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覆水盆に返らずB

[1] スレッドオーナー: 矢部 :2025/07/10 (木) 00:07 ID:dlh6H.Uk No.201946
パートBからの投稿になりますが、
前作の「覆水盆に返らず」「覆水盆に返らずA」は
こちらのサイトの「他の男とセックスしている妻」に投稿済です。

スローな展開で、物足りなさすぎる内容ですが、
読者の皆様、よろしくお願い致します。

*****

「あのへんやな・・・」

ふと漏れた私の声に反応したのか、由紀も口を開きました。

「あっ トオサン、洗濯物と炊飯器のスイッチ お願いね」

彼女の声は、高ぶっていたとか、震えていたとかではなく、
いつもの日常の中のお願い事を、淡々と口にしているような
普通のトーンでした。

数分後には、彼女も面識のあるとはいえ、私の親友とはいえ、
いちおう「男」と会う、いちおう「デート」に臨むような
雰囲気は、彼女からは微塵も感じられなかったのです、。

(後席に座っていたから、余計にそう思えたのかもしれませんが)

むしろ私のほうから、彼女がこれから平尾とデートすることを、
あらためて知らせるようなことを言ったのでした。

「じゃぁ、あいつの気晴らし・・・気分転換 させてやってな」

あくまでも平尾のためを強調する「ずるい」私に戻っていました。
平尾のことを持ち出すことで、自分の感情を隠そうとしたのです。
というか、そうでも言わないと、他に言葉が浮かばなかったのです。

「ん〜 まぁ、難しいかも・・・ わかんないよ」と由紀。

その声も、どこか“あっけらかん”としていたのを覚えています。

車はロータリーに入り、駅前(裏口)に着きました。

「じゃ〜 行ってくる」

これから電車に乗って 街まで買い物に行く、そんな軽い感じで
私に言うと 「ふぅっ」と軽く一息吐いて 由紀は車を降りました。

後席のスライドドアが閉まる間際・・・

私は言葉にできない絶望感と無力感に襲われ、
そして血圧までも上がっていたと思います。

取り返しのつかないことをしてしまった感覚。
しかし一方では ここにきて とても気持ちが昂っていたのです。

私はその場で、彼女をずっと目で追うまでもなく、
そのまま車を走らせてロータリーを回り、メインの通りから、
一本筋に入ったところにあるコインパーキングに車を停めました。

そしてすぐに下車して、小走りにもう一度メイン通りまで出て、
そこから数十メートル先にある、先ほどの駅裏ロータリーを、
街路樹や立て看板、広告旗の陰から、じっと見つめていました。

なぜ私は 牧里駅の「裏口」を待ち合わせ場所に選んだのか?
二人が会うシーン、大袈裟ですが「寝取られ」「妻の貸し出し」、
背徳的な現場を“この目で見てみたい”と素直に思ったからです。
こんな歪んだ願望は こちらのサイトによる影響も大きかったのです。

その願望を叶えるために、事前に地図情報を調べてから、
この場所を選んでいたのでした。

・駅裏口には、駅に近い場所にコインパーキングが数か所あって、
 休日でも比較的空いている
・ロータリーからメイン通り沿いにはコンビニやドラッグストア、
 不動産屋や飲食系のお店等があり、それなりに人の往来もある。
・車道に沿った歩道に街路樹があり“隠れ蓑”になってくれる。

つまり、私の浅はかな計算によるものだったのです。

ただその日、実際にこの状況になってくると、欲望や願望などは、
焦る気持ちに打ち消され、どうでもよくなっていたのですが・・・。

少し離れていても、由紀の姿はすぐにわかりました。
落ち着いたクリーム色のシャツに、ダークブラウンの綿パンツ。
姿勢良く立ち、視線も逸らすことなく前を見据えていました。
これから自分を迎えに来る“男”を待っていたのです。

当然ですが、そんな彼女の視線の先に、私は いませんでした。
もしかしたら、たとえ目と鼻の先にいても、彼女の意識の中に
私はもう存在していないのでは? 
被虐的な感覚に焦りながらも、ドキドキしながらその瞬間を
心待ちにしているという複雑な気持ちでした。

そして時間ぴったりの 13:30・・・

白いアウディクーペがロータリーに滑り込むように現れました。
間違いなく平尾でした。

由紀は、目の前に停車した高級車に向けて軽く頭を下げると、
迷いもなく助手席のドアを開けて乗り込みました。

その時、遠目に見ていた私には、彼女の口元が、
わずかに緩んだように見えたのです。
嬉しそうな笑顔だったのか、単なる挨拶の笑顔だったのか、
もちろん離れたところから、はっきりとは分かりませんでした。
ただ 彼女が“拒んでいない”事実だけは鮮明に目に映りました。

しかし、よくよく振り返って考えてみると、
このデートが実現するに至る ここまでの経緯からすれば、
由紀が拒んだり不機嫌になることは ないのですけどね・・・

それでも言いようのない焦りと嫉妬、理性では「冷静に」と
思っても、つい数分前まで一緒にいた愛妻が、急に遠い世界に
行ってしまった、自分だけが置き去りにされた、
そんな感覚になってしまったのです。

由紀を乗せたアウディはロータリー出口の信号で止まりました。

(追いかけよう)

気づけば、私は走っていました。
パーキングに飛び込み、ドアを開けシートに滑り込みました。

(こんなこと してはいけない・・・)

頭では分かっていたのですが、
どうしても、あのまま“彼女が連れ去られてしまう”気がして
ならなかったのでした。

焦りから精算機前で財布から小銭がなかなか取り出せず、
私は紙幣を押し込み、おつりの硬貨数枚を取り損なって、
地面に散らばらせてしまいました。

そのすべてが、もどかしい時間の無駄に思えたのです。

とにかく私は急いで車に乗り込みました。

もう、見えなくなっているかもしれない。
いや、もしかしたら まだ追いつけるかもしれない。

思いが交錯する中、メイン通りに出ることはできましたが、
視線の先には、すでにアウディの姿はありませんでした。

わずか数分、いや数十秒の差だったのか・・・
それだけの違いなのに、私は二人に“置いていかれた”という
思いに囚われました。

車内に静寂が満ち、茫然とした私はアクセルを踏むこともできず、
ただハンドルに手を添えたまま、その場でしばらく深呼吸を
繰り返していたのを覚えています。

自宅への帰り道の記憶は、ほとんど残っていません。

いつも通る住宅街の道や交差点も、風景としては映っていたはず、
でも、どのように帰ったのかわからないまま、
とりあえず自宅に辿り着き、玄関の扉を開けたとき、
そこには、「音のない空気」が、ひっそりと漂っていました。


[2] Re: 覆水盆に返らずB  愛妻の夫 :2025/07/10 (木) 06:43 ID:YirUbVck No.201947
そうじゃないかと思ってました。お好きな様にお書きください。

[3] Re: 覆水盆に返らずB  矢部 :2025/07/10 (木) 15:50 ID:dlh6H.Uk No.201949
帰宅はしたものの、当然ですが由紀の気配がないこと、
流し台の脇に置かれた、使いかけのティーカップ。
リビングテーブルの上に無造作に置いてある今朝の新聞。

いつもなら 気にせず見逃していた日常の小さな光景なのに、
その時だけは、「由紀がいなくなった証拠」のように、
私の心に深く刺さったのでした。

リビングに戻っても、もちろんテレビは消えたまま、
私は何か音が欲しくて、リモコンを手にしたのですが、
指は結局、ボタンに触れず、膝の上に降ろしてしまいました。

ソファに深く腰を下ろして、ふと ロータリーで立っていた
由紀の外見を思い浮かべていたことを覚えています。
身に着けていたイヤリングと腕時計、そしてローファーは
特に印象に残っていました。

なぜ、いつもと違って“ちゃんとしたもの”を選んでいた?
そう考えた瞬間、私は自分の胸のあたりに、
軽く押しつぶされるような痛みが広がったのでした。

こんなときは、大袈裟に考えてしまうものなんですね、
いや、もっと自分自身を深掘りすれば・・・ 
由紀は私のもとから完全に去った、ように思いたかった、
そんな気分に浸りたかった、悲劇のヒーローになりたかった、
という気持ちがあったのかもしれません。

とにかく、まるで「戻ってこないもの」に手を伸ばしている、
そんな虚しい気持ちに溺れていたのでした。

そのとき、不意にスマホから「ピコン」という控えめな通知音が
鳴りました。
耳慣れた音でしたが 心臓が一瞬、跳ね上がるような感覚でした。

由紀?

そんな期待が、咄嗟に心を占めていました。

私はすぐにスマホを手に取り、画面をスワイプしました。

そこに表示されたのは、
「○○電機 週末特売セールのお知らせ」という、
何の感情も込められていない無機質な自動配信メールでした。

「えー? ああ・・・」

思わず、本当に声を出したのを覚えています。
誰に聞かれるわけでもないその独り言が、
リビングの静けさに 妙に響いて余計に空しく感じられたから。

それと、残り香のように、あのフローラルな香りだけが、
まだ室内に漂っているような、そんな気がしました。

壁に掛かったリビングの時計に目をやると、
まだ14:20過ぎ・・・
由紀が帰ってくるまで4時間以上もあることを、
あらためて知ったのでした。
由紀がアウディに乗ってから、もっと時間が経っていた気が
していましたが・・・ まだ1時間も経っていないとは。

(マジ?・・・)

時間の流れだけが、いつもとまったく噛み合っていない、
そんな気がしていました。

(まだ? たったこれだけしか経ってない?・・・)

二人を追っかけようとしたり、独りで運転して帰宅したり、
そして帰宅後も“何もしない時間”を過ごしている間にも、
由紀と平尾はどこかで、確実に“なにか”を共有している?

そう思うと、心の奥がじわじわと焼けるような、
焦りと苛立ちと、そして抗えない嫉妬に近い感情が
湧き上がりました。
同時に 私は、これまで経験したことのない喪失感と無力感で、
逆に、下半身が なんとも言えない感覚を纏いながら、
昂っている、いや 昂ろうとしていたのかもしれません。

私は、再びソファに深く身を沈めたまま、
天井の一点を見つめたまま、この感覚に酔っていたのでした。


[4] Re: 覆水盆に返らずB  進一 :2025/07/10 (木) 16:52 ID:59772BR. No.201951
お待ちしていました。
矢部さんの心情がよく分かる内容で、私もいたたまれなくなります。


[5] Re: 覆水盆に返らずB  エムエヌ :2025/07/10 (木) 20:27 ID:kOoPchR6 No.201953
「他の男とセックスしている妻」にも上げましたが

名作は死なず
矢部さん エロではなくてもいい ここ「なんでも体験告白」へ移行されました
(パチパチパチ)
思う存分書いてください
応援しています
(私はこの作品 結構興奮していますが)
でもあまりに誹謗中傷が多いのは文才がありすぎて
嫉妬ですかね


[6] Re: 覆水盆に返らずB  しげぞう :2025/07/10 (木) 22:39 ID:hmzosy/Y No.201958
良かった。
頑張って下さい😊


[7] Re: 覆水盆に返らずB  小太郎 :2025/07/11 (金) 06:51 ID:PhOsquFA No.201962
矢部さん、再開どうもありがとうございます。
いよいよ由紀さんのデートが始まりましたね。
続きを楽しみにしています。


[8] Re: 覆水盆に返らずB  :2025/07/11 (金) 09:13 ID:NYUWDFk6 No.201963
楽しみにしてます
自分のペースでゆっくり書いてくださいね


[9] Re: 覆水盆に返らずB  倍胡坐 :2025/07/12 (土) 19:11 ID:7p8sC7eQ No.202009
矢部さん、お待ちしておりました。

こちらでも引き続き応援しています。
どうか最後までよろしくお願いします。


[10] Re: 覆水盆に返らずB  コーザブロー :2025/07/12 (土) 22:56 ID:kan2Os86 No.202011
初めて投稿しますが、すべて読ませていただいております。
よろしいですねぇ、「矢部ワールド」にドップリと浸ってます。
矢部さんのお心持ち、穏やかざる様子が伝わりますよ。
由紀さん平尾さん、お二人が脳みその中を静かに駆け巡ってますね。
楽しみです。


[11] Re: 覆水盆に返らずB  矢部 :2025/07/13 (日) 00:26 ID:u5W77EqU No.202013
コメントを書いてくださった皆様

こちらでも投稿を読んでくださってありがとうございます。
そして、とても励みになるコメントをありがとうございます。
勇気を貰っています。
筆も展開も遅いのですが、よろしくお願い致します。

少しですが、続けます。

******

静かなリビング。
テレビは相変わらず消えたまま。
スイッチをONにしようか、と思ったのですが、
リモコンを握る気力さえ起きなかったのを覚えています。

頭の中はずっと由紀と平尾のことしか考えられませんでした。
今、どこで? 何を? どんな表情で、どんな話を?
手を繋ぐとか、ある? まださすがにそこまでは、ない?

こんな妄想までしてしまうくらいなら、
二人が会うシーンなど、隠れてまで見なければよかった、と
正直 後悔をしていました。

私は他の別のことを考えられないくらいまでに、
心配性というか 小心者というか 臆病者だと自覚しました。
自分で蒔いた種で、ここまでこんな気持ちになってしまうのは、
まさかの想定外でした。
それと同時に、ここまで弱気になっていた私だからなのか、
喪失感とか無力感というのを、この時 はっきりと感じました。

居ても立っても居られない気持ちになっていた私は、
何か閃いたとか、何かを思い出したとか、そんな気持ちが
あったわけではなく、もちろん何かをするわけでもなく・・・
でも、由紀の気配を少しでも感じてみたくなって、
私は ふっと立ち上がり、由紀の寝室に向かったのでした。

由紀の寝室・・・

30年近くも寄り添っている、妻の、妻だけの「部屋」
ではありますが、いちおうはプライベート空間ですよね、
胸騒ぎは当然していました。

前回は箪笥の中の彼女の下着を確認する、という
歪んだ気持ちがあって、寝室に入ってしまったのです。
しかし今回は覗いてみようとか、探ってやろうとか、
そんな気持ちは一切ありませんでした。

本当になんとなく何かに背中を押されるように、
ドアノブに手をかけたのでした。
それでも、誰もいないのはわかっていても、
やっぱり罪悪感はありましたが。

(※ ちなみに皆さんはいかがですか? 
 奥様の個室に入る時、少しでも罪悪感がありますか?)

臆病者の私、いや そう自覚している私は、音を立てぬように
ドアをそっと開けました。

8畳程度の部屋、カーテン越しに陽射しが差し込んでいました。
石鹸?とフローラル系の香水の匂い・・・
こういうのは50代とは言っても“女性”を感じさせますよね。

私は由紀の寝室に入って、全体をゆっくりと見渡しながら、
これまでのモヤモヤとした 表現し難い気持ちが、
少しずつでも落ち着いてきていたのでした。

箪笥・ベッド・書棚・ドレッサーなど・・・
私の目に映ったのは ごく普通の特別感のない妻の寝室でした。

ドレッサーの上に、リップ、コンパクト、ハンドクリームなど
小物たちが整然と置かれていました。
そしてもう一つ・・・
そのドレッサーの上に、ドラッグストアのレジ袋に入ったまま、
無造作に置かれた“何か“が目に留まったのでした。


[12] Re: 覆水盆に返らずB  ざるそば :2025/07/13 (日) 00:56 ID:ma3Ci1io No.202014
詳細な描写がかえって生々しくてエロくてたまらないです。
今のペースでよいので寝取られるまで続けて欲しいです。
是非是非お願いします。


[13] Re: 覆水盆に返らずB  小太郎 :2025/07/13 (日) 01:20 ID:y6ctE/LU No.202015
いざ事が始まってしまうと、デートごっことは言え
由紀さんと平尾さんの二人だけで時間と空間を共有してるのを
矢部さんは後悔しながら、痛感していたのでしょうか?

ドレッサーの上に置いてあるドラッグストアのレジ袋の中身は?
まさかコンドームだったのでは?

続きを楽しみにしています。


[14] Re: 覆水盆に返らずB  進一 :2025/07/13 (日) 04:02 ID:p17mfrQA No.202016
ドラッグストアのレジ袋入ったままの「何か」が目に留まったのですね。
奥さんの由紀さんは矢部さんが来る事を見越して、わざと無造作に置いたものだと思います。
レジ袋の中には何が入っていたのでしょうか?
凄く気になりますね。
まるでテレビドラマのような展開で次回が待ち遠しくなります。


[15] Re: 覆水盆に返らずB  :2025/07/13 (日) 14:42 ID:AC4RLSE. No.202027
初めまして。
パート1から読みました。
全部共感出来る展開です。
妻のタンスや下着の話はドンピシャで気になる話です。
これからもお願いします。


[16] Re: 覆水盆に返らずB  進一 :2025/07/16 (水) 18:27 ID:A/GqQ/r2 No.202081
最初から読み直しました。
アウディに笑顔で乗り込んだ由紀さんのデートがスタートしましたね。
この先の展開が待ち遠しいです。
お待ちしています。


[17] Re: 覆水盆に返らずB  矢部 :2025/07/17 (木) 17:46 ID:jiluIkd6 No.202106
皆様、激励や感想のコメント、本当にありがとうございます!
じれったい展開で申し訳ございません。

******

ドレッサーの上のレジ袋の位置は 絶対に変えないように、
そして袋自体の形状も皺も弛みも、できるだけそのままに、
私は慎重に袋の取っ手を親指と人差し指だけで摘まみました。
そして、恐る恐る 中に入っていたものを確認したのです。

レジ袋に入っていたのは、未開封のパンストだったのです。

→サイト的にはコンドーム、アダルトグッズ、セクシー下着が
 正解なんですが・・・ 期待外れで、すみません;(汗)
 というか、正解の方は いらっしゃいますか?

包装紙(パッケージ)の透明な窓越しにベージュのナイロン地が
透けて見えました。
国内メーカー品で、何足組とかセットものではなく単品でした。
この包装紙だけを見ると、エレガントで特別感があるように
思えたのでした。

この包装紙(パッケージ)のままのパンスト・・・
何もない普通の日に たまたま目にしたとしても、
私は特に何も感じることは、なかったはずです。 
(もちろんストッキングは嫌いではないです・・・;;)

しかし この日に限っては、包装紙を目にした瞬間から、
私は触れてもいないのに、指先にその質感が伝わってきたのです。
彼女の脚を綺麗に魅せる、薄く、柔らかく、肌に密着している、
あの独特の生地の感覚が。

私は、開封して手に取って見ることは、できなかったのですが、
自然に疑問が膨らんできたのでした。

こんなものが、なぜ そこにあるのか? 
なぜ 彼女は、それを買おうと思ったのか?
足首から太腿にかけて、肌を滑るその感触を、由紀が
平尾を意識しながら買ったのだとしたら・・・?

その問いをきっかけに、私の頭には“あらぬ妄想”しか
浮かばなかったのです。

※皆様は そんなことはないですか? 私だけが異常?(汗)

私の脳裏に、浮かんだ ひとつの情景・・・
彼女がクローゼットの前で、スカートを一度は手に取った姿。
鏡の前で、このストッキングを手に取り 思案する姿。
裾のラインと色を、じっと見つめて迷っている、その横顔。
私は、酷く鮮明にそれを想像していました。

由紀は穿こうとしたのか? 平尾のために?

この日の由紀は、パンツスタイルで靴下を穿いていました。
いつものようなカジュアルな装いで平尾に会ったのです。

ということは・・・
このストッキングは、結果として「穿かない選択」が、
されたわけで、そう思うと私は、わずかでも気が楽になった
気がしました。

彼女は“あえて”ストッキングは使わなかったのですが、
そもそも なぜ、こんな物を用意していたのか?

自分の中に湧き上がるのは、怒りでも、悲しみでもなく、
興奮でした。

他の男のために、装いを思案する妻。
私に見せなかった一面が そこに存在していた、という事実。

そして今頃、由紀はアウディの助手席で、足を組み替え、
平尾の方に身体を少し傾けて、笑っているかもしれない。
レストランのテーブル越しに、平尾にさりげなく手を伸ばされ、
驚きながらも拒んでいないのかもしれない。
決して見ることのできないプロセスだけが、私の中に生々しく
映し出されていたのでした。
そして彼女は今、この部屋に、この家に、私の隣にいない現実。

「共有されていない時間」が、まるで裏切りのようになって、
私の胸を焼き、その熱が下半身に流れていくのがわかりました。
そして「ここにいない由紀」が、これまでで一番、
愛おしく思えたのです。

私は冷静さを失い、妄想に耽る自分に、倒錯した昂ぶりすら
感じていました。
そしてそれを喜び、受け入れている自分に酔っていたのです。

(俺って最悪やな)

そう思ってしまう自覚がありながらも、私はこの感情に
身を預けたかったのです。
今 思えば、これも「寝取られ」の醍醐味のひとつだったのかも
しれませんね。

ふと、私は由紀の部屋に掛かる時計を見上げると、
由紀が戻ってくるのは、まだあと3時間以上も先なのが
わかりました。

その時間の長さすら、私は被虐的な絶望と同時に熱い興奮を感じ、
由紀のベッドの端に崩れ落ちるように腰を下ろしてしまったのを
覚えています。

ちなみに私の頼りない砲身は、血が少しだけ集まり始めていました。
でもまだ、“眠り”と“目覚め”の間、半熟状態でした。

(それでも これまでのことを思うと かなりの進歩でしたが…)


[18] Re: 覆水盆に返らずB  倍胡坐 :2025/07/17 (木) 18:53 ID:rNbq9L46 No.202107
矢部さんらしい投稿ですね。
読者として、ホッとしているのも事実です(笑)

由紀さんは由紀さんなりに、
平尾さんとの「ごっこ」をシミュレーションしたのでしょうね。
何ごとにつけ慎重な由紀さんであるがゆえに、
初めての今回は無難な選択をしたということでしょうか。

手つかずのストッキングではありますが、
由紀さんが想定している「ごっこ」が、
男と女の成り行きを想定内としているものだったのかも知れませんね。

いずれにせよ、由紀さんなりのこの探りがどんな展開になっていくのか、
読者として、おおいなる楽しみになってきました。


[19] Re: 覆水盆に返らずB  小太郎 :2025/07/17 (木) 23:05 ID:6M2y0Lec No.202110
さすがにコンドームはまだ早かったですね。

それにしても、由紀さんはデートの装いをパンツルックにするか
スカートにパンストの組合せにするか、迷っていたのですね。

由紀さんの立場から考えたら、まだ初回だし今日は控えめに
パンツルックで抑えめにして、これから仲良くなったら
スカートにパンストにしようかな、などと思っていた
のかもしれませんね。

もしそうなら、このパンストは、由紀さんと平尾さんの仲が
深まったことを示すキーアイテムになるかもですね。

続きを楽しみにしています。


[20] Re: 覆水盆に返らずB  ざるそば :2025/07/18 (金) 23:45 ID:akTHSRLk No.202122
新しいストッキングを買ったことだけでも興奮材料ですね。
今後平尾さんの前で履くことがあるのでしょうか?
その変化の過程が大変気になります。


[21] Re: 覆水盆に返らずB  進一 :2025/07/21 (月) 07:33 ID:5wKrk5OM No.202198
平尾さんとの初デートの由紀さん、平尾さんはどんなデートプランなのでしょうか?
由紀さんは平尾さんの求めに応じてしまうのか気になります。


[22] Re: 覆水盆に返らずB  ガンツ :2025/07/21 (月) 09:28 ID:fIkzbUXY No.202200
いつも楽しみにしています。
寝取られについては女性にはなかなか理解できない性癖だと思いますが、
普通の奥さんの反応はやはりこんな感じなのだろうと思い
この奥さんがどうなっていくのか
エッチな方向に行っても行かなくてもハラハラして興奮します。


[23] Re: 覆水盆に返らずB  TXT :2025/07/21 (月) 14:11 ID:it63F5eo No.202206
ほかの物語みたいなあり得ない尻軽女とすぐやるオトコの話じゃないから
逆にエロさがあるんですねー

わかって きましたよ


[24] Re: 覆水盆に返らずB  矢部 :2025/07/21 (月) 20:23 ID:19n7RMKs No.202219
皆様、ダラダラとした拙作にコメントを送ってくださり
本当にありがとうございます! 
とても励みになります。
あいわらず、じれったい展開で申し訳ございません。

******

ひとしきり、由紀の寝室で悶々とした時間を過ごした私。

気だるさと切なさと寂しさ、一方でどうしようもない昂ぶりを
抱えたまま、平尾と会う直前に頼まれていた洗濯物を取り込み、
再びリビングに戻ってきました。

洗濯物の中には、当然、由紀の下着もありました。
ベージュ色の大ぶりで実用一点張りのショーツ(デカパン)と、
同じく装飾のない無表情なブラジャー。
色気とは無縁の、見慣れた生活感のある下着でした。

時間が気になって、時計ばかり見てしまうのですが、
見たところで、時の流れが早まるわけでもなく、
かえって苛立ちだけが募っていくのを感じました。

「ビールでも飲むかー・・・」

何か音が欲しくて、わざと独り言を口に出してみました。
私は冷蔵庫を開け、冷えた缶ビールに手を伸ばしたのです。
が、途中で その手を止めてしまいました。

もし何かあって、由紀から「迎えに来て」と連絡がきたら?

いや、そんなことあるはずない、と頭ではわかっているのに、
ゼロではないかも、という希望が、冷蔵庫を閉じるという
判断をさせたのでした。

そして同時に ふと思い出しました。

(そういえば・・・ 昼メシ、食ってなかったな)

これまでの時間、空腹を感じる余裕もなかったのですが、
思い出した途端、じわりと空腹感が込み上げてきました。

とりあえずお湯を沸かしインスタントコーヒーを淹れ、
棚にあった安物の菓子パンをもぐもぐと頬張りながら、
テレビのリモコンを手にしました。

(由紀は、平尾と一緒に昼メシ 食べたのかな?)

(どこで? 何を? どんな表情で?)

