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満員御礼 m(__)m 超スゴイです!超感激です!超サプライズです!
爆発的大人気でこのスレッドは、なんとレス数が200を突破して満杯となってしまいました。
申し訳ありませんが新しいレスは書き込めませんので、続きは新しいスレッドでお願い致します。

覆水盆に返らず

[1] スレッドオーナー: 矢部 :2025/03/21 (金) 22:39 ID:19n7RMKs No.201155
いつも皆さんからの投稿を楽しく読ませてもらってます。

今から約3年前から約2年前までのおおよそ一年間で、当時 私の歪んだ欲が、
取り返しのつかない事態を招いてしまった話を振り返りながら投稿したいと思います。

ただし実話として全部を再現しようにも、どうしても不明な部分や
見えていない部分はあります。
そこは私の推測と後日当人から聞いた内容を、若干アレンジをしながら
書いていきますので理解をしてください。

現在の私(もちろん仮名ですが矢部正則)は還暦を迎えた会社員です。 
定年延長になって引退はもう少し先になりましたが、仕事に取り組む意欲は
日々減退しているのが本音のところです。

2年前に当時の妻(由紀)とは「円満」離婚をして、今はひとりで暮らしています。

今では何とか不自由もありませんが、年のせいもあって、時々、一人でいることが
寂しく感じることがあります。

幸い、自炊が苦にならないこと、ウォーキングや温泉巡りが趣味であることで
健康的には暮らせています。
そして県外にいる2人の子供(息子30歳、娘28歳)が交互に帰ってくれます。
彼らにとっては実家に戻ることになるのですが・・・ 
それでも私を気にかけてくれているのがわかりますし、
父親としてはとても嬉しいことです。
また元妻も、そんな子供たちを通じて、私のことを気にしてくれている、
とのことです。

前置きが長くなりました。

話は今から3年前、コロナもほぼ収束、世間は日常を取り戻し、
夜の街にも賑わいが戻ってきた、残暑が厳しい8月の下旬からスタートします。

当時、私は57歳で医療機器メーカーの係長で年収約600万円。
すでに出世コースからは大きく外れ、マイペースで仕事をしていました。
私の身長は166p 中肉中背 大きな病気も経験がなく、
自分で言うのも変ですが、愛妻家を自負しており、これまで一度たりとも
浮気はしたことがなかったのです。
ただし、風俗遊びはデリヘルの経験はありますが、
それもハマってしまうまで ではありませんでした。

そんな愛妻家の私ですが、密かに妻のスリップ姿、
(30年くらい前の、若いころのイメージ)が好きです、
しかし なかなかその姿にお目にかかれず残念な思いをしていました。
その当時から5年前、後述の私の親友の奥様の葬儀に参列した時に着ていた
ワンピースの喪服から透けた黒いスリップを見たのが直近になっていました。

また当時、妻とのセックスレスはすでに10年以上になっていましたが、
一番大きな試練として、私はこの頃になって急にED気味となり、
一気に男としての自信を無くしてしまっていました。
当時の私はとても落ち込んでいたのです。

そんな私が、会社の同期で唯一無二の大親友、平尾明正(当時57)と、
ある金曜の夜に居酒屋で酒を飲み交わしていたところから話が始まります。

平尾は先ほども少し触れたのですが、5年前に奥さん(直美さん)を、
心肺系の突然死で亡くされてから、以後、半年くらいは精神的に不安定に
なってしまったのです。
会社の特別な配慮もあり、彼はスイスの子会社に財務責任者の補佐役として
出向をしました。

彼はもともと仕事のできる男であり、環境が変わって心機一転が功を奏したのか、
出向先での活躍はめざましく、収益の大幅な改善を成し遂げました。
そして4年間の海外出向を終えて、今度は日本の関連子会社の副社長として
帰国をしたのでした。

平尾が海外に赴任中は一度も帰国をすることはなかったため、
私との飲食交流も実に4年ぶりとなっていたことから、
居酒屋では積もる話が山ほど交わされ、懐かしみもあって、
とても楽しいひと時を過ごしていたのでした。


[188] Re: 覆水盆に返らず  倍胡坐 :2025/06/12 (木) 20:16 ID:7p8sC7eQ No.202189
荒らしの方々、お疲れ様です。
粘着するのはやめていただけませんか?

