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優しい嘘

[1] スレッドオーナー: 修司 :2013/06/15 (土) 07:55 ID:FXfvEuuU No.17865
妻から聞いた話を元に、何割かの事実と何割かの妄想を交えて書いてみます。

<うたがい>

女の人が本気でつく嘘は、男には見抜けないと言う。
妻には匂わせたこともないが、もともと寝取られの気がある私には、心密かに(妻が他の男と・・・)という願望があった。

妻の秀美と結婚して7年、子供はいないが、それなりに仲の良い夫婦として過ごしてきた。
子供のことは自然に任せて、30歳前に子供が出来なかったら、その時に不妊治療も考えようと二人で決めていた。
仲は良いが、結婚当初からセックスは少なかった。
私には人並みに性欲はある。問題は妻の方だ。
私が求めれば生理でなければ応じてくれるし、服を脱がし終わる前に濡れているし、ちゃんと感じてもいる。だが、自分から求めてくることは一度も無い。
自分のテクニックの稚拙さのせいなのか、さすがに不安になって、聞いてみたことがある。
欲求不満の妻に浮気なんかされたくない。
妻によれば、セックスがあまり好きではないということらしい。すぐにフォローするように、
「修ちゃんが一生懸命してくれるのはうれしいし、ちゃんと気持ちいいよ。優しくしてくれるし、ぎゅっとしてくれるの、忘れてないし・・・」
結婚間もない頃、終わった後すぐにティッシュを探しに行こうとして、珍しく妻にセックスに関して注文を付けられた事。終わった後、しばらくはぎゅっと体を抱きしめていてほしいのだ、と。

「人の重さがね、気持ちいいの・・・」

セックスが好きではないと言われて、何となく遠慮がちになり、セックスレスという程ではないが、それは月イチ程度になってしまった。

しかし、それ以外のことに関しては、全く不満は無かった。何より、誰にでも優しく、控えめで夫のことを立ててくれる、理想的な妻だと思っている。

結婚時に勤めを辞めていたが、もともと社交的な妻は、専業主婦として一日中家にいる生活が耐えられず、私も同意し、すぐに近くの会社でパート勤めを始めた。贅沢をしなければ、家計の収入

的には私の給与だけで十分だったので、妻の会社勤めは純粋に社会との繋がりということになるだろう。幸い、職場の人間関係も良好で、楽しくやっているようだ。

転機が訪れたのは一昨年の暮れのことだった。私に別の事業所への派遣の内示があったのだ。会社により事情は違うのだろうが、私の勤務する会社では「3カ月単位の派遣」・・・「派遣期間延

長」・・・「派遣期間延長」・・・、が良くあることだった。「もう、普通に転勤にしてくれ!」と人事に掛け合った先輩の話も聞いている。ただ、私の場合は業務内容から、本当に数か月で戻

る可能性も高かったので、妻を伴わず単身で赴任することにした。妻は別の土地で生活することを望んだのだが・・・
新幹線と在来線を乗り継いで、片道5時間程度の距離。海外と比べれば特別遠いとは思わなかった。

赴任先では特別に独身寮に入れてもらえたので、食事のことは心配する必要が無かった。ただ、勤務先と寮との往復だけの単調な生活はただひたすら退屈なものだった。
一方で、妻のことを気にせずインターネットでエッチなサイトを見まくる自由に恵まれた。というより、知り合いも無く、寮からの移動手段もなく、他にすることがなかったのだ。

仕事もそれなりに忙しく、妻の元に帰るのは月に一度。新婚のように待ち遠しかった。妻はどうだったかはわからないが・・・

自分のPCは赴任先に置いてあるので、たまに帰る自宅では妻のPCを使うことになる。
ただし、妻が起きてる時に会話もしないでPCに向かうなんてあり得ないので、妻を早く寝かせたい時には、「赴任先から持ち帰った仕事」の出番だ。
毎回、帰る度に妻のウェブ閲覧履歴のチェックは欠かさない。エッチなサイトや出会いを求めた履歴なんかがあったら・・・
密かに心躍らせてPCのチェックをするのだが、ウェブの履歴は買い物系や趣味のものばかり。せっかくの高性能PCが宝の持ち腐れだろ〜と思っても、さすがに積極的に浮気を促すわけにもいかない。
「赴任先から持ち帰った仕事」を始めようとすると、何となく妻が寂しそうに感じられたこともある。浮気をしているわけでもないのに、何だか後ろめたさを感じていた。

「それ」に気付いたのは、派遣が一回目の延長になって暫くの頃。
ドキュメントのホルダに見慣れないアイコンのファイルが数個、増えていた。
(何じゃこりゃ)
ダブルクリックすると、パスワードを求めてくる。
(怪しい・・・)
妻もそれなりにPCは使えるが、ことセキュリティ関係については全く理解していないはず。パスワードで保護されるファイルを妻が作成するとは思えないのだ。
(お宝の匂いがする・・・)
ファイル形式は拡張子から簡単にわかったが、問題はパスワード。二人の誕生日や結婚記念日もヒットしない。幸いなことに3回失敗したら消滅する、なんてことは無かったが。
ただ、ファイルの大きさから画像っぽいような気がしたので、どうしても見たい。・・・そう、私の中ではこのファイルの中身は妻の恥ずかしい画像に違いない、と決まっていたのだ。

次の月にもファイルが増えていた。
パスワードを解読するにはどうすれば良いか、それほどの知識は私には無い。
妻の携帯にヒントがあるかもしれないが、妻の携帯を黙って見るのはさすがに禁じ手だと思っているので、できなかった。
ただし、妻が文字と記号と数字を組み合わせた複雑なパスワードを使う(憶える)とも思えない。


[2] Re: 優しい嘘  さとる :2013/06/15 (土) 15:46 ID:H057kNEE No.17866
続きが、とても気になります。

[3] Re: 優しい嘘  修司 :2013/06/16 (日) 12:07 ID:lbO8gekc No.17869
<その男>

ヒントは思いがけずに現れた。
久しぶりの帰宅で妻と買い物に出かけた時のこと。
「秀美さん!」
高校生に声をかけられた。
「あら、諭君こんにちは」
西高の制服だ。妻の母校でもあり、もともとガラの悪い学校ではないが、真面目そうな男の子だ。というよりも、かなり地味な奴だな。
「知り合い?」
「うん。市民センターの焼き物教室の先生のお孫さんの諭君」
「焼き物・・・?」
「もう、言ったでしょ。先々月から通ってるって」
全く記憶に無いが。いや、怒らせてはまずい。話題転換だ!
「さとし・・・くんも焼き物やってるの?」
「いいえ、たまに祖父の手伝いをしているだけです」
「諭君はろくろを使うのが上手なのよ」
「祖父に言わせれば、僕のは100円ショップ、だそうですよ」
「え〜、ひど〜い。そんなことないよねぇ」
「お前のは、形がきれいなだけだって」
「形がきれいなら、十分じゃない」
「秀美さんのみたいな味わいが出せないのかって」
「あら、ありがと。でも、直接誉めてくだされば良いのに」
「祖父は生徒さんは殆ど誉めませんよ。やる気を出させるために誉める、あれは生徒さんを逃がさないための、ただのお世辞です」
「言うねぇ〜」
何だか楽しそうだ。たった数分のことだったが、私の知らない妻の姿だった。

そして、私の頭には予感めいたものが浮かんでいた。諭君とあのファイルには何か関係がある、と。
それは多分に私の寝取られ願望が反映されたものだったが、妻の態度に説明の付かない違和感を本能的に感じ取っていたのかもしれない。
諭君をぼんやりと眺めながら考え込む私を、妻が密かに観察していたことに私は気付かなかった。

夕食は二人で焼き餃子を作った。餃子とビール。たまにしか帰ってこない亭主の晩餐としてはどうかと思うかもしれないが、私の一番の好物なのだ。
「修ちゃん、もう少し中身多く入れられない?」
「中身入れると、ひだがうまく出来なくて」
「そっか・・・」
私は器用な方ではない。私が手伝うと、皮と具材のバランスが合わず、いつもどちらかが余ってしまう。
翌日にその余り物をどうアレンジするか、妻はいつも工夫して変ったものを作ってくれた。
私はその余り物メニューに関心を持ったことがあっただろうか・・・
赴任先のことに夢中で、妻のことにあまりにも無関心になってはいないだろうか?

ビールを飲みながら、餃子をつまむ。妻も、少ないながらもビールを口にする。ささやかな幸せな時間。
・・・だが、私の関心事は、昼間会った、高校生の男の子だった。
「諭君・・・だっけ、今日会ったあの子」
「うん」
「西高の制服だったよね。後輩なんだ?」
「学校はね。彼は部活してないし、むしろおじいさんの工房の手伝いをしているみたい」
「親しそうだったじゃない? 向こうから声掛けてきたし」
「知り合いに出会ったら、ちゃんと挨拶できる子なのよ」
「でも、高校生ぐらいの子が人妻に声かけるのって、勇気いるよな」
「なにそれ〜。普通でしょ。人妻に声かけるって、ナンパじゃないんだから」
(確かに、そうかもしれない。だが、彼は妻以外の生徒さんにも声を掛けるのだろうか・・・? 妻だから、ではないのか?)
ビールの泡をぼーっと眺めながら考え込んでいた私に妻が訊いた。
「餃子、もう一回分焼く?」
「え、あ、うん。あと5個ぐらいでいい」
「わかった。焼いてくるね」
妻がキッチンに立つ。
今までのところ、諭君の話題に動揺する様子は無い。普通に考えれば、特別な関係になりそうも無いのだ。妄想が過ぎるか?
餃子が焼き上がって、妻が戻ってきた。
「市民センターの焼き物教室って、材料費以外は無料なんだよ。プロの陶工からしたら、完全に持ち出しじゃない」
「ボランティアってこと?」
「もちろん、そうだよ〜。市民講座は税金から補助が出てるけど。諭君もおじいさんからアルバイト代は貰ってないって」
「え、偉いな」
「何だかね、真面目なんだ。ここもバブル崩壊の後で窯元がたくさん潰れたじゃない? 昔ながらの登り窯があるおじいさんの工房が無くなるのは見たくないって」
「諭君は焼き物、やってないんだよね?」
「その辺がねぇ、良くわからないの」
「どういうこと?」
「知識はね、結構あるの。土を練るのも上手。菊練り、わかる? いいけど、とにかく、基礎は身に付いているって感じ。でも、本人は焼き物に興味が有るような無いような・・・」
「ご両親は?」
「普通のサラリーマンと専業主婦よ」
「じゃあ、後継ぎは」
「先生は、本音はどうか知らないけど、自分の代で工房は終わりにするって言ってる」
「じゃあ、諭君次第ってことか」
何だか、変な方向に逸れてしまった。軌道修正せねば。
「諭君のこと、詳しいんだね」
「教室に来てる奥様たちのアイドルみたいなものだから、彼は。みんなで質問責めよ」
「アイドルにしては、地味だよね」
「見た目はね。でも、純朴なところが彼の良いところだから」
妻も彼のファンなのだろうか。魅力を感じているのだろうか。
訊いてみようかと妻の方を見ると、妻も私を見つめていた。
何も言えなかった。
すると、妻がぽつりと言った。
「ああいう弟が欲しかったなぁ。清潔感があって、きちんと挨拶ができて、年長者への敬意をちゃんと持っていて・・・」
「彼みたいのが、タイプ?」
「う〜ん、結構、好きかも」
「おいおい、高校生に手出したら犯罪だぞ」
「心配?」
からかうような笑顔で妻が覗き込む。
「ん・・・まぁ・・・ちょっとね」
妻は何も言わず、笑いながら食器を片づけ始めた。


[4] Re: 優しい嘘  :2013/06/17 (月) 11:25 ID:0Mq3sc92 No.17871
読み易い文章と興味深い内容に引き込まれました。今後の投稿を期待してます。

[5] Re: 優しい嘘  修司 :2013/06/18 (火) 01:19 ID:qbdxV3j2 No.17874
さとる様、初老のオヤジ様
ありがとうございます。反応があると、やはり嬉しいものですね。
実は、この先結末近くまで大まかなところはできているのですが、脳内の仮想キャラ達が勝手に
動いてくれて、結末はのろけ話になってしまいました。
ここに投稿するのにふさわしい内容なのか、迷っています。


[6] Re: 優しい嘘  :2013/06/18 (火) 10:41 ID:zK4PqCos No.17875
きっとふさわしい内容だと思いますよ。迷わずにどうぞ!。

[7] Re: 優しい嘘  修司 :2013/06/18 (火) 22:34 ID:aYRBRgl6 No.17877
もう少しだけ続けさせていただきますね。

<秘密>

その日の夜、妻が寝てから再びあのファイルに挑戦しようと思っていた。だが、なぜか妻の態度が妙だ。
いつも優しい妻だが、今日はいつもよりも優しい、というか、まとわりついてくるような、甘えているような感じがする。
新聞を隅から隅まで読みながら、もう間が持たないと思い始めた頃、
「ねえ、修ちゃん」
妻が話しかけてくる。
「ん?」
「今日も・・・仕事持ってきてるの?」

そう、「赴任先から持ってきている仕事」は、妻を先に寝かせる口実。
普段は鈍い私だが、ここしばらくは、こと妻に関してはかなり敏感だと思っている。
妻が何かを求めているようだ。ファイルのことは仕方ない。今日は諦めよう。妻の反応の方が大事だ。
「今日は、無いよ」
「ふ〜ん・・・」
興味無さそう、・・・に装うが、私の座るソファの背もたれ越しに手を伸ばしてくる。綺麗に整えられた爪が私の胸に触れる。
「どうしたの?」
妻は無言で首筋から臍のあたりまで、二本の指で歩くように触ってくる。
私からは妻の姿は見えないが、ソファの後ろに立っていることはわかる。新聞をテーブルの上に置き、両腕を後ろに伸ばした。
ちょうど、妻の小さめのお尻を両手で掴む形になる。
「あ・・・」
妻の腕を引いて、背もたれ越しに体を抱え上げる。
「あん、ちょっとぉ・・・」
バランスを崩した妻は頭の方から私の膝の上に乗せられてしまう。
「強引だよぉ・・・」
スウェットの上着がずれあがり、贅肉の無い引き締まったお腹が露出した。
妻と目が合う。嫌がっている表情ではない。
色気の全く無い灰色のスウェットだが、潤んだ瞳で見つめられると、股間であれが力を漲らせ始める。
ちょうど妻の右手が私の股間のあたりにあった。
「元気になってるね・・・」
妻がそっと撫で始める。
妻が自分から触ってきたことなんか、殆ど無い。いや、一度も無いかもしれない・・・
珍しく、わかりやすく、妻がその気になっている。見過ごす訳にはいかない。

スウェットの上から妻のお尻を撫で回す。妻は嫌がらずに私のものを撫で続けている。
妻のスウェットを一気に膝まで剥ぎ下ろす。
シルク素材だろうか、淡いブルーの光沢のあるパンティが現れる。記憶には無いものだ。
今日のために買ったのか、それとも・・・
やや体を固くしたようだが、それでも妻は何も言わない。
いつもは脱がし始める前に照明を消すことを求められるのに・・・
理由はわからないが、今日の妻はいつもとは違う。