そう考えた瞬間、パンの味が分からなくなっていました。
その時のことを振り返ると 視覚だけではなく味覚までもが
侵されていたのですね。

テレビをつけても、バラエティ、スポーツ、旅番組も、
何ひとつ頭に入ってきませんでした。
新聞を広げても、活字すら拒否をしているような、
そんな気分でした。

私はソファから立ち上がって、何をするでもなく外に出て、
ぼんやりと自宅前を眺めていました。

「どこ 行ってるんや・・・」

言葉にしたところで答えが出るわけでもないのですが、
通り過ぎる宅配のバイクが、生活感を引き戻してくれて、
私はまた家の中に戻りました。

少し前に由紀の寝室で感じていた昂ぶりも、
このように現実に触れたことで、不思議と落ち着きを
取り戻しつつありました。

(やっぱり、こういうのは俺には無理・・・)

(こんなことになるのなら、もうやめたほうが・・・)

最初は、大人の刺激になると思っていたし、
こちらのサイトに投稿されている小説のように、
テンポ良くエロな展開を楽しめるぐらいに思っていました。

もちろん私は、由紀のことが嫌いになったわけではないし、
寝取られてほしいと思っているわけでもありません、
むしろ好きすぎるゆえに、ひとりの女として、
他の男の目に留まるということに興奮していたのです。

しかし今は、独りになった 惨めさや辛さや寂しさ しか
感じていませんでした。
いかに私が小心者であった、ということでしょうかね。

そんな思いを振り切ろうと そして時間潰しに と、
私はサンダル履きのまま、フラフラと家を出ました。

私が向かったのは、自宅から歩いて10分もかからない、
メイン通りに面しているショッピングモールでした。
同じ敷地には、24H営業のスーパー、コンビニや焼肉屋、
回転すし店、安くて旨いうどん屋、クリーニング店、
携帯電話ショップ、フィットネスジムなどもあります。

私は、ベンチに腰掛けて、辺りを見渡していました。
(小汚いオッサンに見えたかもしれません;;)
私は日曜日午後の賑わいの中、
人間観察 と言えば聞こえが良いのでしょうが、
単なる時間潰しと気分転換をすることしか、
私の頭の中になかったのでした。

その日に限ってなのか、私だからなのか、
特に目に付いたのは、学生カップルや子連れの若い夫婦
ではなく、私たちと同世代のシニア夫婦の姿でした。

笑顔で会話を交わしながら歩く夫婦。
黙ったままでも、自然と同じ歩幅で並んで歩く夫婦。
奥さんが先導し旦那さんが従うように後ろを歩く夫婦。
当たり前のように存在する、それぞれの関係性を
眺めていると、ふと、私の頭の中にある問いが
浮かんだのでした。

(由紀と平尾も、あんなふうに見えるのかな?)

それを思っていた直後、まったく想定しなかった
“ある設定”が、唐突に脳裏をよぎったのでした。

これまで私は、単に親友平尾のためにという大名目と
愛妻由紀の装いの変化を期待しての、無理やりのデートを、
「ごっこ」としてプロデュースする立場で、
なおかつ私自身もNTR的状況になることに興奮して、
その刺激でED回復を狙っていたのですが・・・

(もし、二人が本当に夫婦になってしまったとしたら?)

と、私は初めて「夫婦」とか「再婚」という設定を
意識したのでした。

ただ、そうなる理由や筋道なんてありませんし、
あくまでフィクションに過ぎず、現実味がない話のはず、
それでも、そのありえないシーンが 妙にリアルに
感じられてきたのです。
私は背筋にぞくりと冷たいものが走りました。

もちろん現実に、そうなることは簡単ではありません。
もしそうなるのなら、離婚届を提出しなければならず、
会社や両実家 そして子供たちへの報告、
財産分与や年金分割などといった面倒な手続きや処理も
山ほどあります。

それでも小心者の私は、ゼロではないという可能性のほうを
どうしても気にしてしまい、逃れられなくなっていました。
ありえないはずのイメージが、脳裏にべったりと張り付いて、
どうしても逃がしてくれなかったのです。
いや、わざと逃げないようにしていたのです。

その時の私は、自分で自分を追い詰め、その苦しみすら
楽しんでいるような、精神的マゾヒストになっていたのです。

それに加えて、その感覚に、どこかでゾクゾクするような
奇妙な快感に包まれました。

「もっとイチャイチャして」「もっと俺から距離を置いて」
そんな歪んだ願望が心の奥に湧いてきていたのです。

そうなると同年代の夫婦が、すべて平尾と由紀に見えてきて、
胸の奥のゾクゾクは、やがてドキドキへと変わり、
さらに下半身へと血が集まりはじめているのが、
自分でもはっきりとわかりました。

ひとときの興奮と刺激を堪能した私は、家に戻りました。
時計は、ありがたいことに? 18時少し前を指していました。

(あと30分もすれば、由紀が帰ってきてくれる・・・)

私は炊飯器のスイッチをONにして、ソファに腰を下ろし、
テレビのスイッチをONにすると、「ちびまる子ちゃん」の
オープニングの歌がやけに賑やかに楽しそうに
耳に入ってきたのを覚えています。

何かが変わって帰ってくるのか?
何も変わらず、いつもの由紀が戻ってくるのか?

その時・・・

「ただいま〜ぁ!」

(え? 早い・・・)


[25] Re: 覆水盆に返らずB  小太郎 :2025/07/21 (月) 21:40 ID:jgsqx.0g No.202220
奥さんが出かけてから、矢部さんは色々な妄想に取り憑かれて
精神的なMにまでなっていたのですね。
予定より早く帰宅した由紀さんから、どのような話が出てくるのか?

続きを楽しみにしています。


[26] Re: 覆水盆に返らずB  倍胡坐 :2025/07/22 (火) 06:28 ID:Wbqsg2Us No.202228
これまでも、そしてこれからも矢部さんの妻。
そんな意識しかなかった由紀さんを焚きつけて、
いざ、その「ごっこ」がスタートしてみると、
矢部さんの心に、後戻りできなくなる恐怖や歪んだ願望が
入れ代わり立ち代わりで去来したご様子。

この時間の中でいろいろな思いが昇華され、
矢部さんの心に胎動していた悪魔が
目覚めた瞬間だったように思います。

由紀さんが、その悪魔とどのように向き合うのか
まだ先の話なのかも知れませんが、
興味深く拝見したいと思っています。


[27] Re: 覆水盆に返らずB  進一 :2025/07/22 (火) 13:05 ID:qauNq6Ho No.202239
予定時間より早く帰って来た由紀さん。
平尾さんは由紀さんを早く帰らせて矢部さんを安心させたかったのでしょう。
どのようなデートだったのか報告が楽しみです。
おそらくですが、平尾さんは由紀さんと次のデートを約束しているのではないでしようか。
あわよくば、矢部さんが出勤している時に由紀さんはパートを休んで平尾さんとデートするのかもしれませんね。
その時はストッキングを履くのでしょう。


[28] Re: 覆水盆に返らずB  タロウ :2025/07/23 (水) 09:54 ID:nTrC/Cb. No.202265
最初から読ませて貰いました。
リアルで現実だから面白い。
アルアルの場面が面白いです。
ゆっくり楽しみます。
ガンバって下さい。


[29] Re: 覆水盆に返らずB  矢部 :2025/07/25 (金) 15:59 ID:fm1CrgoQ No.202309
明るく軽やかな由紀の声が 玄関越しに届いてきました。
いつもと変わらない・・・
少なくとも、私の耳にはそう聞こえました。

もちろん私はすぐに立ち上がり、かけたのですが、
そこで踏みとどまりました。
出迎えに走りたい衝動に駆られながらも、
ぐっと堪えて リビングでじっと待つことを選んだのです。
こんなときこそ、あくまで自然に普段通りの態度で、と
自分に言い聞かせていたのです。
(単に虚勢を張っていただけです;;)

リビングに入ってきた由紀、
その姿を見た瞬間、私は拍子抜けしたような感覚を
覚えました。

(何も変わっていない・・・)

メイクや香りに違和感があるわけでもない。
表情に翳りがなく視線が泳いでいるわけでもない、
どこも無理をしている様子は感じられず、
あまりに自然体の、いつもの由紀だったのです。

期待と不安を抱え 独り悶々とあの長い時間を乗り切った
私に対して、由紀の あっさりとした姿を見ると、
正直、残念な気持ちになってしまったのを覚えています。
勝手なものですよね・・・(汗)

その想いが 少し皮肉混じりの言葉となり口から出ました。

「おかえり・・・ 早かったやん。 もっと盛り上がって、
 帰りも遅くなるんかな、って思ってたんやけど」

さも驚いたように言ってみました。
芝居がかっていると感じながらも、余裕のある自分を
装おうとしていたのかもしれません。

由紀は、そんな私の言葉を軽く受け流すように、
穏やかに笑って返してきました。

「ううん、平尾さんが “遅くなると悪いから”って。
 渋滞もなかったし、意外にスムーズに帰ってこれたから」

口調も自然で、身振りも穏やかで、どこか物足りなささえ
感じるほどでした。

「そっか、残念やったな。 もう少しゆっくりしても、
 よかったのに」

そんな私の空回り気味の軽口など気に留める様子もなく、
由紀はレジ袋を手に持ち、笑顔で言いました。

「これ 買ってきたし、晩ごはんの時に一緒に食べよ?」

見覚えのあるレジ袋・・・
中には、たこ焼き(10ヶ)が入っていました。
それは、私がフラフラと時間を潰していた
ショッピングモールの中にあるお店のものでした。

(うそやろ・・・)

数分前、私も同じ敷地内でベンチに腰掛けていたのです。
タイミングさえ合えば、ふたりに鉢合わせをしていた、
ばったり出くわしていた、かもしれなかったのです。

彼らと同じ場所にいた可能性があるという事実に、
心がざわつき始め、ついさっきまで目にしていた
シニアカップルのシーンに、再び 由紀と平尾を
イメージしていたのでした。

「え? 平尾と行ってたん?」

「あっ、そこまで送ってくれたから・・・
 で、そこで買ったんだけど・・・」

「ふ〜ん (そういうことか) 」

私はソファに座り直し、テレビに視線を向けました。
とりあえず画面は映っていましたが、
中身はまったく目にも頭にも入ってきませんでした。

脳裏に浮かぶのは、たった今まで一緒に過ごしていた
由紀と平尾の姿。
私は見たわけでもないのに、なぜかその情景が、
ショッピングモールをバックに鮮やかな映像として
浮かんできていたのです。

(手は繋いだ? まさか、そこまでないと思うけど)

しかし、まさか と思う一方で、心のどこかでは、
むしろ、そうであってほしい、という 矛盾した
願望すら芽生えていたのでした。

「ちょっと着替えてくるね」

そう言って由紀は、自分の寝室へと向かいました。
ちなみに由紀が、外出先やパートから帰宅した時は、
いつもこの「流れ」なので違和感はありませんでした。

(ああ、本当に帰ってきた・・・)

予定よりも早く、事故もなく帰ってきた・・・
そのころになって、ようやく私の胸の中に
安堵が芽生えました。

ですが、その一方で、

(なんか、ホンマ、拍子抜けやな〜・・・)

こちらのサイトの投稿小説にありがちな、
「帰るのが遅くなります」という連絡とか、
メイクや香水などで意味深な余韻を漂わせるような
気配も素ぶりも何もなかったのです。

勝手なものですが・・・
そんな事態が起きていないことを、
正直、私は残念に思っていたのでした。

やがて由紀は、部屋着姿でリビングに戻ってきました。
グレーの長袖Tシャツに、少し色褪せたデニム。
先ほどまでのデートの外見も十分カジュアルでしたが、
いつもながらに、彼女の中では家と外の線引きを
きちんとしたかったのかもしれません。

「トオサン、(炊飯器の)スイッチ ありがとー」
「ちょっとだけ待ってて、すぐ用意するから」

そう言いながらキッチンに向かおうとしたところで、
由紀が振り返り、もう一度 私に声をかけました。

「洗濯物、取り込んでくれた?」

「お、おう・・・ バッチリや」

拍子抜けしていた私は少しだけ返事のタイミングが
遅れましたが、由紀は気にする様子もなく、
軽く笑って、

「ありがとう、ごめんね」と言いました。

そんな穏やかなやり取りに、私の中の緊張が
すっと緩んでいったのでした。

その後も、デートのことには触れることもなく、
いつものように由紀は夕食の準備を進めました。
昼前に買っておいた惣菜のおかげで、
手間は少なかったはずです。

ソファでくつろぐ私はバラエティ番組を観ながら、
ずっと由紀の様子を目で追っていました。

(どこに行って、何をして、どんな話をした?)

聞きたい気持ちは、募り 膨らむ一方でした。
気になって仕方がありませんでしたから。
でも、それを悟られるのが怖くて恥ずかしくて、
臆病な私は聞くに聞けず、自問自答を繰り返して
ばかりいました。

テーブルに並んだ2品のおかずと納豆、たこ焼き、
そして炊きたてのご飯と湯呑み。
いつもと変わらぬ、日曜の晩ごはんになりました。

ありきたりな天気の話をしていた と記憶しています。
「明日 雨らしい」とか、「この前、傘 忘れた」とか、

あまりにも気軽な いつもながらのシーンに
気が緩んだのかもしれません、
ついに私は、口火を切りました。

まずは無難に、平尾についての話題から。

「で、どうやった? あいつ、気分転換できた感じ?」

「うーん、そこは ちょっとわからないけど・・・
 でも けっこう、話は したと思うけど・・・
 むしろ私のほうが気を遣わせたかも・・・」

由紀は食事を進めながら、穏やかに 何でもない事
のように答えました。
口調も表情も、まるで平常通り。

でもその話をきっかけに、私が少しずつ
話題を引き出しながら、由紀はデートの一部始終を、
順を追って丁寧に話してくれました。

駅での待ち合わせから、どこに行ったか、
何をしたのか、何を食べたか・・・
語られたのは、どこにでもあるような、
ごくありふれた外出話でした。

結論を言えば――
内容に関して、特に不満も、心をざわつかせる
ようなポイントもありませんでした。
艶っぽさもなく、あくまで“常識の範囲内”。

それでも私は、その中に平尾の存在をにじませる
ようにしながら、些細なことでも引き出そうと
していたのでした。
信じたい、でも確かめたい、探りたい・・・
そんな矛盾が、ずっと自分の中にあったのです。

実はこのあと、平尾からも電話があったのです。
デートの御礼と報告でした。
由紀の話とは、大きなズレはありませんでした。
それでも・・・期待通り? 
私にとっては刺激になる話もありました。
それは、次回のスレッドに記すことにします。


[30] Re: 覆水盆に返らずB  エムエヌ :2025/07/25 (金) 16:08 ID:hYH38Nrg No.202311
相変わらずの文才に感銘いたします
期待と不安が葛藤している気持ちがよく伝わります
更新ありがとうございました
次回も期待しています


[31] Re: 覆水盆に返らずB  小太郎 :2025/07/25 (金) 19:05 ID:/8f5moAw No.202317
由紀さんの自然な振る舞いと矢部さんの意識しまくっている姿との
コントラストが興味深いですね。
刺激になる話が気になります。
続きを楽しみにしています。


[32] Re: 覆水盆に返らずB  ざるそば :2025/07/26 (土) 00:19 ID:.lnI/s.s No.202322
2人の間に何もなかったことが残念に思えるようになってしまうと
より寝取らせるように仕向けてしまうのが貸し出しの醍醐味ですね。
続きを楽しみにしております。


[33] Re: 覆水盆に返らずB  :2025/07/26 (土) 04:14 ID:7rPJjKBA No.202326
読んでいて、おもしろいと思いました。先が、楽しみです。

[34] Re: 覆水盆に返らずB  進一 :2025/07/26 (土) 08:22 ID:Bfv/mVNM No.202335
矢部さんにとって刺激となる話とは?
次回が楽しみです。


[35] Re: 覆水盆に返らずB  とも :2025/07/27 (日) 00:02 ID:Ah4namVQ No.202350
常識的に考えれば、思慮分別があって不倫とは無縁の人生を送ってきた50代半ばの既婚女性が、
夫の友人とデートして直ぐに性的関係に及ぶなんて、まずありえないことでしょう。
矢部さんは、そんなあり得ないことを半日かけて妄想していたわけですから、
このときすでに、精神がかなり病んでいたのではないかと思います。
それだけ、EDによって精神的に追い込まれてていたのでしょうか。
奥さんが言う通り、病院に行っていれば、こんなことにはならなかったような気がします。

ちなみに、スレのタイトルである「覆水盆に返らず」は、
働かずに妻に愛想を尽かされて離縁されたダメ男が、それから大出世を遂げた後に、
復縁を申し出た元妻に言った言葉とされています。
そう考えると、スレのタイトルに違和感がありますが、
これからの人生、矢部さんがダメ男のまま終わらないことを願っています。


[36] Re: 覆水盆に返らずB  シキ :2025/07/27 (日) 12:04 ID:3ipY4VzM No.202365
この段階では寝取られというわけではないですが、待っている時間はとても長く感じますよね。
私も数年前から寝取られをしていますが、妄想してる時間が1番楽しいですね。
待っている間もそうですし、計画してる時の妄想も良いものです。
ここから回を重ねるたびに奥様に変化が出てきたと思いますので、続きを楽しみにしています。


[37] Re: 覆水盆に返らずB  ムサシ :2025/07/27 (日) 14:16 ID:Auzl5aBo No.202370
女房をすぐ寝取らせたり
女房もすぐ寝取られたり
ノーパンノーブラスケスケランジェリーで
寝取られ放題ヤリタイ放題
絶倫オトコにアンアン感じまくる
ウソ臭い話しありえない話しよりも
エロスがあるありえる話しですね
いつも毎回楽しみしてます。


[38] Re: 覆水盆に返らずB  矢部 :2025/07/28 (月) 00:47 ID:doJrnX5E No.202387
皆様、たくさんの激励のコメントをくださってありがとうございます。
とても励みになります、そしてたくさんの勇気をいただいております。

とも様、タイトルについてのご指摘をしてくださってありがとうございます。
「口は禍の元」とか「後悔先に立たず」とか、タイトルの候補もあったのですが・・・
「覆水盆に返らず」は、具体的な意味まである諺とは知らずに、
私は安易に付けてしまいました。

お書きくださった 本来の意味(働かずに妻に愛想を尽かされて離縁された
ダメ男が、それから大出世を遂げた後に、復縁を申し出た元妻に言った言葉)
と、私が書こうとする内容は違う流れです。

違和感がある、とのことですし、おそらく読者の皆様も同じだと思いますので、
このタイトルでの連載は、ここで終わりに致します。
とも様、ご指摘、ありがとうございました。
皆様も、これまで応援、本当にありがとうございました。

それにしても、ここのサイトに投稿することの難しさを感じています(汗;)。


[39] Re: 覆水盆に返らずB  覆盆ファン :2025/07/28 (月) 06:18 ID:YEv1HdoE No.202389
タイトルに全く違和感ないですよ。
一般的には取り返しが付かないという意味で使われていますし、
そもそも日常生活でその語源通りに使う場面などまずないでしょう。
ガチガチに縛って使えないことわざに意味はありません。
ここは今までどおりでよいのではないですか。
続き楽しみにしています。


[40] Re: 覆水盆に返らずB  倍胡坐 :2025/07/28 (月) 06:38 ID:kXRXE782 No.202390
いろいろな想像させる良いタイトルだと思っておりました。
現にこれからどんなことが起きるのだろうと
次の展開を想像したりしながら没入していた読者も多かったのでは?

その起点はやはり「覆水盆に返らず」という意味深なタイトルにあります。
ですが、それはあくまでもことわざであり、ものの喩えに過ぎません。

ことわざでしかない以上、その由来にまで同じものを求める必要もないと思います。
単に、矢部さんに起きた取り返しのつかないことという意味だけで十分だと思いますが。


[41] Re: 覆水盆に返らずB  シキ :2025/07/28 (月) 14:05 ID:qEEIb3.k No.202405
こちらのスレになってからアンチがいなくなって良かったと感じていたところです。
善意で投稿していただいているのにまた変なのが出てきてしまいました。
ともさん、ホント余計なことしてくれましたね…


[42] Re: 覆水盆に返らずB  やべっち :2025/07/28 (月) 14:53 ID:K7ly.nuQ No.202407
アンチも困るが、知性のない信者も困ったものだな。
とも氏のレスはただの感想で、アンチには見えないけどね。
矢部さんは知性がある人のようだから、とも氏の感想に納得して
「このタイトルでの連載は・・・終わり」と言ってるだけだろ。
ここのサイトでは、これまでも知性のない信者が何でもかんでもアンチ認定して
アンチと同じようにスレを荒らすことがあったけど、いい加減にしてほしい。

矢部さん、タイトルを変えて新たな連載を期待しています。


[43] Re: 覆水盆に返らずB  ジューザ :2025/07/28 (月) 16:17 ID:9AzIoqKQ No.202410

とも氏の、矢部さんの精神が病んでいるんなら
ムサシ氏が書いてるここの嘘くさい軽い話の主人公やすぐ股を開く妻は
それ以上に病んでることになるなー


[44] Re: 覆水盆に返らずB  ケンケン :2025/07/28 (月) 17:44 ID:.F37sdM6 No.202411
矢部様
アンチのコメント無視してください。 続きが読みたい人がたくさんいます。


[45] Re: 覆水盆に返らずB  :2025/07/28 (月) 18:35 ID:f4KzmEvA No.202415
とも氏の、中途半端な知性迷惑!
矢部さん、投稿待っ居ます。


[46] Re: 覆水盆に返らずB  愛妻の夫 :2025/07/28 (月) 19:41 ID:L/nYUYn. No.202416
矢部様
そもそもここは社会的に非常識な場所なのです。
ただ人間は不条理な生き物なので妻も夫も結婚式で宣誓した通りには生きれない、こともある。
それは非常識で現在のホワイト社会では才能ある芸能人もその貢献を無視して一殺してしまう。

更に自身の思い通りに展開しないとすぐに非難をする輩が声を発する。
偉そうに、何様のつもりだ!

ここは不条理の告白をする場所なのです。
スポンサーもいない。

知識や常識を振り翳すつまらない人間でこの場を忌避しないでください。
同輩がこれだけ貴方様の告白を、追体験なり妄想しているのです。
書き始めた貴方様には同輩の期待に応えていただきたい、と言ったら傲慢ですね。

単純に楽しみにしています。書いてくださいませ


[47] Re: 覆水盆に返らずB  田中 :2025/07/28 (月) 20:20 ID:WPSG8mY2 No.202417
諺の語源なんて全く関係ないです、そんな言葉はいくらでもあります。矢部さんは感受性が人より優れすぎてるから、少数の否定派にも過敏に反応されるようですが、あなたを肯定する大多数のファンの為にも気にしないで続けて下さい、私もその1人です。

[48] Re: 覆水盆に返らずB  矢部 :2025/07/29 (火) 09:02 ID:6InF.yGI No.202427
皆様、たくさんの激励やご指摘、本当にありがとうございます!
タイトルにつきましては、私の無知さや安易さが皆様に違和感を
与えてしまう結果となりまして、申し訳なく思っています。

ネットで調べたのですが、
ご指摘のあった、ダメ男や大出世、復縁を要する意味と合わせて、
「一度起きたことは元に戻すことができないことを意味する諺」
とも書いてありましたので、こちらの意味でタイトル使用を
続けさせていただくことに致しました。
ここまで来ると、変なというか妙な愛着もあるので(笑)
地味な夫婦で、派手さもなく、文才もない上に表現力も乏しく
展開も遅いので、皆様にはモヤモヤさせてしまうばかりですが
これまで通り、読後の感想や質問(由紀の事などは嬉しいです;;)
等をいただければ、とても励みになります。

もう一つ、
「他の男とセックスをしている妻」に残っている作品Aにも
いまだにコメントを頂けてるのは、なにげに嬉しいです。
この場を借りて、感謝申し上げます。

猛暑の毎日ですが、皆様、ご自愛くださいませ。


[49] Re: 覆水盆に返らずB  エムエヌ :2025/07/29 (火) 12:11 ID:DWw8Mz02 No.202431
矢部様

貴作品このモヤモヤが良いと思っている方が
多いのでなないのでしょうか?
私は大ファンです
焦らせるといけないのですが
更新が待ち遠しいです


[50] Re: 覆水盆に返らずB  矢部 :2025/07/29 (火) 12:30 ID:6InF.yGI No.202432
由紀と平尾 それぞれの話から、デートで行った場所、
滞在時間、移動時間等の 大まかな流れが
なんとなく見えてきました。
もちろん正確ではないにしても、大きなズレはない、
と思っています。

『デートごっこ』の大まかな行程:
13:35-13:45 コンビニ(飲み物購入)
13:45-14:30 移動(海沿いドライブ)
14:30-15:30 カフェ(軽食)
15:30-16:00 さらに遠方へ移動
16:00-16:45 ホームセンター
16:45-17:40 移動(帰路)
17:40-17:50 ショッピングモール(たこ焼き)
17:50-18:05 帰宅へ

私が気になって仕方なかったのは、
そこで二人は何をして、どんな会話をしたのか?
刺激的な出来事はなかったのか?
驚くようなことはなかったのか?
という点でした。

私は あくまでも、平尾の気晴らし 気分転換という、
このデートの表向きの目的を前面に掲げながら、
由紀の口から自然に話を引き出そうと努めました。
あれこれ興味本位や好奇心から詰め寄るのではなく、
彼女が気負わず自然に話せるように。

私なりに聞き方に抑揚をつけたり、途中で私自身の
入浴を挟むなど タイミングにも考慮しつつ、
尋問にならないように気を配りながら進めました。

ですが、最初のコンビニでの話が出た瞬間、
いきなり私は焦ってしまいました。

定刻通りに迎えに来た 平尾のアウディの助手席に
座るとすぐに「とりあえず飲み物でも」と言われて、
駅近くのメイン通り沿いのコンビニに入ったこと。
由紀は「午後の紅茶」、平尾は「お〜いお茶」を選び、
由紀は自分の分を支払おうとしたそうですが、
結局、平尾が支払いを済ませたとのことでした。
前以て 費用は折半と伝えていたにもかかわらず、
そうなった ということです。

その話の流れで、由紀は少し躊躇いながら、
ポツリと私に言いました。

「あ、そういえばトオサン・・・」

由紀が話したのは、コンビニで飲み物を買い、
アウディに乗り込もうとしたときのこと。
信号待ちをしていたわが家の車が見えたそうです。
プレートナンバーも間違いなく、運転しているのも
私だとわかった とのことでした。
そのシーンは、デート始めで まだ話題を探っていた
こともあって、格好のネタとして平尾にも伝えた、
と言ってました。

そして、由紀がさらに・・・

「あのへん、どこか寄ってた?」

「え? あ・・・ いや・・・」

焦りを悟られないように冷静を装いながら、
心の中は冷や汗でいっぱいでした。

「うん、あそこらへん 久しぶりやったしな・・・」
「道、一本だけ入ったら、一方通行だらけやった」
「昔 行ったことある飲み屋、まだ あるんかなって」

もはや自分でも、何を言っているのか・・・
私は動揺を隠しながら、苦し紛れにそう答えました。
いきなりのカウンターパンチ的なものでしたが、
何とか乗り切ったのを覚えています。
まさか尾行に失敗したなんてことは言えませんし。

「ふーん、そっか」

由紀から、それ以上の突っ込みは なかったのですが、
こんな時って(こいつ、もしかして尾行に気づいた?)
とか思ってしまいますよね・・・。

それよりも、たとえ百円台の飲み物とはいえ、
平尾に支払ってもらったことに対して、
私から 「あとでお礼を言う」ことにして、
なんとか話題を(全力で)切り替えました。

すると由紀から 次のカフェでもサンドイッチを
ご馳走になった、という追加報告がありました。

他に、海沿いのドライブが天気も良く快適だったこと。
久しぶりの遠出で、彼女自身は気分が良かったものの、

「平尾さんは・・・うーん・・・」
「いろいろ話はしたつもりだけど、
 気分転換になったのかどうかは・・・」
「トオサン、直接 平尾さんに聞いてみたら?」

結局、由紀から聞けたのは、場所や推定時間といった、
ほぼ表面的な情報だけでした。
しかし、その会話の端々から、あとで平尾に詳しく
聞けそうな糸口を掴むことができたのです。

私はその日のうちに平尾に確認しようと 気持ちを
固めていた矢先、彼からLINEのメッセージが届きました。

『今日はありがとうございました!』から始まり、
『久しぶりに楽しかったです』など、感謝の言葉が
平尾らしく丁寧に綴られていました。

『おつかれ! 困ったことしてくれたな!(笑)』

『え? 何? 何かあった?』

すぐに平尾からは焦った様子のメッセージとスタンプが
続きました。

『詳しくは今から電話で、いい?』と平尾。

『OK』と私が返すと、すぐに犬のキャラが
ペコリと頭を下げるスタンプが返ってきました。

このやりとりの画面を由紀に見せると、
意外にも彼女は真剣な表情で、

「平尾さん、大丈夫かな?」

と呟きました。

そして まるで彼女の中に、平尾の気分転換という
「役割」についての責任感が芽生えたかのような、
真剣な表情を浮かべていたのでした。

「飲食のお礼と、どうやった?って 聞いてみるよ」

そう告げて私は自室へ入り、平尾に電話をかけました。
(由紀は風呂に入りました。)

私にとって刺激的な話を平尾から聞かされることに
なったのでした。


[51] Re: 覆水盆に返らずB  小太郎 :2025/07/29 (火) 13:47 ID:92oWggWQ No.202435
矢部さん、再開どうもありがとうございます。

行程から見ると、今回のデートの目的地はホームセンターですね。
平尾さんが一人でなく由紀さんを連れて、由紀さんに選んでもらう
もしくは由紀さんの意見を聞いて、買いたい物があったのでしょうか?
一体何を買いに行ったのでしょうか?
また刺激的な話は何だったのでしょうか?
続きを楽しみにしています。


[52] Re: 覆水盆に返らずB  進一 :2025/07/30 (水) 05:54 ID:cUwRU4hI No.202457
矢部さん、投稿お疲れさまです。
そうですね、刺激的な話しとは何でしょうね。
ホームセンターの家具売り場でソファに二人並んで座ってみた?

