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色は思案の外

[1] スレッドオーナー: 最後のティッシュ :2017/08/20 (日) 00:29 ID:ZVkL5PqE No.24890

入籍して一年と二ヶ月、もう少しで一緒に暮らし始めて一年が経とうとしているが未だに「凛子さん」と「さん」付けで呼んでいる
これは仕方がない、元々は上司と部下の関係だったのだから
付き合い始めの頃は「凛子」と心の中で何度もシミュレーションしたものの
切っ掛けを逃し続けて今に至る
何事も最初が肝心とはよく言ったもので、もう切っ掛けが無い

僕は野上 宗太(のがみ そうた)30歳
嫁さんは凛子(りんこ)さん33歳、三つ年上で元上司だ


出会いは新人研修が終わり比較的ブラックな部署に配属された時だった
嫌でも目につく長身の女性は身長が僕と同じで175cmだけど、姿勢の良い彼女は僕よりも背が高いように感じる事もある
整った顔立ちだが笑顔は無く、黙々と仕事に打ち込む姿からは親しみやすさというのは感じなかった
彼女の名前は 吉田 凛子
この時はまだ頼りになる先輩といった感じだったかな
入社してから三年経ち出会った頃の凛子さんと同じ歳になったが、僕は未だに一癖二癖ある顧客に振り回される毎日
一方、凛子さんはというと、この三年の間に頭角を現して「吉田隊長」と陰口をたたかれる程になり
出会った頃の感情が乏しいという印象から、声を荒げているという印象に変わっていた
机に向かい口を噤んでいる時でも、時折眉間にしわを寄せ何所か近寄り難い雰囲気をかもし出している
凛子さんの目が届かないところでは「立てば仁王、座れば閻魔」などと揶揄される事もあるほどだ
自分に厳しく仕事では妥協しない、その仕事に対する厳格な姿勢を他の人にも求める事もあり同じ部署の中には凛子さんを疎む人が多くいた
僕もその中の一人だったわけだが・・・

若手の成長を促すために僕を含めた四人でチームが組まれると、当然の如く隊長は吉田先輩となる
吉田先輩改め吉田リーダーとなった凛子さんに叱られる日々の始まりだ
175cmという女性にしては長身の体格に鼓膜を直撃する勇ましい声 威圧感がハンパない
比較的大きなプロジェクトの指揮を執るという事で吉田隊長は四六時中ピリピリしている

 このチーム、僕には向いてないよ 性格が大雑把だからね
 何で選ばれたんだろう? たぶん人選ミスだな・・・

まぁ、結局は先輩方に手助けされながら及第点を得た訳だが、パーフェクトを求めていた吉田リーダーは納得していなかったようだ
凛子さんらしいと言えば、らしい
これで吉田隊は解散、僕は先輩から譲り受けた我が儘な顧客の元へ戻り忙しくも平穏な日々を送ることになったが
このプロジェクトを切っ掛けに吉田先輩は更に飛躍していく


「野上くん」
吉田主任の声が一瞬僕の心臓を止めた
 (何だ・・・ 何か失敗したか?怒られるのか?)
「はい、なんでしょう・・・」
「来月からよろしく頼むわね」
「はい?」
もう二度と召集される事はないと思っていた吉田隊からの召集令状

 なんで僕なんだ・・・

この時、吉田主任は31歳 僕はあの時の「吉田リーダー」と同じ28歳
あの時の彼女はプロジェクトリーダーで、今の僕は小さな店舗なら任される事はあるが主な仕事は顧客のアフターケア
同じ歳になってみると差が見えてしまうんだよね
まぁ、吉田主任には主任の業務もあり今回は大きな物件ではないようだ 僕の立ち位置は吉田主任のお手伝いってところかな
あれから三年経ち主任の怒号にも慣れたし、あれ以上の地獄を見る事はないだろう

 気楽にいけばいいさ

自分なりに鼓舞してみた

「野上くん」
「はい」
「今夜空いてる?」
「今のところ特に予定は」
 (今夜?何だ?)
「御飯ご馳走するわ、予定入れないでね」
「・・・はい、ありがとうございます」
 (はぁ!?何があるんだ?説教されるのか!?勘弁してくれよ、ここ三日ほどは何もやらかしてないだろ・・・)
「今日は何時の予定なの?」
「残業は二時間ぐらいですかね・・・」
「そう、ちょうどいい時間になるわね」
「そうですね」
 (いやいや、今夜は競馬の予習が・・・)

 明日は秋の天皇賞だというのに、何故こんな事態になった・・・

主任に連れられてきた店は中華料理店だ
といっても高級じゃない方でラーメンやチャーハンといった大衆的な方の中華料理店で
テーブルには唐揚げと餃子、それにビールの瓶と二つのコップが置いてある 長くなりそうだ
 (あれ?主任ってお酒は飲めなかったんじゃ?)
忘年会などお酒が出る席での主任は烏龍茶を飲んでいるイメージしかなく
酒は飲めないと自らも公言している、違和感はあったがそんな事気にしている場合じゃない
とりあえず、この場を乗り切らなければならない
先ずは「お疲れ様」の乾杯から、次は何が来るんだ?
しかし、僕の心配を余所に仕事の話を肴にしてビールの瓶が空いていく
 (主任って結構いける口なんだ 酔う気配が全くない 僕も酔えてないけど・・・)
「三年前だったかしら あの時の野上くんは頼りなかったわね」
「はは・・・」
 (とうとう来た、僕もあれから成長してるんだ 軽い説教なら受け流せる)
「最近は楽しそうに仕事してるわね」
「そうですか?」
 (ん?何か違うぞ)
「よく笑ってるじゃない」
「まぁ、笑うしかないって事もありますし」
「ふふっ、そうね」
 (おっ、笑った?)
「主任はどうです?仕事楽しいですか?」
「う〜ん・・・」
 (あれ?楽しくはないのか・・・)
「ああ、そういえば最近噂になってますよ」
「私の事?」
「はい、背の高いイケメンと並んで歩いてたって 彼氏ですか?」
「ええっ?人違いじゃないの?」
「でも、主任と見間違える女性はそうそういないと思いますけど」
「大女で悪かったわね、こう見えても気にしてるのよ」
「あ、いえ そういう意味じゃなくて・・・」
 (別に気にするほどの事じゃないと思うんだけど・・・)
「ふふっ、たぶん弟よ イケメンかどうかは判らないけど」
 (あ、また笑った)
「弟さんいるんですか?」
「ええ」
「じゃぁ、彼氏は?」
「いないわよ、野上くん彼女は?」
「いえ、いないです」
「本当に?」
「はい」
「ふ〜ん」
 (あ・・・ やっぱり何かいつもと雰囲気が違う・・・)
「主任ってモテたんじゃないですか?」
「何で過去形なのよ」
「あ、すいません」
「でも、どうしてそう思ったの?」
「いや・・・ なんとなくですけど・・・」
「野上くんは?モテるんじゃないの?」
「僕ですか? いやぁ・・・」
 (僕の何所を見てモテると思ったんだ・・・)
「じゃぁ、初めて彼女ができたのは?」
「大学に入ってからですけど・・・」
「本当に?」
「はい、嘘言っても何にもなりませんから」
「そうね」
「主任はどうなんです?」
「私?」
「僕の話しの次は主任の番ですよ」
「そうね、私は中学の三年 別々の学校に進学して直ぐに別れちゃったけど」
「へー、その次は?」
「その次は大学に入ってからよ、一つ年上の人と半年ほどだったかな、それで私の恋愛遍歴は終わり」
「え?マジっすか!?」
 (あ、素が出てしまった・・・)
「私、何か変なこと言った?」
「あ、いえ」
「野上くんは?全部話しなさい、私は話したわよ」
「まぁ・・・さっき言った大学の時の一人と働き始めてから・・・二人です」
「そういえば何か噂になった事あったわね」
 (う・・・ あの女と付き合った事はカウントしたくなかった 僕の黒歴史だ・・・)
「ああ・・・、四股の四番目になってたヤツですね、村上とかが面白がって話すから・・・」
「あっはっは、酷い話ね 四番目って表彰台にも上がれないじゃない」
 (そんなに笑わなくても・・・ けっこうトラウマになってるんですけど・・・)

なんかヤバイ
主任が豪快に笑ってる、初めて見た
向い合って顔を見れば主任は整った顔立ちで、絶世の美女ってわけでもないが中々の綺麗系だ
勿体ない事に男の気を惹ける表情は同僚さえ遠ざける程の険しい表情で隠し、会社ではその魅力を表に出していない
初めて見た
目の前の主任の表情は柔らかい、男の気を惹く魅力が目の前で溢れ出し始めている

「あの・・・」
「なあに?」
やっぱり今夜の主任は今までとは違う
仕事中なら「なに?」と短く鋭く返してくるのに「なあに?」と少し伸ばした言葉が丸く優しく感じる
「本当なんですか?働き始めてから彼氏いた事ないって」
「ええ、嘘言って何になるの?」
「口説かれた事も無いんですか?」
「あったかもしれないけど忘れたわ」
「え、忘れたって・・・」
「仕事の事しか頭になかったから 仕事と恋愛を両立する自信が無かったのよ」
「主任なら何でもできそうですけど」
「そうでもないわよ 先ずは仕事ができるようになる、それから恋愛しようって思ってたけど この歳になっちゃった・・・」
「じゃぁ、今から彼氏探しですか?」
「んー・・・ どう思う?」
「どおって?」
「まだ間に合うと思う?」
「はい、ぜんぜん」
「本当に?」
「はい、主任が彼氏募集するなら僕もエントリーしますよ」
「そう・・・ 冗談でも嬉しいわ」
 (ん?)
「もし、僕がエントリーしたらどこまで残れますか?ベスト8ぐらいまで行けますかね?」
「優勝よ」
「ははっ、僕は主任の彼氏になれるってことですか」
「うん」
 (んん!?今「うん」って言った?)