スウェットを足首から抜き去る。
「はっ・・・ん・・・」
声を飲み込む。
「恥ずかしい?」
妻が私を見つめる。潤んだ瞳、いや、殆ど泣いているようだ。心がちくりとした。
「でん・・・」
「いい。このまま・・・」
照明は消さなくてもいい、と。記憶にある限り、妻がこんなことを言うのは初めてだった。
妻は覚悟をしている。おそらく、今夜は全て私に従うつもりなのだ。
私は迷った。いきなり全てを委ねられたのだ。
しかも、いつも通りの、恥ずかしがりの妻に配慮したセックスでは無い。
いつもよりも恥ずかしいことをしても良い、というサインが妻から出ているのだ。
私も人並み以上のスケベだ、妻にしてみたいことは山ほどある。
ただ、妻がどこまで許す気があるのか・・・全く読めなかった。
迷いながら、妻の形の良い尻を撫で回していた。シルクの手触りが心地良い。
手を太股の内側に滑り込ませる。力が入り、手が適度に肉の付いた太股に挟み込まれる。
妻は私の体の上に俯せになっている形だった。
顔は私とは逆の方を向いている。だから、恥ずかしさも薄らいで私のものを触っていられるのだろう。
愛撫と言うには程遠い触り方だった。だが、私の妻としては大いなる進歩だ。
良くわからないが、妻は私とのセックスに初めて前向きな反応を示しているようだ・・・
妻の反応を確かめてみたい・・・、少し虐めてみたくなった。
太股に挟まれていた手を抜き、妻の体をひっくり返した。
「や・・・」
咄嗟に妻が両手で顔を隠す。
私は妻の両手首を掴み、頭の上の方に引き上げる。
「隠しちゃだめだよ」
妻が目を閉じる。
「目を開けて」
かぶりを振る。
「目を開けて」
もう一度言うと、妻が静かに目を開け、じっと見つめた。
両手を拘束したまま、そっとキスをした。
驚いたことに、妻の方から激しく貪るように舌を入れてきた。
五分ほどもそうしていただろうか、口を離すと、妻は赤い顔をして大きく息を吐いた。
少しぼーっとしている。
上着の下に手を入れる。寝る時はブラは付けていない。小さめだが形の良い胸が手に触れる。
すぐに手を引っ込めた。
「手を離すよ」
両手首を拘束していた右手を離す。妻が手を下ろそうと動くので、もう一度両手首を押さえた。
これでわかったようだ。再び手を離しても、妻は頭の上に手を上げたまま固まっていた。
周りを見渡したが、手の届く範囲に縛るものがなかった。
「いいかい、両手を縛ったからね。もう手は動かせないよ」
妻が小さく頷く。ルールを理解したのだ。
両手が使えるようになったので、私は妻の上着をゆっくりと、わざと焦らすようにゆっくりとたくし上げていった。
「ああ・・・いやぁ・・・」
妻が身をよじる。ルールを守ろうとはしているが、肘が顔の横あたりまで下がってきていた。頭の後ろで手を組んでいるような感じだ。
(まあ、これでもいいか。)
私はいったんソファを降り、妻をソファに横たえた。上着を胸のすぐ下までまくられた状態で、妻が不安そうな表情で見つめている。
「じゃあ、見せてもらうよ」
上着に手をかける。
「あ・・・はず・・・ん・・・」
胸が露出した。
「見えるよぉ」
「いやぁ・・・」
妻の目から涙がこぼれた。どきりとした。が、頭の下で組んだ手は解かない。まだ、いける。
両手の人差し指と中指で妻の体をゆっくりとなぞってゆく。
妻の息が荒い。セックスは嫌いだが、けっして不感症とかいう訳ではない。
脇の下まで来たときに、ついに耐えられなくなり、妻が手を解いてしまった。
くすぐったかったことはわかっていた。・・・が、これは利用させてもらおう。
「駄目じゃないか」
「あぅ、ごめんなさいぃ」
「これは、おしおきだね」
「許してぇ」
私は黙って首のあたりに丸まっていた上着を頭から抜き、手首のあたりで丸めた。これで、今度は本当に手が動かせなくなる。
「いやぁ・・・」
妻はシルクのパンティ一枚の姿で横たわっている。美しかった。結婚して7年目だが、こんなに明るい中で妻の体を見たのは初めてだった。
「見ないでぇ、いやぁ・・・」
妻はもう完全に泣いていた。心が折れそうだった。もう、こんなことはやめて、いつものように優しく抱きしめてあげようか・・・
だが、妻は横たわったまま、体は動かさない。まだ大丈夫だ。
「こんなエッチなパンツ穿いてるんだね」
「エッチじゃないぃ」
「だってほら、こんなにすべすべ。いい手触りだよ」
と言いながら、パンティを触る。敢えてそこには触らない。
じっとしていられないように、妻の体がうねうねと動いている。
「あれ、なんだ?」
触らなくても、もう、とっくにびしょびしょなのはわかっていた。
「言わないでぇ・・・」
「びしょびしょ・・・」
「いやあ!いやあ!」
私の声をかき消すように妻が叫ぶ。

「確かめさせてもらうね」
そう言って、シルクのパンティに手をかける。
「いやあ・・・!」
とうとう妻は横を向いて足を抱え込むように丸くなってしまった。
(もう、限界かな。)
「ごめん。やり過ぎ・・・」
妻が、私の声を遮るように再び叫ぶ。
「ごめんなさいぃ! おしおき、受けますぅ・・・!」
「え・・・?」
いきなり、何が起こったんだ?
丸くなって震えながら嗚咽を漏らす妻を茫然と見つめた。
「何でもしますぅ・・・、なんでも・・・」
「・・・」
唖然とした。
(知らなかったぞ。・・・妻はどM?)
単身赴任している間に、誰かの調教を受けていたのか?
本当に、知らない間に寝取られが実現していたのか?
誰に? 諭君・・・なのか?


[8] Re: 優しい嘘  ひろ :2013/06/18 (火) 23:29 ID:g3cffYY6 No.17878
どんどん続けてください。文章もよどみなく、期待大の展開です。
頑張ってくださいね。

[9] Re: 優しい嘘  :2013/06/19 (水) 11:05 ID:4mEYgzmQ No.17879
いいですねェ〜、「優しい嘘」の核心に段々と近づいて行く感じが素敵ですよ。続きをよろしくお願いします。

[10] Re: 優しい嘘  修司 :2013/06/20 (木) 07:22 ID:NAwytwXM No.17881
読んでくださる方がいて、うれしいです。
結末までたどり着くよう、頑張ってみます。


「さて、どんなお仕置きがいいかな」
手を拘束していたスウェットを解いた。すると、当たり前のように、両手を背に回し、私の方に向けた。
『縛ってください』・・・、妻の心の声が聞こえるような気がする。
代わりに、自転車に乗るときに裾が巻き込まれないように止めるベルトで妻を後ろ手に拘束した。
『ご主人様』とは言わなかったが、・・・今夜の妻は奴隷になったようだ。
妻はまだパンティを穿いたまま、ソファに座っている。
正直なところ、この先どうするか、全く考えていなかった。
主導権が妻の手に移ったような気がしていた。
それも、あまりにも突然に。

「ご奉仕させて下さいませ」
泣き止み、すっかり落ち着いた様子の妻。
明るい場所でのセックスを嫌い、セックスの時は常に受け身だった妻の姿はどこにも感じられない。
何やら堂々としている。そして、笑顔だ。・・・妙に嬉しそうだ。
妻がソファから降りて、目の前に立っている私の足元に膝を着いた。
私を見上げる。しばらくの間、じっと私を見つめた。
何か号令が必要なのかな、と思った時、妻が再び動き出した。
手が使えないので、口を使い、私のスウェットを脱がしにかかる。

妻がこんな行動を取るとは全く予想できなかった。
頭がくらくらした。妻は本当に誰かに仕込まれているのか・・・?

紐を銜えて引っ張った。引くところを間違えたようだ。蝶結びが固結びになってしまった。
「あぁ、申し訳ありません。お手伝いして下さいませ」
「しょうがない奴だ」
どんなキャラになれば良いのかわからないまま、適当に妻に合わせる。紐を解くと、
「ありがとうございます。続けさせていただきますね」
口だけで、妻がスウェットを足元まで脱がす。
上気した顔で妻が私の股間を熱い視線で見つめる。
「あぁ・・・素敵」
ボクサーブリーフに頬摺りをする。

(本当に、これが秀美なのか?)
妻に口でしてもらったことは、一度も無い。
もちろん願望はあったが、最初から諦めていた私は、妻に要求したことすら無かった。
特別に躾の厳しい家で育った訳では無かったが、何故だか妻は性的なことを全て、はしたないことと見なした。
高校時代、隠れファンからは『鋼鉄の処女』と密かに呼ばれていた、と妻の友人から聞いたことがある。
その妻が二十歳前に、『出来てもいないのに』結婚するというニュースは、旧友たちに衝撃を与えたのだった。

妻は私の股間に顔を擦り付け、息を荒くしている。
この流れでは、私が頼まなくても、妻が自分からやってくれそうだった。
妻が舌を出し、ブリーフの上から私のものを舐め上げた。背筋を何かが駆け上る気がした。
舌が何往復かした後、ゴムの部分を口で銜えた。一気にボクサーブリーフが足元までおろされる。
ぎんぎんにいきり立ったものが現れる。
妻は慌てたように一瞬目を反らしかけて、再び私のものと対峙した。
「・・・ご、ご奉仕させていただきます」
(マジか? マジだよなぁ・・・)
こんなことが現実に起こるとは想像できなかった・・・

寝取られを妄想している間は楽しかった。
一番萌える寝取られシチュエーションは、こんな感じだ。
『愛する妻が、私の知らない間に誰かのものになり、少しずつ調教されてしまう』
『身体は奴のもの、しかし心は変わらず夫のもの、その狭間で人知れず苦悩する妻』
『気付いて欲しい、でも夫はいない』
『打ち明けたい・・・、しかし、それは夫婦の崩壊・・・』
セックス嫌いの妻が浮気なんかするはずが無い。妄想はあまりにも現実離れしたものだった。純粋に妄想として楽しむだけのものだった筈だ。
私は「絶対」という言葉はあまり使わないが、妻に関しては「絶対」に浮気なんかしないと思っていた。
ごく最近までは・・・、「あれ」に気付くまでは・・・
でも、現実はどうだ・・・
愛する妻が自分が知らない間に誰かのものになっていたとは・・・
誰かに調教されていたとは・・・
もちろん、『寝取られ』として興奮している部分はある。
しかし、この現実を突きつけられると、気が遠くなりそうだった。


[11] Re: 優しい嘘  修司 :2013/06/21 (金) 06:46 ID:mIKB4Jig No.17883
妻は私のものを舌で何度か舐め上げた後、口を開けて一気に喉の奥まで飲み込んだ。
「ぐえっ、ごほぉ」
奥まで入れ過ぎたようだ。激しく咳き込む。涙が零れていた。被虐的な美しさを感じる。
「申し訳ありません。もう一度、よろしいですか?」
「あぁ、やってくれ」
今度はゆっくりと飲み込んで行く。ここが限界というところまで深く銜えると、今度はゆっくりと戻って行く。
そうして、何度か確かめるように往復させると、少しずつストロークの速度を上げて行く。
「ひもひ、ひいれふは?」
ストロークを止めず、妻が訊く。じっと私を見つめたまま・・・
「ああ、いい気持ちだよ」
「あんまりまふえ」
(・・・? ああ、がんばりますね、か)
うれしそうに目だけで笑った。
後ろ手に拘束された女に口だけで奉仕される・・・これが嫌いな男はいないのではないか。
「絶対に」妻にはしてもらえないと思っていた。それでも良いと思っていた。私が我慢すれば良いだけのことだ。
しかし・・・。
現実が想像を遙かに超えて、私の心に衝撃を与えてくる。

初めて妻に口でしてもらっているということもあり、限界がすぐに近付いてきた。
「もう、いいよ。このままだと、イってしまいそうだ」
妻はじっと私を見つめたまま、そのままストロークを続けた。
いや、早くイかせようとしているのか、速度が速くなっている。
(口に出しても良いのか? そんなことをしても・・・?)
「ひ、秀美・・・イっちゃうってば・・・!」
「ん・・・んん・・・」
また、目だけで笑った。
(本当に、いいんだね?)
もう、限界だ。
「本当に・・・イくよ!・・・イくよ!イくよ!」
「んん〜!」
妻の喉の奥に激しく放出した。後ろ手に拘束された妻は、黙って私から放出されたものをすべてその口内に受け止めた。
やがて私のものが力を失って行き、妻は口を離した。
吐き出すことはしなかった。すべて飲み込んでしまったようだ。
「けほ、けほ・・・」
妻が咳き込む。
「ご、ごめん・・・」
妻は涙目になりながらも笑顔で首を振った。
「・・・平気」

もちろん、最高に気持ち良かった。
一方で、私の一方的な願望で妻に不快なことをさせてしまった、汚してしまったという思いが心を刺す。
「こんなつもり・・・」
謝ろうとする私を遮る。
「お仕置きですもの」
正座した妻が少し首を傾げて見上げる。何だか、幸せそうに微笑んでいる。
今度はあなたの番。・・・そう言っているように見える。
口元に残った精液を舌で舐め取っていた。右の目から涙の筋が頬に続いていた。
何だか、妻が別人のように感じられた。


[12] Re: 優しい嘘  ひろ :2013/06/21 (金) 09:47 ID:x2OUmXLw No.17884
一体、妻に何があったのか?
そんな同じ気持ちにさせられてます。

[13] Re: 優しい嘘  修司 :2013/06/22 (土) 02:49 ID:521nO1sg No.17886
ありがとうございます。
主人公と同じ気持になってもらえる・・・作者冥利に尽きます。


テクニックは無いが、妻に感じてもらえるよう、その夜は私なりに頑張った。拘束したまま、電マも初めて使ってみた。
普段も、セックス嫌いとはいえ、感じていないわけではなかったが、初めて使う道具に妻は激しく反応した。
その反応が楽しくて、つい、私は夢中になってしまった。
びっくりするほど大きな声を上げて、妻は失神した。加減がわからず、さすがにやりすぎたようだ。

目を覚ました妻に謝った。
「ごめん。やりすぎたよ」
「・・・私、どうしたの?」
「しばらく失神してた」
「・・・何だか、壊れちゃいそうで、怖かった」
「もうしないよ。ごめんね・・・」
「ううん、いいの。修ちゃんがやりたいようにして。どんなことでも・・・平気だから・・・」
笑顔だった。とても幸せそうに見える。それを見て、私も幸せな気持ちになった。
「秀美・・・」

それからは普通にした。拘束も解いた。
普通のセックスだったが、妻は私と目が合うと、嬉しそうに笑顔になった。
これまでは真っ暗な中でしかしていなかったので、その最中の妻の表情は見たことが無かったかもしれない。

正常位で繋がっている時、不意に妻がきつく抱きついてきた。
身動きできないでいると、器用に体の向きを入れ替えて、妻が上になった。
「秀美・・・?」
「修ちゃんは動かなくていいからね」
両手で私の顔を挟み、諭すように言う。
ゆっくりと腰をうねらせる。目の前で、小さいが形の良い胸が揺れる。
手を伸ばそうとすると、
「んふ、動いちゃだ〜め」
今度は私の両手がベルトで拘束された。
うねうねと妻の腰が動く。ただ、動きがソフトでもどかしかった。
下から突き上げようとすると、
「こ〜ら、なにしてるの?」
胸に指を突きつける。
「ふふ、どうしたいの?」
「・・・もう少し、動いて」
「いやらしい・・・こうして欲しいってこと?」
そう言って、妻は両膝を立てた。
激しく動き出す。パンパンと音が響く。同時に湿った音も・・・
「見える?修ちゃんのものがどこに入ってるか・・・」
(嘘だろ・・・信じられん)
セックスの時に照明を絶対に許さなかった妻。前戯で性器に触れることすら嫌がった妻が・・・
妻の裸だって、殆ど今日初めて見たぐらいなのに・・・
「ああ、いいよ」
しばらく激しく動いていたが、不意に動きを止めると、
「ん・・・、よ・・・」
器用に挿入したまま、妻は体の向きを変えた。背面騎乗位だ。
ゆっくりと体を前後に揺すっている。それからしばらく、全く私の方を見ようとせず動き続けた。
「あ・・・あ・・・はぁ・・・」
小刻みに体を揺すり続ける。私に背を向け、そのまましばらく動き続け、やがて、
「・・・は・・・あ・・・!」
小さく叫んで、動きが止まった。
軽くイったようだ。そのまま、体が前に倒れた。


