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ウェディングドレスの妻

[1] スレッドオーナー: 佐山 :2025/10/25 (土) 02:07 ID:fm1CrgoQ No.32402
『なんでも体験告白』から移りました リライト版です。

◇登場人物

・私、佐山康則(58歳)電機メーカー勤務
 身長165p 明るい性格 腰痛、肩こり、下戸 のイメージ  
 趣味は映画・スポーツ鑑賞、ハイキング

・妻、佐山幸代(旧姓伊藤)(55歳)スーパーでレジや品出しのパート社員
 身長158cm、普通体系 黒髪、肩にかかるボブ、ナチュラルメイク、
 スニーカー、靴下、自転車、ブランドよりもトップバリューのイメージ
 趣味は庭いじり 綺麗よりも笑顔が愛らしい可愛い系

・私たち夫婦は、結婚30年、シニアらしい平凡でのんびりとした普通の暮らし

・子供(長男:大樹(28歳)、長女:里奈(26歳))ともに成人未婚、県外勤務


◇本文 〜特に同年代の男性の方に自分に置き換えて読んでいただきたい〜

5月終わりの頃……

爽やかな風が、薄く開け放った掃き出し窓から部屋に入り込み、レースのカーテンをふわりと膨らませた。

庭の片隅にある小さな花壇では、妻 幸代(55)が手をかけて育てているミニバラの枝先に、ひとつだけ小さな花が静かにほころんでいた。
朝、彼女は軍手をはめた手で枝ぶりを整え、しゃがみ込んで黙々と土に向かっていた。
デニムとスニーカー、ゴムで束ねた髪。Tシャツの背中が陽の光を透かし、まるでひとつの風景画のようだった。

幸代は年齢的には50歳代の半ば、身長は157-158cmと比較的小柄ではあるが、体形も姿勢も全くと言っていいほど崩れることなく 若々しい外見で、特に外見に貫禄?の出始めた私からすれば、同年代として素直に羨ましく思えてくる。
いや それどころか、なぜか彼女だけは歳を取らないようで、悔しくもあり負けた気にすらなってしまう。

今日、日曜日の昼食は、冷やしうどんと昨晩の煮物の残りだった。
飾り気のない献立だけど、それが彼女らしい。
どこかに温もりがあって ほのぼの感があって、体の奥が「思い出してくる」ような味。

軽い昼食を終えた 私 佐山康則(58)は新聞を広げたまま、うたた寝をしていたらしい。
目を覚ましたとき、いつのまにか陽射しは傾き、室内の影が深くなっていた。

幸代はローテーブルに片腕を乗せて、もう一方の手でひざを軽く抱えるようにリラックスして座っていた。
黒髪をざっくりとひとつに束ね、グレーのコットンシャツとくたびれたベージュのパンツ、足元は白い靴下。
それだけの装いなのに、どこか整って見える。むしろ、年を重ねた女性だけが纏える、落ち着いた清潔感と“奥行き”のようなものが、そこにあった。

ふと、私の視線に気づいたのか、幸代がこちらを見た。

「あっ……トオサン? そういえば……」

「ん?」

まだ夢の名残をまとったような、鼻にかかった声が自分でも可笑しかった。

「再来週の日曜日だけど…… 午後って、なにか予定ある?」

「再来週? いや ないよ。 知ってるだろ? 日曜はいつもヒマしてるって」 私は即答した。

「ならよかった……」

「なんで? 何かある?」

「うん なんかねー、冗談みたいな、でもけっこう真面目な話で……」

彼女の声が、わずかに調子を変えた。
いつもより、ほんの少しだけかしこまった口調。
でもその奥には、どこか照れを含んだ笑みが滲んでいて、その“間”だけで私は胸の奥がざわついた。

「何? 真面目な話? カアサンの? 相談事か? それともトラブル?」

「ううん、そんな大げさなことじゃないけど……」

ぽつりぽつりと、幸代が話し始めた。

彼女がパートに行っている中堅スーパーが、最近 ブライダル関係の企業と業務提携を結んだという。
いわゆる異業種提携というやつだ。
その一環として “シニア世代のためのブライダル・プロモーション” なる企画を始めたらしい。

「“熟婚式”とか“再誓式”“新寿式”、あと“年輪婚”“円熟婚”“オトナ婚”とか呼ぶみたいで…… 人生の後半に、もう一度 節目をつくるんだって…… なんか最近 いろいろあるよね」

