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[40000] 30歳の記念撮影から D マック 投稿日:2009/03/04 (水) 20:05


撮影の段取り、撮影が終わってから写真集が出来上がるまでの工程、費用のことなど、
高島氏からもろもろの説明を受け、私たちの不安も少しずつ解消し、
妻にも緊張がいくぶんほどけて笑顔が見られるようになった時でした。

「ただいまっ。花園小学校の音楽会の写真の件、打ち合わせしてきました」

突然写真館に突然入ってきたのは、背の高い若い男性でした。

「あっ、お客さんでしたか。失礼しました」

そう言うとその男性は私たちに頭を下げると、中に入っていきました。

「彼はうちで働いてくれてる三上くんだ。大学を出てきちんとした会社に就職してたのに、カメラマンの夢が捨てられず、その会社を辞めて専門学校で勉強しながらうちで働いているんだ」

高島氏は突然入ってきた若い男性の紹介をしてくれました。

「先生、今日の資料です。後で目をとおしておいて下さい」

奥から顔を出したその男性は、高島氏に書類のような物を手渡すと、
写真館の機材の整理などをしていました。
見た目にも清潔感のあるその男性とも私たちは会話を交わすようになり、
笑い声なども混じって場がとてもなごやかになってきた頃でした。

「ねえ、先生の作品、見せてもらいました?」

「おいおい、いいよ、そんなの・・」

突然三上氏が私たちに聞いてきました。

「こうやって口コミでも、先生の撮影を希望される方が増えてきたのは、あの受賞があってからじゃないですか」

私たちは三上氏が何を言っているのか、全く理解ができませんでした。
ただ、高島氏が写真で何らかの賞を貰う人だったということはそこで初めて解りました。

「このパネルを見て下さい」

三上氏はそう言うと一枚の大きなモノクロ写真が入ったパネルを私たちに見せてくれました。
それは男女が裸のまま向かい合って立っている写真でした。
女性は言いようにない快楽の表情を浮かべ、天を仰いでいます。
男女の腰の位置は密着していて、男性の引き締まった臀部が印象的でした。
まさに立位で繋がっているようにも見えます。

「これは先生が一年前にフランスの有名な写真展に出品した作品で、先生はこれで入賞をとられたんですよ」

三上氏は自分ごとのような嬉しそうな顔でそう話しました。そしてさらに一冊の大きなアルバムを私たちの前に置きました。

「これはその時に撮った写真を収めたものです。中をご覧になりますか?」

私たちはそのアルバムの中を見てみる事にしました。
中にはやはりモノクロの写真で、男女が写っていました。
どのポーズもセックスを連想させるような写真だったが、
いわゆるアダルト雑誌などに載っているような猥褻感は一切なく、
男女の芸術美に引き込まれるような写真ばかりでした。
どの写真も女性は歓喜の表情を浮かべていて、男性はその筋肉が強調されるものばかりです。
女性は明らかに日本人のようなのに、まるでギリシャ彫刻を見ているようでした。
東洋人のきめ細かい肌がモノクロ写真でも良くわかり、とても美しく写っていました。

「すごくきれい・・」

妻は写真にみとれ、おもわず口にしました。

「でしょ、先生はね、絶対に有名なカメラマンになれる人なんですよ」

「まだまだ、それは未完なんだから、あまり大げさに宣伝しないでくれよ」

高島氏は照れながらそう言うとアルバムを持っていきました。

「けど、さっきの写真、男の人は顔が写っていなかったですね」

写真の美しさに魅了された妻とはまるで違う発想をしていた私は、
やはり芸術を理解するセンスはなかったのでしょう。
まるでトンチンカンな言葉を口にしてしまいました。

「あれ、実は僕なんですよ。実は僕もアルバイトでモデルの仕事をしてるんです」

三上氏の突然のカミングアウトに私たちは目をシロクロさせてしまいました。

「ここでの仕事で、なんとか生活をすることはできるのですけど、僕も先生のように本気でカメラマンになりたいと思っていまして。撮影する側の立場だけじゃなく、モデルの気持ちも理解できるようになりたくて、いい勉強させてもらってます。若いうちにもっと自分の可能性を広めておきたいから。もちろん先生にも賛成をもらってます」

三上氏はここでの仕事、また専門学校に通う傍ら、女子美大などでデッサンのモデルのバイトもこなしていると言います。もちろん美術モデルなのでヌードになる事がほとんどとのようです。モデルについていろいろ語る三上氏を見ていて、若い女子大生の前で裸を晒す気分というのはいったいどういうものなのだろう?私にはそんな疑問が浮かんできました。

屈託なくそう話す三上氏に妻もなんとなく心を許し始めていました。

「でも、女の人の前で裸になるってどんな気分なの?」

私はついそんな疑問を口にしていました。

「もちろん興奮しますよ。考えても見て下さい、異性の前で裸になる時というのは、まあ病院での診察とか特殊な場合は除いたとして、そのほとんどは性交渉の時ですよね」

あっけらかんと語る三上氏とは反対に、私たちは何となく気恥ずかしい思いを感じてしまいました。

「これは先生の受け売りなんですが・・・、私たち地球に住む生物が神様から与えられた最大の使命って何だと思います?・・・それは子孫を残すことですよ。神様は私たち人間に、その子孫を残す行為に最大の悦びを与えてくださった。その時の表情にこそ、人間の本当の美の姿があるのです。だから僕はモデルをしている時に、たとえ性的に興奮してしまったとしても決して恥ずかしいとは思わないんです。それにデッサンしている方も筆がのるみたいですしね。カメラマンだって同じなんですよ。モデルが性的に興奮している時こそが最大のシャッターチャンスなんです」

「敦子さん、今度の撮影はすべて先生に任せて、いい写真にしてくださいね」

三上氏は申込書に書いてある妻の名前を見てそう言うと、その場を後にしてさがっていきました。

[Res: 40000] Re: 30歳の記念撮影から D るーく 投稿日:2009/03/04 (水) 21:36
話の展開が上手いですねぇ。