主任と並んで歩くと自然と背筋が伸びる
緊張している訳ではない、姿勢が悪いと隣を歩く長身の女性より頭が低くなってしまうからだ
今までは恐怖のオーラを肌に感じないところまで離れるという自分ルールを貫いてきたが
今は時々お互いの手の甲が触れるほどに接近して歩いている
目から鱗が落ちるとはこの事か
職場の男どもは目を合わせないように努めるが、仕事から離れると容姿端麗ですれ違う男どもの視線を集める
嗚呼、駅に着いてしまった・・・
「今日は付き合ってくれてありがとう」
「あ、いえ」
 (このまま別れたくない、何か言わないと)
「主任は競馬とか興味ありますか?」
「ないけど、それがどうかしたの?」
「はは・・・ いえ、別に・・・」
 (う〜ん、いつもの主任だ 興味無くてもフリぐらいしてくださいよ、それが女の愛嬌ってもんでしょ・・・)
「もしかして誘ってくれたの?」
「まぁ、そんなところですけど・・・」
「そういう事ならハッキリ言いなさい いいわ、付き合ってあげる」
「ありがとうございます」
 (これでいいのか?本当にいいのか?)


[23] Re: 色は思案の外  ふぐり太 :2017/09/04 (月) 21:11 ID:.sxJyrH. No.24953
レズ3Pの隣で寝たふりは生殺しですねw
宗太くんと凛子さんに二人の奥様の関係はどうなっていくのか楽しみです
続きを気長に待ってます

[24] 色は思案の外  最後のティッシュ :2017/09/15 (金) 06:28 ID:5quT9j0o No.24989
今の僕は仕事の鬼だ
恐らくは「伝説の吉田主任」を彷彿とさせる仕事っぷりのはずだ
あの悪夢のような新婚旅行から三日経ったが、凛子さんに変わった様子は無い
いってらっしゃいのキスぐらいあるかと期待したけど、その気配も全くない・・・
でも、その今まで通りの凛子さんが僕を安心させてくれている
だからこそ週末は確実に休みを確保しなければならない
凛子さんは平日はパートに出て家を空けるので心配する事は無いけど、問題は土曜と日曜なんだよね
料理教室の予定が入ることもあるけど丸一日じゃないし
時間を見てジムに通ってるみたいだけど
そんなフレックスな時間の使い方をしていれば、あの二人に付け入るスキを与えてしまう
あの二人と言うのは恵美さんと加奈さんの事だ
新婚旅行の初夜、凛子さんは僕らの部屋で二人に襲われ身体を弄ばれた
しかも、凛子さんも満更じゃない様子だったし・・・
その事を思い出すと、もう心配で心配で堪らない

 僕は可能な限りの時間を凛子さんと一緒に過ごして彼女を守らなければならない

「おう、何か悪いものでも食ったか」
仕事と競馬の師匠である如月部長が邪魔しにやってきた
「何ですかそれ、返事に困るじゃないですか」
「旅行から帰ってきて様子が変わったから何かあったのかと思ってな」
「まぁ、ちょっとした心境の変化ですね」
「お、何かあったんだな 何があった?もしかして父親になるのか?」
「いやぁ 子供はまだですけど、そういう話も」
「おお、そうか あの「吉田主任」の血統なら良く走りそうだな はっはっは」
 (また競馬の話しか、乗りたいけど・・・ 我慢・・・)
「気性が荒くて去勢されて、クラシックにも天皇賞にも出られなくなりそうですけどね」
「はっはっは ヨシダ産駒の宿命だな」
 (乗ってしまった・・・)
「仕事があるので、もう邪魔しないでくださいよ」
「おっ、真面目だな 三日坊主で終わるなよ」
 (真面目って・・・ 何てこと言うんだよ、あんた部長だろ)

いまのところ仕事の邪魔をしてくるのは師匠ぐらいだ
僕は今まで通りの業務をこなしているけど、他の多くの人は忙しそうに動き回っている
ウチの会社は大手商業施設の内装を受注したのだ
前から進められてきた事だけど、僕が旅行に行く前辺りから本格的に動き始めていた
同期の村上は勿論、後輩の二人まで駆り出されている事もあり
その他の色々の仕事はほとんどと言っていいほど僕に回ってくる
メンバーに選ばれた人達は、自分の顧客の仕事もこなしながらということでプロジェクト一本という事はないんだけど
やっぱり大きな仕事の方が優先になって、溢れた仕事が僕に回ってきちゃうんだよね

 (はぁ・・・ なんで、このタイミングなんだよ やってもやっても仕事が増える一方じゃないか・・・)

プロジェクトを仕切るリーダーは、後輩だった凛子さんに出世街道から弾き飛ばされたという過去を持つ高岡さんだ
「おい、西岡 今直ぐ森田さんのところに行って来い」
「はい」
 (おお、高岡さん張り切ってるな それより西岡、森田さんに何の用があるのかぐらい聞けよ・・・)
森田さんはウチの会社の設計(正式名称はデザイナー)の主任で行けば何の用なのか分かるんだろうけど
用事を頼む方も頼まれる方も、声の威勢以外は何所となく頼りないし
高岡さんの補佐的な役割で選ばれたはずの佐々木さんも、どことなく自分が持つ顧客を優先しているように見える

 あんた等は凛子さんの何を見ていたんだ そのうち事故るぞ・・・

凛子さんが会社を辞め「吉田主任」という大きな柱を失ってから一年経ち、ウチの部署の新体制がスタートしてからも一年経ったが
やはり凛子さんの存在は大きかったようだ
新体制になってから初めてとなる大きなプロジェクトと頼りないメンバーに僕は少々の不安を募らせていた
だが、そっちを気にしている暇は僕には無さそうだ

「野上、これも頼みたいんだがイケるか?」
「はい、いいですよ」
僕に追加の仕事を持ってきたのは主任の上島さんだ
凛子さんの後任は高岡さんだという噂があっただけに意外な人事だった
上島さんは高岡さんより二つ先輩だけど、年功序列みたいな安直な考えで上島さんが主任に選ばれたとは思いたくない
「結構抱えてるようだけど、無理なら伊藤に回してもいいんだぞ」
「いえ、何とかなります 伊藤も忙しそうだし」
「そうか、それなら頼む」
「はい」
「野上も来年は地獄の一年になりそうだな だが、無理はするなよ」
「はい」
 (それはお互い様ですよ 一緒に頑張りましょう)
「どうにもならなくなる前に部長に相談するから、気負わなくていいからな」
「はい こういうのは初めてじゃないんで、死なない程度に頑張ります」
上島さんも主任の業務をこなしながら、僕と同様にプロジェクトに参加した人達を下から支えている
似たような境遇だからなのか、何となく強い仲間意識ってのを感じちゃうんだよね
そして何より、真面目で仕事熱心なところは凛子さんと同じだけど一言の優しさが別格なんだ
上島さんに頼まれると、ついつい快く引き受けてしまう

 凛子さんは「やっときなさい」の一言でしたよ

「上島くん、ちょっと」
主任が部長に呼ばれた
たぶん僕が邪険にしたからだろう、寂しくなった師匠は優しい主任に構ってほしくなったに違いない
凛子さんが主任だった頃と比べると師匠の無駄口が3倍ぐらいに増えている、現金な人だ
 (上島さんも忙しいのに迷惑な人だよ・・・)
「如月」なんてカッコいい名前なのに勿体ない、完全に名前負けしてるよね

 さて、さっき上島さんから頼まれた照明器具の件は事務に回せばOK 半分終わったようなものだ
 こっちの仕様変更の件は暇そうな師匠に出陣してもらおう 元々は村上の物件だから誰が行っても同じだ
 この二件の改装は面倒だからハナから設計を巻き込んで丸投げだな 後はザックリ見積りでOK
 おっと、改装はもう一件あったか 工期の日程はズレてるから三件ぐらい丸投げしても大丈夫だろう
 よし、田川さんの打ち合わせに行く前に設計の誰かに唾付けとくか 後は工事部の方にもそれとなく

 (主任、山盛りの仕事でも何でもお任せあれ これが人任せが本領の如月イズムの真骨頂ですよ)

その前に・・・
「主任、次の田川さんの店なんですけど社外のデザイナーに頼んでもいいですか?」
「ああ、いいぞ」
「じゃぁ、それで進めますね」
 (よし!これで社内の設計一人ぐらいは確保できるはず しかし、田川さんは三店舗目か、なかなかのやり手だね)
上島さんとの会話を僕に断たれた師匠は恨めしそうにこっちを見ているが、無視だ
僕はこれから設計の主任に文句や愚痴を言われながらも一人は確実に確保しに行かねばならない



いつになく気疲れした一日
設計主任の森田さんには渋い顔されるし
 (まぁ、あの人が文句から入るのはいつもの事だけど・・・)
営業事務の竹田さんにはムスっとした顔されるし
 (僕は君の先輩だぞ、嘘でもいいから笑顔で引き受けてくれよ・・・)
同期の村上や後輩の伊藤と西岡からは色々と愚痴を聞かされた
 (大丈夫なのか?あのプロジェクトチームは・・・ 上島さんも色々と気苦労してるんだろうな・・・)

しかし、今日も何とか乗り切った
設計一人を確保できたし、仕事を振った師匠も案外乗り気だった
「ぼったくりゴールデンコンビの復活だな」なんて笑いながら人聞きの悪い事言ってたけど
そのコンビの片割れを育てたのは貴方ですよ・・・
でも、師匠の笑顔は愛嬌があって忙しい時には気持ちが救われる事もあるんだよね