[14] Re: 優しい嘘  修司 :2013/06/23 (日) 08:57 ID:jAlGvQb. No.17888
とりあえず、ここまでで一段落です。
残念ながら、この先エロ要素が激減します・・・
何とか「盛れ」ないか、頑張ってみます。


しばらく息を整えると、妻は体を起こした。潤んだ瞳で私を見つめてから、ソファの上に両手と両膝で這った。お尻は私の方に向けている。
・・・こんな姿は以前なら、絶対に見せてくれなかったはずだ。
妻が手を折った。頭を座面に付けた格好だ。頭をずらし、肩越しに私を見る。
「おねがい・・・」
私は立ち上がった。口を使って、手を拘束していたベルトを外す。その音に妻が反応した。
土下座するように頭の横に置いていた両手を背中に回してきた。
妻の両手を再び背中で拘束した。
「ああ・・・」
妻の尻の後ろに回って座った。妻は震えていた。
軽く手を触れた。
「良く見えるよ」
「あぁ、いやぁ」
膝を閉じようとするが、その前に足首を掴まえていた。
手を伸ばして、床に落ちていたクッションを拾う。両膝の間にクッションを入れた。
もちろん、閉じることは可能だ。だが、今日の妻にはこれが「ルール」であることがわかっている。
膣口、クリトリス、会陰・・・人差し指一本でつついて回る。
「・・・いたずら、しないでぇ・・・」
初めて間近に見る、妻の部分・・・
海外サイトの画像でしか見たことの無かったものが、今、私の間近にある。女優でも素人でも無く、私の妻のものだ。
もう少し見ていたかったが、立ち上がった。
妻を見下ろし、ソファの前に立って、言った。
「自分で入れなさい」
妻が見あげる。潤んだ瞳が凄絶な魅力を感じさせた。
「許して・・・」
「入れなさい」
「・・・わかりました」
妻がのろのろと動き出す。後ろ手に拘束された不自由な体で、頭と両膝だけで下がってきて、私のものに高さを合わせようとする。
お尻を突き出す。もちろん、簡単には挿入できない。何度か挑戦したが、入らない。
妻が不自由な姿勢から振り返り、縋るような目で訴えた。
「お願いします。・・・入れて下さいませ」
「入れて欲しいのか」
「はい・・・入れて欲しいです」
「入れて欲しいんだな?」
「入れて下さい。入れてぇ・・・!」
「よし、入れてやろう」
「はいぃ、ありがとうございますぅ・・・」
妻のお尻を掴み、あてがった。
ずん!と一気に深く挿入する。
「はぅ・・・!」
なんと、その一突きで軽くイってしまった。
しばらく待ってから、ストロークを始めた。
「あ、待って・・・駄目、まだ・・・」
構わず、続ける。
「入れて欲しかったんだろう?」
「ダメ・・・! ダメダメダメ! また、・・・あぁ、壊れちゃう・・・!」
私は夢中になっていた。初めて、私とのセックスで、道具でなく、私のもので失神する妻を見ることができるかもしれない・・・
「あぁ・・・! ダメぇ・・・!・・・」
ソファに顔をぐりぐりと押しつけるように振っていた。
「もう、・・・あぁ、もう・・・!」

・・・その後、妻が失神するまで、私の方が先にイきそうになるのを必死に耐えながら、責め続けた。
妻が失神するのを見届けて、私は妻の中に思い切り放出した。私の方も失神してしまいそうなぐらい、気持ち良かった。

いつになくエッチになってくれた妻に大満足だった。始まってからの変わり様には戸惑うばかりであったが・・・
妻も寂しかったはずだ。でも、自分からおねだりができる性格ではない。甘える仕草が精一杯だったのだろう。
今回はそれに気付くことができて良かった。これまではそのサインを見逃してきたのかもしれない・・・
今日は、「妻を見ていたから」気付けた。これまでは「妻を見ていなかった」と言っても過言ではない、と思う。

終わった後でいつものように妻を抱きしめていた。
いつもと違うのは、裸の妻を後ろから包むように抱いていたことだ。妻の表情は見えない。
「修ちゃん」
「ん・・・?」
「・・・好き」
「知ってるよ」
「何を・・・知ってる?」
やはり、今夜の妻はどこかおかしい。
後から抱きかかえる様に包んでいた私の手に妻の手が重ねられた。
どう反応して良いかわからなかった。
妻が言った。
「これからも、ずっと私を好きでいて。・・・私を離さないでね」
「・・・」

(こ、これは、『妻からのSOS』フラグ・・・! やはり、そうなのか・・・?)

ふと気付くと、疲れたのだろう、妻は私の腕の中で寝息を立てていた・・・


[15] Re: 優しい嘘  修司2 :2013/06/24 (月) 23:59 ID:C0ufX3oI No.17901
このサイトに同じ名前の人がいることに気付きました。
私の方が後なので、私が偽物ですね。
作品中に名前を使っているので、とりあえず私の名は、修司2ということにします。

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<その中は>

ファイルをUSBメモリーにコピーして、赴任先に持ってきた。例のファイル形式を作成するソフトも海外サイトからダウンロードした。
後はパスワードだが・・・

まずは「satoshi」。・・・拒否された。
(う〜ん、違うかぁ。)
でも、さとし関連に間違いないはず、と確信している。
でも、諭君の誕生日とかだったら、お手上げだな・・・
妻と諭の名前・・・も違う。
もう、始めてから2時間経っていた。
「やっぱり、ヒントが無ければ、無理かぁ・・・」

高校二年生といえば、17歳かな?
「satoshi17、と・・・頼むよ〜」

その時、・・・奇跡が起こった。

(風の中のす〜ばる〜・・・)
頭の中であの曲が響く。
棒グラフが進行中・・・解凍終了。

さて、何を見せてくれるかな。・・・心臓の動悸が半端じゃない。ファイルの中身を見る。

(・・・あぁ、やっぱり・・・)

裸だったりするわけじゃないけど、そこにあったのは、私が見たことが無い妻の写真。
普通に化粧をして、普通に服を着た、笑顔の妻の姿。
『何で撮ってるの〜』、そんな妻の言葉が画面から聞こえてきそうだ。でも、嫌がっているようには見えない。
どうやら焼き物教室で撮影したものらしい。妻と別の女性が写っている写真もある。背景に「いかにも」という格好のじいさんが写っていた。先生だろう。
妻と諭君が二人だけで写っているものも一枚だけあった。ただ、ラブラブな雰囲気は全く無く、緊張しているのか笑顔が固かった。

「あれ?」
画像が一周してしまった。一つ目の解凍ファイルには、妻の楽しそうな焼き物教室の日常が写っているだけだった。
「パスワード保護の必要無いじゃん」
拍子抜け、というか、期待外れもいいところだ。

幸いなことに、パスワードはすべて同じだった。
二つ目のファイルも教室での妻の姿だけだった。
真剣な表情でろくろに向かう妻の姿。袖をまくり上げたいつものダンガリーシャツとジーンズだ。
特別な意味がありそうな写真は無い。
・・・いや、違う。焼き物に真剣に取り組んでいる妻の姿・・・話には聞いていても、見たことは無い。
私の知らない妻の姿だ。

三つ目のファイルを開く。
「おぃ! 」
思わず大声を出しかけて、自分の声に驚いた。寮の壁はけして厚くはない。

画像は自宅のソファに座っている妻の姿だった。窓から入る光はまだかなり明るい。
妻は膝丈のスカート姿だった。座っているので、膝が見えている。
妻は普段は圧倒的にジーンズが多い。教室に行く時もそうだ。
私ですら、この姿は殆ど見たことが無いかもしれない。
諭君を家に連れ込んだのか?
時系列的に三つ目のファイルで、もう・・・そこまで進んだのか?
このファイルの画像を見て行くと、やがて妻が服を一枚一枚脱いで行くのか?

画面の中の妻がソファから立ち上がった。
両手を軽く広げ、その場で回ったようだ。スカートがふわりと浮いた。私には滅多に見せてくれない美しい脚が見える。
妻が次々にポーズを取る。
・両手を腰に当て、怒った表情。
・片手を上げ、バスガイドのように「右手をご覧下さい」のポーズ。
・スカートの裾をつまんで、ちょっとだけ持ち上げている。
(サービスが過ぎるぞ・・・)
・両手を交差させて組み、上目遣いでもじもじしている。
(こんな表情、できるんだ・・・萌える。)
・『あっかんべー』の顔。二十代後半の妻が、子供のように見える。

次々に表情を変える妻の姿が30枚ほど記録されていた。
なんだか、裸を見せられるよりも嫉妬した。
(なんで、こんな写真撮らせてるんだ!)
妻がカメラに近づいてきた。顔を赤くしているが、ずっと笑顔だ。とてもかわいい笑顔だ。
(・・・誰に見せてるんだよ・・・)

結局、このファイルの画像も『服を着ている』という意味では健全なものばかりだった。
ただし、自分のために残してある画像としては不自然極まりないものだ。
妻は自分の笑顔を写真に撮って残しておくような、そんなナルシストではない。
(スカートだって、滅多に穿いてくれないぞ。くそ〜。)


[16] Re: 優しい嘘  修2 :2013/06/29 (土) 07:24 ID:8hIuL4QU No.17920
今日も、出勤前に少しだけ。
それができるのも、この話の実話部分、単身赴任だから・・・(泣
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覚悟をして次のファイルを開いた。
どうやら夜のようだ。カーテンが引かれている。

その画像の妻の姿はちょっとした衝撃だった。

妻はOLのような事務服を着ていた。
妻のパートは工場の製品検査部門なので、基本的に上下同じ色の作業服、クリーン服、あるいは白衣だ。事務服を着る機会はないし、スカートでもない。
結婚前の勤めも作業服かクリーン服だった。家にはこんな服は無い。
つまり、わざわざ用意してこない限り、こんな格好を妻が見せることはあり得ないのだ。

妻は食卓の椅子に座っていた。
私が撮影者でも、そうするだろう。ソファに座るよりも食卓の椅子の方が妻のこの姿を魅力的に見せてくれる。
食卓を事務机に見立てているのか、食卓には妻のノートPCが置かれていた。
妻はカメラの方ではなくPCを見ていた。OLの仕事中というようなシチュエーションらしい。
(若いのに、やるな、諭、GJ!)

カメラが妻に近付いて行く。妻の顔のアップになった。いつもよりも化粧が濃い。
カメラがいったん離れ、食卓の下を俯瞰する。膝丈のスカートが画面の中央を占める。
これまで、カメラは常に妻の左斜め前方向から妻を狙っていたが、今やそれは妻の正面に来ていた。
ストッキングに包まれた、揃えた美しい膝が画面一杯に広がっていた。
次の画像からは、その膝がやや開いていた。明らかにわざとだ。ストッキング越しに白いパンティが透けて見える。
諭君はかなりフェチ心がわかる奴のようだ・・・というか、高校生でそれって、大丈夫か?親御さんに代わって心配になる。

スカートの奥まで見せている妻はいったいどんな表情をしているのだろう。そんな私の心を見透かしたかのように、カメラが引いて妻の全身が現れた。
泣きそうな表情・・・に見えた。顔が赤い。
妻の姿が良く見えるように、ノートPCのモニターは水平近くまで倒されていた。
先程まで閉じていた唇を少しだけ開いている。潤んだ瞳・・・
撮影者が何か言ったのか、妻がカメラの方に縋るような視線を向けた。そして、諦めたように視線を落として足を大きく開いた。スカートの奥がさらけ出された。

四回目にしてここまで行ったのか・・・
私はここで気持ちを落ち着かせることにした。
あり得ないシチュエーションの妻の画像。
私が妄想してきた妻の姿は、もうこの先に実現されているのだろう。
不思議なことに、妻や諭君に対する怒りは無かった。妻の不貞の証拠画像だというのに・・・
それも、ここ数ヶ月の単身生活の間に、さらにはっきりと自覚した、私の「寝取られ」性癖のせいだ。
そして、同時に、私が感じている寂しさを、妻も感じていると信じていたから。
諭君と何かがあったとしても、心のすべてが私を裏切っているなんてことは無いのだと思っていたから。

再び画像を見る。大きく足を開いたため、ややタイトなスカートが捲れあがり、太股までが露出した状態だった。
妻の全身像に続いて、下半身にカメラが寄る。太股と、スカートと、その奥のストッキング越しのパンティ・・・
モデル並みだと思った。ストッキングのCMの足タレが務まる程の。
いつも見に行っていた足フェチサイトに投稿されていてもおかしくない程の・・・
これ程の美しい肢体を、私は昨日まで殆ど見たことが無かったのだ。
怒りは無かったが、激しい嫉妬心はあった。私より先に妻のこんな魅力的な姿を目にすることができた諭君に対して。
ただ、それもまた、私を興奮させるものではあった。

このファイルの画像はここまでだった。
私ははっきりと脚フェチだが、今日気付いたのは、妻の画像なら、脚のアップよりも、表情と一緒の方が萌えるということだ。
机の下の大股開きの美しい脚よりも、恥ずかしくてたまらない、という表情の方が興奮するのだ。
自覚は無かったが、足フェチ画像も、『これが妻の・・・』と想像して見ていたのかもしれない。


[17] Re: 優しい嘘  小次郎 :2013/07/01 (月) 08:20 ID:U4Yrb1MI No.17922
続きをお願いします。

[18] Re: 優しい嘘  修2 :2013/07/03 (水) 00:28 ID:5zt2/Bb. No.17926

次のファイルを開く。
その画像で、またしても大声を上げそうになった。
服装から、さっきのファイルと同じ日のようだ。
妻の左右の足首にベルトのようなものが巻かれて、椅子の足に固定されていた。
さっきまでノートPCの上にあった妻の両手は背中に回されている。
縛られているのか?
期待通りにカメラは真横から妻の姿を捉える。
妻の手は何だかきれいな紐で縛られていた。
いや、プレゼント包装のリボンだ。妻が大好きな、駅前のケーキ屋、サン・ミシェルのトリコロールのリボンだ。
使いもしないのに、綺麗に巻かれて、キッチンの引き出しに入っていることは知っている。
(あのリボンの初めての再利用がこれなのか・・・)
妻が顔を上げた。潤んだ瞳が何かを訴えかけるように見つめている。
拘束されてはいるが、服に乱れは無かった。
カメラが動いて何枚か撮影されていたが、基本的にポーズは変わらなかった。

