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遍歴

[1] スレッドオーナー: 土屋 :2026/05/23 (土) 22:39 ID:vJIfgbDU No.32760
父が長期の海外出張に出た週末、我が家のリビングはいつものように母の親友たちの喧騒に包まれていた。
母・土屋千春、45歳。大手出版社でバリバリ働いている。若くしてオレを産んだから、中学の頃は友達から人気があった。要は「綺麗なオバサン」。目尻の上がった大きな目、通った鼻筋に厚めの唇。今も美貌と均整の取れたスタイルを維持している。本人も意識しているのか、見た目に手を抜くことがない。耳にかけたミディアムの髪、ゆったりとしたオフホワイトのサマーニット、Vネックにのぞく鎖骨とダイヤ。彼女には常に華やかな女の匂いが漂っていた。
そして、その母の周りには似たような女たちが集まる。IT企業で働く自由奔放で派手な美人の典子さんと、経営者の妻でおっとりとした良妻賢母タイプの薫さん。3人は学生時代からの親友で、事あるごとに我が家に集まってはワインを空けている。
オレ、裕一は20歳の冴えない大学生だ。いつものように自室に籠もっていたが、猛烈に喉が渇き、足音を忍ばせてキッチンへ向かった。
リビングとキッチンを隔てる曇りガラスのドア越しに、女たちの笑い声が響いてくる。冷蔵庫を開けようとしたオレの手は、典子さんの甲高い声にピタリと止まった。

「だからね、あれは冗談抜きで私の人生で一番のバケモノだったのよ!」
だいぶ酔っているのがわかる。オレは息を殺し、ドアの隙間からリビングを覗き込んだ。
「もう、先っぽパンパンで、血管がボコボコ浮いててさ、なんだろ、生き物っていうか凶器?それが奥までズドンって入った瞬間、脳みそがショートしたみたいになっちゃって。」
ワケのわからない話かと思ったが、言葉を咀嚼すると、まさかという気がした。その時、母と薫さんが「ちょっと典子!」「声が大きすぎるってば!」と笑いながら手を叩いている。
「でもさ、ぶっちゃけ大きさって正義じゃない?」と典子さんは身を乗り出した。
「愛だのテクニックだの言うけどさ、絶対的な質量で子宮の入り口をガンガン突かれる快感って、理屈じゃないのよ。メスとしての本能を直接殴られてるみたいでさ」
やはり、オレの勘は当たったと確信する。
と同時に、急に3人の会話に興味を引きつけられた。
「まあ……否定はしないけど」と言ったのは母だ。頬を紅潮させながらワインを煽る。
「確かに、すっごいのが入ってきた時の、あの息が詰まるような圧倒される感じは、忘れられないわよね」
「でしょ!? ねえ、薫はどうなのよ。あんた昔から清純派ぶってるけど、絶対すごいのに当たったことあるでしょ。吐きなさいよ!」
「ええっ、私!?」と矛先を向けられた薫さんは顔を真っ赤にして両手で頬を覆った。普段はおとなしく、二人の息子を育てる母親である薫さんが、身をよじって恥じらっている。
「も、もう……しょうがないなぁ。私は、夫のかな。それだって、そんなに巨大とか、そういうことじゃないんだけど」
「なによ、それ。いい子過ぎて面白くない」と典子さんが冷ややかに言う。
「そんなこと言ったって、経験がないんだから仕方ないでしょ?」
「そうそう、典子、酔い過ぎだよ」。
母が薫さんをフォローした。
「なによ、千春!それなら代わりにアンタが答えなさい。歴代ナンバーワンの男、誰?」
典子さんが容赦なく母に迫る。

母は「えー」と濁そうとしたが、両脇から二人がわかりきったような顔をしている。
母は観念したらしい。
「もぉ、何度も話したでしょ?……澤田!」
その苗字が出た瞬間、典子さんも薫さんも「だよねーー!!」と、声を揃えて爆笑した。
「ごめんごめん、千春のこの話は定番だから、やっぱり言わせちゃった」
助けられたはずの薫さんも笑っている。
「ホント、毎回言わせるの、やめて」。
どうやら3人の間で、母はこの話をさせられるのはいつものことらしい。
すると典子さんが突っ込んだ。
「でも千春、口でした時はどうだったの?それはあんまり聞いてないわよ!」
典子さんの追及に、母はワイングラスの縁を指でなぞりながら、困ったような笑みを浮かべた。
「もう20年以上前だからなぁ。えー、うーん。顎が外れるかと思うぐらい口を開けたのと、がんばって根元までくわえようとしたら喉の奥に当たって、えずいたのは覚えてる」。
「うわー、いやらしい! で、味は? どんな味したのよ?」
典子さんが悪ノリする。
「バカじゃないの!味なんて覚えてないって!」母が吹き出しながら答えた。
「で? で? 入れた時はどうだったのよ!」
典子さんは止まる気配がない。
「もう、前にも話したじゃない!」
母は照れ隠しのように笑いながらも、その顔は完全に昔の記憶をたどっていた。
母が、昔の男との行為を、その男たるモノを思い起こしている。
「……だいたい、典子の言ったのと同じ感じかな。熱くて硬い肉の塊に、中の狭いところを強引にこじ開けられて、内臓を全部押し上げられるみたいな圧迫感で。奥の奥の、一番敏感なところをゴリゴリされて、足の指が勝手に丸まって……。ガクガク、痙攣、しちゃったの……」
母の口から紡がれる、あまりにも生々しい牝としての記憶。
オレは暗闇の中で、自分の股間がちぎれるほど勃起しているのを感じていた。あの、綺麗で、優しくオレを育ててくれた完璧な母が、得体の知れない『澤田』という男の巨大な肉棒に犯され、快感のあまり身体を痙攣させていた。その事実が、オレの脳髄を麻痺させるほどの嫉妬と、狂おしいほどの興奮を呼び起こしていた。

やがてお開きになり、
「もう典子ったら、調子に乗り過ぎよ」と薫さんが嗜めながら帰っていく声が聞こえた。
オレはベッドに横たわっても、まったく眠れなかった。
母の過去。オレの知らない、女としての『千春』。
もっと知りたい。澤田とは何者なのか。母はどんな顔で男に抱かれていたのか。
ふと、典子さんの顔が浮かんだ。
物心ついた頃から『親戚の陽気なおばさん』のごとく接してくれた彼女なら、オレのこの歪んだ欲望を笑い飛ばして、真実を教えてくれるのではないか。母の全てを知るであろう典子さんに、縋ってみようと思った。