今日も一日頑張った
凛子さんの笑顔で疲れをリセットしたくて家路についた足が自然と速くなる
「ただいま」
「おかえりなさい」
 (声が少し弾んでいる、今日も機嫌が良いみたいだな)
「荷物届いた?」
「まだよ、注文から四日ほどって書いてあったから明日じゃないの?」
「そうか・・・」
 (なんだよ・・・ 前は三日で送ってきただろ、それで凛子さんとちょっと揉めたんだぞ・・・)
「そんなに待ち遠しいの?」
「うん、凛子さんも楽しみにしてるだろ?」
「さぁ、どうかしら 早く着替えてきて」
「うん」
荷物と言うのはネットで買った大人のオモチャの事だ
前回は凛子さんに内緒で買ったけど、今回は旅行から帰ってきた日に二人で選んで注文した
アイマスクにディルドと枷は買えて、ベビードールとバイブは却下されたけど強く説得すれば押し切れたかもしれない

 まぁ、今は少しずつでいいか
 後々は寝室がアダルトな夢の国になる程・・・
 (ああ!ローション買い忘れてる・・・ あれは凛子さんのアナルを弄る為に・・・)

「どうしたの?早く着替えてきなさい」
「うん・・・」
 (まぁいいか、笑顔じゃないけど機嫌のいい凛子さんに癒してもらったし それに、この後は・・・)
服を着替えてレンジで温め直された料理が並ぶテーブルに着くと
リビングでは凛子さんがヨガを始める準備をしている
残業で夫婦揃っての夕食は逃してしまったけど、こっちには間に合った
「早く食べてお風呂に入って」
「うん」
 (わかってる、「早く食べて」と言うのは早食いじゃなく他に気を向けずにって事だよね でも無理だよ)
「食べ終わったら、お皿はお弁当箱と一緒に流しに持って行ってね」
「うん」
 (わかってる、いつも言われてるからね それより早くヨガを)
凛子さんがヨガマットの上に腰を下ろした、ディナーショーの始まりだ
長身で高いレベルのプロポーションは立ち姿だけでも見応えがあるが
身体を反らした時に浮かび上がる胸の膨らみ 美しい
四つん這いになってお尻を上げるポーズ エロい
それに、温め直された料理も美味しい 幸せだ

 何なんだろう、「美人は三日で飽きる」という言葉があるけど全然飽きない
 それどころか、凛子さんと一緒に過ごした時間は愛となってそのまま上積みされていく
 やはり、容姿よりも 野上凛子 という性格も全て含めた一人の女性を愛しているからだろうか
 このままいくと、後三年ほどで僕の頭は変になるんじゃないのかと心配になる程なんだよね
 僕はどこまで彼女に惚れ込んでいるんだ、自分で自分の事が怖くなるよ

今日も凛子さんに元気を貰った、明日もがんばれそうだ

風呂から上がるとリビングには凛子さんの姿は無かった、ヨガマットも片付けられている
そして、遠くから愛する妻の声が聞こえてきた
「宗太くん、お風呂から上がったんでしょ!こっちに来なさい!」
「はい!」
 (しまった・・・ ローションの買い忘れに気付いて肝心な事忘れてた・・・)
僕は呼びつけられ凛子さんの声がする方へ向かった
「いつも言ってるわよね、服を脱ぐ前にポケットの中の物は出しなさいって」
「はい・・・」
「それに脱ぎ散らかさないで」
「はい・・・」
貰った元気は半分失ったが、これは僕が悪い・・・
上着のポケットに入っている物を出しながら風呂に向かう凛子さんを見送った

リビングに戻るとテーブルの上に僕の湯飲みが置いてあるのが目に入る
どうやら凛子さんはお風呂に入る前にお茶を用意してくれていたようだ

 よし!今夜も凛子さんを抱いてやる!

ちょっとした心遣いを感じただけで元気が出てしまうんだ
自分がこんなにも単純な男だとは思ってなかったよ
いや、凛子さんと付き合い始めた頃から少しずつ変わってきてたのかな
今では自分でも驚くほどに簡単に元気を貰える体質になっている

 明日も頑張ろう、週末も仕事になりそうだけど・・・


[25] 色は思案の外  最後のティッシュ :2017/09/15 (金) 06:29 ID:5quT9j0o No.24990
日曜の朝、僕は凛子さんに見送られて家を出た 今日も仕事だ
一緒に暮らし始めた頃と変わりの無い「いつもの凛子さん」が余計に僕の後ろ髪を引く
いや、凛子さんは出会った頃から何も変わっていないんだ
大人のオモチャが入っている箱は未だ開封しないまま置いてあるが、それは気にするほどの事ではない
昨日の凛子さんはホームセンターのパートは無く料理教室の予定も無かった
家事を済ませた後はジムに行ったと言っていたが、その言葉が嘘でも真でも僕は信じると決めている
仕事から帰った時に見た凛子さんは少々お疲れ気味のようだったけど
それはジムで汗を流したからなのか、もしかして僕が留守している間に恵美さんと加奈さんに・・・

 でも、それでもいいんだ
 あの出来事から一週間経ち、僕は決めた
 毎日のように凛子さんを抱きながら心に決めた事
 それは、凛子さんが幸せな時間を過ごせるなら「それでもいい」って決めたんだ

だから僕の心の中に鉛の塊のように存在する重い気持ちは、その事じゃないんだ・・・

去年まで凛子さんは会社が指定した健康診断を受診していたけど
今年は夏の終わり頃に個人で受診しに行っていた
一緒に仕事をしていた時は気にする事は無かったし、見せびらかすような物でもないので
今までそれを目にする事は無かった
しかし、昨夜の事だ
僕は凛子さんを驚かせようと、アダルトショップで購入したアナルプラグの隠し場所を探していた時だった
ある程度見つかり易い場所をと思いながら何気なく開けた引き出し、その中に病院の名前が入った封筒が置いてあった
宛名は「野上 凛子様」気が咎めたが好奇心が勝り封筒の中身を引き出すと、思った通り健康診断の検査結果らしい書類が出てきたが
僕はその検査結果に一通り目を通すとそっと元に戻し、手に握っていたアナルプラグは自分の部屋に持って上がった
二階に与えられた僕の部屋は質素で、机と椅子、そこにパソコンとオグリキャップのぬいぐるみが置いてあるだけだ
オグリキャップの隣にアナルプラグを置いて椅子に座り、出会ってから今までの凛子さんの姿を出来る限り思い出すと
そのときの言葉では言い表せない気持ちを質素な空間が余計に締め付けてきて
僕は凛子さんとの思い出の中で時間を忘れた

家を出てから駅まではいつもの通勤路だが今朝は違って見える 日曜日だからではない
吐く息は白く、冬と言われる季節なのに空気の冷たさを感じない
不用意に見てしまった無情な現実が書かれていたあの紙切れがそうさせるんだ

 多少の高目低目はあっても検査値を正常内の数値に収めている辺りは流石です 見事な検査結果でした
 しかし!
 身長が177cm!? 凛子さん!175cmじゃなかったんですか!?
 ずっと身長は僕と同じだと思ってたんですよ! 凛子さんも、そう言ってましたよね!
 なんで嘘ついてたんですか! その2cmは大きな2cmですよ!!

家を出るまで顔を合わせていたけど真相を聞き出す勇気は出なかった
でも、不思議と凛子さんから離れると早く家に帰って話を聞きたいという気持ちになるだよね
日曜出勤でも僕は仕事の鬼になっている
プロジェクトチームの方はトラブルがあったらしくバタバタしているけど
そっちを気にしている暇は無い、早く仕事を終わらせて家に帰りたいからね

「おう、張り切ってるな」
僕に声を掛けてきたのは普段着の師匠だ、片手には競馬新聞を握っている
どうやら競馬に行く前に会社を覗きに来たらしい
「外に出てばっかりだったんで色々と溜まってるんですよ」
「はっはっは 大変だな」
 (他人事みたいに・・・)
「ところで、お願いした追加の見積りは?」
「あれは来週末まででいいだろ」
「はい お願いしますよ、後がつかえてきてるんですから」
「わかってるわかってる、俺の差し脚をナメるなよ」
 (また競馬の話しか・・・ 我慢・・・)
「最後の直線、期待してますよ」
 (ちょっとだけ乗ってしまった・・・)
「おう、まかせとけ」
普段は「暇そうなオッサン」だけど、師匠の「まかせとけ」は頼りになるんだよね

 普段から頼れる部長になってくださいよ・・・

「今日はあっちの方を見に来たんじゃないんですか?」
「そうだそうだ お祭り騒ぎを見に来たんだったな」
 (あんた部長失格だよ・・・)
「早くあっちに行ってあげてくださいよ」
「いいんだよ、建屋の吹き抜けの部分が違うとかなんかだろ」
「そうらしいですね」
「違うっていうより間違ったんじゃねぇのか?検討段階の資料でデザイナーに依頼してたとかよ」
「ははっ そんな間違い聞いた事ありませんよ」
「そうだな、建屋の方が勝手に図面変えたりとかはあったけどな 一服するか?」
「部長のおごりなら付き合いますよ、独りで一服は寂しいでしょ?」
「まったく・・・ よくできた弟子だよ、おまえは」
「ありがとうございます」

