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覆水盆に返らずB

[1] スレッドオーナー: 矢部 :2025/07/10 (木) 00:07 ID:dlh6H.Uk No.201946
パートBからの投稿になりますが、
前作の「覆水盆に返らず」「覆水盆に返らずA」は
こちらのサイトの「他の男とセックスしている妻」に投稿済です。

スローな展開で、物足りなさすぎる内容ですが、
読者の皆様、よろしくお願い致します。

*****

「あのへんやな・・・」

ふと漏れた私の声に反応したのか、由紀も口を開きました。

「あっ トオサン、洗濯物と炊飯器のスイッチ お願いね」

彼女の声は、高ぶっていたとか、震えていたとかではなく、
いつもの日常の中のお願い事を、淡々と口にしているような
普通のトーンでした。

数分後には、彼女も面識のあるとはいえ、私の親友とはいえ、
いちおう「男」と会う、いちおう「デート」に臨むような
雰囲気は、彼女からは微塵も感じられなかったのです、。

(後席に座っていたから、余計にそう思えたのかもしれませんが)

むしろ私のほうから、彼女がこれから平尾とデートすることを、
あらためて知らせるようなことを言ったのでした。

「じゃぁ、あいつの気晴らし・・・気分転換 させてやってな」

あくまでも平尾のためを強調する「ずるい」私に戻っていました。
平尾のことを持ち出すことで、自分の感情を隠そうとしたのです。
というか、そうでも言わないと、他に言葉が浮かばなかったのです。

「ん〜 まぁ、難しいかも・・・ わかんないよ」と由紀。

その声も、どこか“あっけらかん”としていたのを覚えています。

車はロータリーに入り、駅前(裏口)に着きました。

「じゃ〜 行ってくる」

これから電車に乗って 街まで買い物に行く、そんな軽い感じで
私に言うと 「ふぅっ」と軽く一息吐いて 由紀は車を降りました。

後席のスライドドアが閉まる間際・・・

私は言葉にできない絶望感と無力感に襲われ、
そして血圧までも上がっていたと思います。

取り返しのつかないことをしてしまった感覚。
しかし一方では ここにきて とても気持ちが昂っていたのです。

私はその場で、彼女をずっと目で追うまでもなく、
そのまま車を走らせてロータリーを回り、メインの通りから、
一本筋に入ったところにあるコインパーキングに車を停めました。

そしてすぐに下車して、小走りにもう一度メイン通りまで出て、
そこから数十メートル先にある、先ほどの駅裏ロータリーを、
街路樹や立て看板、広告旗の陰から、じっと見つめていました。

なぜ私は 牧里駅の「裏口」を待ち合わせ場所に選んだのか?
二人が会うシーン、大袈裟ですが「寝取られ」「妻の貸し出し」、
背徳的な現場を“この目で見てみたい”と素直に思ったからです。
こんな歪んだ願望は こちらのサイトによる影響も大きかったのです。

その願望を叶えるために、事前に地図情報を調べてから、
この場所を選んでいたのでした。

・駅裏口には、駅に近い場所にコインパーキングが数か所あって、
 休日でも比較的空いている
・ロータリーからメイン通り沿いにはコンビニやドラッグストア、
 不動産屋や飲食系のお店等があり、それなりに人の往来もある。
・車道に沿った歩道に街路樹があり“隠れ蓑”になってくれる。

つまり、私の浅はかな計算によるものだったのです。

ただその日、実際にこの状況になってくると、欲望や願望などは、
焦る気持ちに打ち消され、どうでもよくなっていたのですが・・・。

少し離れていても、由紀の姿はすぐにわかりました。
落ち着いたクリーム色のシャツに、ダークブラウンの綿パンツ。
姿勢良く立ち、視線も逸らすことなく前を見据えていました。
これから自分を迎えに来る“男”を待っていたのです。

当然ですが、そんな彼女の視線の先に、私は いませんでした。
もしかしたら、たとえ目と鼻の先にいても、彼女の意識の中に
私はもう存在していないのでは? 
被虐的な感覚に焦りながらも、ドキドキしながらその瞬間を
心待ちにしているという複雑な気持ちでした。

