色は思案の外

[50] 色は思案の外  最後のティッシュ :2017/12/26 (火) 22:51 ID:KaDFHXQ. No.25425
少々寝不足の朝、年が明けた事を思い出したのは正月番組を映し出すテレビに目を向けた時
 (変なことに聞き耳を立てたせいで大事な事を忘れてた・・・ 最低の年越しだったわ・・・)
そんな朝でも両親は何もなかったかのように振る舞っている

 (もしかして、今朝の母さんは少し機嫌が良い?)

「凛華、何のんびりしてるの 初詣に行くわよ、仕度しなさい」
「はーい・・・」
「返事は伸ばさない!」
「はい」
 (もぉ・・・ 何か言ってやりたいけど言えない 昨日のアレは何だったのよ・・・)

寒空の下、神社に近い交差点で5分ほど待っていると聞き覚えのある声が聞こえてきた
「おう、待ったか?」
 (相変わらずね・・・ 「あけまして」より先に「おう」なんて・・・)
「待たせないでくださいよ、寒いんですから」
 (父さんも普通に答えてるし・・・)
でも母さんは、この二人には流されない
「明けましておめでとうございます」
「おう、おめでとう」
私が物心ついたころから時々家に遊びに来ていた「競馬のオジサン」
乱暴な言葉に雑な性格、たぶん歳は70近いと思うんだけど
 (この性格は死ぬまで変わらないんでしょうね・・・)
その隣で佇む女性はオジサンの奥さんで「ノリちゃん」と呼ばれている可愛いおばあちゃん
いつもニコニコしていて時々競馬のオジサンをたしなめる
 (何故この可愛らしい女性が競馬のオジサンと一緒になったの?理解できないわ・・・)
「凛華ちゃんは相変わらずデカイな」
 (無神経!)
「オジサン!私の事はどうでもいいでしょ」
「まだデカイ事を気にしてるのか?」
「もぉ・・・ ほっといてよ・・・」
 (デカイって言わないでよ・・・)
「はっはっは、デカイ事を気にするところまで母親似か 気にするほどの事じゃねぇだろ まだ子供だな」
 (この男は・・・)
「師匠、その辺で止めた方が・・・」
 (いつまで師弟ごっこしてるのよ! 子供みたいで恥ずかしいでしょ)
「なんだよ、せっかく美人に生まれたんだから自信持てって言ってるだけだろ」
「言いたい事は分かりますが、凛華の機嫌が悪くなってきてるし・・・」
「おう・・・ そうだな・・・」
「それに、背後からの威圧のオーラがハンパないです・・・ 僕の後ろで何が起こってるんですか・・・」
「何って・・・ お前の嫁が怖い顔になってきてるぞ・・・」
 (いい気味だわ 母さんの事が苦手なところも相変わらずね)
「凛華は怒った時の顔まで母親似でしょ、仁王門の前に立たされてる気分ですよ 僕の身になって言葉に気を付けてください」
 (なにが仁王門よ!)
「まぁ・・・ 怒りの持続なんて、せいぜい30分だ」
「そうなんですけどね・・・ でも、二人揃って機嫌が悪くなると2倍の威力なんですよ・・・」
「お前も大変だな」
 (なにが「大変」よ 機嫌が悪くなる母さんの気持ち、良く分かるわ 二人揃うとバカが一層バカになるのよね)

「そういえば、お前」
「なんです?」
「役員になるんだってな」
「え?なんで知ってるんですか?」
「清志に聞いたんだよ」
 (キヨシ?誰の事なの?)
「ああ、社長に聞いたんですか」
「おう、飲みに行った時にな」
 (え?競馬のオジサンと父さんの会社の社長さんって、どういう関係なの?)
「次に会ったら考え直すように言ってくださいよ 僕は部長のままでいいんですから」
「俺が口出す事じゃねぇよ」
「社長とは友達でしょ」
 (へー 友達なんだ)
「会社の事は俺とは関係無ぇだろ」
「去年まで相談役やってたでしょ」
 (え・・・)
「やらされてたんだ、専務を辞めたら悠々自適に暮らすつもりだったのによ お前は何でそんなに嫌がるんだ?出世するんだぞ」
 (うそっ 競馬のオジサンって父さんの会社の役員だったの!?競馬友達じゃなかったの!?)
「師匠も専務になった時はスネてたじゃないですか」
「まあ、そうだったかな・・・」
「それと同じですよ」
 (なんなの、この人たちは・・・ 嫌だとかスネるとか・・・ あなた達は大人でしょ! こんな二人でも重役になれる会社って一体・・・)
「でもな、清志も息子に会社を譲る準備をしてるみたいだからな」
「その事と僕とは関係ないでしょ・・・」
「関係あるだろ 四代目の面倒見てきたのはお前だ、地盤固めみたいなもんだよ」
「僕みたいな緩い地盤じゃ会社が傾きますよ」
「自分で言うなよ・・・」
 (ほんと 自分で言わないでよ・・・)

