面目な趣味や (笑)」

と続けたのです。

「まぁ由紀さんは、全然理解できてないとは思うで」と。

その後は、

そりゃそうや とか、普通 あんな話を女にするか?
などと 私が茶化せば、
平尾もワルノリして、
いちおう嫁ハンも女やったが ホンマは男やったんかな?
など、冗談で笑わせたりと、
気の許せる親友だからできる会話を交わしました。

私は軽い揶揄を混ぜながらも、その時の由紀の反応が
どうだったのか、探りたい一心で続ける中で、

「でもな 由紀さんって・・・ホンマ すごいな」
「びっくりしたで〜」と平尾。

「なんや、縛られたいって言うてたか?」私は薄笑い。

「アホか! そんなん、言うわけないやろ (笑)」
「いや・・・ 由紀さんな、図書館まで行って・・・」

そこから続く平尾の話に、私は冗談で返せないくらいの
刺激を与えられたのです。


[11] Re: 落花枝に帰らず  小太郎 :2026/01/10 (土) 16:53 ID:QXpQYEiI No.2047
矢部さん、あけましておめでとうございます。
今年も宜しくお願いします。

由紀さんは平尾さんから聞いたBDSMを自分なりに
理解しようと図書館に赴き、調べたのでしょうか?
当初平尾さんからBDSMの話を聞いた事を
矢部さんに話さなかった事が、逆に由紀さんが
BDSMに関心を抱いている事を現していると思います。
その事を矢部さんに知られたくないと思っていたのでは?

そして亡き奥さんの代わりにBDSMを一緒に
やってあげることが、平尾さんを立ち直らせる
一番の特効薬と由紀さんが感じていたとしたら?

続きを楽しみにしています。


[12] Re: 落花枝に帰らず  :2026/01/10 (土) 17:23 ID:IH959hOQ No.2048
矢部さん、お待ちしておりました。明けましておめでとうございます。
由紀さんと平尾さんの関係性については、プラトニックのままだけど深層の部分で結びつきが深く(心を縛る)進むのもよし、と思えるようになってきました。離婚の理由としてどうなのかはわかりませんが。いずれにしても矢部さんのお考えのとおりに進んでいくと思いますし、そのことを支持いたします。楽しみにしています。


[13] Re: 落花枝に帰らず  倍胡坐 :2026/01/11 (日) 03:50 ID:RW.Dc08Q No.2049
矢部さん、年末年始はゆっくりと過ごされましたでしょうか。
どうぞ本年もよろしくお願い申し上げます。

いきなりBDSМの話をされても戸惑ってしまうのがオチ。
妻を亡くした夫の友人という特別な相手だからこそ
訳も分からぬまま一応話は聞いてみる。

だが、夫の友人の落涙を目の当たりにして、
由紀さんは改めて友人夫婦の強い絆を感じ取る。
その友人夫婦がBDSМに共通の理解を持っていたとすれば、
由紀さんなりに調べてみたいと思うのは不自然ではないと思います。

最初は単なる"ごっこ"でしたが、平尾さんはそんな由紀さんの様子から
この世にいない直美さんを由紀さんに投影するようになったのでは?

投影されていた直美さんに実像の由紀さんが取って代わるのか。
平尾さんの胸中が気になります。

そして由紀さんは?矢部さんは?
新年早々、目が離せない展開になってきたようです。


[14] Re: 落花枝に帰らず  ジプシー Y :2026/01/18 (日) 12:17 ID:ZBmwKYLI No.2059
小太郎様 いつも鋭いコメントをくださりありがとうございます。
>由紀さんは平尾さんから聞いたBDSMを自分なりに
理解しようと図書館に赴き、調べたのでしょうか?
・「理解しようとした」そこまでの理由で図書館に赴いたと思いたいです;;;

健一様 いつもコメントをくださりありがとうございます。
>プラトニックのままだけど深層の部分で結びつきが深く(心を縛る)進むのもよし、
・普通の大人の男女の付き合いですから、そんなに簡単にエロシーンにはならないのかなと(お互いがエッチ目的ではなかったので)、ご期待に沿えれば良いのですが。

倍胡坐様 いつも深いコメントをくださりありがとうございます。
>平尾さんの胸中が気になります。
・そうですねー、人の心が読めたら良いのですが・・・ 彼は本音で正直なところ、どう思っていたのですかね?


*****


「いや・・・由紀さんな、わざわざ図書館まで行って・・・」

「図書館? はぁ、次のデートの下調べか?」

平尾の口から出たその一言に、私は薄笑いで返しました。
ただ喉の奥が妙に乾き、手にしたコーヒーで無理やり湿り気を
与えていました。

「ちゃう、ちゃう!」

平尾の話をまとめると、事の始まりは2回目のデートに遡る、
とのことでした。
由紀と平尾は、お互いの趣味の話を語り合う中で、
平尾からは、史跡や温泉巡り、山登りの話に続いて、例の話を
持ち出した上に ごく自然に流れに沿うように、ただ正直 若干の
迷いもあったが、まっ えっか!のノリで、あえて得意気に・・・

・BDSMを真摯に扱った小説や主題に据えた物語、心理学的な
 研究書があり、亡妻 直美さんも時々 読んでいた
・書店や通販でも普通に入手できるし、図書館にもあると思う

などと話したらしいのです。 
その時は、彼女がガーデニングの花や野菜の名前を口にするのと
同程度に 他愛のない世間話のつもりで、彼も軽く2-3の題名を
口にしたに過ぎなかった、とのことでした。

「由紀さんな・・・ 図書館でそれ探して、わざわざ借りてまで
 読んでくれてたんよ。 オレと話を合わせるため」
「びっくりしたで! ホンマ、健気で優しい人や」

平尾はゆっくりと感心したような口調で、どこか慈しむような
表情で語っていました。
逆に私は・・・

(図書館? それって・・・まさか?)

その瞬間、昨夜の由紀の報告が、パズルのピースが嵌まるように
脳裏で繋がり始めました。

「最近読んだ本の話もした」と、彼女は確かに言いました。
私はそれを「ゴミ出しの話」などと同レベルの、色気のない
日常会話だと思い込んで聞き流していたのです。

(マジか・・・ おい! マジなんか・・・?)

但し、由紀は私に嘘はついていません。
もしかしたら 彼女にとってのそれは、平尾の心の病状を調べる
ための『家庭の医学』を開くような、純粋で献身的な動機だった
のかもしれません。
夫の大親友を救いたいという、彼女なりの生真面目な責任感?
しかし、その無防備な優しさが、結果として私には、彼女が自ら
静かに着実に、BDSMの世界に足を踏み入れているかのような
気がしたのです。

さらに脳裏をよぎったのは、こっそりと覗いた由紀の部屋の光景
でした。
散らかった小机の下に落ちていた、県立図書館の利用者カード。
あの時、私は「触れたらバレる」と手を引きましたが、すでに
あの時、由紀の手は 禁断の書物に触れていたのでしょうか?

私は、どうして その時、もっとそのカードに関心を持って
いなかったのか。 今さらながら、鈍感だった自分への悔しさが
込み上げてきました。

たとえあの時、カードの正体に気づいたところで、私に何が
できたわけでもないでしょう。 それでも私の知らないところで
由紀が自ら未知の扉を開き、私を置き去りにして平尾の趣向に
合わせるために 歩を進めていた事実に、猛烈に「出し抜かれた」
という敗北感を覚えたのです。

長年の寄り添った家族として夫婦として、由紀の思考くらいは
把握しているつもりでいた自分の傲慢さと自信過剰・・・
一方で彼女の底知れない行動力・・・
その差を見せつけられ、私はあらためて自分の無力さを知る
羽目になったのでした。

さらに、彼女が昨夜、自室へ消える間際に残した言葉が、
私の胸を抉りました。

「体じゃなく、心を縛る、って言ってたよ」
「聞くのは聞くけど、理解するの大変よー」

あの時、由紀は「難しい」と突き放しながら、実は彼女自身が
理解するために、その言葉の意味を書物の中から必死に手繰り
寄せようとしていたのでは? だから「大変」だと?

ゾクッ、と背筋に氷の柱が通ったような戦慄を覚えました。
縄で縛られるのであれば、解けば済む話です。
しかし、平尾の深淵な趣向や思想を、彼女が自ら望んで脳内に
刻み込もうとしているのだとしたら・・・?
それは、私が何十年とかけて築き上げてきた「カアサン」という
偶像が、平尾という支配者の言葉によって、内側からジワジワと
書き換えられ、縛り上げられていく過程に他なりません。

(あいつ・・・「理解できない」とか言いながら、
 裏で何してるんや・・・)

彼女の行動は、もはや好奇心などという言葉ではなく、
彼女の中に、夫である私さえ知らない、未知の世界を知りたい
欲求が芽生え始めているのでは?
そして なにより彼女をそこへ導いているのは、他でもない
目の前に座っている平尾だったのです。

「大げさかもしれんが・・・ほどほどにしとかんとヤバいで〜」
「あんな素直で優しい人が、こっちの世界に触れすぎると、
 ハマってしまって戻ってこれんようになるかもしれんしな」
「まぁ、そりゃないか・・・ 考えすぎやな あはは!」

平尾の話に私は返す言葉がありませんでした。
私は、ただ お手拭きタオルを開いたり閉じたりしながら、
薄く笑みを浮かべていました。(強がりでしょうか?)
平尾は続けます。

「ま、由紀さんみたいな 素直で素朴な人が、この世界を
 理解するのは無理やろな・・・」
「否定もせず嫌がらずに変な話を聞いて、合わせたくれただけで
 オレ的には十分や」
「ホンマ 癒されたで・・・ あはは」

そう付け加えた平尾は 冗談めかして笑い、
「トイレ 行くわ!」と席を立ちました。

「ほどほどに・・・そやな! ま、でも、そりゃないやろ〜」
「アイツ そこまで偉うないし・・・ヒラの奥さんと違うで〜」

彼の背中の声をかける私は引きつった笑顔で合わせていました。

ただ・・・胸の内は笑い事ではありません。
今、こうして私が平尾と向かい合っている間にも、
もしかしたら由紀は自宅で、図書館から借りた文献か小説かを
開いているかもしれません。
私の知らない難解な言葉を目で追い、平尾の思考をなぞり、
その意味を必死に理解しようとしているのかもしれないのです。

そう思うと、焦燥が波のように私の心に押し寄せてきました。
だが、その焦りは瞬時に形を変えて、毒々しい昂ぶりとなって
下半身を直撃したのです。
あれほど悩んでいた勃起不全が嘘のように、ズボンの下で熱い
滾りとなって、親友による妻の精神的調教を渇望するように、
力強く脈打ち始めたのです。

現実の二人が高潔・潔白であればあるほど、
私の歪んだ想像力は反動を求めていました。
もはや止まることを知らない私の悪癖が、勝手に淫らな虚像を
紡ぎ出していたのでした。
私は目を閉じると、強烈なシーンが見えてきました。

---

薄暗い部屋、揺れるロウソクの火陰。
そこには、いつものフリースやジーンズではなく、艶めかしい
レースに彩られた漆黒のスリップを身に纏った由紀がいました。


しかし彼女を美しく妖しく飾るはずの黒いスリップの上には、
無骨な麻縄が這い、サテンの光沢を強引に押し潰して深いシワを
作っていました。
彼女の身体は複雑な縄目に絡め取られ、縄が食い込むたびに、
スリップの繊細なレースも彼女の白い肌に食い込んでいました。
「理解できない」と拒絶していたはずの深紅に塗られた唇が、
苦悶に歪みながら、平尾という支配者に甘えるように喘いでいた
のです。

そして、その場を覗き見る私の目を釘付けにしたのは、
二人の間に漂う、逃れようのない「主従」の空気・・・

「もう無理です、許してください・・・お願いです・・・」

掠れた声で平尾に許しを請う由紀。
対する平尾は、いつもの穏やかな笑顔とは正反対の冷徹な
支配者の眼差しを崩さないのです。

「これまで何を学び、何を知ったのか?
それをオレに証明するまで、解放は ありえんよ」

平尾の冷ややかな宣告に、由紀の身体は微かに震え、その瞳には
哀しみと恍惚が混ざり合ってきていました。
彼女はゆっくりと首を巡らせ 闇の中に潜む私を見つめたのです。

助けを求めているような眼差しの由紀は、

「トウサン、ごめんなさい・・・」
「わたしは もう、トウサンの知らない場所へ行ってしまったよ」

と告げているかのようでした。
哀しくも どこか酔ったようなその視線が、私の心臓をわし掴みに
しました。

身体を縛られ 自らも心を縛り、いつしか私の知らない女へと
作り替えられていく由紀。
それは私にとっては恐怖であり、願望にもなっていました。
この猛毒の思考こそが、私にとって最高のリスクであり、
最高のクスリになっているのも事実でした。

---

「・・・なんや、眠いんか? 考え事か?」

戻ってきた平尾の声で、私はハッと現実に引き戻されました。
テーブルの下では、まだまだ私の下半身は熱く、ドクドクと
昂ぶったままでした。

「いや・・・ ぜんぜんそんなことないで」

特に「心を縛る」という言葉の残響に浮かされていた私は、
これ以上この話題に触れることに恐怖を覚えていました。
この先も平尾の口から、さらに私の理性を混乱させるような話が
飛び出してくる気がしたのです。

「ま、読書やら国語の話は もうええで、ややこしすぎるわ!」
「アンタらの話は アホのオレにはわからん 無理や あはは」

私は冷たくなったコーヒーを飲み干し 強引に話題を遮りました。
平尾も「あはは、そうやろな」と 穏やかに笑いました。

「それはそうと・・・これからのことやけど」

平尾の口から出た意外な提案に、私は虚を突かれました。


[15] Re: 落花枝に帰らず  小太郎 :2026/01/18 (日) 13:30 ID:LNc0beoY No.2060
由紀さんが図書館に赴いたのは、単にBDSMを理解しようと
しただけでなく、「身体を縛るのでは無く、心を縛る」という
平尾さんの言葉が、BDSMの世界では具体的にどういう行為
なのかについて知りたいという欲求を満たす為だったのでは?

平尾さんが直美さんと突き詰め、夫婦の心の絆を作ったBDSMに
由紀さんが強い興味を持ち、更に平尾さんの話を理解しようと
由紀さんが実行すればするほどBDSMにのめり込んで行ってしまう
のではないでしょうか?

更にBDSMにのめり込んで行く由紀さんを傍らで観察している
矢部さんが嫉妬と寝取られ願望が成就した歓びに浸っている間に
由紀さんが手の届かない世界に行ってしまうのでしょうか?

続きを楽しみにしています。


[16] Re: 落花枝に帰らず  ボルボ男爵 :2026/01/18 (日) 13:59 ID:1UcDUeGg No.2061
矢部さんが想像した平尾氏と由紀さんの妖しいシーン、実はすでに矢部さんが経験した
或いは目撃した、実際にあったシーンなのでは?


[17] Re: 落花枝に帰らず  西門 :2026/01/18 (日) 22:28 ID:4MTnVhA2 No.2063
今日の由紀さんの責めのシーンの迫力はSM未経験の人が想像で描写できる内容とは
思えなかったですね。
あの短い描写で、平尾氏と由紀さんはお互い心で縛り縛られていて、ジプシーY
(矢部)さんが辛くとも身を引かれたのも必然であったと納得させられました。
また、自分とは無関係に落ちた花が帰ってこないと言う意味と自分が溢した水が
お盆に戻せないと言う意味の違いを考えると覆水盆に返らずの最初の表題の方が
相応しかったとも感じさせられました。

男と女の相性は生まれた時に決まっていて、生きている内に出会えた男女は幸運、
出会えないのが普通と思って生きて来ました。自分は幸い運命の女性と出会うことが
できました。その経験から言えると思うのですが、運命の二人を二人以外の第三者が
引き離すことは不可能だと思っています。

運命の二人を出合わせてしまった結果の責任は出合わせた第三者が取るしかないのでしょう。
男の美学は痩せ我慢・・・ですよね。

  


[18] Re: 落花枝に帰らず  倍胡坐 :2026/01/18 (日) 22:40 ID:BTwZPp5. No.2064
由紀さんがいつでも「トウサン」と言ってくれるポジションに居てくれること。
矢部さんの邪な企みの大前提となっていることですよね。

これまで、矢部さんはそれを信じて疑わなかったわけですが、
由紀さんの言動や平尾さんとの会話から、ひょっとしたらとの不安がよぎる。
ふたりの間にそうした趣味の世界に共通の理解と認識が芽生えたとしたら、
由紀さんは矢部さんがコントロールできないところに行ってしまうのでは?
そんな焦燥感さえ覚える局面となりましたね。
矢部さんの心の隙間に潜んでいた慢心や油断による想定外でしょうか。

あれほど遠慮や弱気が見えていた平尾さんですが、
由紀さんの微妙な変化と歩調を合わせるように
矢部さんとの会話からも余裕が感じられるようになった気がします。

続き、よろしくお願いします。


[19] Re: 落花枝に帰らず  :2026/01/19 (月) 12:09 ID:3NdAjZac No.2065
ジプシーyさん(矢部さん)お待ちしてました。
平尾さんと由紀さんの間での性行為はなく「心を縛られる」方向へ行くのかと想像してしまいます。
身体持っていかれるよりもツライかもしれませんね。
これからの方向性や結果など楽しみにしております。続きをよろしくお願いいたします。


[20] Re: 落花枝に帰らず  たかし :2026/01/19 (月) 19:37 ID:8syAMDPU No.2066
矢部さん、なんでも体験で3週間待ってました
小太郎さんに教えていただいたおかげで
ここへたどり着きました
更新されていてうれしい限りです
小太郎さんと、ジプシーYさんに感謝です

平尾氏の気持ちに寄り添おうとしている奥様、ほんとに素敵な奥様ですね
それだけにジプシーYさんもお辛いことでしょう
がんばって続きをお聞かせください


[21] Re: 落花枝に帰らず  ジプシー Y :2026/01/28 (水) 00:14 ID:doJrnX5E No.2073
小太郎様 いつも鋭いコメントをくださりありがとうございます。
>由紀さんが手の届かない世界に行ってしまうのでしょうか?
・行ってしまうという、スリルとリスクがヒリヒリとした快感になっている感じでしょうかね。
※こちらへ移転したことを紹介してくださり、本当にありがとうございました!

ボルボ男爵様 コメントをくださりありがとうございます。
>実際にあったシーンなのでは?
・いいえ、残念ながら妄想だったのです、かなり萌えましたが;;

西門様 いつも奥の深いコメントをくださりありがとうございます。
>運命の二人を二人以外の第三者が引き離すことは不可能
・奥の深いコメントですね・・・ 染み入ります。

倍胡坐様 いつも深いコメントをくださりありがとうございます。
>そんな焦燥感さえ覚える局面となりましたね。
・そうですねー、少しずつですが、でも確実に進展している様子が伝わっていれば幸いです。

健一様 いつもコメントをくださりありがとうございます。
>これからの方向性や結果など楽しみにしております。
・ご期待に沿えれば良いのですが。なかなか進まなくて申し訳なく思っています。

たかし様 コメントをくださりありがとうございます。
>なんでも体験で3週間待ってました
・申し訳御座いません。お待たせしました。 私のわがままで、こちらに移ったことにお詫び申し上げます。


*****

平尾の口から出た意外な提案に、私は一瞬、虚を突かれました。

「それでな、今後のことやけど・・・次のデート、というより、
 オレとしては、やっぱりヤベちゃんも入れて賑やかに
『ランチパーティ』みたいなのをしたいと思ってるんや」
「ちょうどクリスマスも近いしな」

この瞬間、平尾と由紀の「二人きりの世界」を続けさせたい
という倒錯的で危険な欲と、三人が顔を合わせることで生まれる
かもしれない新たな刺激への期待。
その二つが私の中で火花を散らしたのです。

「うーん、パーティか・・・ パーティなー」

結局、私としては、3回のデート(ごっこ)を経て、
どんなふうに由紀が、どんな表情で平尾と接しているのか、
しかも このところの「密通」や「BDSM」を含めて、二人の
距離感が確実に縮まっているという、まさにスリルとリスクが、
これまでの間接的な報告とは違って目の前で確認できる機会でも
あることから、彼の提案にノッテみようと思ったのでした。

不意の提案に腹の奥が疼いた感覚になったのを覚えています。

ただ、無邪気に私が「そうやな!」と飛びつくと、平尾にその
腹の内を知られるような気がして、そこは一息入れるように
自分を促したのでした。

「そんなんより、ふつうにデートしたら、えーのに・・・」
「しかもクリスマスパーティ? エエ歳した大人が、なにが
 パーティや!(笑) しかも2週間も前やろ?」
「サンタがプレゼントでも持ってきてくれるんか?」

私はわざと茶化すような口調で立て続けに茶化しました。
もちろん余裕の笑顔を作って、おおげさに。

さらに、私は もったいぶって付け加えました。

「まぁ、カミさん次第やなー? 帰ったら聞いとくし」

夫として、そしてこれまでのデートイベントのオーナーとして、
決定権は まだ自分が握っていることを誇示するかのような、
小さな抵抗でした。

しかし、平尾はその優越感を一瞬で粉砕したのです。

「あ、由紀さんは もうOKみたいやで・・・」

彼は事もなげに言い、テーブルの上にスマホを置きました。

開かれたLINEの画面・・・
由紀から「いいですね!楽しみにしてまーす!」という、
私とやりとりをするよりも ずっと軽やかで弾んだような
メッセージが画面に並んでいました。
彼女の愛用するいつものスタンプ付きで。

(マジか・・・)

私の心臓が、ドクンと嫌な音を立てました。

私が知らない間に、私が許可を出す前に、二人の間ではすでに
約束が交わされていたのです。
「ごっこ遊び」のルールはいつの間にか書き換えられて、
私は主催者ではなく、単なる招待客の一人に格下げされたという
事実に、言いようのない惨めさが こみあげてきました。

ですが、平尾の前で狼狽えるわけにはいかないので・・・

「・・・おう、そうか!  なら、オレもOKや!」
「でも、オレもそうやけど、あいつもパーティとか、ぜんぜん
 そんなガラやないで〜 もともと地味やからな・・・あはは」

私は精一杯の虚勢を張り、さも「妻の意向を汲んだ寛大な夫」を
演じてみせました。

「いやいや ヤベちゃん、気軽で気楽なランチやで」
「とにかくサンキュー これで決まりやな」
「場所は また連絡するし」

平尾は満足げに頷き、伝票を手に取って立ち上がりました。

会計は、「ここは俺が」と言い張る平尾を説き伏せ、なんとか
割り勘にして、喫茶店の出口で別れました。
急ぎ会社に戻る平尾の背中を見つめながら、私はまだ熱をもって
痺れている下半身の久しぶりの感覚がたまらなく、
この状態を続けるために、平尾との会話を回想していたのです。

山登りに続いて平尾が用意した、新しい舞台。
図書館でBDSMを学ぶ妻、それに導く親友。
そして、すべてを知りながら二人を繋ぎ止めてしまう、
実は無力化した私。
聖なる夜(実際は早いタイミングですが)に、その舞台の上で、
一体どんなスリルとリスクが用意されているのか。
胸の中で渦を巻きながら、帰路に就きました。

玄関のドアを開けると、冷たい夜気がリビングの暖かな空気に
押し戻されました。

「おかえりー 寒かったでしょ」

キッチンから由紀の明るい声が響きます。
エプロン姿で菜箸を持つ彼女は、どこからどう見ても、長年連れ
添った献身的な「カアサン」そのものでした。

ただ、私の心は少しも穏やかではありませんでした。
平尾から聞いたあの言葉が、脳内で何度もリフレインしていた
からです。
目の前で微笑む由紀が、自ら図書館へ足を運び、BDSMの門を
叩いたという事実。
そして、彼女が平尾と またもや(私に言わせれば)「密通」を
していたという事実。

「さっき、ちょっと会社帰りに平尾と会ってたんや。
 店の中やったし、そこまで寒くはなかったわ」

それは嘘でした。
私の体は、寒さではなく、得体の知れない昂ぶりで震えていたのです。

「トウサン、お風呂先にする? それともご飯?」

「あぁ、先に食べるわっ」

食卓に並んだのは、湯気を立てる肉じゃがと焼き魚。
あまりにも平凡な いつもの夕食の風景でした。
私は箸を動かしながら、意を決して切り出しました。

「さっきな駅前の昔からある喫茶店・・・
 そこで平尾に会ったんやけど」

「あっ、なんか そうらしいね」

「え? 知ってたん? なんで?」

「さっき、トウサンが帰る5分前くらいに、平尾さんから
 LINEが来てて・・・ヤベちゃんと会ってたよ、って」
「でも平尾さん、これからまだ仕事なんでしょ?」

由紀は味噌汁を啜りながら、あっさりと返してきました。
一方で情報を伝える側が、いつの間にか伝えられる側に
回っているという奇妙な構図に、私は激しい混乱を覚え始めて
いました。

続けて由紀は、

「平尾さん、ランチパーティのことも言ってたでしょ?」

その屈託のない笑顔に、私は一瞬、言葉を失いました。
私一人がコソコソと情報を詮索し、平尾の報告を毒々しいクスリ
として摂取していたというのに、彼女は全てをオープンな行事と
して受け入れている。 
いや、そう振る舞っていただけなのでしょうか?

