昔の話
31 Re: 昔の話
シン
2024/05/05 (日) 15:14
No.31342
トイレからから出ると、レジカウンター前に2人が立っていた。帰る準備をして待っていたらしい。
「あ〜、悪い、悪い。帰る準備したのか?」
「そう、酔いが回って歌えないから帰ろうって言って」
「俺もさんざん歌って酔ったからな」
「そうか、じゃ帰ろう」
と言い、階段を登って外に出た。足がもつれるほどでないが、みなほどほど酔っていた。全員落ち着いている振りをしているが、気持ちがハイになっているのがわかった。私はこれからどういう風に進めて行こうか考えながら歩いていたが、私自身もテンションが高めなので上手い案は頭から出てこなかった。
「言ってみて、なるようになるしかないか〜」
と思ってもみた。みな一通り汗もかいていたので、心地よい空気を感じていた。時間も午前様になり、だいぶ人通りが少なくなっていた。そのせいか、周囲をあまり気にしなくても良かったので、ルミ子もハイテンションで、色々と1人で喋っていたので、それに相槌を打っていた。しばらくして、酔っているせいか、ルミ子が少しつまづいてふらついてしまった。
「おいおい、危ないな〜!裕二2人で支えようよ」
と裕二に声を掛け、そこで3人で肩を組む感じで歩いて行くことにした。
「みんな〜ありがとう〜」
と言いながら、ルミ子は相変わらずたわいもないことを喋っていた。私らは適当に相槌を打って。ルミ子を両方で挟むように支えていた。ルミ子は気持ちを悟られないようにしていたのかどうかは定かではないが、3人にはその場の間が持った感があったかもしれない。ホテルに近くなり、鍵を持ったまま出掛けていたので、ホテル玄関からロビーに入り、フロントを無視してそのまま部屋に行くような感じでエレベーターに向かった。とりあえずカモフラージュのつもりで、先ずは私が1人で歩いて行き、先に裕二達をカップル風にして歩かせ、その後に私が1人で歩いて行った。チラッと見ると、裕二がルミ子の腰のあたりに手を廻しているのが見えた。そのまま知らない人同士みたいな感じで3人でエレベーターに乗った。エレベーターも廊下も静かな中、みな無口のまま移動して行った。2人とも表情は何も変わらず普通の様子に見えた。腰に手が廻っていたのかは確認出来なかった。それでも、どう考えてもそんな事は無いと思うが、もしかしたらこのまま行けるのでは?と胸のドキドキが高鳴り、それが、静かな廊下に響いてるのではないかと妄想していたのだった。部屋に入った瞬間、誰もが何故か深呼吸していて、そんな状況からふと笑いがこみ上げてきた。
「セーフ」
と声を掛けた。笑顔で見ると、いつの間にか裕二の腕もルミ子の腰には回っていなかった。どさくさ紛れだったのか、確信犯だったのか、単なる見間違えだったのか・・・まぁ、それは私のドキドキした気持ちからだったのかもしれない。