本当に師匠はコーヒーをおごってくれた
しかも、自販機のコーヒーじゃなく会社の近くにある喫茶店のコーヒーだ
そして、師匠はちょっとご機嫌斜めのようだ
「しかし、情け無ぇな あの程度の事で慌てやがって」
「中々の大事ですよ・・・」
「お前も覚悟しといた方がいいぞ」
「何がです?」
「あの調子じゃ、どんどん仕事が回ってくるぞ」
「ん〜・・・ それは勘弁ですね、もう一人ずつ僕と上島さんが要りますよ」
「だよな、あと二・三ヶ月もすれば落ち着くと思うんだけどな・・・」
 (お、一応は気にしてるんだな)
「まぁ、今日のところは競馬で気分転換してきてくださいよ」
「おう・・・ お前は悩みが無さそうでいいな」
「そんな事ないですよ・・・」
「ん?何かあるのか?」
「ええ、まぁ・・・」
「どうした?」
「師匠は奥さんに嘘つかれたり隠し事されたりした事ありますか?」
「ああ、俺に内緒でエステに通ってる・・・ 割と高いやつだ」
「え?あの奥さんが?」
「ああ、ずっと息子の学費だと思わされてたよ 俺はそういう事に疎いからな」
「そんな事が・・・」
「だけどな、俺はその事を知ってからも知らない振りをしている 怒る程の事じゃないからな」
「そんな・・・ 男前過ぎますよ」
「はっはっは、愛しのノリちゃんがついているカワイイ嘘だ 俺は嘘ごとノリちゃんを愛しいてる」
「師匠・・・」
この人が僕に教えてくれた事は仕事と競馬だけじゃない、愛妻家の生き様を教えてくれた
 (師匠!どこまでも付いていきます!)
「お前の方は?今の話しからすると・・・」
「ええ、凛子さんの事で悩んでて」
「おいおい、そんな話は聞きたくないぞ お前は我が社のヒーローなんだ、あの猛獣のような女を娶った英雄だろ」
 (おい!こら!自分の嫁の事は「愛しのノリちゃん」とか言いながら僕の嫁を猛獣って何だよ!)
「話しを聞いてくださいよ!」
「おっ、おぉ・・・」
「師匠は凛子さんの身長を知ってますか?」
「身長?いや、背は高いなとは思っていたが・・・」
「僕は175pって聞いていたんです」
「おお、それで?」
「実は177pだったんですよ・・・」
「それがどうかしたのか?」
「僕よりも背が高かったんです ずっと身長は僕と同じだと思ってたのにですよ」
「それで?」
「いや、それでって言われても・・・」
「その事を知ってお前の嫁は何か変わったのか?」
「いえ・・・」
「変わったのはお前の気持ちだけだ」
「師匠・・・」
師匠は僕を諭してくれた、凛子さんは何も変わっていない
出会った時から彼女は177pだったはずだ

 僕はバカだ、凛子さんは何も変わってないじゃないか
 僕は177pの凛子さんを好きになって、177pの凛子さんと結婚したんだ
 そして、177pの凛子さんを愛している

「おっ、良い顔つきになってきたな 今日のメインレース、お使い頼まれてやろうか?」
「はい!お願いします!」
会社のトラブルはそっちのけで師匠と競馬の話しで盛り上がった

 順当なら本命のAからCHKの流しってところか
 いや、AHを軸にフォーメーションを・・・ しかし

「決めました、馬単でFHを折り返しで」
「おっ!一番人気を外して、その二頭だけで勝負する気か?」
「はい」
「のってるやつは強気だな で、いくらいく?」
「5千円で」
「折り返して1万か 勝負に出たな」
「はい」
「当たったら馬券はどうする?」
「明日の朝まで預かっといてください」
「わかった」
師匠に一万円を渡したけど、実はレースの予想なんてほとんどしてなかったんだよね
話が出た時から買ってきてもらう馬券は決めていたんだ
7月9日は凛子さんの誕生日で9月7日は僕の誕生日
凛子さんに対する謝罪ってわけじゃないけど、そんな買い方もしてみたくなった

 早く帰って凛子さんの顔を見たい、声を聞きたい

結局、師匠に仕事を邪魔されてしまった事に気付いたのは、席を離れる前と変わらない机の上を見た時だった
だが、今日は昼まで仕事をして弁当を食べてから帰るつもりだったので、2時ぐらいには会社を出る事ができるはずだ
2時半ぐらいには家に着き、凛子さんがジムに行っていなければ一緒に例の荷物を開封して・・・



 (そろそろメインレースの出走か、師匠は勝ってるのかな?)
そんな事を考えながら玄関のドアを開けたのは予定より少し遅れた3時半頃だった
ふと見下ろしたときに目に入ったのは一足の女物の靴だ
 (これは見覚えがある・・・ 確か恵美さんの・・・)
僕はそっと玄関のドアを閉め、息を殺しながら靴を脱いだ
静まりかえった家の中、リビングの方からはお喋りの声は聞こえてこない
靴を脱いだ僕の足は廊下の上にあるが迷っている

 このまま奥に入って行っていいのか
 一旦外に出て公園にでも行って時間を潰した方がいいのか

頭は迷っているのに足が勝手に短い廊下を進んでいく
リビングの前に着いたけどドアの向こうからは何の気配も感じられないし
その前に僕はリビングから人の気配を感じ取ろうとはしていなかった
そこに辿り着く前に目に入った寝室のドア、それが少し開いている事に気付いたからだ
生活動線を重視した間取りで寝室は目の前にある

 凛子さんがドアを締め切らないまま放っておくはずがない
 あのドアを閉めようとしたのは凛子さん以外の誰か 恵美さんしかいない
 そして凛子さんの身には半開きのドアに気付かないほどの事態が・・・

僕は耳に神経を集中させた

「うぅ・・・」
ドアの向こうから微かに声が聞こえてくる
しかし、その声は僕が予想していた喘ぎのような声ではなく苦しんでいる声に聞こえる
 (なんだ・・・ 何が起こってるんだ・・・)
「う・・・ ぐ・・・」
 (どっちの声だ?凛子さんじゃないような気がするけど、恵美さんのこんな声は聞いたことが無いし・・・)
「落ち着いて・・・ はぁ・・・ お願い・・・」
 (あ、やっぱり恵美さんだ)
「苦しい・・・」
 (え!?なんだ!? まさか・・・サスペンスドラマのような展開になってるんじゃないだろうな・・・)
ドアの向こうから声が聞こえなくなった

新婚旅行の時に恵美さんは僕に色目を使ってきていた しかも凛子さんの目の前で・・・
僕の頭に過ぎったまんまの状況なら、体格と力の差からワンサイドゲームで凛子さんの圧勝となっているはず

 先ずは確認だ、最悪の事態になっていなければいいが
 でも凛子さん、長い間離ればなれになる事になっても僕の愛は変わらないからね!


[26] 色は思案の外  最後のティッシュ :2017/09/15 (金) 06:31 ID:5quT9j0o No.24991
僕は駅に向かって歩いている
一度は帰宅したが、そっと家を出て30分前に歩いた道を逆方向に向かって歩いている
冬と言われる季節だが空気の冷たさを感じない
不用意に見てしまった衝撃的な光景がそうさせるんだ

駅前の喫茶店に入り窓際の席に腰を下ろすと、とりあえず温かいミルクティーを注文した
そんなお洒落な物を喫茶店で注文するなんて初めての事だったけど、ほんのり甘味のあるものを口にしたい気分だったんだ

 師匠、僕の心を救ってください・・・


寝室から聞こえてきた恵美さんの苦しそうな声
それが止んだ時、僕は心配になって思わず少し開いたドアから寝室を覗いてしまった

先ず僕が認識できたのはベッドの上の裸体、それはよく見知った凛子さんの裸体だった
凛子さんは何かに覆い被さり抱き付いている
彼女の長い脚が絡んでいるのは色白の脚で、絡みついている凛子さんの脚が長いからだろうか
その色白で綺麗な脚は子供の足の様にも見え可愛く見える
白い足の先は僅かな自由の中で悶え、絡みつく凛子さんの脚から逃れようとしているかのようにも見えたが
しかし、その抵抗は無駄な抵抗だ 見て分かる
拘束を逃れた一本の手が凛子さんの身体を下から押し戻そうとしているようだが、それも無駄な抵抗だ 見て分かる
凛子さんの手に頭を押さえられキスされているのは、顔を確認することはできないが恵美さんだろう
なんとか凛子さんから逃れようとしている雰囲気は伝わってくるが、それは無駄な抵抗だという事は僕がよく知っている

恵美さんに抱き付く凛子さんの身体には、美しく鍛えられた筋肉が隆起していて力の入り具合が見て取れる
特別に身体を鍛えている女性でない限り、その力から逃れる事は出来ないだろう

 その美しい身体に秘められた、女性とは思えない怪力とも言える力を僕は身をもって知ったことがあるんだ

二人の顔が離れた
確認できた恵美さんの顔は目を潤ませ半泣きになっているかのようにも見えたが、少し遠目だったので見間違いだったのかもしれない
抵抗する恵美さんの手をものともせずに再び身体を密着させた凛子さんは、恵美さんの首筋に顔を埋めた
僕の位置からは凛子さんの表情を確認する事は出来ないけど 僕は知っている
「うっ・・・ もぅ・・・ いいでしょ・・・ 離して・・・」
 (あのときの凛子さんだ・・・ 恵美さん、何を言っても無駄ですよ 凛子さんは欲しがっているんです)

僕の目に映っている凛子さん それは、新婚旅行のあの夜
セックスを終え一息入れている僕に上気した表情で襲いかかってきたエロマックスの凛子さんだ
その時僕は背後から抱き付いてきた長い腕に力いっぱい抱き締められ
蛇に捕まった小動物はあんな気分なんだろうか、と人生を諦めそうになるほどの恐怖体験を経験する事になったが
首の裏にキスマークを付けられはしたけど、人生最大ともいえる力を絞り出して凛子さんの腕を解き難を逃れた

 あの時は流石に身を守る為に体を鍛えようと思ったね

だが、恵美さんの力ではそうもいかないみたいだ
まるで、ぬいぐるみの様に凛子さんにいいようにされている
 (恵美さん、その腕を解いて逆に強く抱きしめてやってください、そうすれば凛子さんは落ち着きますから 健闘を祈ります・・・)
僕は恵美さんの苦悶の声を聞きながらゆっくりドアから離れた