「あぁ、聞いたで・・・ クリスマスのやろ?」

「そそ。 それでね、場所は徳永さんのお店で、って。」

「徳永さん?」

首を傾げる私をよそに、由紀は焼き魚の身を器用に解しながら、
事もなげに言いました。

「ほら、マリちゃん(娘 麻里奈)が帰ってきたときに三人で
 行った、海沿いのカフェの。あそこのオーナーの徳永さん」
「平尾さんと大学が同じって、わたし、言わなかったっけ?」

「・・・あぁ、あの人か カフェなんとかの? だろ?」

「そそ、『ラ・メール・ブランシュ』の」と由紀。

朧気に私も思い出したのですが、その時、なぜか食卓を挟み
ながら近い距離で饒舌に語る由紀の姿が、どこか遠くに感じたの
でした。

と・・・微笑む由紀の視線がキッチンワゴンの上に、とりあえず
置かれたようなトートバッグに向けられた気がしました。
もしかしたらその中には、図書館で借りた本が入っているか?
今なら図書館の事、本の事を聞けそうな雰囲気ではありました。

(図書館、行ってるんやてな?)と、聞きたい・・・
ですが、なぜか聞けなかったのです。

私自身、彼女の部屋に忍び込んでカードを覗き見たという
後ろめたさもあり、何より、図書館の話題を口にすれば、
この「安全な背徳」という均衡自体が壊れてしまうのが怖かった
のです。

「そうやな。あの店なら えんちゃうか?」
「でも、エエ大人がパーティとか、笑えるな、マジで・・・」

適当な言葉を返しながら、気持ちは図書館の事で一杯だった私は
物分かりの良い夫の仮面を深く被り直し、冷めかけた肉じゃがを
口に運びました。

「たしかにねー! パーティとか、おおげさだよね」
「あーあ・・・ でも、何 着て行こうかな」と由紀。

表向きは、平穏なシニア夫婦の日常。けれど、食卓の下で私の
下半身は、パーティの時の由紀の「能動的な裏切り」を想像
して、じわじわと熱を帯びていました。

とりあえず夕食を終えて、洗い物をする由紀に、私はリビング
からテレビを観ながらも、チラチラと視線を送っていました。

由紀は本当に、ただの親切で図書館へ行ったのか?
それとも、平尾の語る「支配と従属」の世界に、私との生活では
得られない悦びを見出し始めているのか?
私は逸る心を抑え、平尾から聞いた情報を敢えて笑い話のように
披露しました。

「あ、そうそう、平尾な、この前のデートを最後に「もう終わり
 にしたい」とか言うてたんや。 甘えすぎてしまうのが怖い、
 とか何とか言うてな・・・」
「でもな、オレは言うといたよ。 カアサンだって「まだ続けた
 方がエエ」って言うてたで、って そしたらあいつ、コロッと
 態度変えて喜んどったわ」

「うん。わたしからもね、まだ、もう少し元気になってからでも
 遅くないですよ、って・・・ ほら」

由紀が、わざわざ自身のスマホの画面を私に差し出しました。

(何?どうしたんだ?)

私は、さも 関心なさげに “わざわざ” リビングからキッチンに
彼女のスマホを見にいってやる的な仕草で スマホを受け取りました。
画面には遠足デートの後(昨夜遅く)、平尾との間で交わされた
やり取りも残されていました。

「今日はありがとうございました、おつかれさまでした!」

「どういたしまして、たのしかったです☆」

そんな社交的な挨拶に続いて、私の眼球を焼き切るような言葉が
並んでいました。

以下はLINEのやりとりです・・・

「今回でデートごっこは終了です、ありがとうございました!」

「ぅーん、わたし的には、まだかなーって気がしますけど」

「そうですか? まだ? 」

「だって! 泣いたらアカン!!  いつまでも泣いていたら
 直美さんがかわいそうですよ!!」

「あちゃ〜 それ言われると・・・」

「がんばれ! あっくん!」

・・・眩暈がしました。

LINEという閉ざされたステージ特有の、軽やかで馴れ馴れしい
親密さ。
先ほどの喫茶店で、私が「由紀も継続を望んでいる」と平尾に
伝えた時に平尾が返した「やっぱりな」という笑み。
あれは、私の厚意を確認した返事ではなく、すでに二人の間で
意志の疎通が完了していたことを再確認した返事だったのです。

由紀は洗い物を続けており、私がスマホを覗き込んでいることを
特に気にする様子もありませんでした。
むしろ「もっと読んでいいよ」と言わんばかりの、微かな余裕の
笑みを口元に浮かべているかのようでした。

画面をスクロールすれば、図書館で借りた本についての話題も
数往復しているのが見えました。
ですが、私はそれ以上読み進めることができなかったのです。
まともに文字を追う気力すら失い、深い泥に沈むような疲労感が
全身を襲いました。
それにやっぱり 他人のスマホは 手に取って なかなかじっくりと
見れないですよね・・・

ただ、どうしても聞き逃すことができず、震える声で漏れ出た
言葉が一つだけありました。

「あっくん・・・って?」


[22] Re: 落花枝に帰らず  ざるそば :2026/01/28 (水) 00:26 ID:TvBCtreU No.2074
更新ありがとうございます。
徐々に心がザワザワするような展開になってきましたね。
スマホの画面を見せるという奥様の悪気のない態度が余計にそうさせます。
あっくんとは平尾さんのことでしょうか。
こういう何気なくあだ名で呼び合ってるのが胸にきます。
続き楽しみにしております。


[23] Re: 落花枝に帰らず  けんけん :2026/01/28 (水) 06:38 ID:zmbZVQFg No.2075
更新ありがとうございます。トオサンにLINEの内容を見せる余裕。やましいやりとりはしてないよと自負してる奥様。しかし、トオサンの言う通りあっくんにはズサリときますね。
奥様はまだデートごっこをやめたく無いという明らかな意思。この時、すでに平尾さんとBDSMを共にしないと元気を取り戻せないと覚悟したのでしょうね。
なんでしょう。このモヤモヤ感がたまりません。エロい描写が全くないのに、なぜこんなに興奮するのでしょう。続き楽しみにお待ちしてます。頑張ってください!

[24] Re: 落花枝に帰らず  小太郎 :2026/01/28 (水) 08:45 ID:qSCDxKS2 No.2076
そもそもデートごっこは矢部さん主導で進めていましたが
その主導権はすでに由紀さんと平尾さんの二人に移って
しまいましたね。もう矢部さんには事後報告という形でしか
知らされなくなってしまいましたね。

LINEのやり取りを自ら見せた由紀さんのオープンな態度が
かえってBDSMについては自分から語ろうとしない
由紀さんのBDSMへの関心を際立たせているように思います。
LINEの中身は見せるのに、トートバッグの中身はなぜ
自分から見せようとしないのでしょうか?

あっくんと愛称で呼ぶほど、由紀さんと平尾さんの距離は
とても縮まりましたね。平尾さんが直美さんとデートしていた
徳永さんのお店で、由紀さんと平尾さんの関係がより深まり
二人がBDSMの世界に入るきっかけが生まれるのでしょうか?

続きを楽しみにしています。


[25] Re: 落花枝に帰らず  :2026/01/28 (水) 12:02 ID:rJC0m3Ow No.2077
更新ありがとうございます。

「自分の妻が他の男性から、心を縛られる、」という言葉が私には最高の嫉妬、エロスを感じます。
放送禁止用語の羅列が多い昨今ですが、心と心の関係性を描写していただいたほうが興奮度が高まります。

続きを楽しみにしています。


[26] Re: 落花枝に帰らず  西門 :2026/01/28 (水) 12:29 ID:tJ32iK5Q No.2078
平尾さんと由紀さんの関係の近づき方の早さから
「遠くて近いは男女の仲」の文章が浮かんで来ました。
しかしこの文の原文は枕草子の「遠くて近きもの 極楽 舟の道 男女の仲」ですが、
平尾さんと由紀さんの関係には原文の方が生きてくるように感じます。
一方、矢部さんには辛いでしょうが「遠くて近きもの 地獄 舟の道 男女の仲」
が当てはまることになるのでしょうか。

人の人生を彩る男と女の関係の絶妙を描いてる小説ができそうで
刊行されたら売れるだろうと想像しています。
ゆっくりでいいので続けてくださるようお願いします。


[27] Re: 落花枝に帰らず  たかし :2026/01/28 (水) 15:58 ID:7INB7frA No.2079
あっくんは少々ショックですね。
ただ普段のデートの時はあっくんではないでしょう。
先日のデートの後、まだまだリハビリが必要とおもった奥様の提案では?
BDSMが趣味の副社長に対してあっくんはないですが
それをまたふざげるように、わざとくだけた感じになるように
あえてあっくんって呼びますね、と提案されたのだと思います。
そうしていつか明正さん、最後にはご主人様とよばれるのでしょうか?!


[28] Re: 落花枝に帰らず  けんけん :2026/01/29 (木) 06:32 ID:ZGMCHmXo No.2080
おはようございます。あっくんと言う言葉が気になっていましたが、その前に図書館で借りた本についてのやりとりがLINE画面であったとの文章のほうがめっちゃ気になってきました。その内容も読んで欲しかった!
奥様、無防備過ぎなのか、旦那さんへの警告なのか。私と平尾さんはここまで仲良くなっているのをみせしめているのか。止めるなら今のうちだよなのか。
うーむ、奥様の心情が気になります。
2回目の感想失礼しました!

[29] Re: 落花枝に帰らず  :2026/01/29 (木) 09:56 ID:nvTCiLfA No.2081
おはようございます。けんけん様が「その前に図書館で借りた本についてのやりとりがLINE画面であったとの文章のほうがめっちゃ気になってきました」とのご意見に同意です。
このあとの展開に差しさわりがあるようでしたらこのままで構いませんです。


[30] Re: 落花枝に帰らず  倍胡坐 :2026/01/31 (土) 23:04 ID:4/0Rj05. No.2084
由紀さんと平尾さんの報告やLINEのやり取りから
この二人が何をしてどんな会話をしたかを知ることで、
むしろ、矢部さんの焦燥感が緊迫してきたようですね。

図書館で借りた本などのBDSМに関する話題を通じて、
もはや矢部さんが介在しなくても二人の親密度は上がっています。
矢部さんが言うところの「密通」の度合いが気になるところです。

とはいえ、由紀さんは当初の気持ちのままなのかも知れませんし、
平尾さんも大層な気持ちを持っていないのかも知れません。
ですが、そんな二人の人間同士がある関係性を持つようになった時、
本人たちの意思とは別なところでその関係性が変化することもありえます。

それが、対等なのか支配や服従なのかはわかりませんが、
平尾さんに悪意はないとしても
知らず知らずにそうした関係性に変質してしまうかも知れませんね。

登場人物たちの内面の変化を興味深く拝読しています。


[31] Re: 落花枝に帰らず  ジプシー Y :2026/02/03 (火) 09:53 ID:O9vCgp6. No.2088
ざるそば様 いつもコメントをくださりありがとうございます。
>徐々に心がザワザワするような展開になってきましたね。
・そのように思っていただければ良いのですが、期待外れになったら申し訳ありません。

けんけん様 いつもコメントをくださりありがとうございます。
>LINEの内容を見せる余裕。やましいやりとりはしてないよと自負してる奥様
・そうですね、いわゆる「天然」ってやつだったのかもしれないですね。 結局、騒いでいたのはダンナだけだった??
>図書館で借りた本についてのやりとりがLINE画面であったとの文章のほうがめっちゃ気になってきました。
・今回、アップデートしたように、あっさりした内容でした。。。

小太郎様 いつも深いコメントをくださりありがとうございます。
>その主導権はすでに由紀さんと平尾さんの二人に移って
しまいましたね。
・たかが3回のデートでこんな構図になるとは想定外でしたね。

健一様 いつもコメントをくださりありがとうございます。
>心と心の関係性を描写していただいたほうが興奮度が高まります。
・期待に沿えれば良いのですが・・・(汗)今後もご愛読をよろしくお願い致します。

西門様 いつも奥の深いコメントをくださりありがとうございます。
>「遠くて近きもの 地獄 舟の道 男女の仲」が当てはまることになるのでしょうか。
・うーん、地獄ですか・・・いつもながらの奥の深いコメントですね。地獄に見える極楽か、天国に見える地獄なのか・・・

たかし様 いつもコメントをくださりありがとうございます。
>普段のデートの時はあっくんではないでしょう。
・はい、全くその通りです。鋭いですね、LINEだけで使ったのでした。

倍胡坐様 いつも鋭いコメントをくださりありがとうございます。
>本人たちの意思とは別なところでその関係性が変化することもありえます。
・動き出したら早いのではないでしょうかね、文才がなく遅筆なので申し訳ないですが、掲載できるようにガンバリます。

■今回は薄い内容です。読者の皆様、申し訳御座いません。



(あっくん・・・って?)

妻のスマホを見て「あっくん・・・って?」とズバリ聞くのは
弱気な自分、動揺している自分を思い切りさらけ出すような
気がして、だから遠回しに何気ない口調で由紀に聞いたのを
覚えています。

「え!あっくん? ヒラのこと? アイツ いちおう副社長やで」

そんなふうに、むしろ私は 笑顔さえ浮かべて聞いていたのです。

「そう、なんかね、昔 奥さんに そう呼ばれてたんだって」

と、こちらも あっけらかんとした口調で返してきた由紀に、

「あはは、あいつが呼んでくれって カアサンに言うたん?」

「そんなわけないよ、初めてよ。 LINEだし良いかなーって
 ・・・ ・・・ やばかったかな?」

「えんちゃうか? アイツ単純やし・・・ 怒ってないんやろ?」

「うん・・・ でも、副社長さんに失礼だったかもね」

こんな感じで、特に二人の仲が深まったとか、
どちらかが呼びたい、呼ばせたい、呼んでほしい、という
ものでもなく、単なる由紀のLINE上のアドリブだったのです。

「また会った時に呼んだら、えんちゃうか?」と更に煽ると、

「無理無理、口には出せないよ〜」と由紀。

それでも私は、二人の仲の濃度が思ったよりも薄かったことに、
ひとまずは深く安堵しました。
しかし、その安堵が喉元を過ぎると、次は耐え難いほどの空虚さ
が襲ってきたのです。
やっぱり私は、自分の妻が親友と深い仲になり、やがては蹂躙
される悪夢を、どこかで期待しているのでした。

結局は、スリルとリスクがないことに安心しながら、
逆にあってほしいと願ってしまう・・・
小心者であるがゆえの、微妙かつ揺れる心理状況だったのです。

さて、読者方からのご質問にあった、
「図書館で借りた本についてのLINEでのやりとり」ですが、
こちらも「あっくん」の件同様に、あっさりしたものだったと
記憶しています。

由紀:「○○という本、図書館にあったので借りました☆」

平尾:「え! ハッキリ言って、面白くないよ(汗)」

由紀:「本自体は綺麗でした、借りた人いないのかも(笑)」

平尾:「あっちゃー!!」とスタンプ

由紀:「ではでは、お仕事がんばってくださいね!」

平尾:「ありがとうございます」のスタンプ。

ほぼ、こんなあっさりした感じだったと思います。
平尾は、仕事が忙しかったのか、それとも もしかして、由紀の
深入りを避けるように気を遣い、あえて語り合わなかったのか、
LINE文面を見る限りでは、由紀も食いついている感じでもなく、
お互いが事実を淡々と伝えていただけのように見えました。

こちら成人小説サイトでの投稿でもあり、展開的には私たち夫婦
と平尾、この三人の関係性は、四六時中 愛欲や性欲に浸りながら
疑心暗鬼で 駆け引きのある中で、直接的で刺激的なBDSMの
やりとりがLINE画面で繰りひろげられる流れにならないと
いけないのですが・・・

実際の矢部家の生活リズムの中でも、結局は 平尾の存在は、
あくまでもOne of them であり、読者の皆様には少々どころか
かなり物足りない展開に感じられるかもしれません。
(申し訳ありません)

ただ現実的には、巷のエロ小説のように、そんなに都合よく
ドラマチックに、スリリングにエロティックにはならない
のでは、と思ったりもしていました。

特に、年末になると、普段から会話の少ない私たち夫婦間でも
それなりに会話が発生するわけで、
たとえば、年賀状 今年は何枚にする? とか、
カアサン(由紀)の実家には何日に帰る? トウサンは?とか、
弘幸(息子)や 麻里奈(娘)は いつ帰省する?とか、
来年は町内会の当番(班長)が回ってくるから大変だ とか、
エアコンのフィルター大掃除は業者さんにお願いしたほうが?
などなど、
おそらくは皆さんのご家庭と変わらない雰囲気であり、
行動としても、私は通勤 もしくはリモート、由紀はパート、
年末だけに、お互いに忙しくなって、「今年もバタバタだ〜」と
彼女がボヤいていたのが、むしろ毎年のこととして、安定が実感
できる、そんな我が家の状態でした。

ただ常に私の気持ちの中には、クリスマスのランチパーティの
ことや、由紀の図書館通いのこと、もしかしたら下着が
変わっていないか? など、例年にはない プラスアルファの思考が
程よいスパイスになっているのは確かでした。

由紀は外から見る限りでは、全くと言って良いほど、変化がなく
いつも通りの50代の平凡な主婦に見えました。
(結局、そんなもんでしょうね・・・;;)

一度だけ? 例のパーティの話題が出たのですが、2往復程度の
中身のない内容でした。
たしかその時には、平尾は12月なのに海外出張している、という
話もしたような気がします。(その程度です)

そんな感じで師走の日々を淡々と過ごしながらも、気がつけば
ランチパーティは、もう翌日に迫っていました。

前日、土曜日の夕食時だったと思います。
由紀が、思い出したように? 切り出しました。
(本当は彼女も忘れていたわけではないでしょうが・・・)

「明日よねー?」

私も、やっと由紀と この話ができる、と思いながらも、

「明日? 明日・・・ あー! パーティな! そやそや 
 そうやったなー そっか、明日やで」

私の頭の中では数日前からカウントダウンが始まっていた
というのに、わざとらしく まずは首を傾げてみせたのです。

更に私は、とぼけたフリをするものの、饒舌になり過ぎた感じも
あり、そんな私の臭い芝居は すっかりお見通しだったのか、
由紀は箸を動かす手は止めず、ただ ふふっ と鼻で笑っただけ
でした。

続けて私は、

「ヒラから なんか連絡あった?」

私のところには平尾からは連絡がなかったので、いちおう由紀に
聞きましたが、

「ううん ないよ・・・」

「え? マジか・・・ 中止かな?」と私が軽く笑うと、

「うん・・・このまま中止になればいいのにね〜・・・」

彼女は冗談とも本気ともとれるトーンで返してきました。

「そやな・・・ でも、ま、あいつの癒しのためやし・・・」

そう言って返す私は、その時は 翌日、由紀がどんな外見に変身
するのか、それだけが楽しみだったのです。
ただあまり期待が大きいと、これまでの過去のデートように
空振りすることもあるので、そこは自分で自分を宥めている
ような気持ちでした。

そういえば・・・
由紀がパートや買い物に出ていたり、風呂に入っている時、
私は何度か彼女の部屋の箪笥の奥まで手を突っ込んだのですが、
指先に触れるのは、ほとんど いつもの綿混の肌着ばかりでした。
成人小説にありがちな、いかにも というような下着、赤 黒 紫、
Tバックや透け透けなど セクシー系は一枚もありませんでした。

そのたびに私は、どこかでホッと胸を撫で下ろしながらも、
同時に、親友に暴かれるべき秘密がまだ存在しないことに、
どこか物足りなさと残念な思いも感じていたのでした。

そんな前日の夜遅くに やっと平尾から私にLINEが入りました。

律儀?な彼らしく、13:30から開始 というスケジュールと、
往復はタクシーをドアtoドアで手配をしているから、と。

本当は「そんなに気を遣うな」とか含め、LINEでのやりとりを
してもよかったのですが、夜も遅かったこともあり、また私は
先日、平尾から貰った芋焼酎を呑んで、ほろ酔い気分だったこと
もあって、「りょうかい!」とだけ軽く返しました。

由紀は由紀で、少々困惑の表情を浮かべながら、

「えー! やっぱりあるんだね・・・」とポツリ。

そして、いよいよパーティ当日の朝を迎えたのでした。


[32] Re: 落花枝に帰らず  :2026/02/03 (火) 11:57 ID:GRwkKL7Q No.2089
更新をありがとうございます。

「この三人の関係性は、四六時中 愛欲や性欲に浸りながら
疑心暗鬼で 駆け引きのある中で、直接的で刺激的なBDSMの
やりとりがLINE画面で繰りひろげられる流れにならないと
いけないのですが・・・」

そこまでいかない「身体ではなく心を縛る」流れのほうがよりエロティシズムを感じます。
次の更新を期待しております。


[33] Re: 落花枝に帰らず  小太郎 :2026/02/03 (火) 12:38 ID:5qAd3SJM No.2090
あっくんという呼び名はLINE上のアドリブに過ぎないですが
由紀さんが直美さんの代わりに平尾さんに言ってあげたという
事実が鍵になるような気がします。今後由紀さんは直美さんの
代わりに平尾さんに色々やってあげることになるのでしょうか?