そんないわゆる「シニア婚」のパンフレットや動画に使う素材として、社内でモデルを公募していたらしく、なんと幸代が“花嫁モデル”に選ばれたのだという。

「何回も、ホントに何回も断ったんだけど……」
「だって、わたしなんかよりも…… ね」と回想する幸代。

更には パート仲間の強い推薦と、スーパーの課長から本社への熱い後押しもあったとのこと。

「シニアの生活感が出ている“ごく普通の一般の人”が求められていたんだって……」
「ちゃんとしたモデルさんじゃなくて、素人。 できれば“地元住みの女性”っていうのが、コンセプト?みたいなのに合うみたいで……」
「あと、年齢的には50代の半ばの人 って えっ? それ、わたし? って…… なんだかんだでドンピシャだったから……」

まるで誰かに言い訳でもするような口調で、立て続けに そして一方的に、私に捲し立てた流れで、

「ねぇ、どうしたら良いと思う?」と今度は真面目な顔で訊いてきた幸代。

「え? どうしたらって…… そんなのオレに聞かれても……」

突然、そんなことを振られて、私も どう答えて良いのか、わからない。

すると幸代が、ふっと軽く息を吐きだして、

「というか、もうほとんど 話は決まってて…… 断れない雰囲気なんだよね……」

そう言って、少しだけ視線をそらした彼女の口元に、かすかに恥じらいが浮かんでいた。

「は? マジで? 冗談だろ?」

少しトーンの上がった私に合わせるように幸代の音量もアップした。

「わたしだって冗談って思いたいよー!」

「え? じゃぁ、申し込んだの?」大げさに目を丸くした私。

「もぉ! そうじゃなくて…… 申し込まされたの!!」と頬を膨らませた幸代。

「あはは、罰ゲームだな、それ」

素直に笑いが喉の奥からこぼれた。
普通に滑稽で笑わずにはいられなかった、というのが私の最初のリアクションだった。

「あー 罰ゲーム…… たしかにね。 でもそれより酷いかも」

けれど、彼女の顔は笑っていなかった。
いや、笑ってはいたけど、それは“困惑の中にある照れ”のようで。
冗談で済まされるような話では、なさそうだった。

イベント自体も中堅どころの映画制作会社のしっかりとした撮影部隊が入るらしく、それなりのスケールで実施されるらしい。

「というか、ドレス着るの? それとも白無垢だっけ? 和服とか?」

私は別にどちらでも良いものの、なんとなくの興味本位と彼女との話し合わせのために聞いてみた。

「んー、それが…… ドレス、純白のウェディングドレスなんだよね…… せめて和装だったら、私もここまで悩まないのだけど、ね」

「へぇー、ヒラヒラの白いドレスか…… じゃぁ、オレはシニアの花婿か?」
「今さら加齢臭のオヤジがタキシード着て、蝶ネクタイして…… 鼻毛も切らないとな…… あははっ」

おチャラケ気味に私が言うと、意外にも真剣な表情で幸代が返してきた。

「じゃぁトオサンは…… 花婿さんの役を頼まれたら、本当にやりたいと思ってる? やってくれる?」

私は間髪入れずに返した。

「絶対に嫌だな、ムリ 無理、恥ずかしすぎるし、世間の笑いものになりたくないよ」

「そうよね…… やっぱり無理な話よね……」

幸代は口元に笑みを浮かべ そう答えたものの、ほんの一瞬だけ 冷めたような目線を左下に向け、そして軽く口先を締めた。
長年 生活を共にした私だけが知る、彼女が 機嫌を損ねた時や気分を害した時などに見せる ほんの微かな“ネガティブなジェスチャー”だった。

(あれ? ヤバいな……  これはマジで怒らせてしまったかな?)