温かいミルクティーと店内に流れる穏やかなBGMが冷えた身体と心に染みる
あの夜から毎日のように凛子さんを抱き、あの凛子さんを引き出そうと試行錯誤した
アイマスクを使ってみたり、タオルで手を縛り拘束プレイの真似事をした事もあった
しかし、良い所までいっていると思われるのに、あの凛子さんを引き出す事は出来ないままでいたんだ
僕が見たベッドの上には絡み合う二人以外には何もなかった
恵美さんは僕みたいに道具には頼らず、身体一つで凛子さんをマックスの状態にもっていった事は容易く想像できる

 なんだ・・・この敗北感は・・・
 そんなに違いがあるのか・・・

自分では意識していなかったけど、男にはチンポというアドバンテージがあると甘く考えていた部分があったんだと思う
その考えが覆された時の気分と言ったら・・・
僕は敗北感に包まれながら喫茶店で時間を潰した



「ただいま」
「おかえりなさい、早かったわね」
「うん」
服を着替えてリビングに腰を下ろすと、ダイニングの向こうでキッチンに立つ凛子さんが見える
 (出来立ての夕食は三日振りか・・・)
「忙しそうね」
「うん」
「疲れてるの?」
「ん?」
「そんな気がしただけよ 大丈夫?」
「うん・・・」
僕は心身ともに疲労しているが凛子さんは「いつもの凛子さん」だ
あんな事してた後なのに僕がいつも見ている凛子さんがキッチンに立っている

 あ、そういえば身長は175pじゃなく177pだったか
 そんな些細な事はどうでもよくなってるけどね
 凛子さんにとっては大事な事かもしれないけど・・・ 思い出しちゃったんだよね・・・

「そういえば、昨日は料理教室がない日だったよね」
「ええ」
「一日中ジムに?」
「ふふっ そんな体力ないわよ、午後だけよ」
「そうか 今日は?」
凛子さんからの返事が止まり、キッチンに立つ後姿が明らかに動揺しているのが遠目でも見て取れた
 (嘘をついてもいいんだよ 僕は信じてあげるから)
「ごめんなさい 後で話したい事があるの・・・」
「うん・・・」
 (ごめんなさいって・・・ ウソ言ってもいいんですよ!僕は何も見てませんから!)
旅行での凛子さんと恵美さんや加奈さんの様子から、アレを見ていなければ僕はその嘘を見抜けないだろう
凛子さんは今日の昼間にあったことを僕に告白するつもりだ
ほとんど会話が無かった夕食は、折角の出来立ての料理の味を堪能する事はできなかった
僕の目の前に、うつむき加減で箸を料理につける凛子さんの姿があったからだけど・・・

 何か可哀そうになってきた・・・
 僕の方から「見ちゃったんだけど」って明るく言ってあげた方がいいのかな・・・

まるで僕の方が責められているような気分の中で夕食を終え、弁当箱と一緒に食器を流しに持って行った
「そうだ、あの荷物 一緒に開けようか」
「ええ・・・ でも、その前に話したい事が・・・」
「うん・・・」
 (早く話してください 僕は知っているので大丈夫ですから)
長く長く感じる時間の中で、僕はキッチンで洗い物をする凛子さんの後姿を見守った

洗い物を終えた凛子さんがリビングの僕に向かって歩いてくる
そしてテーブルを挟んで向かいに正座した
「大事なお話があります」
「はい・・・」
 (なんだ!?こんな凛子さんは初めてだぞ・・・)
「昼間の事ですけど・・・」
「はい」
 (敬語!? ガンバって、何を言われても僕は大丈夫だから)
「恵美さんが訪ねてきて・・・」
「うん」
「抱かれました・・・ 私も恵美さんを抱きました・・・」
 (よくできました)
「そうか まぁ、それは僕が公認してる事だからね」
「え・・・ 怒らないの?」
「うん、僕が「いいよ」って言った事だから」
 (ウソつかれて平気な顔されてる方が良かったよ 目の前であんな顔されたら・・・)
「本当に怒ってないの?」
「うん、怒ってないよ」
「本当に?」
「本当は、怒ってるっていうより、ちょっと嫉妬してるかな」
 (本当は嫉妬と言うより敗北感でイッパイです・・・)
「そう・・・」
「当たり前だろ 僕は凛子さんの事が好きなんだから」
「うん」
 (しまった、そこは「愛してるから」って言った方が良かったか)
凛子さんの安堵した表情が僕に溜まっていた色々な疲れを癒してくれる

 それにしても真面目だな、正直に告白してくれるなんて
 ここまで真面目だとは思ってなかったよ

「凛子さんの話はそれで終わり?」
「ええ」
「じゃぁ、荷物開けようか」
「そうね、持ってきて」
「うん・・・」
一瞬で立場は逆転、というより元に戻ってしまった
寝室の隅に開封されないまま置かれていた荷物をリビングに持ち帰ると
凛子さんはキッチンの方から二つの湯飲みを持ってやってくる
僕は凛子さんの動向を注視した
先ずはテーブルに湯飲みを並べて置いたが、それは向い合って座る時の並べ方だ
 (違う!違う!そうじゃない!)
僕は慌てて荷物をテーブルに置くと、湯飲みを二人並んで腰を下ろす時のポジションに置き換えた
「やっぱりこうじゃないと」
「ふふっ うん」
凛子さんも乗り気の様子だ
昼間に恵美さんと愉しんでいたハズなのに・・・

 まだ満足してないのか・・・
 もしかして恵美さんは凛子さんを満足させる事ができなかったとか?
 まぁ、それは無いだろ・・・

二人並んで腰を下ろし荷物を開封した
一緒に選んだ玩具だから驚きという面ではお互い反応は薄かったが
実際に手に取ってみると何とも言えない興奮を覚えてきた
「アイマスク着けてみて」
「うん」
凛子さんにアイマスクを手渡すと、彼女は受け取ったアイマスクで顔を半分隠した
「着け心地はどお?」
「いいわね、柔らかくて長時間着けていても痛くならなさそうだわ」
「へー」
 (そこそこの値段はしたけど買ったのは正解だったか さらば初代アイマスク、そしてアリガトウございました)
「ねぇ・・・ 次の・・・」
アイマスクを着けたままの凛子さんが何かを求めてきている
「ああ・・・そうだね」

 凛子さんはどうしてしまったんだ・・・
 こんなに早くスイッチが入るなんて・・・

次と言うと・・・ディルドはまだ早い、枷だ
手足用の枷に腿枷も箱に入っている 先ずは手足用の枷を手に取った
「枷を掛けるよ」
「うん」
凛子さんは僕に背を向けて両手を背に回した
 (ええッ!イキナリ後ろ手に!?いいんですか!?)
戸惑ったが凛子さんからの要求を飲まないわけにはいかず
とりあえず背中に回っている腕を掴み、服の袖の上から枷を掛けた

 本当にいいのか・・・ お試しと言う雰囲気じゃなくなるような・・・
 ハードな事になっちゃいますけど、いいんですか!?


[27] 色は思案の外  最後のティッシュ :2017/09/15 (金) 06:32 ID:5quT9j0o No.24992
「どお?」
「うん・・・」
僕の目の前には凛子さんの背中があり、その背中の前では両手首に枷が掛っている
「痛くない?」
「うん・・・」
「触るよ」
「うん」
凛子さんの肩に手を置き引き寄せると、彼女は僕に背を預けてきたので
僕は両手を凛子さんの前に回して、先ずはお腹の辺りを摩ってみた
勿論、それだけで終わらせるつもりは無いが・・・

 一応は動画を観て勉強したけど・・・ やっちゃっていいのかな・・・

お腹を摩っていた手を上げていくと胸の膨らみに到着したけど
乳房の柔らかさより衣服とブラジャーの感触の方が強く主張してくる
「ちょっと待ってて」
「うん・・・」
凛子さんの背中を支える役目は肘掛け替わりにしていたソファーに一旦譲り、僕は足早に風呂場へ向かった
リビングに戻ると、凛子さんは僕がリビングを離れる前と変わらないままの姿勢でお行儀よくしている
そして戻ってきた僕の気配に気付いたはずだけど、僕が洗い立ての男性器を露わにしている事までは気付いていないだろう

邪魔になるテーブルを引いてずらすと、カーペットに投げ出された長い脚を跨いで凛子さんの顔の前に下腹部を近付けた
「ちょっと乱暴な事するよ」
「うん・・・」
視界と両手の自由を奪われた凛子さんは俎板の上の鯉状態だ
見下ろしている彼女の頭に片手を置いて僕の股間に引き寄せた
ここまでくれば目隠しをしていても僕が下半身だけ裸の変態的な格好になっている事は気付いている様子で
半起ち状態のチンポの先が難無くフェラチオの温もりに包まれる
頭を押さえているのに凛子さんから抵抗の力は感じない
もう片方の手も頭に添えて、緊張と興奮で血流が集中し始め固くなってきたチンポを根元まで押し込むと
さすがに苦しいのか「うぐっ」というような唸り声が聞こえてきた
それでも僕の手には抵抗の力は感じない
それどころか、勃起したチンポを咥えようと懸命になっている様子が頭を押さえる手とチンポに伝わってくる

あっという間にフル勃起したチンポは自慢の愚息で
初めて凛子さんと繋がった時には「入ってきた時ビックリしちゃった」と褒められた孝行息子だが
その孝行息子が今は愛する凛子さんを苦しめている
下から聞こえてくる呻き声は苦しそうだけど抵抗してくる力は感じない
その献身的なフェラチオが僕の心を強く刺激してくる
両手を離して凛子さんの頭に自由を与えたが僕のチンポを咥え込んだままでいる
肩を掴んで軽く押し、そこでようやく彼女の口から僕のチンポが抜け出てくると
彼女の口の周りを濡らす唾液は僕の上着の裾で拭ってあげた
「寝室に行こうか」
「うん・・・」
一言ずつ言葉を交わし、アイマスクも枷もそのままにして彼女を立たせると
僕は片手には玩具が入った箱を、もう片方の手は凛子さんの腕を掴んで寝室までエスコートした