年明け早々不安にさせられた二人の会話
もし、父さんの会社が潰れたら実家の収入は母さんのパート頼りになる
弟は料理の修行中で私は未だ社会人にもなっていない

 私達じゃ実家の助けにはなれないわ・・・
 考え過ぎるところが私の悪いところって母さんに言われたけど・・・
 やっぱり心配

 (でも、なんで母さんはそんなに笑ってられるの?二人の会話を聞いて不安にならないの?)
父さんと競馬のオジサンの会話を聞いて不安を覚えた私だけど、母さんは違ってた
真っ直ぐに立った美しい姿勢に揺らぎは無く、隣のノリちゃんと男二人の会話に耳を傾けながら笑顔を見せている
その姿は大樹の様に頼りがいがあり、私が子供の頃に憧れた大人の女性

 その母さんが夜になると・・・

「昨日、イッパイしたでしょ」
「うん・・・ でも、今日もしたい気分なんだけど・・・」

見たくないのに覗き見たくなる不思議な感覚に誘われ
夜の廊下、冷たい空気の中で今日も聞き耳を立ててしまっている
私が自分の部屋に上がる前、父さんと母さんはリビングで向い合って座っていたけど
父さんは断る母さんを何度も隣に誘っていた
「今日は大人しく寝なさい」
「うん・・・ でも・・・」
「早く布団に入って目を瞑って」
「うん・・・」
 (子供じゃないんだから・・・)

「凛子さん、寝た?」
「もぉ・・・ 話しかけないでよ・・・ 目が覚めちゃったじゃない」
「ごめん・・・ そっちに行ってもいい?」
「だめ 目と口を閉じで大人しくしてなさい 直ぐに眠れるから」
「行くよ」
「だめって言ったでしょ!」
 (こういう時の父さんは強引になるのよね・・・)
「お邪魔します」
「もぉ・・・ 添い寝するだけよ」
「うん」
 (どうなの?今夜はどうなるの?)
「ちょ・・・ ちょっと・・・ 宗太くん・・・」
「ん?どうかした?」
「してるでしょ! 昨日はあんなに頑張ったのに疲れてないの?」
「うん、凛子さんを見てると元気になれるから」
「もぉ・・・」
「凛子さんの怒った顔も不機嫌な時の顔も好きだよ 笑顔はもっと好き」
「何言ってるのよ・・・」
「こっち向いて」
「うん・・・」
「あ、可愛い」
「ふふっ 変なこと言わないでよ」
「変じゃないだろ」
「もう五十半ばのオバサンよ からかわれてるみたいで面白くないわ」
 (ウソつき 本当は父さんからの褒め言葉を待ってるんでしょ・・・)
「あれ?僕より年上だった?年下だと思ってた」
「もぉ・・・ バカなこと言って・・・」
「ははっ でも、そんな気になっちゃうよ 年末は凛子さんの事ばっかり聞かれて」
「私の事?」
「うん、忘年会の時に迎えに来てくれただろ 若い連中は凛子さんの事知らないから次の日から「若くて綺麗な奥さんですね」って」
「え?そんな事言われてたの?」
「うん、だから僕が30の時に新入社員の凛子さんに手を出したって事にしてる」
 (え?母さんって父さんと同じ会社に勤めてたの?初耳だわ・・・)
「ふふっ バカね、早く本当のことを教えてあげなさい」
「えーっ 伊藤とかとも口裏合わせて楽しんでるんだけど・・・」
 (ほんと、バカね 父さんの会社ってどんな会社なのよ・・・)
「そんなウソ続かないわよ」
「ははっ 本当の事を知った時のあいつらの顔が楽しみだな 凛子さんが僕とか村上の上司だったなんて」
 (ええっ!?母さんって父さんの上司だったの!? そうよね・・・母さんって父さんより年上だものね・・・)
「ふふっ みんな手の掛る部下だったわね」
「凛子さん」
「なあに?」
「僕が一番好きな凛子さんの表情を見せて」
「え?どんな顔すればいいの?」
「キスを待つ顔」
「うん」

今夜も母さんが負けた・・・

そして二人の声の様子が変わってくる
「凛子さん」「宗太くん」と呼び合っていた二人はいつしか「凛子」「宗太さん」と呼び合うようになり
そっと寝室のドアを開けた時、指が二本入る程の隙間から片目に飛び込んできた光景は
うつ伏せに寝かされた母さんのお尻の上で、ゆっくり腰を動かす父さんの姿だった
「どうだ、凛子 年明け一発目のアナルセックスだぞ 気持ちいいか?」
「はあぁ いい いいわぁ」
 (アナル・・・ お尻の穴でセックスなんて・・・ 汚い・・・)
「いいのか?じゃぁ、何点だ?」
「ろく・・・ 60点・・・」
「これならどうだ!」
「はあぁん!70点!70点よ!」
「今から本気出すぞ!」
「あッ!あッ!ダメッ!変になっちゃうっ いやぁ!」
「凛子! 愛してるよ!」
「宗太さん!! 100点!満点よ! 満点ッ!イクーッ!」
 (点数をつける意味が分からないんだけど・・・ やっぱりバカ夫婦ね・・・)

そして二人は事が終わるとお互い強く抱き合って愛の言葉を交わす
汚いセックス、酷いセックスを見せられ、私までも汚された気分にされても
その瞬間だけは少しホッとできる

 (二人が愛し合っている事は伝わってくるけど そこに至るまでの行為が問題なのよ!)