ひょっとしたら名前を変えただけの同一人物の粘着かも知れませんね。
あなた、とてもキモいですよ。


[189] Re: 覆水盆に返らず  自演 :2025/06/12 (木) 20:31 ID:8Lmhy4d6 No.202190

TO矢部さんとイエスマンのIDが、DpQqP3HMで同じなんですけど(笑笑)
倍胡坐さんのご指摘の通りかもしれませんね。


[190] Re: 覆水盆に返らず  :2025/06/13 (金) 13:30 ID:Bs8VfNGI No.202195
我慢できず自演してしまうほど待ち遠しい気持ちは分かりますww

[191] Re: 覆水盆に返らず  かい :2025/06/13 (金) 18:54 ID:/zdl8W8I No.202199
最初から読ませてもらってます!ここからが本題ですね!
いつも長文にしてもらえて一気読みできるので助かります。
文章にするのは時間もかかり大変だと思いますが続きをよろしくお願いします。


[192] Re: 覆水盆に返らず  矢部 :2025/06/14 (土) 00:07 ID:f191S0MA No.202203
しん様、いつもコメントをありがとうございます。
>実は私もそうでした。
・そうでしたか! 私の場合、投稿したように、いろいろ考えてしまって長い長い夜だったのを覚えています。

小太郎様、いつもコメントをありがとうございます。
>開き直っているのか、肝が座っているのか、由紀さんの自然な仕草
・本人ではないのであくまでも想像ですが、由紀もいろいろ思っていたのかもしれないです。
彼女自身が「いつも通り」と言い出した手前、無理してでも自然さを装っていたのかもしれないです。

かず様、コメントをありがとうございます。
>来週の火曜日の投稿が待ち遠しいです。
・拙い話を楽しみにしていただきありがとうございます。
 毎週火曜日・・・ 遅筆なのでお約束はできませんが、頑張ります;;(汗)

倍胡坐様、いつもコメントをありがとうございます。
>由紀さんにしても緊張は相応にしていたはずですが、それが由紀さんの気を紛らしていた
・そうだったのかもしれないですね。とにかく私なんかより、腹は座っていたのかと。
>粘着するのはやめていただけませんか?
・とても心強いです・・・(というか)何かトラブル?書き込みがあったのでしょうかね?

愛妻の夫様、コメントをありがとうございます。
>決して激しい性描写が全てじゃありません
・ありがとうございます。とても励みになります。

自演様、コメントをありがとうございます。
> 同じなんですけど(笑笑)
・いろいろ助けてくださり、とても心強いです。

TO矢部さん? イエスマンさん?
・読まれた感想や由紀のことを聞いてくださるのは大歓迎です(誹謗中傷は苦手ですが;;)。

師様、コメントをありがとうございます。
>待ち遠しい気持ちは分かります
・拙い話を楽しみにしていただきありがとうございます。

かい様、コメントをありがとうございます。
>ここからが本題ですね!
・そうですね・・・期待に沿う内容になるのか、どうかですが・・・(汗)
>時間もかかり大変だと思いますが続きをよろしくお願いします。
・励みになります。ありがとうございます。

いつも応援してくださる皆様、本当にありがとうございます。
次より新しいスレッドを作りますので、ここへの私(矢部)からの投稿はこれで終わります。
新しいスレッドでも、応援や叱咤激励を、よろしくお願い致します。

尚、折角ですので、
No.200になるまで、ここまでお読みになったご感想や印象に残ったシーン(そんなシーンなんてありませんかね;;)等を
書き込んでいただけたら、とても嬉しいです。
それから・・・
今まで書いた分もこちらのサイトで掲載できる列内の文字数等を考えて、
あらためて最初からの投稿分を列行整理したいと思っています。
その時に「て・に・を・は」の修正や若干の色付けもしたいと思っています。
(もちろん大筋には影響ない程度に、です)