いや、清掃用具売場の前を歩きながら平尾さんが家の清掃をしていない旨を独り言のように言うと由紀さんは「今度お掃除に行きましょうか」と言ったかな?

次回の投稿を待ちましょう。


[53] Re: 覆水盆に返らずB  倍胡坐 :2025/07/30 (水) 06:42 ID:qg2L5Yek No.202460
矢部さん、投稿再開ありがとうございます。

由紀さんに尾行をしっかり見られちゃいましたね。
それを由紀さんがどう思ったのか気になるところです。
矢部さんが冷静を装いながらもその場を取り繕うことに必死なこともあり、
うまく誤魔化し切れたのか真相がはっきりしないままとなりましたね。

続きが楽しみです。


[54] Re: 覆水盆に返らずB  ざるそば :2025/07/30 (水) 07:18 ID:H1cMIV6Q No.202461
矢部さん更新ありがとうございます。
いつもながら臨場感半端ないです。
文才が無いなんて嘘っぱちですね。
遅々として進まなくてもこれだけファンがいるのが証拠です。
刺激的な内容が気になりすぎますので次の更新も
お待ちしております。


[55] Re: 覆水盆に返らずB  ABC :2025/07/30 (水) 16:32 ID:fwomfEbA No.202475
いっきに一話から読んで来ました。
ほかの物語と違うので、おもしろいです。WAKUWAKUします。


[56] Re: 覆水盆に返らずB  矢部 :2025/08/02 (土) 01:10 ID:JoSMrG2k No.202547
皆様、コメントありがとうございます。 とても励みになります。
まだまだ猛暑ですが、おたがいに体調管理をしっかりして、乗り切りましょう!
少しですが更新致します。

*****

スマホから、いつもの落ち着いた声の平尾が
少し焦っているような口調で話しかけてきました。

「今日はアリガトな、ヤベちゃん・・・と奥さん、
 ホンマ、心遣いには 感謝してます」

そんな平尾に私は笑みを含ませ応えました。

「そんなことより、困ったことしてくれたな〜」

「あ、それ・・・何? 気になるやん」と平尾。

平尾が恐縮しながらも、少し慌てているのが
伝わってきましたので、私は あえて冗談っぽく、
彼が話しやすいように柔らかい口調で返しました。

「言ったやろ〜 割り勘って。 
 カミさん、コンビニと カフェでも平尾さんに
 奢ってもらった、って言うてたし」

「あー なんや、そんなことか・・・
 まぁ、飲み物と食事くらいは 出すよ、
 というか 出させてよ、いちおうデートやし」

電話越しに苦笑まじりで、それでも安心したような
平尾の声が印象的でした。

「今回は許したるわ ホンマ 気ぃ遣わんといてな、
 お前が気を遣ったら、デートの意味ないやろ?」

「すまんなー、気にかけてもらって・・・」

いつもながら他愛のない親友らしいやりとりで電話が
スタートしました。

が、もちろん私にとっては本題ではありません。

当然、私はデートのことを詳しく聞かせてほしいと
思っていましたし、平尾自身もそのことについては
理解をしているような感じでした。
結論から言うと、平尾は、私が思っていた以上に、
積極的に「報告」をしてくれたのでした。

「カミさんから だいたいの話は聞いたけど・・・」

とりあえず 私はこのように平尾に伝えることで、
正直に報告するしかないことを、暗に匂わせました。
(俺は もう知っているんだけど、と)
今思えば、こんな小さなところに気が回ること自体、
私は小心者というか姑息だったのです。

続けて私は、あらかじめ由紀から聞いていた、
デートで行った場所や流れを軽くなぞりながら、
少しずつ聞きたい事を引き出そうとしたのです。

「コンビニ 出たところで、俺の車 見たらしいやん?」

「そそ、あれな ヤベちゃんで間違いなかったやろ?」

平尾は、私からこの話題を持ち出してきたことが
意外だったのか、少しびっくりした声でした。

「そうや、実は尾行しよう と思ってたんやけど、
 アウディに まかれたみたいや、エエクルマやな〜」

私はわざと大袈裟に冗談っぽく言うことで、
逆に本意を隠そうとしていました。
でも平尾は笑わず、真面目な口調で返してきました。

「尾行? マジで尾行しようと思ってたんか?」

「そんなわけないやろ!」と、すぐに私。

「あー、でも 尾行する気持ちはわかるで・・・」

さらに平尾は、

「もし直美が他の男と出かけることになったとしたら
 理由は何であれ 当然気になるで、旦那としてな。
 俺ならガチに変装して、レンタカーで尾行するで」

そう言って、ふっと平尾の声のトーンが落ちたのです。

「でも心配するのは、やっぱり夫婦やからな。
 俺には今 女房(直美さん)おらんし できんけど」

そう話す 平尾の報告によると、

実はこの「尾行」の話は、コンビニを出た後も、
車の中で由紀と交わされた、とのことでした。

私が尾行していたかも? ということは、
あくまでも 話題のきっかけにすぎず、
その時の話のメインになったのは、
妻が他の男とデートをするという非日常的な設定
からの「尾行」の話だった、と。

由紀は・・・
女性として、妻として、旦那が尾行をしてまで
気にしてくれる 心配をしてくれる ことについては
素直に嬉しい、と話していたそうです。
由紀が平尾に合わせていたのかもしれませんが;;

ただ私は、つい先ほど 由紀と話をしていた時に、
尾行疑惑のことは 咄嗟に全否定していました。
あの時 素直に「ちょっと気になっただけや」
くらいのことを笑って返せば、
どうってことなかったんだ と、今でも
思い返しています。

(ただ 尾行(しかも未遂)が バレた焦りとか、
 後ろめたさ、そしてなによりも 男としての
 ちっぽけなプライドもあったわけで、
 結局は 素直に言えなかった かも・・・;;)

「そっか・・・ 尾行しとけば良かったな〜
 ぜんぜん思いつかんかったで ・・・ あはは」

どこまでも強がりな私は、余裕たっぷりなトーンで
平尾に とぼけた笑いで返したのでした。

次に私は、

「それはそうと・・・ お前は気分転換できた?」

「俺は楽しかったよ・・・逆に奥さんは?」と平尾。

想定内の返事、これで由紀のことが聞ける とばかりに

「いや、本人は楽しかったって、言うてたで・・・
 どんな話 したん? というか どんな様子やった?」

そう尋ねると、平尾は少し間をおいて話し始めました。

「あー 奥さんな・・・」


[57] Re: 覆水盆に返らずB  小太郎 :2025/08/02 (土) 05:19 ID:NKxVUhRA No.202550
矢部さんの尾行は、奥さんが嬉しかったというのは
すごくポジティブな反応で良かったですね。

初デートで車内で二人きり、二人とも話題を探していた
ところに、矢部さんの車登場で、格好の共通の話題が
見つかり、一気に緊張がほぐれた感じがします。
デート中の由紀さんの様子が気になりますね。

続きを楽しみにしています。


[58] Re: 覆水盆に返らずB  倍胡坐 :2025/08/02 (土) 06:03 ID:9pJmCPf. No.202552
由紀さんからの報告を平尾さんとの会話でウラを取ってみたら、
由紀さんも平尾さんも、矢部さんの妻として友人として、
矢部さんに対して誠実であろうとしているようですね。

また、矢部さんが直接聞くことのできない由紀さんのホンネが
平尾さんを通じて伝わってくるという副産物も期待できますよね。

ただ、ある意味こうした健全な関係性の中に、
由紀さんの「ごっこ」のその先が果たしてやってくるのかどうか?

続き、楽しみにしております。


[59] Re: 覆水盆に返らずB  ABC :2025/08/02 (土) 14:52 ID:NRYIyc1c No.202571
更新、有難うございました
矢部さんの心理的なかけ引きがリアル。
すぐエッチするような薄っぺらい小説なんかよりWAKUWAKUします。


[60] Re: 覆水盆に返らずB  ABC :2025/08/03 (日) 12:07 ID:CoTB73nw No.202603
読めば読む程、三人の心理的なかけ引きがある様な気がします
しかし人間は誰しも思惑や企みは潜めていると思うんです。
WAKUWAKUしながら読んでますので。


[61] Re: 覆水盆に返らずB  愛読者 :2025/08/04 (月) 14:29 ID:1AUu1Lok No.202653
矢部さんへ
毎回たのしく読ませてもらってます。
奥様をイメージしたいですが芸能人だったら
誰に似てますか?教えて下さい。
早く続きが読みたいです。

愛読者


[62] Re: 覆水盆に返らずB  矢部 :2025/08/05 (火) 20:21 ID:AmzPsEr2 No.202678
皆様、コメントをありがとうございます。

大変励みになります。勇気をいただいております。
ダラダラした話ですけど、これからもよろしくお願い致します。

似ている芸能人ですか・・・
そうですね、大昔に(若い頃に)外見がぱっと見で、
森口博子さんに似ている、と言われたことがある、
というのを本人から聞いたことがあります。
しかし当時 私は、「かなり強引やな」と思った記憶もあります。(笑)
(ご質問、ありがとうございました!)

続けます。

*****

電話の向こうの平尾の声には、どこか照れたような
響きが混じっていました。

「奥さんな、最初ちょっと緊張してる感じやったわ。
 まぁ、俺もやけど」

思わず私は声を出して笑ってしまいました。

「あはは・・・エエ歳の大人二人が緊張ってか?」

軽く茶化したものの、考えてみれば当然なのかと。
旧知とはいえ、あくまでも他人、そして男女。
しかも私を介した微妙な関係性で、さらに“デート”
という、ありえないシチュエーション。
緊張するのは無理もないですよね。

もし私が平尾の立場だったら、きっとそれ以上に
汗をかいていたと思います。

平尾は話を続けてくれました。

「奥さん、アウディ初めてやったらしくて。
 座った瞬間、えらいびっくりした顔してたで」

まぁ、当然でしょう。
我が家は軽自動車、由紀はいつも後ろの席。
助手席に座ることも少なく、高級車の革張りシート
なんて、なおさらです。

「革(シート)ですか? 高級感ありますね とか、
 いきなり褒めてくれてたで・・・」

電話越しに、平尾の苦笑が浮かぶようでした。

海沿いの道を走る頃には、由紀も平尾も少しずつ
リラックスしてきたようで、話も弾み、
ぎこちない間(ま)もほとんどなかった、
とのことです。

話題は 平尾からは 私との若い頃のエピソードや
沿道にある「旨い」店の話、
由紀からは、パート勤務先の話や 子供たち
(弘幸や麻里奈)の話、など、
会話は自然に流れていたようです。

ちなみに後で由紀が少し曇った顔で、
こんなことを言いました。

「子どもたちの話、しないほうが良かったかな?」

子どもがいない平尾に気を遣ったのでしょう。
でも私は「気にすることない」と答えました。
会話の流れで出た ごく自然な話題だったので。

続けて平尾が少し声のトーンを落として、

「なんて呼んだらって 奥さんに聞いてみたんや」

「名前のこと?」と私。

「うん。“奥さん”てのもなんか生々しいやろ?
 かと言って“矢部さん”やと他人行儀やし」

困ったような顔をしながら尋ねたらしいです。
その時の、少し照れたような平尾の口調が
印象的でした。

由紀は ちょっと驚いたような顔をしたそうですが、
すぐに穏やかに笑って、こう言ったそうです。

「あー、私 由紀ですし、べつに下の名前でも」と。

「で、そっから 由紀さんって呼ばせてもらった」

電話越しの平尾の声に、その“呼び名”の照れが
そのまま混じっているようでした。
そしてその「由紀さん」という響きが、
妙に私の耳に残りました。

私にとって、知人に「由紀さん」と妻の名前を
呼ばれることに違和感や嫌悪感はありません。
ただ、今回はこうして二人で何気ない会話から
呼び名が決まっただけのことですが、
二人の距離が一気に縮まったような気がして、
とても刺激的に感じられたのです。
この時 私は、言葉にできない疼きがあった
のを覚えています。

その後、入ったのが海沿いのカフェ。

二人とも昼食が まだだったこと、というよりも
二人とも このデートを前に、緊張して
食べることができなかったことは、
車の中で笑い話として交わされていたそうです。

幸い、海の見えるデッキ席が空いていて、
由紀はサンドイッチ、平尾はパスタをオーダー。
由紀は「食事代は自分持ちで」と伝えたのですが、
平尾は“ハイハイ”と流しただけだったとか。

カフェでは、平尾の仕事の話になったそうです。

副社長という肩書きの裏にあるプレッシャー、
経営者として 社長の片腕として、
社内外への目配り、取引先への配慮や調整、
安全・業務・財務の管理から全社員の健康管理、
そして重大な経営判断など。

リアルな苦労を、由紀に語ったとのことでした。

「ほとんど愚痴やったな〜・・・
 でも奥さん、ホンマ真剣に聞いてくれてな、
 聞き上手やったし、俺もつい 話し込んだんや」

平尾は笑いながらそう言いました。

親友である平尾の、日頃の愚痴の捌け口として、
そして日頃のストレス解消、ガス抜きとして、
この“デートごっこ”が役に立ったのなら、
それは本来の目的通りなのかもしれません。
彼も由紀も ある意味 愚直にそれに沿った事を
していたまで、だったのですが・・・

「ふ〜ん」と私は曖昧に返しました。

もちろん由紀も、彼の肩書きは知っています。
ただ、私とは雲泥の差のポジションにいる彼が、
寄りによって私の妻にそんな話をした・・・
正直、私は素直に受け止めきれなかったのです。

そして恥ずかしながら、別の意味での嫉妬を
抱いたのも事実です。

(こいつ、自慢したかったんか?)

そう思ってしまうのは良くないのですが、
そう思ってしまうのも仕方ないですよね・・・
私の器の小ささゆえでしょう。

平尾は続けました、

「奥さん、俺の話をちゃんと理解しようと
 してくれてるのが分かったし・・・
 なんて言うか、その気持ちに癒されたで」

(癒された?)

平尾の その言葉を聞いた瞬間、
気分の良くなかった私でしたが、
ある過去を思い出したのでした。

由紀が私と付き合う前、昼の仕事を終えた後に
夜はスナックでアルバイトをしていたこと。

ただその話も 当時の知人から いわゆる人伝てに
聞いただけで、あまり詳しくは聞けていないし、
また由紀にとっては、触れられたくない過去なのだ
と思っていました。

そんな記憶と背景を思い浮かべながら、「聞き上手」
というテクニックは、由紀がその当時に見せていた
別の顔を微かに匂わせていたのでは? という
思いが私の胸をよぎり 不思議な感情を覚えました。

それは決して嫉妬ではなく、むしろ私には
見せたことのない由紀の一面を、少しだけ覗いて
みたい という、好奇心にも似た感情でした。

結婚後30年近く ずっと話し続けてきた夫婦です。
今更、「聞き上手」もなく その時も変わらず
普段の由紀だったのだろう、と思う一方で、
「デート」という特別な場だからこそ、彼女の
特別な面が引き出されたような気がしました。

この「聞き上手」「癒された」話も 私にとっては
大きな刺激の一つになっていたのでした。

その後、二人はカフェを出て、ホームセンターに
向かったとのことでした。
(食事代は 結局 平尾持ちだったそうです)


[63] Re: 覆水盆に返らずB  小太郎 :2025/08/05 (火) 21:20 ID:Dqzp.GTw No.202680
由紀さんと平尾さん、車内の会話は弾んでいたのですね。

由紀さんと名前で呼ぶことで、二人の距離は一気に縮まりましたね。
由紀さんは平尾さんを何と呼んだのでしょうか?

カフェで仕事上のリアルな苦労の本音を話してくれた平尾さんに
由紀さんは自分に心を開いてくれたと感じたのでは?
スナック仕込みの聞き上手のテクを駆使して平尾さんに癒しを
与えた由紀さんに平尾さんも好印象を持ったのですね。
カフェでの会話で更に二人の距離が縮まりましたね。
ホームセンターでは二人の距離はどうなったのか?

続きを楽しみにしています。


[64] Re: 覆水盆に返らずB  矢部 :2025/08/11 (月) 17:55 ID:OnlBOyrY No.202819
小太郎様 いつもコメントをありがとうございます。

〉由紀さんは平尾さんを何と呼んだのでしょうか?

特に聞いたわけではないのですが、この時は「平尾さん」と呼んでいたのでは、と思います。


ダラダラとした内容ですが、投稿を続けます。
読者の皆様、読んでくださってありがとうございます。

(この度の大雨災害に遭われた方々、心からお見舞い申し上げます。)

*****

「ホームセンター? ほかに行く所 なかったんか?」

私は、つい そう尋ねてしまいました。

呆れたというより、正直 拍子抜けした、と言ったほうが
近いかもしれません。
あまりにも平凡、あまりにも日常的で、
せっかくの “デートらしさ”とは ほど遠い場所。
もう少し夕暮れの時間に似合う 雰囲気のあるスポットも
あったのではないかと、思ってしまったのですが。

平尾によれば、カフェで由紀と話をしている途中、
「洗濯用のな、洗剤 切らしてたんを思い出したんや」、
とのこと。

「そのタイミングで、か?」

私は思わず、苦笑しました。

いかにも平尾らしいというか、彼の性格、人柄が
よく出ている気がしました。
洒落たプランがあったわけでもなく、
演出に凝るわけでもなく、
ただ ふと思い出した日用品のことを素直に口にして、
そのまま足を運ぶ・・・

あらためて親友である彼の素朴さが、ある意味
微笑ましくもありました。

それでも私は気になって、由紀が どう反応したのかを
尋ねてみました。
すると「いいですよ、行きましょう」と、
由紀は笑顔ですぐに頷いてくれたそうです。

「そらそうや。 嫌です、なんて言わんやろ」

私は少し棘を含んだ言い方で返してしまいましたが、
実のところ、それを聞いて少しホッとしていたのも
事実でした。

たしかに、ホームセンターという場所は、
デートらしくはありません。
だからこそ、由紀にとっても 気負わずに済んだの
かもしれません。
私にしても、どこか安心を感じていたからこそ、
少し強気な口調で言えたのかもしれません。

そのホームセンターは、私も以前 由紀と一緒に
訪れたことがありました。
田園地帯の中に突如あらわれる壮大なスケール感、
店舗入り口横の広大なガーデニングコーナー、
各種何層にも並ぶDIY用品の棚が記憶に残っています。

目を閉じれば、ぼんやりと その風景が浮かんで
きたのでした。
でも、そこに立っていたのは、私ではなく・・・
平尾と由紀でした。

買い物カートをゆっくり押しながら歩調を合わせ、
笑顔で洗剤のボトルを手に取って話す二人の姿。
着飾って “デートをしています”的な装いではなく、
自然体で のんびりと目的もなく午後のひと時を
過ごすためだけに 気軽に立ち寄ったくらいの外見。
その光景は、誰がどう見ても 間違いなく 紛れもなく
「熟年の夫婦」にしか見えないことでしょう。

ありふれた生活空間だからこそ、
二人の自然な様子が、より一層 リアルに思い浮かんで
きたのです。

そして、私の中で その情景は、静かに、けれど確実に、
ある種の “被虐的妄想”へと変わっていきました。

まるで夫婦・・・

胸が熱くなるのを感じました。
それは、猛烈な嫉妬でした。
同時に、由紀がそのまま平尾に連れて行かれてしまう
のではないかという、言葉にならないほどの恐怖。
そしてなによりも、その場に「旦那である私」が
いない、という事実。

深く息を吸い込みながらも 私の呼吸は乱れていました。

ただの買い物。ただの日用品・・・
でも、その場所で繰り広げられたであろう、
あまりにも日常的すぎる、しかし極めて親密な二人の
やり取りに、私は耐えがたいほどのスリルとリスクを
感じていたのでした。

思えば、ほんの数時間前も・・・
ショッピングモールで何気に目にした、
仲睦まじいシニア夫婦を、私は微笑ましく眺めていた
はずでした。

けれど今、平尾の口から語られる“ただの買い物”は、
私の心にじわじわと火を灯し、
勝手で都合の良い妄想を繰り返す中で 情景が膨らみ、
ついには私自身の身体にまで
影響を及ぼしていたのです。

気づけば、私の下半身は熱を帯びていました。
スウェットパンツの中の 勃起に気づいた時、
なんとも言えない戸惑いと、それ以上に その懐かしい
感覚に対する複雑な “嬉しさ”のようなものを
覚えてしまったのも事実です。

(・・・マジか)

心の中で、そう呟いていました。

私の中で、“弱さ”と“興奮”が 同時に
疼いていたのでした。

それは まさに、小心者なりの「寝取られ」の
醍醐味だったと思います。

無意識のうちに私は、
スウェットパンツ越しに 右手を、
固くなったシンボルに当てていたのです。

「で? お目当ての洗剤、あったんか?」

平静を装って、私はそう尋ねました。

「部屋干しなら、こっちのほうが良いですよ、って
 奥さん おススメのやつにしたわ」 と平尾。

私の中で、またひとつ妄想のピースがはまりました。

由紀が洗剤ボトルを手に取って、平尾に差し出す。
そして二人は、目を合わせて微笑み合う。

“夫婦”として仕立て上げた二人の様子が
ありありと浮かび、刺激に変わっていたのです。
スウェットパンツ越しに当てた私の右手には
自然と力が入り、そのまま ゆっくりと
扱き始めていたのでした。

そんな私の様子など 知る由もない平尾は、
電話越しに その後も変わらぬ調子で、
デートの報告を続けてくれたのです。


[65] Re: 覆水盆に返らずB  小太郎 :2025/08/11 (月) 23:59 ID:PhOsquFA No.202829
ホームセンターには不足した日用品を補充する為に行ったのですね。
でも日用品であるが故に、由紀さんと平尾さんは本当の夫婦のように
周りから見られていたのでしょうね。

由紀さんが平尾さんに洗剤をお勧めして、それを平尾さんが受け入れた
二人のやり取りで更に二人の距離が近づいていったのでしょうか?

続きを楽しみにしています。


[66] Re: 覆水盆に返らずB  ざるそば :2025/08/12 (火) 00:26 ID:imloT4WU No.202830
更新ありがとうございます。
矢部さんの文章、控えめに言って最高です。
ホームセンターで一緒に洗剤を選んだだけですが、寝取らせへの大きな一歩でしたね。
矢部さんの復活する下半身によって寝取らせが加速してしまうのでしょうか?
続きが待ち遠しいです。


[67] Re: 覆水盆に返らずB  夏休みは終わらない :2025/08/12 (火) 11:36 ID:RdGF/VKk No.202842
ノーマルすぎるから、嫉妬になる気持ちはよく分かります。
読んでてとても興奮しました。
続きが楽しみです。


[68] Re: 覆水盆に返らずB  進一 :2025/08/12 (火) 12:44 ID:iC1wLJh6 No.202844
更新有り難うございます。
女性とデートしている時に洗剤が切れていることを思い出すのでしょうか?
私が思うにはホームセンターに行って洗剤を購入すれば由紀さんから掃除洗濯はどうしているかを言わせて、あわよくば由紀さんから「今度お掃除と洗濯に行きましょうか」と、言わせる魂胆があったのではないでしょうか。
私の思いすごしかな。


[69] Re: 覆水盆に返らずB  倍胡坐 :2025/08/12 (火) 19:39 ID:7p8sC7eQ No.202853
初デートならば、小洒落たデートスポットを想定しがちですが、
よりによってホームセンターとはまったくの想定外でしたね。

いつも矢部さんの隣りにいる、いつもどおりの由紀さんが、
さしたる違和感もない様子で平尾さんと夫婦然としている様子を想像しては、
それまで安泰であったはずの矢部さんの指定席が、
いきなり侵食されたかのような心境にでもなってしまったのでしょうか。

鬱勃起でしょうか?