由紀さんがパーティーが中止になればいいと言っているのは
今までの3回にわたるデートで培った、由紀さんと平尾さんとの
距離感や二人の間の空気を旦那の矢部さんに見られたくない
という気持ちから出たものではないでしょうか?
パーティー現場での二人の距離感がどうなるのか見ものですね。

続きを楽しみにしています。


[34] Re: 落花枝に帰らず  けんけん :2026/02/04 (水) 00:22 ID:JG.lcc52 No.2092
更新ありがとうございます。私も健一様同様、今くらいの流れがエロチズムを感じます。また、奥様がランチパーティーを開催することに躊躇しているのは小太郎様と同意見です。
ご主人に仲の良さを悟られたくないと思いました。
Y様、周りの意見を気にして、良い作品なのに、更新を途絶えた方が過去に何人もおられます。
ここは書くのが自由な為仕方ないです。気にせず図太くご自身のペースで進めて欲しいです。プロの官能小説は確かにエロくて良いですが、
それにはない魅力が
Y様の投稿作品に多々あります。
図太くいきましょう!奥様が天然なのも理解できました。
いよいよランチパーティーですね。
何か奥様と平尾さんの間で起きることを読者として期待せざるを得ません。続き楽しみにしております。頑張ってください!

[35] Re: 落花枝に帰らず  :2026/02/04 (水) 12:26 ID:Wd9bDHpY No.2093
再び失礼いたします。

小太郎様の「由紀さんがパーティーが中止になればいいと言っているのは
今までの3回にわたるデートで培った、由紀さんと平尾さんとの距離感や二人の間の空気を旦那の矢部さんに見られたくないという気持ちから出たものではないでしょうか?」
とのご意見に同意です。
そして今の距離感に由紀さんはこの上ない心地良さを感じていらっしゃるように思います。
男女の関係の一歩手前でしょうか?
この川を渡ることは逆に今の関係性を変えてしまうことになるので、この段階では由紀さんも平尾さんも「川面を見つめている状況」なのかな?と推察します。
続きを期待しております。


[36] Re: 落花枝に帰らず  西門 :2026/02/04 (水) 18:27 ID:Zxhpo/J6 No.2094
今回の内容も素晴らしいものでした。平尾さんと由紀さんが二人の付き合いは
矢部さんに対する裏切り行為と判断して、止めよう止めようとしていることが
伺える気がします。良識ある大人として当然の二人の判断だと思います。

しかし、由紀さんの「えー!やっぱりあるんだね・・・」の言葉の裏に平尾さんと
会うとその良識による抑制心を失って彼の女になる誘惑に逆らえなくなる自分がいる
ことへの当惑が伺える気がします。

矢部さんの何でもないような日常の発言の細密な描写から関係者の揺れ動く心理が
読み取れるように思います。矢部さんの書きたいように書いて頂くことで
二人の心理の微妙な変化が伝わると思いますので、読者の希望や
興味に合わせることなく今までと同じように書いて頂くことを希望します。

西門に対するご返答の「地獄に見える極楽か、天国に見える地獄なのか・・・」
の言葉に、今回の出来事における矢部さんの存在の大きさと
矢部さんの深い由紀さん愛を感じています。

次の展開の書き込み期待しています。


[37] Re: 落花枝に帰らず  倍胡坐 :2026/02/05 (木) 06:44 ID:KvLqjkEU No.2095
由紀さんにしても、平尾さんにしても、
それぞれからの報告やLINEは過去のもの。

それに対して、この二人と矢部さんが同席するランチパーティーを
たとえていうなら生中継になりますよね。
その臨場感は報告やLINEとは違ったものになると思われます。

由紀さんと平尾さんの何気ないやり取りを
矢部さんがどう受け止めるのか、由紀さんはとても不安ですよね。
意図せざる放送事故になってしまうかも知れません。

それと、このパーティー会場となるカフェでしたでしょうか、
平尾さんの友人のオーナー氏がどのように絡んでくるのでしょう。

次稿が楽しみです。

それにしても、矢部さんの綴る文章もさることながら、
記事更新のタイミングも慣れてしまうと、
次の展開をあることないこと想像してしまいます。
一読者として楽しませていただいています。


[38] Re: 落花枝に帰らず  たかし :2026/02/05 (木) 18:00 ID:scX4OArk No.2096
更新ありがとうございます。
平尾さんとのLINEでのランチパーティーの提案に対して
「いいですね!楽しみにしてまーす」と親しいやり取り。
ところが直前には「中止になればいいのに」と。
謎ですね。
みなさんが推測されるように二人の空気感を見られたくないのでしょうか。
パーティーに対してはすぐに喜んで返信してしまったものの
後日そのことに気が付いたのでしょうか?
もしかしたら「あっくん」とは呼んでないものの「あきまささん」くらいは呼んでいて
つい何気に3人での会話中にその言葉が出てしまうのが不安なのかも?
奥様や平尾さんから聞いているよりは二人の距離は近くなっているのかもしれませんね。


[39] Re: 落花枝に帰らず  田中。 :2026/02/06 (金) 07:18 ID:PYR70Mk. No.2097
更新ありがとうございます。
人は時折、頭で考えている事の逆が言葉になって表れます、「中止になればいいのに」なんて正にその典型の様な気がします。体から始まる恋愛は冷めやすいですが、心から入った恋愛は厄介なものですよ。
普通の主婦だった奥様の青色が、平尾氏の赤が徐々に滲んで妖艶な紫になる予兆ですね。


[40] Re: 落花枝に帰らず  ジプシー Y :2026/02/08 (日) 15:02 ID:eoSbVMI6 No.2098
健一様 いつもコメントをくださりありがとうございます。
>「身体ではなく心を縛る」流れのほうがよりエロティシズムを感じます。
・そう言っていただけると救われます。
 ただ正直、もっと着色してエロい描写に盛ったほうがこちらのサイトでは
 「受け」が良いみたいですよね・・・

小太郎様 いつも鋭いコメントをくださりありがとうございます。
>パーティー現場での二人の距離感がどうなるのか見ものですね。
・本当は今回そこまで書き進めたかったのですが、遅筆と文才のなさで間に合っていません。
 申し訳無いです。

けんけん様 いつもコメントをくださりありがとうございます。
>奥様が天然なのも理解できました。
・私は妻ではないのでわからないし、女性ではないので、
 彼女の「心の内」「気持ちの中身」「本音」はわからないままです。
 ただ、皆様もご存じのように女性って、本当にわからない「生き物」ですよね。
 このケースでも、天然なのか、天然のフリをしているのか、全く別の考えがあるのか・・・
 わからないです;;;

西門様 いつも奥の深いコメントをくださりありがとうございます。
>何でもないような日常の発言の細密な描写から関係者の揺れ動く心理が読み取れるように思います。
・そのように読み入っていただけると、素人ながら書き手冥利に尽きます。
 西門様や皆様のコメントに気づかされることも多々あります。
 どうか今後も行間を探りながら心理分析をしていただき、書き手と読み手で共有できる
 新しい発見があれば楽しめますね! よろしくお願い致します。

倍胡坐様 いつも奥深いコメントをくださりありがとうございます。
>次の展開をあることないこと想像してしまいます。
・書き手としてこれ以上ないリアクションをしていただきとても嬉しいです。

たかし様 いつもコメントをくださりありがとうございます。
>二人の距離は近くなっているのかもしれませんね。
・たかが3回、されど3回のデートをしたわけなので、物理的な距離はもちろん、
 心の距離も近くなっているかもしれないですね。

田中。様 いつもコメントをくださりありがとうございます。
 (貴スレッド:過去スレで秀逸だったのは。で取り上げていただき感謝申し上げます)
>人は時折、頭で考えている事の逆が言葉になって表れます
・たしかにありますよね!
 人間の知恵なのか、防衛本能なのか、性(さが)なのか・・・ 
 由紀の場合は防衛思考に近かったのかもしれません。


■今回(も)薄い内容です。読者の皆様、遅筆で進展が遅く申し訳御座いません。


*****


昨夜の天気予報が伝えていた「冬晴れの爽やかな日曜日」
という言葉に、嘘はありませんでした。
まだ薄暗い朝、澄み渡った空は 放射冷却で冷え切って
いましたが、昇ったばかりの日差しは肌を撫でる熱も、
どこか柔らかで温かく、絶好の外出日和を思わせる一日の
始まりだったのです。

それなのに、私の胸の内は、この澄み渡った空とは裏腹な
どこか淀んだ期待と緊張が渦巻いていました。

言うまでもなく、由紀の「変身」への期待と、パーティ
での 何かしらの「ハプニング」への期待です。

少なくとも私は 平静を装いながら、我が家のルーティン
通りに、いつもの休日と変わらない様子で朝食を済ませ
ました。
すると、私のスマホに平尾からLINEが入りました。

「今、TEL OK?」

私はリビングのソファに座り直して、朝食の片づけをする
由紀にも聞こえるように、あえてスピーカーフォンにして
通話ボタンを押しました。

「おはよう、エエ天気やなー」と私。

「おう そやなー 快晴やなー」と平尾の声は快活でした。

そんな挨拶から始まり、
・今日はよろしく、
・平尾手配のタクシーを12時にウチに迎えに伺わせる、
・徳永(さん)って知ってるよな? などなど・・・

そんな感じのやりとりが続いたと思います。

私は平尾と話しつつ、家事をしている由紀の様子を窺って
いました。彼女にもしっかりと会話は届いています。

その後も 数回、やりとりを往復した後、

「こっちは、タキシードとドレスで行く準備しとくわ」

私が茶化すと、由紀が吹き出して「やめてよ!」と笑い声
を上げました。

「ははは、それもええな! ま、でも今日は仲間内だけの
 気楽な会やし。 テキトーな格好でええよ〜」

平尾の言葉に、由紀の肩から目に見えて力が抜けているのが
わかりました。

そんな安堵した彼女を見て、私は咄嗟に悪戯心が疼き、
おふざけ気味にこう言いました。

「カミさんは尖がったハイヒール履いて、女王さんの格好
 して行くらしいでー」

さすがにムッとした? ・・・それでも口角は上がって
いた由紀は、

「えーっ! もぉ! 変なこと 言わないで!!」と抗議。

「エエな! いや、あかん、そりゃまた別や、あはは!」

と、平尾も悪乗りで返すと、

「もぉ! 二人とも〜!」と由紀。

そんな感じで・・・
スケベオヤジ二人と おせっかいなシニアオバちゃんの、
昭和平成初期の職場の会話が再現されていた一瞬でした。
今でこそ、セクハラや女性蔑視、コンプライアンス云々と
言われかねない会話ですが、この時は三人が三人とも、
昭和生まれだけに どこか和らいだ雰囲気だったのです。

「じゃぁ、また、あとでー!」「そやなー!」

電話が切れた後、リビングは急に奇妙な静寂に包まれ
ました。
互いが あえてパーティの話題を避けているかのような、
よそよそしい空気。
日曜日午前のバラエティ番組の賑やかな音声だけが、
その空間でひどく浮き上がっている雰囲気を なんとなく
イメージしていただけるかと思います。

「まっ、もうちょっと時間あるし、ゆっくりしとこ」

私が何気なく口火を切ると 由紀は「うん、そうね」と。
そして まるで このぎこちない空間から逃げるように、

「買い物に行ってくるし、車 使うね」と家を出ました。

彼女はこの時、何を思っていたのでしょうかね? 
不安? それとも?・・・

私の方は と言えば、今回はパーティそのものよりも、
由紀がどんなふうに「変身」するのかが 楽しみで仕方が
なくて、車がガレージを出ていく音を確認するやいなや、
まるで吸い寄せられるように彼女の部屋へ向かいました。

その途中、玄関のシューズラックに 由紀が 出がけに
置いたばかりでしょうか、「あの」濃いブラウン色の
パンプス(5cmヒール)がまるで生き物のようなオーラを
放っていました。
あと少し経てば、由紀がこれに足を滑り込ませ、
ストッキング越しに伝わる体温で革を温めていく様子を
想像し、一気に気持ちが昂ってきたのを覚えています。

私は由紀の部屋に入って、まずはいつもながらにBDSMに
関する“なにか”がないか、以前見つけた図書館カード、
図書館で借りてきた本、それどころか 密かに縄で自縛
などしていないか。
エロ小説の読みすぎだと自嘲しつつも、期待7割、一方で
「そんなはずはない」と安心したい気持ちが3割。
しかし、机やドレッサーの引き出しの隅々まで探っても、
禁断の証拠は何一つ出てきませんでした。

次にクローゼットを開けると 由紀がいつも使っている
石鹸のような、清潔だがどこか頼りない香りが私の鼻を
くすぐりました。
その中には、いつものパート行きの味気ない日常の
実用的な衣類が陳列されていたくらいで、箪笥の中の
下着類も特に変化がなくて、拍子抜けした私は思わず
「オイオイ大丈夫か?」と独り言まで呟いたくらい
でした。

このまま「カアサン」「50代のパート主婦」のままで、
パーティへ行ってしまうつもりなのか??
私は心配と落胆、二つの気持ちで部屋を出ました。

そのまま時間つぶし的に日曜日午前のバラエティ番組や
報道番組をあれこれ変えながら見ていると、程なくして
由紀が「ただいま〜」と帰宅しました。
彼女はリビングやキッチンに顏を出すまでもなく、
そのまま自室へと直行、階段を駆け上がりました。

しばらくして、ふと私が振り返った壁掛け時計は、
そろそろ準備にかかる時間を示していました。

私は、平尾が言っていた「仲間内の、気楽な」という
ワードが頭の中にあったので、気軽な気持ちで、
厚手のセーターにチノパン、紺のジャケットを羽織る
カジュアルな格好で早々に着替えをして、その流れで
階下から由紀の部屋に声を掛けました。

「カアサン、そろそろ 準備せんと あかんでー」

すると、すぐに由紀の声が、

「ハイ! 大丈夫、わかってる ちょっと待って〜」

それから10分?いや15分? 私はリビングで意味もなく
テレビのチャンネルをあちらこちらに 切り替えたり、
スマホで記事を見たり検索したりを繰り返していました。

(何してるんや! もしかして嫌なんか? 行かんのか?)

まだ部屋に入ったきり、降りてこない由紀に さすがに
私も苛立って、リビングから「おーい、はよ せんと!」
と声を張り上げました。

すると、あわててドアを閉めて 階段を下りる足音が。

「ごめーん、でも まだ時間 大丈夫でしょ?」

リビングに現れた由紀の姿に、私は息を呑みました。

彼女は帰宅後、直に自室に入って そのまま一人 静かに
準備と着替えを済ませていたのでした。


[41] Re: 落花枝に帰らず  健一 :2026/02/08 (日) 18:44 ID:J0nJmr6U No.2100
ジプシーy様更新をお待ちしておりました。
息を呑んだ理由をあれこれ想像してしまいます。ベタなところでパーティドレスですかね。

それにしてもこの後、
@離婚へ進む理由は?
A由紀さんと平尾さんは離婚後一緒住んでいるのだろうか?
B由紀さんと平尾さんは再婚したのだろうか?
など興味はつきません。
失礼しました。私の勝手は思いですのでお気になさらずに執筆をお続けください。
ジプシーyさんの秀逸な心理描写に心から敬意を表します。


[42] Re: 落花枝に帰らず  小太郎 :2026/02/08 (日) 18:44 ID:Vy05z89c No.2101
今回のパーティーで、由紀さんは矢部さんの妻として振舞うのか
それとも平尾さんのデートのパートナーとして振舞うのでしょうか?
矢部さんとしては、4回目のデートの位置付けですから、平尾さんの
デートのパートナーとして振舞うよう由紀さんに提案しますよね。

一方このデートごっこを終わらせるつもりの平尾さんは、今回の
パーティーで関係者全員を集め、デートごっこの終了式をしたいのでは
ないでしょうか? 平尾さんとしては、由紀さんに矢部さんの妻に
戻ってもらう儀式とするのでしょうか?

そして由紀さんは、どういう気持ちでパーティーに臨むのでしょうか?
矢部さんが息を呑んだ装いに、その答えが出ていたのでしょうか?
三者三様の想いがぶつかり、新たな展開が生まれるのでしょうか?
その展開に徳永さんがキーパーソンになるような予感がします。

続きを楽しみにしています。


[43] Re: 落花枝に帰らず  倍胡坐 :2026/02/08 (日) 19:37 ID:4kj5RnTI No.2102
これまで幾度となく期待しては打ち砕かれてきた矢部さんの邪な感情。
ですが、それはそれでホッとする局面も多かったように思います。

口では強気なことを言っても、心の中では弱気で優柔不断な矢部さん。
長年連れ添ってきた由紀さんにしてみれば、またか…なのでしょうね。

もちろん、平尾さんにしても同様かと思います。
同期の友人として対等なやりとりをしてはきましたが、
矢部さんのすべてを理解したうえで
矢部さんのペースに合わせてきたのではないでしょうか。

パーティーともなれば、由紀さんならずとも、
さすがに普段着とはいかないはずです。
これまでのデートとは異なり丹念に時間をかけたのですから、
それで普段着だったとしたら、読者としてもオイオイです。

余談ですが、由紀さんがおめかしをして現れたとして、
気になるのは、その外観もさることながら、
その下にどんな下着を身に着けているかですが、
さすがに気が早すぎますね。

いずれにせよ、オーナー氏も交えてのこのランチパーティーは
登場人物の関係性が変化する潮目となるような気がします。

次の更新を楽しみにしています。


[44] Re: 落花枝に帰らず  健一 :2026/02/08 (日) 19:57 ID:J0nJmr6U No.2103
連投失礼します。

由紀さんの服装ですがまさかウエディングドレスってことは。

勝手な想像してすみません。


[45] Re: 落花枝に帰らず  たかし :2026/02/08 (日) 21:52 ID:dcNAuFiA No.2104
更新うれしく読ませていただきました

さて奥様はどのような装いで現れたのでしょうか?
矢部さんが息をのむ装いとは?
5cmパンプスの似合うスカート姿?
お化粧もいつもよりしっかり目で?
買い物も今日のために予め買おうと思っていたものを急遽購入してこられたのかも?
クリスマスプレゼントも?

早速次の更新が待ち遠しいです


[46] Re: 落花枝に帰らず  たかし :2026/02/08 (日) 23:08 ID:dcNAuFiA No.2105
すみません、修正出来ず連投です

奥様の、中止になればいいのにな……は
パーティーの衣装に何らかの希望を
平尾さんがLINEで伝えられた、
けれども奥様にとってはそれはハードルの高い衣装のため
少し気が進まなかったのでしょうか?
平尾さんの亡き奥様の思い出の装い?
今、その装いで奥様が現れて
矢部さんは息を飲まれたのでしょうか?


[47] Re: 落花枝に帰らず  けんけん :2026/02/09 (月) 05:33 ID:tpbaV3Ng No.2106
更新ありがとうございます。服装がめちゃくちゃ気になります。もちろんスカート系を期待します!徳永さんは平尾さんとBDSMの趣味でも繋がっていそうな気がしてきました。奥様のパーティーでの立ち位置、振る舞いがY様に嫉妬させることを期待しています!
続き楽しみにしております!

[48] Re: 落花枝に帰らず  ボルボ男爵 :2026/02/09 (月) 12:59 ID:gYNiWyys No.2108
投稿の切り方が秀逸ですね、待たされる方は辛いですが・・・笑

当然かなりカジュアルなパーティーでしょうから何を着ていっても良いわけですが、夫婦で
あまりにちぐはぐなのはいただけませんよね。
自然に考えて「なに着ていく?」くらいの会話はあるかと思いますが、この日の
由紀さんの行動を考えるに「矢部さんとパーティーへ行く」ではなく「平尾さんのパーティーに
エスコートされにいく」に近いものがあるように思われます。
どなたかも言われておりましたが、すでに平尾さんと打ち合わせができておりお互いの間では
ドレスコードが決定されていたのかもしれないですね、さらには午前中の外出は平尾さんと
待ち合わせの上ドレスを買ってもらったのかもしれません。

全てはデートごっこ、平尾さんのリハビリ。この免罪符があるおかげで2人は何も隠し事
無しに堂々と会ったり連絡を取り合ったりしてますが、実は鉄壁なカモフラージュが
作られている状態ですよね。
実際のところ2人は体の関係はないにしろ、或いは告白こそしていないにしろ、お互いの
気持ちがもう通じ合っているのかもしれません。
「親友の妻」「大切な夫と家族」この二つが2人を分別ある大人につなぎ留めているわけで
この障害をなくすことはまじめな2人にとっては正直な告白をすることではないかと思います。
Xデーも近づいているし、なのでこのパーティーまさかの衝撃告白が矢部さんに待ち受けている
なんてことを考えてしまいます。
その告白こそが由紀さんの「パーティー中止になればいい」の言葉につながってくるのかも。
そりゃやっぱり気が重いですもんね。

考察は無限に出てきます、キリがありません。
あくまでも考察ですので気になさらず投稿を続けてくださいね。
長々と失礼いたしました


[49] Re: 落花枝に帰らず  西門 :2026/02/10 (火) 00:49 ID:KvJqxwwQ No.2111
3年前の出来事で、普通なら覚えているはずがない細かい点まで矢部さんが記憶されてるのに
驚嘆するしかありません。
平尾氏と由紀さんが初めて会って、今度のパーティが4回目でその間3ヶ月。
模擬デートのはずがたった3ヶ月で二人の関係が変化しつつあることを、
まだ怪しい兆候は見られたわけではないのに、矢部さんが本能的に察知して
神経が研ぎ澄まされた結果だろうと推察しています。

今度のパーティで、矢部さんの期待通り(?)の関係が始まる何らかの予兆を
感知されることになるのかなと次の書き込み待ち遠しく待っています。


[50] Re: 落花枝に帰らず  :2026/02/10 (火) 14:27 ID:fOgFGm7U No.2113
西門サンの言うとうり、どーせ作りばなしよ 
だれでも三年前のことは忘れてますから!
それなのにぜんぜん進まないよね
ふつうなら奥さんは平尾としてるはず
だから早くやってくださいね、皆待ってますから!


