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[39916] 壊れかけの絆(21)  投稿日:2009/03/02 (月) 14:05
翌日の朝、妻の寝室から聞こえた物音。

妻は寝起きの自分の姿を見て、どのように感じているのだろうか?

私の想像通り、激しく動揺しているのでしょうか?

そして朧げな昨夜の記憶を必死に思い出そうとしているのでしょうか?

耳を澄ませて、妻の寝室の方に聞き耳を立てる私でしたが、どうした事でしょう?
その後は一切、物音が聞こえなくなってしまいました。

私は、この段階で自分自身の考え方や方針が纏まっていないだけに、今この場面では妻に何をするつもりも、何を聞くつもりもありませんでした。
あの南京鍵で閉ざされた化粧箱を開けて、思いもよらない数々の疑念を垣間見て、それらを裏付けるようなボイスレコーダーの内容を聞いてしまってから、余りに間が無さ過ぎました。

けれど、妻のバッグに仕掛けたあのボイスレコーダーを確認してやろうと、手ぐすねを引いて妻の帰宅を待ち構えていた昨夜とはまた違った緊張感、緊迫感を今感じている事を確かなのです。

《妻は一体どんな顔をしてリビングに現れるのだろう?
動揺を抑えながら、何を私に語りかけるのでしょう?》

そして私はどのような態度で接すれば良いのだろう?
不信感やジェラシーを表に出す事無く、妻との空間を共有する事が出来るのだろうか?…

この張り詰めるように静まり返った空気に耐え切れないでいた私は、この静寂から逃がれたいとばかりに、リビングのテレビの電源をれて、ボリュームを上げたのでした。

そう‥普段より大きなボリュームで‥。

リビングに私の所在がある事をしらしめるように。

5分… 10分… 15分‥ ‥ 。

妻は、なかなか寝室から出て来ません。


時計の針は、7時を指そうとしていました。

そろそろ朝の支度をしなくては支障をきたす時間です。

耐え切れない張り詰めた空気が我が家を覆っていました。

リビングに居る私と、寝室の妻との間で、ある意味綱引きにも似た、微妙な駆け引きが行われているような感覚。

どちらかが強引な力技を繰り出せば、夫婦と言う名の薄く脆い硝子細工が粉々に壊れてしまうような…。

遅く感じられる時計の針の動きが、私の緊張感と焦りを煽り、寝室から出て来ぬ妻への苛立ちへと形を変えて行きます。

【平常心で居なくては‥】

私は太腿に置いた左右の拳にグッッと力を込め、自分に言い聞かせていました。

[Res: 39916] Re: 壊れかけの絆(21)  投稿日:2009/03/02 (月) 14:10
【ギィッ‥ィ‥ィ‥ ガチャ‥ン‥ ‥ 】

この時、ついに妻の寝室の扉が開く音が聞こえて来ました。

足音は聞こえないのに、気配だけが、ゆっくり、ゆっくりと近付いて来る… 正にそんな感じでした。

その気配の方向に振り向くようにして顔を向ける私。

そこに妻は居ました。

それは、悪戯をした子供が困ったように顔を臥せ気味に佇んでいる…と言った感でした。


『おはよう… 良く眠れたかい?… 』


作り笑顔の私が、静寂な水溜まりに小さな波紋を起こすように小石を投げ入れた‥そんな一言でした。


妻は、そのハッキリとした二重の瞳をパチパチと瞬きさせながら


『寝た‥寝たわよぉ‥
いつ眠ったのか全然覚えてない… 』


妻はそれ以上は答えず、明らかに私の様子を伺っているようでした。


『かなり酔っていたからなぁ…。
まぁそんな所に立っていないでこっちに座れよ…』


私は自分が座っていたソファーの位置を大袈裟に右にずらしてスペースを空けました。


妻は一瞬キョトンとした表情をしましたが、普段と変わらぬ動作で私の横に腰を下ろしました。


【フワッ‥ふわっ〜ッ… … …】


昨夜、帰宅してからシャワーを浴びていないからでしょうか?

いつもより強い、妻の甘酸っぱい体臭が私の鼻腔をくすぐりました。

私にしなだれかかるようにした妻は、私の方に顔を向け、

『‥ワインは弱いって知ってるのに‥ ‥
あんなに飲ませるんだから‥ 』

悪戯っぽい目で睨むようにする妻でした。

しかしその悪戯っぽく睨む目の意味は、妻が、今抱えている不安の源である、【あの澤田統括部長から贈らたエロチックな下着姿‥
自らの愛液で濡らし、濃厚な牝のフェロモン臭を付着させた下着姿を私に見られたのか?】を聞くに聞けないジレンマの裏返しのように感じられました。


『しかし…大胆だよなぁ…あんな姿の悠莉子を見たのは初めてだったから…でも‥驚いたよ… 。』

私のさりげない問い掛けに妻の表情が一瞬で強張りました。

[Res: 39916] Re: 壊れかけの絆(21) もっこりん 投稿日:2009/03/02 (月) 14:39
お待ちしておりました!
この後の奥様の行動は???
興味津々です!