[193] Re: 覆水盆に返らず  小太郎 :2025/06/14 (土) 00:45 ID:P5/oMkYo No.202204
48番で矢部さんが平尾さんとのデートごっこの提案した
翌日に由紀さんが受け入れたところですね。
「由紀さんは、朝、目覚めたときに、それらの記憶がしっかりと
 残っていたから、受け入れようと決めた。」
由紀さんが色々思い悩んだ末に、自ら決めた覚悟が感じられて
とても印象に残っています。
そして自分で決めた事なので、由紀さんが自分で最終的に
責任を取ったと推測しています。


[194] Re: 覆水盆に返らず  新人類の成れの果て :2025/06/14 (土) 02:21 ID:rZtjLSjg No.202206
40年ほど前、新人類と呼ばれた世代の者です。

冒頭で、2年前に当時の妻(由紀)とは「円満」離婚、と書かれていますが、
スレの題名と「円満」とが正反対のような気がしています。
表面上は「円満」でも、矢部さんの中では決して「円満」ではなかったのかなとも感じます。

スレの題名から、矢部さんにとってはバッドエンドの結末なんだろうと想像しますが、
どの程度のバッドエンドなのか、それは離婚後の由紀さんの動向によるのではないかと、
自分なりに結末を予想しながら拝読しております。
私の中では、離婚するだけの結末であれば、まだましなバッドエンドなのですが・・・
「元妻も、そんな子供たちを通じて、私のことを気にしてくれている」と書かれており、
離婚後に、由紀さんと直接会われたり連絡を取ったりすることはないようなので、
それができない理由があるのかと、勘繰ってみたり・・・

どんな結末を迎えるのか、楽しみにしています。


[195] Re: 覆水盆に返らず  考察 :2025/06/14 (土) 11:31 ID:wGmYjLLA No.202209
つまり、先が読みたければ早く200まで埋めてください、ということですかね。
でしたら多少は貢献しましょう。

いろいろ言っている人もいますが、手っ取り早くパンツを下ろしたい人が当てが外れて怒っているのでしょうかね。
まあ、私は面白い物語が読めればいいので焦らず続けてください。


[196] Re: 覆水盆に返らず  矢部 :2025/06/14 (土) 13:08 ID:f191S0MA No.202210
考察様、ご指摘をしてくださり、ありがとうございます。

「レス数が180を超えました。200を超えると書き込めなくなりますので新しいスレッドをお願いします。」
と、このようなWarningが出ておりましたので、勘違いをしておりました。

「先が読みたければ早く200まで埋めてください」という意味では決してございません。
シンプルに感想や印象に残ったシーンをお聞かせいただきたかっただけです。

ここの投稿が200にならないと、次のスレッドが作れないのであれば、
私も、こちらが200になるまで、こちらで続けます。


[197] Re: 覆水盆に返らず  倍胡坐 :2025/06/15 (日) 00:59 ID:c7s3cBCs No.202213
矢部さんの平易でわかりやすい文章もあって、折に触れレスをいれさせていただきながら、
気がつけばスレッドが埋まりつつある状況となりました。
あくまでも、このサイトは投稿してくださる方の善意と熱意によって成り立っています。
改めまして、矢部さんにはこれまでのご苦労に感謝申し上げる次第です。

これまで綴られてきた内容から、どのようにして「覆水盆に返らず」へと進展していくのか。
読者のひとりとして、この話が無事完結となるまで応援させていただくつもりです。

どうか、これまで同様のペースで結構ですので、今後もよろしくお願い致します。


[198] Re: 覆水盆に返らず  しん :2025/06/15 (日) 18:25 ID:JxlPUklE No.202225
いよいよですね。
この先の展開がとても待ち遠しいです。


[199] Re: 覆水盆に返らず  矢部 :2025/06/15 (日) 22:49 ID:HdSzxSrI No.202228
小太郎様、いつもコメントをありがとうございます。
>由紀さんが色々思い悩んだ末に、自ら決めた覚悟が感じられてとても印象に残っています。
・ありがとうございます。深く読んでいただき感謝しかございません。とても励みになります。嬉しいです。

新人類の成れの果て様、コメントをありがとうございます。
>どんな結末を迎えるのか、楽しみにしています。
・期待に沿うような結末になればよいのですが・・・(汗)