矢部さんの葛藤と刺激。
これからも期待しています。


[70] Re: 覆水盆に返らずB  西門 :2025/08/15 (金) 14:40 ID:MiF6uTjg No.202920
覆水盆に返らずの表題とじっくり進む話の展開に、
手離したものの大きさを事後に気付いて自分の馬鹿さを反省しつつも、
愛した妻の幸せを祈ってしまう男の業を感じさせられています。
貞淑と言う言葉が似合う堅物の由紀夫人が平尾氏の手管で一匹の淫獣に
堕とされて愛した矢部さんの元を離れていくまでに至った話になるのだろうと、
興味深く読ませて頂いてます。
辛いこともあるかもしれませんが続きよろしくお願いします。


[71] Re: 覆水盆に返らずB  ジン :2025/08/15 (金) 22:32 ID:/PBRcZW. No.202932
初めまして、第一話から読みました。

妻が、すぐに淫靡な下着を身につけ、他の男に簡単に抱かれ、快感に身を委ね喘いでしまうような、一般的夫婦らしからぬ軽すぎる貞操感が綴られてる定番の小説。
ココに数多く投稿されております。
そんな簡単に寝取られのセックスなんてできるものではないのにと笑わせる妄想小説多い中、貴殿の小説は異色中の異色です。
それが理由なのか誹謗中傷コメント多く、タイトルまでもナンクセつけられてる始末。
それぐらい貴重な小説ですから、これからも頑張って投稿続けてもらいたいと思います。

これまでの感想ですが、平凡な場所でのデートが逆にリアリティを増し、主人公の内面の葛藤や嫉妬、興奮を際立たせています。微妙な心理描写が丁寧で、読み手も主人公の複雑な感情に引き込まれます。まさに『日常の非日常』を感じさせる一編だと思います。
快楽と苦悩がもつれ合いながら進行していく様が、まるで心理スリラーのような迫力を持って描かれていて、読み応えがあります。主人公がこの自家中毒的な感情のループから抜け出す兆しが見えるのか、それともさらに深みへ沈むのか、非常に気になります。
信じたいけど疑いたい、その心の揺れ動きが超リアルで切ないのもいいです。
続き、待ち遠しいです。


[72] Re: 覆水盆に返らずB  矢部 :2025/08/18 (月) 15:45 ID:ZBmwKYLI No.203018
小太郎様 いつもコメントをくださりありがとうございます。
・ホームセンター、日用品、同世代のシニアカップル となれば、
「夫婦」にしか見えないでしょうね・・・;;

ざるそば様 コメント、ありがとうございます。
・待ち遠しいと言われるような展開になるかどうか・・・(汗)
 これからもよろしくお願い致します。

夏休みは終わらない様 コメント、ありがとうございます。
・日常的なシーンだから、余計に嫉妬を感じますよね?

進一様 いつもコメントをくださりありがとうございます。
・平尾の本心は、というか 他人の本心は どこまでいっても
 わからないので、なんとも言えないのですが、
もしかしたら「あわよくば」の気持ちがあった? どうでしょうかね?
 今度、AIに聞いてみようかなと思っています。

倍胡坐様 いつもコメントをくださりありがとうございます。
・鬱勃起?ではなく、妄想からの正常勃起だと、本人は思っています(汗)

西門様 コメント、ありがとうございます。
・期待に沿うような展開になるのかどうか、心配しております。
 どうか、これからもご愛読をお願い致します。

ジン様 コメント、ありがとうございます。
・貴重な小説なのかどうか・・・ エロ不足で申し訳ないくらいに思ってます。

皆様、残暑お見舞い申し上げます。ご愛読、いつもありがとうございます!
コメントは、とても励みになります。これからもよろしくお願い致します。

*****

「あとは・・・ 店の中 ウロウロしたんやけど」

どうやら時間的にも、他の場所に移動してまで
デートらしい 何かをするほどでもないと
思ったらしく、そのままホームセンターに
留まっていたそうです。

それはそれで私の気持ちは複雑でしたが・・・

「そういえば・・・奥さんのことで、意外やな って
 思ったことあったで」

「なんや?」

そう平尾が話し始めた時、私は自然と身を乗り出して
いました。

その内容は、二人が たまたま通りかかった
店内にあるカー用品コーナーでの出来事でした。

平尾は缶入りの車用芳香剤(エアスペンサー?)を
手に取って、アウディに似合う匂いは、どれか?
と由紀に尋ねたそうです。

私は 二人がやりとりをするシーンを、頭の中で
思い描きながら聞いていました。

たしかに芳香剤にはいろいろな種類がありますよね。

由紀は「どれでしょうかね?」と
その場にあった小さな円筒型の缶のサンプル品を
手に取り 香りを確かめていた と。
そんな彼女の横顔に、どこか懐かしさと柔らかな笑みが
浮かんでいた、と平尾は言いました。

「(最近は香りの)種類がずいぶん増えたんですね」
「わたしは・・・ ライム一択でしたよ」

そう言って 笑顔の由紀が手に取ったのは、
3缶が1パックのセット商品だったそうです。

「3つって・・・全部使い切るのに、半年くらい?」

平尾がそう言うと、由紀はクスッと笑って、

「いいえ・・・3つを同時に使うんですよ」
と答えたそうです。

「全部、同時に?」思わず私も問い返しました。

平尾は笑いながら、

「うん・・・昔、奥さんの友達は そうやって
 使ってた らしいで」

(昔? 友達?)

その言葉に、私は胸の奥がざらつくような感覚を
覚えました。

さらに平尾は由紀とのやりとりを なぞるように
伝えてくれました。

「やんちゃな使い方やねー って言ったら、
 わたしは やんちゃじゃなかったですよ!
 って 奥さん 笑ってたで」

平尾による、その会話の再現によって、
決して私が知ることのできない過去の由紀が
ふいに姿を現したような気がしました。

由紀は「友達」なんて言い方をしていたみたい
ですが、元カレであることは間違いありません。

こうして回想していると、30余年も前の妻の過去に
未だグズグズと引き摺られて情けない男だ・・・
と自分でも理解はできてはいたのですが、
平尾の報告を聞いた その時は、「あの頃の由紀」
に変に執着し、惹きつけられていたのでした。

そして同時に、当時の由紀と元カレに対する
抑えがたい嫉妬心が湧き上がってくるのを
私は感じていました。

その後、平尾と由紀は しばらくカー用品の売り場
に居たらしく、
アルミホイールが陳列されたコーナーに寄った時には、
由紀は何も言わずに 数々のホイールを見つめていた、
と平尾が淡々と伝えてくれました。

整然と並び 煌々とライトに照らされた、大小サイズと
各種デザインの数々のアルミホイールの映像が、
私の脳裏に浮かんでいました。

その中の一つに 由紀の視線が止まり 呟いたそうです。

「これって・・・懐かしいかも」

「懐かしい?」

平尾が聞き返すと 由紀は少し気まずそうに笑い、
肩をすくめて こう言ったそうです。

「さっき話した友達、ホイールにも こだわってて、
 人とは違うデザインが良いって」

「へぇ、車好きなんですね、何 乗ってたんですか?」

平尾が返すと、由紀は静かにこう答えたそうです。

「日産の・・・ あっ 日産の車でした」

そう 由紀が答えたと。

平尾が言うには、その時の由紀の目は遠くを見ている
ように、映ったそうです。
もしかしたら、彼女の実家の物置に預けられたままの
あのホイールとともに、由紀の中に、きっとその頃の
記憶が蘇ったのではないか、と私は思いました。

平尾は平尾で、そんな由紀の反応が意外だったらしく、
笑いながら、

「前にやべちゃん、言うてたよな・・・
 奥さん、車が好きとか 詳しいとか って(※)
 やっぱり昔 奥さん、ちょいワルやったんかもな」
 ※「覆水盆に返らず」スレッドNo.93・118参照

平尾のその言葉に、私は思わず苦笑しながら、
心の中では、やんちゃだった若い頃の由紀の姿を
勝手に想像し始めていました。
想像というよりも、作り上げていたのでした。

深紅の唇に タイトなスーツ、ハイヒール姿の
シャープでクールな由紀。
スナック勤務を終えた深夜、ライムの香りに
満ち溢れた、友達 いや 元カレのシーマの助手席で
楽しそうに微笑んでいる・・・。

そんな光景が、まるで実際に見たかのように、
鮮明に浮かんできたのです。

 ※読者の皆様はいかがですか?
  身近な女性(例えば奥様)の過去・・・
  まさか今のその方からは想像できないくらいの
  〇〇だった事実を知ることになったとしたら? 

私の勝手な想像(妄想)は、留まることを知らず
抑えきれない昂ぶりとなって 加速していきました。

平尾と由紀の今回のデート、
その名目はあくまで、平尾の気晴らしであり、
気分転換であり、本来ならば軽いジョーク的に
扱うはずの「デートごっこ」でした。
が、ここにきて私にとっては、スリルとリスクが
混ざり合い、まるで“寝取られ”にも似た刺激が
渦巻いていたのです。

それは・・・
アウディに乗り込む由紀の姿を見て焦り、
進まない時計を眺めながら孤独に耐え、
平尾に「由紀さん」と呼ばれることに動揺し、
夫婦のように映る二人の姿に疎外感を覚え、
そして過去の由紀の面影を誇大妄想する・・・

そのすべてが、私を刺激し、昂ぶらせ、
これまでにないほどの熱量とともに、
私の胸の奥から腹部、そして身体の芯へと伝わる
温かく重い熱になっていました。

スウェットの上に当てていた私の右手は、
そのまま久しぶりに硬化したペニスを扱き、
長い間忘れかけていた快楽の時間を止めることは
できなかったのです。

平尾からは続けて、帰路は比較的空いていたこと、
その時も、それなりに由紀と会話が弾んだこと、
そして私も夕方に行っていたショッピングセンター
に由紀を送り届けたことなどを
淡々と報告してくれました。

「そっか・・・ あっそろそろ風呂やから・・・」

「あ!すまん すまん また、あらためて な!」

もはや それどころではなくなっていた私は、
平尾に悟られないように適当な理由をつけて
電話を終わらせると、再び 独り悦に浸りました。

(50代男 自慰シーンにつき カットします;)

程なくして私は 久しぶりに頂に達し果てたのでした。


[73] Re: 覆水盆に返らずB  倍胡坐 :2025/08/18 (月) 16:24 ID:BTwZPp5. No.203020
矢部さんのED。早くも回復でしょうか。
でも、実際に由紀さんとその場に即してみないとわかりませんが。

もちろん、この物語は回復すればそれで良しではありませんよね。
矢部さんの心理の奥の奥がどういう方向へ向かうのか、
そして、由紀さんがどうなっていくのか、ですよね。

読者諸氏の応援コメントもあり、
このスレッドもようやく落ち着いて来たようで何よりです。
引続き応援しております。


[74] Re: 覆水盆に返らずB  小太郎 :2025/08/18 (月) 16:25 ID:YosEr.mE No.203021
車用芳香剤とホイールを眺めながら由紀さんは別れた元カレを
思い出していたのでしょうね。
平尾さんとのやり取りで由紀さんの過去が垣間見れたのは
矢部さんにとてつもない嫉妬心を呼び起こしたのでしょうね。
決して嫌いになって別れた訳でなく、親に引き裂かれて
別れさせられたのですからね。
続きを楽しみにしています。


[75] Re: 覆水盆に返らずB  進一 :2025/08/19 (火) 11:49 ID:.VoJySS. No.203054
由紀さんは元彼の事を思い出しながら平尾さんとの会話を楽しんでいたのでしょう。
さて、次回のデートはまだまだ先になるのでしょうか?
それとも矢部さんには内緒で会うのでしょうか?
この後の展開をお待ちしています。


[76] Re: 覆水盆に返らずB  夏休みは終わらない :2025/08/21 (木) 13:06 ID:CWdsdmwQ No.203134
まさか、
これで終りじゃない、ですよね!
早く続き読みたいです。


[77] Re: 覆水盆に返らずB  ざるそば :2025/08/22 (金) 00:07 ID:lLCY9xLo No.203149
続きが更新されていないか何度も見に来てしまいます。
早く続きが読みたいです。


[78] Re: 覆水盆に返らずB  矢部 :2025/08/24 (日) 00:21 ID:x2A9BacE No.203210
倍胡坐様 いつもコメントをくださりありがとうございます。
・EDの回復というよりは、デート報告の刺激からの
 一時的反応だったのかなと思います。

小太郎様 いつもコメントをくださりありがとうございます。
・妻の過去の話は聞けば聞くほど、もっと知りたくなるような、
 それくらいまで掻き立てられます。私も固執しすぎでしょうか?

進一様 いつもコメントをくださりありがとうございます。
・私に内緒で会う、いかにもこちらのサイト小説にありがちな
 ある意味「標準的な」流れですが、残念ながら由紀の場合も
 そこまで肝が据わっていなかったと思います。

夏休みは終わらない様 コメント、ありがとうございます。
・とても励みになるコメント、ありがとうございます。

ざるそば様 コメント、ありがとうございます。
・何度も見に来ていただいて、ありがとうございます。 これからもよろしくお願い致します。

皆様、いつもご愛読をありがとうございます!
コメントは、とても励みになります。
もしよかったら感想を聞かせていただきたいです。
これからもよろしくお願い致します。

遅い展開ですが・・・

*****

久しぶりに味わう自慰の快楽に溺れ切った私。

スウェットパンツの中 トランクスを穿いたままで
暴発してしまいました。
止めなかった、止まらなかった、止めたくなかった、
止めてはいけなかった・・・
いろいろな思いが交錯していました。

年甲斐もなく みっともない結末になりましたが、
それさえも どこか充実した時間に感じられ、
私は、とても満足していました。
後処理も苦にならないくらいでしたから。

由紀は、私が平尾から報告を聞いていたことは、
気には なっていたと思います。
ですが、彼女は入浴後も普段通りの仕草で振る舞い、
私に対しても何の違和感もなく接してきました。

そう考えると この時点では、彼女にとっての
今回の平尾との半日は、本当に単なる
デート「ごっこ」をしただけ、
平尾の気分転換に付き合ってあげただけであり、
イベントが終われば、その瞬間 いつも通りに戻る。

つまり、当初 彼女が提示した「10か条」(※)に
しっかりと沿った行動をしていると言えたのです。
(※)「覆水盆に返らず」 スレッドNo.79 No.138
    由紀から条件提示された10か条

また、「デートごっこ」のもうひとつの目的であった、
私のED回復についても、デートの報告をネタにして
自慰まで できたことは、あえて私からは話すことはせず、
また由紀から聞いてくることもありませんでした。

洗濯かごに放り込んだ 汚れたスウェットパンツや
トランクスから、彼女が気づいてくれれば それで良いと、
私はそれくらいに思っていました。

そのあと 私は由紀に軽く話しかけてみました。

「平尾に(食事代の)礼を言うたら、笑われたで」

「えー、そうなんだ・・・
 あっ 平尾さん、気分転換できた感じだった?」

あくまでも、平尾の気分転換や気晴らしを
由紀は気にしていましたが、

「どやろ、電話じゃわからんしな・・・」と私。

「そうよね・・・」

由紀との 今回のデートについての話は、
その後 当たり障りのない二言三言を交わした程度で
次のデートの段取りに入るまで、私たち夫婦の間で
話題になることはありませんでした。

“10か条”に沿っていると言えば それまでですが。

後日、平尾とも改めてデートのことについて
話をしたのですが、これといった新しいネタもなく、
前回と変わらない内容を、むしろ オモシロおかしく
余裕をもって、お互いが話し合えたくらいでした。

特に私の場合、“賢者の時間”真っ只中というのか、
前回のように、報告を聞いて 滾り昂っていたほどの
刺激を感じることはありませんでした。
その冷静さが、次のデートに向けての歩みを促す
きっかけになったのだと思います。

欲というのは厄介なもので、
私なりに今回 成功体験を得たこともあって、
次回のデートでは、より刺激的なこと、
更なるスリルとリスクを求めたくなっていたのです。

次のデートでは・・・

・由紀の外見に興奮したい とか、
(こちらのサイトにあるような、ミニスカートや
 ハイヒール、厚化粧、セクシーランジェリーを使用)

・平尾と由紀が危ない関係になってほしい とか、
(こちらのサイトにあるような、ラブホに行って
 やられまくって、帰宅時間が遅くなる)

・そして私の悪い癖なのかもしれませんが、
 由紀の過去をもっと知りたい 詳しく知りたい とか。

ただ、私から2回目デートの提案をするのは、
平尾に対して「お願い」をする形になってしまいます。
だから私は、平尾から「もう一度デートがしたい」と
言わせるように自然に促そうと考えました。

私から平尾には、

「で、気分転換できたんか? 気晴らしは?」
「結局、月曜日になると、お前は忙しいしな・・・」
「たかが一回だけで、寂しさなんか 埋まらんやろな」
「今回のデートが逆効果になっても あかんしな」

平尾からは、

「うん、久しぶりに楽しかったで・・・ありがとな」
「そうやなー、月曜日からは いつも通りやったしな・・・」
「そうやな・・・埋まったようで埋まってないかもな」

平尾は返すたびにトーンも暗くなっていきました。

そんな私からの誘導的な会話は、
決して しつこくならないように配慮しながら、
時には、違う話題(例えば温泉など)をきっかけに
するなど、電話とメールでアプローチをかけたのでした。

「そっか、でも奥さんは嫌がってないか?」と平尾。

「それはないと思うで、もともと半年くらいのスパンで
 考えてたし、何回か 気分転換が必要や、って
 あいつ自身も 理解してるし」

「そっか じゃぁまた ヤベちゃんの言葉に甘えさせて
 もらっても ええかな?」

「わかった、カミさんに いつ行けるか、聞いとくわ」

私も調子良く合わせました。
平尾からの希望に応えてあげる形で。

「すまんな・・・ 持つべきものは友やな」と平尾。

こうして平尾と私の間で、2回目のデートを
実施することが決まったのです。

平尾は「いつでも良い」とのことでしたが、
次の日曜日は、ウチの娘が帰省していることを、
彼は知っていた(由紀から聞いていた)みたいで、
「そこは無理やろ」と。

私も、今回1回目の翌週というのは 早すぎるかな?
という思いもあったのですが、
反面、“鉄は熱いうちに”という思いもあったので、
その次の、つまり翌々週の日曜日ということで
仮決めをして、私から由紀に伝えることにしました。

この後は、近場の温泉に行こう とか、
またメシでも とか、関係のない話題を 私は持ち出し、
デートの件を ぼやかしたのは言うまでもありません。

我が家に娘の麻里奈が帰省し、翌日曜日は母娘で
仲良く買い物に出かけました。
母娘の関係性というのは、旦那父親の立場であっても
どこか踏み込めない部分ってありますよね。

すごいな、というか、マジか と思ったのは、
ある日 三人で晩ご飯を囲んだときのことです。

何かの話をしている拍子に
由紀は、あのホームセンターに行ったことを
麻里奈に話し始めたのでした。
由紀は(私と)何度か行ったことがありますが、
麻里奈は一度も行ったことがないらしく、
興味津々で聞いていました。

(オイオイ、娘に話す気か?)と内心 とても焦る私。
「へぇー そこって どんなところ?」と普通に聞く娘。
そのホームセンターはどこにあり、どのくらいの広さだ、
とか 規模の話や品揃え(特にペットコーナー)の話を
する由紀。
もちろん誰と行ったなんてことは言わないし、
娘からすれば、当然 私と一緒に行ったことが前提で
話を聞いていたはずです。

当たり前ですが、デートの話は一切出ませんでした。
単なるホームセンター自体の会話だけで二人が
盛り上がっていた様子は、母娘の「独特の連帯感」を
感じる光景でした。

内心驚き 焦っていた私は、ホッとしたのと同時に、
なんとも不思議な気持ちになったのを覚えています。
一方で、もしかしたら由紀は私のことを、遠回しに
“試している?”くらいまで思っていました。

そんなホームセンタートークの終盤にさしかかる頃、
「また行くの?」「いつ行くの?」「一緒に行きたい」
などと娘が、私にとっての思ってもいないパスを
出してきたのでした。
まさにキラーパスでした(笑)

「うーん わかんないけど・・・いつかな?」
と、由紀は独り言のように答えたのですが、
微かに私を見たような気がしました。

そこで私は 待ってました! とばかりに・・・
「次の日曜でも エエで!」と、
この場では さすがに言えませんでしたが(汗)。

ある晩の食卓で繰り広げられたエピソードですが、
由紀からは、ごく普通の話をしているような
雰囲気しかありませんでした。
結局、それが彼女のデートに対する捉え方だった
のでしょう。

こちらのサイトの流れからすれば、
肉付きの良い妻は、トントンと次のデートも決まり、
旦那も積極的に他の男と、簡単に事を進めることが
できるのでしょうが・・・
私の場合は、なかなかうまくいかなかったのです。

娘 麻里奈はその夜、駅まで由紀の運転する車で向かい、
再び 遠く離れた勤務地に戻りました。


[79] Re: 覆水盆に返らずB  小太郎 :2025/08/24 (日) 08:37 ID:h5j./lxM No.203216
第一回のデートごっこの内容に興奮してオナニーまでしてしまった
矢部さんと娘さんとの世間話で平尾さんと訪れたホームセンターの
事を話している由紀さんとのコントラストが興味深いですね。

今デートごっこの出来事を日常として世間話にしている由紀さんが
これから回数を重ねるに従って、非日常の秘め事として自分の胸に
しまってしまうのか?
これからの由紀さんの変化に興味津々です。

続きを楽しみにしています。


[80] Re: 覆水盆に返らずB  進一 :2025/08/24 (日) 11:17 ID:WLv.jo6k No.203224
いつも変な想像をしてしまいすみません。
2回目のデートの報告を楽しみにしています。


[81] Re: 覆水盆に返らずB  中年ファン :2025/08/25 (月) 14:19 ID:FTtoGFyA No.203257
矢部さん。更新をしてくださりましてありがとうございました
先週、覆水盆に返らずに気が付いて読む始めました
感想はサスペンスとエロチックが詰まった素晴らしい内容とおもいます
ここの小説はハチャメチャで尻が軽い妻と軽薄な夫となぜか絶倫の間男が
すぐにエッチをするような嘘みたいな夢のような話しや
そんなうまいこといくわけないような話しばっかりが蔓延して
どれも一緒と飽きてきた中で矢部さんの話しは天然素材で無農薬で無香料で着色料もない自然食品のように感じます
読んでいくうちにその良さがわかってきました安心して読めるんですよ ^^
誘われてすぐにオマタをひらく女の話しはあきましたが
由紀さんのノーマルの主婦のすがたにエロさがある気がするんです
この先の話しに期待をしてます
誹謗中傷に負けずに
書いてください


[82] Re: 覆水盆に返らずB  夏休みは終わらない :2025/08/28 (木) 20:29 ID:XurjSm8s No.203319
早く続き読みたいです。
まだですか?


[83] Re: 覆水盆に返らずB  矢部 :2025/08/28 (木) 23:10 ID:doJrnX5E No.203322
小太郎様 いつもコメントをくださりありがとうございます。
>これからの由紀さんの変化に興味津々です。
そうですねー、少しずつですが・・・;;

進一様 いつもコメントをくださりありがとうございます。
>いつも変な想像をしてしまい
こちらのサイトだと、むしろその流れ、進一様の予想のほうが正解ですよね!

中年ファン様 コメントをくださりありがとうございます。
>この先の話しに期待をしてます
 励みになるコメントをありがとうございます。
 期待に沿えるのかどうか;; これからもよろしくお願い致します。

夏休みは終わらない様 コメントをくださりありがとうございます。
 遅筆につき、お待たせしてすみません

*****

2回目のデートの件を伝えたのは、水曜日。
夕飯を終え、由紀が食器を洗っている時でした。

この件については、あらたまって というよりも、
何かのついでのタイミングの方が 話しやすかった、
というのもあります。

平尾とは、4日後の日曜日に、ということで
仮決めをしていたので、早めに由紀の都合を聞く
必要もありました。
ただ昨日まで娘が帰省していた手前、なかなか
言い出すこともできず、私的にやきもきしていた
のが本音です。

「そういえば平尾が、カアサンと またお願いしても
 エエかなって、言うてきた・・・ どうやろ?
 あいつ、日曜日なら大丈夫みたいやけど」

水の音に紛れ、泡に包まれた指先をすすぎながら、
由紀は驚くわけでもなく 少し間を置いて、

「あー うん、わたしも別に・・・何もないし」

それだけの返事でした。

私と目は合わせることはなかったのですが、
声に特別な抑揚が入ることもなかったことや
無理をしているような気配も、気負いも、
どこにも見当たりませんでした。

まるで、日々の買い物や家事の延長のような、
ごく自然な受け止め方・・・
その自然体が、なにより私にとっては
ありがたく、深い安堵を覚えたのでした。

だから、と調子に乗ったわけではないのですが、
私はこの時とばかりに、

「カアサン、次のデート、スカートとか?」
「いちおうデートなんやし・・・」

オチャラケて、できるだけ軽いノリっぽく、
前回の「デートごっこ」で残念に思ったことを
それとなく伝えたつもりでしたが・・・

やはり声が上ずってしまった私の言い方が 曖昧で、
本音というか願望までは伝わっていなかったのかも、
いや むしろ変な形で伝わってしまったのか、

「はぁ? どういうこと?」と由紀。

至ってシンプル そして一気に冷たいトーンになって
返されました。

由紀は顔を上げて、(なんでそんなこと言うの?)
そんな表情で私を見ていました。

咄嗟に私は、余計なことを言ってしまった、
という思いと、返す言葉を用意していなかった
ことに焦ってしまい 口籠っていると、

「そんなことより、トオサン 治った?」

逆に由紀は冷静に本来のデートの"もう一つの"
目的に対しての、結果を訊いてきました。

面と向かって、「とりあえずオナニーできた」
なんて言えないですよね・・・
それに、先日 彼女が洗濯物を取り扱った際に、
絶対に気がついているはず、と思っていたので。

「あー それな、まぁ、いちおう・・・」
「なんとかなりそうな気はするんやけど」

恥ずかしさもあり、歯切れの悪い私は 続けて、
デートが刺激になったのは確かだが、
まだ完全に治っていなくて、苦戦をしていると。
それに、先日平尾に会った時の 彼の様子も
まだまだ不安定だったと、少し盛って伝えました。
(あくまでもデートは平尾のためで、
 自分はその次というアピールをしたつもり!)

「じゃぁ日曜日・・・ うん、わかった」と由紀。

それから当日まで、私たち夫婦の間では、
デートに関する話題は一切出ませんでした。

普段通りの会話をし、ごく普通の家庭生活を
送っていたのでした。
それぞれがあえて触れなかったのか、
触れずとも理解し合っていたのか、
「10か条」に沿っているといえば、それまでですが。

私は今回のデートに、
前回のような戸惑いや不安を感じていませんでした。
むしろ 正直に言えば、より濃厚な刺激を期待して
昂ぶっていたのです。

(もっと強い刺激を、もっと深い熱を)

前回の終了後に味わってしまった感覚や
知り得ることができた事実が、私の中で
“成功体験”として強く残っていたのですね。

そして いよいよデート当日の朝・・・

それはごく普通の朝の始まりでした。
由紀はいつも通りに起き、仕草や表情も変わりなく、
朝食を作り 洗濯物を干し 掃除をするなど、
淡々と家事をこなしていました。

前回のこともあり、早めの昼食を提案した際も、
彼女はごく普通に「そのほうが良いね」と応じました。

日曜日のルーティンを終え 早めの昼食(その時の
話題も娘のことだった、と記憶しています)を
済ませると、リビングは静寂に包まれていました。

私はテレビの画面を片目に、手元のスマホで
ヤフーニュースをぼんやり眺めながら、
時計をちらちらと見ていました。

やがて、階段を下りてくる由紀の足音がしました。

(スカート?)