[51] Re: 落花枝に帰らず  たかし :2026/02/11 (水) 11:43 ID:0lgUckHI No.2115
私としては
早くやってほしくないです。
やるまでの(下品な言い方ですが)過程が良いのです。


今の矢部さんのペースの投稿を
じれったいのも楽しみの一つとして
読ませていただきたいです。


[52] Re: 落花枝に帰らず  考察 :2026/02/11 (水) 17:19 ID:/zVIUT4c No.2116
更新ご苦労様です。

前にも同じようなことを書きましたが、ここの主は作者なのですから、堂々と書きたいことを書きたいように書けばいいのです。それを楽しんでいる人もいるわけですし。

 エロい描写に盛ったほうがこちらのサイトでは「受け」が良いみたいですよね・・・
とか
 遅筆で進展が遅く申し訳御座いません。
などと言い訳がましく書くのは、かえってアンチや荒らしを餌付けするようなものだと思いますよ。


[53] Re: 落花枝に帰らず  健一 :2026/02/11 (水) 21:51 ID:SppG2Sz2 No.2117
矢部さん、由紀さん、平尾さん。
三人の心の動き、変化の描写があり、その行間に私の想像、妄想を入れ込むことに興奮しております。

平尾さんのBDSMは体より心を縛るとありますので、性器の結合よりも精神的な拘束に向かっていくのかな、とも勝手な想像をしております。

いずれにしても今後の展開は私たちの想像、妄想、期待、などに関わらず矢部さん自由な発想での執筆を希望いたします。

料亭に行けばそこの板長の味を楽しむように矢部さんの「味」を楽しみたいと思います。


[54] Re: 落花枝に帰らず  ジプシー Y :2026/02/15 (日) 00:00 ID:HdSzxSrI No.2121
健一様 いつもコメントをくださりありがとうございます。
>息を呑んだ理由をあれこれ想像してしまいます。
>勝手な想像してすみません。
・拙い文章をもとに、想像を膨らませ楽しんでいただいているのは、作者冥利に尽きます。ありがとうございます!
>矢部さんの「味」を楽しみたい
・この一言に、勇気をいただいています。

小太郎様 いつも深いコメントをくださりありがとうございます。
>由紀さんは、どういう気持ちでパーティーに臨むのでしょうか?
・正直、彼女の気持ちの中まではわからないのです、女は本当にわからないです・・・(汗)
どんな気持ちだったのか、想像しながらお読みいただければ嬉しいです。

倍胡坐様 いつも奥深いコメントをくださりありがとうございます。
>すべてを理解したうえでペースに合わせてきたのではないでしょうか。
・平尾の本当の気持ちはわからないのですが、ただ職位の事以外、本当に気の許せる友人ですし、もしかしたら彼は無理をして私に合わせてくれていたのかもしれませんね・・・

たかし様 いつもコメントをくださりありがとうございます。
>さて奥様はどのような装いで現れたのでしょうか?
>修正出来ず連投です
・ご期待された装いだと良かったのですが、いかがだったでしょうか?
・連投も大歓迎です。いつもコメントに勇気づけられております。
>過程が良いのです。
・この一言に、救われております。

ボルボ男爵様 コメントをくださりありがとうございます。
>考察は無限に出てきます、キリがありません。
・駄作、愚作に対して深い考察までいただけて、本当に嬉しいです。これからも宜しくお願い致します。

西門様 いつも奥の深いコメントをくださりありがとうございます。
>何らかの予兆を感知されることになるのかなと次の書き込み待ち遠しく待っています。
・せっかく待っていただいて、期待に沿うような展開になれば良いのですが・・・

笑様 コメントをくださりありがとうございます。
>どーせ作りばなしよ だれでも三年前のことは忘れてますから!それなのにぜんぜん進まないよね
・正直に申しますと、ところどころで創作しているのは間違いありません。
手厳しく 的を得たコメントです、叱咤激励と理解しますが少々気持ちも凹んでおります。

考察様 コメントをくださりありがとうございます。
>かえってアンチや荒らしを餌付けするようなもの
・確かにそうなのかもしれないのですが、私自身が元が小心者ですので、気になってしまうのです。



*****


(前スレ-ラスト)
彼女は帰宅後、直に自室に入って そのまま一人 静かに
準備と着替えを済ませていたのでした。


どこか照れくさそうな由紀が纏っていたのは・・・
柔らかなオフホワイトをベースに、控えめな光沢の微細な
金や銀の細い糸が混じった、重厚感のあるツィードスーツ
でした。

襟のないノーカラーのジャケットに、膝を隠す丈のタイト
スカートのセットという、どう見ても良妻賢母を体現した
ような、正統派の装い・・・。

良く言えばそうですが いかにも背伸びしたローカルな
母親感のある、無難な・・・ つまり パーティ向けとは、
ちょっと違うような感じの第一印象ではありました。

開いたスーツジャケットの内には、とろみのある柔らかな
シルク調の光沢のある白いブラウス。
ツイードスーツの開きに合わせ、前立てに大きめの波打つ
ラッフルフリルが、さりげない華やかさと彼女の生真面目
な貞淑さを象徴しているようでした。

脚は薄いベージュのストッキングで覆われており艶やかな
光沢を放っていました。

布地の厚いツィードと華やかで柔らかいブラウス、その下
にある薄い膜のようなナイロン。
その質感の対比が私の目を釘付けにして、視線のやり場に
困った私は、彼女のストッキングに包まれたつま先を
見つめていると、由紀もそれを察した(?)のか、すぐに
キッチンへと駆け込みました。

そんな彼女のメイクも、いつものパート通いとは違って、
落ち着いたローズ系の口紅に薄くグロスが重ねられた唇は
艶やかで光沢があり、また薄く引かれたアイラインが、
彼女の瞳をいつもより鮮明に縁取っていました。

そして爪は あのベージュピンクのマニキュアで彩られ、
両耳元には小粒のパールのイヤリングが付いていました。

正直、久しぶりに見る彼女の「正装」したスーツ姿と
それに合わせてメイクされた顔に、年甲斐もなく照れて
しまった私だったのです。
しかもこんな時に、気の利いた言葉や素直な誉め言葉が
出ないのは、小心者あるあるですよね・・・

「なんや? 入学式か三者懇談に行く親 みたいやな〜」

私が精一杯の苦し紛れの照れ隠しの言葉で、なんとか
私自身の動揺を隠すために、あえて彼女から笑いを
取ろうと試みたのですが・・・

「あー マリちゃんの大学の入学式の時に買ったのね、
 コサージュを付けて着てたやつだけど・・・」

由紀は意外にも真面目な返事をしてきたのでした。

「ふぅーん」と声が上ずっている私。

「やっぱり 変かな・・・ どうしよぅ・・・」

彼女が言うには、やはり今回のパーティに行く格好には
かなり悩んでいたらしく、持っている冬物のスーツで一番
新しいのが、この一着だったと。
とはいえ、娘 麻里奈の大学の入学式用に購入して以来、
7-8年が経過(直近でも袖を通したのは3年前?だった
らしい)したこともあり、恐る恐る試着してみると
意外にもフィットしたので、クリーニングに出していた
のだと。
実家にも帰って探そうかと思ったが、時代的にも、
そして何よりもサイズが、などと悩んでいたことも、
(早口で;;(笑))明かしてくれました。

なるほど、普段は自転車なのに車で買い物に行った意味が
わかりました。
(クリーニング屋さんに寄って、取って帰ったのです)
が それ以上に 私は、彼女の体型が変わっていないことが
驚きでもあり羨ましかったのです。

「いや どう見ても PTAの役員です って感じや(笑)」

まだ私が からかい続けると、

「そうよね・・・ どうしよう・・・」

由紀はそう言って、残念そうに眉を下げたのでした。
私としては、この格好自体は満足していましたので、

「まぁ、仲間内の気楽なパーティやから、エエよ!」

と フォローをしたり、そんな会話を繰り返していると、
いつのまにか12時になっていました。

私のスマホに自宅前にタクシーが到着したとの通知が
入り、リビングの窓からも迎車が確認できました。

「よし、行こか・・・」

「うん・・・」

由紀はカシミヤ混のキャメル色のロングコートを羽織り、
片手ずつ 滑り込ませるようにして、黒い革の手袋を
嵌めました。柔らかなラム革が彼女の手に吸い付き、
引き締まった輪郭を描き出すその様子は、その一瞬
どこかエロティックなシーンに見えてしまいました。

そしてあの濃いブラウンのパンプスを履いてコツコツと
ヒールで小気味良い音を立てながら、一緒にタクシーの
後部席に乗り込んだのでした。

タクシーの中でも、お互いの口からパーティの話題は
出ることはなく、一般的な話題(天気や正月の事など)
に終始しました。

そんな中でも、小声で由紀が、

「もう! トウサンがそんなこと言うから、なんだか
 恥ずかしくなっちゃった。やっぱり変かな?」

「気にすんな、別に・・・ 大丈夫やって!」

ただ 私は返事をしながらも、横に並んで座る由紀の 若干
せり上がったスカートの裾から、艶やかなストッキングに
包まれた膝が覗き、タクシーの振動に合わせて、微かに
ナイロンが擦れる音が聞こえるような気がして、
私は生唾を飲み込みながらチラチラと視線を送っていた
のです。

途中 牧里駅前の“定番の渋滞”以外は 比較的スムーズに
走行できたこともあって、開始時間40分前にタクシーは
日曜日の しかもお昼時で賑わっている、海沿いのカフェ
『ラ・メール・ブランシュ』に到着しました。

私たちは受付で到着を知らせるとすぐに徳永が来ました。

「いらっしゃいませ、今日はよろしくお願いします!」

「こちらこそお願いします。楽しみましょう」

笑顔の徳永に、私も調子良く応じました。隣に立つ由紀も
ニッコリと笑顔で頭を下げていました。

ふと徳永が小さく顎で合図を送ると、待機していた若くて
清潔感のある男子店員が、私たちの傍らに歩み寄って、

「コートをお預かりいたします」

と流れるような動作で私のコートが受け取られ、
続いて由紀の背後で、彼女がキャメル色のコートから
腕を抜くのを完璧なタイミングで介助していました。
オーナーである徳永の手を煩わせることなく、すべてが
阿吽の呼吸で進んでいく。
その徹底されたもてなしに、私は自分がこの店の
「最優先客」であることが確信できて、どこか誇らしい
気持ちになっていたのでした。

身軽になった私たちは、改めて徳永の先導により、
早速、店内を通り抜け、その先のエレベーターに乗って、
VIPルームへと案内されることになりました。

その際、徳永は由紀に「混んでなかったですか?」と
笑顔で声を掛け、ツイードのスーツ姿の由紀も
「大丈夫でした」と丁寧に笑顔で返しながら、
そのまま2人が 親し気に、私の耳にも届くような声で
とりとめのない会話をしながら、少し私の前を歩いて
いました。
そんな二人の姿を後ろから追いながら、なんとなく
夫としての“懐の大きさ”がアピールできているかの
ような気持ちにもなり、歩を進めるたびにフロアに響く
ヒールからのカツカツとした音も とても心地良く耳に
入ってきていたのでした。
たかが こんなことでも 夫として、妻のことが誇らしく
思えてもいたのです。
(全部、自己満足ですよね・・・(汗);;)

VIPルームの扉が開けられた瞬間、真っ先に私たちの目に
飛び込んできたのは、まるで巨大な額縁に収められた
名画のような冬の海の絶景でした。

それと同時に、控えめな音量で流れる弦楽器の柔らかな
クリスマスソングが、心地よく私を出迎えてくれました。
華やかであり品格を感じさせるその旋律は、耳通りも
良く、ほっこりとした暖かみを与えてくれました。

「うわぁー! 綺麗〜 すごいねー!」

由紀は感嘆の声を漏らし、窓際へと吸い寄せられるように
歩み寄りました。
若干、丸みを持って海側に突き出ているような造りをした
窓辺に、私たち3人は、しばらく言葉を無くして景色を
眺めていたのです。

天井から床まで一枚ガラスの向こうに広がっていたのは、
かつてこのお店1階の席から見た海とは、そのスケールが
まるで違っていました。

まず目に飛び込んできたのは、右手側に連続する複雑に
入り組んだリアス式海岸の見事な造形でした。
鋭い岸壁が幾重にも重なり、その足元では冬の荒波が
真っ白な飛沫を上げて、銀色の火花のように激しく砕けて
いました。

入り江を抜けた先から視線を左にずらすと、一転して、
どこまでも穏やかな紺碧の大海原が広がっていました。
遮るもののない水平線が、天と地を分かつ一筋の鋭い線の
ようにどこまでも伸びています。

近景の荒々しい「動」を、遠景の壮大な「静」がすべて
包み込んでしまうような、圧倒的な奥行きが丸ごと視界に
収まっていたのです。

徳永から、「あそこは○○岬ですよ とか、あの先には」
など、丁寧でユーモアを混ぜた小気味よい説明もあって、
私たちはいつの間にか“観光客”になっていました。

「では、準備に戻りますね・・・」と徳永が外れると、
ふと思いついたように、私は、スマホを自撮りモードに
して、由紀に声を掛けました。

「カアサン、どう?」

二人並んだ画面の中、私たちの背後には、遠く切り立った
岸壁で砕ける真っ白な波しぶきが、銀色に輝いて写り
込んでいました。
何年振りかのツーショットなので、ぎこちなさや 正直
恥ずかしさもあったのですが、荒々しくも美しい自然の
躍動感にそんな気持ちも全て拭い去られてしまうくらい、
それくらいに圧巻だったのです。

由紀は一人でも、「すごいねー すごい」と言いながら、
はしゃいで、自分のスマホで写真を撮っていました。

そんな絶景に寄り添うように四人掛けテーブルが大きな
窓に接して設置され、背もたれの高い椅子も、柔らかな
革が身体を優しく固定し、まるで外界から遮断してくれる
ような高級感がありました。

「なかなかの特等席やな〜 ま、とりあえず 座ろか」

由紀の右手に 私の左手に、海が見えるように、窓辺に
向かい合って座りました。

そこへ徳永がトレイを持って現れて、

「時間まで こちらで、喉を潤してくださいねー」

と おしぼりと共にテーブルの上に置かれたのは、
繊細な泡が立ち上る琥珀色のグラスと、宝石のように
小さなひとくちサイズのアミューズでした。
軽く炙った帆立に、冬の果実が添えられたその一皿は、
これから始まるパーティを予感させる贅沢な彩りを
添えていました。(早速、由紀は写メしていました;;)

そのほかに徳永は、季節ごと 時間帯ごと 天気ごとに
違って見える、この窓から望める海の景色のことを、
私たちを退屈させることのないテンポで説明をして
くれました。
私は、オーナー自らのおもてなしにも感動しました。

「すみませんねー、ありがとうございます」

私が満足げに応じると、彼は

「ヒラも、もう少ししたら、着くらしいですよ」

「ギリギリアウトやったら、罰ゲームやね!」と私。

「そやね! サンタさんになってもらおう!」と徳永。

何気ない会話でしたが、この短い時間の間に、
私は徳永とも打ち解けた気がしました。

彼が部屋を後にしたので、

「とりあえず カアサン・・・ 乾杯やな」

「うん・・・ じゃぁ 乾杯」

クリスタルが触れ合う澄んだ音が室内に響きます。

「トウサン、本当に景色 すごいよね!」

一口飲んだ由紀がそう言って、少し上気した顔で私を
見ました。
耳を澄ませば、ピアノが奏でるクリスマス・キャロルが、
シャンパングラスの中で弾ける繊細な気泡の音と溶け合う
ように流れていました。

「うん・・・ すごいな・・・」と私。

由紀がもう一度 右を向き 海を見ながら言いました。

「水平線も はっきり見えてるねー」

「今日は天気エエからな・・・」

そう言って、微炭酸の刺激を喉に感じながら、
私はあらためて、目の前に座る妻を眺めました。

窓辺の明るさが程よい光加減になって、由紀のローズ系の
唇に潤いを与えていました。
PTAとか入学式スタイルだと茶化しはしたものの、
この贅沢な空間に置かれた彼女は、どこに出しても
恥ずかしくない、“自慢の妻”そのものでした。
スーツ姿って、綺麗に見えるのでしょうかね・・・(汗)

思い立ったように私は再びスマホを取り出して、

「カアサン ちょっとそのまま。 うん、ええ感じや」

と、由紀にレンズを向けると、

「えっ、やめてよぉー 恥ずかしいし・・・」

「えーやん、えーやん、コップ持って・・・」

「トウサン、もう酔ってる??」と笑顔の由紀。

そう言いながらも、彼女はグラスを片手に持ち、少しだけ
首を傾けて微笑んでくれました。
実は、彼女も満更でもなかったのかもしれないですね。

全面窓の明るさが逆光気味になって縁取られたレンズ越しの
由紀のシルエットは、いつものキッチンに立つ「カアサン」
ではなく、どこか遠い世界の貴婦人のようにも見えたのを
覚えています。

この美しい「作品」を独占している優越感に浸りながら、
私は夢中で何度もシャッターを切ったのでした。

「トウサンも撮るからね〜」 

言うや否や、私も向かい側から由紀のスマホに撮られて
いました。

「ヒロくん(息子)とマリちゃん(娘)に・・・」

と、忙し気にLINEの操作をしている由紀に、

「あ!見てみー あんな遠くに見える船、客船やろか?」

「え? あ・・・ホント ゆっくり動いてるねー」

グラス片手に私たちは、とりとめもない会話を楽しみました。

窓の外に流れる穏やかな時間。美味しい酒。
そして なによりも、珍しく美しく着飾った妻が、
私の正面で、私に目を向けて微笑んでいるのです。

久しぶりに味わう幸福感・・・

私は、すでに酔っていたのかもしれません;;(汗)

私は、今日この場をセッティングしてくれた平尾に、
そしてこの完璧な舞台を用意してくれた徳永に、
心の底から感謝していたのです。
親友の「癒やし」のためと言いつつ、
結局は私に、これほど誇らしい悦びを与えてくれた
彼らに向け、内心では深々と頭を下げたいような、
気恥ずかしくも温かい万能感に包まれていました。

コンコン♪

軽やかなノックの音が、あまりに唐突に響きました。

「お! 主役の登場か?」と私。

すっかり上機嫌の私の声に応えるかのように、
重厚な扉が開くと同時に、平尾の快活な声が部屋の空気を
一変させました。

「すまんすまん! 道が えらい混んでてな・・・」

一緒に入ってきた徳永にコートを預けながら、平尾が颯爽
とVIPルームに入ってきたのです。
(二人に続いて、正装した数名のスタッフも)

「でも、まだ開始まで1分あるやろ? セーフセーフ 
 トクちゃんの計算通りやで〜」と平尾。

「そんなん えーから、早よ せい! あと35秒や!」

徳永も笑いながら平尾をエスコートして、テーブルへと
向かってきました。

まるで漫才コンビを思わせるような二人の即興に、

「おお!お疲れさん! ぴったりや〜 あと18秒や!」

合わせるように私もまた、歓迎の気持ちと二人のノリに
加わりたいとの思いを込め、満面の笑みでドリンクを持つ
右手を挙げて彼らを迎えました。

と、その時・・・

(え? 待てよ? マジか・・・)


[55] Re: 落花枝に帰らず  小太郎 :2026/02/15 (日) 05:28 ID:qfuqGyuI No.2122
由紀さんの装い、素敵ですね。清楚さを出しつつ、色気も感じる
大人の装いですね。
平尾さんの色に染めて欲しいという由紀さんの気持ちを現した、
平尾さんに魅せたかった装いなのでしょうか?

VIPルームから見える、近影の荒々しい「動」を
遠景の壮大な「静」がすべて包み込んでしまうような
圧倒的な奥行きが丸ごと視界に収まっていた景色は
これからの矢部さんと由紀さんの二人の行く末を予見する
かのような景色ですね。この景色を満喫しているお二人の姿に
仲の良さが伝わって来ます。
この景色を前に二人で笑顔で写真を撮り合っている幸せなひとときが
矢部さんと由紀さんの心が繋がっていた、最後の時間となって
しまったのでしょうか? そしてここから終わりが始まってしまう
のでしょうか?

平尾さんの装いは、もしや白を基調としたスーツだったのでは?
由紀さんのオフホワイトのツィードスーツにぴったり合わせた
かのような、二人の距離感を現す装いだったのでしょうか?

続きを楽しみにしています。


[56] Re: 落花枝に帰らず  倍胡坐 :2026/02/15 (日) 23:41 ID:c7s3cBCs No.2123
向かい合って着座した矢部さんと由紀さん。
後から到着した平尾さんはどこに座ったのでしょう?

その場所によっては相当な違和感が生まれると思います。
ゆったりとした時間のはずが、一気に戦慄が走ってしまいますね。

続き、よろしくお願いします。


[57] Re: 落花枝に帰らず  西門 :2026/02/16 (月) 11:35 ID:airPUXOM No.2124
長年連れ添った夫が惚れ直すほどの由紀さんの変貌。
読者が全員由紀さんのファンになってしまうような丁寧な書込みが素晴らしい。

たった3度のデートごっこであったのに、良妻賢母の由紀さんが女に甦ったことを
矢部さんが気付いた日になったようですね。


[58] Re: 落花枝に帰らず  健一 :2026/02/16 (月) 16:26 ID:Xv.Cvq0o No.2125
三人での賑やかなランチパーティが実際はどうなってしまうのか?
平尾さんと由紀さんのパーティに矢部さんが参加するのか?
あるいは三人にプラス他に複数人数が参加するのか?

いずれにしても結論は矢部さんと由紀さんが「円満離婚」となるのでその過程が興味をそそります。

「円満」がどのように円満なのか?
矢部さんの寝取られ願望、平尾さんの趣味BDSMと由紀さんのBDSMへの目覚め・移行。これが合致すると円満離婚に繋がるのかな?

など勝手な妄想が湧いてきます。

楽しみにしております。


[59] Re: 落花枝に帰らず  たかし :2026/02/17 (火) 11:25 ID:5clnm8eI No.2126
更新ありがとうございます

由紀さんの装い、娘の入学式にピッタリで
クリスマスパーティではなさそうですが
お化粧もイヤリングもマニキュアも
素敵に仕上がった由紀さんの様子が想像できます
前日に悩んでおられたのはホワイト系の服でと
ドレスコードの希望の連絡があったのではないでしょうか?
前日に、何か連絡あった?との問いに
ううん、ないよ・・・は由紀さんのうそ?
小太郎さんがおっしゃるように
平尾さんはホワイト系のジャケットで現れたのでしょうか?
ホワイト系の衣装のお二人が矢部さんの前に
並んで着席される、まるで披露宴のように!
かなり嫉妬しますよね

由紀さんは悩みながらも平尾さんの指示に従った、
これも Dominance&Submission 支配と服従
かもしれませんね

それと
徳永氏のカフェにはこの特別室の他にも
BDSMのための特別室があるのかな?と期待しております
平尾氏と亡くなられた奥様は
崇高なBDSMを追求されていたということなので
ラブホにあるようなSMルームではなく
もっと違った場所でプレイされてたのでは?
そういう場所を徳永氏が提供されていたのでは?
と極端な想像をいています

長々とすみません


[60] Re: 落花枝に帰らず  :2026/02/17 (火) 17:51 ID:SluGNzro No.2127
作者サン、いいかげんにナゾカケはヤメてくれません?
平尾さんがSMの何かを持って来たら皆んな納得します!正解はロープを持って来た?
窓の景色なんかはどーでもいいですよ、退屈デス!