考察様、コメントをありがとうございます。
>面白い物語が読めればいいので焦らず続けてください
・ありがとうございます。励みになります。面白い物語にならないかもしれません;;(汗)

倍胡坐様、いつもコメントをありがとうございます。
> どのようにして「覆水盆に返らず」へと進展していくのか
・いつも心強いコメントをくださって感謝しています。期待に沿うような進展になればよいのですが・・・(汗)

しん様、コメントをありがとうございます。
>展開がとても待ち遠しい
・拙い話ですが、とても励みになるコメントをありがとうございます。

いつも応援してくださる皆々様、本当にありがとうございました。


[200] Re: 覆水盆に返らず  矢部 :2025/06/15 (日) 22:50 ID:HdSzxSrI No.202229
由紀は、私が見る限り、気持ち急いだ様子で軽く手を振って行きました。

グレーの長袖Tシャツに、紺の半袖シャツを羽織り、下はいつものデニム。
ボブの髪も特に変化なく、気配程度の最低限の化粧。

リビングから窓越し小庭越しに見た限り、
いつものスニーカーを履いて、颯爽と自転車にまたがる彼女の姿は、
いつものスーパー(先日、私が平尾に電話をした)へ食材を買いに行くという、
由紀は ここでも、いつもの日曜日午前の姿、そのままでした。

それだからこそ・・・
今の姿が、あと数時間後に、どんなふうに変わるのか、を思うと、
私はざわざわと胸の内が落ち着かなくなってきていたのでした。

(それはそうかもしれないが・・・本当に良いのか?)

デート(ごっこ)の時間は刻々と迫ってきていました。
頭の中を巡っていたのは、どうしてもネガティブなことばかりだったのを
覚えています。

仮にスーパーから帰ってきた由紀が、
「トオサン、やっぱり私、行かないから・・・」と言ってきたら?

その時の私は、“なんとか説得して行かせる” のではなく、
素直に彼女の言葉を受け入れたほうが良いのかもしれない、
そして平尾にキャンセルの連絡をするとしたら、どんな言葉で切り出そうか、
そこまで考えが及んでいたのでした。

(いや 待て せっかくここまで来たんだろ? あと少しで興奮できるだろ?)

と、なんとかポジティブな気持ちに切り替えたところで、

(それでも、夕食時には、由紀はこの場所にいるのだから・・・)

と、ネガティブな気持ちを宥(なだ)める程度のものでした。
今 振り返ると、本当にビビっていたのです。 私は本物の小心者でした。

いろいろな思いが巡っていた私は、何をするでもなく、落ち着かず、
とりあえずソファに体を沈めていました。

テレビでは、旅番組がBGMのように流れていて、どこかの温泉街の映像が、
ゆったりと移ろっていました。

「温泉か・・・」

その時ばかりは、思考が他の事を全く寄せ付けなくなっているのがわかった私、
もう じっと座っていることができなくなって、とりあえず立ち上がると、
足は由紀の部屋へと向かっていました。

(いや、さすがに・・・)

そう思いながらも、気づけば箪笥の引き出しに手をかけて、
期待? いや むしろ不安先行で そっと開けていたのでした。

中身は、いつも通り。 前回見た時と同じで、あえて書くとしたら・・・
長い年月を経てきたであろう、何度も洗濯されたであろう、変わり映えしない
白やブラウン、ベージュといった無難な色の地味なラインナップ。
いかにも50代の主婦らしい、平凡で実用重視で機能的な下着たち。
ブラジャーやババシャツ、ガードル、そして一分丈ショーツ(=デカパン)たちが、
いつものように整然と並んでいたのでした。

(変わってない・・・)

拍子抜けとも安心ともつかない不確かな感情が、私の胸の中で
絡まり合ってきたのです。

ただおかしなもので、変化がなかった、という結果がわかると、
一転して強気になるという、小心者特有の性格でしょうか・・・
もっと何か劇的な下着。 たとえば エレガントなレースのスリップやキャミソール、
艶っぽいブラジャーとセットのTバック、で なくとも華やかなショーツとか、
このテの状況にありがちな(こちらのサイト風な)下着の存在を期待していたかの
リアクションになっていたのです。

(オイオイ・・・デートに行く気あるのか?)