六つ目のファイルを開く。
画像は、白いブラウス姿の上半身だ。
妻はソファに座っている。というか、もたれかかってぐったりしているようにも見える。さっきの続きだろうか。
全身がモニタに現れた。
妻は、・・・スカートを穿いていなかった。
脚にはストッキングではなく、紺色のハイソックスを穿いていた。
そうか、事務服ではなく、妻の母校の西高の制服だ。
これには記憶があった。結婚してまだ間も無い頃、礼服のアクセサリーを探していて、衣装ケースの一番奥に入っていたのを見つけた。
「へぇ、まだ制服持ってたんだ。ねえ、着て見せてよ」
「ヤ〜ダ!絶対に、や!」
その時、たしか、『変態』、みたいなことを言われた気がする。
それ以来、妻に嫌われることが怖くて、性的な願望を口にしたことは殆ど無いような気がする。
本当は脚フェチだってことも、制服もかなり好きだってことも、明るいところで服を脱がしていって、妻の恥ずかしがる様を楽しみたいことも・・・
妻との幸せな生活のため、我慢した。妻が嫌がることをして関係が悪くなるくらいなら、セックスなどいくらでも我慢できる。そう思っていた。
それなのに、妻は今、他の男にこんな姿を晒している。

それにしても、フェチ心がわかる諭君なのに、どうしていきなり下を脱がしているのだろう。
少しずつ、制服チラリズムを楽しまなきゃ、駄目じゃないか。諭君がいたら、小一時間、説教しているところだが・・・

妻の表情をよく見ていると、気付いた。・・・髪が乱れている。前髪が汗で貼り付いている。
(まさか、・・・終わった後なのか?)
いや、この写真ではまだ判断できない。

次の画像では、妻の右足がソファの上に乗せられた。
ブラウスの隙間から、パンティが見えた。まだ行為にはおよんでいないのか? 左足もソファの上に。
眼はまっすぐにカメラの方を見ているが、ちょっと焦点が合っていない感じだ。酔ってでもいるのだろうか。
妻の両手は隠すでもなく、体の横、足首のあたりにあった。

次の写真では、ベルトで足首と手首が固定されていた。ただ、手が足の外側から固定されていた。
(甘いぞ、諭君。これでは足を閉じることができてしまうじゃないか。)
画面の中の妻にはその気は無いようだったが。

やはり、酔っているのだろうと思う。まさか、変なクスリでも使われてないだろうな・・・
純粋に、妻の恥ずかしい画像を鑑賞することを楽しんでいた。よくぞ撮ってくれた、という感謝の念すらあった。
記録に残してくれていなければ、私が目にすることはできなかったのだ。
不貞行為を咎める気持ちより、画像記録への感謝の方が勝っていた。
もちろん、同時に嫉妬もしていたが。

ブラウスのボタンが、今度は一気に全て外されていた。
(何か、雑になっていないか、諭君。フェチの先輩として教育的指導が必要だな。)
下着姿で、ブラウスに袖を通しただけの妻が、M字開脚でソファに乗せられている。
何だか、安っぽいポーズ。私の大好きな妻が馬鹿にされているようにも感じられた。

ブラジャーがずらされた。胸が露わになる。
残念だが、妻は胸のボリュームが無い。感度は悪くなかったが。
妻は殆ど動かない。撮影者に決められたポーズのまま、おとなしく撮られているように見える。
脅されたりという暴力的な雰囲気は感じられなかった。撮影者との信頼関係があるのだろうか・・・

次の画像では妻の位置が少し変わっていた。
L型に配置されたソファの、角のところに座らされていた。そして、左右の足も先刻とは違い、限界近くまで開かされているように見える。
撮影者がまた何か言ったのか、妻が首を横に振っているようにぶれている。
画面に乳白色の細長い物体が現れた。妻にフォーカスが合っているので明瞭には見えないが、間違いなくディルドだ。妻が怯えたような表情でそれを見ている。
股間にそれが立てかけられた。撮影者は妻の全身を撮りたいために、ディルドを使いながらの撮影はできないようだ。
パンティ越しにディルドが妻の股間を蹂躙し始めた。刺激しては撮影、を繰り返しているのだろう。
妻はたまに横を向いていたが、すぐに再びカメラの方を泣きそうな表情で見つめる。
パンティの脇から、ディルドが妻に挿入されている。妻は声をあげているようだ。
次の写真では、また妻の位置が変わっていた。座面に寝かされている。脚は大きく開いたままだ。ディルドも刺さったままだ。
そのまま、妻の体がひっくり返された。手足を拘束され、ディルドを股間に挿入されたまま、顔と両膝を支点に這わされた姿勢。
カメラはそれを斜め後ろから、・・・私が見たかった方向から狙っている。
拘束といい、この視点といい、どうも性的嗜好が似ているようだ。諭君なのか別の男なのか、画像からは確証は得られなかったが。

そして、最後の一枚には決定的なものが記録されていた。
妻の顔を汚す白い粘液・・・

(ああ・・・とうとう君は、やってしまったんだね・・・)
ハメ撮りがあるかと思っていたが、性行為の最中の写真は何故か無かった。行為に夢中だったのか、妻が撮影を拒否したのか・・・


[19] Re: 優しい嘘  修2 :2013/07/03 (水) 20:59 ID:1.QXgAV2 No.17929

妻の不貞行為の決定的証拠を前に、私は途方に暮れていた。

正直なところ、怒りは全く無かった。
ある意味、私が望んでいたものがそこにはあった。
直接目撃することなど不可能なはずの、『寝取られ』の記録。
怒りよりも、喜びの方が勝っていた。
「絶対に」得られないと思っていたものを思わず手にしてしまって、途方に暮れてしまったというところだろうか。
あらぬ妄想を続けてきた報いかとも思った。

一方で、冷静な自分が、『妻の不貞に対し、どういう処分を下すのだ』と迫っていた。
そう、不貞行為だ。絶対に許してはならない、夫婦関係に対する裏切りだ。
寂しさに耐えて単身赴任生活をしている夫に対する仕打ちとして、許されることなのか。

そう考えてはいたが、『許すか、許さざるか』の二者択一しか答えが無いのだとしたら・・・
私の答えは一つだ。『許す』。
『寝取られ』だから、ということではない。
妻を愛していた。何があっても、妻を失いたくなかった。
どれ程裏切られていたとしても・・・


そして、どうしてそうなったのか、どんなことをしたのか、どうしても詳しく知りたくなった。

次の日、妻に電話をした。
「今度の金曜日に帰るよ」
「あら、先週もだったのに。別にいいけど、土曜日は教室があるから、昼間はいないよ」
「夜でいい。聞きたいことがあるんだ」
少し間が空いた。
「・・・わかった。何か食べたいものはある?」
「いや、特に無い。任せるよ」
「う・・・ん。考えとく。それじゃ、待ってるね。風邪ひかないように、ね」

私が何を聞きたがっているか、妻は気が付いたかもしれない。
いや、気が付いた筈だ。
どんなことを聞きたいのか、聞く素振りがなかった。不自然だ。
これまでの私だったら、そこにも気付かなかっただろう・・・

まずはっきりさせたいのは、私は妻と別れるとか、妻にも相手にも、制裁をしたいとかは考えていないということだ。
相手が諭君だとして、のことだが。
相手が別の男、例えば妻帯者だというのであれば、もちろんただでは済ませないつもりではあったが、それは無いと思っていた。

そして、金曜日が来てしまった。
仕事を早めに切り上げて、新幹線に乗った。
写真は最近買ったタブレットPCに全部入れて持ってきた。証拠を突きつけるという意味では、この画像が必要になるとは考えていない。
妻は正直に認める、相手とのことも正直に答えてくれる。
何故だか確信していた。
私は妻のことを信じ過ぎ、だろうか・・・?

家には夜遅くに着いた。妻はいつものように起きて待っていた。
「お帰り。疲れたでしょう。お風呂できてるよ」
「先に入らなかったの?」
「一緒に入ろうと思って」
「え・・・?」
「う・・・そ!」
「何だよ〜、期待しちゃったじゃないか」
「また、今度ね〜」
妻はうれしそうに手を振って、私の荷物を持って寝室へと向かう。
自然だった。緊張している風には感じられなかった。

次の朝、妻は妙に機嫌が良かった。
洗面所から鼻歌が聞こえる。威風堂々の4番だ。どういう気分なのだろう。
教室に行くということは、諭君と会うということだ。そのせいなのか?やはり、相手は彼なのか?
10時前になり、妻が出かける時間になった。
「修ちゃん、悪いけど、お昼は適当に食べてね」
「おう」
「じゃ、行って来るね。ごめんね、せっかくの休みなのに一緒にいられなくて」
「急に予定入れたのはこっちだから。楽しんでおいで」
「うん。ありがと。・・・」
ドアを開けながら、妻が何かを言ったが、最後の言葉は聞き取れなかった。


[20] Re: 優しい嘘  修司 :2013/07/06 (土) 19:00 ID:Vc3JYetM No.17941
こんばんは 旦那さん(修2)さん(*^^)v

気使いありがとうございます。

素敵な、奥さんなのですね〜 ♀女盛りの身体は・・・素直ですからね〜

単身で行かれて、一人留守番してる・・・奥さん 若い身体に弄ばれて堪らず・・身体が覚醒

しちゃいましたね ドキドキしながら、拝見しています! 続きも、よろしくお願いしますね


[21] Re: 優しい嘘  修2 :2013/07/06 (土) 21:38 ID:czyl6jqc No.17942
おお、ご本家の登場、痛み入ります。

事実を下敷きにしている関係上、修司はもちろん仮名、小学校の友人の名です(もちろん無許可)。
ある事情から、妻には既にここへの投稿はばれています。
地名、固有名詞や方言の排除、(必要以上な妻への愛の表明も)・・・は、そういうことです。

それでは、本日から少しだけ物語が展開します・・・

-------------------------------------------------------------------------------------

<妻の告白>

夕食後、リビングのソファに妻と二人で腰掛けていた。
武蔵屋のコーヒーの香りが部屋を満たす。
妻は緊張しているはずだが、特に普段と変わらないように見えた。

「何を聞きたいか、わかってるよね?」
「はい。・・・ごめ、」
手を挙げて制止する。
「話を聞く前に、言っておくよ。秀美を責めるつもりはないし、怒ってもいない。撮影者にも、だ」
「え・・・?」
「ただ、全てが知りたい。知らされていないこと、全て」

妻は私の顔をじっと見つめてから、
「わかりました。全てお話しします」
「畏まらなくていい。いつもの調子でいいよ」
「・・・うん、わかった」

「相手は、誰?」
「諭君よ」
「はぁ・・・なるほど」
(予想通り。高校生と、かよ・・・)

「きっかけは?」
「何だったか、市民センターのイベントの時。焼き物の体験コーナーがあってね、彼は指導していた先生の手伝いで来ていたの」
「毎年4月にやってるやつ?」
「そうだっけ? 彼は部活やってないんだから手伝えって、連れてこられたって言ってた。私の頃は部活、無所属って許されなかったんだけど、今は違うのかな」
部活ネタはまずい。妻の部活ネタが始まると、際限が無いのだ。話を戻さねば。
「それで?」
「ちょっと話は逸れるけど、その日より前、修ちゃんがいない休日の午後、買い物の帰りに、スーパーの隣の図書館から出てきた彼とすれ違った・・・みたい」
「みたい?」
「私はそんなこと憶えていなかったし、気付きもしなかったけど」
妻が恥ずかしそうに目を逸らす。
「彼の言葉で言えば、『秀美さんを見て、釘付けになった。本当に眼を逸らせなくなることってあるんだ』って。もうちょっと若者っぽい言葉だったけど・・・」
組んだ両手の指が交互に動く。緊張している時の妻の癖だ。
「後でそんなことを聞かされて、何だか・・・ね、嬉しかった。・・・ごめんね」
そう言って妻は私を見る。不思議な表情だった。後ろめたいのか、はにかんでいるのか、・・・でも、何故か謝っているようには見えない。

「ろくろはイベントの時が初体験。先生に教えられて最初に作ったのがこのコーヒーカップ。ちょっと、いびつでしょ?」
「へぇ〜、そうなんだ」
「前に言ったでしょ。修ちゃんのはもう少し上手になってから作るつもりだったの。・・・憶えてない?」
秘密を告白しているのに、何だか妙に堂々としているように思える。楽しそうに見える・・・のは気のせいだろうか。

「仲良くなるきっかけはね、彼にろくろを教えてもらったの」
「高校生が教えるの?」
「教えるのは先生よ。彼は私が何度も失敗するのを見て、何ていうのかな、コツみたいな感じでちょっとだけ教えてくれたの。でも、それが的確だったのね。すぐに小さな器ならできるようになった」
「すごいね。ちゃんと教えられるんだ」
「うん。教室が何回目かの時、先生が『今日は大作に挑戦してみませんか』って言ったの。」
「大作って、どれくらいの?」
「30cmぐらいの深皿よ」
私は焼き物に関しては全くの素人だが、テレビとかで見る限り、大きくて壁が立っている器はつぶれやすいような気がする。
「難しいんじゃない?」
「そうなの。難しかったの!」

妻は身振り手振りを交えて説明をしてくれる。
浮気の告白・・・だったことを忘れて、私も妻の焼き物教室の話を聞いていた。
教室に通い始めたことは、先週諭君に会うまでほとんど知らなかった。いや、たぶん聞いていたが、話が右から左に抜けていた。
仕事が忙しく、妻への関心が薄れていた。焼き物に打ち込むことで紛らせていた、妻の寂しさに気付かなかった。
元々許すつもりだったし、怒りも無かった。話を聞いて、なおのこと、そう思った。
告白を聞いている私の方が、妻に対して申し訳ない、という気持ちを抱いていた。
前から焼き物に興味があった訳ではないのだろう。たまたま、焼き物と出会っただけだ。
気を紛らせてくれることであれば、何でも良かった。それが、焼き物だっただけだ。
浮気は悪いことだ。間違いない。
でも、そうなる原因が私にもあるのなら、妻だけを責められない。


[22] Re: 優しい嘘  修2 :2013/07/07 (日) 00:42 ID:rdy8nsuk No.17944
もう少しだけ。

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「市民センターの電気炉じゃ、あの大きさの器を焼くと、他の生徒さんのが一緒に焼けないの。だから、私のと、田岡さんのだけ先生の工房で焼いてくれることになって」
「うん」
「四日後だったかな。彼が焼き上がった器を持ってきてくれるって電話があって。次の教室の時でいいって言ったんだけど、今日なら塾も無いからって」
「家に?」
「ううん、携帯の方。教室の方には連絡先、携帯にしたから。ちょうど会社の駐車場に向かっていた時」
妻のパート勤務が3時に終わることも諭君は知っていたのだろう。
「田岡さんの器、も?」
「それは知らない。っていうか、今から考えたら、うちに来るための口実だよね」
「まあ、あきらかに、そうだな」
私も思わず苦笑いする。
一方で、高校二年生は立派な大人だ。女一人の家に招くことに躊躇いはなかったのだろうか。

「彼は普通に学生服のまま来たの。工房に寄ったのなら、着替える余裕はあったと思うんだけど」
(いや、単に面倒だっただけだと思うぞ。)
「高校生のくせに、手土産まで持ってきたんだよ。駅前のサン・ミシェルのシュークリーム。OLやってるお姉さんの大好物なんだって」
サン・ミシェルのシュークリームは、妻の大好物でもある。調査済みだったのか?
「『好きな子ができたら、これを持って行ったら外れ無し』って言われたって。あ、それは後で聞いたんだけどね。ま、私も好きだったけど」
(これは、『好きな子=自分』ということを言いたいのかな?)