[2] Re: 遍歴  土屋 :2026/05/24 (日) 02:37 ID:pwK4OFAg No.32761
翌日、オレは震える指で自分のスマホから、典子さんの番号にメッセージを送った。昔、オレが初めてスマホを与えられた時、「記念すべき連絡先第一号になってあげる!」と半ば強引に交換した番号だった。
数時間後、大学の休み時間に着信があった。
『ちょっと、あんたから連絡なんて驚いたわよ! もしも裕一じゃなかったら、新手の詐欺かと思って怒鳴りつけてやろうと思って電話したんだからね』
快活な声。オレを「あんた」「裕一」と呼び捨てにするその響きが、不思議と心地よかった。
オレは言葉を濁しながらも、「どうしても相談したいことがあるから、会えないか」と頼み込んだ。典子さんは『いいよ、ちょうど明日なら午後時間とれるから』と快諾してくれた。
次の日、都心の洗練されたカフェ。
待ち合わせに現れた典子さんは、仕事の合間らしく、ネイビーのブラウスに白いスリットの入ったタイトスカートという、大人の女性の装いだった。大きな目はいつも挑むようだが、なだらかなアーチの眉が気安い人柄を表している。
「で? 悩み事ってなによ。大学やめたいとか、彼女ができなくて死にそうとか?」
からかうように笑う典子さんに、オレは意を決して口を開いた。
「……母さんの、昔の話が聞きたいんです」
『は? 千春の?』
オレが真剣な顔で頷く。
『学生時代から人気者でモテたわよ、頭もよかったし、何の問題もなし。氷河期だったけど就職も勝ち組で、知ってるでしょ?』
姿勢を変えると、高級な香水の香りが漂った。
「あ、そうじゃなくて、その、オレ、色々気になっちゃって」
『なに?』
「その、モテたっていうのが、誰にとか、どんな付き合いだったとか」
典子さんは数秒ポカンとした後すべてを察したらしく、周囲の目も気にせず「あっはははは!!」と大声で笑い出した。目尻に浮かんだ涙を指で拭いながら、オレを見る。
『ごめんごめん! いや、あんたみたいな真面目な子がね。要は、母親の男関係知りたいってことでしょ?悩みが意外すぎるんだけど。斜め上どころじゃないわ』
「いや、その、気になり出したら止まらないって言うか」
『だけど、それ聞いてどうするの?』
「それは、まあ、想像してドキドキすると言うか」
『あんた、自分の母親がどんな男に抱かれてたか知りたいってことでしょ?ド変態じゃない!』
直球をぶつけられた気になるが、もはや引けない。
「典子さんしか……頼れる人がいないんです」
オレが縋るように言うと、典子さんはふっと真顔になり、コーヒーカップに手を伸ばした。
『なんだか切実ね。確かにね、千春の学生時代のことなら、私と薫が一番知ってる。でもねぇ……それを息子にペラペラ喋るのは、千春を裏切るってことじゃない。さすがの私も、それはできないなぁ』
そう言いながらも、典子さんの目は楽しげに光っていた。
『けど、ちょっと感動的ね。生まれた時から知ってるあんたが、しっかりエロくなったってことでしょ?母親に関心持つのはよくわかんないけど』
オレは言葉が返せない。
『千春には悪いけど、面白そうな方に乗っかりたいっていうのが、私の悪い癖なのよねぇ』
いたずらっぽく笑うと、彼女はオレに向かってウインクした。
『いいわ。あんたの頼み、聞いたげる』
「……澤田、という人について教えてください。母さんと、その人のことを」
オレが名前を出した瞬間、典子さんは一瞬目を見開き、そして呆れたようにため息をついた。
『あんた……一昨日の夜、立ち聞きしてたんでしょ?お行儀悪いなー』
「たまたま、そこだけ聞こえたんです」オレは必死に弁明した。そもそも、典子さんの声が大きかったのがいけない、とは言えなかった。
「澤田って人は、母さんの大学時代の彼氏だったんですか?」
オレが押し切ろうとすると、典子さんは少し意地悪な、妖艶な表情を浮かべた。
『あのね、裕一。澤田は千春の彼氏じゃないわよ』
話が生々しくなるから、と、典子さんがテーブル越しに顔を近づけてくる。香水の匂いが強くなった。
「彼氏じゃないって……どういうことですか?」
『そのままの意味よ。身体だけの関係。セフレってやつ』
あっさりと告げられた事実に、オレの頭が真っ白になった。あの真面目でしっかり者で、時にくちうるさい母に、ただ肉体の快楽を楽しむためだけの男がいたとは。心臓が早鐘を打ち、喉がカラカラに乾く。
『澤田はね、私たちと同級生で、語学のクラスが一緒だったの。絵に描いたようなチャラ男でね、女の扱いだけはプロ級。あいつ、入学したばかりの4月から千春に目をつけて、ずっと言い寄ってたのよ。でも千春は「あんな軽薄な男、イヤ」って全く相手にしてなかった。そもそも千春には、当時ちゃんと彼氏がいたしね』
「じゃあ、なんで……」
『時が進んで、3年の秋。就職活動が本格化して。今と違って氷河期だったからね、みんなピリピリしてたの。千春、当時の彼氏とすれ違って別れちゃって、珍しく彼氏がいない時期ができたの。精神的にキツかったんじゃないかな。そんな時、たまたま大学の近くで千春が澤田とばったり会って。その流れで、二人で夕食を食べに行ったのよ。……で、その夜に、千春は澤田を受け入れたの』
「え?その日に?なんでですか!」オレは思わず身を乗り出した。
「相手にもしてなかったチャラ男と、たまたま夕食に行っただけで、なんであっさりそんなことになるんですか!」
『ふふっ。そこが知りたいのね』典子さんは妖しく微笑んだ。
『この話ね、薫と3人で飲むたびに何十回もしたテッパンだから、私、その時の二人のやり取り、一言一句全部覚えてるわよ』
典子さんが語る、四半世紀前のその夜の情景が立ち上がっていく。


[3] Re: 遍歴  加奈子 :2026/06/05 (金) 18:33 ID:azAbKETw No.32805
やばいです。すごくドキドキします!
続きを楽しみにしております
よろしくお願いします。


[4] Re: 遍歴  土屋 :2026/06/06 (土) 23:08 ID:12BBU1Jc No.32807
加奈子様 コメントありがとうございます。心からうれしいです。



薄暗い、学生街にしてはお洒落なダイニングバー。
澤田は饒舌で気の利いた会話をし、千春の話にも真摯に耳を傾けた。後で、食事自体がとても楽しかったって、千春は言ってた。
でも、その場は澤田にとってまたとないチャンス。入学から2年半以上手の届かなかった千春と二人きりなんだから。
最初は、口説いてくるに決まってると警戒していた千春も、楽しさに慣れて、アルコールが回って、心の中で防御を緩めていた。
そんなタイミングで澤田は、千春の左手に自分の右手を重ねたの。
「ふーん、いつもこうやってるんだ?」。
『ばか、いつもやるわけないだろ!千春ちゃんにしかしないって』。
「なにそれ、人によって違いがあるの?」。
つんけんしながらも、千春は澤田の手を拒まなかった。
澤田が千春の手を握った。
『千春ちゃんだけが違うんだって。ずっと言ってるだろ?』。
「そうだったかな?そんなこと言う割に色んなコと遊んでたじゃない?」。
『それはタイミングが合わなかったからだって。だけど、きょうは違う。俺、きょうに全てを賭ける。千春ちゃん、頼む。頼むから、きょう抱かせて欲しい。きょう断られたら、もう2度と誘わない。だから、きょう、頼むから抱かせてください』。
澤田が頭を下げた。
何の飾り気もムードもない、ただのお願いの言葉。
千春は、思わず笑ってしまったらしいけど、意外過ぎて刺さったって言ってた。
それは、今まで大勢に聞かされてきた甘い言葉や調子のいい誘い文句と違って、新鮮で、気持ちの届くものだった。
「澤田くんにとってはいいかもしれないけど、私は、いいことある?」。
『あるさ。俺、千春ちゃんのこと絶対楽しませるって。俺のこと、好きにさせてみせるから』。
「それは別に、いいことではない、かな」。
『そういうなよ、感じられるようにするからさ』。
ストレートな宣言。
この男に感じさせられた自分はどうなるのか、千春は仮定に期待が混じったって言ってた。
「ちょっとでも違うって思ったら、帰るよ」。
『もちろん、構わない』。

典子さんはそこで言葉を区切り、オレの顔を覗き込んだ。
『……ってわけ。あれからずっと、千春は「就活のストレスのせいだった」「酔った勢いの間違い」「私の人生最大の過ち」って言い訳してるけどね。でも、あれは間違いなく、千春自身が欲情して、あの軽薄な男を受け入れたのよ』
典子さんはコーヒーを一口飲み、小さく笑った。
『でも、今となっては最高の思い出なんじゃない? だって、あの夜、ホテルで千春は、一生忘れられないくらい強烈な女の悦びを知っちゃったんだから』
「ホテルで……」
オレは呆然と呟いた。
『そう。聞きたいでしょ? 隙がなくてプライドの高いあんたの母親が、彼氏でもない男に抱かれて、どんな声で鳴いて、どんな風に理性を壊されていったか』
典子さんの赤い唇が、悪魔のように吊り上がった。
オレの股間はズキズキと痛いほどに張り詰め、脳内は母が知らない男の下で喘ぐ姿で埋め尽くされていた。もう、後戻りなどできるはずがなかった。オレはただ、渇き切った目で、深く、深く頷くことしかできなかった。