私は淡い期待を胸に深呼吸をして、
彼女がリビングに入るのを待ちました。

微かな空気の揺れ、衣擦れの音に気配を感じ、
振り向くと 由紀が現れました。

その姿・・・

遠目から見る限り、前回とほとんど変わって
いませんでした。
いや、むしろ「同じ」だったと言っても
良いでしょう。

髪は丁寧にブローされ、メイクは薄化粧、
ただ、目元は いつもよりほんの少しだけ濃い
アイラインが引かれ、リップも、前回のピンクが
少し濃くなった気がしました。
(誤差の範囲かもしれませんが;;)

ネイビーのカーディガンは羽織らずに
手に持ったまま。

いつもならアクセサリー類は着けない彼女ですが、
耳元には前回と同じ小さなパールのイヤリング。

トップスは白のクルーネックのTシャツ。

ボトムスは前回と同じ濃いブラウンの綿パンツ。
ヒップラインを隠すような、ゆったりシルエットで、
いわゆる“女を出す”装いには見えませんでした。

(やっぱり、前回と同じか・・・)

私はその瞬間、期待外れ/残念といった気持ちと、
どこか安心した気持ちが混在していました。
この時 胸の奥で、ふっと緊張が解れたのです。

一見すると、前回とほとんど違いのない
平凡な普通の外見の由紀・・・

(あれ?)

ところがパンツから覗く彼女の足元の変化が
私の目に はっきりと映ってしまったのでした。
映っただけではなく、喉の奥に引っかかるような
違和感と、昂ぶりを伴う焦りが一気に込み上げて
きたのです。

前回、綿パンツの裾から覗いていた足元は、
単色グレーの靴下でした。
しかし今回はベージュのストッキングだったのです。
肌にぴたりと沿い ほんのり光沢を帯びたナイロンの
艶めく質感が、しっかりと私の目を捉えて
離しませんでした。

たかが足元の微細な変化・・・
それでも私の胸の奥に、違和感と期待を同時に
呼び覚ましたのです。

(マジか・・・)

私は刺激を得始めていたのでした。

「この程度の事で大袈裟だ」と ここのサイト投稿者の
皆様方に笑われてしまうくらいのツボですが、
この時、本当に私はビビってしまった記憶があります。

そして更に・・・


[84] Re: 覆水盆に返らずB  小太郎 :2025/08/28 (木) 23:52 ID:Dg5iOWaQ No.203323
いよいよ2回目のデートですね。
由紀さんの装いの変化、残念ながらまだスカートでは
なかったですが、グレーのソックスからベージュの
ストッキングに変化していたのですね。
その変化が由紀さんのデートごっこに対する気持ちの
変化を現していますね。
更なる変化があったのでしょうか?

続きを楽しみにしています。


[85] Re: 覆水盆に返らずB  進一 :2025/08/29 (金) 12:41 ID:hCrE9aKw No.203330
更新有り難うございます。
2度目のデートの朝を迎えましたね。
前回とほぼ同じような装いで期待外れの感がありましたね。
しかし、アイメイクが少し濃いめなのと靴下ではなくストッキングはパンストだったのでしょうか?
「そして更に・・・」が気になりますね。


[86] Re: 覆水盆に返らずB  :2025/08/30 (土) 00:08 ID:1JLHdqSM No.203336
今週は二回の更新ありがとうございます! 
楽しみ待っいます。


[87] Re: 覆水盆に返らずB  倍胡坐 :2025/08/30 (土) 03:45 ID:qg2L5Yek No.203339
着衣の変化は人間関係の変化に通じると思います。
前回ははじめてということもあったのでしょうか、
由紀さんなりの「探り」の結果がソックスという結論。
あくまでも日常の延長での様子見だったのかも知れませんね。

由紀さんの意識の中にあるソックスからストッキングという変化は
夫の友人との日常的な関係性から踏み出しつつあるようにも思えます。
普段着をベースとしながらも、その内側の変化が気になります。
勝負服や戦闘服といっては大袈裟でまだ微妙な変化でしかありませんが、
夫抜きの男と女としての関係性への発展を想像させられてしまいます。

そして更に・・・が気になります。
ひょっとして、由紀さんのTシャツから透けて見えるものが、
定番のベージュではなかった・・・とか?
相変わらずの矢部さんの焦らしに期待大です。


[88] Re: 覆水盆に返らずB  ざるそば :2025/08/31 (日) 00:41 ID:zsxndHDY No.203364
更新ありがとうございます。
靴下からストッキングとは急展開ですね。
2回目のデート報告が待ちきれません。


[89] Re: 覆水盆に返らずB  中年ファン :2025/08/31 (日) 10:01 ID:jxbfRktQ No.203373
矢部さん。
更新をしてくださいましてありがとうございました
由紀さん二回めのデートにむかう姿で
矢部さん興奮するのと同じで読者も興奮してます
Hのシーンはない  それでも矢部さんの話しはふつうの日の日常場面がふつうに書かれていますからとても現実的です
足もとのストッキングだけでも興奮できるんです
すぐにHが簡単にできるうそみたいな話しより現実的だとおもいます
だから人気あるんでしょう  天然素材で無農薬で自然食品のように思えます
エロHばかりして簡単に寝取られる夫婦はふつうの日常はぎくしゃくして過ごせないと思います
それにいくらなんでもふつうの妻はほかのオトコと簡単にHしません。なかなか簡単に寝取られません
ごくふつうの妻の話しが一番興奮します
次の話し楽しみに待ってます


[90] Re: 覆水盆に返らずB  矢部 :2025/09/03 (水) 00:39 ID:O9vCgp6. No.203438
小太郎様 いつもコメントをくださりありがとうございます。
>由紀さんの装いの変化、残念ながらまだスカートではなかった
・その通りです。なかなか地味で固い女です、
 もっと、ほかの投稿小説内の女性のように華やかで積極的だったら、
 と 何度思ったことか;;;

進一様 いつもコメントをくださりありがとうございます。
>同じような装いで期待外れの感がありましたね
・そうですね・・・たまには期待に応えてほしいですよね;;

秀様 コメントをくださりありがとうございます。
>今週は二回の更新
・励みになるコメントをありがとうございます。
 たまたま二回投稿できたということで・・・これからもよろしくお願い致します。

倍胡坐様 いつもコメントをくださりありがとうございます。
 鋭いコメントに、もしかして倍胡坐様は、平尾では?とビックリしてました(笑)

ざるそば様 コメントをくださりありがとうございます。
> 2回目のデート報告が待ちきれません。
・とても励みになり、勇気をいただけるコメントありがとうございます。

中年ファン様 コメントをくださりありがとうございます。
> ふつうの日の日常場面がふつうに書かれていますからとても現実的
・とても深く読み取っていただき嬉しいです。
 そうですね、良い意味で味気のない日常を過ごしていました。

*****

「さて 時間やし、そろそろ行こか〜」

そう口にしながらも、私は由紀の足元・・・
ベージュのストッキングに包まれたつま先を、
目の端で何度も追っていたのでした。

もちろん、気づかれぬように・・・
そう心掛けたつもりでしたが、どうだったでしょうか。
それでも、女の勘? 女性特有の気づき? なのか
案の定、由紀は私と目を合わせようとはせず、
むしろわずかに口元を綻ばせているように見えました。
いや、そう見えた“ような気がした”のかもしれません。
自分でもわかるくらいまでに私は狼狽えていたのでした。

「うん・・・」

少しだけ間を置いて由紀が頷き、
アイボリーのショルダーバッグを片手に、
くるりと身を翻して玄関へ向かいました。

その後ろ姿を、私は無意識のうちに目で追っていました。
そして、気づいてしまったのです。

白いTシャツの後ろ姿・・・
いつものような機能的なアンダーシャツとは異なるもの
が隠れていたことに。

左右の肩に それぞれ2本、合わせて縦に4本の
ストラップが掛かり、背中真ん中あたりには帯状に
繊細な花模様のレース刺繍が、薄っすらと控えめながらも
確かな存在感を放っていました。

前回、あれほど淡泊で実用的な下着を使用していた彼女が、
今日に限って身に着けていたのは、
色はおそらくベージュ色のキャミソールでした。
私的には、少なくとも「透け防止のインナー」と呼ぶには、
やや装いが過ぎているようにも見えました。

ふと、胸の内に動揺と波紋が広がりました。

(これって・・・わざわざ選んだのか?)

あくまで私の思い込みかもしれません。
心の中に波紋が広がるのを感じながら、私は咄嗟に
そう思っていたのでした。

もちろん、ただの偶然かもしれません。
決して派手でも、露骨でもなく、
極端に攻めた装いでもなかったわけですから。
何かのついでに手に取っただけなのかもしれません。

ですが・・・

その時は、“わざとではない”ことが、
逆に“わざとらしい”と感じられたのでした。

そして次の瞬間も 私は心を揺さぶられました。

由紀がシューズボックスから取り出したのは、
ローファーでもスニーカーでもなく、
黒のスエード調でカジュアルな ローヒールの
パンプスだったのです。

その靴を由紀が玄関の床に置いた瞬間、
「コツン」と軽く響いた音。
1センチにも満たない程度の低いヒール・・・
それでも “ヒール”であることに変わりはないわけで、
私は その特別感にさらに昂ってしまったのでした。

努めて平静を装いながら、私は茶化すように
由紀に声をかけたのでした。

「そんな靴、あったん?・・・ ええやん、それ」

「これ? たま〜に履いてるし、この前もマリちゃん(娘)
と出た時も、これだったけど・・・」

由紀は淡々と答え、何気ない仕草でストッキングに
包まれた足先を、すっと パンプスに収めました。
その動作を見ているだけで、私は胸の奥に熱が灯るのを
感じました。

車に乗り込むまでのわずかな距離でも、
パンプスの「コツコツ」という軽やかな音が、
やけに新鮮に響き 耳に残りました。
そしてそれは、私の中で焦りとも昂りともつかない感情が
胸をざわつかせたのでした。

車内では、最初こそ娘の話や、最近音沙汰のない息子の話題
で盛り上がりました。
親というものは、どんな状況でも子どもの話となれば、
つい 口数が増えてしまうものですね。

けれど それも長くは続かず、やがて会話は
静かに途切れていきました。

その沈黙を破ったのは、後部座席からの由紀の声でした。

「平尾さんと どんな話をしたら良いかなぁ?」

これまでも幾度となく触れていますが、
このデートの目的は平尾を元気づけるためのものです。
彼にリラックスしてもらい、彼にたくさん語らせて、
心地良いひとときを過ごすことで気晴らしや気分転換を
してもらう・・・。
けれども、前回デート中は、ほとんど平尾が話題を提供し、
むしろ由紀に対して気を遣ってくれていたような
展開になってしまったことを、彼女はとても気にしていた
のでした。

私はできるだけ軽い口調で応じました。

「気ぃ遣うことが、あいつの気晴らしに なってるんや」
「そんなもんやろ・・・ 知らんけど(笑)」

男としては、自分がどうであれ、やっぱり女性には
気を遣うもの、カッコつけたい気持ちは男なら誰しもある、
という事を由紀に話しました。

続いて私は、

「カアサンからの振りは、テキトーで えんちゃうか」
「趣味の話・・・ガーデニング好き、でも虫は嫌い とか」
「なんやったら またホームセンター行ったらえーやん」

「あ〜 そっか・・・ それいいね」と由紀。

そんな話をしながらも私はデートの話題になった時点で、
由紀へのアドバイスなんてことよりも、再び 由紀自身の
格好のことが気になっていたのでした。
由紀から平尾への会話よりも、由紀に対する平尾の視線が
気になっていたのです。

当然、平尾も由紀の背中を見るに違いない、
背中に透けていたキャミソールやパンプスに
どう反応するのか。
平尾は変に勘違いをするかもしれない・・・。

冷静に考えれば、あくまでも(フェチ色の強い)私のツボ
であって、平尾にとっては、全く関係のない興味のない
由紀の外見かもしれないのですよね・・・
それでも半日とはいえ、今日のこの姿の由紀と
デートをする平尾に私は、半ば嫉妬にも似た気持ちで、
胸の高鳴りを抑えきれませんでした。

「今日は曇ってるし、肌寒いやろな」
「ずっとそのカーディガン着とった方が ええで」
「寒そうにしてたら、あいつ 気ぃ遣うかもしれんしな」

そう言いながら、私は由紀にカーディガンを羽織って
おいてほしいと思っていました。

(平尾に背中を見せたくない、いや 見せてはいけない)

そんな思いを込めていたのでした。

ルームミラーに映った彼女の耳元では、
小さなパールのイヤリングが微かに揺れていました。

その瞬間、ふと、思いがけない想像が脳裏をよぎりました。

(もし、平尾に誘惑されてしまったら、由紀は?)

という 自分でも驚くような想像でした。

もちろん ただの妄想です。
しかし私の胸の中に言葉にしがたいざわめきを生み、
そしてそれが昂ぶりにも似た感覚を引き起こしていた
のでした。
そして そのざわめきは、私をますます昂らせて
いきました。

キャミソールを着て、ストッキングとパンプスを
履いている由紀・・・
車の中で私のすぐ後ろ、手を伸ばせば届くところに
彼女がいるにもかかわらず、その姿が拝めないことも、
平尾に対するジェラシーと被虐的な感情に
興奮していたことを覚えています。

指定時間の13時30分より少し前・・・
私の車は待ち合わせ場所である牧里駅のロータリーに
入る手前の信号で停車しました。
視線の先には、すでに白いアウディクーペが路肩に寄せて
ハザードランプを点滅させ停まっていたのです。

「あいつ、もう来てるで!」

私がわざと大袈裟に声を上げると、

「・・・うん」

由紀は少し硬い声で応じました。

私は少しでも空気を和らげるつもりで続けました。

「あいつ、昨日から待ってたんとちゃうか?(笑)」

けれど、由紀は笑わず 小さく頷いただけでした。

私はそのまま、アウディの後ろに車を着けました。

「あ、トオサン 洗濯物と炊飯器、お願いね・・・」

「おぅ 気ぃつけてな・・・」

「うん・・・ じゃぁ」と由紀。

そう言って、スライドドアを開け 車を降りたのと同時に、
平尾もアウディから降りてきました。
カジュアルな格好の彼は、その場に立ったまま、
サングラスを外し、私に向けて ぺこりと頭を下げながら
笑顔で手を挙げてきました。

私も精一杯の作り笑顔で、ハンドルに乗せた右手のひら
だけを上げて応えました。

ネイビーのカーディガンを羽織った由紀も、
アウディの助手席側に立ち、照れたようなハニカミ笑顔で
私に軽く手を振り、そのまま助手席に乗り込みました。

その時の彼女の姿は、何気ない日常の延長に見えましたが、
私の中には前回とは違った言葉にできない複雑な感情が
渦を巻いていました。
不安、期待、嫉妬、独占欲・・・
どれも当てはまるようで、どれでもないような感情でした。

「乗っちゃったか」

ひとりぼっちになった私は、ため息まじりに呟き、
そのままブレーキを解除した その瞬間でした・・・

(しまった!※)

※大したことではありませんが 私にはストレスでした;;


[91] Re: 覆水盆に返らずB  小太郎 :2025/09/03 (水) 05:02 ID:5qAd3SJM No.203439
前回と異なり、キャミソールを着て、ストッキングとパンプスを
履いた由紀さんは、完全にデートの装いですね。
この変化に平尾さんも当然気付き、由紀さんの気持ちの変化を
肌で感じるのでしょうね。
そんな平尾さんも由紀さんに本当のデートのようにもてなし
二人の距離が更に縮まっていくのでしょうか?

続きを楽しみにしています。


[92] Re: 覆水盆に返らずB  進一 :2025/09/03 (水) 18:37 ID:b.b2ILJ2 No.203462
毎回何度も読み返しています。
時には最初の方の投稿も読み返すこともあります。
由紀さんと平尾さんと2回目のデートになりましたね。
由紀さんの装いも少しづつ「女」をアピールしているのだと思います。
羽織っているカーディガンを脱ぎ、背中にレース模様のキャミソールを見たら私だたらそそられますね。


[93] Re: 覆水盆に返らずB  けんけん :2025/09/04 (木) 05:20 ID:abF152Kg No.203470
矢部さま、更新ありがとうございます。
昨日@からBまで一気に読ませていただきました!奥様の服装や、足元の変化をうまく表現されてて、このジワリジワリ感が堪りません。
非常に楽しみな読み応えのある作品に久しぶりに出会えました。ありがとうございます。これからも引き続きよろしくお願いします。

[94] Re: 覆水盆に返らずB  倍胡坐 :2025/09/05 (金) 17:59 ID:KvLqjkEU No.203520
平尾さんと男女の一線を越えてしまうことなど、
由紀さんにとってはあってはいけないことなのだと思います。

とはいえ、二回目のデートともなれば、
いくら由紀さんが否定してみたところで、
成り行きか何かでそうなってしまうことだってありえます。
自分の意思とは別だとしても、現実にあり得ることとして
由紀さんがそんなハプニングまでをも想定していたかどうか。
とても気になります。

矢部さんと目を合わせようとしなかった由紀さんには、
もしかしたら、そうしたことの後ろめたさがあったのかも。

透け防止の中のブラとショーツまで見ることができれば、
デートに向かう由紀さんの心持を知ることができたかも知れませんね。

続き、お待ちしております。


[95] Re: 覆水盆に返らずB  西門 :2025/09/08 (月) 16:29 ID:CfzRSc7c No.203621
由紀さんの微かな変化に由紀さんが平尾さんの男を意識しているのではないかと
気付いて戸惑うことになってしまった矢部さんの心情の細やかさに感心させられています。

また、「(しまった!※)」の矢部さんのストレスは帰宅予定を聞いていないことだった
のだろうと勝手に推理しつつ、矢部さんの読者を引き込む巧みな書き手の技巧に引き込まれ、
帰宅時の由紀さんの風情の書き込みを待ち侘びています。


[96] Re: 覆水盆に返らずB  矢部 :2025/09/10 (水) 00:29 ID:dlh6H.Uk No.203665
小太郎様 いつもコメントをくださりありがとうございます。
>二人の距離が更に縮まっていくのでしょうか?
・そうですねー、劇的な接近はないにしても、少しずつでしょうかね。

進一様 いつもコメントをくださりありがとうございます。
>私だったらそそられますね
・私もそそられます、しかし由紀自身がそれを意識して着ていたのかどうかですね
 この時点ではまだ?

けんけん様 コメントをくださりありがとうございます。
>@からBまで一気に読ませていただきました!
・ありがとうございます。遅筆で進行も遅くて申し訳ないのですが、
 今後もよろしくお願い致します。

倍胡坐様 いつもコメントをくださりありがとうございます。
>由紀さんにとってはあってはいけないこと
・そうですね、さすがにまだデートも2回目ですし、
 いちおう旦那(私)の親友ですからね・・・

西門様 コメントをくださりありがとうございます。
>勝手に推理しつつ
・このお言葉、とても嬉しかったです。楽しんで読んでくださっているのが伝わりました、
 投稿冥利に尽きます! どうか今後もよろしくお願い致します。


*****

(しまった!)

私はその瞬間、自分の見通しの甘さを悔いました。

この時、由紀が乗った停車中の平尾のアウディの
すぐ後ろに、私の軽自動車が停車していたのですが、
この状態というのは、前回失敗した尾行をしようにも、
近すぎて実施困難であることに気がついたのでした。

(あかん、これやと付けられへん・・・)

ならば先にアウディに発車してもらい、
十分な車間を取ってから追いかけよう。
すぐに小賢しい考えが脳裏をよぎりました。

ところが、前方のアウディはまるで私の動きを
見透かしているかのように、
ハザードランプを点滅させたまま 全く微動だに
しなかったのです。

(はよ行けや・・・なんでオレが先に動かなあかんのや)

時間にすれば、ほんの1・2分だったかもしれません。
それでも時間を無駄にしている焦りと、
私の考えなんてお見通しとばかりに、
微動だにしないアウディが醸し出す雰囲気に
「根負け」した私は観念してアクセルを踏み、
アウディを追い越すようにしてロータリーを出ました。

案の定、私の車の後ろにアウディがぴたりと付き、
私はまるで気持ちまで煽られているかのような
妙な圧迫感を覚えた記憶があります。
その間に募った焦りと後悔、そして屈辱は思いのほか
大きなものでした。

そしてルームミラー越しに見える二人は
会話を弾ませ笑みを交わしていました。

(オレのことを話題にして笑ってるんじゃないか?)

そう考えてしまう自分が情けないとわかっていながらも、
被害的妄想は止まりませんでした。
悔しさと胸を締めつけるような怒りが、
私を支配していきました。

そして数百メートル先の国道に接続するT字路で
私は左折、当然のように?アウディは右折して、
私たちの車は完全に離れました。
その別れ際、「ププッ」と軽く鳴らされたホーン2回。
何の気なしの挨拶なのかもしれませんが、
私はどこか屈辱めいたものを感じたのでした。

自宅に戻った私は、玄関を閉めた途端、
深い静寂に包まれました。

音のない部屋・・・
わかってはいたものの、前回同様に時計の針だけが
淡々と時を刻んでいるのが、やけに耳につきました。

胸に渦巻いていたのは、前回のデートの時のような
焦燥や苛立ち、抗えない嫉妬に近い感情だけでは
ありませんでした。
それ以上に、自分だけが取り残されたような
疎外感から来る怒り、そして敗北感や無力感が、
私の胸の内で膨れ上がっていたのでした。

たしかに、年齢的にも感情の起伏は激しく
怒りっぽくなっていたんですよね・・・
それは自覚していたつもりだったのですが。

この時点で、由紀が帰宅するまで、
まだ4時間近くもありました。

とにかく自分をなだめようと、ソファに沈み込み、
深呼吸を繰り返しながら、私は由紀の姿を思い出して
いました。

白い長袖Tシャツにうっすらと透けたキャミソールの
レースの刺繍、パンプスから響いた「コツコツ」という
小気味よい靴音、ベージュの薄いストッキングに
包まれた艶めかしい足先・・・。

ふと私は、気を紛らわせようとしたわけではないの
ですが、まるで引き寄せられるように、知らず知らずの
うちに彼女の部屋へと足を運んでいました。
素直に 由紀の残り香に触れたかった、そして自分の心を
落ち着かせたかったのかもしれません。

由紀の部屋・・・
すぐに目に留まった 隅にあったダストボックスから
はみ出し覗いていた包装紙の切れ端。
それはパンティストッキングのパッケージだというのは
すぐにわかりました。
前回、彼女の部屋で見た未開封のそれだったのでした。

(今日のために買ってたのか?)
(なぜ、前回ではなく今日?)
(どんな思いで?履いたのか)
(キャミソールにした理由は?)

包装紙の残骸を見ながらいろいろな思い・・・
それは、自分で自分を ネガティブな方向に
追い込むかのような問いかけをしていたのでした。

そんなことを考えながら、
由紀の纏う光沢のあるキャミソールや
薄いベールのようなストッキングに手を這わせたい、
そんな衝動が沸き上がってきたのでした。

でも、事実 今、彼女は平尾のもとにいる・・・
もしかしたら平尾は今頃?

「くそっ!」

妄想に妄想を繰り返すうちに、フツフツとした怒りと
何もできない自分の無力感への腹立たしさは、
逆に私の下半身に勢いを与えてくれたのでした。

チノパンの上から然るべき部分に右手を添えた私は、
迷いもなく由紀のタンスを開け、畳まれた薄いピンクの
スリップの表面だけを慎重に、左の手の平や手の甲を
そっと当てて、撫で擦り滑らかな感触を味わいながら、
瞑った瞼の裏には実際に目にした由紀の背中の4本線、
そして花模様のレースの刺繍、そしてそこからの
由紀のキャミソール姿を思い浮かべていました。

更に、(平尾はもしかして?)と思い込むことで
私は胸のざわめきをさらに強くさせて、
自分を追い込みながら昂っていたのです。

もちろんその昂りは下半身(ペニスを擦る右手)に
集中してしまいました。

由紀の後ろ姿の記憶をなぞるように・・・

当然の流れのごとく、私の右手は静かに動き出しました。
その後は、このまま自らの欲望に任せ手をあてたまま
男なら誰しも味わえる至福の世界へと向かって・・・

ただ・・・

手の中に感じるべき熱は、思ったほどには
湧き上がらなかったのです。
大事な部分から、なかなか手ごたえが感じられないまま、
次第に焦りの気持ちのほうが強くなってきたのでした。

(こんな時に使えないのか)

思えば思うほど逆に萎えてしまう、手にしかけたものが、
少しずつ遠ざかっていく感覚。

(おいおい 待ってくれ・・・ まだやのに・・・)

やるせない思いから いつしか私は気持ちが覚醒して
しまい、情けなさと悔しさ、やるせなさを抱えたまま、
ため息と共に由紀の部屋を後にしたのでした。

それでも一縷の望みは、由紀が帰宅後にしてくれるで
あろうデートの報告でした。
前回の成功体験のようになることを期待しながら、
ひたすら彼女の帰宅を待つことに決めたのでした。

それにしても今日の由紀の装いを見る限り、
彼女の思いは、いったいどこに向かっているのだろう。

冷静になった私でしたが、

(由紀にとっては、今日のデートのためにたまたま
 選んだ格好であって、前回の装いとの比較は、
 単にオレの思考の先走りに過ぎないのか?)
(彼女は今日の服装で平尾にどんな風に
 エスコートされているのだろうか?)
(そして、由紀はどんな表情で平尾に接している?)