「それで?」
「コーヒーを入れて、二人でシュークリーム食べたよ。一口食べて、彼が『うめぇ・・・』って、ぽつりと言ったの」
ソファに並んで座る二人を想像する。おそらく、実際には食卓だったのだと思うが。
「ほら、彼のイメージだと、『おいしいです!』みたいじゃない? 当たり前だけど、ああ、この子も普通の高校生なんだって、その時に初めて思った」

怒ってはいないはずだが、はっきりと嫉妬を感じていた。でも、それを表に出してはいけない。冷静さを保つように努めた。
「その、普通の高校生とどんな話をしたの?」
「他愛もない話よ。普段聴いている音楽とか、好きなアイドルとか・・・でも、予感があったのかな。『好きな子は?』ってセリフは言ってはいけない気がしてた」
「・・・引き金を引いちゃう?」
「そう」
「そんな素振りはあったの?」
「上手に隠しているつもりだったと思うよ。でも、彼が私に好意を持ってくれていることはわかってた。・・・わかりやすかったかも」
「どうして?」
「教室では先生の助手に徹していて、私のところにばかり来ることは無かったけど・・・」
「けど・・・?」
「視線がね、合うの。こっちが見た時に、向こうも見ている。そりゃ、たまに目が合うことはあるよ。でも、」
「回数が多すぎる・・・?」
「そう」
妻の話をちゃんと聞いて、適度に相槌をうって、・・・何か、違和感があった。
わからない。どこが変なのかわからないが、どうにも腑に落ちない気がする。

「一時間以上も話してたかな。そろそろ彼を帰した方がいいかなって思ったの。別に身の危険を感じたとか、そういうことじゃないのよ」
「じゃあ、どうして?」
「ん・・・」
饒舌だった妻が言い淀む。いよいよ、核心に近づいたのだろうか。


[23] Re: 優しい嘘  小次郎 :2013/07/07 (日) 08:05 ID:sGd7JZUQ No.17945

連投ありがとうございます。

実に面白いです♪

引き続き、進めて下さいね♪

[24] Re: 優しい嘘  修2 :2013/07/07 (日) 22:50 ID:5nZQPcDk No.17952
展開が遅くて申し訳ありません。

------------------------------------------------------------------------------------------
「・・・私の方が、ね・・・」
「え・・・?」
「前に修ちゃんと買い物に行った時に、彼と会ったの憶えてる?」
「もちろん」
「あの後で、」
「諭君みたいな弟が欲しかったって言ってたっけ?」
妻がうれしそうな顔をする。
「私の弟の理想像なの、彼は。清潔感があって、きちんと挨拶ができて、年長者への敬意をちゃんと持っていて」
「うん」
「そんな男の子が、私に好意を持ってくれている・・・そんな風に考えてたら、急にどきどきしてきちゃって・・・」
(ありゃ、自滅パターンですか・・・)

「変な空気作っちゃだめだってわかってたけど、普通に喋れなくなっちゃって・・・」
何となく、わかる。いや、良くわかる。
普段はしっかり者の妻だが、恥ずかしいことには異常に弱いのだ。
「そろそろ帰ってもらおうと思って、『買い物に行く』って言ったら、急に彼が『写真を撮らせてください』って」
(出た!写真撮らせて下さい。押さえてるなぁ)

「『初めて会った時から、憧れていました』ってね、言われたの。そう言われて、私もうろたえちゃって。何だかわからないうちに『いいよ』って言ってた」
「写真撮らせるなんて、危ないことになるって考えなかったのか?」
「修ちゃんも会ったことあるんだから、わかるでしょ。危険なんて感じなかったわ。裸の写真って訳じゃないし」
「裸じゃないって、当たり前だろ!」
「ごめんなさい。断るつもりだったんだけど、なんだか・・・悪いような気もして」
「まぁ、いいよ。それで?」
「うん。携帯で何枚か撮るだけだと思ってたんだけど、工房に寄ったから、生徒さんの作品を撮るデジカメ持ってきてたの」
「最初から、そのつもりだった訳だ」
「私に断られたら、素直に諦めるつもりだったみたいよ」
「でも、断らなかった」
「・・・そう、断れば良かったのよね。でも、彼の好意に気付いちゃってたし、告白もされちゃって・・・」
確かに、根が素直な妻は、押しに弱いところはある。だが、聞く限り諭君にそれ程の強引さは無さそうだった。
だとすると、きっかけはともかく、これはやはり、妻も望んだことなのではないだろうか。
「彼にはリビングで待っててもらって、着替えたの」
「え・・・それって、自分から?」
「よれよれのジーンズで撮られたくなかったの。憧れのお姉さんのイメージとも違うし、化粧も直したかったし・・・」
(いや、あなた、結構ノリノリだったみたいに聞こえるんですけど?)

怒るつもりは無かったが、不愉快だった。つい、言ってしまう。
「それで、滅多に見せてくれないスカートに着替えた訳だ」
言葉に少しだけ棘が混ざる。妻ははっとして私を見つめる。
「・・・ごめんなさい」
「いいよ。怒るつもりは無いから」
「・・・どうして? 怒らないの?」
「いいから、続けて」
妻はちょっと不思議そうに私を見て、続けた。
「リビングに戻ったら、彼が『綺麗です』って言ってくれたの。その時、ここが『きゅんっ』て・・・」
妻が胸を押さえながら、顔を赤くしている。
(おいおい、何てこった。いきなり落ちちゃってるよ・・・。)

「最初はふつうにソファに座ってたけど、彼がいろいろポーズを付けて欲しいっていうから、頑張って表情とかたくさん考えて、撮ってもらった」
「うん。かわいく撮れてたよ」
妻はうれしそうに笑って、すぐに真顔に戻った。
「その日はそれだけで終わったの」
ふうっと息を吐いた。
「彼が帰ってから、ちょっとやり過ぎたかなって思った」
「どの辺が?」
「別に、普通に座ってる写真だけでも良かった。ポーズも断れば良かったのよ」
「でも、彼の求める以上のことをしてしまった・・・?」
「そうなの。10近くも年上の私に好意を持ってくれて、嬉しくなっちゃって・・・何だか、サービスしたくなったの」
(うん、うん。サービス過剰でしたよ、お姉さん)


[25] Re: 優しい嘘  修2 :2013/07/08 (月) 07:26 ID:0eaUfE8g No.17955
今日も出勤前に少しだけ。

-------------------------------------------------------------------------------------------------

「次は何週間か後だった。教室では殆ど二人きりで喋るチャンスなんて無いから、それっきりになってたんだけど」
「また、作品を?」
「うん。まぁ、それしか口実がないからね」
「次がOLさん風のだね?」
「・・・うん」
妻が少し言いにくそうな顔をする。最後まで聞きたい私は、ちょっと焦り過ぎたかもしれない。

「いいよ。全部見たから。その上で怒らないって言ってるんだから。全部話して」
「・・・わかった。聞いて」
天井を少し見上げ、何か思い出しているようだ。言葉を選ぶように、ゆっくりと語り出した。
文章にすると淀み無いようだが、実際に妻から語られる言葉は、もう少し途切れがちだった。
「私もね、また写真を撮りたいとか、言ってくるかなとは思ってた。ひょっとしたら、その先も・・・」
「それで?」
「普通の格好に彼が飽きちゃったら、どんな要求をされるんだろうって、想像してたの。彼にそんなこと、言われたこともないのにね」
「コスプレってこと?そんな素振りがあったの?」
「無いけど・・・、だから、私の勝手な妄想。彼がいろんな衣装を持ってきて、次々に着替えさせられて、撮られて・・・」
(たしかに、そのシチュエーションは、萌えるな。頑張れ、諭君。)
聞きながら、過去の諭君を応援する。失望させないでくれ〜。・・・まあ、写真でわかっているのだけど。

「で、実際はどうだったの?」
「それがねぇ・・・持って来ちゃったのよ。お姉さんの服」
「OLの?」
「うん。妄想はしたけど、さすがに、これはって思ったわよ。でも、真剣な顔でお願いされちゃって・・・」
(『お願い』に弱かったのか。エッチなことも、頼めば何とかなったのかもな・・・)

「これを受け入れたら、もう後戻りはできないって思った。・・・だって、普通じゃないことでしょう?」
「うん。フェチはちょっと特殊な世界でもあるしね」
「彼はそんな感じじゃなかったの。ほんとにね、あったから持って来ました、みたいな」
「制服フェチじゃ無かったの?」
「そう。これは衣装、モデルさんは私。はい着替えて下さい、撮りますよ。はい、ポーズ・・・って感じ」
「カメラマンみたいだな」
「うん。私もそう思った。だから、だんだん彼の指示することに慣れて、エッチなポーズも自然に受け入れてた」
(諭君、想像よりも凄い奴かもな・・・)

「足開いて〜、いいよ〜、もう少し〜って。いつの間にか、彼の言うことを聞くのが快感になってきちゃって」
先週の夜のことを思い出す。妻にあんな一面があったなんて信じられなかったが、元々そういう素養は持っていたという訳だ。
「ちょっと縛るよって言われて拒否できなかった。でも、頭の片隅ではもう一人の冷静な私が駄目だよって言ってた」
「縛られたら、襲われても・・・」
「そうなんだよね。冷静に考えれば、間違いなく、そうなんだよ。でも、まだその時はそんなことにはならないって思ってた」
(お姉さん甘いです。やりたい盛りの男を嘗めすぎですよ?)

「心配はしてたよ。でも、彼を信じてた。甘いって思う・・・?・・・よね、やっぱり」
「もう、彼にとっては秀美は特別な関係だろ? いつ暴走してもおかしくない状況じゃないか」
「そう、そうだよね。その日も襲われることはなかったんだけど、この次はもう駄目かもって思ってた」
「でも、断らなかったんだ?」
「うん。今日こそ、彼に襲われちゃう、修ちゃんを裏切っちゃうって予感があったのに」
「家に入れたんだ」
「本当に、ごめんなさい」
妻がそっと手を伸ばして、私の足に触れた。その手を握ろうとすると、すっと手が引っ込められてしまった。

「・・・それで、その次はどんな用事で?」
「電話がかかってきてね、今度はそのまんま。また写真撮らせて下さいって」
「で、今度の衣装は高校の制服か・・・」
「お姉さんの服を持ち出したことがばれそうになったんだって」
そうか、借り物だったから、OL編は服の乱れが無かったのか。二人とも慎重だったのだな。
「衣装は用意できないんだけど、何か持っていないかって」
「で、制服着るって言ったのか?」
「一生懸命なの。『秀美さんをもっと魅力的に見せられるような衣装は持っていませんか』だって」
(やるな、諭君。かわいい弟のためなら、お姉さんは一肌脱いでくれるぞ!)

「作業服じゃ駄目だし、白衣は持ち出せないし、って考えてたら高校の制服まだ持ってたことを思い出して」
「あぁ、僕が見せてもらえなかったやつだね」
妻が凍り付いた。いかん、また棘を投げてしまった。
「ごめん。怒ってないよ」
「・・・どうして?こんなひどい事したのに」
「いいから、続けて」
「・・・うん。彼が来る前に、制服に着替えて待ってたの」
「まだイケルじゃんとか思いながら?」

妻はちょっと悲しそうに、首を横に振った。
「本物の高校生と比べられたら・・・、彼は毎日見てるんだよ。こんなおばさんの高校生コスプレみたら、醒めるかもって思った」
「それが悲しかった?」
「半々かな。醒めてくれたら、もうこんな気持ちに苦しまなくてもいいっていうのと、」
「まだ諭君に好きでいてもらいたかった・・・?」
「あんな若い子に感じてもらえる魅力がまだ私にはあるんだって・・・」
気持ちは分かる。
私だって、女子高生に同じように告白されたら・・・いけない道に、はまらない自信は無い。全く、無い。


[26] Re: 優しい嘘  修司 :2013/07/14 (日) 20:29 ID:Fo8AsfyA No.17995
こんばんは(*^^)v 

お忙しい〜のかな 修さん・・・

楽しみに お待ちしてますよ〜 


[27] Re: 優しい嘘  修2 :2013/07/14 (日) 21:57 ID:lEuRcuZE No.17996
修司さん、こんばんわ。もう、他人とは思えません・・・

ここが妻にばれていることは以前に明かしました。
実は、物語の終末に出てくる、「妻の友人夫妻をモデルにした登場人物」のことで少々・・・
本人や知人が見てもわからない程度に別人になっているのですが、そういう人物を登場させること自体に抵抗があるらしく・・・
引っ越しも考えましたが、いずれ見つかりますし。
そういう訳で、少々書き直しをしております。
「第一部」の結末まではできていますので、あとは公開できるかできないか、というところです。
とりあえず、その人たちが登場する前までの部分を、後で投稿します。


[28] Re: 優しい嘘  修2 :2013/07/14 (日) 23:39 ID:lEuRcuZE No.17998

「彼が来るまでの時間がとても長かった。彼が来て、玄関を開けて。ちょっと高めの声を作って、『いらっしゃ〜い』って迎えたの」
(何か、性格変わったかな・・・?)

「挑発するなよ〜」
「だって、何か役になり切らなきゃ耐えられなかったんだもん」
「おいおい」
「そしたらね、彼、一瞬固まったと思ったら、名前呼びながら抱きついてきたの」
「あ〜あ、予想通りじゃん」
「そう言ってしまえば、そうなんだけどね・・・」
女子高生の妻に襲いかかる男子高校生を想像する。その役は私がやりたかったのに・・・

「彼、どう見ても経験無さそうだったから、襲ってきても、・・・その、ちゃんとできないと思ったの」
「できないって・・・あぁ」
「玄関先で揉み合ってたら、外に声聞こえるかもしれないでしょ。だから逃げる振りをしてリビングの方に誘導したの」
「冷静だね」
「だって、もしも襲ってきたら、その時はその時で、ちゃんとできるように導いてあげようって思ってたから・・・」
唖然とした。私の知っている妻からは、とうてい考えられないような言葉だ。もう、やられること前提で考えてたのか。
『この次はもう駄目かもって・・・』とか言ってたな。覚悟はあったのか。

「でもね、彼の方が駄目だったの」
「暴発しちゃった?」
「良くわかったね。そう。ズボンとトランクス下ろして、私をソファに押し倒したところで、ね」
「初めての時は良くあることだ」
「スカートを汚したところで彼が我に返って、泣き出しちゃったの、『ごめんなさい』って」

未遂に終わったことは彼にとって良い方向に行く、そう思った。おそらく妻は、このまま思いを遂げられない状態にはしなかったはずだ。
優しい妻なら、想いを知っていれば、尚更そうだ。

「ひとしきり、泣き止むまで泣かせておいた。落ち着いた頃、彼に言ったの」
私は少し身構えた。これから語られる妻の言葉は、私が萌える言葉の筈だ。

「彼に言ったの。こんなおばさんに女性を感じてくれてありがとう。でも、女に暴力で迫ることだけは絶対にダメって」
「うん」
「私も諭君のことは好き。だから、ちゃんと教えてあげる。将来、あなたに好きな子ができた時に、あなたと、未来の彼女が幸せになれるようにって」
(うん、これだよ。教えてア・ゲ・ル・・・萌え〜)

私を裏切ってしまったことよりも、思いを寄せてくれる相手のことを想う妻の気持ちが、心に響いた。
ここまで来て、何もせずに帰した、とか聞かされたら、逆に怒ってしまいそうな気持ちがあった。
私が好きになった妻、秀美はそういう女であって欲しかった。
単身生活で、私の心もおかしくなっているのだろうか・・・

「まずは彼にシャワー浴びてもらったの。一緒じゃないよ。ベッドにするか迷ったけど、修ちゃんに申し訳ないからソファにした。」
「客用の布団出せばよかったんじゃないの?」
「布団なんか用意してたら醒めちゃうでしょ。私にも勢いが必要だったんだから」
(え・・・と、不貞の話だよね? わかってる?)

