優しい嘘

[37] Re: 優しい嘘  修2 :2013/07/19 (金) 22:50 ID:JtQLPWG2 No.18025


「私が気づいてないって思ってた?」
「何?」
「わざとなのかなぁ?私のPCでエッチなサイト見に行ってたでしょ。その履歴も消さないで。」
「うん」
「寝取られ系とか、フェチ画像の所ばっかり。あぁ、修ちゃんはそういう人だったんだって・・・。知った時、すごくショックだったんだよ・・・」
「・・・ごめん」
「直接聞くの、怖かった。『目の前で、他の男に抱かれてくれ』なんて言われたら・・・」
「そんなこと言わないよ!」
「・・・怖くて聞けなかったし、誰にも言えなかった。・・・怖かった・・・」

妻にこんなに不安を与えてしまっていたのか・・・
セックス嫌いの妻に少しは変わって欲しくて、自分の性癖のヒントを閲覧履歴という形で残したつもりだった。
履歴を見て怒った妻と話をしよう、その程度のことしか考えていなかった。

単身赴任が始まって、一人でいろいろと考えることがあった。
相変わらず・・・いや、むしろ以前に増して妻のことを愛していることに気付いていた。
心だけではなく、身体も深く繋がりたいと思うようになっていた。
だが、具体的にどうしようという考えはまとまっていなかった。

一方で、妻たちはいろいろと考え、計画したようだ。そして、私より先に行動したのだ。

「そんなもやもやした気持ちになっている時に、佑子が泊まりに来て、二人で飲んでたの」
そうだ。私が居ない間、私に代わって妻の不安な気持ちを支えてくれたのは佑子さんなのだ。

「結構酔ってきた頃に、だんだん下の方の話になってきてね・・・。で、相談したの。修ちゃんが私を誰かに抱かせようとしてるって・・・」
「そんなこと・・・!」
「待って。今はわかってる。修ちゃんの志向はそうじゃないってこと。でも当時は何もわかってなかったから」
一息つくように、ビールを口にする。妻の小振りのタンブラーが空になった。
「佑子は一生懸命話を聞いてくれた。私が泣いても泣き止むまで待っててくれた」
(佑子さんにはいくら感謝しても足りないな・・・)

「突然ね、佑子が『修司さんの残した履歴を見る必要がある』って言って、全部辿ったの。私は嫌になってたんだけど、『二人のために大事なことなんだから』って、怒られちゃった」
(二人でエロサイトを見まくったのか・・・)

「『・・・確証はないけど、わかったかも』って言った。『修司さんは想像で興奮する寝取られなんだと思う』って」
妻が覗き込むように見つめる。
「『修司さん、パソコンには詳しいんだから、エロサイトの履歴を残すのは、ひーこへのサインなんだと思う』って言ってた。それと・・・」
少し顔を赤くして、目を逸らせる。
「『ひーこのことをとても大切に思っているし、結婚当初と変わらないぐらい、もしかしたらそれ以上に、今でも好きなんだと思うよ』って・・・」
佑子さんは昔から妻のことを「ひーこ」と呼んでいる。
「『例外はあるけど、寝取られの人って、奥さんのことが大好きなんだよ。好きだからこそ、その大切な人がどうにかなってしまうことに興奮するんだ』って」
「エロサイトの履歴だけで、そんなことまで・・・?」
「あぁ、そうだよねぇ。説明抜けちゃったけど、結婚してから今までのこと、他のことも、すごく細かいことまで話し合ったの」
「細かいことって?」
「いつもどんなふうに・・・あの、・・・してるか、とか。回数、・・・月にどれぐらい・・・とか」
(この妻がよくも・・・ねぇ)
「セックスに関することで、私が断ったことは何があるか、とか、何をしたら喜んでくれた、とか・・・」
(恥ず・・・!)

「事例一つずつ、修ちゃんの気持ちを解説してくれた」
「カウンセラーみたいだな・・・」
「ほんとにそうだよ。佑子にいっぱい話聞いてもらって、アドバイス貰って・・・」
妻が涙ぐんでいる。
「私のいけない部分もいっぱい気付かされて、修ちゃんに申し訳なくて・・・」
「そんなこと・・・!」
「一番怒られたのはね、『少なすぎ』って・・・我慢できなくなって、修ちゃんが浮気しても私のせいだよって」
「浮気なんて、絶対しないよ!」
「・・・わかってる。私がちゃんとさせてあげてなくても、修ちゃんは我慢しちゃう。それがはっきりとわかったから、申し訳なくて」
「そんなに気に病まなくても・・・。夫婦って、大切なことはそれだけじゃないだろ?」
「でも、・・・うちに赤ちゃんが来ないの、それも原因だよね」
「あ・・・うん。それは・・・あるかな」

妻は一人娘だ。酒好きの義父は、一緒に飲める息子を欲しがっていたが、妻に弟はできなかった。
まだ二十歳前の娘との結婚がすんなりと進んだのも、私が酒好きだったことも影響しているのは間違いない。
聞いたことはないが、おそらく孫とも飲みたいのだろうと思った。
結婚してすぐに子ができていたら、孫が飲める年齢で、義父はまだ60代だった。