待て待て、焦るな焦るな・・・

そう心の中で唱えても、胸のざわめきだけは
ますます強くなるばかりで、
気づけば、私は車のキーを握りしめていたのでした。

ふと思い立ったのです。

「ホームセンターに行ってみよう」と。

(そんな情けないことはやめとけ)
(そもそも二人がそこに来るとは限らない)
(もしも二人の姿が発見出来たら出来たで
 辛い思いをする)
(それに二人に鉢合わせでもしたら、
 本当にみっともない)
(逆に、彼らが いなかったらいなかったでモヤモヤする)

とりあえず、これからの起こり得るであろう事について
いろいろな思いを巡らせることができるくらいに、
私はまだ一応冷静だったのかもしれません。

それでも、やっぱり二人を「見てみたい」・・・
そんな衝動が、また心を支配していったのです。

(店の中をちょっと覗くだけ・・・ それだけや)

結局、私は欲望には勝てなかったのでした。

私の軽自動車は海岸通りまでは快走していました。
最初こそ順調でしたが、日曜日午後ということもあり、
やがて道は混み合い、ついには渋滞に巻き込まれて
しまいました。

目的地に向かう気持ちがある以上は、
早く着きたい、早く行って、二人の姿を見てみたい・・・
逸る気持ちが、渋滞という現実に焦りを生み、
狭い車内に一人でイライラするしかなく、
時間は刻一刻と過ぎていくのに、車は進まず、
焦りと苛立ち、そして怒りが募っていったのでした。

まるで、自分の未練や執着が
この渋滞を生み出しているような気さえしていました。

ふと上空を見上げると、
厚い雲が空を覆い始めていました。

「あ、洗濯物、干したままや・・・」

ポツリと呟いたその独り言が、私を直ちに現実へと
引き戻しました。

これ以上モタモタしていても 何も得るものはない。
いや、そんなことは最初からわかっていたはず、
でした。

私はUターンし、家へと戻ることにしたのでした。

帰宅後、洗濯物を取り込んだ直後、雨が激しく
降り始めたのです。
(定番のデカパンも もちろん取り込みました;;)

窓の外を眺めながら、私はため息をひとつつき、
ソファに腰を下ろしました。

今頃、二人は何をしているのだろうか・・・

そんな思いを馳せながら、時計はまだ16時過ぎ。

リビングで一人私は、ただぼんやりとテレビの画面を
眺めたり、ソファでため息をついて背伸びをしたり、
フロアに寝転がったり、窓の外を見たり、
スマホで動画を観たり、経たない時間に苛立ちながら、
なんとか時間を過ごしました。

前回のデートでは由紀は予定の18:30よりも
早く帰宅しました、

今回も? と、
いつのまにか そんな期待もしていました。

18:00を過ぎると、そろそろかな?
1分1秒、私は由紀の帰宅を待ち焦がれていたのでした。

「18:15やのに・・・ まだか? 何してるんや」
「どないしたんや? もう18:23やで・・・」
18:30が、そもそもの時間なのに勝手ですよね。

頭の中で自然にカウントダウンが始まってすぐに、

「ピンポーーン」そして鍵を開ける音。

「ただいま〜」 由紀が帰宅しました。

「おぉ、もうこんな時間やったんやな、おつかれさん」

私は最大限のオトボケで彼女を家の中に迎えたのでした。


*****
戯言:

ここまで2回、平尾とのデート「ごっこ」を終えた
由紀でしたが、当時の私も、男の性(サガ)というか、
由紀の外見、特に洋服や下着の変化には、当初から
かなりの期待と注目をしていました。
結論から言えば、
「妻と勃起した男たち」サイトの投稿小説の流れや
傾向から、期待されているミニスカート姿とか
セクシーなランジェリーとか、ましてノーパンノーブラ
など、男目線に対して性的煽情的にそそるような格好を
彼女がしたことは、「残念ながら最後までなかった」
ことをお伝えしておきます。
(私の場合、そこまで甘くなかったのです;;(涙))
ご愛読いただく皆様の期待を外してしまい申し訳ない
のですが、むしろ彼女的には、回が進むにつれ、
平尾のことを、「男」としての意識することについて、
できるだけ隠したい、気持ちを悟られたくない、
たとえ私に気付かれていたとしてもシラを切り通したい、
そんな思いがあったのかな? と推察しています。
私の本音を言えば、彼女なりの煽情的な格好をして、
他の男に会って欲しかったという願望はあったのですが、
彼女が無頓着なのか、平凡すぎるのか、単に地味なのか、
それとも むしろこれが一般的現実的なのか、
外見という点では、彼女の変化はほとんど
感じることもなく、むしろ言動や行動から、
もしかしたら? と思えるようなシーンがあったかな、
というのが今後のプチ予告です。


[97] Re: 覆水盆に返らずB  小太郎 :2025/09/10 (水) 07:37 ID:ZhJeKAoA No.203672
キャミソール、ストッキングとパンプスの装いに由紀さんが変えた
理由、気になりますよね。デート後の由紀さんからの報告で
その理由を聞くことが出来たのでしょうか?

矢部さんがホームセンターに行こうとした気持ち、とてもよく
分かります。平尾さんとの二人きりの時の由紀さんの姿、表情
仕草を見てみたいと思いますよね。
3回目以降のデートで、矢部さんはこっそりデート中の二人を
見に行くのでしょうか?
由紀さんからのデートの報告、気になります。
続きを楽しみにしています。


[98] Re: 覆水盆に返らずB  ざるそば :2025/09/12 (金) 05:12 ID:ANWeJVpk No.203733
投稿ありがとうございます。
今回も奥様のデートを待ってる間の被虐的な心理描写が素晴らしかったです。
他の投稿で見られるような、デートの度にミニスカートに変わっただとか下着がセクシーなものに
変わっただとかは、ありふれすぎていて現実的ではないのかもしれませんね。
矢部さんにしかわからない奥様のちょっとした変化こそが読み手の興奮材料です。
今後少しずつ変わるあろう奥様の様子が楽しみです。


[99] Re: 覆水盆に返らずB  おろしぶっかけ肉うどん :2025/09/13 (土) 16:10 ID:V.VyvE.w No.203784
ざるそばさん、言うとうりです、ほかの投稿よりも
この話しは現実的ですから自分に置換えやすい。
自分の妻がゆき様と同じ様な気がするんです。
主人公の気持ちがとてもよく分かる話しですね。


[100] Re: 覆水盆に返らずB  だいご :2025/09/14 (日) 14:11 ID:l4/NHdfg No.203823
@での3月以来のレスです。
しばらく拝見するのをサボってましたら追いつくのが大変でした。
このように詳細な経過、心情を書いていただいているとはちょっと驚きです。
新聞の連載小説と思ってこれからも楽しみに読ませていただきます。

由紀さんは
かつて高校卒業したばかりの年下の車好きのやんちゃな彼氏と同棲までしていた。
スナックでのバイト歴もある。
性の相性も良かったからかまだ経済力も無いような彼と結婚まで考えておられた。
このようなことは密かに由紀さんの奥深くに眠っていた本性(言葉は悪いですが)なのかもと思いました。ごく普通の家庭に生活をしてこれが幸せというものなのだと自分に言い聞かせていろいろなものを閉じ込めて暮らしてこられたのではないでしょうか。
アウディに乗る魅力ある大人の男性に定期的に逢えば徐々に惹かれていくのは自然なことかもしれませんね。

離婚後、無二の親友である平尾さんとは結婚はせずに一人でひっそりと(平尾氏の援助は受けながら)暮らしておられるのかなと想像しています。
すみません、勝手な妄想でした。
これからも末永く投稿を続けていただきますよう楽しみにお待ちしております。


[101] Re: 覆水盆に返らずB  けんけん :2025/09/16 (火) 18:57 ID:xQQbPGwQ No.203909
矢部さま、更新ありがとうございます。
ご主人の奥様に対する感情に同情致します。ご主人自身で率先して、デートを勧めたとはいえ、奥様の服装や足元の変化に、嫉妬してしまいますよね。
この辺が私にとってツボです。
本当に細かい変化が気になって仕方ないですね。
奥様もやはり女性なんですね。続きお待ちしてます。頑張ってください!

[102] Re: 覆水盆に返らずB  矢部 :2025/09/18 (木) 11:10 ID:6ucqZOfI No.203950
小太郎様 いつもコメントをくださりありがとうございます。
>由紀さんからのデートの報告、気になります。
・そうですねー、ただ由紀からの報告はいつも通りだった気がします。
 但し、性格もあるのかもしれませんが、女というのは「わからない」生き物ですからね・・・

ざるそば様 いつもコメントをくださりありがとうございます。
>奥様のちょっとした変化こそが読み手の興奮材料
・ありがとうございます!
 正直、もっと変化してほしいと思ってましたが、現実はそう甘くはないですよね。

おろしぶっかけ肉うどん様 コメントをくださりありがとうございます。
>自分に置換えやすい
・そのようにして読んでくださるのは嬉しいです。今後もよろしくお願い致します。

だいご様 コメントをくださりありがとうございます。
>新聞の連載小説と思ってこれからも楽しみに読ませていただきます。
・ありがとうございます。遅筆で展開も遅いのですが、今後もよろしくお願い致します。

けんけん様 コメントをくださりありがとうございます。
>この辺が私にとってツボです。
・もしかすると私とツボが似ているのかもしれないですね!
 どうか今後もよろしくお願い致します。


*****


(ヨシッ! ちゃんと羽織ってくれてるやん・・・)

雨の中を帰宅した由紀に対し、私がまず気にしたのは
恥ずかしながら、由紀がネイビーのカーディガンを
羽織っていたのかどうか、ということでした。

とりあえず そこはクリアということで、
ひとまず安心したのでした。
(こういうところが小心者なんですよね;;)

今回のデート直前、由紀の白いTシャツの背中に、
キャミソールの繊細なレース模様がほんのりと透けて
浮かび上がっていました。

その時に私は咄嗟に思ったのです。
平尾にはその背中を絶対に見られたくない、と。

だからこそデートの時は ずっと由紀にカーディガンを
羽織って、背中を隠しておいてほしいと思っていた
のでした。

(但し、途中で脱いだ可能性もあるのですけどね、
 まぁ、そこは大目に・・・;;)

※小太郎様がコメントをくださっていた、
-“キャミソール、ストッキングとパンプスの装い”
-その理由は? 
-当時、小心者の私は聞き出すこと できませんでした。
-聞きたくてもなかなかやっぱり難しかったです。

帰宅した由紀が手にしていたレジ袋からは、
前回デートの帰宅時と同じく、「たこ焼き」が
取り出されました。
かすかに漂ってきたソースの香りが、
不思議と私の胸のざわつきを和らげてくれたような
気がしたのを覚えています。

「これ買ってきたから、あとで食べよう〜」と由紀。

「おっ サンキュー! また買ってきてくれたんやな、
 あそこ(ショッピングモール)の店のは旨いよな!」

本当は平尾とのデートの報告を、
何よりも早く聞きたくて仕方がないくせに、
強がって 余裕の態度の私・・・

「すっごい雨 降ったやろ? 
 洗濯モン、間一髪 取り込んどいたで!!」

「あ〜 今もまだ少し降っているけど・・・
 すごいのが降ったよね・・・ ありがとう♪」

由紀は機嫌良く私に返しながら、部屋着に着替えるため
自室へと階段を上がっていきました。

本音は、由紀の背中に透けるキャミソールのレースと
両肩4本の肩紐と、そしてストッキングのつま先を
拝みたかったのです。
ただそんなにうまくいくはずもなく、密かな楽しみが
あっさりと断ち切られたことに私は苦笑しました。

その後も由紀からは特にデートの報告をするまでもなく、
子供たちの話題や、帰り際のショッピングモールで
たこ焼きを並んで買った時のエピソードなどで
夕食が始まりました。

食べながらも、私の気持ちは どこかそわそわし、
目の前の彼女の仕草や表情や声の抑揚を、
それとなく観察していたのです。
けれど、由紀は相変わらず普通で変わった様子は
ありませんでした。

(オイオイ、報告まだか?)

デザート(?)に、テーブルの上に並んだ たこ焼きを
二人でつつきながらも、湯気とともに立ち上るソースの
香りの中で、私は探るように由紀を観ていました。

それにしても・・・
なかなかデートのことを報告しない由紀に、
私は少々苛立つものの、むしろ意固地になって
自分からは切り出すまいと思っていました。
もちろん表面上はあくまで穏やかに、いつも通りの夫を
いつもの日曜日と変わらぬ「私」を演じていたのです。

(それとも、報告できない“何か”があった?)

どうなのか? 
私の胸の中でいろいろな想いが交錯していました。

やがて夕食が終わり、私はリビングのソファに座って
テレビのバラエティ番組をぼんやり眺めていました。
正直 内容は耳に入ってくるわけはありませんでした。
そんな私の背中に、由紀の声が 洗い物をしながらの
水の音に混じって届いてきたのでした。

「今日もね、また星ヶ丘のホームセンター行ったよ」

「え? また? 平尾と?」
「マジか、また行ったんか・・・ なんやそれ」

白々しく彼女の声に振り返る私は、
大袈裟に驚くようなトーンで返しました。

「うん、今日は買うもの なかったけど、雨降るし・・・
 だからお店の中をウロウロしただけ だけど」と由紀。

「そっか・・・
 あ、平尾は楽しめた感じやった?
 というか、あいつの方がまた気を遣ったとか、
 それはなかった?」と私

「うーん、今回はね、私からもいろいろ話を振った
 つもりだから・・・けっこう賑やかだったかも」

「そうなんや、どんな話?」それとなく私が探ると、

ほんの一瞬、なんとなく?
ハッとして曇ったような表情を見せた由紀は、
返す言葉を少し探しているように見えました。
(私がそう思っただけなのかもしれませんが;)

彼女は、わずかに間を置いて、

「んー、趣味、ガーデニングの話とか、
 だから、ホームセンターに行こうって。
 ただガーデニングコーナーに行こうとしたけど、
 そこってお店の外で、大雨降ってたし・・・」

「そうやったな、あそこは外やから、厳しいな〜
 で、そっか、趣味の話もしてみたんやな・・・」

それから由紀は、ガーデニングの話に留まることなく、
パート先でのこと、子供たちのこと、
美味しいお店の話、車の芳香剤の話など・・・
立て続けに、平尾と話が弾んだことを中心に
報告してくれました。

その中に、歌の話題もあったとかで、
“最近、カラオケに行ってない”ということから、
今度、私を含めた3人でカラオケボックスに行こう、
という話になったことを言ってました。

とにかく当たり障りのない会話だったことがわかり、
私は安心はしたものの、勝手なもので、
正直、全く色欲の気配すらないデートだったことに
物足りなさも感じていました。

「平尾は楽しそうやった?」との私からの問いに、

「うーん、帰り際に今日も楽しかったです、って
 言ってくれてはいたけど、どうかな?
 私も前回よりは頑張ったつもりだけど、
 トオサン、また平尾さんに聞いてみてよ・・・」

「そやな」と私。

ちなみに今回もコンビニでペットボトルのお茶を、
カフェではコーヒーとケーキを、
平尾に奢ってもらったそうですが・・・。

もちろん私は、報告する時の由紀の声の感じや、
ちょっとした仕草に注意しながら「観察」もしていた
のですが、特にいつもの彼女に変わりはないように
感じました。
あらためて、「平尾の元気づけ、気分転換」という、
当初の目的のためだけに、由紀はこのデートに臨んで
いる、というのが再確認できた気がしたのです。

「あ、トオサンは何を?」と由紀。

まさかの逆質問に、私は虚勢を張るしかないわけで、

「オレ? のんびり動画観たり じっくり小説読んだり、
 ゆったり昼寝したり、思う存分 過ごせたで・・・」
「で、いつのまにか、カアサンが帰宅した感じや」
「オレの方が楽しんでるし・・・ あはは」

悶々として帰りを待っていた なんて、言えませんから。

「えー! けっこう良い過ごし方してるし〜」
「そっか、トオサンも良い気分転換の時間になってるね」

由紀は笑顔で私に返してきました。

彼女なりに、自分だけが「デート」をしている罪悪感を
持っていたのか、私の“偽りの”報告を聞いて、
安堵した様子が伝わってきました。

翌々日、私は仕事帰りに平尾と待ち合わせて、
デートの報告をあらためて聞くことになったのです。

平尾の会社近くにある古風でレトロな喫茶店には
呼び出した私が 7、8分ほど遅れてしまったのですが、
平尾は変わらず穏やかな顔で迎えてくれました。

早速ながら平尾から聞いた2回目のデートで行った場所、
滞在時間、移動時間等の 大まかな流れが
なんとなく見えてきました。

1回目同様に、分単位で正確ではないにしても、
大きなズレはないと思っています。

『2回目デートごっこ』の大まかな行程:
13:30-   牧里駅スタート〜移動(海沿いへ)
14:00-14:10 途中コンビニ(飲み物購入)
14:10-14:40 移動(海沿いドライブ)
14:40-15:10 海に面したカフェ
15:10-15:40 ホームセンターへ移動
15:40-17:00 星ヶ丘ホームセンター
17:00-18:00 移動(帰路)
18:00-18:15 近所のショッピングモール(たこ焼き)
18:15-18:30 帰宅へ

冒頭、平尾の口から出たのは、こんな言葉でした。

「由紀さんに、いろいろ気を遣って もらったんや」

「・・・何のことや?」と私。

「いや、由紀さんな・・・
 どんどん話題を出してくれて、なんか申し訳ないな、
 気ぃ遣ってくれてるんやな、って思ったで」

「何、言ってるんや〜!
 お前の元気づけのためやから遠慮すんなって・・・
 それにカミさんも楽しかったって言うてたで」と私。

「ホンマ? 由紀さんが? まじか・・・
 あ〜 それならよかったわ」

彼が大袈裟なくらい安心していたのが印象的でした。

「最初、駅の所から いきなり盛り上がってたやろ?」

済んだ事なのに、どうしてもこだわりのあった私は、
ルームミラー越しに見えた2人の笑顔のシーンを
彼に伝えると、どうやら 車の芳香剤を変えたらしく、
その匂いは何か? をクイズっぽくしていた、
ということでした。

てっきり、私のことを話題にして盛り上がっていたもの
と思い込んでいたのですが、とんだ勘違いでしたし、
彼らの乗った車の前を走っていたにもかかわらず、
その時点からすでに私のことは眼中になかった、
ということがわかりました。
まぁ、得てして、そういうものなんだな、と。

平尾がカラオケに3人で行くことを提案していた、
と由紀が言っていたことを確認すると、

「そうそう、ヤベちゃんも入れて、3人で行こうか
 って話をしたで、どうや?」と平尾。

「アホか、オレは えーから! 次回2人で行けや、
 毎回ホームセンターとか、行くところないんやろ?
 せっかく女子とデートしてるんやし、
 オレに遠慮すんな」と私。

「いや・・・由紀さん、大丈夫やろか?」

「知らん男と行くわけやないし、
 あいつはデート「ごっこ」と割り切ってるし、
 大丈夫や、オレからも言うとくで!」

私もここぞとばかりに、平尾に対して “上の立場”に
なったような感覚で話をしていました。
こうなってしまうと気持ちまでが大きくなってしまった
単純な私は、思わぬことまで言ってしまったのです。

「もう(デートも)2回目やし、手ぐらい繋いだんか?」

デートとはいっても、一般的な男女のデートではなく
「ごっこ」であることは、私も理解はしていたつもり
でした。

そしてもちろん平尾も。

だから彼はびっくりして、当たり前のように
否定しました。
彼が言うには、今回は特に由紀が気を遣ってくれて
話しかけてくれる場面が多かったし、
それだけでも十分楽しませてもらったと。
手を繋ぐとか、そういう次元のデートではない事を
私に返しました。

それでも私は平尾に絡むように、しつこくこの話を
続けました。

「あいつだって、いちおうデートやし、
 そういうシーンが まったくないのも、
 それはそれで寂しんとちゃうか?
 ま、そんなこと 本人は言わんけど・・・」

平尾は、何 バカなことを言ってるんだ とばかりに
笑顔を浮かべながら私の話を聞いていました。
もしかしたら私がここまで熱く話すのが信じられない
と思っていたのかもしれません。

「まっ、次回、頑張れ! あはは」と私。

「由紀さんに、セクハラや って言われるの イヤや」

平尾は最後まで この話題には乗ってきませんでした。

途中、お手洗いに立って、私は独りになって、
あらためて、平尾との この日の会話を振り返りながら、
ふと、平尾の報告の温度感が前回の報告と若干違いが
あることに気がつきました。
(勘の良い読者様は、とっくにお気づきかと思います)

捉え方によってはとてもジェラシーを掻き立てられる
ことかもしれないのですが・・・;;
なぜか私はこの時、平尾がこの「企画」「デート」に
ようやく馴染んできた、少しずつ打ち解けてきたものと、
むしろ 微笑ましく捉えて受け入れていたのです。
同時に一瞬ですが、小さく腰のあたりがゾクゾクと
するような震えも感じていたのでした。

平尾とはその後も、ゆっくりとコーヒーを味わいながら
こんな話、あんな話をした、雨のせいもあってか
カフェもホームセンターも賑わっていたとか・・・
ちなみにホームセンターに行ったのは、
本当は紅葉狩りに、と県境にある森林公園の散策を
予定していたけど、少雨ならまだしも大雨だったので
断念したとのことでした。

ここまで由紀から聞いた内容とほとんど相違ないことに
正直、私は 飽きと物足りなさを感じていた時でした。

「あ、そういえば・・・ 実は・・・」

平尾が私の目を見ることなく、若干 下を向いて、
手元のコーヒーカップを何度も触りながら、
何かを言いにくそうな表情を浮かべたのです。

こういう時の彼は、たいてい余程の事を考えているので
私も思わず姿勢を正しました。

「ん? なんや?」

これまで、いろいろデートの事を報告してくれていた
彼の雰囲気が、ここで一気に変わったことを私は感じた
のでした。
彼自身、できるだけ冷静に装おうとしているのが
私からもわかるくらいでした。

「由紀さんって・・・ ガーデニングが趣味やろ?」


※地名は仮称です。


[103] Re: 覆水盆に返らずB  小太郎 :2025/09/18 (木) 12:12 ID:LNc0beoY No.203951
今回のデートのキーワードは、由紀さんの趣味のガーデニングですね。
その話をしようとした時の二人の様子に見て取れました。
ハッとして曇ったような表情を見せた由紀さん。
若干 下を向いて、手元のコーヒーカップを何度も触りながら、
何かを言いにくそうな表情を浮かべた平尾さん。
ガーデニングが二人の距離を一気に縮めることになるのでしょうか?

続きを楽しみにしています。


[104] Re: 覆水盆に返らずB  倍胡坐 :2025/09/19 (金) 19:50 ID:zkiIZ9NE No.203991
突然思い出したかのような口振りで、そういえばとは言うものの、
平尾さんは矢部さんにどうやって切り出そうかと、
言い出すタイミングをうかがっていたのではないですか。

実際に聞いてみれば何と言うことのない話なのかも知れませんが、
平尾さんにとっては重大な決心を要することなのかも知れませんね。

それはそれで新たな展開だと思います。

続稿が楽しみです。


[105] Re: 覆水盆に返らずB  だいご :2025/09/22 (月) 11:30 ID:2lsbN4Io No.204049
グルメやお酒、ファッションなどに比べると
ガーデニングって男女が近づくきっかけとは程遠い気がしました。
由紀さんの趣味をきっかけに、というところなのでしょうが
矢部さんと平尾さんの関係からして
初めから由紀さんを口説くつもりもないように思います。
どんな展開になっていくのでしょうか?
続きをお待ちしております。


[106] Re: 覆水盆に返らずB  矢部 :2025/09/29 (月) 09:44 ID:HgNBIVPI No.204156
小太郎様 いつもコメントをくださりありがとうございます。
>ガーデニングが二人の距離を一気に縮めることになるのでしょうか?
・拙い話ですが、しっかり読んでいただき深掘りまでしていただき
本当にありがとうございます。

倍胡坐様 いつもコメントをくださりありがとうございます。
>それはそれで新たな展開だと思います。
・展開が遅くて申し訳ありません。少しずつ進んでいきます。

けんけん様 いつもコメントをくださりありがとうございます。
>どんな展開になっていくのでしょうか?
・遅筆で進行も遅くて申し訳ありません、少しずつ進むと思います。


*****


「由紀さんって・・・ ガーデニングが趣味やろ?」

“趣味”というワードを出してきた平尾。
ぽつりと呟いたその言葉が あまりにも唐突で、
私は一瞬面食らってしまったのです。

彼の言葉の意味を掴みきれず、思わず
「何や それ?」と問い返したのを覚えています。

すると彼は、いつもの穏やかな瞳を私に向けることなく、
言葉を選ぶように静かに口を開いたのでした。

「由紀さん・・・ 趣味の話題を振ってくれてな、
 ガーデニングの話を聞かせてくれたんや・・・」

「おぉ、そうらしいな・・・ カミさん言ってたわ」

由紀は、帰宅後 私に向けたデート報告でも、
趣味というか ガーデニングの話をした と、
ただ大雨でホームセンターの外に出られなかったと
聞いていましたので・・・
まるで「そんなこと、とっくに知ってるわい」と
言わんばかりの口調で、私は平尾に返したのでした。

(そういえば・・・)

私は さらに記憶を辿ると、デートの時の“話題作り”に
悩む由紀に対し、私も「趣味の話でもすれば」と適当に
提案したことを思い出しました。

(由紀はそれを ちゃんと実行したということか・・・)

「で? ガーデニングの話、盛り上がったん?」

私の問いかけに、平尾はわずかに口元を緩めたように
見えましたが、私の目を真っ直ぐには見ようとは
しませんでした。

「う〜ん 最初はな、由紀さん 真面目やったし、
 ちょっと堅苦しい感じやったかな・・・」
「でも花とか野菜の名前や育て方を話してくれるうちに、
 だんだん楽しそうになって、細かい品種のことまで
 身振り手振り混ぜて、熱心に語ってくれて・・・
 こっちも聞いてて なんか気持ち良かったわ」

と 平尾は小さく笑って息を吐いて さらに、

「正直、オレには ちんぷんかんぷん やったけどな。
 でも、由紀さんはホンマに好きなんやな って、
 楽しく喋る姿に和まされたで・・・
 いつのまにかオレも なんかよう知らんけど、
 笑ってたりしてたわ」

私は黙って頷きました。
彼の話を聞きながら、庭の片隅で、無心に手入れを
している由紀の後ろ姿が自然に思い浮かんでいました。

平尾は続けました。

「それでな 由紀さん、わりと話をしてくれて、
 めっちゃ盛り上げてくれて・・・
 で、今度は って、オレの趣味を聞いてきたんや」
「最初はオレも張り切って温泉巡りとか ウマい酒探し
 とか 話したんやけど、言い方が下手なんかどうか、
 由紀さんの話ほど盛り上がらんかったんや」

「ふ〜ん、あかんやん」私は あっさりと。

なんとなく退屈そうに聞いている由紀の顔が、
私の目にも浮かんできていました。

「で まぁ・・・ 趣味なら、ほかにも って」と平尾。

咄嗟に私は、平尾が海外勤務時に いろいろな国を
巡って、観光やグルメを楽しんでいた事を、
趣味として、由紀に話していたとしたら、
私からすれば それは職位による立場からの自慢話に
聞こえてしまいそうで、なんだか嫌だな、
と思ったのでした。
〜職位格差を気にする小心者の僻みですが;;(汗)

しかしながら・・・
次に平尾の口から出た言葉に
私はびっくりして 思わず背筋を伸ばしたのです。

「ちょっと迷ったんやけど・・・ しゃあない
 まぁ えっか って、昔 いや昔でもない?
 真面目に本気で取り組んでたことを・・・」

「え? 待て 待て マジか?」と私。


[107] Re: 覆水盆に返らずB  小太郎 :2025/09/29 (月) 10:44 ID:0lSLlkPE No.204159
ガーデニングの話は、由紀さんの楽しそうな話し振りに
平尾さんが癒されたのですね。これがデートごっこの
目的の一つですから、達成出来て良かったですね。

本命は、平尾さんが真面目に本気で取り組んでたこと
なんですね。矢部さんの背筋が伸びるほどの事とは
一体何なのでしょうか?
それが由紀さんの琴線に触れることになるのでしょうか?

続きを楽しみにしています。


[108] Re: 覆水盆に返らずB  けんけん :2025/09/30 (火) 05:18 ID:iL/lma6U No.204174
更新ありがとうございます。
矢部さんもびっくりの平尾氏の取り組んでいたこととは?
奥様と同じガーデニング?あるいは、奥様が興味を持っている別な何かか?気になりますね。続きお待ちしてます。

[109] Re: 覆水盆に返らずB  ケンケン :2025/09/30 (火) 09:03 ID:ngkFa2.2 No.204179
楽しみに待ってるのは、同じです。
子供の頃の川口探検隊の雪男を発見!
みたいな構成ですね。実際普通のことに感じますが、私の生きているうちに本題にはいりますかね?


