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[7018] 薄い壁(4) ボー太 投稿日:2009/08/07 (金) 09:50 私は心の底から水曜日の夜を待ちわびました。
会社から帰り、スーツを脱ぎながらも、私の思考が勝手にあの奥さんを探し求めます。 「今晩か..ホントかな?」 「え、何?」 「あ、いやいや何でも..」 隣にいた妻が怪訝な顔をします。11時頃というと、普段は妻が長風呂で暇を持て余している時間帯でした。半身浴やら何やらと、うちの妻はお風呂好きです。 私はこの愉しみを、最初は自分ひとりで味わいたいと考えていました。 あれから徐々にお隣さんの情報が蓄積されていきました。苗字は横山。旦那さんの名前は真治、奥さんの名前は香織さん。隣は角部屋なので、あの声が一番良く聞こえるのはこの部屋です。 「横山香織さん..」 私は一人呟いて、また卑猥な夢想をしてしまいます。あの美人があんな声を.. 「ピンポ〜ン!」 ふいにチャイムが鳴り、妻が玄関へパタパタと駆けて行きます。 「あら?今晩はー!..えぇ..はい、わざわざ済みません..はい..お待ち下さい」 突然の訪問客に妻が対応をしています。女性の声のようでした。 「あなた〜!お隣の横山さん、お裾分けですって!」 私は自分の顔がカーッと熱くなるのを感じました。今の妄想を見抜かれたような感覚を.. 「あ、こ、今晩は..」 「今晩は..これ、主人が新田さん(私達の姓)のところにって..」 「..あ、有難うございます、うわぁ!美味しそうですね」 彼女のお手製なのでしょう、湯気の立ち上るグラタンでした。本当に美味しそうです。 「あ、由佳!鍋掛けっ放しじゃ?」 「いけない!あ、香織さん有難うございます!」 「早く行かないと!」 妻がキッチンへと駆けていくと、狭い玄関に二人きりです.. 私は彼女から受け取りながら、思わず繁々と無遠慮な視線を投げつけてしまいました。何とも形容し難いオンナの香りが鼻腔をくすぐります。 「仕事終えてから晩御飯作るのも大変ですね」 「え、えぇ..いつもバタバタッて感じです、着替えもせずに..ウフフ」 彼女の格好はクリーム色のスーツでした。タイトスカートが目に染みます.. 「あ、あの..」 「え?は、はい..」 私は少し狼狽しました。私の視線が彼女に気付かれたのかと思ったのです。 「主人が、あの..新田さんに、窓を..」 香織さんは頬を染めながら、こうアドバイスをくれました。 「ま、窓を、少し開けておけば..あの、良く聞こえるって..」 今は7時。あと4時間です.. |