[61] Re: 落花枝に帰らず  健一 :2026/02/17 (火) 23:55 ID:FoYoS5Jc No.2128
由紀さんの深層に潜んでいたBDSMに対する興味がどのように矢部さんに伝えられるのか、
いつ道徳という地表の殻を割って吹き出てくるのか、
支配と従属などの業のようなものを人間が基本的に持っていることを前提に進んでいくのか、

私も時間をかけて矢部さんの文章の行間を想像で埋めております。
これからも矢部さんのペースで執筆をお続けください。楽しみにしております。


[62] Re: 落花枝に帰らず  くま :2026/02/22 (日) 07:46 ID:bn1/JLlk No.2132
初めてコメントします。
平尾氏がどのように由紀さんの心を縛っていくのか?
心を縛られていく過程や由紀さんの心境がどのように変わっていくのか?
心を縛られた由紀さんと平尾氏がどのような服従関係になるのか?
とても興味深いです。
矢部さんのペースでゆっくりでもいいので現在に至るまでの投稿をお願いします。
いつも楽しみにしてます。


[63] Re: 落花枝に帰らず  矢部 :2026/02/22 (日) 12:12 ID:uUBZOVe2 No.2133
小太郎様 いつも鋭いコメントをくださりありがとうございます。
>ここから終わりが始まってしまうのでしょうか?
・そうですね、たしかにターニングポイントになるイベントではあったような気もします。

倍胡坐様 いつも鋭いコメントをくださりありがとうございます。
>後から到着した平尾さんはどこに座ったのでしょう?
・正解です! まさにその通りでした。(謎かけをしたわけではなかったのですが;;;;)

西門様 いつも深いコメントをくださりありがとうございます。
>読者が全員由紀さんのファンになってしまうような
・普通に平凡な50代半ばの女ですが、そのように言っていただけると作者としては嬉しい限りです。

健一様 いつもコメントをくださりありがとうございます。
>勝手な妄想が湧いてきます。
>文章の行間を想像で埋めております。
・拙作愚作にもかかわらず妄想・想像までしていただけることは、作者冥利に尽きます。とても励みになります。

たかし様 いつもコメントをくださりありがとうございます。
>長々とすみません
・とんでもございません! こちらこそ、愚作に対して、いろいろなシーンを想像してくださり、本当に嬉しく思っています。

笑様 コメントをくださりありがとうございます。
>SMの何かを持って来たら皆んな納得します!窓の景色なんかはどーでもいいですよ、退屈デス!
・退屈をさせて申し訳ございません。景色の描写はもっと抑えたほうが良かったでしょうか?

くま様 コメントをくださりありがとうございます。
>とても興味深いです。
・遅筆で文才もないので、ご期待に沿える展開になるのかどうか不安ですが、応援をいただけることに感謝申し上げます。


*****


(え? 待てよ? マジか・・・)

颯爽と現れた平尾は、奔放で野性味のある格好、以前も着て
いたNFLの重厚なスタジャンにジーンズ姿。
徳永は、洒落たカフェのオーナーらしい、光沢を抑えた黒の
ドレスシャツに黒のスラックスという隙のない装い。

私は手に持ったグラスを掲げ、精一杯の笑顔を作って彼らを
迎えました。

しかし、二人の姿が歩み寄ってくるまでのわずか数秒間で、
私の胸には冷たい予感が走ったのです。

(え? 待てよ? 平尾と徳永はどこに座るんや?)

窓辺に向かい合って座る私と由紀。
私たちの片手側には、誰の手も触れていない空白の二席が、
口を開けて待っていたのでした。

ふと正面の由紀に目をやると、彼女もまた、私と同じ
「異変」を瞬時に察したようでした。
それまで景色を眺めて緩んでいた彼女の表情が、一変して
強張り困惑したように視線を泳がせていました。
すぐに彼女は手にしていたおしぼりと飲みかけのグラスを
持ち、腰を浮かせて席を立とうとする素振りを見せました。

「あっ、あの・・・ わたしは・・・」

由紀が慌てて席を譲ろうとしたその時、背後から徳永の
穏やかな声が、

「ヒラ・・・ お前、そこやで。 矢部さんたちは景色が
 見える方がエエやろ?」

徳永が示したのは、私の隣ではなく由紀の左隣でした。

「えっ・・・」

平尾は厚いスタジャンをスタッフに預けながら立ち止まり、
困惑の表情を浮かべて私を見ました。
その目は「いいのか、ヤベちゃん?」と私に問いかけている
ようでした。

「いや、それは・・・」と平尾。

明らかに彼は困惑して、続く言葉を探していたその時です。
数名のスタッフが音もなく 私たちのテーブルのまわりに
滑り込み、立ちすくんでいる平尾をうまく避けながら、
流れるような洗練された動作で、迷いもなくテーブルの上に
四人分のカトラリーをセットし始めたのです。

「乾杯はビールで・・・由紀さんもエエですよね?
 じゃぁ とりあえずプレミアムの瓶とグラスで 4つや!」

すでに私の右隣に着座した徳永は、早速スタッフに指示を
出していました。

由紀はセッティングされるナイフやフォークの銀色の輝きに
気圧されるように、所在なげに視線を彷徨わせました。
そしてチラリと、私の方へ視線を投げたのです。
「良くないよ」とも「良いの?」とも どちらとも取れる
すがるような、それでいてどこか熱を帯びた目・・・

とにかく由紀の隣に、平尾が座ることになりました。
本来なら、私が「いや、そこはオレや」と積極的に動く場面
でしょう。それが夫としての正当な権利であり、義務でも
あるはずです。
しかし、その時の私は、いわゆる禁断の扉を自分の手で開く
ことに、言いようのない興奮を覚えていたかのような奇妙な
全能感に支配されていたのです。

しかも口から出たのは、滑稽なまでの「強がり」でした。

「えーよ、ヒラ! おまえもそこが えんちゃうか? 」

私は顔に貼り付いた笑顔を崩さず、さも寛大な「オーナー」
であるかのように、むしろ上から目線の寛大さを装って、
片手で由紀の隣を勧めました。

「せっかくのパーティなんや、遠慮すんなって」

自分の声が不自然に上ずり、喉がヒリつくのを感じながら、
私は平尾を見下ろすような視線で言い放ったのです。

「・・・あぁ・・・ じゃぁ・・・ まぁ」

平尾はまだ躊躇うような、どこか申し訳なさそうな表情で
私を見ていました。
その目は「本当にいいのか、ヤベちゃん?」と、最終的な
承諾を私に求めているようでした。
一方の由紀は、今にも泣き出しそうな、あるいは 叫び出し
たいような複雑な表情で「え? ちょっと・・・」と、か細い
声を漏らしました。

けれど、そのささやかな抗議が形になる前に、清潔な制服を
纏った数名のスタッフが、まるで私たちの会話を遮断する
ようにテーブルを囲みました。
銀のトレイからグラスが置かれ、冷えた瓶ビールも一緒に
並べられる。その雑然とした、しかし完璧な動きの渦に
流されるまま、平尾はようやく、由紀の隣へと腰を下ろし
ました。

ついに、私の正面には、ツイードスーツを纏った妻・由紀。
そして由紀の隣には、まるでJ・O崎さんを彷彿させるかの
ような ダークトーンながら大柄な幾何学模様が施された
総柄のニットを着た平尾が、ちょいワルな貫禄と どこか
暴力的なほどのエネルギーを放って座っていました。
ちなみに私の右隣には、戸惑う3人をよそに、スタッフの
動きにさりげなく目を光らせる徳永が着座していたのです。

「エエ席やろ!」平尾に向けて私は笑うと、

「いや・・・ どうなんやろ・・・」薄笑みで戸惑う平尾。

妻が静かに奪われていくような光景を、夫である私自身が
「最高のおもてなし」として祝福している。その歪んだ構図
に、下半身から突き上げてくるのは、抗いようのない熱い
震えでした。

琥珀色のビールがグラスに注がれる音だけが、やけに鮮明に
響いています。
私の目の前に、平尾の右腕と由紀のツイードの左側の袖が、
わずか10数センチの距離で並びました。
「夫」である私は、その二人を真正面から観賞するだけの、
孤独な「招待客」へと格下げされました。

(マジか・・・ホンマに こうなってしもうたんやな・・・)

悔しさ。疎外感。惨めさ。
この地獄のような「寝取られ状況」が、今、完璧に成立した
のだという事実。その背徳的な完成度に、私は絶望しながら
も、深い昂ぶりを隠せなくなっていたのです。

スタッフが注ぎ終えたビールの泡が、細かく弾ける音が
聞こえるくらいの静寂が、一瞬だけ卓を支配しました。
私の右隣に腰を下ろした徳永が、その静寂を心地よく
切り裂くように、軽やかな声を私に掛けてきました。

「じゃあ せっかくやし、矢部さん 乾杯のご発声を」

「オレ?・・・ じゃぁ カミさんにやらせましょうか?」

そんな状況でも私はウェルカムドリンクのシャンパンで、
すでに心地よく酔いが回り始めていたのか、妙におどけた
口調で返しました。
なによりも、由紀と平尾を「並ばせてやったんだ」という、
ある種の支配者気取りの万能感が私を饒舌にさせていたの
です。

私の軽口に、正面の由紀は一気に顔を赤らめ、

「ちょっと! もお!」と本気で嫌がる仕草を見せました。

「まあまあ、ここは矢部さんで・・・」と咄嗟に徳永が。

「そうそう、ヤベちゃんや、頼むで〜」と平尾まで。

彼らの言葉に気が緩んだ私は、椅子から少し腰を浮かせる
ようにして、右手に持ったグラスを高く掲げました。

「じゃぁ、いちおう起立しましょうか・・・
 ほんなら 楽しみましょう・・・メリ〜〜〜クリスマス!」

威勢よく掲げたグラスとは裏腹に、私はすぐさま自分で首を
振って見せました。

「・・・って、いやいや、クリスマスはまだ先やったな〜」

私のベタな ひとりボケツッコミに、

「おい! なんやねん!」 「なんでも えーですよ!」

と徳永と平尾が、むしろ待ってましたとばかりにオーバー
アクションで応えてくれました。

「あはは! ほんなら、あらためて、かんぱーーい!」

室内を揺らすような、私の晴れやかな発声。
二人の男を「笑い」で従わせ、この場を完璧にコントロール
しているという、どこかご満悦な私の乾杯でした。

しかし、その直後 いきなり刺激的な一瞬を私は目にすること
になったのです。

乾杯!と全員が声を重ねた瞬間、由紀と平尾が まるで強力な
磁石が引き合うかのように、一瞬だけ しかし深く視線を結び
合わせたのです。
私の掲げたグラスが中心に届くよりも、ほんのコンマ数秒、
わずかな、だけど決定的な時間差で、二人のグラスが先に
「カチン」と軽い音を立てて重なりました。

それは、発声者である私を置き去りにした、二人だけの完成
された儀式のように見えました。不可抗力を装いながらも、
魂の部分で密通している者同士が引き起こした「共鳴」。
私のグラスが遅れてそこに触れた時、冷たい振動と共に、
胸の奥を鋭い針でチクリと刺されたかのような疎外感が
走りました。

それでも、平尾たちがVIPルームに入り この乾杯まで、
時間にすればわずか数分しか経っていませんでしたが、
私にとっての数々のドラマチックで刺激的な展開により、
このビールの一口目は、なぜだか とても美味く爽快に感じ
られたのを覚えています。

「・・・ぷはぁ、うまいな〜」

ふと見ると 由紀が置いたビールのグラスの縁に、ローズ系の
口紅が薄く けれど鮮やかな輪郭を残して付着していました。
彼女の唇が、今は平尾の隣で、しっとりと濡れた艶を放って
いる・・・ その小さな赤い痕跡に、私はどうしようもなく
目を奪われていたのでした。

それでも、それぞれがビールを喉に流し込むと、卓上では
一転して、穏やかな歓談の時間が流れ始めました。

「矢部さん、由紀さんも・・・あの岬の先端を見てください
 冬のこの時間帯だけ、あそこが銀色に光るんですよ」

徳永さんがプロらしい知識を交え、私たちに窓外の景色の
移ろいを語ります。
視線を向ければ、やはり窓の向こうの絶景には目を見張る
ものがありました。

そこへ徳永の店が誇る、地元の海の幸をふんだんに使った
前菜が運ばれてきました。
皿の上で宝石のように輝く真鯛のカルパッチョや冬の果実を
添えたアミューズ。
これには由紀が感激して、「徳永さん、良いですかね?」と
問うが早いか、すでにスマホでパチリ。
「ありがとうございます!」と笑顔の徳永。

またオーナーとしての気配りなのか、徳永は由紀にもうまく
話を振り、パート先でのエピソードを心地良く喋らせたり、
平尾は平尾で、
「そういえばヤベちゃん、この前の芋焼酎、どうやった?」
と、いかにも親友らしい会話を持ち出してきたり。

いよいよパーティらしく、賑やかに和みのある「場」に
なっていったのです。

目の前の「美食」と「美酒」。
しかし少しずつ、私にとっては二人の親密さを引き立てる
ための、残酷な背景へと変わっていきました。
私の意識はもはや、どれほど美しい絶景にも どれほど繊細な
料理の味にも向いていませんでした。
私の目が執拗に捉えていたのは、「隣り合う二人の距離感」
です。

真正面に座っているはずの私。
けれど、二人が賑やかな雑談の中で肩を並べて笑っている
その構図を見つめ続けるうちに、私は自分が、この豪華な
舞台から少しずつ、しかし確実にはみ出していくのを感じて
いました。

ただ・・・その疎外感が深まれば深まるほど、皮肉なことに
私の目に映る由紀の姿は鮮烈な艶を帯び始めていたのです。

(・・・綺麗や。カアサンって、こんなに綺麗やったか?)

窓から差し込む冬の柔らかな光が、由紀の横顔を逆光で
縁取っていました。
入学式の「お下がり」だと茶化していたはずの、ツイードの
清楚な大人しいスーツも、隣に座る平尾のラフな外見とは
バランスが悪いはずなのに、むしろ似合っているように
見えてきたのです。

由紀のローズ系の口紅が引かれた唇は、食事と酒を愉しむ
たびに潤いを増して、時折 平尾に向けて零される微笑みは、
家で見せるそれよりもずっと無防備で、どこか挑発的な熱を
孕んでいるようにさえ感じられました。

そして・・・
笑い話や箸づかいの際に、無意識に体が寄り合って、二人の
距離が十数センチまで縮まった瞬間など。
疎外感という名の劇薬が、私の脳を麻痺させ、欲望を肥大化
させていたのです。

(もっと見せてくれ。もっと、あいつの隣で染まれ・・・)

私は、テーブルの下で自分の膝が微かに震え、下半身に
どろりとした、しかし激しい血が滾り始めるのを自覚して
いました。
自分の右隣にいる徳永の存在も、目の前に並ぶ高級な皿も、
すべてが遠い世界のノイズのように霞んでいたのでした。

私はすでに酔っていたのかもしれないですね。
少々尿意を感じていたのもこのあたりだったので・・・

それでも無理やり 冷えたビールを喉に流し込んだところで、
腹の底の熱は引くどころか、ますます激しさを増すばかり
でした。

私は さっきまで感じていたマウントを取ったような優越感が
ドス黒い、けれど甘美な興奮へと変質していくのを、
恍惚とした絶望の中で受け入れていたのでした。

それでも私なりに、この被虐感と下半身の滾りを悟られては
いけないと、平尾が語る 海外でのエピソードに 私はわざと
大きな声で笑い、徳永から振られてきた 離れて暮らす子ども
たちの話題には、由紀とともに饒舌に語りました。

話題がウォーキングなどの健康習慣から、いつの間にか
酒の嗜みへと移った頃でした。

「そういえば、焼酎は健康飲料や って言われてるやろ?」

平尾が切り出すと、私は待ってました とばかりに、

「あほか! 酒は酒や、飲みすぎ注意やで〜」

「ははは、厳しいな〜 矢部さん、じゃぁ次は健康飲料に
 しましょうか? 何が良いですか?」

徳永が絶妙なタイミングでアシストに入ります。
私は「焼酎は芋しかありえんやろ」と得意げに笑いました。

「了解です」

徳永が片手を軽く挙げると、部屋の隅で気配を消していた
スタッフが、まるで機械のような精密さで動き出しました。
「プレミアムの芋1本。氷とグラスも」という指示を飛ばす
徳永は続けて、
「ヒラ(平尾)は麦派やろ? 一緒に入れとくな」と、
澱みない会話のコントロールでパーティをリードしました。

その間も、テーブルには「ランチ」という言葉では片付け
られない、宝石のように繊細な料理が次々と運ばれてきて
いたのでした。
地元の冬野菜をあしらったメインディッシュ。
立ち上るソースの香りに、由紀は「すごい、すごい!」と
声を弾ませ、まるで子供のように夢中でスマホを皿に向けて
います。

「由紀さん、そんなに気に入ったのなら、僕のを食べます?
 ヒラ、お前もまだ手を付けてないやろ?
 由紀さんに お渡ししろよ」

徳永さんの軽口に、由紀は頬を上気させて、
「いえいえ・・・もぉ! 徳永さん!」と笑い転げています。
私はその光景を眺めながら、思わず口を挟みました。

「あんまり食べたら、そのスーツが弾けるで〜
 スカートもタイトやし・・・ ヤバいで!」

「もぉ! トウサン、それセクハラー!」

「あはは・・・!」

その時に由紀の横に座る平尾がチラリと由紀のスカートに
視線を落としたのを私は見逃しませんでした。
きっとタイトスカートからストッキングに包まれた左膝が
見えていたはずです。

(もっと見ろよ・・・見てくれ・・・見たいんやろ?)

ただし、エロ小説とかポルノ映画的には、
由紀の左隣に座る平尾がテーブル下(私からは死角)で、
由紀に右手を伸ばして悪戯をするシーンを想像 いや期待
さえしていましたが、少なくともこのテーブルでは現実的
には無理そうなのがわかり 奇妙な落胆を覚えていました。

BGMに軽快なクリスマスソング。
クリスタルグラスの触れ合う音。そして妻の明るい笑い声。
やがて私は、自分が「主」として、この豪華なパーティを
掌握しているかのような錯覚に陥っていたのでした。
平尾が由紀の隣にいることも、むしろ心地よく受け入れ
始めていたのです。

徳永が、あの言葉を口にするまでは・・・


[64] Re: 落花枝に帰らず  小太郎 :2026/02/22 (日) 12:46 ID:LfNma9gY No.2134
平尾さんの席を由紀さんの隣に決めてしまった徳永さんの意図は
由紀さんに直美さんの代わりになって欲しいという願望の現れ
でしょうか? 徳永さんは平尾さんの背中を押す役割で
このパーティーの舞台にいると感じました。

乾杯の音頭の直後の、由紀さんと平尾さんが まるで強力な磁石が
引き合うかのように、一瞬だけ しかし深く視線を結び合わせた
光景、魂の部分で密通している者同士が引き起こした「共鳴」を
矢部さんは目の前で感じてしまったのですね。
これこそが、由紀さんが矢部さんに見られたくなかった、二人の
間の距離感、温度だったのではないでしょうか?

このパーティーで徳永さんが果たした役割が、矢部さん、由紀さん
平尾さんの三人のこれからの運命を変えるのでしょうか?
パーティーという舞台で、それぞれの役割を担う役者4人が
揃いましたね。

続きを楽しみにしています。


[65] Re: 落花枝に帰らず  倍胡坐 :2026/02/22 (日) 18:59 ID:Wbqsg2Us No.2135
普通なら夫婦が隣同士で着座するのだと思いますが、
お二人の緊張や高揚感、入店してからの成り行きもありますので、
最終的な4人の位置関係がこうなることはあり得ることですよね。

そう考えると、ただの着座位置の話でしかないのですが、
こうして矢部さんが見た風景や想像を文章で綴っていただくことで
矢部さんの心のざわめきが伝わってくるように思います。

自分は由紀さんの夫であるという矢部さんの優越感。
それを逆撫でするような目の前の景色と会話。
やがてドス黒い感情に変わっていく様子を楽しみにしています。


[66] Re: 落花枝に帰らず  :2026/02/23 (月) 08:26 ID:99iwSY5o No.2138
作者サン 
また試すような終わりかたでみんなストレス貯まりますね。
それに倍胡座さん言ってたが普通は隣に座ってるもんですよ、
なんで最初から由紀さんと離れて座ったんです? 
寝取らせようとしたなら早く平尾さんに奥さんが寝取られないとね、
いつまでクリスマスパーティーしてるんですか?ながいです。。。 
次回に待ってますよ、ガンバって早く読ませて下さい。。


[67] Re: 落花枝に帰らず  健一 :2026/02/23 (月) 18:29 ID:8cbMIkNM No.2139
お待ちしてました。
平尾さんの服装は予想外でした。

由紀さんの「妻としての常識」
平尾さんの「矢部さんの友人としての常識」
この超えてはならない二つの「常識」が「非常識」へと変わるきっかけは徳永さんかも?と思い始めました。

いずれにしても由紀さんと平尾さんは対外的には常識人だと推察しますので、誰かが何かのきっかけを与えないと「身体を縛る」関係や矢部さんと由紀さんが離婚に進むとは考えにくい気がします。

勝手な想像でごめんなさい。次を楽しみにしています。


[68] Re: 落花枝に帰らず  たかし :2026/02/23 (月) 18:41 ID:6DJa0XwY No.2140
平尾氏は白系ジャケットではなかったですか・・・
ラフなのがなんか余裕を感じてちょっと悔しいです。
徳永氏は黒いドレスシャツ。
黒系に囲まれた白の由紀さんは生贄のようです。

私の勝手な由紀さんのイメージなんですが
黒髪ボブ、薄化粧、チノパン、スニーカー、エプロン、自転車 のイメージ、
ということなので少しぽっちゃり系を考えてました。
ところが若い頃から体形がほとんど変わらないとのことで結構ほっそりなのでしょうか?
女優の原田〇世さん、永作〇美さん、深津〇里さんあたり?
今後の妄想がしやすくなりますので教えていただけませんか?



それと平尾氏なのですが
172cmでやや小太りでアメフト部
BDSMが趣味でS?
この人がイメージしにくいんです
平尾氏っぽい俳優?タレント?教えていただけますでしょうか。

徳永氏のあの言葉
またしばらく悶々として過ごさせていただきます
いつもありがとうございます


[69] Re: 落花枝に帰らず  健一 :2026/02/24 (火) 00:56 ID:dt91TbtI No.2141
誤りがありましたのでお詫びして修正いたします。

誤「身体を縛る」
正「心を縛る」


[70] Re: 落花枝に帰らず  田中。 :2026/02/24 (火) 14:41 ID:pXkVTUz6 No.2144
席の着座、不自然と言えば不自然ですよね。。誰かがそう導いたというか。
考えてみれば徳永さんは平尾さん方の人ですもんね、矢部さん一人に対して平尾さんにはアシストする人がいますし場所は完全アウェーですし。 知らず知らずのうちにオセロに例えたら角は取られてますよ。


[71] Re: 落花枝に帰らず  西門 :2026/02/24 (火) 23:28 ID:CTyOqwmQ No.2145
3年前の出来事を本当に細やかに記憶されていることから、デートごっこの開始以来
初めて3人一堂に会したこのパーティーでの矢部さんの興奮ぶりが伝わって来ます。

この矢部さんの興奮ぶりを目の当たりにした由紀さんが矢部さんのどす黒い欲望に
気付き、この日まで平尾さんとの付き合いを受け入れるべきでないと抑制していた
枷を解放して平尾さんの女になることが自分自身だけでなく矢部さんの望みを叶える
ことにもなると覚悟を固めることになったのではないかと思うのですが、
如何でしょうか?