ここまではスムーズに事が進んでいる
酷く興奮しているけど、僕の頭はまだ冷静な部分が残っている
玩具が入った箱を置き、凛子さんをベッドに上げると仰向けに寝かせ彼女のお尻の下に枕を差し込んだ

 後ろ手に拘束したままリビングの床に押し倒したら痛い思いをさせちゃいそうだからね

ここまでくると本当に俎板の上の鯉と言う感じで、凛子さんは次の行為を待っているだけの状態だ
しかし、リードする方の僕は少々焦っている
いくつもの動画を観てきたけど実践は初めてで、何から始めていいのか見当がつかない

 落ち着け、そして思い出せ
 凛子さんは「一つ一つの愛撫をもっと丁寧に」と僕に言った
 とりあえずは、このまま・・・

先ずは横たわる脚の上に手を置いた
伝わってくるのはジーンズのデニム生地の感触でそれほどエロさは感じないが
凛子さんの鼻息は荒くなり見て分かる程に胸を上下させて呼吸している
それは緊張なのか興奮なのか
だが、ここで焦ってはいけない 僕は手を腿の内側に移し衣服の上からの愛撫を続けた
だが、しかし、そんな僕をあざ笑うかのように箱に入っている「腿枷」という目新しいアイテムが僕の好奇心を刺激してくる

 僕は我慢できる子だ 我慢・・・

「ううっ・・・」
 (あ・・・)
腿枷に気を取られてしまい、おろそかになっていた手がジーンズの股を押してしまった
 (ごめんなさい・・・ やっぱり我慢できないよ)
僕はジーンズのボタンを外しファスナーを下ろした

 枷自体が初めてなのに腿枷なんて・・・
 でも、好奇心と期待が僕を突き動かすんだ
 サイトの画像では女の子が凄くエロい具合に装着していた
 あれを凛子さんで再現できれば・・・

焦る気持ちと好奇心を抑えられなくなった僕はジーンズとパンティーをまとめて引き下ろした
ジーンズの下から現れた太腿は美しく、輝きを放っているかのようにも見える
 (この腿に枷を・・・ 僕はあれを再現できるのか・・・)
箱から腿枷を取り出すと静かに息を吐いた

 落ち着いて思い出せ
 確か割と上の方に枷を掛けてたよな・・・
 後で手に掛けた枷と繋ぐことを考えれば・・・
 この辺りか・・・

「ねぇ・・・ 宗太さん・・・」
「ちょっと黙ってて」
「はい・・・」
腿枷はスムーズに装着できた、手の枷と繋ぐ金具は外向きに出ているので間違いは無いはず

 これで準備は出来た
 後は手の枷を腿枷に繋ぎなおせば・・・

仰向けだった凛子さんを一旦うつ伏せにしたけど、思いの外スムーズに転がせた
凛子さんもされるがままじゃなく、プレイに協力的になってくれているのが伝わってくる

 そうだ、これは僕だけのプレイじゃないんだ
 これは夫婦の共同作業なんだ

枷同士を繋ぐ金具を外し、手首に枷を着けたままだけど腕の自由は返して上げた
「仰向けに戻って」
「うん」
凛子さんが仰向けに戻ると、再びアイマスクで半分隠した顔が視界に戻ってきた
 (そういえばキスをしてなかった・・・ キスしたい・・・)
「どうしたの・・・」
「ん?」
凛子さんは枷が着いた手を腿に近付けて 繋いで と、おねだりしてくる
「早く・・・」
「うん・・・」
 (キスさせてくれないのか・・・)
とりあえず手の枷と腿枷を繋いでみたけど割と自由に動くようで
見た感じでは後ろ手の枷ほどの拘束感は無いように見える
そして・・・

 (何で僕はいつもこうなんだ・・・ お互い上着を着っぱなしじゃないか・・・)

僕は上着を脱ぐ事ができるけど、両手を繋いだ凛子さんの上着は捲る事ぐらいしかできない
 (とりあえず、足に残っている靴下を脱がせてあげよう)
片足ずつ持ち上げ靴下を脱がせてあげながら次の事を考えた
一旦拘束を解き凛子さんの上着を脱がすという手順は、その間に気持ちが冷めてしまうという可能性がある
僕としては肌同士を密着させる全裸がいいけど、こうなってしまっては仕方がないのか・・・

それでも僕は全裸でのセックスを諦めきれなかった
そして靴下を脱がせたばかりの足の先を撫でながら、良案が思い浮かぶまでの時間を稼ごうとしていた時だ
腿と手を繋いでいる枷の金具が小さく鳴った
 (ん?)
音がした方に目を向けると、腿枷に繋いだ手が自らの腿を摩っている
いや、違う 枷に繋がれた手の先が恥毛に向かって伸びている
もしかすると快感を求め自ら股間を刺激しようと・・・
 (ごめん、枷を繋ぐ金具がもう少し上に向くように腿枷を掛けていれば指の先ぐらいは・・・)

 (違う!そうじゃないだろ!今、大事な事は凛子さんが快感を求めてるって事だろ!)
僕は手の上にある足首を握った
「あっ・・・」
何てことだ、足首を握るだけで凛子さんは強い何かを感じている
僕が彼女の両足首を掴み脚を開いていくと、腿に繋いだ手も一緒に開いていく
そして、露わになった凛子さんの秘部は愛液で濡れ輝いていた

 (ごめん、こんなになるまで・・・)

枷に夢中になり全裸に拘っていた自分を恥いた
目に映っているのは濡れて輝く美しい肉の花弁
股間に感じているのは激流とも言える血流

 (ごめんね 直ぐに挿れてあげるからね というより僕が我慢できなく・・・)

彼女の脚を更に大きく開くと、この先何が起こるのか感じ取ってくれたようだ
まだ脚を開いただけなのに
「はぁ・・・」
と、喘ぎの声のような息を吐いた
怒張した亀頭を濡れた股間に押し当てると
「ううっぐぅ・・・」
と、挿入した時のような声を出す
チンポの先に感じているのは膣の温もりと愛液の滑り
耳に聞こえてくるのは枷同士を繋ぐ金具が鳴る音
「いぃあぁーッ!」
そしてチンポ全てが膣の温もりに包まれた時、悲鳴にも似た凛子さんの喘ぎ声が耳に入ってきた

 あの時の凛子さんだ
 あの新婚旅行の初夜の凛子さんだ

僕は夢中になった
彼女の腿に繋いだ手が僕に抱き付こうとしている気配は感じていたけど
枷の金具の音が聞こえてくるだけで抱き付かれる事はなかった
僕の下にある衣服に包まれた身体は悶え喘ぐだけで、代わりに長い脚が僕の腰に絡んで締め付けてきた
「うぁあぁッ! いやあぁッ!」
威勢がいいのは喘ぎ声と比較的自由な脚だけで、悶える身体は簡単に抑え込める

 腕の中の身体の自由は僕の思い通りに・・・
 何だ・・・ この気持ちは・・・

抵抗できない凛子さんが僕の中の何者かを刺激してくる

「凛子」
「ああッ! 宗太さんっ!」
「僕に隠してる事があるだろ?」
「え・・・」
僕が腰の動きを止めるとベッドの上は静まり返った
「身長はいくつ?」
「え?」
「凛子の身長はいくつって聞いてるんだけど」
「175cm・・・」
「違うだろ」
「それは・・・」
「どうなんだ?」
「はい・・・177cmです・・・」
「何で嘘ついてたんだ?」
「ごめんなさい・・・」
「何で?」
「宗太さんが・・・ 175cmだったから・・・」

今にも泣き出してしまいそうな声だ でも

 うん、わかってたよ
 実は、喫茶店でミルクティーを飲みながら途方に暮れていた時に気付いちゃったんだ
 前の夜に健康診断の検査結果を見てしまった時、出会ってからの凛子さんを思い出してたからなのかな
 僕らが付き合う切っ掛けになった中華料理店で、背が高い事を気にしてるって話してくれたよね
 僕は気にするほどの事じゃないと思ってた
 籍を入れる前に、ずっと僕の事が好きだったって告白してくれたよね
 もしかして、ずっと自分の方が僕より背が高い事を気にしていたのかな
 確か、僕が企画営業部に配属されて一年ぐらい経った時だったかな
 お互いの身長を言い合った事があったと思うんだけど
 その時からなんだね
 まだ、頼れる先輩というだけの印象だった凛子さん
 まだ、僕を叱った事が無い凛子さん
 その時からなんだね
 でも、もう気にしなくてもいいんだよ
 僕は僕より背が高い君を愛しているんだから

「ずっと僕を騙してたなんて酷いな」
「ごめんなさい・・・」
「謝っても許さないよ」
「ごめんなさい・・・」
「だめだ、お仕置きだよ」
「そんな・・・」
「今夜はイッパイ凛子の中に出すから」
「え・・・ 宗太さん・・・」
ゆっくりと腰を動かし始めると、不自由な彼女の身体も再び悶えだした
「はあぁ〜ん」
聞こえてきたのは安堵したような喘ぎ声、僕の気持ちが伝わったのかな
「凛子、お仕置きなのに感じちゃダメだろ」
「ごめんなさいっ」
「凛子っ」
「宗太さんっ ごめんなさいっ」
悦び交じりの謝罪の声を聞きながら僕は徐々に腰の動きを速めてゆき
いつしかまるで凛子さんを痛めつけるかのような乱暴なセックスになってしまっていたが
「ああッ あぁあーッ!」
 (ごめん、凛子さん ごめん、痛くない?)
「ぐうッ うあッ ううぅあーッ!」
 (でも、心が気持ちいいんだ 止められないんだ!)
「凛子ッ!」