そのあと私は、足が向くままに自分の部屋に入ったのでした。
なんとなく棚からコミック本を取り出して、ページをただパラパラとめくったり、
スマホ片手にYouTubeで見つけた「伝説のゴールシーン100選」を再生しながら、
感情もなく歓声を聞き画面を見ていただけでした。

落ち着かない気持ちを落ち着かせようと「何かをしている」だけ だったのです。

すると、自転車のスタンドを立てる音が、私をリアルタイムの現実に戻しました。

「ただいまー!」

由紀の声には、どこか勢いが感じられました。

私は、階段を下りながら、どうでも良いことを由紀に聞いていました。

「おかえり・・・ 人、多かった?」

「ううん いつもの日曜と同じ。 外はまだまだ暑いねー、もう10月なのに」

軽く汗ばんだ額を手であおぎながら、由紀は急ぎキッチンへと。

声のトーンは独り言のようでいて、どこかで私の反応を意識しているような?
絶妙な距離感を感じました。(これは、私の思い過ごしだったのかも)

冷蔵庫を開け、由紀はエコバッグから次々と買ってきた品物を入れてました。
牛乳、卵、ミニトマト、ヨーグルト、そして冷凍食品・・・
本当にいつものペースで、いつもの空気がそこに漂っていたのでした。

「晩ごはん、これねー」

私に向けて見せたのは、
てんぷらの盛り合わせと、パックに入ったポテトサラダ、ということは?
「デートの日は、夕食はお惣菜中心になる」という、
このデート企画を受け入れるときの由紀からの条件を思い出しました。

由紀自身が その「10か条」を抜かりなく行使したことで、
デートに「行く」もしくは「行く気になっている」ことが確定したのでした。

冷蔵庫を閉めたあと、由紀は何も言わず、テーブルに座って、
氷を入れたコップに冷たい水を注ぎインスタントのコーヒー粉をさっと入れて、
二人分のアイスコーヒーを作りました。

「私も、お昼はいらないかなー?」

由紀は ポツリと呟くように言いました。

私は反応するべきか、流すべきか、一瞬迷ったのですが、思わず聞き返しました。

「え、食わないの?」

「うん・・・だって、まだ早いしねー」

時計を見ると、11時半ちょうど。
食べても良いし、食べなくても良い・・・ そんな微妙な時間ですよね。

「あーあ・・・ やっぱり食べる気にならないよー」

そう言って、由紀はわざとらしく 口をすぼめて 泣き顔を作っていました。

思わず笑いがこみ上げた私は、肩の力を抜いて言いました。

「ま、あいつにうまいもん、食わしてもらい?」とか、
「アウディで、ドライブついでに 美味い店とか洒落たカフェとか・・・」

私は あえて車名まで伝えたのでしたが、そこには由紀は無反応でした。

「それはムリー。 もぉ! トオサン、ホントお気楽なんだから・・・」

そう返しながらも、由紀は自然体で笑っていました。

そのあとしばらくは、ごくごく普通の会話が続いたのです。

「なんか、マリちゃん(※)が近々帰ってくるって」と由紀。

「ふーん」

「さっきね、スーパーの駐車場にパトカー来てたよ」と由紀。

「なんかあったん?」 などなど・・・なんでもない、どうでも良い会話。

思えば、私としては、なんとか平静を装うための貴重な会話でした。
そして、もしかしたら・・・ 由紀も私と同じだったのかもしれませんし、
単なる話を無感情にしただけだったのかもしれません。

由紀が壁掛け時計に目をやり、スッと椅子から立ち上がりました。

「そろそろ準備するね」

そう言って自分の部屋へと向かう後ろ姿が、やけに強く見えたのを覚えています。

(準備する、ってことは、本当の本当に行く気?)
(マジ? 本当に? いいの? マジ?)

私は、胸の奥がすうっと冷たくなり、喉にすごく違和感を感じました。
この時点でも、私のほうは、まったく決心も覚悟もできていなかったのです

(でも、まだ、わからん・・・よな?)

まるで取り残されたような私は、日曜 昼のテレビ番組を目だけで追っていました。

(※):娘、麻里奈のこと



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