[Res: 39916] Re: 壊れかけの絆(21) ハイウエスト 投稿日:2009/03/02 (月) 14:40
この後の展開が非常に気になります!
続きをお願いします

[Res: 39916] Re: 壊れかけの絆(21) チャイデモ 投稿日:2009/03/02 (月) 14:41
仕事で移動の車内でチェックして、更新されてあるのに気付き直ぐ読ましていただきました。いよいよ奥様と相対するのですね、ハッピーエンドを期待するも、興奮で収まりつかないです。

[Res: 39916] Re: 壊れかけの絆(21)  投稿日:2009/03/02 (月) 15:55
『しかし…大胆だよなぁ…あんな姿の悠莉子を見たのは初めてだったから…でも‥驚いたよ… 。』

私の問い掛けに、一瞬で表情を強張らせた妻。


『あんな大胆な姿って?… 』


妻は焦る気持ちを見せまいと、冷静さを装いながら私に問い掛けました。

私は底意地悪く、受取側である妻の取りようによっては、どうとでも受け取れる物言いに終始しました。

『案外、悠莉子はそうなんじゃないかと思っていたんだよ…

しかし…いざそれを目の当たりにしてしまうと俺もさ… ショックだったよ… 。』


苦笑いしながら意味ありげに答える私でした。


隣に座る妻悠莉子からは、先程より濃密な甘酸っぱい体臭が沸き上っていました。

見られては困る物を見られたのでは?との焦りが全身の毛穴という毛穴を開かせ、汗を噴き出させているのでしょう。

『えっ?… 見たの?…

見ちゃったの?… …

……。

寝室に運んで…スーツを脱がてくれたのはあなたなの?… 』

いつもの愛くるしさが、妻の表情から消えて、絶句する妻。


私は、妻のその表情、雰囲気から、これは頃合いだ、今朝はそろそろ幕引きとばかりに


『えっ?どうしたの?…
何の話だよ?

昨日、お前は飲んでいるうちに酔って、ここで寝てしまったから、暫くはそのままにしておいたけど…

でも、疲れているんだろうし、風邪でもひかれたら大変だから起こしたんじゃないか?

それで俺が抱きかかえてお前の寝室に連れて行こうとしたら、『大丈夫、大丈夫』って、自分で寝室に戻ったんだぞ。

それにしても、起こした時に機嫌悪くて、機嫌悪くて…

あんなに酔っ払って機嫌の悪いお前を見たの初めてだったから…

まぁ前から、ひょっとしたら酒乱?って思ってはいたんだけどさ…』

私は苦笑いしながら、身振り手振りのオーバーアクションで妻に説明をしました。


そんな私の説明を聞き、妻は安堵したのでしょう。

本人は気付いていないでしょうが、妻は強張った表情が緩み、現金な事に普段の愛くるしい笑顔を取り戻していました。

『ごめんね‥ ごめんなさい‥ でもワインなんて飲ませるあなたが悪いのよ‥
私、途中から全然覚えてなくて…

いつ寝室に戻ったのかも、寝たのかも覚えていないの…。

スーツは脱いであったから‥

あなたが寝室に運んで脱がしてくれたのかな?とも思っていたの‥ 』

[Res: 39916] Re: 壊れかけの絆(21)  投稿日:2009/03/02 (月) 16:00
『あなたが寝室に運んで脱がしてくれたのかな?とも思っていたの‥ 』
私は再び意地悪な気持ちが沸き上がり、妻を茶化しました。

『アハハッ‥やっぱり俺が寝室に運んでやれば良かったかな?

スーツから下着の果てまで脱がして、裸で寝かし付けてやれば良かったね‥ 』


『イヤだわ‥あなた‥

裸だなんて‥風邪をひかせるつもり? 』

笑顔で私の言葉に答える妻でしたが、その目は笑っていないように見えました。


ガウン姿の妻はソファーから立ち上がり、


『さぁ‥御飯の支度をしなくっちゃ‥
昨日、御飯を炊く準備も何もしないで寝てしまったから‥。

あなた、今朝はパンとサラダ… それと作り置きのシチューで良いかしら?』

取り敢えずの不安が払拭された妻は、機嫌良く言いました。

そんな妻に、私は作り笑顔で


『いいよ… 腹ぺこだ。
早めに準備頼むよ… 』
と答え、徹夜明けの体に喝を入れようとシャワーを浴びに向かいました。

私がシャワーを浴びた後、妻も慌ただしくシャワーを浴びて、その後に二人で囲む朝の食卓では、敢えて私は妻に厭味を言う訳でも、疑問をぶつける訳でもありませんでした。

あのボイスレコーダーから分かった事もあれば、益々分からなくなった事もありました。

私は私なりのやり方で真実を調べ上げ、澤田統括部長に対して、妻悠莉子に対して、キッチリと落とし前だけは付けよう…と決意していました。

妻悠莉子が仕掛けていたボイスレコーダーの謎など、解明しなくてはならない事がたくさんあります。

あのボイスレコーダーの中には、妻のSOSとも受け取れる物もありました。

【救ってやりたい…】


長年連れ添った夫婦の情から素直にそのようにも感じています。

しかし余りにもまだまだ見えていない事が多過ぎるのです。

この日の正午、早速私は新たな行動を開始したのでした。

[Res: 39916] Re: 壊れかけの絆(21) チャイデモ 投稿日:2009/03/02 (月) 16:33
目的地に着いて、再度読み直そうとしたら、続きがあるではないですか!早速読ませていただきました。 素晴らしいです。引き込まれています。

[Res: 39916] Re: 壊れかけの絆(21) 亀ちゃん 投稿日:2009/03/02 (月) 16:40
夢中で読んでて事故りました

[Res: 39916] Re: 壊れかけの絆(21) 知りたがり 投稿日:2009/03/02 (月) 16:55
なんともかんとも、毎日気になってしょうがないですね、
亀ちゃん、大丈夫ですか?、
安全運転をお願いしときますね。