そして時間ぴったりの 13:30・・・

白いアウディクーペがロータリーに滑り込むように現れました。
間違いなく平尾でした。

由紀は、目の前に停車した高級車に向けて軽く頭を下げると、
迷いもなく助手席のドアを開けて乗り込みました。

その時、遠目に見ていた私には、彼女の口元が、
わずかに緩んだように見えたのです。
嬉しそうな笑顔だったのか、単なる挨拶の笑顔だったのか、
もちろん離れたところから、はっきりとは分かりませんでした。
ただ 彼女が“拒んでいない”事実だけは鮮明に目に映りました。

しかし、よくよく振り返って考えてみると、
このデートが実現するに至る ここまでの経緯からすれば、
由紀が拒んだり不機嫌になることは ないのですけどね・・・

それでも言いようのない焦りと嫉妬、理性では「冷静に」と
思っても、つい数分前まで一緒にいた愛妻が、急に遠い世界に
行ってしまった、自分だけが置き去りにされた、
そんな感覚になってしまったのです。

由紀を乗せたアウディはロータリー出口の信号で止まりました。

(追いかけよう)

気づけば、私は走っていました。
パーキングに飛び込み、ドアを開けシートに滑り込みました。

(こんなこと してはいけない・・・)

頭では分かっていたのですが、
どうしても、あのまま“彼女が連れ去られてしまう”気がして
ならなかったのでした。

焦りから精算機前で財布から小銭がなかなか取り出せず、
私は紙幣を押し込み、おつりの硬貨数枚を取り損なって、
地面に散らばらせてしまいました。

そのすべてが、もどかしい時間の無駄に思えたのです。

とにかく私は急いで車に乗り込みました。

もう、見えなくなっているかもしれない。
いや、もしかしたら まだ追いつけるかもしれない。

思いが交錯する中、メイン通りに出ることはできましたが、
視線の先には、すでにアウディの姿はありませんでした。

わずか数分、いや数十秒の差だったのか・・・
それだけの違いなのに、私は二人に“置いていかれた”という
思いに囚われました。

車内に静寂が満ち、茫然とした私はアクセルを踏むこともできず、
ただハンドルに手を添えたまま、その場でしばらく深呼吸を
繰り返していたのを覚えています。

自宅への帰り道の記憶は、ほとんど残っていません。

いつも通る住宅街の道や交差点も、風景としては映っていたはず、
でも、どのように帰ったのかわからないまま、
とりあえず自宅に辿り着き、玄関の扉を開けたとき、
そこには、「音のない空気」が、ひっそりと漂っていました。


[134] Re: 覆水盆に返らずB  小太郎 :2025/10/20 (月) 21:35 ID:2qg7mtms No.204836
このデートごっこの目的の一つ、矢部さんのED回復は
由紀さんの隠し事によって矢部さんが妄想を広げ
見事に達成出来ましたね。

正にスリルとリスクがクスリになった訳ですが
今後、二人のデートでの出来事を由紀さんが
隠すようになるリスクが徐々に高まっていく
のでしょうか?

続きを楽しみにしています。


[135] Re: 覆水盆に返らずB  ざるそば :2025/10/24 (金) 22:53 ID:Nzmlf/xw No.204933
更新ありがとうございます
更新はまだかまだかと1週間に何度も何度もサイトを覗いてしまいます(笑)
BDSMの件は、今度のデートにどのような影響をもたらすのでしょうか?
めちゃくちゃ気になります
話しの展開がどんどん望む方向に向いてきて益々続きが気になります


[136] Re: 覆水盆に返らずB  矢部 :2025/10/26 (日) 00:30 ID:J06PZGew No.204957
倍胡坐様 いつもコメントをくださりありがとうございます。
>そんな展開を心地よく感じております。
・ありがとうございます。これからも期待に応えられれば良いのですが・・・

小太郎様 いつもコメントをくださりありがとうございます。
>二人のデートでの出来事を由紀さんが隠すようになるリスクが徐々に〜
・由紀が隠すつもりだったのかどうかは、本人ではないのでわかりませんが、後でわかって もしかして隠していたのでは?と思えた時にはむしろ興奮していました。

ざるそば様 いつもコメントをくださりありがとうございます。
>話しの展開がどんどん望む方向に向いてきて〜
・ご期待に添えれば良いのですが、どうでしょうかね、なかなかこちらのサイトに投稿をするレベルに届いていない話なので・・・;;


*****

金曜日の夜に娘の麻里奈が帰省してきました。

来月、友人の結婚披露パーティに招かれているそうで、
着ていく洋服を探したい、というのが帰省の理由の
ようでした。
思えば彼女も、もう20代を折り返しました。
そろそろ彼女自身の結婚を、現実の事として輪郭を
持ち始める年頃なんですよね。