そう思った私は、新聞を折り畳みながら、わざとらしくため息をついてみせた。
いちおうは、幸代の気持ちに寄り添うようにしないといけない、と思ったのだ。


[13] Re: ウェディングドレスの妻  きーくん :2025/10/29 (水) 10:54 ID:rNk8GicQ No.32420
佐山さん

いよいよ事が動き出しましたね。
自分に置き換えてゾクゾクしています。

妻が妻でなくなる喪失感、恐怖感と
相反する期待感、興奮が複雑に交差します。

今後の展開を心待ちしています。


[14] Re: ウェディングドレスの妻  佐山 :2025/10/29 (水) 22:02 ID:HgNBIVPI No.32425
まるで白い光の中に吸い込まれるように、幸代の背中はゆっくりと遠ざかっていった。

その姿が完全に視界から消えるまで、私は言葉も動きも失い、ただただその場に立ち尽くしていた。

胸に広がっていたのは、言葉にできないざわめきだった。
痛みでもなく、悲しみでもない。

不安だ……

深くて静かな不安が、私の胸の底をひたひたと濡らしていた。

それでも唯一の救いだったのは、不安なのか緊張なのか 表情を強張らせ「行きたくない」とまで言っていた幸代が、村川さんと話をしながらでも なんとか前に歩みを進めていたことだった。
もしかしたら あれだけ(“新婦”ではなく)“花嫁”として ウェディングドレスが着られることを楽しみに、ワクワクと嬉しそうに待ち望んでいた気持ち に戻ってくれたのかもしれない…… 
一方的ではあるが、私は幸代のことを そんなふうにポジティブに思うようにした。

一人で佇んでいた私は、チャペル内の設営で 忙しなく動き回り始めたスタッフの邪魔にならないように、とりあえずチャペルの外へ出ようとした。

その時 背後から、

「招待客役のエキストラさん? お疲れさんです。 えっと お名前は?」

水色のスタッフ用のトレーナーを着た若い男性が私に声を掛けてきた。

「あっ 佐山です。…… 佐山康則 ですが……」

すぐに彼は手にしていたバインダーに閉じられていたリストを捲り、所定のページから座席一覧を指しながら、

「んと、佐山さんの席はココ。 まだ1時間、いや1時間半くらいあると思うので、座って待ってもらっていても良いですよ」
「あんまりウロウロされると ウチらの邪魔になってもいけないので…… あっ、危ないからね」

言い方に悪気がないのは わかっている。
けれど、息子くらいの年齢の男に、邪魔だとか言われると、正直 気持ちは穏やかではなかった。
ただ彼は彼なりにプロとしての役割をもって設営の仕事に没頭しているのは理解できた。
それに、こんなところで腹を立てても仕方がない。

「そうですね…… はい、わかりました」

素直に私は若いスタッフの指示に従うことにした。

彼の指していた席は、招待客席エリアの一番後ろの 一番隅っこで、残念ながら ヴァージン・ロードからは一番遠い所だった。
そういえば、と幸代が無理を言って私をエキストラに入れてくれたことを思い出して、それだと尚更、不満など言える立場ではないことも自覚した。

ベンチに腰を下ろすと、背中に触れた木の冷たさが じわじわと染み込んできた。

(外は、あんなに初夏の陽気だったのに……)

まるで私自身のテンションの低さが、そのままこの冷気に繋がっているかのような気がした。

何気に、左前方に設置されていた白いスクリーンに視線を向けると、その下には“新郎役”と思われる男が立っていた。

遠目に見たところ、まるでK川晃司さんを思わせるような、体格も良くてワイルドで品のある都会的な雰囲気を纏っていた。
シルバーグレーのタキシードがその精悍な表情に溶け込み、彼は数名のスタッフと軽口を交わしながら、自然な笑顔を浮かべていた。

おそらく私と同じくらいの年齢だろう、撮影の映えもあるのか、背が高くてスラリと伸びたその立ち姿がひときわ目を引いた。

背が高くてスラリ……か、 
彼の背丈と私の背丈……は?

先ほど声を掛けてきた若いスタッフが私と同じくらいの背丈だったこともあり、そのスタッフと並び 話をしている“新郎役”の彼は、そのスタッフ“つまり私”よりも、頭ひとつ分くらい背が高いのが 離れた席からでも見て取れた。

おそらく175〜180cmだろうか、いや もっと……?
私の身長は165cmだから、コンプレックスを抱いたのも事実だ。

それに加えて、彼の醸し出す それとない余裕と安定感に、私は言葉にできない距離を感じていた。

(……負けたな)

さらに、幸代とその男が並ぶ姿を想像してしまい、胸の奥がきゅっと縮こまった。

そんなふうに感じている自分が嫌で、無理に自分に言い聞かせた。

(いや、160cmもない幸代と並んだら むしろ凸凹して絶対にバランスが悪いだろう、全然 似合わないな、見映えだって良くないし……)