[5] Re: 遍歴  晴美 :2026/06/07 (日) 01:12 ID:Kjsq7vRM No.32808
ドキドキして読んでます。
続きを楽しみにしてます。


[6] Re: 遍歴  土屋 :2026/06/07 (日) 22:53 ID:hNcERNq2 No.32811
晴美様 ありがとうございます。コメントを励みに続けます。


典子さんは、どこか遠くを見るような、それでいて親友の秘部を暴く愉悦を隠さない表情で語り始めた。


澤田に連れられて行ったのは、池袋の喧騒の奥にある、少し古びた、けれど清掃の行き届いたラブホテルだった。
「最低な男」と罵っていたはずの男に手を引かれて、千春は自分でも不思議な気持ちで状況を見つめていたみたい。でもね、部屋に入った途端、澤田は意外なほど紳士的に振る舞ったの。
『まずはシャワー浴びてきなよ。ゆっくりでいいから』
エスコートするように振る舞う澤田はゆとりにあふれていた。
反対に千春は、まだ自分のことを整理しきれていなかった。自分の中の混乱を抑え込むようにシャワーを浴びた。ゆっくりするつもりはなかったものの、時間がかかったみたい。
バスタオルを体に巻き、湯気に包まれて戻ると、澤田はただ真っ直ぐに千春を見つめてこう言ったの。
『……綺麗だ。本当に、1年の時からずっとこうして隣にいたかったんだ』
千春は何も言い返せなかった。ただ、これから「チャラ男」と蔑んでいた男に、このバスタオルの下をすべて暴かれる。その屈辱的な想像が、彼女の下腹部をジリジリと熱くさせた。
「少し、待っていて欲しい」
そう言い残して、今度は澤田がシャワーに行った。
千春はバスタオル1枚でベッドに腰掛け、澤田の言葉を反芻した。そして、称えられ求められることに満たされている自分に気づいた。

シャワーから戻った澤田は、千春の隣に座ると、しつこいほどに喜びを口にしたの。
『夢みたいだ。千春が俺の隣にいるなんて。世界で一番幸せだよ、俺』
その言葉が、千春の最後の一線を崩した。
「……もう、いいから。……早くして」
観念した千春に、澤田の顔が近づき、深く、甘いキスが落とされた。
澤田のキスは、驚くほど上手かった。
舌が絡み合い、口内の粘膜を執拗に舐められるたび、千春の頭の中は真っ白になっていった。
「夢が叶ったよ、千春」
「……夢なんて……はむ、ん、何よ、それ……っ」
強がりを言う唇も、すぐに彼の熱い口づけに塞がれた。

澤田の手が、千春の胸元で閉じたバスタオルの折り目に伸びる。
千春は反射的に逃げようと体を強張らせたけれど、結局はその手を拒めなかった。タオルが床に落ち、澤田の目に、千春の完璧な裸体が晒された。

ふと、典子さんは大事なことを思い出したように言った。千春の胸、綺麗だったのよと。乳首が薄いピンク色で、Eカップ。温泉でふざけて私も揉んだことあるけど、柔らかくて弾力があって。私もそこそこだったけどね、あれは男ならみんな喜ぶと思った。
悪戯っぽく笑って、話を戻す。

『……すごい。なんて綺麗な体なんだ……。千春ちゃん、最高だよ』
心酔したような澤田の視線。千春は恥ずかしさに身をよじりながらも、男に賞賛される快感に抗えなかった。
澤田の愛撫が始まった。豊かな胸を掌で包み込み、指先で弄ぶ。
「……あ、ちょっと、くすぐったい……ん、あ……っ」
千春の口から、甘い声が漏れる。澤田はニヤリと笑って、軽薄に問いかけたわ。
『胸、気持ちいいんだろ? 正直に言えよ』
「……っ、そんなこと、言いたくない……っ。……い、いやらしく……しないで」
澤田が乳首に吸い付くと、千春は背中を大きく反らせた。
「ひあっ!? ……やだ、そこ……そんなに強く吸われたら、もお、変になっちゃう……!」
『俺と来てよかっただろ? ほら、ここ、こんなに固くなってんぜ』
「……う、うぬぼれないで……よっ」
拒絶の言葉とは裏腹に、千春の体は正直だった。
硬くなった乳首の感度が普通じゃないことを自覚していた。
澤田の手が、ついに彼女の秘所へと伸びたわ。指先でそっと割れ目なぞり、クリトリスをピンポイントで弾く。
「あぁっ! ……うそ、そこ……っ、やめて、……あ、あああぁっ!」
千春は腰を浮かせ、声を上げた。繰り返されるクリトリスへの刺激。
続いて澤田の指は、千春の割れ目の中に入ろうと探り始めた。もうとっくに濡れているそこは、簡単に入り口が開いた。
『千春ちゃん、すごい、濡れてる』
「あっ、あぁ、指、入っちゃう。指が、あっ」
『ココが指吸い込んじゃったよ』
侵入した指の動きは加速して、濡れているそこを執拗にかき回した。
「あ、あ……っ! すごい、指……っ。……もう、そんなにかき回しちゃ、ダメ、メぇ……!」
『千春ちゃん、もう一回聞くぜ。俺と来てよかったか?』
「……っ、ああぁっ! ……いいよ、いい! ……さわ、澤田くん、気持ちいいよぉ!」
典子さんの言葉が、脳内で映像となって再生される。
清楚で気高い母が、見知らぬ男の指先一つで、なりふり構わず喘いでいる。
嫉妬で胸が張り裂けそうなのに、股間の熱はもう限界だった。
「あ、やだ、や、だめ、ダメ、イキそう……っ、私、イッちゃう……!」
千春が絶頂を迎えようとしたその時だった。澤田はね、すべての動きをピタリと止めたの。
「……っ!? な、なんでやめるのよ……っ」
焦らされた千春の瞳は、潤んで、獲物をねだる獣のようになっていた。
澤田はタオルで覆われた自分の股間を指差し、意地悪く笑ったわ。
『次はどうするか、千春ちゃんが決めてよ』
千春は、もちろん次を理解した。それで、そうするものだと、受け入れた。
「……わかったから。……タオル、外して……」
澤田が腰のタオルを外した瞬間、千春は息を呑んだ。
そこに現れたのは、今まで見たこともないような、巨大な肉の棒だった。血管が浮き出し、猛々しく屹立している。
「……っ、うそ。……こんなの、こんな、大きいの……」
澤田は驚く千春の手を取って、その巨根を握らせた。
『どう? 俺の、すごいだろ』
「……あ、っ……熱い。……太すぎて、手が回らないぐらい……。……ちょっと、大き過ぎるかも……。これ……私、これ、どうしたら、いいの?」
千春はこれから訪れる「蹂躙」を想像して、震えたの。
澤田は巨根を彼女の唇にあてがい、まずは舐めるように命じた。
「……っ……」
千春に選択肢はない。口を開けた。
澤田が強引に腰を突き出すと、喉の奥まで肉塊が押し込まれた。
「げほっ、……んぐっ、……ぅぅっ……!!」
あまりの大きさにえずき、涙目になりながらも、千春は必死に食らいついた。
『俺の、どうだ?』
「……はぁ、はぁっ……。……ひどい……。大き過ぎる。……頭の中、まで……いっぱいになっちゃう……」
思考を奪われる快感。千春はもう、澤田の言いなりだった。


[7] Re: 遍歴  スナフキン :2026/06/11 (木) 09:58 ID:4foysDFM No.32819
がんばってください。この先もとても楽しみです。

[8] Re: 遍歴  ファン :2026/06/11 (木) 23:48 ID:EScFVIII No.32821
いいですね。

[9] Re: 遍歴  土屋 :2026/06/12 (金) 23:53 ID:ocTWAUIA No.32826
スナフキン様 ありがとうございます。励みにします。
ファン様 嬉しいです。ありがとうございます。