翌土曜日は せっかくの帰省だからと、三人で出かける
ことになりました。
麻里奈の提案で、車で少し遠出してアウトレットモール
に向かうことに。
そこでは、偶然にもこの土日に人気スポーツ選手の
トークショーが開かれるということもあって、
「帰省のタイミングでラッキー」という娘の気持ちを
汲んだ形にもなったのです。

たまの子どもの帰省に張り切ってしまうのは、
相変わらずの親バカでしょうか;;

11月にしては暖かく、晴れやかな日でした。
ウチの軽自動車は海沿いの道を快調に走っていました。

後席には、母・由紀と娘・麻里奈が並んで座り、
にぎやかに会話を弾ませていました。
ハンドルを握る私も 会話に時々混ぜてもらいながら、
家庭や家族の温かみをぼんやりと感じていました。

ふと (今 この時間って、平尾は独りで何を?)
なぜか、そんなことが頭を巡ったのです。

そんな時、後席から私に由紀が何気ない声で、

「あっ トオサン、この海沿いの道 もう少し先の
 所にね、この前 平尾さんに連れていってもらった
 カフェがあるよ・・・」

「え? 平尾? あ〜 あっ そうなんや・・・」

びっくりした私は、思わず ブレーキを踏みかけ、
慌ててアクセルに戻しました。

(オイオイ アホか! 今、それ 言うか? 
 娘も おるんやで?)

それでも平静を装い、何気ない顔で運転を続けようと
努めましたが、動揺までは隠せませんでした。

案の定、麻里奈は由紀の言葉を聞き逃さずに、
すぐに反応しました。

「え? 誰? 平尾さんって」

「それ オレの友達や! 同期で 会社の・・・
 昔からの・・・ 入社の時からの・・・」

思わず私の方が慌てて答えながら、脈が早くなるのを
感じていました。

「平尾さんよ・・・ え? マリちゃん覚えてない?」
と 由紀。

麻里奈は記憶を辿るように首を傾げながらも、
もともと家族ぐるみの付き合いもしていたので、
名前はうっすら覚えていたようでした。

「あー、平尾さんって・・・ うん、わかったかも」
「えっと・・・もしかして 奥さん 亡くされた人?」

と 麻里奈は続け、

「かわいそうだよね・・・ まだまだ若いのに」

彼女自身 結婚を意識するようになってきていたのか、
“夫婦”や“人生のパートナー”という言葉に、
重みと身近さを感じていたのかもしれません。
たまたま今回 結婚式に招かれているとあれば、
なおさら平尾の境遇に思いを寄せたのでしょう。

「え? でも母さん・・・ 平尾さんと、って?」

由紀は、あくまで自然な口ぶりで、

「あ、平尾さんとね・・・ ずっと落ち込んでて、
 かわいそうだから、この前の日曜日も会って、
 そのカフェに行ったのよ」

「いや、あいつ、ずっとやからな・・・
 なかなか立ち直れんし、メンタル やばそうやし」
「で、カアサンに 気晴らしというか、なんていうか
 あいつの気分転換の手伝いを してもらっとるんや」

突然のことで、かなり歯切れの悪い私なりに
由紀の返答に便乗するように補足をしました。

車はちょうどその頃、軽い渋滞に差しかかり、
前方には由紀が話していた 例の海沿いのカフェが
ゆっくりと近づいてきました。

「へぇ〜 じゃぁ、母さんと平尾さんと二人で?」

「うん、まあ・・・デートごっこ、みたいな?」
と、由紀はさらりと笑いました。

驚くでもなく、口元に笑みを浮かべて麻里奈は、

「そうなんだ・・・ それ、平尾さん 喜んだでしょ〜」

と言ったあとに、少し照れくさそうに言葉を足しました。

「いいねー なんかそういうの・・・ ちょっとした
 イイ話だよね」と。

「でしょ・・・」

と由紀の言葉を聞きながら、思わずバックミラー越しに
私は麻里奈の表情を確認しました。
そこに不信感、違和感、戸惑いの色はなくて、
ただ柔らかい笑みだけがありました。

それにしても母娘というのは不思議な関係ですよね。

親子でありながら、女同士として何かを共有している。
友達以上に思いやり 分かり合える関係とでも
いうのでしょうか?
亭主で男親の私には、どうしても入り込めない
閉じられた世界が、そこにはあるような気がして。

特に年頃の娘さんを持つ男性読者の方であれば、
少なからず共感いただけるのではないでしょうか。

由紀は わざとらしく肩をすくめ、茶目っ気のある
表情で笑っていました。
まるで娘に対して、そして私に対しても、
「やましい事なんて、あるわけないでしょ」
とでも言いたげに。

そして母娘は顔を見合わせて笑っていました。

(いやいや・・・こんな話、今 するか?)

