人妻菜穂子の人生
2 Re: 人妻菜穂子の人生
霧済謙
2022/07/19 (火) 04:10
No.30077


●そして2年近くが経過した



正雄のコンビニは、
最初に片桐が言った戦略の80%程度しか、出来ていないが、
それでも以前の売り上げの倍を超えていた。
当然儲かるので、益々正雄はやる気が出て、勉強して徐々に改革していった、
美人高校生は3人となり、夕方から夜にかけては、
本当にすけべな男が、沢山店にくるようになり、正雄も飯も食う暇もないくらい、
繁盛するようになった。
3人の違うタイプの美人がいれば、殆どの男の好みを網羅するという戦略。
美人高校生も他の店の時給より1.5倍なので、やめるそぶりもなく、
愛想をひたすらふりまき、それが客を呼ぶ、という好循環が生まれていた。

「あなた、この頃凄いわね売上、」
「以前とは雲泥の差ね、」
「ああ、凄いだろ、夜なんか飯を食う暇がないくらい男が押し寄せてきて、
とにかく凄いんだよ、」
「例の片桐戦略ね、」
「そうさ、打つ手打つ手が次々あたり、怖くなるくらいだよ、」
「競合がマネする心配はないの?」
「それが、少しくらいマネしても、大丈夫、戦略そのものが違うから、」
「あなたも随分自信が出てきたわね、」
「ああ、絶対いける、」

菜穂子は心底安心した。
この調子なら借金返済も早くできそうだし、
なにより正雄の顔付が違う、積立返済預金も250万となり、
他の預金も800万以上ある、
なにしろ毎月30〜50万の利益がでるようになってきた。
それに、まだ実行できていない片桐戦略が山ほど残っており、
全部実行できたら店舗を増やせを言われて、気をよくしている正雄だった。

菜穂子は、充実した毎日を送っていた。
不動産の勉強も必死に勉強したお蔭で、社員より詳しくなって驚かれるくらいだし、
投資コンサルの資格も取れそうだった。
恰好もキャリアウーマンを彷彿とさせ、麹町アセットコンサルタントの、
中心社員になりつつあった。
片桐は、菜穂子の頑張りは予想していなかったが、
ここまでくると、
この人には違う人生が歩む資格がありそうだと思うようになっていた。
なにしろ、毎日が快適だ、
スケジュールは完璧だし、知識があるから予備の打ち合わせを菜穂子にさせると、
客は最初はいぶかったが、その有能さに驚き、
最近は片桐に相談する前に案件が片付いてしまう事があるくらいになっていた。
社員の驚きは凄かった、
最初は人妻の腰掛け秘書か?、程度に思っている社員が多かったが、
最近は敬語だ(笑)、
(さすが社長の親戚だと、)
血は繋がっていないので、関係ないが。だから菜穂子が頼みごとをすると、
直ぐ片付く、あっと言う間だ。
これが会社の信頼関係なのだ、と菜穂子もつくづく思う。
快適な片桐に欠けている事、それは夜を共にする女性だった。
妻をがんでなくして7年、そろそろ新しい人を妻に迎えても
良いかな、と思い始めていた。



●片桐との出張



菜穂子は、片桐に同行して関西出張にでかけた。
既に何度も同行しており、正雄も疑うそぶりもない、
もっとも菜穂子と片桐が男女の仲になっても正雄は何も言えないだろう、
人生の救世主なのだから、・・・・

菜穂子は、片桐の事を尊敬していたし、好きになっていたが、
菜穂子のような女を相手にしてくれるはずもないと思っていた。
ちょっと前までただのおばさんだったのだから、
秘かな思いだったが、・・・・
露骨に感情を見せる程、片桐も菜穂子も愚かではなかった。
宿は、大阪の高級ホテル、
昼過ぎに大阪に着き、重要な顧客と会議、もちろん菜穂子も同席している、
「最近はこのベッピンさんが同席していないと、盛り上がりませんな、片桐はん」
こう露骨に言われ、苦笑する片桐だった。
確かに、最近の菜穂子は美しくなった。
スリムになり、健康的な笑顔が、夜の女にない、圧倒的な存在感を示していた。
出来る男は、金を出せば口説ける女とは違う存在感に興味を示すのだ。
菜穂子がどんな女かと、片桐は聞かれると、
「想像にお任せします、」
と謎めいた言葉でかわしていた。