『千春ちゃん、1年の時からの夢、叶えていいか?』
「お、おおげさ。……もう、好きにして。……感じさせてくれるんでしょ……っ」
澤田に「生でいいか」と聞かれ、千春の声は震えた。
「……絶対外に出してね。……今日だけ、だから……」
澤田に仰向けに寝かされ、千春は脚を大きく広げられた。
『……千春ぅ』
巨根の先端が、千春の濡れそぼった秘所にあてがわれる。
ゆっくりと、けれど容赦なく、肉の塊が沈み込んでいく。
「あ、あああああああぁぁっ!! ……おっき、おっきい……っ! ……太い、太すぎるよ……っ! ……はあぁ、裂けちゃう……っ!!」
初めて経験する規格外の質量。千春は快感と痛みの狭間で絶叫したわ。
けれど、奥まで根元まで埋まった時、彼女の体は歓喜に震えた。
「……っ、すごい……。……私の中、さ、澤田くんで、パンパン……。……こんなの、初めて……っ」
『千春の中に、俺の、全部入ったぞ……!』
澤田が動き始めると、千春はいきなり絶頂の波に呑まれた。
「ああぁっ! ……あ、あ、あ、……っ! すごい、そこ……っ! ……太いのが、ゴリゴリ当たる……っ!!」
千春はすぐに「マズい」って思ったって。軽蔑する男にすべて引きずり出される気がしたって言うの。
澤田は腰を振りながら、千春のシンボルともいえる豊かな乳房を愛撫し、舐め、吸い続けた。
千春は空に浮きながら雷に打たれているみたいとか言ってたけど、要は澤田は一切手を抜かない男だったってこと。
その澤田がね、やがて質問責めを始めたの。
『千春、俺のは何番目に気持ちいい?』
喘ぎながら、千春は答えた。
「……あ、っ……1番よ……っ! ……こんなの、他にいるわけないじゃない……っ!」
『何本中の1番か言ってくれないと、わかんねーな』
「……っ、そんなの、知らない……」
澤田はさらに激しく腰を叩きつけ、千春を問い詰めたわ。
『教えろよ。全部で何本だ?』
今まで守ってきたプライドが、男のピストンに合わせて剥がれ落ちていく。経験人数を告白させられる屈辱。なのに、あの時の千春には媚薬だった。
「……ご、5本……っ! ……これ、これでロッ、ポン……! ……6本の中で、あなたが、一番、すごいのっ!!」
「意外と遊んでんなぁ、千春!」
言ってしまった、知られてしまった、その恥ずかしさが刺激となって脳を襲った。
「……ああぁっ! ……うるさい、……言わせないで……っ! ……あああぁっ、イク! ……私、もうイクわ!!」
「イケよ、千春! 俺ので、イッてくれ!」
澤田の動きが猛獣のように激しくなる。
千春は白目を剥き、体を弓なりに反らせて絶叫した。
「あああああああああああぁぁぁぁぁぁっっ!! ……イッ、あぁ! ……イッちゃう、……アアァッ!!」
激しい痙攣。千春はその後も、澤田の執拗な突き上げによって、何度も、何度も達したわ。
巨根に体を支配され、彼女はただの「肉の器」と化していた。
「……きもち、いいぃ……。……澤田くん、最高、最高よ……っ」
ようやく澤田が限界を告げると、千春は彼にしがみついた。
「……お、お願い、そ、そ、ん、外に出して。外っ、んんっ……ああ……っ!!」
「ぐっ、いいぜぇ、どこにかけて欲しいか言えよ」
「どこでも……いいよ! ……す、好きなトコに、かけ、て……んあっ!」
「何をかけて欲しいか、ちゃんと言えぇ」
「さ、澤田くんの、せーし、精子! ……私にかけて! ……かけてぇぇっ!!」
澤田は咆哮とともに、千春の身体へ熱い精液を放出した。
「あああああぁぁぁぁっ! ……熱い、……いっぱい飛んできてる……っ! ……ああぁっ、私も、また、イク……っ!!」
二人の絶叫が部屋に響き渡り、狂乱の夜は幕を閉じた。

事が終わり、二人はベッドに横たわっていた。
澤田は「最高だった」と千春を褒めちぎったけれど、千春は我に返り、必死に自分を取り繕ったわ。
「……今回だけ。……これは、間違いなんだから」
『千春、俺と付き合おうよ』
「ごめん……断る。……澤田くんは、彼氏にするタイプじゃないと思う」
残念がる澤田。けれど、彼は最後に見透かしたように笑って言ったの。
『また、ヤリたくなったら連絡しろよ』
「……するかっ」
そう答えた千春だったけれど、この時にはもう、澤田の感触を刻まれていた。
典子さんはニヤリと笑い、さらに声を落とした。
「千春はね、それからしばらく澤田の虜になったの。口では『過ち』だなんて言いながら、澤田に『千春、晩メシ行こう』って声がかかると断れない。もちろん、メインは食事の後。
結局、澤田を本気で好きな女が現れて、千春が詰め寄られるまで、二人の関係はズルズル続いたわ。
千春にとって、澤田は『恋人』じゃなかった。でも、自分の女としての本能を最も深く抉り出した、特別な『雄』だったのよ」

典子さんの話が終わると、オレは眩暈のような感覚に襲われた。
母さんが、そんな風に……。
別の男に、ただの性具として、あるいはメスとして、徹底的に愛でられていた。
どうしようもないほどに膨れ上がった、実の母に対する性的な渇望。
典子さんは、そんなオレの様子を見て、勝ち誇ったように笑った。


[10] Re: 遍歴  :2026/06/15 (月) 16:56 ID:ivDAtrZA No.32834
先の展開を楽しみにしています

[11] Re: 遍歴  土屋 :2026/06/16 (火) 22:20 ID:TMG5VKhY No.32844
健様 ありがとうございます。まだ展開します。


典子さんはコーヒーを啜り、「澤田との話はこんなところかしら」と締めくくった。
オレは、目の前がチカチカするような感覚に陥っていた。あの真面目でしっかり者の母が、ホテルでチャラ男の巨根に屈服していたなんて。
『……母さんって、淫乱だったの?』
思わず口から出た言葉に、典子さんは「あんた、ヒドイね」と苦笑し、「うーん」と少し首を傾げ、諭すように言った。
「それは違うなぁ。放っておいても男が寄ってくるタイプだったから、自分から誘ったことなんて一度もないし。ただ、若さゆえの好奇心があったのと……そうね、正直に言うと、当時の千春は致命的に『男を見る目』がなかったのよ」
『見る目がない?』
「そ。あの子、自分に向けられる愛情の深さには、あんまり関心がなかったの。モテた反動というか、自分が愛したいって感じだったんじゃないかな。実は澤田だって、千春のことが本当に好きだったのよ。チャラいからって切り捨てずに、千春がもっと相手の愛情を見ていたら、案外幸せになれたかもしれないのにね」
典子さんの分析を聞きながら、オレは妙な胸騒ぎを覚えた。愛するに足る男を探していたとすれば、母の傲慢さも透けてくる。
すると、典子が続けた。
「……だから、痛い目も見て。それで、一郎さんが現れた時に、悟ったようにすぐに結婚を決めたんだと思うわ」
『父さん……?』
オレは、父・土屋一郎の顔を思い浮かべた。おカタイ仕事で、真面目で、どこか浮世離れしていて、何故母のような華やかな女と結婚したのかずっと不思議に思っていた。
だが、待て。いま聞き捨てならない言葉を聞いた。
『その、痛い目って、なんなの?』
オレは食い下がった。
典子さんが「あ……」と困ったような顔をして、口元を押さえた。
「ごめん、裕一。さすがにちょっと喋りすぎたわ。これ以上は……ね」
『お願いだよ。母さんのこと、もっと知りたいんだ』
「えぇ、困ったな……。じゃあ、今度は薫に聞いてみれば?」
悪戯っぽく笑う。
薫さんは、母と典子さんのトリオの中で一番清楚で、良妻賢母の鑑のような人だ。
『薫さんに? でも、オレ、連絡先も知らないし……あんな真面目な人に、こんな話、ムリだって』
「何言ってるの。あの子、ああ見えてこういう話、大好物なんだから。私も一緒に行ってあげる」
典子さんは早速スマホを操作し始めた。