「電気は消して、カーテンを閉めて、隙間から差し込む薄明かりだけにした。明るいところをいやがる子も多いから、その前にちゃんと聞きなさい、って」
「細かいね」
「お相手が処女だったりしたら、大事なことよ。だって、私が・・・そうだったじゃない・・・」
「なるほどねぇ・・・」
「それから、・・・無事に済ませたわ」
「おい・・・! 何、その大雑把な割愛は?」
「だって・・・ほんとに聞きたいの?」
「聞きたい!」
「普通にエッチしただけだよ。むしろ・・・」
「・・・?」
「何でもない」
「何だよ、気になるなあ」
「写真、見たんでしょ?」
「見た。秀美の話に出てきてない写真があった!」
妻はふうっと一つ大きく息を吐いた。
「彼がね、記念に・・・写真を撮りたいって言い出したの」
「写真なら・・・あ!?」
「わかった? そう、エッチな写真」
「・・・やっぱりなぁ」
「言わなかったけど、彼にはその日が最後だってわかってたと思う。こんな関係、続けられる訳無いし」

(そうか、続けなかったんだな・・・)
今も続いている訳では無いことを知って、正直ほっとしていた。
私は『寝取られ』だが、実際にされるのは別だ。こんなことは一度で勘弁して欲しい。

「大人の女の人とエッチしたなんて、高校生にとっては自慢できることなんじゃないかな。だから、写真なんて撮ったら、絶対に友達に自慢しちゃうと思った」
(冷静だな。いい判断だ。)
「だから、保険をかけたの」
「どんな?」
「彼に見せる気がなくても、見られちゃうことはあるかもしれない。だから、顔は絶対に写さないように目隠しをして、撮った写真は全部チェックさせてもらう」
「あれ?例のファイルの写真は、普通に顔出しだったけど」
「諭君が持っている写真のこと。彼の手許には、私の顔が写っているエッチな写真は無いの」
(抜かり無い。ほんとに私の妻か?)

「あ、OL風の事務服のやつは?」
「あれは、いいかなって・・・。今思えば、危ないけどね。親とか、まして先生に見られたら・・・」
「じいちゃん先生に迫られるかも」
「やめてよ〜」
「ごめんごめん」
「あと、二重に保険をかけたの。私の恥ずかしい写真を人に見せないように、彼の恥ずかしい写真も撮ったの」
(すばらしい! でも、どんな写真を?)

「下半身丸出しでも、男の人ってそんなに恥ずかしくないよね」
「う〜ん、高校生がどうだかはわからないけど、そうだね」
「だから、下半身だけ裸でM字開脚で縛って、顔とおちんちんと学生証が一緒に入るように写したの」
(うわ、き、鬼畜・・・)

こんなことを妻が考えついたというのか。
妻の意外な一面を見た気がした。

・・・いや、そもそも、本当に妻が考えたことなのか?


[29] Re: 優しい嘘  修2 :2013/07/14 (日) 23:49 ID:lEuRcuZE No.17999

<嘘>

妻からの告白を聞いて、とにかく興奮した。性のことには消極的な、あの妻が・・・

告白を聞いている間も気になってはいたが、一人になって冷静に振り返ってみると、やはり何か引っかかるものを感じた。
具体的には何かわからないが、違和感を拭えなかった。
ごまかされているようなところは無かっただろうか。
話の筋としては通っていたような気はする。説明にも納得した。
妻がこんな事をする筈が無いという先入観が邪魔をしているのだろうか。

告白の後、妻は言った。
「私はソファで寝ます。今夜は、同じ寝室では申し訳なくて、とても寝られないから・・・」
「ショックだったけど、怒ってはいないから」
そう言ってみたが、妻の態度は固かった。
妻の告白を聞き始めた頃は、終わったら、どんな『お仕置き』をしてやろうか、と考えていた。
だが、途中からは妻の話だけで満足していた。むしろ、妻に寂しい思いをさせていたことに罪の意識を感じていた。
とても、妻とセックスをする気分ではなかった。

頑なな妻に折れて、その晩は一人で寝室で寝た。殆ど寝られなかった。

翌朝、妻は全く私と目を合わせようとしなかった。
私がこの場にいるだけで辛いのだろうと思った。だから、早すぎるが、午前中に家を出て、赴任先に戻ることにした。
玄関先で妻を強く抱きしめた。許すという気持ちと、失いたくないという気持ちを伝えたかった。
妻はとうとう最後まで目を合せようとしなかったが、腕に力が入り、抱きしめ返してきた。
過ちは犯したが、心は私にある・・・そのことが伝わってきた気がした。

---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
赴任先に戻ると、もう一度写真を見直してみた。
初めてこの写真を見た時の興奮は無かった。
一枚一枚、クリックして再生する。前に見た時と同じ、かわいい妻がポーズを取っている。あの時より冷静な分、妻の魅力だけが伝わってくる。
はにかんだような笑顔、照れたように目を伏せる表情、じっとカメラの向こうを見通すように見つめる澄んだ瞳・・・
改めて、妻のことが大好きなんだと思い知った。
それなのに、君はどうして・・・この笑顔を他の男に・・・

二本目の缶ビールを開けた頃、面倒になって写真を自動スライドショーで再生してみた。OL緊縛編ではなく、自宅での健全画像のやつだ。
ここには妻の愛くるしい姿だけが記録されている。私の宝物だ。大切な宝物だ・・・
もう、はっきりと自覚していた。
私は『脚フェチ』で『制服好き』だ。でも、実は『妻の脚』と『妻のコスプレ』が好きなのだ。
街で黒いスーツ姿のOLが自転車に乗っていると、必ず目で追ってしまう。信号待ちで片足を着いた時にタイトなスカートから僅かに見える太股・・・
これが妻だったら・・・と想像して見ていたのだ。
実際には、絶対に見ることができない妻の姿を・・・

結婚当初よりも、単身赴任してからの方が、妻への想いが増えている自覚はあった。
だいたい、一人で考える時間が多すぎるのだ。
妻と電話で他愛もない話をしながら、密かに涙を流したことも二度や三度ではない。
楽しく会話している最中に、前触れもなく頬を涙が伝っていて驚いたことが何度もある。
配偶者を亡くした場合、その後の余命は女より男の方が短いという。データが本当かどうかは知らない。
ただ、男の方が寂しがりの生物だという意見には、今なら、はっきりと賛成できる。

ベッドに横になりながら、PCの画面だけを眺めていた。
私には妻を咎める気持ちなど、全く無かった。だが、妻は自分自身を許せるのだろうか。
妻が自分を許せないとしたら・・・それは元通りの夫婦には戻れないということだ。
私がどんなに望んでも、妻が望まなかったら・・・
私は、今日までの人生で、最大の恐怖を感じていた。

画面は、愛する妻の映像が無限にループしていた。順番もとっくに憶えていた。
ソファに座った妻がこっちを見つめる。笑顔で両手を振る。
ここで立ち上がって、くるっと回って・・・
(ああ、秀美・・・)


[30] Re: 優しい嘘  修司 :2013/07/15 (月) 02:58 ID:.9KOqO.s No.18001
こんばんは(*^^)v 

そうですか・・・修さん 単身赴任・・・ 

それじゃ〜 奥さんも、女ざかりの生身が淋しくて・・・ 

そんな、奥さんを慰めてあげたいですね〜 修さんの代役で・・・

続きも、もちろん〜楽しみにしていますよ(*^^)v


[31] Re: 優しい嘘  ダデイ :2013/07/15 (月) 19:35 ID:3L4b8lgk No.18005
秀美さん、その時の詳細の説明を割愛してしまいましたねぇZ

一度は暴発してる彼だから、秀美さんが上に乗って導いて挿入したのですかねぇ?

恥ずかしい屋の秀美さんが、どのように彼を誘導したのか聞かなかったのですか?

[32] Re: 優しい嘘  修2 :2013/07/17 (水) 22:51 ID:T7rsTn.s No.18012
皆様、ごめんなさい。
期待を裏切る内容で。
ヘタレなもので、妻の涙を見るともうそれ以上何も言えなくなるわけで・・・
 
じきに第一部は終幕を迎えますが、もうほぼエロシーンはありません。
ただ、第二部への前段として必要だと思っているので、しばらく続けさせていただこうかなと思っています。
エピソードはともかく、実話ベースの第一部。私の中でいろいろと制約がありました。
フィクション比率が高まる第二部は、ちょっとテイストを変えます。
現実の妻にはできないことを、いろいろとしてみようかなと思っています。


[33] Re: 優しい嘘  修2 :2013/07/17 (水) 22:59 ID:T7rsTn.s No.18013
「あ、あぁ・・・?」

その時になって、ようやく気付いた。写真の不自然なところに。

一枚ずつ見ている時には、被写体である妻が動いていることもあって、気付かなかった。
スライドショーで見て、初めて気付いた。
・・・背景が動いていない。カメラのアングルが数枚ずつ、全く動いていない。
明らかに、諭君が手に持ったカメラで撮影しているようには思えない。
たまに調整はされているが、カメラは固定されている。
二人の記念撮影、ということならわかる。でも、妻の話ではそういうことは無かった。
妻は動いているのにカメラだけ固定されている理由がわからない。被写体が動いているのなら、手持ちで撮るのが普通じゃないか?

一つの可能性が頭に浮かぶ。
(この時、妻の他には誰もいなかった。だからタイマーかリモコンで撮影した・・・)
想像が正しいとすると、諭君が撮影したという告白の・・・、嘘の告白の理由は何だ?

でも、緊縛写真は手持ち撮影のように見えた気がする。急いでOL緊縛編と制服陵辱編を見る。
そういう視点で見ると、こっちの写真にもやや不自然な点があった。些細なことだが。
とにかく、画像がきれいだった。手ぶれしている写真も全く無い。
家庭内の照明だけだが、暗い写真は無かった。妻に光が当たるように配慮されている。ストロボで白く飛んでいる写真も無い。
衝動的に妻を襲ってしまう男が、本当にこんなに冷静に写真を撮れるものだろうか。
『カメラマンによる撮影』的な客観性、そんな感じだ。画像投稿サイトで見るプライベート写真よりも、むしろ週刊誌の袋とじに近い。

妻の説明にあったように、カメラマンのようにポーズを付けること自体も無理はないだろうか。
童貞少年が人妻との秘密の写真の撮影に、冷静でいられる方が不自然で、不気味だ。
デジカメ写真だから、失敗作は消去されているとも考えられるのだが、直感的に何かが変だと思えた。
この写真は、怪しい・・・

それに・・・、妻の告白で、誤魔化されたことがあったことに、今頃になって気付いたのだ。
迂闊だった。妻を責めるのが可哀そうになって、聞きそびれていたのだ。
諭君の筆おろしの話の具体的なところを聞いていない。写真の話で、私の興味がそちらに行ってしまったのだ。
その後は寝室で一緒に寝る寝ないの押し問答になった。
・・・うまく誤魔化された気がする。

そして、もう一点、気付いてしまった。
妻が変身した、あの夜。
私は妻への『調教』の痕跡を感じた。
明るいところでのセックス。口での行為、そして精液を飲む・・・
私が知っている妻には絶対にあり得ないことばかりだった。
だが、妻は諭君とは一度きりだという。しかも、相手は童貞・・・

恐ろしい想像が頭に浮かぶ。そんなことは無いはずだ、妻に限って。
諭君とのことは、嘘なのか?
やはり、私が知らない、他の男がいるのか・・・?
いや、写真のことも考え合わせると、諭君が初めて、ということが嘘なのか?
人妻を喰いまくっている、寝取り魔なのか?
妻を騙したのか。

いずれにしても、妻は嘘をついている。
どんな嘘を・・・?
どこが嘘なのか、全くわからなくなった。
嘘の可能性が多すぎる・・・

聞くのが恐ろしかった。
あれだけの告白をしておきながら、それが嘘だったというのか。
私の妻は、誰にでも優しく、嘘などつかない人だったはずだ。
私を裏切って浮気をしておきながら、嘘の告白をしたのか。


私は迷っていた。
私が知っている妻であれば、あの告白は真実に聞こえる。いかにもありそうなことだ。
私が知らない妻がいるのであれば、一体どこからが嘘なのか見当もつかなかった。


[34] Re: 優しい嘘  ドキドキ君 :2013/07/18 (木) 16:46 ID:Zp.mXKt6 No.18015
いつもドキドキしながら読んでいます。妻の、元カレに撮影された水着姿の写真を見つけた時の興奮を思い出しました。

[35] Re: 優しい嘘  修2 :2013/07/19 (金) 07:39 ID:9PUv2u/E No.18021
この週末で第一部の幕まで行こうかと思っています。
『単身赴任中だけの道楽』として、妻の許可も出ました。
第二部では相当酷いこともするつもりなので、絶対に見に来ないように言ってありますが・・・
それでは、二回分、続けてどうぞ。
---------------------------------------------------------------------------------------------

<優しい嘘>

真夜中に近かったが、まだ、起きているはずだ。
一時間以上も迷ったあげく、妻に電話した。
何が嘘なのか、嘘など何も無いのか・・・

2コールで妻が電話に出た。

「・・・はい」
「ごめん、こんな遅くに」
「起きてたよ、ちゃんと」
(ちゃんと・・・?どういう意味だ?)

