真一と桂子と恵
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ラクトアイス
2023/06/29 (木) 19:55
No.30883
IT系の会社に勤める、成田真一 29歳。
彼女いない歴29年だったが、片思い歴は24年になる。
幼稚園は、保母さんに。
小学校・中学校は、クラスのマドンナに一方的な好意を持った。
高校生になっても気に入った子が居ても、告白できずに教室の隅から見つめるだけだった。
教科書の隅には“桂子。君が好きだ。桂子”と何ページも書き込んで、自分を慰めていた。
大学生になって、彼女が出来るチャンスは何度か有ったが、恋愛音痴の真一は、恋愛下手でチャンスを潰していた。

真一の容姿は悪くなく、中の中と言ったところ。
特別目立つ事も無かったが、欠点と思われる事も無かった。

会社での仕事も、概ね良好で大きなミスも無く過ごして来た。
同僚や上司からは、「空気みたいな存在」と言われていた。
良く言えば“必要不可欠な存在”なのだが“存在感が薄い”と言う事だった。

或る日の休日。
何もする事の無い真一は、部屋でゴロゴロとしていた。

“ピンポ〜ン”

玄関のチャイムが鳴った。
真一の部屋のチャイムが鳴るのは珍しかった。
新聞の勧誘が、来る時に鳴る程度だった。

(また勧誘か)と思いながら、真一は返事をして玄関に向かう。

「宅配便です。お荷物をお持ちしました」

ドア越しに、宅配業者の声がした。

 「今、開けます」

真一は、ドアチェンを外してドアを開ける。
外には、大きな段ボール箱を抱えた男が、立っていた。

 「成田真一さんですね。お荷物です」

男は、真一に段ボール箱を差し出す。
(何も頼んだ覚えは無いが、それに見た事の無い宅配業者)と、思いながら段ボール箱を受取り宛名を見た。
確かに成田真一様となっていたが、送り主に心当たりは無かった。

真一は、送り主に心当たりは無かったが、自分の住所と名前は合っていたので、箱を開けた。
緩衝材の中から、モノを取り出してみた。
それは、マネキンの胴体のようなモノだった。
モノには、ビニール袋に入った説明書が入っていた。

 “この度は、アンケートにご協力いただき、有難うございました。抽選の結果、成田真一様が当選いたしました。
  数回に分けて商品をお送りします。組み立て方をご覧になって、組み立てて下さい。”

真一は「アンケート?」と思いながら説明書を見ながら、そのモノを組み立てた。
組立は、迷う事無く簡単に終わった。
組み立てたモノを、取り敢えず箱に戻した。
次の日。
真一が仕事を終えて帰宅すると、部屋の扉の前に段ボール箱が置いてあった。
箱に張られた送り状を見ると、前の日の物と同じだった。
真一は箱を開け、前回と同じようにモノを取り出して組立て、最初のモノと合体させた。
胴体に、手足が付いたような感じになった。