土曜日。都心のテラス付きカフェ。
そこには、典子さんと、清楚な白のブラウスを着た薫さんが並んで座っていた。
「裕一くん、こっちよ」
薫さんがおっとりと手を振る。彼女は典子さんと違い、オレを「裕一くん」と呼び、優しく微笑んだ。
席に着くと、薫さんは少し真面目な顔をして口を開いた。
「典子から聞いたわよ。裕一くん、千春の過去に興味津々なんですって? 困った子ねぇ」
『いや、その。どうしても気になっちゃって』
薫さんは微笑んで、母さんが言い寄られて断った数々の話を面白おかしく話し始めた。典子さんも乗って盛り上がる。エピソードはどれも、母がモテたことを示すものだったが、今、オレの関心はそこにない。とうとう耐えきれず、言った。
『母さんが若い頃に痛い目にあったって、何があったんですか?』
薫さんは一度典子さんを見て、またオレを向いた。
「それね、せっかく会ったのに申し訳ないのだけど、実は私も典子もよく知らないというのが本当のところなの」
意外な答えだった。この2人も知らない母がいるのか。
『そうなんですか。ただ、痛い目にあったことだけは、何かしら母さんが言っていたと?』
オレはやんわりと食い下がる
「そうね、うーん、知っていることだけ話すわ」
薫が続ける。
「大学を出て、私たちが社会人1-2年目のころね。あの頃の新人ていうのはとにかく仕事が忙しくて、ハードでね。私たち3人もなかなか集まれずにいたの。そんな中で、どうにか合間を縫って会おうって話していたんだけど、結局、千春だけはいつも欠席。仕事が忙しいって言っていたけど、そんなに毎回毎回続くなんておかしいって典子と話していたの」
『薫さんと典子さんは会っていたのに、母さんだけ来なかったということですか?』
「そう。千春だけ疎遠になっちゃって。それが解消されたのが、社会人3年目。いきなり結婚するっていうからびっくりしたわ。もちろん、お相手は一郎さん。裕一くんのお父さんね」
続いて典子さんがニヤリとして言う。
「集まりに来なかったのに彼氏を作る時間はあったのねって、お祝いしながら文句言ってあげたわ」
薫さんが続ける。
「それで、いろいろ聞くじゃない?いつ出会ったとか、どこで知り合ったとか。そう聞いていくとね、一郎さんとの出会いがごく最近で、千春と疎遠だった2年ぐらいの時間に、まったく重ならないの。私たちが断られていた理由は、一郎さんとの恋愛ではなかったってことだったのよ」
『つまり、その1-2年は空白のままってことですか?』
すると典子が答えた。
「そういうこと。もちろん千春に聞いたわ。本当に忙しかっただけなのかって。そうしたら、『男と揉めちゃって』って。彼氏かって聞いたら『違う』って。あぁ、また澤田みたいなことだろうと思って茶化したら、それも『違う』って。『ちょっと大変で』って言うわけ。あの子、深刻ぶらずに明るく話すんだけど、そこからは線引かれた感じがしてね、聞けなかったのよ」
典子は次が決まっているかのように、薫に促した。
「その後、千春と私で飲みに行ったことがあって、試しに聞いてみたの。何があったのって。そうしたら、『心配させてごめん、時期がきたら話すから、少し待って』って。それで私は謝って聞くのをやめた。何より、一郎さんとのことのお祝いの方が大事だったからね。そうしたら千春が『本当に最低だったの、私。自分が嫌になった』って呟くように言った。いつか話す気になったら聞こうって思って待つことにして、それを典子にも伝えたの」
「これが、私たちが知っているすべて。結局、千春がそれ以上語ることはなかった」
典子が締めくくった。
オレはもどかしさに拳を握った。結婚前、彼氏でもセフレでもなく、それでも母と揉めた男がいた。そして、母に何らかの影響を与えた。その核心を知りたい。
『誰か、その時のことを知っている人はいないのかな』
薫さんは困ったような顔でオレを見つめた。
「裕一くん……どうして、そんなに知りたいの? 母親の、それも辛かった過去なんて、知らない方がいいこともあるわよ」
当然の疑問だ。いや、糾弾と言った方がいい。が、目的を果たすには、この壁を絶対に越えなければならない。
オレは、下半身を突き上げるようなドス黒い好奇心を「誠実さ」の仮面で塗りつぶし、もっともらしい言葉を並べた。
『……母さんはいつも完璧で、強い人に見えます。でも、そんな母さんにも人間関係による困難や苦悩があった。そこを乗り越えて今があるんだから、その人生経験を知ることは、僕にとっても大きな学びになると思うんです。……息子として、母さんの本当の強さを知りたいんです』
オレの言葉に、薫さんは少しだけ毒気を抜かれたような表情を見せた。
「だけど、あんたさ」
そう言ったのは典子さんだ。
「結局興味があるのは千春の男遍歴なわけでしょ?男子に色んな欲があることぐらいわかるけど、千春の傷を探すようにしてまで満たしたいもの?あんたが思ってるよりずっと重くて、親子関係をおかしくする爆弾の可能性だってあると思うよ」
ここで引いたら終わりだ。
『そんなこと、ありません。何が出てきても、オレの母さんへの尊敬の気持ちは絶対に変わりません』
オレは勢いで返した。
2人が黙る。
薫がオレを見た。
「……そうね。そこまで言うなら、心当たりが一人だけいるわ」


[12] Re: 遍歴  :2026/06/17 (水) 15:34 ID:8PtfgvIs No.32847
土屋様、興味深く拝読いたしました。
母親の人生を知りたいと思うのは素朴な感情だと思います。
同時に思慕の想いに到達するように感じました。続きを楽しみにしております。


[13] Re: 遍歴  愛読者 :2026/06/18 (木) 12:20 ID:CM7vWTFg No.32851
土屋祐一くんは、これからどうなって行くんでしょうか?典子さん、薫さんの何方かに童貞を奪われ食べられてしまうのでしょうか?

[14] Re: 遍歴  土屋 :2026/06/18 (木) 23:43 ID:8E587L5I No.32853
健様 ありがとうございます。ご理解頂きうれしいです。続けてみます。
愛読者様 ありがとうございます。引き続き、お付き合い頂ければうれしいです。一応、裕一は経験済みです。


『だれ?』オレは思わず身を乗り出した。
「落ち着け」典子さんに咄嗟に制される。
ゆったりと微笑んで薫さんが話す。
「私の主人の会社の取引先というか、仕事で付き合いのある女性よ。いまは独立して仕事をしているんだけど、偶然ね、千春の会社の元同期だってことがわかったの。私は会ったことないんだけど、秀島芽衣さんといって、主人が世間話をしているうちに共通の知り合いとして千春が浮かんだらしいの。もちろん、主人は千春のことに詳しくはないから、今の千春の活躍とか、秀島さんと千春が揃っていたなんて優秀な同期だぐらいなことを言ったらしいんだけど、その中でね、秀島さんが『新人の時の千春は本当に苦労もあって、よく立ち直った』って言っていたらしいの。後で主人から、千春が苦労していたらしいねって聞かれて、私、何て答えたらいいのかわからなかった。秀島さんと千春はもう何年も付き合いがないらしいけれど、当時のことを知っている人がいるとすれば、彼女ではないかしら」
オレは震える声で頼み込んだ。
「その人を、紹介してくれませんか」
薫さんは少し考えて、手元のスマホで夫に連絡を取った。
数分後、スマホが震える。
「……主人が、いいって。今度、まずは主人のオフィスを訪ねてみて。秀島さんに繋いでくれるらしいから」