ふと時計に目をやると時間は11時を回っていた
夕食後直ぐからだから、どれぐらいの時間が経っていたのだろうか
もう、自分の事を絶倫だとしか思えなかったね
今の凛子さんは全裸になっていて、手首と足首を繋いだM字開脚状態でアイマスクは外してある
開いた股間に咲いた肉の花弁、その奥の充血した果肉は愛液と精液を蓄えている

 さて、問題はここからだ・・・

手足は繋いであるが、上気した表情の中の瞳は僕を追ってきている
魂を抜かれそうなほどに妖艶な視線だが気を抜いてはいけない
最後の仕上げが待っているからだ
大きく息を吐いた後、先ずは片方の手首と足首を繋ぐ枷に手を伸ばした
繋がっている金具を外すと、自由になるのを待っていたかのように枷を付けたままの手が僕に伸びてくる
 (待ってください!もう片方も外しますから!)
「宗太さん・・・」
「凛子、落ち着いて もう片方も外して上げるからね」
「うんっ」
 (お願いですから、本当に落ち着いてくださいね・・・)
平静を装ったが僕の身体は既に戦闘態勢に入っている

緊張の中でもう片方の手足を自由にしてあげると、凛子さんは予想通り僕に襲いかかってきた
そして僕が危惧した通りに体勢が悪く、即座に背後を取られ僕も必至に成らざるを得なかったが
しかし!気構えが有る無しでは雲泥の差で、あの夜の僕とは明らかに違っていた
完全にロックされる前に絡んできた腕を解き
逆に凛子さんをベッドに押し付けると、そのまま抱き付き力強く抱きしめてあげた
「あぁ 宗太さんっ!」
「凛子っ 愛してるよ!」
 (よし、完璧!)

今日の凛子さんは随分お疲れのようだ
少し落ち着いたかと思えばスヤスヤと眠りに入ってしまった
僕は可愛い寝顔を眺めながら失敗した事や上手くいった事を思いだしていた

 次はもっと上手くやれそうな気がするけど
 それにしても最後のアレは何なんだ・・・

まぁ、それで凛子さんが満足してくれるなら何でもいい
師匠の言葉を借りれば

 「僕は変な癖ごと凛子さんを愛している」



「起きなさい 時間よ」
「う〜・・・ん」
 (あ・・・ いつもの朝だ・・・)
昨夜の事を思い出せば夢だったのではないかと思ってしまうけど
これがいつもの凛子さんなんだよね
シーツに残る昨夜の跡と部屋の隅に片付けられた玩具が入った箱を見て現実だったことを確認し
朝食の声が掛る前に寝室を出てシャワーを浴びた

 あの玩具は凛子さんが片付けてくれたんだな・・・
 いや、玩具だけじゃないな
 確か昨夜は脱いだ服も散らかしっぱなしで寝たから・・・
 ごめんなさい・・・次からは僕も一緒に片付けします

いつもの凛子さんといつもの朝、「もしかすると」と、いってらっしゃいのキスを期待しても・・・
結局はいつもの朝で、いつもの通勤路を駅に向かって歩いた
電車を降りると伊藤と合流し、会社に着くと主任の上島さんが机に向かって何かの確認か準備をしている、これもいつもの光景
だが、いつもと少し違ったのは高岡さんが部長に捕まっていた事だ
例のプロジェクトのトラブルの事でリーダーである高岡さんを・・・と思ったが
「それでよ、勝ってた分を全部つっこんでやったんだよ」
 (なんだ・・・ 競馬の話しか・・・)
「それでどうなったんですか?」
 (高岡さんも災難だな、トラブルの真っ只中で朝礼前にやっておきたい事があったと思うけど)
「はっはっは 俺の顔を見て察しろ」
 (顔見る前に声聞いただけで分かりましたよ おめでとうございます)

「おっ、きたきた こっちこい」
「あ、おはようございます」
 (僕も自慢話聞かされるのかな・・・)
「やりやがったな」
「え?」
「とぼけるな、結果知ってるんだろ」
「んー 何の事です?」
「は?これだよ、これ!」
師匠が出してきたのは馬券だ
馬単でFHのボックス買い、二通りを5千円ずつ買ってもらっていたんだ
僕と凛子さんの誕生日買いで期待していなかったこともあり、すっかり忘れていた
まぁ、買ってもらった馬券の事を忘れてたのは他の事情もあるんだけどね・・・
「本当に結果は知らないんですよ、当たったんですか?」
「おう、大事に財布にしまっとけよ」
「はい」
 (当たってるのか!? って事は二番人気のHからF、一番人気が飛んで結構付いたんじゃないのか?)

 9月7日は僕の誕生日 頑固なクソ親父には感謝しないが 母さん、この日に僕を産んでくれてありがとう!

そんな感動も束の間で、朝礼前に配当を調べて驚愕した
当たっていたのは凛子さんの誕生日のF−H、配当は13800円の万馬券
という事は・・・ 5000円の138倍・・・
僕は嬉しさよりも恐怖を覚えた

 こんな勝ち方していいのか・・・
 今まで競馬の調子が良い時ほど何故か凛子さんの怒りに火を点ける事が多くなっていた
 今の僕は絶好調ってレベルの話しじゃない、神の域に達している
 この先、どんな不幸が僕を待っているんだ・・・
 僕は凛子さんの怒りの業火に焼かれてしまうのか!?


[28] Re: 色は思案の外  ふぐり太 :2017/09/18 (月) 10:54 ID:3xCbH2f2 No.25005
大量の投稿ありがとうございます!
凛子さんはドMに目覚めて良い感じですが宗太くんにはどんな不幸が待ってるのでしょうか
続きをお願いします

[29] Re: 色は思案の外  abu :2017/09/19 (火) 11:25 ID:WwzMPB2Q No.25008
更新頂きありがとうございます。
ほんとに各キャラクターがいきいきしていて、文章に引き込まれっぱなしですよ。
凛子さんのM性もしかり。
特に師匠がかわいいし。
宗太くんは文句の付けようがないキャラだし。
続きを楽しみに待ってます。
(次はどんな色なのか期待してます。)

呉々も無理しないで下さいね。


[30] Re: 色は思案の外  最後のティッシュ :2017/09/19 (火) 19:26 ID:HrHyIMDg No.25010
ふぐり太様、abu様 レスありがとうございます

週末を狙い金曜の早朝に投稿という腹黒い計算にもかかわらず、中々レスが付かず
月曜日まで三日間開催していた競馬でも惨敗し、消衰した気持ちの休み明けでしたが
頂いた感想で元気が出てきました ありがとうございます

作品に合わせて「凜子さん」と書かせていただきますが
凜子さんのM性については、書き始めた当初は女王様とどちらにするか迷っていました
Mで正解だったようで一安心しています
今回の投稿はMからドMへ昇格しちゃったので特に心配していました

これ以上の書き込みは調子に乗って予告編になりかねないので、この辺りで失礼します


[31] Re: 色は思案の外  abu :2017/09/21 (木) 12:50 ID:Yu4eTTBI No.25014
最後のティッシュ様、私事ですが土日にレスをいれられない諸事情がありまして・・・。
なので週明けにとなってしまいました。
ほんとに大好物な内容なので大事に詠んでますよ。

本音は毎日読みたい(少量でもよいので)んで、実際毎日更新をチェックしてますから。

無理のない範囲での更新をお待ちしております。


[32] 色は思案の外  最後のティッシュ :2017/09/24 (日) 22:05 ID:vbeYdUh2 No.25032
年が明けて1月4日、まばらだけど出社する人を見かける
会社としての仕事始めは5日からだけど、他の部署の方も色々と忙しそうだ
そして僕らの部署はこの日から全員出社で正月の余韻は無い
僕は昨日の内にほとんどの人と会社で新年の挨拶を交わしている
「はぁ・・・ 今日は1月4日だよな・・・」
同期の村上が溜息交じりの大きな独り言を吐いた
 (朝礼前からそれじゃ一日持たないぞ・・・)
明日は年明け一発目の競馬、金杯の日だというのに部長は部屋の隅で静かに佇んでいる
 (師匠、元気を出してください 明日は金杯ですよ)
そして村上が僕に救いを求めるかのように話しかけてきた
「なぁ、何とかならなかったのかよ・・・」
「ならないよ、三代目から出た話しらしいから」
 (元々はお前らプロジェクトチームが蒔いた種だろ・・・)
「そうらしいな」
と横から入ってきたのはプロジェクトリーダーの高岡さんだ
そして三代目とは社長の息子の専務の事で、聞いた話によると師匠と三代目は同じ大学の同期生らしい
「まぁ、殺されるって訳じゃないんで頑張りましょう」
「お前のその能天気な思考が羨ましいよ」
 (何てこというんですか・・・ 僕は高岡さんを元気づけようとしたんですよ)

「もう手続きは済んだかな 行ってくる」
部長がオフィスから出て行くと緊張からなのか扉が閉まる音を最後に静まり返る

再び扉が開いた時、僕は条件反射のように背筋を伸ばしてしまった

 流石です ここに立つのは一年と二ヶ月振りなのに変わらない美しさ
 いや、変わりましたね 洗練されて美しさに磨きが掛ってますよ

部長の声が心なし緊張している
「もう、みんな知ってるな 三月いっぱいまで仕事を手伝ってくれる・・・ んー、野上さんだ」
「よろしくお願いします」
会釈をして顔を上げた時の表情が目に入ってくると、それまで浮かれ気分だった僕の背筋を冷たいものが伝った