「人に話を聞いてもらうのって、大切だね・・・」
泣き笑い・・・妻が愛おしくなって、思わず力一杯抱きしめた。
「修ちゃん、ごめんね・・・ごめんね」
「なんで謝るんだよ!何も悪いことしてないだろ」
「だって、結婚してからずっと我慢させてたのに、ちっとも気付かなかった」
「それは、いいんだよ」
「良くない!夫婦なんだよ。どっちかがずっと我慢し続けるなんて・・・」
「そんなに気にしなくてもいいんだよ」
「私は嫌なの。修ちゃんが私に黙って我慢してるのなんて」
「我慢って言うけど、僕は平気だったんだよ。何かを言って秀美を傷つけてしまうことに比べれば・・・」
「傷付いたっていいじゃない! 傷なんか、治せばいいんだから」

妻は、私が我慢していたことに気付いてくれた。
それ以上に、我慢していることを黙っていたことが嫌だったのだろう。
「・・・そうだね。少し、恐れすぎていたかもしれない」
「ねぇ、私を信じて。して欲しいことは何でも言って。いっぱい話そう。そして、もっといい夫婦になろうよ・・・」
「秀美・・・ごめん」
もう一度腕に力を込めた。

私の責任だ。今なら、良くわかる。
妻は小中高と恋愛を経験せずに過ごしてきてしまっていた。それは本人や両親から聞いて知っていた。
やや特殊な事情があったが、私と結婚を決めた時も、ちゃんと恋愛をしていたわけではなかった。
結婚を決めてからでも、妻と恋愛をしなければいけなかったのだ。
男と女の営みのことを教えなければいけなかったのだ。
何も知らない妻が、セックスに嫌悪感や恐怖を抱くのは、むしろ当然だったのかもしれない。
私が妻に遠慮したせいで、・・・6年以上、時間を無駄にしてしまった気がした。
ちゃんと教えていれば、もうとっくに、秀美のあの愉快なご両親に孫を抱かせてあげられていたかもしれない・・・

妻が頭を動かし、正面から見つめる。
自然に、キスをした。ついばむような、軽いキス。そして、だんだんと激しく・・・
妻の右手が私の頭へ、左手は胸のあたりに、そして、シャツのボタンをいじりだした。
外そうとしている。いいのか?佑子さん達が来るのに。
変わったデザインのボタンホールのせいで、片手では外せない。
右手も前に回し、シャツの襟に両手をかけると、一気に引き千切った。
(ちょ、ちょっと、秀美さんてば・・・!)

妻に、有無を言わせずソファに押し倒された。Tシャツを捲り上げ、胸に口を付ける。
舐め始める。ぴちゃぴちゃと音がする。

そのまま、徐々に頭が下がって行く。まさか・・・始めてしまうのか?
妻の舌がへその辺りを通り過ぎた。
今日は、何故か全く私を見ようとしない。言葉も無い。私の反応を気にせず、勝手に、妻がやりたいようにやっている、・・・ように見える。
ベルトを外し、ジーンズとボクサーブリーフを少しだけ下げる。
そして、私ものを、・・・朝にシャワーを浴びてから何度も用を足したままのものを、じゅぽじゅぽと派手な音を立て、躊躇せず銜えた。
二十回ほど往復させて、口を離した。まだ、私と視線を合わせない。
妻がスカートのまま私の上に跨る。スカートの下に手を入れ、位置を合わせ、おそらくパンティの脇から、挿入する。良く見えなかった。
「ん・・・」
奥まで入れて、静止する。ちゃんと濡れていなかったのだろうか。辛そうな表情・・・、それから、久しぶりに私を見つめた。
『あ、忘れてた』・・・そんな感じだろうか、少しだけ、笑顔になった。
私の胸に手を付き、動き始める。

何だか、変な光景だ。
シャツを引き千切られ、下着を捲り上げられ、ジーンズを下げられ、押し倒されている男。
その男に跨り、犯している女。上も下も、服に全く乱れは無い。

しばらく単調に動いていた。私をイかせようとか、自分が良くなろうという動きではなかった。ただ、繋がっている・・・そう感じた。
妻の表情が、とても幸せそうに見えた。

「あの、ね、・・・修、ちゃん・・・」
久しぶりに妻が言葉を発した。動きながらのためか、区切りながら、
「もう一つ、秘密、教えて、あげる・・・」
「どんな秘密かな。怖いな」

妻が何を言おうとしているのか、全く予想できなかった。
ただ、ここに至っては、どんな告白でも受け入れる覚悟がとっくに出来ていた。
諭君とは関係無いが、実は好きな男がいる・・・とか言われるのか。
『寝取られ』なら、その男のことを認めてくれ、とか・・・いや、それはさすがに無いか・・・
それでも、何を言われても、衝撃を受けることは無いと思っていた。

「聞きたい?」
「うん。聞かせて」
「恥ずかしいな・・・」

しかし・・・妻が言った言葉は、私にとって、あまりにも意表を突いたものだった。


「私ね、・・・セックス、・・・好きになったかも・・・」