最終的に矢部さんのタクトが今の結果を招いたことになるのですか・・・


[72] Re: 落花枝に帰らず  定年おやじ :2026/02/25 (水) 08:29 ID:Jw2idy8I No.2147
 座る位置のことが話題になってますが作者さんの文章をよく読んでいくと海のきれいな景色や
店の雰囲気などで気分があがって、もし自分と妻とだったとしたら作者さんと同じ位置に座るような気がしてます。隣があいているのは気づかないです、実際に前の文章を読んだときでもわからなかったし『待てよマジか・・・』の気持ちになるのわかりますね、やばい!という。
主人公の性格とかも自分とにてるので面白い。この先どうなるかサスペンスドラマみたいですね
作者さん・この文章は続きなんですか、前の文章どこにあるんですか?
2025/12/22 (月) 00:00 ID:uUBZOVe2 No.2028より前の文章は?


[73] Re: 落花枝に帰らず  親切は人のためならず :2026/02/26 (木) 00:15 ID:w2Aj4.HQ No.2151
"覆水盆に返らず"で[他の男とセックスしている妻]でスタートし[なんでも体験告白]へ移動後
[他人棒という生き方]で"落花枝に帰らず"と改題し現在に至る

名もなきファンの一人でした


[74] Re: 落花枝に帰らず  矢部 :2026/03/06 (金) 11:11 ID:TAcDib/Q No.2157
小太郎様 いつも早々にコメントをくださりありがとうございます。
>パーティーという舞台で、それぞれの役割を担う役者4人が
揃いましたね
・そうですね、そのように捉えていただけることは拙い小説の作者としては本当に嬉しい思いです。
ただ、4人は揃いましたが、感情的になっているのは主人公だけのような。(もちろん、他人の心の内まではわかりませんが・・・)

倍胡坐様 いつも深いコメントをくださりありがとうございます。
>普通なら夫婦が隣同士で着座する
・やはり違和感、持たれましたか・・・
ここは創作なく自然に書いたのですが、結果、逆に面白みをなくしてしまいましたね。すみません。

笑様 コメントをくださりありがとうございます。
>普通は隣に座ってるもんですよ、
・やはり、席の位置への違和感を持たせてしまいましたね。今後は逆創作して、エンタメの要素を織り込んで書いていきますね。

健一様 いつもコメントをくださりありがとうございます。
>勝手な想像でごめんなさい。
・とんでもございません、読者様方で妄想・想像していただけるのは、作者冥利に尽きます。とても嬉しいです。

たかし様 いつもコメントをくださりありがとうございます。
>今後の妄想がしやすくなりますので教えていただけませんか?
・かなり前に由紀の外見に触れたシーンはあったのですが、あえて、皆様のご想像におまかせしたほうが良いかと思っています。
たかし様だけの登場人物をイメージして読んでいただければ、とても嬉しいです。

田中。様 いつもコメントをくださりありがとうございます。
>席の着座、不自然と言えば不自然ですよね。。
・やはり、そう思われますよね・・・ このようになってしまったからそのように書いたのですが、逆に脚色・創作したような感じになってしまいましたかね。

西門様 いつも深いコメントをくださりありがとうございます。
>3年前の出来事を本当に細やかに記憶されている
・正直に申しますと、一言一句記憶しているわけではなくて、文章化するにあたり創作している箇所はあります。
修飾したり、省略したり、海を山と言ったり、できるだけ真っ直ぐに書きたいのですが、リアルにご迷惑をおかけする方面も出てきますので、そこはご理解をいただけますと幸いに存じます。

定年おやじ様 コメントをくださりありがとうございます。
>主人公の性格とかも自分とにてるので面白い。
・とても励みになるコメントに救われました。本当にありがとうございます。

親切は人のためならず様 コメントをくださりありがとうございます。
>名もなきファンの一人
・応援ありがとうございます。過去のスレッドまでご紹介いただき感謝申し上げます。


******

BGMに軽快なクリスマスソング。
クリスタルグラスの触れ合う音。そして妻の明るい笑い声。
やがて私は、自分が「主」として、この豪華なパーティを
掌握しているかのような錯覚に陥っていたのでした。
平尾が由紀の隣にいることも、むしろ心地よく受け入れ
始めていたのです。

徳永が、あの言葉を口にするまでは・・・

「で、ヒラ・・・ 副社長は、いつまでやるん?」

和やかな笑いの渦を柔らかく切り裂くように、徳永のその
一言が静かに優しく放たれました。

「あー、いちおう来年3月いっぱい やろな〜」と平尾。

グラスに手を伸ばそうとした私の動きが止まりました。

(えっ なんや? 副社長 いつまで? どういう意味や?)

とりあえず何のことかわからないまま私は、

「え? なんや もう終わりかいな、副社長さん 早いなぁ」

これまでの温かく和み笑みの絶えない場の雰囲気合わせて、
私は なるべく無造作に聞き返しました。

「そうや、“フクシャ” クビになったんや〜(笑)」

平尾は まるで悪戯が成功した子供のような顔で、隣の由紀を
チラリと見ながら答えました。

由紀も、良くわからないまま? とりあえず? ニッコリと
頷いて返していました。

そのあともテーブルを囲んで、まるで私が音頭を取るように、

「会社の金を使い込んだんか?」⇔「逃亡しとるわ(笑)」

「まさかセクハラか?」⇔「そんな元気ないで・・・(笑)」

「下請けイジメか?」⇔「こっちがイジメられてるわ(笑)」

など 私と平尾は、際どさの中にも、冗談交じりに饒舌に、
やり取りをしていました。

程なくして・・・

「あはは、もうエエで・・・ 逆やろ、逆ぅ〜」と徳永。

「逆?」(何のこと?)キョトンとした私に、

「あっ・・・ こいつ、社長さんになるんですわ」

徳永が平尾を指差したのです。

(うそやろ・・・マジか・・・)

いちおう平尾の会社は我が社の関連子会社ではありますが、
ランク的には上位であり、いずれ親会社である私の勤務する
会社には役員として戻るのが通例になっています。

当然 私は驚きましたし、胸の中にあった このパーティでの
「主(あるじ)」としての万能感は、この瞬間に音を立てて
崩れ去りました。
私がどれほど焼酎の知識で虚勢を張り、冗談でこの場を盛り
上げたところで、平尾が手にした「社長」という絶対的な
社会的地位の前では、すべてが砂上の楼閣に過ぎなかった
のです。

同期で大の親友がついに社長になる・・・
本来なら手放しで祝うべきニュースですが、そんな気持ち
なんて湧かないですよね。(私だけ?)
しかも妻がいる前でその事実を聞かされるのは、あまりにも
惨めな気がしたのでした。

一気に高級芋焼酎の味が苦くなり、隣席 徳永のコントロールの
上手ささえ、私を格下として あしらうための皮肉のように
思えてきました。

しかし私は、ここでは夫としての 親友としての懐の大きさは
見せておかないといけない、というのもあって、

「そりゃ、すごいな! スピード違反やろ 早すぎるで!」

私は乾いた声で そう問うのが精一杯でした。

「あはは、矢部さん上手いこと言いますね!」と徳永。

「まぁ、もともと帰国した時から、決まってたんやけどな、
 年明け早々 正式に発表ってことや・・・
 結局、責任が重うなるだけやし 経営もめんどくさいで」

平尾は謙遜してみせますが、その仕草には揺るぎない自信を
持つ男特有の余裕が溢れていました。
背もたれにゆったりと体を預け、グラスを傾ける彼の姿は、
まさにこの場の主役に相応しい風格を纏い始めていました。

一方の私はどうでしょう。
親友の成功を心から祝えない心の狭さと 先ほどから下腹部を
じわじわと攻めてくる尿意の不快感。
私は椅子の上で微かな身じろぎを繰り返しながら ジリジリと
した焦燥感に煽られていました。

それに、何より腹立たしいのは、由紀の反応でした。
私は真正面から見る限り、由紀は 特に驚く様子もなく、
深く そして誇らしげに頷き、まるで「分かっていましたよ」
と言わんばかりの、慈しみに満ちた彼女の眼差しを平尾に
向けていたのです。

「ホント、すごいですね・・・ おめでとうございます」

そう言って由紀は、平尾を見つめて静かに微笑みました。

(・・・そんな顔、オレの前でしたことないやろ!)

その眼差しは、私が家で見慣れている “カアサン”の
穏やかさとは明らかに異質なもので、これまで私という夫に
一度も向けられたことがないほど熱く、そして純度の高い
ものに見えたのです。

(待てよ? もしかして由紀は知っていた?)

そうだとしたら自分には一言の連絡も報告もなかった事実。

ではその話を彼女はいつ、どうやって知らされていたのか?
これまでのデートの中? スマホで交わされたやり取り?

夫を蚊帳の外に置き、二人はすでに 人生の重大な節目さえも
共有する関係になっているのかもしれない・・・
由紀のその穏やかな頷きは、私にとって肉体的な浮気よりも
ずっと深い「魂の裏切り」のように突き刺さりました。

その日 私が見ていた艶っぽい由紀は、夫である私の演出に
よって輝いていたのではなく、隣に座る 貫禄ある成功者の
光を浴びて蕩けていただけでは?

癪ですが、この時 私の前に並んで座るその男女二人の外見は、
明暗、善悪、白黒、淑暴と全くの対称的なのに、まるで完璧な
バランス(まるで美女と野獣? 言いすぎかもしれませんね)で
収まって見えていたのです。
いや 見えた、というよりは、私がそう見たいと願い、勝手に
色づけしていただけなのかもしれませんが;;
私のドス黒い願望が、二人を「情事の関係」へと無理やり
翻訳していたのです。

今一度、落ち着いて観察する彼女の横顔からは、普通に
「夫の親友の出世を喜ぶ、礼儀正しい知人」に見えなくも
なかったので。 つまりは、被害者妄想? だったのかも。

「よし!もう一回、乾杯やな! 次はぶどうジュースや!」

徳永が無邪気にテーブルの雰囲気を纏めます。

「ジュース? ワインやろ?」と平尾が笑顔で返すと、

「さすが社長! あんたには最高級のワインや、わしらは
 その搾り粕のジュースで、えんやけどな あはは」

徳永がここでも私には堪えるジョークで。

「あほか! トクちゃんこそ、オーナー特権で一番高いのを
 100本くらい出してくれるんやろ? 知らんけど」
と平尾が返せば、

「うわぁ 楽しみです。オーナーの徳永さん」と由紀まで。

「勘弁して〜 しゃちょうさーん え? 由紀さんまで〜」

徳永が おどけるとテーブルは大爆笑となりました。
私以外は心からの笑顔と笑い声だったのは確かです。

窓の外の景色は、相変わらず美しく輝いています。
ただ私にとっては「責任」だ、「経営」だ、「特権」だ、と
縁遠い単語が飛び交う中は、とても居心地が悪くなって
きていたのです。
しかし、その光に照らし出されたのは、成功した男の隣で
蕩けるように微笑む妻と、その光景を眺め続けるしかない、
惨めな私の影だけでした。

「・・・悪い ちょっと・・・」

ついに耐えきれなくなった尿意と、それ以上に耐えがたい
この空気から逃げ出すように、私は椅子を引きました。

重い扉を閉め、華やかな喧騒から逃れるようにVIPルーム
フロア専用のパウダールームへ足早に駆け込みました。

清潔感にあふれ アロマ?の香りに包まれたリラックスした
穏やかな空間の中で用を足し、膀胱を圧迫していた重苦しさ
から解放されると、先ほどまで私の心を支配していた
「ドス黒い嫉妬」や「負け犬根性」が、嘘のように ふっと
軽くなるのを感じました。

まぁ、よくよく考えてみれば・・・
平尾の社長就任のことだって、徳永くらいの親友なら普通は
事前に知らされているものだろう・・・
由紀だって、場の空気を壊さないように ただ淑やかに
頷いていただけなのかもしれない、いや きっとそうや・・・
私が勝手に“疎外された”と被害妄想を膨らませていただけ
ではないのか・・・?
そんな楽観的な気持ちさえ芽生え始めていたのです。

(なんや、オレも単純やなぁ、
 結局は トイレに行きたかっただけやったんか・・・)

鏡の前で手を洗いながら、私は自分に言い聞かせるように
苦笑しました。

と、そこに徳永が入ってきました。

「あ、矢部さん・・・」

彼は、早速 用を足しながら、私に向けて

「今日はありがとうございます、いかがです?
 料理とかお口に合えば良かったのですが・・・」

(トイレでする会話じゃないですよね・・・(笑))

私も、ここだけは本音で、

「料理はもちろんですが、焼酎も美味しかったですよ」と。

そのほか、店の雰囲気や絶景のこと、洗練されたスタッフの
動きを褒めたりしながら 二人でVIPルームに戻りつつ、私は
片方の頭では 今、あの部屋で由紀と平尾が二人きりになって
いるシーンをイメージしていました。
その瞬間 私は、先ほどまでの“ほぐれていた気持ち”は、
どこかへ消え、背徳的なゾクゾクとした生ぬるい熱が背筋を
駆け上がってきたのです。

「アイツ(平尾)が社長とか、すごいですよね〜」

さらに徳永の何気ない一言に、私は少しだけ胸がチクリと
しました。

(オイオイ 勘弁してや・・・せっかく立ち直ったのに)

そう思いながら私は、

「ま、アイツも奥さん 亡くしてるし、その分だけは苦労も
 してるしね・・・ でも、社長さんに してもろうたんやし
 ・・・ まぁ、今日の支払いは ぜーんぶ、社長に持たせ
 ましょうか〜 あはは!」

私はおどけた口調で、なかば冗談、なかば皮肉を込めて、
そう言い放ちました。
ところが、徳永は至って真面目な顔で頷いたのです。

「いえ 矢部さん・・・実はヒラが“自分が全部持つ”って、
 言うてるんですわ・・・ 矢部さんと奥さんに本当に
 お世話になっているから、今日のは オレや、って」

(嘘やろ・・・)

乾いた笑いが、私の頬に貼り付いたまま凍りつきました。
冗談のつもりの言葉が、平尾の本物の余裕に飲み込まれ、
私自身の器の小ささを露呈させただけの結果に 終わったの
です。

「いや、それはアカンでしょ。エエカッコしすぎや・・・
 うちはカミさんと二人やし、全部持たせるわけには・・・
 トクさん、うちは半分・・・」

私がムキになって食い下がると、徳永は「困りましたね」と
苦笑いしながら、ふと思いついたように足を止めました。

「じゃあ、こうしましょうか」

焦る私を宥めるように、徳永は提案してきたのです。

「ヒラの社長就任祝いとして、サプライズでブランデーを
 贈りませんか?  矢部さんと僕の連名ということで。
 それなら、ヒラも喜ぶし断れんでしょう」

「それ エエですね、ぜひ! せっかくやから最高級の で」

渡りに船の提案でした。これで私のメンツも保たれる。
そう安堵したのも束の間・・・

「では、ちょっとこちらへ」と徳永は、くるりとVIPルーム
とは反対側に私を誘ったのです。

「せっかくの親友二人からの贈り物ですから、一緒に選び
 ませんか?」とノリ気の徳永。

(今から?)

一瞬、躊躇いが走りました。
今この瞬間も、あの部屋では由紀と平尾が二人きり。
しかし、自らも「連名で祝いたい」に同意した手前、彼に
合わせないわけにもいかず、徳永の熱意と 私への気遣いに
背を向けるのは男としてのプライドが許さなかったのです。
それに・・・ もしかして由紀のことを心配しているのか?
とも勘づかれてしまう。

私は喉が、焦燥でカラカラに乾いていくのを感じながらも
言いました。

「いや〜 実は僕、洋酒のこと、あんまりわからんし、
 トクさんに まかせますよ・・・
 焼酎やったら、なんとなくわかるんやけどねー、あはは」

「あぁ わかりました・・・そうですね まかせてください
 早くお戻りいただいて、時間もあと少しですが楽しんで
 くださいね」

と笑顔の徳永だったのですが、もしかしたら焦っている私の
気持ちを あざ笑っているかのようにも見えてしまいました。
(決してそんなことはないのでしょう けどね・・・)

「あ、もうこんな時間やね・・・ それにしても・・・」と
白々しくも強がる私。

本当は早足で戻りたかったのです。
しかし妻のことを心配している、と思われたくなかった私は
そんな気持ちを悟られまいと、この後も他愛もない会話を
2-3言、交わして、「では、また」と余裕たっぷりの仕草で
再びVIPルームに向かったのでした。

(今、平尾と由紀は何を話してる? 何をしてるや?)

私は 興奮と不安にゾクゾクしながら、ようやく扉の前へと
辿り着きました。


[75] Re: 落花枝に帰らず  小太郎 :2026/03/06 (金) 12:47 ID:u1oyuGZM No.2158
平尾さんの社長就任の話、それを聞いた落ち着いた反応から
由紀さんは事前に知っていたでしょうね。
人生の節目さえも共有している由紀さんと平尾さんに嫉妬を覚え
そのドス黒い嫉妬が矢部さんの寝取られ性癖を刺激し、それが
これからの展開に関わって来るのでしょうか?

特に平尾さんを見つめる由紀さんの熱い眼差しには、平尾さんへの
愛情すら感じてしまいますね。
矢部さんと共に連れションした徳永さんは、由紀さんと平尾さんを
二人きりにしてあげようとしたのでしょうか?
二人きりの由紀さんと平尾さんの距離感は更に縮まって、何を
語り合っているのでしょうか?

続きを楽しみにしています。


[76] Re: 落花枝に帰らず  たかし :2026/03/06 (金) 15:55 ID:aL8PTdbs No.2159
前回の更新から12日間待ち遠しかったです。
更新待つ間は最初から読み返したりしています。
当初デートごっこを了承する条件がありました。
平尾氏を元気づける他に
矢部さんのED治療になるからということがありました。
3回のデートを経て由紀さんは何も確認されなかったのでしょうか?
今の様子だともうすっかり矢部さんのEDのことは忘れて
平尾さんのことだけを心配しておられるようですね。
EDの治療のためにも、と了承されたのは
矢部さんとまた夜の生活をしたいという気持ちがあったのでしょうか?

由紀さんには二十歳そこそこの?年下の彼氏と同棲して
結婚まで考えた過去がありました。
今の良妻賢母な様子からは想像できない情熱的な
一途に突っ走る一面もある女性だったことも思い出しました。

またわくわくしながら待たせていただきます。


[77] Re: 落花枝に帰らず  倍胡坐 :2026/03/08 (日) 17:04 ID:4kj5RnTI No.2160
夫婦二人だけで眼前に広がる雄大な景色を目の当たりにすれば
夫婦向かい合って着座するのは自然だと思います。
矢部さんにとってこの時ばかりは
夫婦水入らずの時間だったのだと思います。
少なくとも平尾さんの登場までは・・・。

ですが、由紀さんにとってはどうだったのでしょう。
平尾さんとのLine開通により
わざわざ矢部さんの指図を待つまでもなく
直接に、そして日常的に意思の疎通が可能となったのですから、
平尾さんとは相応の関係が構築されつつあると見るのが自然ですよね。
それがどんな関係かは一番モヤモヤさせられるところですが。

ひょっとしたら着座位置の違和感は矢部さんだけのものだったのかも。

今回は矢部さんがひとり置いてけぼりを食らったような
ジリジリとした思いが中心となってしまい
ドス黒い感情全開とはいかなかったようですね。

今後も楽しみにしております。


[78] Re: 落花枝に帰らず  :2026/03/09 (月) 08:32 ID:hUmqCETw No.2161
作者サン 
またまた試すような終わりかたでみんなストレス貯まってますよ
つぎは平尾と由紀さんが部屋でなにかしてないとこの物語は只の日記です。
それに景色がいいのと横に
席になったのと社長になっただけの事なのにいつまでクリスマスパーティーしてるんです?長い。 
ガンバってどんどん次を早く読ませて下さい。。


[79] Re: 落花枝に帰らず  西門 :2026/03/11 (水) 15:12 ID:9ki2F0NE No.2163
平尾さんの社長就任の情報で矢部さんの感じたショックの大きさは理解できるのですが、
由紀さんのような母性の強い女性にとっては平尾氏の社長就任はそれほど重要ではないと
思います。
由紀さんが平尾さんに惹かれて行った過程を矢部さん目線で書いて頂いたら、女性の牡に対する
魂の揺らぎを知ることができると思い、矢部さんの報告に興味が深くなるばかりです。
矢部さんペースでじっくり書き込んで頂くことを希望します。


[80] Re: 落花枝に帰らず  健一 :2026/03/12 (木) 11:55 ID:g3OHNs8o No.2164
由紀さんのこれからの変化、最終的には矢部さんとの離婚を選択するまでの移り変わりが楽しみです。矢部さんのペースと矢部さんの「味」で執筆を続けてください。楽しみにしています。

[81] Re: 落花枝に帰らず  矢部 :2026/03/21 (土) 10:20 ID:19n7RMKs No.2168
小太郎様 いつも早々にコメントをくださりありがとうございます。
>それを聞いた落ち着いた反応から由紀さんは事前に知っていた
・そうですね、LINEなどで連絡もし合えていますから、事前に知っていたほうが自然でしょうね。

たかし様 いつもコメントをくださりありがとうございます。
> 3回のデートを経て由紀さんは何も確認されなかったのでしょうか?
・女性側、というか由紀から、ED治った?と言い出すのは、難しいとか恥ずかしかったのかなと(推測ですが)。

倍胡坐様 いつも深いコメントをくださりありがとうございます。
>それがどんな関係かは一番モヤモヤさせられる
・たしかにそうですね、主人公としては、もしかしたら必要以上に関係性を疑っている可能性もあるわけで・・・;;

笑様 いつもコメントをくださりありがとうございます。
>平尾と由紀さんが部屋でなにかしてないとこの物語は只の日記
・すみません、日記になってしまいました。

西門様 いつも有難いコメントをくださりありがとうございます。
>報告に興味が深くなるばかり
・そのように言っていただき作者としても嬉しい限りです。

健一様 いつもコメントをくださりありがとうございます。
>矢部さんのペースと矢部さんの「味」で執筆を続けてください。
・そのように言っていただけることに感謝しかありません。


皆様、すみません。クリスマスがまだ終わりません・・・(汗)


*****


重厚な扉のバーを握って、私は一呼吸置きました。

手のひらに伝わる 取っ手の冷たい金属の感触とは裏腹に、
私の胸の内は、期待と不安 そして得体の知れない高揚感で、
今にも弾けそうになっていたのです。

扉の向こう側で、私という夫 そしてオーナーの徳永までもが
不在の中、時間にすれば7・8分程度だったと思いますが、
平尾と由紀はいったいどのような空気を共有しているのか?