「あの写真さぁ・・・」
「あ、やっぱりわかっちゃったんだ?」
「え・・・?」
家を出た時、沈んでいたのが嘘のように明るい声だった。

「ごめんね。修ちゃんを騙してたの」
私が言わないうちに、やけにあっさりと自白した。
まるで待ち構えていたように・・・
妻が嘘をついているかも、と悶々としていた私が馬鹿みたいだ。

ただ、妻の声は妙に明るかった。そこに、私は光明を見出していた。
別の不貞を隠すための嘘ではないのではないか。
寝取られ系サイトの常連である私は、その可能性も考えていた。
妻が先に、私が『寝取られ』であることに気付いたのなら・・・
『自分が浮気をしてしまった話を作る』奥さんの話も読んだことがある。
そうであって欲しい。

「ほんとはもっと引っ張る予定だったんだけど・・・、修ちゃん素直だから、騙してるの、もう辛くて・・・」

妻によると・・・
やはり、撮影は諭君ではない、そもそも、諭君は今回のことに全く無関係なのだ、と。
教室での写真は、普通に生徒さん同士で撮り合ったものだ。
健全画像はセルフタイマーとリモコン、OL緊縛編以降は友人の佑子さんの撮影だという。

ほっとした、妻に裏切られていなかったことがわかって。
騙されたことを怒る気はしなかった。
完全に騙されていたのだ。どこが騙されていたのか、妻に解説してもらわないと全くわからない状態だった。

「修ちゃんが諭君のところに連絡しないかってことが一番心配だったよ。佑子は大丈夫って言ってたけど。」
佑子さんというのは、妻の高校時代からの友人で、隣の市に住んでいる。お互い同じ頃に結婚し、子供もいないことから、私が単身赴任してから、たまに泊まりに来てもらっている。
なるほど、飲みながらの話の中で、ちょっとエッチな方向に行っちゃったということかもしれない。妻が下ネタを話すとは思えないが、佑子さんがリードしたのなら、ありえる。
妻の話では、カメラアングルの不自然さには後で気付いたそうだ。でも、ヘアスタイルの変化でわかってしまうので、「最初の頃の撮り直し」はしなかったらしい。
(いや、たぶん、気付かなかったと思うよ・・・とは言えないな)

「あの告白は何だったんだよ!」
「でも、興奮したでしょ?」
「・・・したよ」
素直に、妻に白状した。

「んふ・・・」
妻は妙にうれしそうだ。
「告白自体が嘘だったんだね」
「そう。騙してごめんね」
「どこまでが嘘なの?」
「電話じゃ、長くなっちゃうから・・・、でも、修ちゃんを裏切ることは、絶対にしていません」
「本当に、誰ともやましいことはしてないんだね?」
もう一つの疑惑を、ついでのように確認した。嘘を認めてくれた。
「本当だよ。・・・信じられないかもしれないけど、それだけは絶対に無いから」
「信じてるよ。でも、詳しく聞きたいな」
「じゃあ、今度帰る時に佑子も呼んでおくから」
「え・・・と、佑子さんは必要なのかな?」
「だって、今回のこと、ほとんど佑子の計画なんだよ」


[36] Re: 優しい嘘  修2 :2013/07/19 (金) 07:41 ID:9PUv2u/E No.18022

週末、会社は半日休みを貰った。プロジェクトの忙しい時だったが、『夫婦の危機です』と言うと、赴任先のリーダーがすぐに許可してくれた。
その人も単身赴任で修羅場を経験したという・・・詳しくは聞いていないが。
事務所を出る時に振り返ると、リーダーが親指を立てて私を見ていた。会釈をして駅へと向かった。

夕方には家に着いた。
妻は、あのスカートを穿いていた。私がそれに気付いて一歩下がって眺めると、裾を摘んで、お姫様のように優雅に『ご挨拶』をした。
「お帰りなさい」

食卓には鍋の用意がしてあった。何故4人分?
「佑子夫婦はちょっと遅れるって。和君が仕事でトラブルがあったとか」
「和君も来るの?」
「居た方がいいから。他にも理由はあるけど」
「よその人に聞かせる話か・・・?」
夫婦間の恥ずかしい話だぞ。セックス嫌いで恥ずかしがりの妻が?
「今回のことでは重要な役割なの、特に佑子は」
真剣な顔だった。一歩も引かない覚悟のようなものを感じた。
「わかった。信じる」
「ありがとう」
妻が表情を崩した。
「先に話、始めようか?」
「佑子さんいなくて、いいの?」
「たぶん、大丈夫」

ソファに腰掛けた。
妻が缶ビールをグラスに注ぐ。ビール工場見学の時に教わった通りの、完璧な比率の泡がグラスを満たす。
いつも、当たり前にやってくれていた妻の仕草が、私の心を打つ。
思い出した。健全画像の中にあったポーズの一つ。左手で自分の左肩に触れ、得意そうな表情。
ビール工場の巨大な液晶画面で見た、女優と一緒だ・・・

「何でこんな面倒くさいこと・・・」
「わからない?」
妻が遮る。
「あのファイルには気付くと思ってた。っていうか、・・・」
「わざと気付かせたんだろ?」
妻が頷く。
「気付いてくれないと困ったんだけど、大丈夫だったみたいね」
「気付いたのは早かったけど、パスが、ね」
「佑子がね『秘密の匂いが絶対に必要だから』って」
「もう少し簡単なパスにしてくれれば良かったのに」
「難しかった? でも、あまりヒントはあげられなかったし・・・」
「うん。でも、あの日、諭君と会ったのは、ほんとに偶然だよね?」
「そう。でも、心の中で『やったー』って・・・。諭君の話題に自然に触れられるから」
「そしたら、こっちが先に触れてしまった訳だ」
「どうしたら、諭君を怪しむようになるかなって二人で考えて、『理想の弟』になったの」
「ん?ちょっと待って、ファイルの日付はもっと前だよ」
「だから、最初から諭君を架空の相手にする予定だったの。でも、設定を途中で変えちゃったりして、矛盾はいっぱいあったと思う」
「うん。告白聞いた時も、何だか違和感があった」
「おかしいところがあっても、それはいいやって。最終的に、修ちゃんと私がこういう話をすることが大事だから」
何かの目的のために、ずいぶん仕掛けをしたようだ。・・・いったい何のために?


[37] Re: 優しい嘘  修2 :2013/07/19 (金) 22:50 ID:JtQLPWG2 No.18025


「私が気づいてないって思ってた?」
「何?」
「わざとなのかなぁ?私のPCでエッチなサイト見に行ってたでしょ。その履歴も消さないで。」
「うん」
「寝取られ系とか、フェチ画像の所ばっかり。あぁ、修ちゃんはそういう人だったんだって・・・。知った時、すごくショックだったんだよ・・・」
「・・・ごめん」
「直接聞くの、怖かった。『目の前で、他の男に抱かれてくれ』なんて言われたら・・・」
「そんなこと言わないよ!」
「・・・怖くて聞けなかったし、誰にも言えなかった。・・・怖かった・・・」

妻にこんなに不安を与えてしまっていたのか・・・
セックス嫌いの妻に少しは変わって欲しくて、自分の性癖のヒントを閲覧履歴という形で残したつもりだった。
履歴を見て怒った妻と話をしよう、その程度のことしか考えていなかった。

単身赴任が始まって、一人でいろいろと考えることがあった。
相変わらず・・・いや、むしろ以前に増して妻のことを愛していることに気付いていた。
心だけではなく、身体も深く繋がりたいと思うようになっていた。
だが、具体的にどうしようという考えはまとまっていなかった。

一方で、妻たちはいろいろと考え、計画したようだ。そして、私より先に行動したのだ。

「そんなもやもやした気持ちになっている時に、佑子が泊まりに来て、二人で飲んでたの」
そうだ。私が居ない間、私に代わって妻の不安な気持ちを支えてくれたのは佑子さんなのだ。

「結構酔ってきた頃に、だんだん下の方の話になってきてね・・・。で、相談したの。修ちゃんが私を誰かに抱かせようとしてるって・・・」
「そんなこと・・・!」
「待って。今はわかってる。修ちゃんの志向はそうじゃないってこと。でも当時は何もわかってなかったから」
一息つくように、ビールを口にする。妻の小振りのタンブラーが空になった。
「佑子は一生懸命話を聞いてくれた。私が泣いても泣き止むまで待っててくれた」
(佑子さんにはいくら感謝しても足りないな・・・)

「突然ね、佑子が『修司さんの残した履歴を見る必要がある』って言って、全部辿ったの。私は嫌になってたんだけど、『二人のために大事なことなんだから』って、怒られちゃった」
(二人でエロサイトを見まくったのか・・・)

「『・・・確証はないけど、わかったかも』って言った。『修司さんは想像で興奮する寝取られなんだと思う』って」
妻が覗き込むように見つめる。
「『修司さん、パソコンには詳しいんだから、エロサイトの履歴を残すのは、ひーこへのサインなんだと思う』って言ってた。それと・・・」
少し顔を赤くして、目を逸らせる。
「『ひーこのことをとても大切に思っているし、結婚当初と変わらないぐらい、もしかしたらそれ以上に、今でも好きなんだと思うよ』って・・・」
佑子さんは昔から妻のことを「ひーこ」と呼んでいる。
「『例外はあるけど、寝取られの人って、奥さんのことが大好きなんだよ。好きだからこそ、その大切な人がどうにかなってしまうことに興奮するんだ』って」
「エロサイトの履歴だけで、そんなことまで・・・?」
「あぁ、そうだよねぇ。説明抜けちゃったけど、結婚してから今までのこと、他のことも、すごく細かいことまで話し合ったの」
「細かいことって?」
「いつもどんなふうに・・・あの、・・・してるか、とか。回数、・・・月にどれぐらい・・・とか」
(この妻がよくも・・・ねぇ)
「セックスに関することで、私が断ったことは何があるか、とか、何をしたら喜んでくれた、とか・・・」
(恥ず・・・!)

「事例一つずつ、修ちゃんの気持ちを解説してくれた」
「カウンセラーみたいだな・・・」
「ほんとにそうだよ。佑子にいっぱい話聞いてもらって、アドバイス貰って・・・」
妻が涙ぐんでいる。
「私のいけない部分もいっぱい気付かされて、修ちゃんに申し訳なくて・・・」
「そんなこと・・・!」
「一番怒られたのはね、『少なすぎ』って・・・我慢できなくなって、修ちゃんが浮気しても私のせいだよって」
「浮気なんて、絶対しないよ!」
「・・・わかってる。私がちゃんとさせてあげてなくても、修ちゃんは我慢しちゃう。それがはっきりとわかったから、申し訳なくて」
「そんなに気に病まなくても・・・。夫婦って、大切なことはそれだけじゃないだろ?」
「でも、・・・うちに赤ちゃんが来ないの、それも原因だよね」
「あ・・・うん。それは・・・あるかな」

妻は一人娘だ。酒好きの義父は、一緒に飲める息子を欲しがっていたが、妻に弟はできなかった。
まだ二十歳前の娘との結婚がすんなりと進んだのも、私が酒好きだったことも影響しているのは間違いない。
聞いたことはないが、おそらく孫とも飲みたいのだろうと思った。
結婚してすぐに子ができていたら、孫が飲める年齢で、義父はまだ60代だった。

「人に話を聞いてもらうのって、大切だね・・・」
泣き笑い・・・妻が愛おしくなって、思わず力一杯抱きしめた。
「修ちゃん、ごめんね・・・ごめんね」
「なんで謝るんだよ!何も悪いことしてないだろ」
「だって、結婚してからずっと我慢させてたのに、ちっとも気付かなかった」
「それは、いいんだよ」
「良くない!夫婦なんだよ。どっちかがずっと我慢し続けるなんて・・・」
「そんなに気にしなくてもいいんだよ」
「私は嫌なの。修ちゃんが私に黙って我慢してるのなんて」
「我慢って言うけど、僕は平気だったんだよ。何かを言って秀美を傷つけてしまうことに比べれば・・・」
「傷付いたっていいじゃない! 傷なんか、治せばいいんだから」

妻は、私が我慢していたことに気付いてくれた。
それ以上に、我慢していることを黙っていたことが嫌だったのだろう。
「・・・そうだね。少し、恐れすぎていたかもしれない」
「ねぇ、私を信じて。して欲しいことは何でも言って。いっぱい話そう。そして、もっといい夫婦になろうよ・・・」
「秀美・・・ごめん」
もう一度腕に力を込めた。

私の責任だ。今なら、良くわかる。
妻は小中高と恋愛を経験せずに過ごしてきてしまっていた。それは本人や両親から聞いて知っていた。
やや特殊な事情があったが、私と結婚を決めた時も、ちゃんと恋愛をしていたわけではなかった。
結婚を決めてからでも、妻と恋愛をしなければいけなかったのだ。
男と女の営みのことを教えなければいけなかったのだ。
何も知らない妻が、セックスに嫌悪感や恐怖を抱くのは、むしろ当然だったのかもしれない。
私が妻に遠慮したせいで、・・・6年以上、時間を無駄にしてしまった気がした。
ちゃんと教えていれば、もうとっくに、秀美のあの愉快なご両親に孫を抱かせてあげられていたかもしれない・・・

妻が頭を動かし、正面から見つめる。
自然に、キスをした。ついばむような、軽いキス。そして、だんだんと激しく・・・
妻の右手が私の頭へ、左手は胸のあたりに、そして、シャツのボタンをいじりだした。
外そうとしている。いいのか?佑子さん達が来るのに。
変わったデザインのボタンホールのせいで、片手では外せない。
右手も前に回し、シャツの襟に両手をかけると、一気に引き千切った。
(ちょ、ちょっと、秀美さんてば・・・!)

妻に、有無を言わせずソファに押し倒された。Tシャツを捲り上げ、胸に口を付ける。
舐め始める。ぴちゃぴちゃと音がする。

そのまま、徐々に頭が下がって行く。まさか・・・始めてしまうのか?
妻の舌がへその辺りを通り過ぎた。
今日は、何故か全く私を見ようとしない。言葉も無い。私の反応を気にせず、勝手に、妻がやりたいようにやっている、・・・ように見える。
ベルトを外し、ジーンズとボクサーブリーフを少しだけ下げる。
そして、私ものを、・・・朝にシャワーを浴びてから何度も用を足したままのものを、じゅぽじゅぽと派手な音を立て、躊躇せず銜えた。
二十回ほど往復させて、口を離した。まだ、私と視線を合わせない。
妻がスカートのまま私の上に跨る。スカートの下に手を入れ、位置を合わせ、おそらくパンティの脇から、挿入する。良く見えなかった。
「ん・・・」
奥まで入れて、静止する。ちゃんと濡れていなかったのだろうか。辛そうな表情・・・、それから、久しぶりに私を見つめた。
『あ、忘れてた』・・・そんな感じだろうか、少しだけ、笑顔になった。
私の胸に手を付き、動き始める。

何だか、変な光景だ。
シャツを引き千切られ、下着を捲り上げられ、ジーンズを下げられ、押し倒されている男。
その男に跨り、犯している女。上も下も、服に全く乱れは無い。

しばらく単調に動いていた。私をイかせようとか、自分が良くなろうという動きではなかった。ただ、繋がっている・・・そう感じた。
妻の表情が、とても幸せそうに見えた。

「あの、ね、・・・修、ちゃん・・・」
久しぶりに妻が言葉を発した。動きながらのためか、区切りながら、
「もう一つ、秘密、教えて、あげる・・・」
「どんな秘密かな。怖いな」

妻が何を言おうとしているのか、全く予想できなかった。
ただ、ここに至っては、どんな告白でも受け入れる覚悟がとっくに出来ていた。
諭君とは関係無いが、実は好きな男がいる・・・とか言われるのか。
『寝取られ』なら、その男のことを認めてくれ、とか・・・いや、それはさすがに無いか・・・
それでも、何を言われても、衝撃を受けることは無いと思っていた。

「聞きたい?」
「うん。聞かせて」
「恥ずかしいな・・・」

しかし・・・妻が言った言葉は、私にとって、あまりにも意表を突いたものだった。


「私ね、・・・セックス、・・・好きになったかも・・・」


[38] Re: 優しい嘘  修2 :2013/07/19 (金) 23:35 ID:JtQLPWG2 No.18026

<再出発の夜>

私も妻もイってはいなかった。が、妻の告白で、気持ちとしては一区切りだった。
妻から抜いて、抱き合っていた。
『失われた6年間』を取り戻すため、今晩からとても濃い日々が始まりそうな予感がしていた。

そういえば、佑子さん達がいつ頃来るのか聞いていなかったことを思い出した。
そろそろ危ないのでは、と思ってリビングの掛け時計を見る。
ふと、何かを感じて顔を向けた。
「・・・!」
リビングから玄関への扉。
ガラス窓に、見たことのある顔が二つ、口笛を吹くように口を尖らせている。
(いつからそこにいたんだよ・・・!)
背を向けている妻はまだ気付いていない。
佑子さんの口が動く。
(お・め・で・と・う)
私は秀美に気付かれないように、親指を立てて見せた。
二人が拍手をしてくれている。
佑子さんが指で何か合図をしている。入って良いかと聞いているようだ。
二人に合図をした。
音を立てずに二人が入ってきた。

「あらあら、ずいぶん激しかったのねぇ・・・」
妻がびっくりして私の腕を振りほどいて・・・勢い余ってソファから転げ落ちた。
「ゴン!」
カフェテーブルに肘をぶつけた。
「・・・痛いぃ」
床に女の子座りをして震えている。佑子さんが近付いて、頭を優しく撫でる。
「がんばったね、ひーこ・・・」
「うん・・・ゆーこぉ・・・」
「よしよし」
女同士の美しい友情に、ぐっと来るものがあった。
佑子さんには頭が上がらないな・・・