私は内心でツッコミながら、

「なんか楽しそうやな」

努めて穏やかに、トボけた独り言を漏らしました。

ただ、その時の由紀の笑顔には、
どこか “したたかさ”のような色合いが
混ざっているようにも感じたのです。
いや 感じただけ、ただの思い過ごしかも
しれませんが。
 
でもそれだけ私は、この話に敏感になってしまって
いたのでした。

少しずつ車から見えるカフェが近づくにつれ、
私の中で止まっていた妄想が、静かに息を
吹き返していったのです。

(ガラス越しに見える、あのテーブルか? あの席か?)
(由紀はどんなふうに笑い、平尾はどれくらいの距離で
 彼女の顔を見つめていたのか・・・)

私自身「もう大丈夫」と納得し思い込んでいたはず
なのに、心の奥底でくすぶっていた火種が、
また新たな空気を吸い込んで一気に燃え上がって
いくような気がしました。

再び 自らを追い込みたいのか、守りたいのか、
よくわからなくなってきていて・・・
ただ、湧き上がったその感情が、私に
(由紀と平尾に何かあって欲しい)という欲望を
与えていたのでした。

「せっかくだし、そこのカフェ 寄ってく?」

由紀が無邪気にそう言ったのは、
まさにそのタイミングでした。

私は一瞬、息を呑みました。
その無邪気さこそが、むしろ私の胸を
締めつけてきたのです。

「えっ! いいね!」と麻里奈が笑い、

「ここってね ガトーショコラ、めっちゃ
 美味しくてね、この前 食べたけど、
 完全にハマったかも!」
「あ でもねー、その前のサンドイッチも
 すごくおいしかったよっ」と由紀。

「この前? その前? えっ・・・ええっ?」
と 麻里奈が問えば、

「あっ、ココってね、この前とその前、2回来てて」
と 自然に返す由紀。

妻・由紀と娘・麻里奈、二人は屈託のない笑顔でした。
なのに、私だけが焦りまくって体温の上昇を
感じていました。

車は隣接する駐車場へ入り、私たちは三人でカフェ
『ラ・メール・ブランシュ』のドアをくぐりました。
(駐車場の車を見ると、ウチの軽自動車では
 恥ずかしい気がしました;;)

私はこの店、もちろん初めてだったのですが、
なんとなく名前だけは聞いたことはありました。
正直、私には似合わない店という印象でした。

白い漆喰の外壁が太陽の光に輝き、
大きなガラス窓越しに波打ち際が望める作り、
洗練されたモダンな佇まいは、
どこか落ち着いた高級感を漂わせていました。

外のテラス席には、木製のテーブルと椅子が並び、
海風に揺れる白いパラソルが何気におしゃれな感じで、
店内に入ると、やわらかな陽射しがテーブルを包み、
ほんのり、甘いバニラと焙煎されたコーヒー豆の香り
が漂っていました。

(この前 平尾も由紀を連れて この香りの中に・・・)

実はこの時、不本意ながら 私の中に平尾に対する
羨望と嫉妬の気持ちがあったのです。

「いらっしゃいませ」と、すぐに店員さんが私たちを
BOXになったテーブル席に案内してくれました。

「空いてて良かったね〜」と言いながら由紀は座り、
母娘の二人は紅茶とおすすめのガトーショコラ、
私はコーヒーだけをオーダーしました。

麻里奈がお手洗いに行き、急に夫婦2人になると、
なんとなく私から由紀には話しかけ難い雰囲気に
なっていたのを覚えています。

手持ち無沙汰な私は 当てもなく店内を見渡しながら
ふと、

(平尾と由紀はどこの席に座ったんや?)

今さら無駄で無意味な考えを巡らせながら
テーブルの木目に指を滑らせていました。
でも、その動作の奥に、ひりつくような痛みを
感じていたのでした。

「ここってね、テーブル席 席少ないから、
 前もその前も、2回ともカウンター席だったよ」

由紀がふいに言いました。

「ほら あそこ、海に向いてる・・・」

指差した先にあるのは、ガラス窓沿いの横並びの
カウンター席。

(横並びで? あの距離で?)