私は、震える手つきでゆっくりと扉を開けました。

しかし そこに広がっていた光景は、私のどろりとした妄想を
優しく裏切るような、拍子抜けするほど静かなものでした。

「おっ、ヤベちゃん」

平尾が一人、冬の柔らかな光に包まれた窓外を眺めながら、
グラスをゆっくりと傾けていました。
そこには、彼の隣で艶やかに微笑んでいたはずの由紀の姿は
ありませんでした。

「ありゃ? なんや、一人か うちのカミさんは?」

私はなるべく平穏を装い、自分の席へと戻りました。

「由紀さんもトイレちゃうかな? トクちゃんが出ていった
 あとで すぐに・・・」

「ふーん、そうやったんか〜」

まず私は間違いなく安堵していました。

が、心のどこかで、決定的な「何か」を目撃したかった、
という救いようのない渇望があったのも事実でした。

どこか拍子抜けもしていた私は、

「で、ヒラ。おめでとさん。すごいな 社長さんやな〜」

私は、テーブルに残されていた自分のグラスを手に取り、
少しだけ持ち上げました。

「いやぁー めんどくさいだけや ホンマ マジで」

平尾は苦笑いしながら、少し身を乗り出して、私のグラスに
自分のそれを軽く合わせました。

軽く2-3言、仕事の話を交わしたのですが、彼の動作には、
成功者特有の揺るぎない余裕が満ちていて、それが私には、
何より残酷な“格の差”として突き刺さるのでした。

私は焼酎のロックを一口啜り、喉を焼く刺激を頼りに、
最も聞きたかった核心へと舵を切ることにしました。

「そういえば、カミさんと話は弾んでるんか?」

「そんなん普通やで、そっちにも聞こえてるやろ? 
 ここの料理の話やら、あと、まぁ仕事のことやなー」

「次のデートの話は? どないするんや?」

平尾は少しだけ視線を彷徨わせ、どこか困ったような微笑を
浮かべました。

「アホか、そんな話 ここで できるかいな・・・」

それでも私は、由紀も“デートは続けたほうが良い”と
言っていたことを、あらためて彼に伝えました。

さらに、

「社長になるんやろ? なおさらメンタル治しとかんと、
 あかんで・・・ 重責やろ?」

平尾はそれでも、今年いっぱいは海外出張が控えている
こともあり ムリだと返してきたので、だったら来年早々に、
ということで、半ば強引に私の方が勢いで押し切った形に
なりました。

「まあ、そこまで言うなら 検討しときますわっ・・・」

平尾は笑顔で冗談っぽいノリで返してきました。

その後も私たちは、何言か 半分オチャラけた感じで、
デートをする、しないの会話をしていたのでした。

「今日はカミさんも気合入ってるで! どうや? 社長さん」

「どう?・・・って、なんや?」

笑った平尾が、すぐに深刻な顔になって続けました。

「あ、でもな・・・」

彼は言葉を切り、少しだけ声を潜めて身を乗り出しました。

「さっき由紀さんが席 立とうとした時にな・・・ 
 うーん、これ、もしかしたらオレが いらんこと言うて、
 由紀さんを不快にさせてしまったかもしれんのやけど」

「なんや? 縛りましょうか、とか言うたんか?」と私。

同時に下半身が キュッと引き締まるのを感じました。

「アホ!そんなん言えるかい・・・いや 横に座ってるとな、
 どうしても目に入ってしまうというか・・・
 由紀さんのタイトのスカートの裾がな、上がってて・・・」

平尾はそこまで言うと、何かを思い出すかのように視線を
泳がせていました。
さらに少し恥ずかしそうに、自分の膝のあたりを指差して、

「で、下着? シミーズ? なんやろ? とにかくスカートの
 裾からレースとか チラチラ見えてたんや わりと長い時間。
 で、迷ったんやけど、誰かに見られてもあかんやろうし
 “由紀さん、そこ”って、教えてあげたんや・・・」

私の頭の中に、真っ白な火花が散りました。
由紀の あの清楚なタイトスカート、そこから覗く繊細なレース。

平尾は由紀のスリップを、至近距離で凝視していたのです。
彼は私の妻の秘めやかな部分を、その網膜に焼き付けて
いたのです。

「そしたら “え? あっ”って、由紀さん 慌ててスカート
 なおして、逃げるようにココを出ていったんや・・・
 顏も真っ赤やったし・・・ なんか悪いことしたわ」

平尾は本当に申し訳なさそうに、頭を掻いていました。

「あはは、なんや、そんなん気にすんな。ヒラは親切で
 言うたんやろ? あいつこそ礼を言わんとあかんよ!」

私は笑って答えました。
声が少し上ずり、喉がヒリつくのを感じましたが、彼は
気づきませんでした。

「まあ、見てたオレの方もなんか恥ずかしかったし な」

そんなふうに平尾がバツの悪そうな顔で言ってきたので、

「そうか? オレは別になんとも思わんが・・・」

咄嗟に あっさりと返した私の言葉は、まったくの嘘でした。

ここで この話にノッテしまえば、私が 実は由紀のことを
気にしている と平尾に思われてしまうような気がしたのと、
もうひとつ 密かに私が女性のスリップ姿に寄せる性癖だけは
絶対に知られたくなかった という、姑息な気持ちがあった
からです。

「まぁ、えーもん 見せてもろうて えかったなぁ あはは!」

と続けた私。

口ではそう言って強がり おどけて見せながら、私の心臓は
爆発しそうなほど高鳴っていました。

(由紀、今日はスリップを着ているんや・・・)
(しかも平尾の隣で、無防備に晒していたとか・・・)

脳裏には、平尾に耳元で囁かれ、羞恥に震える由紀の姿が、
鮮明な映像となって浮かび上がっていました。
平尾の低い声が彼女の耳朶を打ち、彼女が慌てて自分の
太腿を隠そうとする・・・
そんな一連の動作が、何よりも濃密な情事のワンシーンの
ように思えてなりませんでした。

下半身に、どろりとした熱が戻ってきました。
トイレで一度はリセットされたはずの被虐的な快楽が、
平尾のこの「善意の告白」によって、さらに純度を増して
私を侵食してきたのです。

(なんでオレは見れんかったん・・・見たかったのに)

と思う一方で、

(もっと見ろよ、見てくれよ、見たらえーやん・・・)

ちょうどその時、徳永が快活な笑い声とともに、そして
それを追うように由紀が なんとなく少し照れを含んだような
表情で部屋に戻ってきました。

「お待たせ! 平尾社長就任のお祝いですよー!」

徳永の腕には、高級ブランデー(ヘネシーXO)が入った箱が
抱えられ、そのすぐ隣には由紀が並んでいました。

「ヒラ、これ・・・ 矢部さんご夫婦とオレからの連名の
 お祝いや。受け取ってくれ」

徳永の威勢の良い言葉に驚いた平尾は 席を立ち、私も一緒に
腰を上げました。

「ほんの気持ちやけどな・・・」と私も。

由紀が徳永からケースを受け取って、「どうぞ」と平尾に。

「マジか!悪いな、こんなに気を遣ってもらって・・・
 ありがとうございます、美味しく飲ませてもらいます」

平尾は、まるで宝物を受け取る少年のように目を細め、
深々と頭を下げました。
部屋中に、友人たちの絆を祝福するような温かく晴れやかな
空気が満ちていきました。
パチパチという拍手と笑い声が、VIPルームの洗練された
空間に心地よく反響していました。
(スタッフ達も整列して笑顔で拍手をしてくれました)

そして再び席に着いた私たちのもとにスタッフが次の料理を
並べ始めました。

私は隣の徳永に「良い提案、ありがとうございました」と
話を向け、徳永からは、割り勘は先ほど由紀が払った などと
普通に話をしていたのでした。

そんな私の視界の端・・・

正面に座る二人の間には、私を置き去りにした 別の時間が
流れていたのを、私は見逃しませんでした。

平尾が、隣に座り直した由紀に、私に届くか届かないかの
低い声で語りかけていたのです。

「ありがとうございます、気を遣ってもらって・・・
 あと、さっきはすみません、変なことを言って」

こんな感じの口つきだったように思います。

すると由紀は、私の前では 最近とんと見せなくなったような
悪戯っぽい それでいて慈しみに満ちた笑みを浮かべて、

「いいえ。こちらこそ、ありがとうございました」

と 由紀は、わざとらしく 頬をぷくっと膨らませて平尾に
向きました。
もちろんそれは、怒っているというよりは、
「恥ずかしかったんですよ」という甘えを含んだ抗議の
ように見えました。
そして、そのまま吸い寄せられるように視線を平尾の瞳に
固定させると、柔らかく湿ったような眼差しで彼を見つめ
返したのです。

(スリップの裾のこと、まだ引きずっているんやな)

私の胸の奥に、鋭い棘が刺さりました。
平尾の“勇気ある”指摘は、二人だけの、誰にも立ち入る
ことのできない“秘密の共有”へと、瞬時に姿を変えて
いたのです。

平尾が、わざとらしく大げさに、まるで検品でもするかの
ように由紀の膝元へ視線を落とし、そして悪戯っ子のような
顔をして由紀にだけ聞こえるような小声で囁きました。

「あらら、直ってますやん 残念やな〜 あはは」

由紀は一瞬、はっと息を呑むような表情を見せましたが、
すぐに「もぉ!」と囁き、さらに 声を立てずに「バカ」と、
唇を動かしました。
そして、その流れで由紀の左手が 平尾の右肩を ポンッ と、
親密な重みを伴って軽く叩いたのです。

その あまりにも自然で、流れるようなやり取り・・・

些細な けれど決定的な親密さに、私の心臓は止まりそうに
なりました。

(カアサン・・・マジか・・・ )

夫である私の目の前で、彼らはまるで長年連れ添った夫婦、
あるいは付き合いたての恋人同士のような、濃密な親密さを
隠そうともしていなかったのです・・・
これまで3回のデートは、なんだかんだと二人からの報告で
興奮や嫉妬を感じていたのですが、この私の目の前での
たかが数秒のほんの些細なシーンは、今までで 一番の衝撃に
なっていたのでした。

もちろん二人に聞けば、そんな気はあるわけない、と言うに
違いありません。
いや、むしろ平尾と由紀に友達以上の感情がないからこそ、
その動作は 計算されていない、身体に染み付いた距離感に
見えたのです。
私は言いようのないやるせなさと それ以上の激しい被虐感に
下半身を焼き尽くされるような熱情に支配されたのです。

「矢部さん? 焼酎、もう一杯いきましょうか」

ここで徳永の絶妙なフォローが、凍りつきそうになった私の
意識を、無理やりテーブル上の和やかな時間へと引き戻して
くれました。

「あっ ええ・・・お願いします 美味いですよね、これ」

徳永に向けて作り笑いを浮かべ、喉の渇きを癒やすように、
焼酎という液体を一気に流し込みました。

その後も 徳永の流暢なトークによって卓上は、再び賑やかに
なり、最終コーナーを回ったパーティは、終わりの空気に
包まれていきました。
しかし私の網膜には 平尾の肩を親しげに叩いた由紀の左手と
マニキュアに彩られた爪の残像が、ずっとこびりついていた
のです。

やがて名残惜しくも、宴は静かに幕を下ろしました。

最後に運ばれてきたのは、徳永のこだわりが詰まった、
目にも鮮やかなアイスクリームのデザートでした。
その冷たく甘い余韻を楽しみながらも、私たちは席を立ち
ました。

実は、この後も みんなで街に戻って2次会を、と私は提案
したのですが、徳永はお店のこともあり 平尾も明後日からの
出張の準備があるとのことで この場で解散となりました。

最後に窓向こうの絶景をバックに4人(私 由紀 平尾 徳永)
が並んで、スタッフに写真を撮ってもらい、VIPルームを
後にしたのです。

徳永の先導に従い、絨毯の敷き詰められた静かな廊下を、
ゆっくりとエレベーターホールへ向かって歩きます。

徳永は私の少し前を由紀と並んで歩いて、先ほどの割り勘の
おつりが何とか とか、話していたのですが、由紀の後ろ姿に
ふと目が留まりました。

今日の彼女が選んだ、オフホワイトのツイードスーツ。
家を出る前は、まるで「PTAの役員か」などと無粋な揶揄を
投げかけてしまった私でしたが、今、この洗練された空間の
中で見る彼女の姿は、どうしようもないほどに美しく、
この場にしっかりと馴染んでいました。

(綺麗やな〜)

私は素直にそう思いました。
平尾や徳永という成功した男達の視線に晒され適度な緊張感
に包まれたことで、彼女の中に眠っていた「女」の輪郭が、
驚くほど鮮明に浮き彫りになっていたような気がしました。
さらに私の脳裏には、先ほどの衝撃シーンが こびりついて
いたのです。

(この清楚なスーツの下にスリップを着ているんやな)

そう思うだけで、彼女の歩みに合わせて揺れる腰のラインや
ストッキングに包まれたふくらはぎ、ヒールの音までもが
暴力的なまでの色気を帯びて私を刺してきていました。
自分の妻を、まるで他人の女を 盗み見るような、卑しい、
けれど 熱い視線で追いかけていたのでした。

あらためて私たちがエレベーターホールに集まった時、
私たちの輪の中に平尾の姿がないことに気づいたのです。

「あれ? ヒラは?」

一瞬の空白に、私の胸に微かなざわめきが走りましたが、
すぐに彼は、紙袋を持って颯爽と現れました。

「お待たせ! ヤベちゃん、今年はホンマに世話になったな」

平尾はそう言って 落ち着いた色合いの桐の小箱を差し出して
きました。

「これ、備前焼のコップや・・・ 芋焼酎に よう合うで。
 まぁ、ささやかなクリスマスプレゼントや 」

「え! いや、ヒラ、そんなんあかんで」

そんなやりとりを数回交わしたと思います。
親友らしい 気の利いた贈り物と思う一方で、今年限りで
デートごっこを終わりにしたい と言っていた平尾の言葉が
この備前焼に代えられているような気がしたのです。

徳永の前でその話を出すわけにもいかず、私は彼の厚意を
嬉しく感じながらも、どうしても一方では 仲睦まじかった
平尾と由紀のシーンがよぎってしまい、被虐的な心地良さを
次回の(来年の)デートごっこにも求めていたのです。

「ヒラ! オレの分は ないんか? 寂しいやないか」と徳永。

「トクちゃんのはクルージングや オレは今年いっぱいは
 海外出張や・・・ そやから年明けに、盛大にやるで〜
 それがプレゼント代わりや ええやろ?」

平尾の口から、さらりと飛び出した「クルージング」や
「海外出張」という言葉。
その大物感溢れる響きに、私は自分が手に持った備前焼の
コップが、急に“引退した隠居への贈り物”のように思えて
きて、惨めな疎外感に襲われました。

「あ、あと・・・ 由紀さんには・・・これを」

一転して恥ずかしそうなトーンになった平尾が、紙袋から
取り出したのは、赤いリボンが巻かれた 見るからに高級な
しっとりとした起毛感のある細長いグレーのハードケース
だったのです。

(おぃ! なんや? まだあるんか?)


[82] Re: 落花枝に帰らず  小太郎 :2026/03/21 (土) 11:53 ID:uz3QG9zI No.2169
スリップの裾の、由紀さんと平尾さんとのやり取りは
恋人同士のやり取りに見えますね。
特に由紀さんから平尾さんにボディータッチをしているのは
由紀さんが平尾さんに心を許している証拠ですね。

この由紀さんと平尾さんの濃密な距離感を見せつけられた
矢部さんが、嫉妬しその寝取られ性癖を激しく刺激され
年明けから再開するデートに今までより過激な内容を
求めることになるのでしょうか?

矢部さんが仰っていた、このイベントがターニングポイント
になったというのは、由紀さんと平尾さんの濃厚な距離感を
肌で感じた矢部さんが、単なるデートごっこからBDSMに
ステップアップするよう二人を仕向けていったからでしょうか?

続きを楽しみにしています。


[83] Re: 落花枝に帰らず  健一 :2026/03/21 (土) 14:05 ID:CvXELJg6 No.2170
☆由紀は一瞬、はっと息を呑むような表情を見せましたが、
すぐに「もぉ!」と囁き、さらに 声を立てずに「バカ」と、
唇を動かしました。☆

これは一般的には、人前での声に出さない、慎み深い恋人同士、あるいは夫婦の意志交換ですよ。

ふたりの間では確かめあってはいないにしろ心を縛る方向に進んでいるのは間違いないですね。

クルージングと海外出張中の平尾さんと由紀さんのLINEのやりとりや、矢部さんのミエと寝取られ性癖から、矢部さんに仕向けれらた由紀さんが、一気にそれまで心の奥底に仕舞っていた母性本能の開花、そして由紀さんのM気質の爆発など、一気に由紀さんが平尾さんの支配下女性に「なり果てる」などなど。

結果離婚となるのですが、しかし男女の関係を望む由紀さんに対して平尾さんは行為に及びません。焦らされる由紀さん。心を縛られるだけです、など妄想してしまいます。

勝手なこと言ってすみません。でも矢部さんの文章は最高のエロスです。


[84] Re: 落花枝に帰らず  ケンケン :2026/03/21 (土) 20:05 ID:GBIPP2N6 No.2171
けっこう普通のパーティーでしたね。いつものように最後に煽ってみえますが、ハンカチやスカーフ的な物と予想します。
先が気になります。CMまたぎみたいな煽りやめてほしいとこです。
続きたのしみです。


[85] Re: 落花枝に帰らず  たかし :2026/03/21 (土) 21:08 ID:wC5kvSrM No.2172
更新ありがとうございます
お待ちしておりました
スリップはいつぞやのバレンタインのお返しの品でしたか?
薄いピンク色ならオフホワイトのスーツにも似合ったでしょうか?
お揃いのショーツもはいておられたでしょうか?
由紀さんに直接確認されましたか?
それとも翌日の洗濯物で確認されたのでしょうか?

それにしても当初由紀さんがパーティに乗り気でなかったのは何だったのでしょうか?
平尾氏の社長就任を矢部さんが知って落ち込むのを心配された?
由紀さんは夫に地位や名誉やお金を求めるような女性ではないように思うのですが。


[86] Re: 落花枝に帰らず  :2026/03/22 (日) 11:39 ID:Shb1ufKo No.2173
コレ、一番みんなが残念なパターン。 部屋に二人居たらふつうなんかあるのがふつうです
平尾一人は最悪のパターンですが、もっとエロにならないですか?
奥さん、ヤラレタとか!
まじ、みんながイライラです、最後のところは中身はバイブですよね、ジプシーさん。


[87] Re: 落花枝に帰らず  隠れ読者 :2026/03/23 (月) 08:47 ID:uOHoH5II No.2183
笑さん、と同じで期待してたです
やっとエッチが見れると思ったのに
これまだ続ける意味あります???


[88] Re: 落花枝に帰らず  健一 :2026/03/24 (火) 11:23 ID:0GlQdqKs No.2184
☆一転して恥ずかしそうなトーンになった平尾が、紙袋から
取り出したのは、赤いリボンが巻かれた 見るからに高級な
しっとりとした起毛感のある細長いグレーのハードケース
だったのです。☆

中身はネックレスチェーンかと妄想しています。

矢部さんのペースを守りながら執筆してください。次回を楽しみにしています。


[89] Re: 落花枝に帰らず  タクロー :2026/03/24 (火) 17:21 ID:ZoIpUdq6 No.2185
はじめまして宜しくお願いします。
いつもこの小説のラストはイライラさせて貰っています。
ケースの中は真珠のネックレスがその日の奥さんに似合う気がしますね。


[90] Re: 落花枝に帰らず  西門 :2026/03/25 (水) 10:40 ID:CPA.vwN6 No.2186
デートごっこの開始以来3人が一堂に会する最初の日でしたが、矢部さんの報告を読むと
まだ、平尾さんと由紀さんの間には良識の抑制が残ってるように感じました。
矢部さんの寝取られ願望が生んだ半ば強制的な来年の二人のデートが結果的に矢部さんの
期待通り平尾さんに残っていた良識を剥ぎ取る効果を生んでいたのではないかと想像しています。


[91] Re: 落花枝に帰らず  たかし :2026/03/27 (金) 16:16 ID:Kj5P4hhY No.2188
一週間が経つとまたまた妄想が膨らんでしまいます。
矢部さんの更新の邪魔にならないように、と心がけてはいるのですが。

西門さんがおっしゃるように平尾氏と由紀さんは夫の親友、親友の妻。
しかも矢部さんも承知の上でのデートとなれば一線を越えての男女のお付き合いには
発展しにくいですよね。
そうなるとこの先に進むにはやはり平尾氏のBDSMの趣味と
その趣味を理解してあげようとする由紀さん。
BDSMがきっかけになるしかなさそうですね。

二人でいきなりソフトにしてもプレイするのは難しそうなので
二人のデートでSMクラブにプレイの見学に行くなんてことを妄想しています。
由紀さんはさらに興味を持つことになり
平尾氏は氏のBDSMは本当はもっと高貴なものなのだとかのこだわりを語られ
一度試してみましょうか、と二人でのプレイに発展していくとか。

ネックレスらしきプレゼントも三脚巴のペンダントのついたネックレスだとよいのですが。


[92] Re: 落花枝に帰らず  倍胡坐 :2026/03/28 (土) 07:25 ID:kXRXE782 No.2189
これまでの様々なエピソードからもわかるように、
元々は由紀さんも平尾さんも、ちょっとした弾みや遊びなどで
安易に禁断の関係に陥るような人物ではありませんよね。

スカートの裾からはみ出したレースをめぐる一喜一憂。
矢部さんが由紀さんと平尾さんに望んでいる刺激的な結末からすれば
この二人の関係性はまだそれほどでもないような気がしますが、
果たして本当のところはどうなんでしょう。

とはいえ、実際に矢部さんが目の当たりにしたこの二人のやり取りから
夫婦のような親密さが感じ取れるようになったことに、
じれったいながらも一定の進展があることは確か。

平尾さん次第で由紀さんが受け入れるようになっていく。
今となってはそんな気もします。
そうなるためには、矢部さん抜きの二人だけの会話や行動が増えるはず。
矢部さんの想像や妄想による描写もますます増えていくのでしょうね。

続き、よろしくお願いします。


[93] Re: 落花枝に帰らず  矢部 :2026/03/29 (日) 13:37 ID:6InF.yGI No.2190
小太郎様 いつも早々にコメントをくださりありがとうございます。
>この由紀さんと平尾さんの濃密な距離感
・ちょっとした仕草や所作から、なんとなく感じられたのです。どうしても濃密に見えてしまいますよね・・・

健一様 いつもコメントをくださりありがとうございます。
>心を縛る方向に進んでいるのは間違いない
・うーん、どうでしょうか? ここのサイト的にはそうかもしれませんが、まだ早い? 一般的にはどうでしょうかね・・・
>ペースを守りながら執筆してください
・ありがとうございます。いつもお待たせして申し訳ありません。