そんな言葉が頭をよぎった、いや 無理にでも よぎらせた。

(わかっている…… これは自己防衛なんだ)

自分自身を守るために作り上げた つまらない理屈/屁理屈で、胸の奥に広がる引け目を どうにかして消し去りたくて、必死に言い聞かせているだけだとわかっていた。
だけど、そう思わずにはいられなかったのだ。

とにかく私は彼から視線を剥がし、ふたたびヴァージン・ロードから、その先の祭壇へと這わせた。

そこは幸代が立つ舞台。
真っ白なドレスに包まれた“新婦”としての場所。

さっきまでの私はその姿を見たいと思っていた。
でも今は、見てはいけない、それどころか見たくもない気がしていた。

彼女の晴れ姿を見てしまったら、何かが壊れて、もう戻れなくなってしまうのではないか?
そんな予感が、胸の奥で静かに疼き始めていたから。

チャペルの天井は高く、その荘厳な空気が肌に絡みつく。
それは祝福の場に流れるはずの空気ではなく、まるで“儀式”の場にしか存在しない神聖で重厚で冷徹な沈黙だった。

私は ただ、黙って座り続けた。


[15] Re: ウェディングドレスの妻  ボルボ男爵 :2025/11/02 (日) 17:31 ID:YP5lGNhE No.32431
佐山様
どうかお願いです。最後まで書ききってください。
まるでサスペンスドラマのようでワクワク、ドキドキが止まりません。
文章も秀逸で引き込まれます。切なく悲しいラストが待っているような・・・・。
よろしくお願いします。


[16] Re: ウェディングドレスの妻  佐山 :2025/11/04 (火) 07:37 ID:sd5pR5L2 No.32434
けんけんさま、きーくんさま、ボルボ男爵さま 応援、ありがとうございます。


数名の設営スタッフが慌ただしく行き来していたチャペルの中も、 少しずつ“儀式”の場にふさわしい静寂に向けた重々しく清々しい雰囲気へと変わりつつあった。

それでもまだ 時間的には式の始まりには早く、招待客役のエキストラもまばらで、その分だけ広い空間が不自然なほど冷たく、非現実的な浮遊感を漂わせていた。

私は指定された招待客席の末席に座ったまま、スマートフォンを無意味にいじっていた。
通知はひとつも来ていない、来るはずもない。
SNSは眺めるだけで、まったく頭の中に入ってこない。
なのに、指だけが勝手に動く。
画面を見て、閉じて、また開いて、ポケットに戻して、また取り出す…… そんな動作を何度繰り返しただろう。 
ただ、その動きが私の心のざわつきを隠す唯一の手段だった。

胸の奥に居座る感情は、言葉にしがたいものだった。
不安、緊張、苛立ち、嫉妬…… そんな単語を当てはめても、どれもピタリとこない。
もっと原始的な、ざわざわとした胸騒ぎが、呼吸の奥をかき乱していた。

自分なりに理解はしているのだ。
間違いなく これはシニア婚という企業の商品PRのための「撮影イベント」だ。 だから結婚式の演出も 幸代の新婦役というのも 単なる「ごっこ」なんだ、と。
幸代も 私も そして先ほど目にした新郎も、全員がこの日 いや、この時限りの“役者”“偽物” でしかないのだ、と。

幾度となく そんなことを頭の中に巡らせながら、いつのまにか私の体は自然と動き出した。
理由もなく私は立ち上がり、意味もなく私はチャペルの外へ出た。
スタッフに見咎められるのが嫌で、影を縫うようにして 隣の管理棟と思われる洋館風な建物に繋がる渡り廊下を歩いた。

どこに行くつもりなのか、自分でもわからなかった。
ただ、あの場所にずっと座っているのが耐えられなかった。

そして、足が止まった。

目の前にあるのは、真っ白な扉。
その中央に、金色の横長の小さなプレートがひとつ掛けられていた。

《新婦御控室》

たった五文字。
けれど、その言葉の重さに、喉が詰まる。

(やめておけ)