「カアサン、この前の日曜日もココって、
 こんな感じやったん?」

私は ちょっとした胸のざわめきを収めたくて、
何気なく聞いたつもりの自分の声が、
思いのほか低く響きました。

由紀は一瞬 私を見て、

「う〜ん、もうちょっと 混んでたかな」
「大雨だったし、お客さん 多かったのかもね」

と、軽く笑っていました。

「何の話?」

席に戻ってきた麻里奈が聞いてきたので、

「お母さんは、この前 カウンター席に座ってたんやて」
と私。

「へぇ〜 そうなんだ・・・」
「ねぇ、あそこ?  海が目の前じゃん」

麻里奈は視線をカウンター席に向け、
そのまま少し目を細めてから、いたずらっぽく笑って
言いました。

「じゃぁ、お父さんも お母さんと座ってみたら? 
 今 ちょうど 空いてるみたいだし・・・」

「はぁ?」

咄嗟の事で、私は思わず声が上ずり、動揺しました。
もちろん嫌な気はしませんでしたが、照れもあったのか
変にぎこちなく嫌がる素振りをしたのだと思います。

「今から席を変えたらあかんよ・・・店に迷惑やろ」

由紀はそんな私を横目で見ながら 麻里奈に向かって、

「今日はデートじゃないからね。 三人で来てるんだし、
 ココでいいよ」と さらりと笑っていました。

私は由紀に、何気に“ダメ出し”をされたような?
気がして、視線を泳がせながら、スマホをいじっていた
のを覚えています。

麻里奈は、ただ クスクスと笑っていました。
その表情が、くすぐったくもあり、同時に胸の奥を
静かにざわつかせたかのようでもありました。

「そっか、平尾さんとはデートだったからね」

ニッコリ笑って、母親を茶化す娘。

「やめてよ〜 全然、そんなんじゃないよ」

由紀は笑いながら、麻里奈の肩を軽く叩きました。

そして麻里奈は紅茶をひと口飲んで言いました。

「でもそういうの、ありだと思うよ・・・
 恋愛とかじゃなくて、人として必要とされる関係
 ってやつ?」
「ぜったい、平尾さんも喜んでると思う」

「そうかなー?」と由紀も紅茶を飲みました。

「早く元気になればいいね」「そうだねー」

そんな二人のやり取りを見て、
私は、自分だけがその“輪”の外側にいるような
感覚に陥ったのです。

表面上は穏やかな家族の団らん・・・

でも、私の中では、別の時間軸“テーブル”が
広がっているような感覚がありました。

私は遠目にカウンター席を見ながら、まだ やっぱり
平尾の姿を重ねていました。

−海に面したカウンターテーブルでは、
 由紀が少し緊張したようにカップを両手で包み、
 平尾がそれを見つめながら、
 低い声で“あの話、つまりBDSMの話”を熱心に
 説いていたのです。

“痛みと快楽は、紙一重なんです”
“信頼できる相手じゃないと成立しないんです”

−私の妄想の中でも平尾の声が響いていました。
 由紀は、ただ静かに頷いていました。
 そして私は、陰からそんな二人を見ているのです。

私は自分自身がその場面を覗き見しているような、
得体の知れない昂ぶりを感じていました。

そんな妄想に浸っていたひとときを遮るように、

「おいし〜」
「お父さん ハイ。 これ 一口食べてみて・・・」

と、私にフォークを差し出す麻里奈。

「ああ、ありがとう」と私は笑って応じながら、
ふと横を見ると、由紀がカップを唇に運ぶ仕草。
白い指先。淡い唇の動き。

(たぶん平尾も、この角度でそれを見たんやな)

その想像が、また私の内側を静かに疼かせました。

それは嫉妬ではなく、興奮でもなく、
もしかすると 自分自身を試すための痛みだった
のかもしれません。

(もっと仕向けたい)
(由紀が、どこまで踏み込むのか)
(どこまでオレを試してくれるのか)

そう思った時、由紀がひとりそっと目を細めて
微笑んだ気がしました。
それだけで、私の中での妄想と現実の境界線が、
曖昧になっていったのです。

「さーて、そろそろ・・・」

席を立って、テーブルを離れようとした矢先、
奥から、スーツ姿の支配人らしき男性が
こちらに小走りで近づいてきました。
にこやかな笑みを浮かべながら、由紀に声を
かけてきたのです。

「いらっしゃいませ、ご来店ありがとうございます」


[137] Re: 覆水盆に返らずB  小太郎 :2025/10/26 (日) 01:57 ID:r0CGPC1I No.204958
平尾さんとデートしたカウンター席を眺めながら
由紀さんが微笑んでいたのは意味深ですね。
SMの話を熱く語っていた平尾さんの姿を思い出していたのでしょうか?