ケンケン様 いつもコメントをくださりありがとうございます。
>CMまたぎみたいな煽りやめてほしいとこです。
・すみません、どこで切ればよいのかがわからなく、結果的にそうなってしまって。文才がないのでお許しください。

たかし様 いつもコメントをくださりありがとうございます。
>当初由紀さんがパーティに乗り気でなかったのは何だったのでしょうか?
・ありがちな、一旦ネガティブに返す。仕方なく出席したことにする、みたいな、女性特有の駆け引きがあったのでは?と思っています。(推測です)。
>ネックレスらしきプレゼントも
・読者様の間で、ケースの中身について予想してくださりありがとうございます。作者冥利に尽きます、本当に嬉しかったです。

笑様 いつもコメントをくださりありがとうございます。
>部屋に二人居たらふつうなんかあるのがふつうです
・残念ながら、由紀はすぐに席を外しちゃったのでした。

隠れ読者様 コメントありがとうございます。
>やっとエッチが見れると思ったのに
・すぐにエッチになれば、こちらのサイト的には良かったのですが、なかなか現実は厳しくてすみません。

タクロー様 コメントをくださりありがとうございます。
>いつもこの小説のラストはイライラさせて貰っています。
・文才がなくて申し訳ありません。

西門様 いつもコメントをくださりありがとうございます。
>まだ、平尾さんと由紀さんの間には良識の抑制が残ってる
・そうですね、おたがい50代の大人なので、そこは大丈夫かと。

倍胡坐様 いつもコメントをくださりありがとうございます。
>じれったいながらも一定の進展があることは確か。
・3回のデートと今回のイベントで、少なからず距離は縮まっているということはご理解いただけているかと思います。


*****


平尾が紙袋から取り出し、由紀に差し出した 赤いリボンが
巻かれた 見るからに高価な細長いグレーのハードケース。

「えっー! 平尾さん、そんな! わたしにまで・・・」

由紀が慌てて両手を振り、顔を赤らめて後退りをしました。
私も思わず声が上ずります。

「おいおい、ヒラ! いくらなんでも それ あかんやろー」

私は冗談めかしながらも、その「アクセサリー」らしき
プレゼントには さすがに激しく動揺していました。
おそらくは平尾のこと、相応の価格のアクセサリーを選んで
いるはず、だと思っていたのです。

「いや お二人には ホンマ 今年はお世話になったからな〜
 サンタさんからのクリスマスプレゼントや」と平尾。

「クリスマスの本番は、まだやで〜」と私がツッコめば、

「ヒラの太っ腹だけは サンタさんやな〜・・・ でも、
 そういえば痩せたサンタさんって おらんよね〜?」

徳永がおチャラけた話をしながら、平尾の少し出っ張った
おなかを撫でました。

「奥さん、これ断ったら、サンタさんの この太っ腹が・・・
 いや、社長さんのブッサイクな顔も潰れますよ」と徳永。

「この腹は 今日 美味いもん食ったからや」と平尾が返し、

「おおきに! 社長ハン!!」

続く彼らの会話から4人が笑える雰囲気には なったのです。

こうなると せっかくの平尾の厚意を受け取らないわけには
いかない、きっと由紀も私と同じ気持ちだったと思います。

「まだや、まだまだフクシャやで」と笑顔の平尾。

私も なんとなくですが、先ほどまでの遠慮からくる丁重な
お断りの気持ちが緩和されて、

「・・・そうやね まぁサンタさんからのプレゼントやし、
 ありがたく頂戴したら?」

「え・・・うーん、すみません ありがとうございます」

由紀は苦笑いを浮かべながら、差し出された細長いケースを
黒革の手袋をした両手で受け取りました。

「そや、せっかくのサンタさんからのプレゼントやし、
 開けてみたら?」

私は、クリスマスプレゼントという言葉で自分と由紀を
納得させながら、開封を由紀に促しました。

どこか申し訳なさそうな表情だった由紀も、少しその気が
緩んだのか、薄い笑みを浮かべて、壊れ物を扱うような
手つきでリボンを解き、静かにケースの蓋を上げました。

パカッと開いたケースの中、光沢のある柔らかな白い生地の
クッションに鎮座していたのは、私が想像していたような
ゴールドのチェーンや、宝石のついた煌びやかな首飾りや、
大粒の真珠のネックレスでもありませんでした。

それは、紅い小さな石(ガーネット?)がチャームとして
付いた、幅が1.5cmほどの紺色のベルベットの「布」だった
のです。

(・・・なんや。ただの布切れやったんか)

この瞬間、真珠・宝石・ゴールドのような高価で華やかな
アクセサリーではなかったことに、私は安心したのを覚えて
います。
やはり平尾も常識のある男、親友の妻にそこまでのものを
贈るほど厚顔ではないし、さすがにそこまで失礼なことは
しないよな、と。
そんな彼の分別を確認できたような、あるいは経済力で
完全に屈服させられることを免れたような、奇妙な安心と
余裕が一気に私の中に芽生えていたのでした。

が、しかし・・・

隣に立っている由紀の反応は、私とは正反対のものでした。

「えっ?」

彼女は絶句したまま、その紺色の布を見つめたきり まるで
凍りついたかのようになっていました。

「平尾さん、こんなの、わたしには・・・」

由紀の声は掠れ 表情には清楚な妻の面影をかき消すような、
どこか剥き出しの戦慄が浮かんでいました。
私には安物に見えたその布切れが、彼女には自分の身の丈に
合わないものに見えていたのかもしれません。

「せっかくやから、今 着けてみたらどうです?」

徳永が 背後から弾むような声で促しました。

「そやな、せっかくやし・・・どう? カアサン」

私も、自分がもらった備前焼のコップの重みを感じながら、
寛大な夫を装って言葉を添えました。

「えっ・・・そんな・・・無理ですよ・・・こんな・・・
 若い人がするような・・・娘くらいの歳だったら、ねっ」
「それに わたしはこういうのしたことがないし・・・
 たぶん似合わない気がするし、恥ずかしいかな〜 」

由紀は どこか引きつったような笑顔で、言い訳がましい
言葉を並べたてながら 慌ててケースを閉じようとしました。
その指先が微かに震えているのを、私は 単なる照れ臭さだと
思っていたのです。

この時 夫である私としては、さすがに平尾に対して 申し訳
ない気持ちと、楽しかったランチパーティのエンディングの
和やかなサプライズシーンに水を差すのも 気が引けたので、

「ええやんか・・・ あとはタクシーで帰るだけやし、
 カアサン、ちょっとだけ 着けてみたらエエやん」

私は 自分が受けた備前焼という「親友からの厚意」に対し、
手前勝手な義理立てをしようとしていました。
せっかくの平尾の振る舞いに、いつまでも子供のように首を
振る由紀の頑迷さが、まるで私の顔に泥を塗られているかの
ように思えてきたのです。
私は、自分のプライドと平尾への体面を守るため、彼女に
その“紺色の布”を受け入れさせようと、さらに畳みかけ
ました。

「ホントにこういうの、着けたことがないし・・・ね。
 また ウチに帰ってから ゆっくりと・・・」と由紀。

それでも頑なに拒もうとする、過剰なまでの拒絶反応に
私は苛立ちを覚えてしまい、つい無防備な言葉を口にして
しまいました。

「なんやねん・・・ そんなに遠慮せんでもエエやろ〜 
 なんなら、ヒラに着けてもらったらどうや?」

「えっ!そんなの、ダメよ。トウサン、何を! 平尾さんに
 悪いし・・・ もぉ! だから、家に帰って自分で 」

由紀の顔が、火がついたように赤らみました。

(なんでや、なんでそんな 本気で恥ずかしがってるんや?)

彼女の過剰な反応というよりも狼狽ぶりが、かえって私を
不機嫌にさせ、逆に執拗に「二人の接触」を望む被虐的な
本能を刺激しました。

「そんな恥ずかしがらんでも、誰も気にせんよ・・・
 で? 結局 これ、なんや? スカーフ?ネッカチーフ?
 みたいな? 布のネックレスかいな?」と私。

「あはは 矢部さん、それ チョーカーですよ」と徳永。

「ようわからん、まぁ たしかに若い人向けっぽいですね」

私も「チョーカー」という響き自体が、由紀が言うように、
たしかに年齢的にも世代的にも違う気がしたので、そこは
彼女の恥ずかしがる気持ちが 少しわかった気がしました。

「もお・・・トウサン・・・」

由紀は救いを求めるような視線を私に向けましたが、私は
それを冷酷に、そして愉悦を込めて無視しました。
彼女は明らかに、この場を今すぐにでも逃げ出したい、と
いう本能的な拒絶を示していたのでした。

私が平尾に目を向けると、彼は少しだけバツの悪そうな、
けれど否定はしない、絶妙な距離感の微笑を浮かべ、

「まあ・・・着けたところは見たいけど。でも由紀さんが
 嫌なら、ムリせんでもエエですよ」

その「ムリしなくても」という言葉が、逆に由紀を退路の
ない場所へ追い詰めていくように響きました。
そんな平尾の低い声が、彼女の耳朶を、先ほどスリップの
チラ見を指摘した時と同じ温度で打ったはずです。

私は 自分の深い内に湧き上がる、どろりとした熱情に突き
動かされるまま、決定的な一言を口にしました。

「カアサン不器用やし、やっぱり ここは社長さんに直々に
 着けてもらうのが 一番エエんとちゃうか・・・」

その言葉が自分の口からこぼれた瞬間、我ながら下半身を
雷に打たれたような ゾクゾクとした震えが走りました。

妻の白くしなやかな首筋を、他人の しかも成功者である
親友の指先に、無防備に差し出す・・・
夫としての特権を自ら放棄し、彼女を“供物”として社長に
献上するという被虐的・背徳的シチュエーション。
その感覚に 言い様のない昂ぶりと刺激を感じていたのです。

「・・・」

俯いたままの由紀。

「えっと・・・じゃあ、いいですか? せっかくなんで」

そう言って、平尾が静かに、けれど どこか有無を言わせぬ
所作でケースから その布地を取り出しました。

取り出したそれは、首に巻きつけるような1.5cm程度の幅の
布製の“帯” まさしくチョーカーでした。

私には それが、高価なものではないという安堵感と単なる
アクセサリーだから、という先入観しか なかったのですが、
この時 初めて、これは首に掛けるのではなく喉に巻きつける
装飾品であることに気がついたのでした。

平尾は迷いのない足取りで由紀の背後へと回り込みました。
由紀は逃げることもできず、まな板の上の鯉のように、
細い肩を震わせて、恥ずかしさなのか、照れなのか、顔を
下に向けて立ち尽くしていました。

そんな由紀の白いうなじを包み込むように平尾の両手が、
伸びていきました。

私の目の前で平尾の指先が由紀の肌に直接触れ、その紺色の
ベルベットの帯が、彼女の喉元に ぴったり隙間なく密着して、
まるで吸い付くように巻き付けられていきました。

ここで徳永が「待ってました!」とばかりに囃し立てます。

「その紺色、今日の洋服の色にも映えますよね〜 
 さすがヒラ社長やなぁ・・・」

そして留め金が嵌まる小さな金属音が、なぜか私の耳の奥に
重く響きました。

傍から見れば、ホロ酔いの いい歳をした大人たちが宴会後に
名残惜し気に じゃれ合っている光景にしか見えなかったかも
しれませんが、4人だけは この一瞬が、まるでなにかの儀式
のような張りつめた雰囲気になっていたのでした。

清楚なツイードスーツの由紀の喉に、圧倒的な存在感を放ち
巻き付いた紺色の帯。

(マジか・・・ これ、あかんやろ・・・)

安堵したはずの“布切れ”が 実はどんな宝石よりも残酷に
由紀という女性から、艶だけではなく淫靡さ までも、炙り
出している・・・そんなふうに見えてしまったのです。

しかもそれを導いたのは平尾だったという、私にとっては
これ以上ない展開・・・
その倒錯したシーンに、私の下半身は、もはや抑えようの
ない激しい拍動を始めていたのです。

エレベーターの中、1階に到着するまでの10数秒の間、
由紀は真鍮の扉に映る自分の姿を、まるで見知らぬ女性を
眺めるような、虚ろで鋭い眼差しで見つめていました。
清楚なオフホワイトのツイード姿の白い首筋にぴったりと
巻き付いた紺色のベルベットの帯。
さきほどまで彼女が「年齢的に不相応だ」とネガティブに
拒んでいたのが嘘のように、その帯は、抗いようのない
淫靡な魅力を放って彼女を塗り替えていました。

お店の裏口を出た私たちは徳永と平尾に「良いお年を!」と
形ばかりの挨拶を交わして、待たせてあったタクシーに乗り
込みました。

実を言えば、私はこの瞬間に賭けていたのです。
由紀を先に後部座席へ促し、スカートの裾捌きの隙間から、
あのスリップがチラリと覗くのを。
しかし、平尾や徳永の「見送りの目」を意識しすぎたのか、
彼女の動作は頑ななまでに慎重でした。
さらには私自身も 彼らから私の視線を監視されているような
気がしていて、最も期待していた決定的な瞬間を みすみす
見逃してしまったのでした。

とにもかくにも、カフェ『ラ・メール・ブランシュ』での
クリスマスパーティは無事に終わりました。

タクシーのドアが閉まると、外の喧騒は嘘のように消え、
車内には独特の静寂が居座りました。
私は、ホッと一息吐くと、ようやく気持ち的に落ち着いて、
タクシーの暗がりに身を沈めたのです。

由紀は私の右隣にシートの端に身を寄せるようにして座って
いました。
その膝の上では、彼女の黒革の手袋に包まれた指先が、
憑かれたように何度も何度も、タイトスカートの裾を下に
押し下げていたのです。

(なんで、そんなに隠すんや!)

平尾に指摘された、あの“恥”を二度と繰り返さないように
するかのような、あまりにも念入りなその仕草。

「なんか今日、楽しかったね・・・」

不意に由紀が疲れたような、けれど浮ついた溜息とともに
私に話しかけてきました。

「ああ、そうやなー でも行って良かったやろ?」と私。

「うん・・・」と由紀も満足しているみたいでした。

パーティが楽しかったのか それとも平尾の隣の席だったから
楽しかったのか??

「トウサン、晩御飯はどうする?」

「うーん、けっこう食ったし、まだ腹は空いてへんな。
 何か軽くつまむ程度でエエよ」

どこにでもある夫婦の、平穏で生活じみた会話。
ただ私の全神経は、暗がりに沈む彼女の膝元に、釘付けに
なっていたのです。

「それにしても美味しかったね、食事も。あんなにきれいな
 盛り付け 初めて見たよ スマホでたくさん撮っちゃった」

「そうやな」

その画像を娘にLINEしたけれど 既読になっていない とか、
窓からの景色が素晴らしかったことや、VIPルームの洒落た
調度品のこと、トイレまでも綺麗だったこと、スタッフの
洗練された動きまで・・・由紀は言葉を重ねました。

彼女は、まるで沈黙が訪れるのを極端に恐れているか?の
ように 途切れることなく饒舌に語り続けてくれたのでした。
普段は聞き役に回ることの多い彼女が ここまで続けて話題を
振ってくることなど、私の記憶にもないくらいでした。
まるで、自分の中に芽生えた「何か」を、言葉の壁で必死に
塞ぎ込もうとしているように見えなくもなく・・・
(酔ってるんかな?)とまで、私は思ったくらいでした。

窓外からの街灯の光が、彼女の横顔を交互に照らし出す中、
そんな由紀に私は適当な相槌を打ちながら、暗がりに沈む
彼女の足元を盗み見るように幾度となく窺っていました。

ツイードの裾から溢れ出す、ゴージャスなレースの断片。
それをこの暗闇の中で早く再現してほしいという、卑しい、
けれど熱い期待が、私の喉をカラカラに乾かしていました。

(スリップ、はみ出してないやんか! ヒラが見たのは、
 どういう感じやったんや・・・ 見せろや!)

私の胸の奥に、どろりとした黒い感情が広がりました。
平尾の前では、無防備にその「レースの端」を晒していた
というのに。
彼には、最も秘めやかな 女としての油断を凝視させる特権を
与えていたというのに。
なぜ夫である私の前では、こうも頑なに 鉄壁の守りを固める
のか。

(平尾は見たのに・・・ オレは見れんのか・・・)

窓の外を流れるネオンが、ひときわ明るく車内を照らした
一瞬、由紀がわずかに体勢を変えました。
私は息を止め、暗がりにさりげなく目を凝らしましたが、
彼女の指先は、まるでその“境界線”を死守しているように
見えたのでした。
唯一、薄暗い車内の中で、 膝から下 パンプスまでを覆う
艶めかしく光るストッキングの光沢だけが、私の気持ちの
飢えを皮肉に慰めてくれていたのです。

そんな執拗でフェチな私の視線に気づく様子もなく、ずっと
饒舌に語っていた由紀が話を途切れさせると、不意に
黒革の手袋を外したのです。


[94] Re: 落花枝に帰らず  小太郎 :2026/03/29 (日) 14:34 ID:2gn6m4yY No.2191
由紀さんへのプレゼントのベルベットの紺色のチョーカーを
平尾さんの、その指先が由紀さんの肌に直接触れ、その紺色の
帯が由紀さんの喉元にぴったり隙間なく密着し、まるで吸い付く
ように巻き付けられ留め金が嵌まる小さな金属音が響いた時、
由紀さんの中で平尾さんとBDSMをプレイしているイメージが
生まれたのではないでしょうか?
それはまるでBDSMプレイで首輪をかけられたような感触だったのでは?

帰りのタクシーの中で由紀さんが普段とは違い饒舌だったのは
自分の中に芽生えた平尾さんとBDSMプレイをするイメージを
言葉の壁で必死に塞ぎ込もうとしていたからでは?
由紀さんの心の中にBDSMへの渇望が徐々に侵食しているのでしょうか?

追伸:これが矢部さんの仰っていたターニングポイントだったのですね。
   矢部さんの寝取られ性癖から出た一言で、平尾さんから直接その手で
   チョーカーを嵌められ、その想いを受け取った由紀さんが、平尾さん
   との逢瀬でチョーカーを再び装着した時が、その想いに応えた
   時なのでしょうね。
   年明けの初の逢瀬でこのチョーカーを装着していくのでしょうか?

続きを楽しみにしています。


[95] Re: 落花枝に帰らず  倍胡坐 :2026/03/29 (日) 14:44 ID:iBUgjpcw No.2192
由紀さんの心の動きを想像しながら
以下、勝手気ままに次のストーリーを推理してみました。

由紀さんはBDSМにおけるチョーカーが持つ意味を
これまでの平尾さんとのやり取りから察知していたのでは?
チャームの着いた首輪のような物体の持つ意味は、
信頼関係であり、主従関係。
由紀さんがそれを着けることを躊躇ったのはそのせいかも。

帰路の車中、饒舌になった由紀さんの会話のとりとめのなさや
スカートの裾をせわしなく気にするのは心ここにあらずの証拠。
由紀さんは意識の奥底で平尾さんの意図を感じ取った。
それは、「あとは由紀さんの受け止め次第」との平尾さんの達観。

心を揺さぶられた由紀さんが不意に黒革の手袋を外したのは
矢部さんにしっかりと自分を繋ぎとめて欲しくて
矢部さんの手を握ろうとしたのでは?

そんな救いを求めるかのような由紀さんの声なき声を
夫として矢部さんが素直に感じ取り
由紀さんの手を強く握り返すことができたなら、
これまで通りのトウサンでいられたはず。

由紀さんの切なる胸中を察することよりも、
平尾さんと同席する場での焦燥や不安に囚われている自分を
ひた隠しにしようとする一方で、
由紀さんのスカートの裾ばかりを気にする矢部さん。
由紀さんのシグナルを見落としただけでなく、
あいも変わらずの虚勢たっぷりの言葉を浴びせてしまう。

糸の切れた凧と化した由紀さんの心のいく先は、はたして?

深読みし過ぎでしょうか。
由紀さんのこれからが気になります。


[96] Re: 落花枝に帰らず  たかし :2026/03/29 (日) 16:04 ID:e5IEKv6I No.2193
今回は早々の更新!ありがとうございます
チョーカーでしたか!と言ってもオジサンの私は
ググるまで知りませんでした。
由紀さんや一般的な女性は常識でしょうか?
それとも平尾氏の影響から知るようになられたのでしょうか?
由紀さんの様子からするとやはり単なるファッションではない
意味を感じておられますね。

そしていつものような終わり方ですね
「黒皮の手袋を外した」
由紀さんの手にはなにかが見えたのでしょうか?
何の意味があったのでしょうか?
また一週間、気になって仕方のない時を過ごします。


[97] Re: 落花枝に帰らず  健一 :2026/03/29 (日) 18:02 ID:45NSlpr. No.2194
チョーカーを平岡さんが由紀さんの首に付けることになるとはまったく想像できませんでした。
平岡さんと由紀さんはこの意味を理解しているように思えます。特に由紀さんが装着を意外なほど拒んだのは意味を理解していたからだと想像しました。

由紀さんが黒い手袋を外したのは、チョーカーを外すためと想像しました。
ここから先に進んではいけないとの思いからでしょう。
でも平岡さんからのBDSMへの誘いに心が揺らぎ始めたことを自覚したと思います。

この先も体の関係よりも「心を縛る」方向へ進んでいくのかと妄想しております。

続きを期待しております。


[98] Re: 落花枝に帰らず  たかし :2026/03/29 (日) 19:32 ID:e5IEKv6I No.2195
う〜ん、さすが健一さん!
平尾氏の拘束から解かれるのですね
由紀さんの饒舌は収まるでしょうか


[99] Re: 落花枝に帰らず  たかし :2026/03/30 (月) 00:27 ID:UVS65UbQ No.2197
西門さん、細やかな解説ありがとうございます。
よくわかりました。
明日も仕事なのですが興奮して眠れません。

由紀さんは図書館で借りた本でチョーカーの意味を
知っておられたのでしょうかね?
同じようなシーンがあったのかも知れませんね。


[100] Re: 落花枝に帰らず  健一 :2026/03/30 (月) 08:49 ID:o8q1klvE No.2198
度々の投稿ですみません。

西門様がガーネットの持つ意味をお教えくださいましたが、なるほど!と思った次第です。
さらにネットで調べてみたら「束縛」という意味もあるとの記述がありました。
「誠実な愛と束縛」・・・。

そうであるならば、基本的に対外的には常識人である平尾さんは、
渡ってはならぬ川を前にして一歩踏み出したのではないでしょうか?

そしてチョーカーを装着するその意味を知っていた由紀さんの抵抗。

また私の中での最大の疑問点であった「円満離婚」の理由として、既婚者である由紀さんが代表取締役となった平岡さんと、性行為の有る無しに関わらず「関係を持つ」ことが社内社外的に問題になる可能性があるので、矢部と離婚し独身になったと妄想しました。

先々の展開を楽しみにしております。



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