 何てことだ・・・ 凛子さんは怒っている・・・
 会社に着くまでは普通だったのに・・・

頭の中に蘇ってきた記憶は「辞めた私に頼るなんて情けないわね」という怒りを抑えた凛子さんの声と顔だ

 別に僕が悪いわけでもないし 僕が頼んだわけでもないのに・・・ 怖かった

その凛子さんの怒りを感じ取れているのは僕だけだろう
いつもの凛子さんから「吉田主任」の顔に戻った彼女の顔は凛々しく
それは、みんなの記憶にある凛子さんだと思われ
怒りを抑えた微かな違いを見抜いているのは、たぶん僕だけだ
「如月さん、朝礼は?」
「あ、いや 特に重要な伝達事項は無いし・・・」
 (師匠!何言ってるんですか、年明け一発目の朝礼ですよ 新年の挨拶的なものがあるじゃないですか!)
「私は誰に付けば?」
「じゃぁ、野上に」
 (ややこしいな・・・ 野上と野上さんって 伊藤や西岡は僕の事を何て呼ぶんだろう・・・)
部長の言葉を聞いてプロジェクトチームの連中はホッとしている様子だ
凛子さんが期間限定でプロジェクトチームに加わるって噂もあったからね

凛子さんが僕に近付いてくる
新調したフォーマルなパンツスーツにローヒールのパンプスは一緒に家を出た時の凛子さんと変わらない
久しぶりに見たその姿は会社に着くまで僕の目を釘付けにしていた
しかし、目の前に迫ってきたその御方が纏うオーラは出勤時とは全くの別物だ
「野上くん、指示を」
 (だよね 僕は「野上くん」だよね・・・)
「はい ちょっと待ってください・・・」
 (それにイキナリそんな事言われても・・・ 師匠 いや、部長!こういう場合って僕より上島主任でしょ!)
「野上さん、復帰早々で悪いんだけどお願いしてもいいかな」
 (おお!主任!助かります)
「はい、遠慮なくどおぞ」
「フレンチのレストランだけど、デザインの面でウチからプラスαの提案を出して先のある仕事にしたいんだ」
 (復帰してイキナリそういう事はキツイでしょ・・・)
「競合相手がいたんですか?」
「ああ コンセプトが違う店をもう一店出したいという話しを耳にしたから、有利な内に他と差をつけておきたい」
「そうですね」
「野上さんはこういう事が得意だったと思うけど」
「はい、考えてみます」
 (ええ!?迷わず即答!?)
「これがオーナーからの要望とウチから出したスケッチこっちが予算だけど、デザインコンペは終わってるから気楽に」
「はい」
「デザイナーには俺から連絡しておくから」
「はい わかりました」
 (流石です、さすが凛子さんの元教育係 そういえば、凛子さんに叱られなかったのは上島さんだけでしたよね)

 何か懐かしいな
 主任になる前の凛子さんを見ているようだ

それにしても凛子さんや上島さんみたいな事できる人って凄いと思うよ
僕や師匠とはちょっと毛色が違うんだよね 僕にはそういうセンス無いし・・・師匠は「別に課を起ち上げろ」ってよく愚痴ってるし・・・

さて、今日は外回りは無い、僕は椅子に腰を下ろしたが背筋は伸びたままでいる
何故なら、隣が凛子さんの席だからだ
凛子さんが主任だった頃は席が離れていたので隠れて好き放題していたのだが

 師匠の仕業だ、余計な気を使いやがって・・・

「野上くん」
「はい」
「先ず机の上を整理しなさい」
「はい」
 (凛子さん! 僕は正社員で凛子さんはパート扱いなんですよ)
「どうしたの?早く」
「はい・・・」
師匠は早々に姿を消している オフィス内で救いを求める事ができるのは上島主任だけだ
 (主任、助けて 何とかしてください)

 でも、まだ良い方かな
 主任が凛子さんに頼んだ事は、たぶんだけど凛子さんが好きな事だ
 何となく分かっちゃうんだ
 主任から渡された資料を見ている顔は凛々しい顔しているけど
 伝わってくる雰囲気はキッチンに立っている時と似てるんだよね
 一年とちょっとだけど嫁の凛子さんを見てきたから分かっちゃったのかな

朝礼と言えるのか分からないけど、あの朝礼の時の凛子さんは言葉が短く明らかに機嫌が悪かった
でも、今は隣から伝わってくる気配は和らいでいる
しかし、そんな安堵の気持ちを吹っ飛ばしたのは緩んだ顔で近付いてきた伊藤だ

 (こいつ・・・ 気付いてないな・・・)

伊藤と西岡を一度ウチに招待した事がある、そして今朝も電車を降りてから顔を合わせている
たぶん、その凛子さんが伊藤の中にある凛子さんなんだろう
「奥さん、次の試食会はいつですか?」
 (やっぱりだ・・・ 気付け!)
「伊藤くん」
「はい」
「今は仕事の時間よ」
「はい・・・」
 (気付いたか 声の雰囲気で気付いたんだな、えらいぞ)
「仕事に戻りなさい」
「はい」
伊藤が僕らに背を向け、ホッとしたのも束の間 いや、刹那だった
「んー、何から手をつけようかな」
 (おい!なんてこと言うんだ!思い出せ!凛子さんが主任だった時を思い出すんだ!)
「伊藤くん」
伊藤は振り向いたが、まだ思い出してないようだ
「なんでしょうか・・・」
「そういう事は朝礼が始まるまでに決めておきなさい、時間が勿体ないでしょ」
「はい」
 (思い出したか?僕らは何度同じ事で叱られた?)
手短に叱られた伊藤が肩を落として席に戻っていく
 (良かったな 「綺麗な奥さんに叱られて羨ましい」みたいなことを僕に言ったよな 嬉しいだろ?)
僕の事も含めた一連の様子を近くの席で見ていた西岡は命拾いしたようだ

「おう、野上 打ち合わせだ」
「はい」
姿を消していた師匠が戻ってきて僕を呼んだ
 (分かってますよ、とりあえず凛子さんから僕を離したいんですね)
「ちょっと打ち合わせに行ってきます」
「他に私がやる事は?」
「じゃぁ、見積もりのチェックを・・・」
 (正社員じゃないけど見積もりを見せちゃっていいのかな・・・ まぁ、いいだろう)

 (あれ 肝心の資料はどこいった・・・)
「どうしたの?」
「あ、ちょっと待ってください・・・」
 (おい!資料!どこにいるんだ、出てこい!凛子さんを待たせるんじゃない!)
「みなさい、何も考えずに上から置いていくから欲しいものが直ぐに出てこないのよ」
「はい・・・」
 (まだセーフ、激怒じゃない・・・)


食堂を兼ねた休憩室で師匠は腕を組んでいる
「夫婦仲睦まじくやってるようだな」
「何を見て仲睦まじくなんて言葉が出てきたんですか・・・」
「お前の嫁の声が外まで聞こえてこないから怒られてないんだろうな・・・と」
「何ですか、その判断基準は・・・」
「それでどうなんだ?やり易いか?やり難いか?」
「んー・・・ やり易いかも・・・」
「おっ、そうか」
「ずっとあれでやってましたからね」
 (家でもあんな感じだし・・・)
「それなら問題ないな 問題は明日だな・・・」
「金杯ですね」
「おう」

説明しよう 金杯とは年明け早々に行われる競馬で通常の週末開催とは違い1月5日が平日であっても開催しちゃうのだ

「馬券は携帯で買って後で結果だけ確認しましょう」
「中継を観れねぇんじゃスマホ持ってる意味ねぇな」
 (色々と役立ってるでしょ・・・ 画面が大きいって理由だけで持ってるんですか?)
「仕方ないですよ、今年は」
「そうだな・・・」
 (師匠が悪いんですよ、凛子さんに頼る以外の方法を考えればよかったんですよ)

 しかし・・・ 僕の身体はどうなってしまったんだ・・・

オフィスに戻ると所狭しと闊歩する凛子さんの姿が目に入る
いや、僕の目は他には目もくれずに凛子さんを追っている
177pの身長はヒールの分を足して180pにはなっているだろいう 中々の迫力だ
僕が席に着いた時、凛子さんも隣の席に戻ってきた
「あの見積りは上島さんに渡したわよ」
「はい、ありがとうございます」
 (早い、流石です)
「次は?」
「じゃぁ・・・ これを」
「他には?」
「あ、これも」
「他にもあるなら、まとめて渡しなさい」
「はい」
 (欲張りですね・・・)
「それと 机の上!」
「はい! 直ぐに整理します」

 ふぅ・・・ 僕はどうなってしまったんだ・・・
 凛子さんを見ていると 凛子さんと話していると
 勃起してしまいそうになる・・・

理由は何となく分かっている
久しぶりのフォーマルなパンツスーツスタイル、久しぶりの仕事人の顔
これは昼間の顔で主任だった頃と変わってないけど、僕は夜の顔を知っている
僕らが恋人同士だった時以上の昼と夜のギャップを知っているからだ
ここ一ヶ月以上は普通のセックスはしていない、週に二回ほどだけど僕らは拘束プレイに夢中になっている
衣服で隠してはいるけど、あのスーツの下には昨夜の拘束の跡が残っているはずだ・・・

それに、ヒールが付いた靴を履いた凛子さんを見るのは結婚式以来かも
やっぱり、僕より背が高い事をずっと気にしてたんだね
折角の長くて綺麗な脚なのに、僕の事を気にして勿体ない事をしていたんだね

 可愛いよ 凄く可愛い性格だよ、凛子さん
 しかし
 今は全て忘れるんだ、何も考えるな 鬼になれ
 内なる仕事の鬼を目覚めさせるんだ
 僕らは夫婦並んで仕事をしている
 勃起してるところを誰かに見られたりなんかしたら
 どんな冷やかしの言葉を受ける事になるか・・・

そして僕は競馬の予想と同等の集中力を発揮し仕事の鬼になった



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