薫さんが日程を整えてくれた次の水曜日。オレは緊張で胃を焼かれるような思いで、薫の夫・間瀬隆介のオフィスを訪ねた。
都心の高層ビルにあるオフィスは、洗練された静寂に包まれていた。
CEOの知人という扱いで、こぎれいな女性に案内されて会社のフロアを歩く。数十人が整理されたように並び、PCに向かっている。この光景が間瀬さんの成功の大きさだと思う。
個室の前で立ち止まった女性が、意外なほど気軽な様子で、「社長、お連れしました」と中に声をかけ、ドアを開けた。
オレは女性に御礼を言って中に入った。
目の前の大きなデスクから立ち上がって、今どきのスーツを着こなし日焼けした中年男性が笑顔で距離を詰めてきた。
「裕一くん、デカくなったな。前会ったのは、たぶん小学生の時だから、当たり前か」
間瀬さんは、経営者らしい落ち着きと包容力を漂わせてオレを歓迎してくれた。
「千春さんと同期だった秀島さんには大体のことは話してある。彼女、少し癖のある人だけど、千春さんの当時のことはよく覚えていると言っていたよ。まぁ、どこまで話してくれるかはわからないけどな」
隆介さんはソファに深く腰掛け、優しさをまとわせた、けれど鋭い眼差しで、オレを見つめた。
「……それで、裕一くん。その、君が母親の過去を熱心に調べているという『趣味』についてなんだが」
オレは心臓が止まるかと思った。用件は薫さんが伝えているとして、オレの下心まで見透かされているのがわかったからだ。
「……一つだけ確認させてくれ。これから先、どんな話が出てきても……例えば、君が抱いている母親のイメージが木っ端微塵に砕け散るような、下劣で醜悪な話が出てきたとしても、君はそれを受け止める覚悟があるのかな?」
『……あります。どんなことでも、母の真実が知りたいんです』
「その場合、知ったでは終われない。知った上で、これまで通りの眼差しを千春さんに向けられるか、ということだよ」。
『それは、むしろ自分自身が変えたくないところです。今までどおりの親子でいたいと思います』
「つまり、母親を欺きながら、平静を装う息子として生きていくということだな?」
そうだ、これは悪魔の契約だ。何が出てくるかはわからないが、知ってしまったら、永遠に知らないフリをしなければならなくなるかもしれなかった。
だが、もう止まれない。
『はい』と、オレは悪魔の契約書に署名した。
「そうか」と言い、間瀬さんが電話をかける。
ビジネスライクな挨拶をし、相手のきょうの予定を確認している。
「千春さんの息子」といった言い回しも聞こえた。
その後、談笑が続き、「では、よろしくお願いします」といって、電話を切った。
間瀬さんがメモを1枚持ってきた。
「秀島さんの連絡先だ。アポを取って、会いに行くといい」。
「秀島芽衣」という氏名と、メールアドレスが書いてある。
受け取る手が震える。
止まれない。進みたい。戻れなくなっても。
社会人になりたてだった母の空白の1-2年を掘り起こすのだ。


[15] Re: 遍歴  スナフキン :2026/06/29 (月) 21:02 ID:KZEWKHP2 No.32890
素晴らしく惹きつけられる文章と、拝読しております。
続きが楽しみでなりません。


[16] Re: 遍歴  土屋 :2026/06/30 (火) 21:43 ID:riwbExkc No.32897
スナフキン様 メッセージをありがとうございます。続けます。


朝のリビング。すでに仕事へと出かける準備を整えた母・千春が、玄関へ向かう足を少しだけ止めて俺を振り返った。
「裕一、きょうパパ帰ってくるからね」
その声はいつもより心なしか弾んでいて、どこか嬉しそうだった。
10日ほどの海外出張から、父が戻ってくるらしい。
「男遍歴」を密かに探り、強烈に関心を引かれているせいか、母が妙に艶めかしく見える。
ブラウンを基調にした、45歳の年相応に落ち着いたオフィスカジュアル。シルエットは今っぽくゆったりしているが、床に置いた大きめのレザートートバッグを持とうと母が腰を屈めた瞬間、丸みを帯びた尻のラインが強調された。45歳という年齢がもたらす程よい肉付きが、かえって熟れた果実のような生々しい色気を放っている。
実の母親をそんな目で見るなんて、息子として、男として、完全にアウトだ。そう自覚しながらも、俺の視線は吸い寄せられるようにその肉体に釘付けになり、喉の奥がカラカラに渇いていくのを止められなかった。
「……いってらっしゃい」
引きつった声を絞り出すようにして声をかけると、母は『はい、いってきます!』と満面の笑みを残してドアの向こうに消えた。
一人残された俺が何気なく冷蔵庫を開けると、そこには驚くほどたくさんの料理が綺麗にタッパーに仕込まれていた。仕事で忙しいはずの母が、合間を縫って夕食のために仕込んだのだろう。手のかかる料理の数々を見つめながら、俺は確信していた。母は、父が帰ってくるのがたまらなく嬉しいのだ。

夕方、スマホが震えた。母からのメッセージだった。
『ごめんね、帰りが少し遅くなっちゃう!』
俺は腹を空かせながらリビングのソファで帰りを待つ。
夜7時半を過ぎた頃、ようやく玄関の鍵が開く音がして、母と父が揃って帰ってきた。
「おかえり」
「ただいま、裕一」
10日ぶりの我が家だというのに、55歳になる父・一郎は、笑顔こそ浮かべているものの、全く抑揚のないいつもの声で答えた。父は、家族から見てもどこかナゾめいた、おそろしくカタブツな男だ。
母は『すぐ準備するね!』と足早に自分の部屋へ戻ると、あっという間に着替えてキッチンに立った。
白いTシャツに髪をざっくりとアップにしたラフな姿。だが、背中を向けてコンロに向かう母のTシャツの下には、キャミソールのラインがはっきりと透けて見えていた。
薄い生地越しに見える、きゅっと引き締まった細いウエストと、そこから滑らかに広がる豊かなヒップの黄金比。腕を動かすたびに、ブラジャーのホックあたりが細かく揺れ、大人の女性特有のうっすら肉の付いた背中がやけに官能的に映る。キッチンに立つ母親の後ろ姿を見つめながら、俺は罪悪感と、この身体が捧げられてきた男たちとの時間に妄想を広げていた。
母は手際よく食事を支度し、30分もしないうちに食卓には豪華な手料理がずらりと並んだ。
久しぶりに家族3人で囲む夕食。
『ねえ、向こうのカンファレンスはどうだった? 』『美味しいもの食べた?』『体調は崩さなかった?』
母は、堰を切ったように父に出張のことをあれやこれやと問いかける。
対する父は、
「ああ、問題なかった」「いや、特には」「大丈夫だ」
と、全ての問いに対して極端に短い言葉で淡々と答えていく。
普通なら会話が途切れそうなものだが、母は嫌な顔一つせず、父の短い答えからさらに質問を紡ぎ出し、彼の言わんとしていることをしっかりと理解しようと耳を傾けていた。
これが、我が家でずっと繰り返されてきた両親のコミュニケーションだ。父はどうあっても、自分からサービス精神を出して面白おかしく話すような真似はしない。母より10歳年上の、優しくはあるが、とにかく堅い男。
若い頃からモテまくり、彼氏どころかセフレの影すらあった奔放な母が、なぜ、こんな面白みのない男を結婚相手に選んだのか。男遍歴を探る俺のルポルタージュも、もうすぐその核心的な答えにたどり着くのかもしれない。そんな予感がしていた。