まだこの時点では平尾さんとのデートごっこは、娘さんにも軽く
話せる話題だったのですね。
これがいつから娘さんにも本当の事を言えなくなるのでしょうか?

もし矢部さんが二人のデートの様子を覗くとしたら、その場所は
このカフェになりそうな予感がします。

続きを楽しみにしています。


[138] Re: 覆水盆に返らずB  :2025/10/26 (日) 02:26 ID:7rPJjKBA No.204959
再開を うれしく思います。マイペースで、自分の気分で、書いてくださいね。つまらない文句を言うバカは、無視しましょうね・・・・

[139] Re: 覆水盆に返らずB  西門 :2025/10/26 (日) 19:38 ID:Qr.pLiO2 No.204986
麻里奈さんの「いいねー なんかそういうの・・・ ちょっとした
イイ話だよね」の言葉に対する由紀さんの「でしょ・・・」の返事に
矢部さんに頼まれてデートをしていると言う当初の二人のデートの目的が消えて
由紀さんが平尾さんとのデートに心を開き出してる雰囲気が伝わって来ますが、
西門の思い過ごしでしょうか?
矢部さんが、感度の高い観察眼で由紀さんの細やかな言葉使いや平尾さんとの逢瀬を
思い出してるような眼差しから由紀さんの心情の変化を感じとられていることが
伺えて興味深く読ませて頂いてます。
最近は由紀さんだけでなく矢部さんご自身も既にマゾだと気づかれていたのかなと
思いながら読ませて頂いてます。


[140] Re: 覆水盆に返らずB  けんけん :2025/10/26 (日) 21:09 ID:03QvZ.oU No.204988
更新ありがとうございます。娘さんの反応が良くて、奥様と平尾さんとのデートを後押ししてる感じがします。奥様が、平尾さんに対してもっと喜んでもらおうとしているような流れになりそうな予感です。矢部様には
よろしくない展開に
なりそうな気配ですね。続きお待ちしてます。

[141] Re: 覆水盆に返らずB  もう60ですが :2025/10/27 (月) 06:23 ID:Pe/8oEMo No.204997
奥様のお嬢さんへ、平尾さんと来たことある、発言防衛本能、なんか平尾さんと2人でいるところを見つかっても、ちゃんと言い訳出来るという、作戦に感じてしまうのは、考え過ぎですかね?
 うちの妻も40代半ばに、〇〇さんと仕事(近地出張)の帰りに何回か行ったことある。
と言い、2〜3回目以降は体の関係になっていました、私は仕事だからと疑いもしなかったのですが、ふと奥様とお嬢さん(私にも娘います)の会話で思い出してしまいました。
続きドキドキしながら楽しみにしています。


[142] Re: 覆水盆に返らずB  たかし :2025/10/27 (月) 15:35 ID:HCYdR8Kk No.205011
長文の更新ありがとうございます。
奥様の平尾氏との様子を知る支配人らしき男性の登場でつづく、とは!
どのような会話になるのでしょうか?
「仲の良いご夫婦だと思っていました」なんて言葉でしょうか?
それとも矢部さんに気遣って別のセリフでしょうか?
次の更新も楽しみです。


[143] Re: 覆水盆に返らずB  倍胡坐 :2025/10/27 (月) 16:57 ID:.BdCXj2. No.205013
由紀さんとしては、平尾さんとのアレコレを
麻里奈さんとのいつもながらの会話の中に少しずつ混ぜ込むことで、
平尾さんとのデートが疚しいものではないということを言いたげですね。

それがそのとおり健全なものなのか、
これから起こるかもしれないことへの予防線(カモフラージュ)なのか、
由紀さんのホンネを是非とも知りたいところです。

それと、スーツ姿の支配人らしき男性が大いに気になるところですね。
平尾さんの知人?ひょっとしたら、平尾さんの趣味友?

ますます目が離せなくなってきました。



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