[110] Re: 覆水盆に返らずB  考察 :2025/09/30 (火) 18:33 ID:ySaXswXg No.204196
たしか、平尾氏は、奥さんの存命中BDSMに真摯に取り組んでいらしたと、以前書かれていましたが、まさかそっちでしょうか?だったら結構大変かも。

[111] Re: 覆水盆に返らずB  矢部 :2025/10/02 (木) 15:17 ID:eCqTzaNE No.204239
小太郎様 いつもコメントをくださりありがとうございます。
>これがデートごっこの目的の一つですから、達成出来て良かった
・そうですね、このスタンスはブレないはずです。

けんけん様 いつもコメントをくださりありがとうございます。
>気になりますね。続きお待ちしてます。
・進展が遅くてすみません。深く読んでくださり感謝しています。

ケンケン様 コメントをくださりありがとうございます。
>子供の頃の川口探検隊の雪男を発見!みたいな構成
・すみません、このところ生意気にも投稿者としての自分に酔っていたところがあります。
もっと素直に書き綴ってまいります。進行も遅くて申し訳ありません。

考察様 コメントをくださりありがとうございます。
>まさかそっちでしょうか?
・鋭いですね! というか それよりも初期の頃の内容を覚えていてくださり、ありがとうございます。
とても嬉しいです。


*****

「うん・・・正直に言うわ BDSMの事、
 話したんや・・・」

平尾の口調が、どこか吹っ切れたように
明るくなった気がしました。

「えー! マジか?」

私が思わず声をひそめ、眉をしかめたのを見て
平尾はようやく顔を私に向け目を合わせました。
その眼差しは、彼のいつもの優しいものとは違い、
どこか神妙で、何かを決意したような雰囲気に
なったのが印象的でした。

そして何より私が驚いたのは、私は由紀から
その話を一切聞いていなかったことでした。
なぜ彼女は私に報告しなかったのか? という
疑問と同時に、ちょっとした怒りに似た感情が
芽生えたのを覚えています。

そういえば由紀は、報告の際も 趣味の話題は
なんとなく私に伝え難そうな感じでしたし、
早々にガーデニングの話だけに絞って、
ホームセンターの状況だけを説明してくれた
ことを思い出していました。

平尾は話を続けました。

「あっ でも、いきなり“縛るの好きです”とか、
 そんなヤバい言い方は してへんよ?」

「そりゃそうや、当たり前やろ・・・
 で? どんな話したんや? 」

私はできるだけ冷静を装いながら問い返しました。

「昔な、嫁はんとちょっと変わった趣味に、
 本気で真面目に取り組んでたって話をしたんや」
「誤解されやすいテーマやけど、オレにとっては、
 まあ、カッコつけて言うなら“夫婦の絆”とか、
 “生き方の一つ”みたいなもんやった って」
「で・・・ それがどんな事か、まぁ少しずつ
 丁寧に説明した感じやな」

平尾の語り口は淡々として抑制も効いていました。
興奮した様子はなく、むしろ穏やかで整っていて、
それでいて 過去に私にだけ“この趣味”のことを
打ち明けてくれたあの時と同じような熱を帯びて
いたのです。

彼は、奥さん(直美さん)がご在命中に
BDSMに哲学的・文学的・文化的・学術的・
伝統的・精神的・宗教的など各視点から、真摯に
そして奥深く取り組んでいたのでした。
(「覆水盆に返らず」のスレッド [2]ご参照)

「大袈裟に聞こえるかもしれへんけど・・・
 あれは、オレら夫婦にとっての“ライフワーク”
 やったんよ」
「お互い真正面から向き合って、ルール決めて、
 ただのエロとかエッチと違う、文化や芸術とか
 学問として捉えてたんや」
「暇があれば 本を読み漁って、記録を残して、
 議論しながら、夫婦で真面目に 厳しく 丁寧に
 向き合ってて、それが楽しかったんやけどな」

彼はその時の記憶を、少し遠くを見るような目で
語っていました。

そして私は、以前聞いた平尾の熱っぽい告白を
思い出していました。

「要するにやな、単なるエロとか遊びじゃない
 って由紀さんにも わかってほしかったんや」

「いや、マジで よぅそこまで話したなー」と私。

「なんか一生懸命になって 熱弁しすぎてたわ」

私はその光景を勝手に想像していました。
思いたくもないのですが、さすが副社長だけあって
どこかの取引先に招待され、講演で熱弁をふるって
いるかのような平尾の姿。
彼はそういう場で妙にハマる男なんですよね。

「カミさん、本気で聞いてたん?」

私の問いに 平尾は少し間を置いて小さく頷きました。

「たぶんな〜 最初は戸惑った顔 しとったけど。
 でも由紀さん、ずっと一度も話を遮らんと、
 ちゃんと聞いてくれてたで。
 ホンマ、めっちゃ聞き上手や それが嬉しかったわ」

「マジか? あいつ 引かんかった?」

正直 私は内心“少しだけでも引いていてほしい”
という期待を込めた聞き方をしていました。

「引いたようには、見えへんかったけどな。
“平尾さんって、真面目なんですね”って、
 ふっと笑ってくれてたで・・・」

「え? 笑ったん? うそやろ・・・」

「うーん、たぶん ずっと気ぃ張ってたんやろな、
 オレがガツガツ話すもんやから。
 どっかで息抜こう思って、笑ったんやと思う」

「それ、助け舟やな」

「かもしれんな。 でも、その笑顔が嬉しかったんよ。
 “正直よくわからないけど、とても大事にされて
 たんですね”とも言ってくれたで。
 で、最後に 笑顔になってくれたんや」

ここで平尾は、ふっと大きく息を吐きました。

彼の表情に、微かな照れと なんとなく名残惜しさも
浮かんでいました。

(由紀がその話を“ちゃんと”“最後まで”
 聞いていたなんて・・・)

私は何も言えませんでした。
言えなかったというよりも、状況を伝えてくる彼に
気圧されたのと同時に、奇妙な感覚と危険な妄想が
芽生え始めていたのでした。

平尾の語りには、照れと感慨が混じっていました。

「由紀さん、最後まで、ずっと聞いてくれてな。
 こんな 普通に聞いたら変態趣味みたいな話に、
 ちゃんと向き合ってくれる人、そうそうおらんで」

彼のその一言が、妙に私の胸に引っかかったのです。

“ちゃんと向き合ってくれる人”
(ちゃんと向き合ってくれる?)

それは確かに、由紀が持つ誠実さです。
人の話を丁寧に聴き、茶化さず、拒まず。
彼女は、誰に対してもそうでした。

ただ、こうして目の前で、平尾がその由紀に
心を揺らしている様子を まざまざと見せられると、
不意に形容しがたい感情が、私の腹の底に沈んで
きたのでした。

胸の奥で、何かがざわついていました。
それは、怒りではなく、落胆でもなく
言葉にすれば“嫉妬”に違いありませんでした。

(いや 違う。そんなもん違うはずや・・・)

すぐに自分で自分に言い聞かせようとしたのですが、
あのとき、あの場で由紀がどんな表情で平尾の話を
聞いていたのか、想像すればするほど落ち着かなく
なってきていたのでした。


[112] Re: 覆水盆に返らずB  倍胡坐 :2025/10/02 (木) 16:13 ID:9pJmCPf. No.204243
矢部さんの親友とはいえ、いや、だからこそ、由紀さんとしても、
あからさまにドン引きとはいかなかったのかもしれませんね。

ただ、愛妻を亡くした平尾さんを直美さんに代わって
少しでも慰めになればとデートまでしている由紀さんはどう思ったでしょう。
肯定的に受け止めれば、まさにそういう世界に行ってしまうかも。
否定的になら、由紀さんと平尾さんの今後もデートは続くのか?

やはり、由紀さんの思いを確かめてみたいところですね。

続き、よろしくお願いします。


[113] Re: 覆水盆に返らずB  小太郎 :2025/10/02 (木) 16:39 ID:90oRrodY No.204244
由紀さんがデートの内容を話さなかったのは初めてでしょうか?
事前の10ケ条ではデートで起きた事は全て話す事になっていたのに
なぜ矢部さんに話さなかったのか?

由紀さんが言っている「大事にされていた」とは、平尾さんが
亡き奥さんの事を大事にしていたということですね。
SMを介して夫婦の絆を深めていた平尾夫妻に対して
由紀さんは羨望の眼差しを向けていたのでは?
そして同時に自分と旦那である矢部さんの間にはそんな絆が
あるだろうか? と自問していたのでしょうか?

続きを楽しみにしています。


[114] Re: 覆水盆に返らずB  けんけん :2025/10/03 (金) 06:39 ID:aWvEuSiw No.204255
矢部様、更新ありがとうございます。
まさかのまさかでびっくりしています。考察様の読みが当たってたと言うことですね。
その話を平尾さんがしている時の奥様の状況を想像するだけで、嫉妬と興奮に包まれます。奥様の心境を探りたいけど、奥様から発しない限り、読めないですよね。今後もデートを重ね、平尾さんからの報告で奥座の心境を読み取るしかないのでしょうか。読み手としては興奮しっぱなしですが、矢部様は後悔し始めているのでは無いのでしょうか。
続きを楽しみにお待ちしてます。

[115] Re: 覆水盆に返らずB  西門 :2025/10/03 (金) 10:32 ID:cpp7zUfw No.204266
たった2度会っただけの友人の奥さんに亡き妻との閨房で交わした壮絶なSMの話ができたと
言うことから平尾さんが早々と、由紀さんとの何気ない日常会話の中に由紀さんのマゾ性と、
二人のSM相性の強靱さを見抜いたことが感じ取れます。
矢部さんの文章が坦々としているだけにより一層二人の関係の強さが伝わって来る気がします。
命の涯にまで通じるSMの快楽で結ばれることになる平尾さんと由紀さんにとっては、
矢部さんの友人と妻と言う関係が責任感と罪悪感の地獄の源になるとともに、二人の愛を
確認させる天国の澪標になり、二人が灼熱の歓喜と地獄の苦悩の谷間を彷徨いながら燃え尽きて
逝くことになる運命を予感させられるとともに、その裏で矢部さんが苦悩に苛まれながらも二人の
幸せを願わずにはいられずにたった一人で身も心も焼き尽くしてしまうことになる風景が
目の当たりに浮かんで来ます。
今まで通りじっくりと書き込まれる文章待っています。


[116] Re: 覆水盆に返らずB  深井 :2025/10/03 (金) 17:53 ID:6MHo/4M. No.204283
心をくすぐる展開と奥の深い心理が丁寧に描写されて、目が離せない展開になりましたね。
サイレントエロスとも呼べるような内容に三人の関係が絡んで、ますます興味深く読ませて貰っております。
むしろじっくりと書きすすめて頂きたいと思います。


[117] Re: 覆水盆に返らずB  読者 :2025/10/05 (日) 12:38 ID:FVIiBRfc No.204354
はじめて読みましたが
なにをつたえたいのか不明
ダラダラ、した流れの物語ですな


[118] Re: 覆水盆に返らずB  >読者へ :2025/10/05 (日) 14:25 ID:KvLqjkEU No.204359
このサイトによれば、「むちゃくちゃスゴイ人気のスレッドです!」とのこと。
様々な感想はあるだろうが、多くの読者の邪魔にしかならない貴殿のような書き込みは論外。
気に入らないなら、余計なことは書き込まず静かにスルーするなり退出すればそれでよい話。


[119] Re: 覆水盆に返らずB  やました :2025/10/08 (水) 05:25 ID:YedzA2Nc No.204445
奥さんの気持ちがどのように変化するのか、とても楽しみです。
続きを期待します。


[120] Re: 覆水盆に返らずB  読者さんのお気持ちはわかる :2025/10/09 (木) 11:01 ID:xxxZpWwQ No.204481
ダラダラしてきたけど、やっとここまで来たねw
ここから由記のSMエロスが始まるんですね
カラオケやホームセンターやタコ焼きやでかパンやパンストの事はいいいから、せめてほかの物語並みにエロシーンをたのみますね!❢
いままで待った皆んな期待してるんですからねw


[121] Re: 覆水盆に返らずB  矢部 :2025/10/11 (土) 10:59 ID:OnlBOyrY No.204550
倍胡坐様 いつもコメントをくださりありがとうございます。
>やはり、由紀さんの思いを確かめてみたいところですね。
・そうですねー ただ女性というのは本心を隠すのも上手い気がします。
悪い意味ではなく・・・です;

小太郎様 いつもコメントをくださりありがとうございます。
>由紀さんは羨望の眼差しを向けていたのでは?
・由紀の気持ちまではわかりませんが、ただこの時点では羨望というよりも、
「そういう夫婦もいるんだな」くらいの感覚だったのでは、と推察します。

けんけん様 いつもコメントをくださりありがとうございます。
>奥様の心境を探りたいけど、奥様から発しない限り、読めないですよね。
・その通りですね、結局、他人の考えや気持ちの中まではわからないので、
ついこちら側が都合良く思い込んでしまっていることってありますよね。

西門様 いつもコメントをくださりありがとうございます。
>何気ない日常会話の中に由紀さんのマゾ性と、二人のSM相性の強靱さを見抜いたことが感じ取れます。
・平尾はたしかに人心掌握に長けていたのかもしれないですね。
私の前ではぜんぜんそんなことなかったのですけどね。
彼は役職者ですし、そういうのもあったのかもしれないですね。
いつも丁寧な深掘りのコメントをくださりありがとうございます。

深井様 コメントをくださりありがとうございます。
>サイレントエロスとも呼べるような・・・
・とてもうれしいコメントです。本当に励みになります。これからも深く読んでいただければ嬉しいです!

読者様 コメントありがとうございます。
>ダラダラ、した流れの物語
・遅筆で文才もなくてダラダラしてしまって、すみません。これに懲りずにこれからも読んでいただければ嬉しいです。

>読者へ様 コメントありがとうございます。
>「むちゃくちゃスゴイ人気のスレッドです!」とのこと。
・こんな遅筆でダラダラしている駄作でも皆様が読んでくださっているおかげで、
人気のスレッドになっていることに本当に感謝致します。

やました様 コメントありがとうございます。
>続きを期待します。
・遅筆で展開も遅くてすみません。これからも宜しくお願い致します。

読者さんのお気持ちはわかる様 コメントありがとうございます。
>いままで待った皆んな期待してるんですから
・そうですね、ご期待にこたえられるように頑張りたいのですが、なにぶん文才もなく、展開も遅いので申し訳ありません。


*****

「で? 話はそこで終わったんか?」と私。

平尾は、少し間を置いて 笑みを浮かべていました。

「うん、そうや・・・
 由紀さんも“奥が深そうですね”って言うて、
 そのあと、もう一回かな “大事にされてたんですね”
 って、言うてくれたんや」

それを聞いた瞬間、私の胸の内にじくじくと疼くものが
走りました。

(はぁ? もう一回?)

その何気ない平尾の言い回しにまで 過剰に反応
してしまう自分が 情けなかったことを覚えています。

まるで、自分の知らない場所で、
自分の知っているはずの妻が、別の顔で 別の優しさを、
他の男だけに見せていたような・・・
そんな感覚に襲われた感じになっていたのです。

平尾は、私の複雑な心中など露ほども知らず、
穏やかな表情のまま、コーヒーカップを両手で
包み込むように持っていました。
まるで、その温もりにまだ浸っていたいと
言わんばかりに、私には見えました。

私はその時、口を開けば、何かを問いただして
しまいそうで怖かったのを覚えています。
でも、問いただして、いったい何になるというのか。
由紀もそして目の前の平尾も、何も悪くない。
そもそもこの“デートごっこ”を仕掛けたのは、
私ですから・・・

(何を期待してたんや、オレ)

ただの慰め役か、観察者のふりをした当事者か。
境界が曖昧になっていく中で、自分がどこに立って
いるのかが、わからなくなっていたのでした。

平尾は続けて、

「それで・・・話が重くなりすぎたし、
 空気 変えようとしてな、 いろいろ話してたら
 歌の話になったんや・・・
 “最近カラオケ行ってへん”って言うたら、
 由紀さんが急にホッとしたように“行きたいですね!”
 って返してきて・・・
 “じゃあ今度 三人で” って提案したんや、オレが」

その言葉が、私の心に溜まっていた重苦しさを、
少しだけほぐしてくれた気がしました。

そんなこともあって私は、平尾からの報告から
カフェや車内での二人のやり取りを想像しながら、
由紀らしいと言えば、由紀らしい、と思いました。
誰かの重い過去を受け止めようとしながらも、
自分からは決して沈まず、相手を持ち上げる優しさと
バランス感覚は、昔から変わらない、彼女の持ち味で
あること。
もしかしたら過去のスナック勤務の経験が活きていた
のでしょうか?

それにしてもBDSMの話は、平尾はデート中の会話や
エピソードのひとつ、いわゆるone of themみたいな
感じで報告をしてくれたのですが・・・

(由紀は、本当にBDSMの話を真っ直ぐ聞いた?)
(引くどころか、なぜ笑顔まで浮かべた?)
(まさか、興味持った?)

やっぱり、私はBDSMのことが頭を離れなかったのです。
同時に、胸の奥がぐっと熱くなったのを記憶しています。

嫉妬か、不安か、それとも別の何か?
自分でもよくわからない、名付けようのない感情でした。

私は黙ったまま、テーブルの上のコーヒーカップを
見つめることしかできませんでした。

その後も平尾は 私に対して、丁寧にデートの報告を
してくれました。

結局、私はBDSMの話のインパクトが強すぎて、
その後の彼からの報告は、どこか耳に入ってこなかった
のでした。
(もちろん私は表情や態度に出ないように注意;;)

平尾は、カラオケの事や由紀のパート先での事、
巷のニュースの事とか、いろいろ私に話をしてくれた
みたいでした。

やがて平尾からのデートの報告も終わり、
あとは適当に会社の情勢など 仕事の話でもして、
その場は“表向きシャンシャン”とお開きになりました。

私としては報告の内容が内容だっただけに、
わりと濃い時間を過ごせた気がしましたが、
平尾は どうだったのでしょうか、デートの話ばかりに
固執するまでもなく、全体的にはあっさりとした感じに
見えました。

平尾と別れ、帰り道を歩く時に 私の頭の中に浮かぶのは、
どうしても例の話でした。

おかしなもので、独りになると、想像力まで妙に
冴えてきてしまいますよね。

さらに些細な気づきとして・・・
今回のデートの報告を私に伝えてくれる際に、
平尾は私に対しても自然に「由紀さん」と
名前で呼んでいたことまでも、気になってきたのでした。

(平尾も ようやくリラックスしてきたんだ)
(平尾が気楽になったのは良いことだろ?)

と好意的に思ってみても、

(あいつ、まさか由紀を?)
(いや平尾は平尾や、由紀は合わせただけや)
(いや、でも・・・ もしも・・・)

その先を妄想するまでもなく、私の下半身には
じわりと熱いものがこみ上げてきていたのでした。

そんなこともあって、私の気持ち的には、
むしろ、もっと「まさか、もしも・・・」という
流れになってほしい期待が、さすがにヤバいという
怖さを上回っていました。

私はこれまでも冗談半分で、BDSMの相手に由紀を、
などと持ち出して茶化し煽ったこともありました。
平尾はいつも笑いながら「アホか!」と私の冗談に
付き合うことすらなかった やり取りですが、
この日この時を境に一気に、私の妄想のメインネタに
変わったのでした。

ボンヤリ浮かんだのは いつもの彼女とはまるで違う姿、
“黒のスリップに身を包み、ガーターベルトを纏った
由紀。
妖艶なメイクに彩られ、艶やかな深紅のルージュが
唇に鮮やかに映え、口元に妖しい誘惑を宿した由紀。
親友と愛妻による具体的な生々しい交錯シーンの描写
ではなく、由紀だけが登場する、品のある芸術的で
妥協のない厳しいプレイ・・・
ドロドロの背徳や嫉妬ではなく新鮮な刺激と興奮”
でした。

しかし一方で、デートの時に 平尾からBDSMの話を
聞かされたことを、由紀が私に報告していなかった件に
ついては、やはり疑念と怒りを感じていました。
--小太郎様コメントの 「10か条 ※」違反にもなる--

その時点では、帰宅したらすぐに 由紀に対して、
なぜ 全部報告してくれなかったのか 問い詰めて、
デートでの事は全部 私に報告するように、
彼女に話をしておこうと強く意気込んでいたのでした。

あれこれと思い巡らせながら、最寄りの「北牧里駅」で
下車し、家までは急ぎ足で・・・

妄想と熱が入り混じるまま歩き続け、
気がつけば、我が家の灯りが見えていました。

※10か条=
【他の男とセックスしている妻】に掲載している
 No.201155 『覆水盆に返らず』 内の
 スレッド[79] No.201726のところに書いています。


[122] Re: 覆水盆に返らずB  小太郎 :2025/10/11 (土) 11:48 ID:PhOsquFA No.204555
由紀さんと自然に呼ぶようになった平尾さん、由紀さんとの
距離がだいぶ縮まって来ましたね。
BDSMが更に二人の距離を縮め、関係を強めるのでしょうか?

由紀さんがBDSMの話を矢部さんにしなかった理由が
気になりますね。BDSMを平尾さんと由紀さんとの秘密の共有事
としたかったのでしょうか?
矢部さんに話さなかった、由紀さんの言い訳に興味深々です。

続きを楽しみにしています。


[123] Re: 覆水盆に返らずB  ざるそば :2025/10/11 (土) 22:04 ID:xbu/jh1U No.204568
更新ありがとうございます。
BDSMとは大きな進展ですね。平尾さんと由紀さんとの2人だけの秘密。
真面目な由紀さんが縛られたりするのを考えるだけでたまりません!
毎度のことですが次回も楽しみにしております。


[124] Re: 覆水盆に返らずB  ケンケン :2025/10/12 (日) 20:12 ID:641yxwXM No.204597
早く続きが出るの待ち遠しいです。
次回は、3回目のデートの約束くらいの進展ですかね?あと何回くらい同じパターン続きそうですか?


[125] Re: 覆水盆に返らずB  ケンケンさんの気持ちわかる :2025/10/13 (月) 12:47 ID:82kK8Bvw No.204619
ここまでおそい進みかたなら百回くらい続いて、ゼンゼンエロないパターンですね

[126] Re: 覆水盆に返らずB  西門 :2025/10/14 (火) 23:05 ID:N6Hppqyw No.204654
全て話すはずだったのに、由紀さんがSMのことを矢部さんに伝えなかった意味はこの後で
わかってくるとは思いますが、興味深々です。
これまでの会話の内容からでも十分に由紀さんが理想的なマゾのような気がしています。


[127] Re: 覆水盆に返らずB  けんけん :2025/10/15 (水) 06:32 ID:HiDTrNws No.204660
更新ありがとうございます。平尾さんは直感的に由紀さんならBDSMの話を否定せずに聞いてくれると思ったんでしょうね。それほど平尾さんが奥さんを愛していたと言うことでしょうか。由紀さんがBDSMに興味を持ったというより、
それほどまでに愛された平尾さんの奥さんが羨ましいと思ったんですかね。
矢部さんには絶対言わないと思いますね、何となく。
今後平尾さんがどう出るか楽しみてすね。続きお待ちしてます。

[128] Re: 覆水盆に返らずB  ケンケンさんの気持ちわかるさんの気持ちがわかる :2025/10/18 (土) 10:30 ID:Zk9XhuzM No.204743
コマかい場面は書いてもおもしろくないから、早くSMの話を書いてほしいとおもいます、次は待ってますよ、みんな今度こそがつかりしないように待ってますよww

[129] Re: 覆水盆に返らずB  矢部様 :2025/10/18 (土) 12:27 ID:BTwZPp5. No.204748
粘着早漏君はほっといて、矢部様のペースでお願いします。

[130] Re: 覆水盆に返らずB  ファン :2025/10/19 (日) 13:56 ID:phVLvmOY No.204783
さまさまな意見あるが
こんな現実話、ほかにないですよ。。
妻が他人とエッチなんか簡単にできるわけ無い
まだ2回会っただけで簡単にいくわけ無いと思う
由紀さんは普通の人だから時間がかかってあたり前ですよ
僕はそのほうが楽しいです😊
すぐ妻が寝盗られるのは有り得ないし興醒めする。
矢部さんの話のペースでいいですよ!