夕食後、まず父が風呂に入った。
戻ってきたかと思うと、旅の疲れもあるのだろう、大した会話もないままさっさと寝室に引っ込んでいった。
入れ替わるようにして、次は母が風呂に向かった。
リビングに一人残された俺の頭の中に、ふと、ある疑問が湧き上がってきた。
そういえば、なんで帰りが遅くなったんだ?
買い物をしてきたのだろうか。だが、帰ってきた時に見た荷物に、そんな様子は一切なかった。それに、出張帰りの父を買い物に付き合わせるというのは、母の性格からしてないだろう。では、どこかに寄り道したのだろうか。
……もしかして。駅かどこかで合流して、そのままどこかで、父とお茶、いやデート、いや、セックスでもしていたんじゃないだろうか。
一度浮かんだ妄想は、恐ろしいスピードで膨れ上がっていく。45歳の母親と55歳の父親の情事なんて考えたくもないはずなのに、男たちの間を渡り歩いてきた母の過去を知っているせいで、妙なリアリティを持って脳内を支配していく。
母のあの身体が、さっきまで父の腕の中で貪られていたのかもしれない。そう考えると、嫌悪感と同時に、どうしようもないドス黒い好奇心が頭をもたげた。
悶々とした気持ちに耐えきれなくなった俺は、気がつくと、母がシャワーを使っている隙を狙って脱衣所へと忍び込んでいた。
ターゲットは、洗濯物カゴだ。
胸の高鳴りを抑えながら、今日着ていた服の山をあさる。その時、俺の指先が、形のしっかりした何かに当たった。
「……これ、は」
引っ張り出したのは、円筒形の形をした洗濯ネット。ファスナーを開ける。母の、ブラジャーが現れた。
そのデザインに目を奪われる。色はベージュだが、光沢のある艶やかなサテン。表面に蜘蛛の糸のような繊細なレースがあしらわれている。どう見ても普段使いではない、色っぽい代物だった。
膨らむ妄想のままに、対となるもう1枚を探す。紛れているはずのサテンのベージュのショーツ、きっとそれはクロッチに汚れが……。
だが、ない。もう一度、洗濯物を改める。が、ない。ショーツだけが見つからなかった。
なぜ、ショーツだけがないのか。
母が風呂に持ち込んでいる、洗うために。洗うのは、汚れているからに決まっている。
オレの脳が、ベージュのサテンのショーツを履いた母と、その股間ににじむシミを描き始めた時、シャワーの音が止まった。母が出てくる。オレは慌てて洗濯物をかごに戻し、ひっそりとリビングに戻った。
母は父とセックスを楽しんで帰ってきた、オレはそう結論付けた。なぜか苛立つ。どうしようもない届かなさや疎外感。それがドス黒い意志を膨らませるのはあっという間だった。
徹底的に暴いてやる。

深夜、母の空白の時間を証言してくれるであろう、秀島芽衣からメールが届いた。
オレが話を聞きに行く日程の調整を、確定させるものだった。


[17] Re: 遍歴  :2026/07/01 (水) 19:40 ID:vi8xPx5E No.32902
これから何があきらかになってくるのだろうと思うと興奮を禁じえません。

[18] Re: 遍歴  土屋 :2026/07/03 (金) 21:40 ID:pn9TJq4U No.32906
健様 メッセージありがとうございます。励みにします。


その日が来た。
空白の2年間に母の最も近くにいたであろう、元同期の秀島芽衣に会いに行く。
語られるのは、母が親友にさえ明かすことのできなかった秘め事か、仕事に忙殺された当時のキャリアウーマン像か、あるいは、秀島も特別なことを知らない可能性もある。

いまは独立して事業を行っているという秀島の会社は、代官山にあった。
細長いビルの5階。扉を開けると、そこはオフィスというより、趣味のいいリビングのような空間だった。壁一面の本棚、使い込まれた革のソファ、そしてアロマの香りが漂う中に、雑味のようにほのかなタバコの残り香があった。
こんにちは、と声をかける。
「はい。土屋くんね?そこ、座って。今、一段落させるから」
デスクでキーボードを叩いていた女性が、こちらも見ずに言った。
お忙しいところすみません、と謝って、ソファに腰を下ろす。
画面に向かっている女性を眺める。秀島芽衣。黒髪のボブに金縁のスクエアなメガネが丸みのある顔に似合う。画面を見る目は細く、どこか世の中の裏表を見尽くしたようなスレた印象を与える。
すると、彼女は立ち上がり、コーヒーを淹れ始めた。ふくよかな体型だが、ベージュのパンツスーツを着たその身のこなしには無駄がない。
「アシスタントがやめちゃって、ごめんなさいね。ちょっとだけ待って」
お忙しいところすみません、ともう一度謝る。

秀島がカップを2つ持ってやってきて、オレの前にコーヒーを置いた。
彼女はオレの正面に座ると、メガネの奥からじっと見つめてきた。
「……ふーん。千春ちゃんに似てるわね。目なんてそっくり。で、君もモテるわけ?」
値踏みするような視線。オレは言葉を返せない。
一重まぶたに鋭い目つき。どこか人を寄せ付けない雰囲気を醸しているが、不思議と嫌な印象は受けない。母や典子・薫のような、たいていの男が認めるわかりやすい美人とは違う、なんとも言えない色気を醸す女性だ。
オレが言葉を繋ぐ前に、秀島は自分で話し始めた。
「話はだいたい間瀬さんから聞いてるわ。自分の母親の、過去の男関係を嗅ぎ回るなんて……。君、ずいぶん悪趣味よね」
秀島は、面白がるように、けれど確かな軽蔑を含んだ薄笑いを浮かべた。
オレは鼓動を抑えきれず、観念したように深く頭を下げた。
『……否定できません。自分でも最悪だと思っています。でも、どうしても知りたい、聞かせて欲しいんです。母が新人の頃、何を経験したのか』
「もちろん、構わないわよ。間瀬さんの奥様、君のお母さんと親友なんでしょ?私はね、そういうのではないの。千春ちゃんとは同期入社だったけど、仲よくしていたわけではなかったし、わかり合ったこともないわ。だから遠慮しない。知っていること、垂れ流してあげる……きっと、君のその最悪の趣味にピッタリの話になるはずよ」

本命だ。この人こそ、オレが求める話を掴んでいる本物の証人だ。

「……その代わり、一つだけ忠告させて。これは、君にとって、聞かなければよかったと思えるような、最低で、救いようのない話になるわ。それでいい?千春ちゃんが恥をかくのは構わないとしても、前途ある若者が母親不信になるのは忍びないでしょ」
大丈夫だと、言ったか言えなかったか、とにかくオレは、深く頷いた。
秀島が満足そうに笑う。
「……千春ちゃん。あの頃の彼女は、みんなが言うような完璧な女じゃなかった。……致命的に、男を見る目がなかったのよ。……いいえ、違うわね。男次第でどこまでも流されてしまう、芯のない空っぽの女だったの」
秀島は、吐き捨てるように言った。
今まで誰からも聞いたことのない、母への辛辣な評価。語られるのは母の秘め事だと確信する。オレは、鼓動が胸を打つのを感じていた。


[19] Re: 遍歴  土屋 :2026/07/10 (金) 21:33 ID:/s2UYcao No.32932
あれは私たちが社会人1年目の、とにかく仕事に追われて、忙しくて自分を見失いそうだった頃の話。と、秀島は語り始めた。

千春ちゃんはね、最初から際立つ存在だった。美人でおしゃれで、気が利いて。すぐに花形部署に配属されて、みんなに可愛がられていた。私も、男たちから彼女を紹介するように何度言われたことか。紹介できるほど仲よくないって返していたけど。私は最初広告担当でね、彼女のことが羨ましかったんだわ。
秋を過ぎて、年末が近づいたころ、私と千春ちゃんはあるプロジェクトで一緒になった。彼女は原作、私は広告担当で。私たちは研修以来、久しぶりに近くで接することになった。実は少し意外だったわ。私の知っている千春ちゃんのキラキラした感じがなかったから。その時は、彼女も仕事に揉まれて大変なんだとしか思わなかったけれど、ある晩、声をかけられたの。『芽衣ちゃん、たまには飲みに行かない?』って。私はOKした。断る理由もなかったし、あの水野千春が自分から誘ってくるなんて、悪い気がしなかったから。

水野は母の旧姓だ。語られているのは、オレの存在しない時間の母の姿なのだと実感する。

千春ちゃんに連れて行かれたのはね、と秀島が続ける。

赤坂にある暗く静かな個室の居酒屋だった。花形部署との差を見せつけられた思いがしたわ。千春ちゃんは普段からこういうところで飲んでいるんだって。私が取引先と行く店はもっとずっと雑多で気安かったから。とりあえずビールで乾杯して、「久しぶりね。声かけてくれてありがとう、うれしい」って、最大限感じよく、親しい同期の女子を装った。だって、対等でいなくちゃ情けないじゃない。
『こっちこそ、ありがとう。パーっと飲みたくって』
その千春ちゃんの言葉に、私は違和感を覚えた。ただ楽しくしたいなら、こんな店を選ぶはずない。パーっとしたくなる、何かを抱えているんだと思った。
「千春ちゃんにもそんな時があるんだね。パーっと飲も飲も。溜まってること、吐き出しちゃお」
私は親友に立候補するような態度で、千春ちゃんの内側をのぞくことに決めたの。