どこかで声がした。 
自分の内側からの警告だった。
でももう届かなかった。

間違いなく、この扉の先には、照れながら 恥ずかしがりながら、それでも少しだけ微笑み、ハニかんで嬉しそうにドレスの裾を整えている、そんな可憐な幸代がいるのだ。

純白のウェディングドレスをあれだけ楽しみにしていた幸代が、「トオサン、どうかな?」と 私をニッコリと恥じらいの笑顔で迎えてくれるはずだ。

「カアサン、意外にお似合いだな〜……」と私が言えば、

「意外だ なんて……もぉ! 失礼ね!」と膨れっ面をしながら優しく柔らかい目をして応えてくれる幸代。

私は、そんな明るく朗らかで微笑ましい やり取りのイメージだけを、頭の中に描いた。
イメージに近ければ、私が今抱えているモヤモヤした気持ちは 一瞬にして消え去るに違いない。

ポジティブなテンションに切り替えた私は、
(よし! 一言、オバサンを冷やかしてやるか)と、ジョークの一つでも頭の片隅に浮かべながら、とりあえず 笑みを作って扉に手を伸ばした。

あえてノックはしなかった。
きっと独りで寂しがっているだろう幸代に、ちょっとしたサプライズという思いも込めていたから。
だから ゆっくりと、静かに 覗くように、厚めの扉を押し開けた。


[17] Re: ウェディングドレスの妻  けんけん :2025/11/05 (水) 05:52 ID:xKf9l3tU No.32435
更新ありがとうございます。新婦の控室に入るのですね。ご主人であれば当たり前の行為なんですけど。なんかドキドキしますね。その先には何が待ち構えているのかすごく気になります。続きお待ちしてます。

[18] Re: ウェディングドレスの妻  ボルボ男爵 :2025/11/11 (火) 14:43 ID:drMQUFYU No.32439
ご主人が見た扉の向こうの光景は・・・・
早く続きを読みたいです。気になって一日何回もチェックしています。


[19] Re: ウェディングドレスの妻  きーくん :2025/11/12 (水) 10:08 ID:IH2s7KQU No.32440
佐山さん

現実の中の非現実に不安、緊張、苛立ち、嫉妬の気持ちすごく分かります。
半面、これから起こることへの期待感もあります。

嫁ぐ妻はどうなるんでしょうね。
続きを期待します。


[20] Re: ウェディングドレスの妻  佐山 :2025/11/14 (金) 09:43 ID:i.Hfb2/w No.32441
けんけんさま、きーくんさま、ボルボ男爵さま ありがとうございます。


《新婦御控室》の重厚な扉を意識的に静かにゆっくりと押し開けた。

そこは思いのほか広々とした空間だった……。

壁は淡いクリーム色で統一され、柔らかな間接照明が天井から穏やかに降り注いでいた。
天井は高く、視線を上げると繊細な木製の梁が走っていた。
部屋の一面に大きな鏡が据えられ、もうひとつの面に広めのドレッサーテーブルが添えられてあった。

窓は小さいが、重厚なカーテンが片側にゆったりと寄せられ、初夏の自然光が微かに差し込んでいた。
カーテンの柔らかな質感が、部屋の落ち着いた空気にぬくもりを添えている。

ドレッサーの隅には、白いレースのティッシュボックスと、数本の筆が並んだメイクブラシスタンド。
椅子は厚みのあるクッション付きで、座面も広くゆったりとしていた。

床は木目のはっきりしたフローリングで、長い時間使われてきたためか微かな擦り傷が見え隠れしている。
だが、その一つ一つがこの場所の歴史を物語るようで、どこか懐かしく温かな印象を与えていた。

空気はかすかに香水の甘い香りが漂い、どこか非日常の期待感と緊張感を孕んでいる。

この部屋は単なる控室ではなく、これから始まる“儀式”のための、静謐な聖域のように感じられた。
そこに立つ誰もが、ここで一旦、現実と切り離されて“役割”を演じるための準備をする場所だった。

私はこの空間に密かに足を踏み入れた瞬間、いつもの日常から遠く離れた世界へと誘われていることを、ひしひしと実感した。

そして…… 思わず息が止まった。

大きな鏡の前で(私には背を向ける形になって)ひとり静かに立っていたドレス姿の女性。

間違いなく幸代だった。

ただ 私の知っている“カアサン”ではなく、その姿は 今まで一度も見たことのない “新婦 幸代”がそこにいたのだ。

大きな鏡に映った彼女の姿は、私の目を離さなかった。

幸代が身にまとっていたのは、驚くほど純白のウェディングドレス。
ただ白いだけではない。その白さは、曇りのない硝子のように硬質で、光を吸い込んでは、ほんのわずかに跳ね返していた。
触れたら冷たそうで、でも同時に 柔らかく包み込まれそうな矛盾を孕んだ生地だった。