[131] Re: 覆水盆に返らずB  進一 :2025/10/19 (日) 18:22 ID:uxpKh.aM No.204793
矢部さん、お久しぶりです。

冒頭に「スローな展開」とあるように
早く先の展開を望む方は読まない方が良いですよ。

引き続き矢部さんのペースでお願いします。


[132] Re: 覆水盆に返らずB  矢部 :2025/10/20 (月) 17:44 ID:0/H7a7Kk No.204831
小太郎様 いつもコメントをくださりありがとうございます。
>由紀さんの言い訳に興味深々
・この時点では、BDSMのことも、人それぞれ、いろいろな趣味があるんだ、くらいの気持ちだったのでは、と推察します。

ざるそば様 いつもコメントをくださりありがとうございます。
>平尾さんと由紀さんとの2人だけの秘密
・この時点では、BDSMのことは、そこまでの話ではなかったのでは、と、平尾の様子や由紀の様子、それぞれから推察します。

ケンケン様 いつもコメントをくださりありがとうございます。
>あと何回くらい同じパターン続きそうですか?
・遅い進展で、すみません。少しずつ進展する感じでしょうか。 
 大人の男女の話なので、当人だけではなく、背負うものや、まわりの諸事情もあります。なかなか簡単ではないです。

ケンケンさんの気持ちわかる様 コメントをくださりありがとうございます。
>百回くらい続いて
・そうですね・・・99回くらいでしょうか?(笑)

西門様 いつもコメントをくださりありがとうございます。
>SMのことを矢部さんに伝えなかった意味
・この時点では、彼女なりに判断したとしか、言えないです。
 ただこの後、少しずつ彼女なりに理解していくのだと思います。

けんけん様 いつもコメントをくださりありがとうございます。
>平尾さんは直感的に由紀さんならBDSMの話を否定せずに聞いてくれると思ったんでしょうね。
・直感的にというよりも、流れで言っちゃった、みたいな感じ? どうでしょうか? けんけんさんの言われる通りかもしれないですね。


ケンケンさんの気持ちわかるさんの気持ちがわかる様 コメントありがとうございます。
>次は待ってます
・遅筆で文才もなくて、すみません。これに懲りずに、のんびりと読んでいただければ嬉しいです。

矢部様 様 コメントありがとうございます。
>矢部様のペースでお願いします。
・ありがとうございます。みなさまに支えられていることを実感しています。本当に感謝致します。

ファン様 コメントありがとうございます。
>矢部さんの話のペースでいいですよ!
・なにぶん文才もなくて、展開も遅いのですみません。これからも宜しくお願い致します。

進一様 いつもコメントありがとうございます。
>引き続き矢部さんのペースで
・遅筆で展開も遅くてすみません。これからも応援を宜しくお願い致します。


*****


「おかえりなさい」と、いつもの由紀の声。

これからデート報告の件で、彼女に問いただそうと
している私は、不機嫌な様子を悟らせるように、
意識的にぶっきらぼうに振る舞いながら、
ドアを開けて家に入りました。

いつもより遅い夕食は由紀と食卓テーブルを挟んで
向き合って、その時も同じように、私は投げやりで
少々不貞腐れたような態度を意識して演じていたのです。

(こういうの 大人げないですよね・・・;;)

由紀はそんな私の様子を察したのか どうか、
いつもより食事をしながら話しかけてくる回数は
少なかったように思います。
もっとも、普段から食事中の会話は多くはなかった、
のですが;;

あとは“どのように切り出せば良いのか”
私はそんなことばかりを考えながら、納豆の器を
ぐるぐると掻き混ぜていました。

明日は雨が降るらしいとか、今日のTVは、などと
適当な話題も尽き、沈黙が気になり始めた矢先、

「あっ、平尾さん どうだった?」と由紀。

その一言が、私にとっての合図でした。
いよいよ私が攻勢に出る番だと、切り出す一言目を
頭の中で並べ始めていたのです。

-「デートの事やけど、全部話してくれた?」
-「まだ何か あるんとちゃうか?」
-「さっき 平尾に聞いたんやけど・・・」
-「隠さず、全部報告することにしてたやろ?」

ところが・・・

小心者の私だからなのか、変に「男のプライド」的な
ものが邪魔をしてしまって、ここでこんな言葉を私が
切り出すと、
由紀に(この人、けっこう心配しているんだ)とか
(平尾さんとコソコソ、わたしのことを話しているんだ)
とか、そんなふうに彼女に上から目線で思われそうな
気がしてきたのです。
さらには、由紀の機嫌を損ねて、
(こんなことならデートはもう終わりにしたい)と
思わせてしまうかもしれない・・・とも。

だから私は、こうして不機嫌な様子を見せることで、
逆に由紀の方から「実は・・・」と切り出して
くれないか、と。
今思えば、自分勝手で都合のいい期待に、すり替わって
しまっていたのでした。

私が口にしたのは、平尾の様子を伝える曖昧な返答
でした。

「平尾? あー、なんか ちょっと疲れてたみたいや」
「まだまだ・・・ まっ 奥さんおらんしな〜」
「なんか、ヒラが心から楽しめることがあったら、
 えんやけどな」

などと、私としては、平尾の様子を口実にして、
デートの話に繋げようとしていたのです。
しかも亡妻の話を混ぜ込んで。
うまく理解されれば彼女から、と考えていたのです・・・

私なりに由紀にチャンスを与えたつもりだったのですが
自宅での こうした日常的な夕飯時のシチュエーション、
食卓を挟んだ馴染みの場で、そんな話を切り出すのは、
なかなか難しいですよね。
ドラマや映画、小説など、用意されたシナリオがあって
セリフが定められている世界なら、もっとスムーズに
会話に入っていけるのでしょうが・・・

(読者の皆さんは、このような場面でも 自分から
 真っすぐに切り出せそうですか?)

「そっか〜 じゃぁ まだ(デート)続けないと
 いけなさそう?」と由紀。

「そやな〜 まだ、もうちょっとやな・・・」

「そっか・・・ そうだよね」と、いつもの由紀。

結局、そのやり取りをもって、意気込んでいたことは、
肩透かしを食らったように、あっけなく終わりました。

そして、「そういえばね」と由紀が切り出したのは、
娘の麻里奈が金曜日に帰省するという話だったのです。

どこかモヤモヤしながら、この後の時間を過ごしたのを
覚えています。

未だに、由紀は私に報告をしなかった・・・
しかもBDSMというセンシティブで刺激的な話を・・・

食事を終え、入浴し、寝室に入り、
あらためてこの状況をじっくりと振り返りました。

振り返っていくうちに、由紀が「秘密」「内緒」「隠し事」
をしたという事実が、逆に私のM的な感受性を刺激して
私の被虐思考を加速させていたのでした。

さらには・・・

あの日、海沿いのカフェで、
星ヶ丘のホームセンターで、
アウディの中で、二人にどんな空気が流れていたのか?

私の知らないデートの中で、由紀はどんな顔で笑い、
どんな沈黙にうなずき、どんな声色で、
「大事にされてたんですね」と言ったのか?

想像すればするほど、
身体のどこか、感情のもっと深い場所が、
その“シーン”を勝手に創り膨らませてしまうのでした。
例えば、由紀がほんの少し身を乗り出していたかも
しれない、とか。
例えば、彼女の瞳が少し潤んでいたかもしれない、とか。
あるいは、彼女がBDSMの話に震え、感じてしまった
かもしれない、などと。

私は こうして大胆に 大げさに思い巡らせることで、
久しぶりに込み上げてきた熱い昂りに身を任せ、
これまでの平尾から聞いた刺激的な話や、由紀の
いつも通りの(私は彼女が装っていると思い込んでいた)
表情を思い出していました。

(オレは知ってるんだ・・・ もう少し泳がせてやろう)
(もっと隠せよ、何食わぬ顔して、もっとしらばくれて、
 もっと危ない橋を渡らせてもらえ)
(平尾と二人で、オレを追い込めよ・・・ 刺激と興奮を与えてくれ)

こうして私は、自分本位の目線で、由紀を自分勝手に
妄想のネタに仕上げていったのでした。

-黒いスリップとガーターベルトを身にまとい、
 凛とした表情で厳格なBDSMプレイに喘ぐ由紀・・・ 

私の呼吸は次第に深くなり、リズムを刻み始め、
身体は静かに、しかし確実に昂っていきました。
そして、身体の奥底から湧き上がる熱が、
一気に波となって全身を駆け巡り、ペニスは怒張し
迷いなく扱き上げることによって、
久しぶりだった前回の「頂」を超えたのでした。

私は、独りで自分を盛り上げ、慰めることに成功し、
そのまま悦に浸ることができたのです。

まさに、スリルとリスクがクスリになった瞬間でした。

自分を慰め終えた後は、冷静に後片付けをしながらも
妙に頭の中が すっきりとしていました。

いわゆる「賢者の時間?」というやつなのか、
さっきまであれほど心を占めていた嫉妬や猜疑心は、
嘘のように静まり返りました。
代わりに 何とも言えない脱力感、それに勝る充実感、
満足感や達成感が、私の内側を温かく包んでいました。

私が あれほど由紀の口から聞きたがっていた、
平尾と話したという“BDSMのこと”・・・

スッキリとした頭で、冷静に考えてみたら、
由紀が“あの話”をしなかったのも無理はないな、と。

・刺激的な内容ゆえに、それを家庭の夕食時に、
 いや、それだけではなく通常の日常の生活の中で
 持ち出すべきものか と言われたら、違う気がする
・隠していたのではなくて、由紀なりにTPOを踏まえて
 気を遣ったのだろう
・そもそも由紀は、デートから帰宅後の報告で
 「趣味の話も出た」って、ちゃんと私に報告は
 してくれていた
・平尾のような生真面目な男が、あの話を“趣味”
 として語ったのなら、由紀も個性的な趣味として
 聞くだけ聞いて受け入れたのだろう
・よく考えれば、さすがにあの話は女性の由紀からは、
 言い出せない
・オレも平尾のその趣味は知っていたし、
 由紀に聞くまでもない

こんなふうに、私はいつの間にか、悶々としていた
BDSMの報告がなかった件を、自分の中で都合良く
整理していたのでした。
というよりも、久しぶりの快楽がスッキリと
洗浄してくれた感覚になって、冴えた頭の中で
理解と納得が、成立していたのでした。

その数日後、金曜日の夜。
娘の麻里奈が帰省してきました。


[133] Re: 覆水盆に返らずB  倍胡坐 :2025/10/20 (月) 19:00 ID:dLWBJFjU No.204833
由紀さんの心のヒダ。
平尾さんの心のヒダ。
そして、矢部さんの心のヒダ。

矢部さんの克明な描写によって、ひとつひとつが明らかになっていく。
そして、新たな疑問とじれったさが読者の心のヒダに去来する。

そんな展開を心地よく感じております。
引き続きよろしくお願いいたします。


[134] Re: 覆水盆に返らずB  小太郎 :2025/10/20 (月) 21:35 ID:2qg7mtms No.204836
このデートごっこの目的の一つ、矢部さんのED回復は
由紀さんの隠し事によって矢部さんが妄想を広げ
見事に達成出来ましたね。

正にスリルとリスクがクスリになった訳ですが
今後、二人のデートでの出来事を由紀さんが
隠すようになるリスクが徐々に高まっていく
のでしょうか?

続きを楽しみにしています。


[135] Re: 覆水盆に返らずB  ざるそば :2025/10/24 (金) 22:53 ID:Nzmlf/xw No.204933
更新ありがとうございます
更新はまだかまだかと1週間に何度も何度もサイトを覗いてしまいます(笑)
BDSMの件は、今度のデートにどのような影響をもたらすのでしょうか?
めちゃくちゃ気になります
話しの展開がどんどん望む方向に向いてきて益々続きが気になります


[136] Re: 覆水盆に返らずB  矢部 :2025/10/26 (日) 00:30 ID:J06PZGew No.204957
倍胡坐様 いつもコメントをくださりありがとうございます。
>そんな展開を心地よく感じております。
・ありがとうございます。これからも期待に応えられれば良いのですが・・・

小太郎様 いつもコメントをくださりありがとうございます。
>二人のデートでの出来事を由紀さんが隠すようになるリスクが徐々に〜
・由紀が隠すつもりだったのかどうかは、本人ではないのでわかりませんが、後でわかって もしかして隠していたのでは?と思えた時にはむしろ興奮していました。

ざるそば様 いつもコメントをくださりありがとうございます。
>話しの展開がどんどん望む方向に向いてきて〜
・ご期待に添えれば良いのですが、どうでしょうかね、なかなかこちらのサイトに投稿をするレベルに届いていない話なので・・・;;


*****

金曜日の夜に娘の麻里奈が帰省してきました。

来月、友人の結婚披露パーティに招かれているそうで、
着ていく洋服を探したい、というのが帰省の理由の
ようでした。
思えば彼女も、もう20代を折り返しました。
そろそろ彼女自身の結婚を、現実の事として輪郭を
持ち始める年頃なんですよね。

翌土曜日は せっかくの帰省だからと、三人で出かける
ことになりました。
麻里奈の提案で、車で少し遠出してアウトレットモール
に向かうことに。
そこでは、偶然にもこの土日に人気スポーツ選手の
トークショーが開かれるということもあって、
「帰省のタイミングでラッキー」という娘の気持ちを
汲んだ形にもなったのです。

たまの子どもの帰省に張り切ってしまうのは、
相変わらずの親バカでしょうか;;

11月にしては暖かく、晴れやかな日でした。
ウチの軽自動車は海沿いの道を快調に走っていました。

後席には、母・由紀と娘・麻里奈が並んで座り、
にぎやかに会話を弾ませていました。
ハンドルを握る私も 会話に時々混ぜてもらいながら、
家庭や家族の温かみをぼんやりと感じていました。

ふと (今 この時間って、平尾は独りで何を?)
なぜか、そんなことが頭を巡ったのです。

そんな時、後席から私に由紀が何気ない声で、

「あっ トオサン、この海沿いの道 もう少し先の
 所にね、この前 平尾さんに連れていってもらった
 カフェがあるよ・・・」

「え? 平尾? あ〜 あっ そうなんや・・・」

びっくりした私は、思わず ブレーキを踏みかけ、
慌ててアクセルに戻しました。

(オイオイ アホか! 今、それ 言うか? 
 娘も おるんやで?)

それでも平静を装い、何気ない顔で運転を続けようと
努めましたが、動揺までは隠せませんでした。

案の定、麻里奈は由紀の言葉を聞き逃さずに、
すぐに反応しました。

「え? 誰? 平尾さんって」

「それ オレの友達や! 同期で 会社の・・・
 昔からの・・・ 入社の時からの・・・」

思わず私の方が慌てて答えながら、脈が早くなるのを
感じていました。

「平尾さんよ・・・ え? マリちゃん覚えてない?」
と 由紀。

麻里奈は記憶を辿るように首を傾げながらも、
もともと家族ぐるみの付き合いもしていたので、
名前はうっすら覚えていたようでした。

「あー、平尾さんって・・・ うん、わかったかも」
「えっと・・・もしかして 奥さん 亡くされた人?」

と 麻里奈は続け、

「かわいそうだよね・・・ まだまだ若いのに」

彼女自身 結婚を意識するようになってきていたのか、
“夫婦”や“人生のパートナー”という言葉に、
重みと身近さを感じていたのかもしれません。
たまたま今回 結婚式に招かれているとあれば、
なおさら平尾の境遇に思いを寄せたのでしょう。

「え? でも母さん・・・ 平尾さんと、って?」

由紀は、あくまで自然な口ぶりで、

「あ、平尾さんとね・・・ ずっと落ち込んでて、
 かわいそうだから、この前の日曜日も会って、
 そのカフェに行ったのよ」

「いや、あいつ、ずっとやからな・・・
 なかなか立ち直れんし、メンタル やばそうやし」
「で、カアサンに 気晴らしというか、なんていうか
 あいつの気分転換の手伝いを してもらっとるんや」

突然のことで、かなり歯切れの悪い私なりに
由紀の返答に便乗するように補足をしました。

車はちょうどその頃、軽い渋滞に差しかかり、
前方には由紀が話していた 例の海沿いのカフェが
ゆっくりと近づいてきました。

「へぇ〜 じゃぁ、母さんと平尾さんと二人で?」

「うん、まあ・・・デートごっこ、みたいな?」
と、由紀はさらりと笑いました。

驚くでもなく、口元に笑みを浮かべて麻里奈は、

「そうなんだ・・・ それ、平尾さん 喜んだでしょ〜」

と言ったあとに、少し照れくさそうに言葉を足しました。

「いいねー なんかそういうの・・・ ちょっとした
 イイ話だよね」と。

「でしょ・・・」

と由紀の言葉を聞きながら、思わずバックミラー越しに
私は麻里奈の表情を確認しました。
そこに不信感、違和感、戸惑いの色はなくて、
ただ柔らかい笑みだけがありました。

それにしても母娘というのは不思議な関係ですよね。

親子でありながら、女同士として何かを共有している。
友達以上に思いやり 分かり合える関係とでも
いうのでしょうか?
亭主で男親の私には、どうしても入り込めない
閉じられた世界が、そこにはあるような気がして。

特に年頃の娘さんを持つ男性読者の方であれば、
少なからず共感いただけるのではないでしょうか。

由紀は わざとらしく肩をすくめ、茶目っ気のある
表情で笑っていました。
まるで娘に対して、そして私に対しても、
「やましい事なんて、あるわけないでしょ」
とでも言いたげに。

そして母娘は顔を見合わせて笑っていました。

(いやいや・・・こんな話、今 するか?)

私は内心でツッコミながら、

「なんか楽しそうやな」

努めて穏やかに、トボけた独り言を漏らしました。

ただ、その時の由紀の笑顔には、
どこか “したたかさ”のような色合いが
混ざっているようにも感じたのです。
いや 感じただけ、ただの思い過ごしかも
しれませんが。
 
でもそれだけ私は、この話に敏感になってしまって
いたのでした。

少しずつ車から見えるカフェが近づくにつれ、
私の中で止まっていた妄想が、静かに息を
吹き返していったのです。

(ガラス越しに見える、あのテーブルか? あの席か?)
(由紀はどんなふうに笑い、平尾はどれくらいの距離で
 彼女の顔を見つめていたのか・・・)

私自身「もう大丈夫」と納得し思い込んでいたはず
なのに、心の奥底でくすぶっていた火種が、
また新たな空気を吸い込んで一気に燃え上がって
いくような気がしました。

再び 自らを追い込みたいのか、守りたいのか、
よくわからなくなってきていて・・・
ただ、湧き上がったその感情が、私に
(由紀と平尾に何かあって欲しい)という欲望を
与えていたのでした。

「せっかくだし、そこのカフェ 寄ってく?」

由紀が無邪気にそう言ったのは、
まさにそのタイミングでした。

私は一瞬、息を呑みました。
その無邪気さこそが、むしろ私の胸を
締めつけてきたのです。

「えっ! いいね!」と麻里奈が笑い、

「ここってね ガトーショコラ、めっちゃ
 美味しくてね、この前 食べたけど、
 完全にハマったかも!」
「あ でもねー、その前のサンドイッチも
 すごくおいしかったよっ」と由紀。

「この前? その前? えっ・・・ええっ?」
と 麻里奈が問えば、

「あっ、ココってね、この前とその前、2回来てて」
と 自然に返す由紀。

妻・由紀と娘・麻里奈、二人は屈託のない笑顔でした。
なのに、私だけが焦りまくって体温の上昇を
感じていました。

車は隣接する駐車場へ入り、私たちは三人でカフェ
『ラ・メール・ブランシュ』のドアをくぐりました。
(駐車場の車を見ると、ウチの軽自動車では
 恥ずかしい気がしました;;)

私はこの店、もちろん初めてだったのですが、
なんとなく名前だけは聞いたことはありました。
正直、私には似合わない店という印象でした。

白い漆喰の外壁が太陽の光に輝き、
大きなガラス窓越しに波打ち際が望める作り、
洗練されたモダンな佇まいは、
どこか落ち着いた高級感を漂わせていました。

外のテラス席には、木製のテーブルと椅子が並び、
海風に揺れる白いパラソルが何気におしゃれな感じで、
店内に入ると、やわらかな陽射しがテーブルを包み、
ほんのり、甘いバニラと焙煎されたコーヒー豆の香り
が漂っていました。

(この前 平尾も由紀を連れて この香りの中に・・・)

実はこの時、不本意ながら 私の中に平尾に対する
羨望と嫉妬の気持ちがあったのです。

「いらっしゃいませ」と、すぐに店員さんが私たちを
BOXになったテーブル席に案内してくれました。

「空いてて良かったね〜」と言いながら由紀は座り、
母娘の二人は紅茶とおすすめのガトーショコラ、
私はコーヒーだけをオーダーしました。

麻里奈がお手洗いに行き、急に夫婦2人になると、
なんとなく私から由紀には話しかけ難い雰囲気に
なっていたのを覚えています。

手持ち無沙汰な私は 当てもなく店内を見渡しながら
ふと、

(平尾と由紀はどこの席に座ったんや?)

今さら無駄で無意味な考えを巡らせながら
テーブルの木目に指を滑らせていました。
でも、その動作の奥に、ひりつくような痛みを
感じていたのでした。

「ここってね、テーブル席 席少ないから、
 前もその前も、2回ともカウンター席だったよ」

由紀がふいに言いました。

「ほら あそこ、海に向いてる・・・」

指差した先にあるのは、ガラス窓沿いの横並びの
カウンター席。

(横並びで? あの距離で?)

「カアサン、この前の日曜日もココって、
 こんな感じやったん?」

私は ちょっとした胸のざわめきを収めたくて、
何気なく聞いたつもりの自分の声が、
思いのほか低く響きました。

由紀は一瞬 私を見て、

「う〜ん、もうちょっと 混んでたかな」
「大雨だったし、お客さん 多かったのかもね」

と、軽く笑っていました。

「何の話?」

席に戻ってきた麻里奈が聞いてきたので、

「お母さんは、この前 カウンター席に座ってたんやて」
と私。

「へぇ〜 そうなんだ・・・」
「ねぇ、あそこ?  海が目の前じゃん」

麻里奈は視線をカウンター席に向け、
そのまま少し目を細めてから、いたずらっぽく笑って
言いました。

「じゃぁ、お父さんも お母さんと座ってみたら? 
 今 ちょうど 空いてるみたいだし・・・」

「はぁ?」

咄嗟の事で、私は思わず声が上ずり、動揺しました。
もちろん嫌な気はしませんでしたが、照れもあったのか
変にぎこちなく嫌がる素振りをしたのだと思います。

「今から席を変えたらあかんよ・・・店に迷惑やろ」

由紀はそんな私を横目で見ながら 麻里奈に向かって、

「今日はデートじゃないからね。 三人で来てるんだし、
 ココでいいよ」と さらりと笑っていました。

私は由紀に、何気に“ダメ出し”をされたような?
気がして、視線を泳がせながら、スマホをいじっていた
のを覚えています。

麻里奈は、ただ クスクスと笑っていました。
その表情が、くすぐったくもあり、同時に胸の奥を
静かにざわつかせたかのようでもありました。

「そっか、平尾さんとはデートだったからね」

ニッコリ笑って、母親を茶化す娘。

「やめてよ〜 全然、そんなんじゃないよ」

由紀は笑いながら、麻里奈の肩を軽く叩きました。

そして麻里奈は紅茶をひと口飲んで言いました。

「でもそういうの、ありだと思うよ・・・
 恋愛とかじゃなくて、人として必要とされる関係
 ってやつ?」
「ぜったい、平尾さんも喜んでると思う」

「そうかなー?」と由紀も紅茶を飲みました。

「早く元気になればいいね」「そうだねー」

そんな二人のやり取りを見て、
私は、自分だけがその“輪”の外側にいるような
感覚に陥ったのです。

表面上は穏やかな家族の団らん・・・

でも、私の中では、別の時間軸“テーブル”が
広がっているような感覚がありました。

私は遠目にカウンター席を見ながら、まだ やっぱり
平尾の姿を重ねていました。

−海に面したカウンターテーブルでは、
 由紀が少し緊張したようにカップを両手で包み、
 平尾がそれを見つめながら、
 低い声で“あの話、つまりBDSMの話”を熱心に
 説いていたのです。

“痛みと快楽は、紙一重なんです”
“信頼できる相手じゃないと成立しないんです”

−私の妄想の中でも平尾の声が響いていました。
 由紀は、ただ静かに頷いていました。
 そして私は、陰からそんな二人を見ているのです。

私は自分自身がその場面を覗き見しているような、
得体の知れない昂ぶりを感じていました。

そんな妄想に浸っていたひとときを遮るように、

「おいし〜」
「お父さん ハイ。 これ 一口食べてみて・・・」

と、私にフォークを差し出す麻里奈。

「ああ、ありがとう」と私は笑って応じながら、
ふと横を見ると、由紀がカップを唇に運ぶ仕草。
白い指先。淡い唇の動き。

(たぶん平尾も、この角度でそれを見たんやな)

その想像が、また私の内側を静かに疼かせました。

それは嫉妬ではなく、興奮でもなく、
もしかすると 自分自身を試すための痛みだった
のかもしれません。

(もっと仕向けたい)
(由紀が、どこまで踏み込むのか)
(どこまでオレを試してくれるのか)

そう思った時、由紀がひとりそっと目を細めて
微笑んだ気がしました。
それだけで、私の中での妄想と現実の境界線が、
曖昧になっていったのです。

「さーて、そろそろ・・・」

席を立って、テーブルを離れようとした矢先、
奥から、スーツ姿の支配人らしき男性が
こちらに小走りで近づいてきました。
にこやかな笑みを浮かべながら、由紀に声を
かけてきたのです。

「いらっしゃいませ、ご来店ありがとうございます」


[137] Re: 覆水盆に返らずB  小太郎 :2025/10/26 (日) 01:57 ID:r0CGPC1I No.204958
平尾さんとデートしたカウンター席を眺めながら
由紀さんが微笑んでいたのは意味深ですね。
SMの話を熱く語っていた平尾さんの姿を思い出していたのでしょうか?

まだこの時点では平尾さんとのデートごっこは、娘さんにも軽く
話せる話題だったのですね。
これがいつから娘さんにも本当の事を言えなくなるのでしょうか?

もし矢部さんが二人のデートの様子を覗くとしたら、その場所は
このカフェになりそうな予感がします。

続きを楽しみにしています。


[138] Re: 覆水盆に返らずB  :2025/10/26 (日) 02:26 ID:7rPJjKBA No.204959
再開を うれしく思います。マイペースで、自分の気分で、書いてくださいね。つまらない文句を言うバカは、無視しましょうね・・・・

[139] Re: 覆水盆に返らずB  西門 :2025/10/26 (日) 19:38 ID:Qr.pLiO2 No.204986
麻里奈さんの「いいねー なんかそういうの・・・ ちょっとした
イイ話だよね」の言葉に対する由紀さんの「でしょ・・・」の返事に
矢部さんに頼まれてデートをしていると言う当初の二人のデートの目的が消えて
由紀さんが平尾さんとのデートに心を開き出してる雰囲気が伝わって来ますが、
西門の思い過ごしでしょうか?
矢部さんが、感度の高い観察眼で由紀さんの細やかな言葉使いや平尾さんとの逢瀬を
思い出してるような眼差しから由紀さんの心情の変化を感じとられていることが
伺えて興味深く読ませて頂いてます。
最近は由紀さんだけでなく矢部さんご自身も既にマゾだと気づかれていたのかなと
思いながら読ませて頂いてます。


[140] Re: 覆水盆に返らずB  けんけん :2025/10/26 (日) 21:09 ID:03QvZ.oU No.204988
更新ありがとうございます。娘さんの反応が良くて、奥様と平尾さんとのデートを後押ししてる感じがします。奥様が、平尾さんに対してもっと喜んでもらおうとしているような流れになりそうな予感です。矢部様には
よろしくない展開に
なりそうな気配ですね。続きお待ちしてます。

[141] Re: 覆水盆に返らずB  もう60ですが :2025/10/27 (月) 06:23 ID:Pe/8oEMo No.204997
奥様のお嬢さんへ、平尾さんと来たことある、発言防衛本能、なんか平尾さんと2人でいるところを見つかっても、ちゃんと言い訳出来るという、作戦に感じてしまうのは、考え過ぎですかね?
 うちの妻も40代半ばに、〇〇さんと仕事(近地出張)の帰りに何回か行ったことある。
と言い、2〜3回目以降は体の関係になっていました、私は仕事だからと疑いもしなかったのですが、ふと奥様とお嬢さん(私にも娘います)の会話で思い出してしまいました。
続きドキドキしながら楽しみにしています。


[142] Re: 覆水盆に返らずB  たかし :2025/10/27 (月) 15:35 ID:HCYdR8Kk No.205011
長文の更新ありがとうございます。
奥様の平尾氏との様子を知る支配人らしき男性の登場でつづく、とは!
どのような会話になるのでしょうか?
「仲の良いご夫婦だと思っていました」なんて言葉でしょうか?
それとも矢部さんに気遣って別のセリフでしょうか?
次の更新も楽しみです。


[143] Re: 覆水盆に返らずB  倍胡坐 :2025/10/27 (月) 16:57 ID:.BdCXj2. No.205013
由紀さんとしては、平尾さんとのアレコレを
麻里奈さんとのいつもながらの会話の中に少しずつ混ぜ込むことで、
平尾さんとのデートが疚しいものではないということを言いたげですね。

それがそのとおり健全なものなのか、
これから起こるかもしれないことへの予防線(カモフラージュ)なのか、
由紀さんのホンネを是非とも知りたいところです。

それと、スーツ姿の支配人らしき男性が大いに気になるところですね。
平尾さんの知人?ひょっとしたら、平尾さんの趣味友?

ますます目が離せなくなってきました。



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