最初は仕事の話をした。私はそれしか関心がなかったから。水野千春が実は仕事に悩んでいるなら、面白いじゃない。でも、どうも違う。出てくる話は順調そのものだった。
なんだ、悩みは男かと、残念に思ったのを覚えている。その類の話は私には関係がない。だから、ただ彼女の不幸を嗅ぎ取りたいためだけに、「彼氏とはどうなの?」と聞いた。
『彼氏なんていないよ。入社してからすれ違っちゃって、配属されてすぐ別れた』
「そっか、忙しいもんね。千春ちゃんなら、また素敵な人が現れるわ」
私は適当に返した。
少し間が空いた。
「ねぇ、千春ちゃん、パーっと飲みたくなるような何か、吐き出せてる?」
『え?楽しいよ』
「私、まだ何か、聞けていないんじゃないかと思って」
『やっぱり鋭いな、芽衣ちゃんは。さすが、同期一の才媛ね』
こういう一言が本当に嫌な女よ。私がうれしくなってしまったから。
彼女は続けた。
『吐き出したいのに話すのが怖くて迷っていたんだけど。私ね、家に帰りたくないの。…嫌な男がいて』
私は一瞬、混乱した。でも、すぐに、家に彼氏とは呼べない男がいて、好ましい関係ではないのだと理解した。それで思ったの。これは、水野千春の内側をのぞく入り口が開いたんだって。そこからは寄り添う親友のフリよ。優しく、丁寧に話を聞いて、千春ちゃんのみっともなくて惨めなエピソード1つでも取れれば成功と思ったわ。

「男って、彼氏ではないのね?」
『うん、そうなの。彼氏ではなくて。家に居ついちゃって』
「つまり、男女の関係ってことよね?」
『そう、…そうなっちゃったの。認めたくないけど』
「何が嫌なの?」
『すべて、すべて嫌なの』
「難しいのかもしれないけど、その人から離れられないのかしら?」
『離れたいよ、今すぐ離れたい。だけど、出て行ってほしいって言っても、いつもはぐらかされて終われなくって。もうどうしたらいいんだか』

初めて見る、千春ちゃんの追い詰められた顔。だけど、それがきれいだったのよ。女の私から見ても艶かしくて。そのまま視線を下ろして、彼女の身体を見たわ。白いブラウスに押し込まれて窮屈そうにしている胸、一点を目指すようにラインが収束するウエスト、タイトなスカートが明らかにしている丸く張ったお尻。組んだ脚の筋肉と足首はヒールと一体化した造形のようだった。この身体が、本人の望まない男に好きにされている。明らかにおかしな話よ。
それで思ったの。この話を解き明かすことは、水野千春を踏みつけるチャンスなんじゃないかって。

オレに語る秀島が歪に笑う。その淫靡な表情に、母を辱めて欲しいという期待が暴走しようとしていた。


[20] Re: 遍歴  スナフキン :2026/07/11 (土) 11:53 ID:4foysDFM No.32933
予想外の展開です。楽しみでなりません。

[21] Re: 遍歴  一寸法師 :2026/07/11 (土) 11:56 ID:F7BxavFg No.32934
いい感じですね。千春さんがどのような人生を送ってきたのか。楽しみです。

[22] Re: 遍歴  土屋 :2026/07/11 (土) 21:33 ID:XUA9kpmE No.32937
スナフキン様 楽しみにして頂けて幸いです。続きです。
一寸法師様 ありがとうございます。お言葉を励みに進めます。


男の名前は、藤野といった。千春ちゃんとは就職活動のイベントで知り合っただけの、ただの同学年。もちろん別の大学。当時は情報交換ていう名目で、就活で知り合った学生同士がよく連絡先を交換していたの。だけど、その後も連絡を取るなんていうことは希で、千春ちゃん自身、藤野のことは忘れていたって言ってたわ。

ところが、入社後の新人研修が終わって、配属されてしばらくしたころ、連絡があったって千春ちゃんは言った。

『蒸し暑くなってきた頃だったの、突然メールが来て。「就活イベントで一緒だった藤野です。友達から、水野さんが出版社で活躍しているって聞いて、色々教えて欲しくて連絡しました」って』

私は、そのメールで男のことを思い出したのか聞いた。

『思い出せなかった。そのイベントは覚えていたけど、藤野くんのことは忘れていたの』
「それで、何て返事したの?」
『私は電話で話すぐらいのつもりで返したんだけど、会うことになって。会えないかって言うから』

私は驚いた。忘れてしまう程度の相手と、わざわざ会わないでしょう。どうして会うことにしたのか、聞いたわ。
千春ちゃん、少し考えてから、『今思うと』って付け加えて言った。

『助ける側になりたかったんだと思う。彼氏と別れて1か月ぐらいで、仕事はいっぱいいっぱいで。話を聞かせてって求められるのは、悪い気がしなかった』
「肯定される気がした?」
『…うん、そう…』

私には、既に彼女が惨めに見えていたわ。自分の価値の承認を、そんなワケのわからない男に求めるなんて。だから、もっと貶めてやろうと思った。

「千春ちゃん、聞かせて。何があって、いま、どうしているのか。私、ただ聞くよ」

ありがとうって言って、彼女は話し始めた。醜悪極まりない転落を、物語であるかのように。

『藤野くんとは、表参道のイタリアンで待ち合わせたの。仕事の後で行ったら、もう座っていて。金髪で、根元が黒くなってて、ヨレたTシャツに破れたジーンズだった。顔は、見ても思い出せなかった。あっさり顔だからかな。色白で、まぶたの重そうな目をしているの。無精髭で、お店では浮いていたかな』

もう形容の全てが、冴えない男を描いていたわ。

『藤野くん、私のことをスゴイスゴイって言って、自分は就活うまくいかなくてバイトなんだって。だから私、言ったの。就活は縁もあるから、またチャレンジするんでしょって。そうしたら、一気にしゃべりだした。マスコミ志望で、就職留年も多い業界だからきっと大丈夫。今回は面接官が話の通じない人間で、くじ運が悪かったって言うの。私すぐに、あぁ、この人の感覚は私たちとは違うんだって思ったよ。だけど、そうも言えないから、今はどんなことをがんばっているの?ってきいた。そうしたら、こうやって成功した人に会ってアドバイスもらってるって。だけど、藤野くん、一度も私に質問しなかった。結局、自分は能力があるのに認められないだけ、わからない相手が悪い、世の中が腐っている、そんなことを並べ立てるだけだった』
「その男、本当に最悪ね」
『私もそう思って、ほどほどにして早めに帰ろうと決めた。明日も早いからそろそろって。だけど、もう少し聞いて欲しい、アドバイスが欲しいって、繰り返しで。気がつけば閉店時間。追われるように店を出て、地下鉄に乗った。藤野くん、同じ路線だって言うから。それで一緒に数駅乗って私が先に降りて、地上に出て歩き始めた時だった。水野さんて、呼び止められたの。藤野くんだった。私が驚くと、すぐに謝ってきて、どうしてももう少し話したくて降りてしまったって。明日早いから無理って断った。そうしたら、あと少し話せたら何か見つかる気がする、だから見捨てないで欲しいって。だけど、もう近くに開いているお店なくて』

千春ちゃんはそこで黙った。
私は待った。

『…藤野くんが、水野さんの家に寄っちゃダメかなって。少し話せたら、すぐ帰るからって。…それで私、30分だけならって言ったの』

それを聞いて卒倒しそうになったわ。そんな底辺の男を自分の家に招くなんて。
千春ちゃんにあったのは、見捨てたと思われたくないっていう見栄と、自分に邪気が向けられることなどあるはずがないっていう自惚れだけ。この時、多分本当に、そんな最低の男と自分が肉体関係を持つことになるなんて、思っていなかったのよ。



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