ドレスはAライン。
胸元から腰にかけてはしっとりとタイトに体に沿い、そこから一気にスカートが広がっていた。
ただの“可憐”ではない。 堂々としたボリュームがあり、まるで彼女自身が空間の中心を担うべき存在であるかのようだった。

トレーンは特に目を奪われた。
分厚く、贅沢なまでの生地がレイヤー構造になって、いくつものシフォンと光沢のあるサテンが幾重にも折り重なり、波のように床を流れていた。
静かな控室の照明に照らされて、幾重にも折り重なる白が、真珠色や薄い青みすら帯びていた。

少しでも動けば、その光が表情を変え、ドレスの陰影を際立たせる。
あまりにも眩くて、一瞬、こちらの視線の方が罪深いような気さえした。

胸元には ただの装飾ではない、精緻な手作業のように思えるほどの繊細なレースの刺繍。
ゴールドとシルバーの糸がところどころに縫い込まれ、光を受けるたびにほんのりときらめいていた。
レースの柄は抽象的で、それがかえって、見つめる者に想像の余地を与えた。
そのレースの中には、シルバーの刺繍がほんのわずかに織り込まれていて、まるで吐息ひとつで散ってしまいそうな儚さと凛とした冷たさが同居していた。

“清楚”というより “品格”という言葉こそ ふさわしい。
露出はほとんどないのに、逆にその“覆い隠し方”が、私の視線を引きつけて離さなかった。

肘上までぴったりと張りついた白のロンググローブは、絹のように滑らかなシルクサテンが指先まで続き、その繊細な生地が指の動きに合わせてしなやかにしわを寄せ、淡い光沢を放っていた。
まるで皮膚の上にもう一枚、艶を纏っているみたいで、彼女の腕がこれほど長くしなやかだったかと、あらためて見惚れてしまった。
布の下にある“肉”の存在を、逆説的に意識させる。 だからこそ グローブに包まれた腕のラインのほうが、妙に生々しく魅惑的だった。

官能とは こういう静けさのなかに潜むものなのか、と私は思い知らされた。

首元には、煌びやかで厚みのあるシルバーのネックレス。
花のつぼみを模したかのような大ぶりで立体的な装飾が、鎖骨のラインに並び、中心には透明な宝石のような輝きがあった。
だが、不思議と幸代の顔や表情を邪魔することなく、むしろ彼女の“凛とした存在感”を後押ししていた。

ゴージャスすぎるはずのそれが、なぜか彼女には自然だったのだ。
“着せられている”のではない “選んで纏っている” そう感じさせるだけの強さと覚悟が、ドレスと共鳴していた。

両耳に揺れるのは、ボリューミィで存在感のあるシルバーのシャンデリアイヤリング。
小花のモチーフにスワロフスキーが煌めき、幸代の横顔まわりを華やかに彩っていた。
その繊細な動きすらも 整然とした美しさを放っていた。

髪は うなじの少し上で上品にまとめられ、毛流れひとつひとつが計算されたように整えられていた。
そこに乗ったティアラは、少女の憧れではなく、大人の女が最後に許された冠のようだった。
自己主張は控えめだが、光を捕らえる角度が絶妙で、幸代の顔立ちを引き締めていた。

私はそんな“新婦 幸代”の姿を見て、まるで別の人間を見ているような思いに襲われた。

人懐こい笑顔が似合い 平凡で可愛らしい50代の主婦の面影はそこにはなく、凛と華やかで まるで純白の女王のような 妖艶で圧倒的な美しさがあった。

彼女は、まさにこの部屋の空気を支配する 揺るぎなき中心そのものだった。

だが……
私が最も驚いたのは、幸代の“顔”だった。


[21] Re: ウェディングドレスの妻  初級 :2025/11/14 (金) 18:46 ID:13.mI7yU No.32442
佐山さん、はじめまして、この話に引き込まれています。また続きを楽しみにしています。

[22] Re: ウェディングドレスの妻  けんけん :2025/11/15 (土) 05:53 ID:pSMNFMoE No.32443
更新ありがとうございます。読むだけで、衣装が想像できます。引き込まれてしまいます。
その衣装に隠された下着、また、奥様の表情かどうなってるのか気になります。続きお待ちしてます。


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