強姦被害者にしか見えない私は、ボクサーブリーフにものを仕舞いながら、佑子さんに言った。
「秀美のこと、頼めますか?」
「あら、まだあたしに世話焼かすつもり?」
いいよ、という顔だ。
「お願いします」
鍋の準備をしにキッチンに行った。シャツのボタンはどうでもいい。ジーンズとTシャツだけ直す。
カウンター越しに和君と作業を分担する。

「えーと、和君の今回の役割は?」
「ほぼ無いっす。ほとんど佑子だけで。強いて言えば、エロ顧問すかね」
「何じゃそりゃ」
「修司さんの見てたサイトにはどんなやつが集まるか、とか」

昨年秋、単身赴任直前にバーベキューをしている。会場は庭があって、隣家と離れている我が家だ。
4家族が集まった。残り二家族も夫婦どちらかが妻たちの同級生だった。
妻たちは家の中で、男は火を囲みながら、ひたすら酒を飲んでいた。
串に刺したマシュマロを弱くなった炭火で炙りながら、エロ話をした記憶がある。
「ノブが、マシュマロみたいな胸って何だとか言い始めて・・・」
「フェチ自慢が始まったんだっけ」
「修司さんが脚と制服で・・・」
「よく憶えてんな〜」
「ノブがおっぱい星人なのはみんな知ってたっすから。達也は長い黒髪、ちなみに俺は」
「長身スレンダーロングヘアー」
「そっす」
「それって、まんま佑子さんだよね」
「えへ・・・。で、修司さんが『うちの秀美だって人気あったんじゃないのか〜?』って・・・」
「ああ、何となく憶えてる」
「俺と達也はひーこちゃんと高校一緒っすから、『ひーこちゃんには隠れファンが大勢いましたよ』って言ったら、もう、食いつきのいいこと。俺にはピンと来ましたね」
「そうだった?そこら辺は良く憶えてないんだよな〜」
「自分で、『寝取られかも』って、言ってたっす」
「え、言ってた?」
「実際やられたら立ち直れないけど、想像だけなら萌えるって」
・・・そうか、言ってたのか。


[39] Re: 優しい嘘  修2 :2013/07/19 (金) 23:40 ID:JtQLPWG2 No.18027

「幸せいっぱいの二人に、かんぱ〜い」
金色に輝くスパークリングワイン。何だか新婚家庭に初めてお客様を招いたみたいだ。
でも、嫌じゃない。素直に、祝福してもらえてうれしいという気持ちになる。ちょうど、今月で結婚7年だ。

殆どのことは妻に解説してもらったので、佑子さん夫妻が来てからは、ふつうに楽しい夕食会だった。
いろいろ聞きたいことはあったはずだが、もう、どうでも良かった。
私も妻もお互いのことをまだ愛しているのだということを再確認できた。それだけで十分じゃないか・・・
でも、細かいことで聞いてみたいことはあった。

「いろいろ腑に落ちないことはあったんだ。不貞の捏造写真だったら、数枚あればいいじゃない。何で・・・」
「修司さん」
「はい」
「つい最近まで、不貞の証拠写真だと思ってたんでしょ?」
「うん」
「そうじゃないってわかってから見たとしたら、どう?」
「どう、って・・・?」
「不貞とか関係なく、ひーこの写真として見たら?」
「あ・・・!」
そうだ。不貞とかじゃなければ・・・、あれは、私が見たいと思っていた妻の姿ばかりだった。
スカート姿の妻、表情がくるくる変わる、とても魅力的な妻の姿だけがそこにあった。
脚フェチと制服フェチを同時に満たす、あの写真も・・・
どれもみんな、そうだ。

「秀美」
「はい」
「綺麗に撮れてたよ」
「・・・ありがと」
妻を見る。恥ずかしそうだが、嬉しそうだ。
・・・なるほど。そうか。そうだったのか。
あの笑顔は、全て私に向けられていたのか・・・
離れて暮らす私への、プレゼントだったのか・・・

不覚にも、涙ぐんでしまった。でも、もう、いい。
これからは、全てをさらけ出そう。
欲望に蓋はしない。感動にもベールはかけない。思ったことを、妻にそのまま伝えよう。
それで夫婦関係に修復不能な溝ができても、もう後悔はしない。

「これから、毎晩使わせてもらうよ」
下を向いてしまった妻に、静かにグーで殴られた。
「新作も、送って」
さらに数発。
「秀美が自分でやってるのがいいな」
太股をばしばしと、今度は本気で叩かれた。
「痛い、痛い!痛いって!」
佑子さんは面白そうに見ていた。
妻は私を叩いた後、食卓の下で私の手をそっと握った。そして、佑子さんに聞こえないような声で言った。
「時間、ちょうだい。したこと、無いから・・・」

二本目のワインが空になっていた。みんな酔ってはいたが、まだ大丈夫だ。
「OLさんの格好はどうしたの?」
「あれは佑子の・・・」
「佑子さんはコンビニじゃなかったっけ?」
「だからぁ」
「俺の趣味っす」
和君が、何だか得意げだ。
「え・・・?だって・・・」
「修司さんのを聞いてから、目覚めたっす」
「そうなの。どこで買ってくるんだか。次から次へと・・・、ま・・・嫌いじゃないけどね〜」
(佑子さんが・・・?)
確かに、長身の佑子さんなら、どんなコスチュームでも似合うだろう。
自分の趣味でコスチュームを買ってくる和君。それに付き合う佑子さん。お互いを信頼しあっているから、だろう。
「修司さん、どんなのがいいっすか? いろいろ貸せますけど」
「どんなのが似合うかなぁ」
「ん〜・・・とりあえず、アンミラは絶対だめっすね」
「うん、駄目だね。あと、フーターズ?」
妻には何のことかわからない。
「何が駄目なの?」
「ひーこは知らなくていい。何気に失礼なこと言ってるから!」

「制服の時は何でスカート穿いてなかったの?」
「・・・壊れた、ファスナー」
「え?」
「いけると思ったのよ!」
確かに、出会った頃から全く体型は変わっていないと思うが。
「太ってないでしょ?」
「だって、あの頃はトランペット吹いてたし。・・・ほら、前に修ちゃん、あの制服着てって言ったでしょ。だから、ちゃんと着て、少しずつ脱いでいく予定だったの」
「いきなり予定が狂ったんだ」
「そのまま転んだせいもあって、もう、直せないぐらいに裂けちゃって・・・そしたら佑子が『しょうがないから路線変更!今日はハードに行くよ』って」
「佑子さんてば・・・」
「縛るのはその前にやってたから、それ以上のことって何されるんだろう、って。そしたら、『今日は道具も持ってきてるから』って」
「な、何用意して来たの?」
「そこの人、興奮し過ぎ〜」
おそらく、妻はアダルトグッズを見るのも初めてだったろうに。
「バイブ?おちんちんの形した」
(モーターの入っていない奴はディルドが正しいかと。)
「あと、もっと小さいけど、電池でぶ〜んて震えるやつ」
(色は聞かなくてもわかるぞ。)
「普通に○○○○○クの電動マッサージも持って来てた。筋肉痛になるほど何かすごいことするの、って」
(なに惚けてるんですか。あなた、それ使われたでしょ。)
「えと、あとね、あとね、・・・何だっけ?」
佑子さんは口を挟まず、笑いながら妻の説明を聞いている。同級生なのに、眼差しは姉のそれのようだ。


[40] Re: 優しい嘘  修2 :2013/07/19 (金) 23:43 ID:JtQLPWG2 No.18028

「あ、あのさ・・・」
「なに?」
「精液、は・・・?」
「もちろん、本物じゃなくて、練乳使ったの。でもね、あの後が大変だったの。暴走モードの佑子だから」
「どういうこと?」
「撮影は終わりだったんだけど・・・佑子がね、『なんか、こういうのに興奮する男の気持ちがわかる〜』って急に言い出して」
「そ、そうなの?」
「ひーこちゃんのぶっかけなら、萌えるっす」
「カズ!」
「私の顔の練乳を舐め始めたの」
「佑子さんって、そっち系?」
「違うわよ!」
「違うでしょ。でも、暴走始めるとどこに行くかわからないから」
「そ、それで?」
「くすぐったいだけだったから、解いてって言ったんだけど、許してくれなくて。『もう練乳取れたでしょ〜』って言ったら、『ここにも残ってる』ってチューブから乳首に垂らすの」
(何てうらやましい事してるんだ・・・くそ〜)

「その画像は無いの?」
「無いよぉ。やだよ、そんなの」
「残念だなぁ。絶対いい写真が撮れたはずだよなぁ・・・残念だぁ・・・」
「・・・」
「あ、こら、想像すんな」
佑子さんが和君の頭をスパーンと叩く。
「佑子が女教師、ひーこちゃんが教え子の女子高生っすね」
「コスを考えてたのか・・・」

「あの時はひーこに悪かったなとは思ったのよ。でも、ほら、・・・かわいいじゃない?」
「・・・?」
「何か、意地悪したくなって、止まらなかった」
妻が真っ赤になっている。
「どうしたの?」
佑子さんが身を乗り出して手を口元に持ってくると、
「言わないで!」
「ひーこ?」
「佑子にいっぱい意地悪されて、いっぱい気持ち良くなっちゃいました、終わり!」
下を向いてしまった妻を佑子さんが優しげな眼差しで見つめる。
「修司さん、どうしても聞きたかったら、ひーこに聞いて。無理に、は駄目よ」
「はい」
(これは、『尋問』が必要だな・・・)

食事が終わり、くつろいでいた。
ほとんどの疑問は解消するか、どうでも良いことになっていた。
ただし、一つだけ残った疑問があった。妻が別人のように変わった、あの夜のことだ。
妻だけに聞くべきなのか、佑子さんがいる時に聞くべきなのか・・・

「秀美」
二人が揃ってこちらを見た。
「殆どの疑問は解消できた。小さな疑問はどうでも良くなった」
何故か二人揃って頷いた。
「最後に一つだけ疑問が残った」
佑子さんは微笑んだ。妻は真っ赤になって俯いた。なるほど、何が疑問だかわかっているようだ。
妻の震える握りこぶしに佑子さんがそっと手を置いた。
「あれには少しだけカズが関わってるわ」
「ああ、エロDVDのことっすか」
「カズ、言い方! ごめんね〜、バカで」
「修司さんの性的興奮を高める可能性が高い映像の傾向を分析したっす」
「・・・まぁ、いいわ。そういうこと。修司さんはひーこにもう少し性のことに興味を持って欲しいのじゃないかって考えたの」
「その通りです」
「でね、このエロエロ大王に、修司さんが興味持ちそうなDVDを借りてこさせたら、もう・・・」
「とんでもないのを借りてきた、とか?」
「フェチものばっかりよ。下手すりゃ、首から上が映ってなかったり・・・」
「最初のは、佑子の説明が悪かったんじゃん。でも、俺にはわかってたっす。修司さんのキーワードは『寝取られ』と『調教』っす」
自分の性癖が晒されるのは恥ずかしくて耐えられないもんだと思っていた。だが、不思議とこの二人の前では平気になっていた。
「うん。そうだね。秀美が誰かのものにされているとか考えたら・・・」

「カズにDVD借りてこさせて、あたしとひーこと二人で見てた。そしたら、ひーこは『無理』って・・・」
「あれはプロの女優さんだから・・・」
「そうじゃなくて、この子、まだ勘違いしてたの」
「勘違い?」
「そう。本当に他人に抱かれるんじゃなくて、それを匂わせるだけで良いんだ、って。調教されているかもしれないって思わせるだけで良いんだ、って」
・・・ああ、なるほど。この人は本当にわかっていたんだ。すごい人だ。

「まあ、ある意味女優よね。演技で修司さんを騙すんだから」
「見事に騙されましたよ。違和感はあったけど」
「後で聞いたら、ものすごく頑張ったみたいね。突然変身しちゃったりして、修司さんが戸惑ってたって言ってたけど」
「ええ、多少は・・・」
「どうだったか詳しくは聞かない。でも、二人にとって特別な日になったでしょ?」
「最高の日でした」
「ひーこは?」
「佑子が、縛られたり、奴隷のように奉仕したりって言うから、もっと痛かったり、怖いことだと思ってた・・・」
「麻縄で縛ったり、鞭や蝋燭はちょっと痛いっすね」
「カズ!ちょっと黙ってて」
「あ、でも佑子さん・・・と秀美」
「なに?」
「俺は秀美にいつもあんな風にしたいと思っている訳じゃ無いです。願望はあったけど、実際は・・・」
「心が痛かったんでしょ?」
「・・・? そうです」
・・・何でもお見通しか。怖いくらいだ。

「それも言ったわ。修司さんは願望として暴力的なものを持っているけど、愛する人にそれが平気にできるような人ではないから」
「大丈夫だよ。修ちゃん、途中で何度も素に戻っちゃったでしょ。演技としては駄目だけど、逆に安心できた」
「世の中の大部分の人がそうなのよ。AVの需要もそういうところにあるんだから」
「そっす。エロビは馬鹿にできないっす」

佑子さん(と和君)が性の伝道師のような気がした。
妻の傍に佑子さんがいてくれて、本当に良かったと思った。


私の感じた違和感は、妻たちが嘘に気付かせるように、わざと作った隙のようなものだったのだろう。


もしも、本当に妻が浮気をしていたら・・・本気でそれを隠そうとしていたら・・・

私は気付けたのだろうか・・・?


第一部 完


[41] Re: 優しい嘘  修司 :2013/07/20 (土) 14:17 ID:USmN2PzY No.18030
こんにちは(*^^)v 修さん

今日は、週末ですね〜 

もし、奥さんが秘密で遊んでいたら・・・分からないでしょね(*^^)v

弄ばれた、生身の身体を・・・抱いた時に 違いがわかると思いますよ〜

続きも、楽しみですね 修さん(*^^)v


[42] Re: 優しい嘘  かっぱ :2013/07/22 (月) 22:43 ID:4k7ow032 No.18036
今晩は。一息に読ませて頂きました。第2部がとても楽しみです。

[43] Re: 優しい嘘  勃蔵 :2013/08/31 (土) 09:28 ID:TKEgtNiE No.18175
初めまして。 凄く興奮して拝見させて頂きました。続きが気になってしょうがないです。。。 宜しくおねがいします。

[44] Re: 優しい嘘  :2016/01/30 (土) 20:00 ID:DHYr2WO. No.22469
初めまして。

実に素晴らしい作品ですね
ミステリー的な要素を入れつつ
きちんと勃起させてくれるし
文章もとてもお上手だし
パワー全開で、短くまとまっていて
ネット小説としていうことないです。

しかも
ちゃんと「第1部」の最後に
次への「謎」を含ませていらっしゃってますよね。
完全に「ウソ」が分かったように思えるけれども
実は分かっていなかった、ということも
ひょっとしたら、あるのかもしれない
そんな感じがしました。

時間が経ってしまって難しいと思いますが
第2部が本当に楽しみなので
ぜひ、挑戦なさってください。


お願いします。


[45] Re: 優しい嘘  yuk :2016/02/05 (金) 00:24 ID:tV/4j1H. No.22491
私も、続きが読んでみたいです。

[46] Re: 優しい嘘  :2016/02/05 (金) 21:55 ID:H07TsEt2 No.22494
修司様
ブログにも書きましたが
「続き」拝見しました。

継続して書くのは難しいとは思いますが
このまま書き続けてくださることを願っています

この作品が、さらに素晴らしいものになってくれると
信じております。



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 【例】「交際BBS(東・西)で募集している〇〇です」、または「募集板(東・西)の No.****** で募集している〇〇です」など。
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