会議は早めに終わり、
ホテルの和食レストランの個室を片桐は用意していた。
食事をしながら片桐はゆっくりと話し始めた。

「菜穂子さん、早いもので入社して2年になりますね、」
「はい、」
「最初は大変だったと思いますが、良く頑張りましたね、」
「いいえ、社長のお蔭です、」
「いや、菜穂子さんの努力と才能に、社員も驚き、私も驚くくらい成長されました、」
「正直、菜穂子さんがここまで成長するとは思わなかったので、
戸惑っている所もありましたが、ここまでくると菜穂子さんには、
違う人生もあっても良いかなと最近思うようになりました、」
「・・・・・・・」
「菜穂子さん、今迄の人生とは違う人生を歩いてみたくは無いですか?」
「それって、・・」
「そうです、私の人生のパートナーになってくれないか、という申し込みです、」
「このまま聞いて下さい、」
「私は実業家でお金もそこそこあるので、女性を口説くつもりならできます、
 しかし、お金で口説かれるような女性を相手になんかしたくもないですし、
するつもりもありません。」
「家内が無くなってから、5年になりますが、もう女性とは縁がないかな?
と思っていた所に、あなたが現れたという訳です。」
「あなたには、他の女性と違う心配りと、この2年間で見せた向上心があります、」
「私はそんなあなたに惚れました、」
「人生のパートナーとして、夜も一緒に過ごしたくなったんです。」
「あなたが私のパートナーになる事で生じる犠牲や障害も覚悟の上です、」
「私は、酔わせてあなたを抱いてから考えるというような卑怯な手は使いません、」
「菜穂子さんのこれからの人生を私と共に過ごさせて下さい、」
「私は本気です、受け入れてください、お願いします、」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
しばらく考えこんでいた菜穂子、
「社長、突然の事で戸惑っています、しばらく考えさせて下さい、」
「今日返事をしなくて構いませんか?」
「はい、驚かせてごめんなさい、」
「返事はいつでも構いません、」
「はい、」

こうしてこの日の、
ストレートで男気に溢れた菜穂子への求愛が終わった。
抱いてから考えるのではなく、抱く前に人生のパートナーとしたい、
こんな事は普通の男じゃできない、・・・・
菜穂子の身体の底から、全身が熱くなるような真剣な求愛だった、・・・

菜穂子は悩んだ、確かに片桐に会ってから、菜穂子の人生は一遍した、
なにより正雄の会社が儲かりだしたのだ、従来なら有り得そうもない事だが、
片桐の戦略なら儲からない方がぼんくらなのだという事を痛感させられた。
片桐の秘書業務も、パートナーのような扱いで、会う人は一流の人ばかりで、
それだけで人生が豊かになったし、毎日が充実している。

そして、仕事のパートナー兼秘書だけでなく、片桐の個人パートナーにもなれと。
これは妻又はそれに準ずる形を望んでいるのだと直ぐに理解したが、
・はたして私が片桐の妻に相応しいか?
・夫の正雄の扱いはどうするのか?
・子供達への報告はどうするのか?
等を考えると、結論は簡単に出そうもなかった、・・・
そこで、菜穂子は再度考えた、
私は、片桐の女になりたいのか?、なりたくないのか?
この疑問が一番大事なのだと気付いた。
この歳で、こんな真剣な求愛を、こんなに仕事の出来る男から、
求愛される女性は殆ど居ないだろう。
まして菜穂子は人妻なのだから、人妻であるという事は一緒になる事に、
障害があるという見方も出来るが、夫がいるので汚れているという見方も出来る、
そんな事も含めての求愛なのだと、・・・

誰でもが出来る訳ではないし、私は何より、片桐の事が好きだし憧れている。
今迄は自分の手の届かない存在だったが、求愛をしてくれたという事は、
一緒になれるかも知れない、という事であり、
菜穂子にとって信じられない事でもある。
少なくとも他の女性には取られたくない、こう思うと気持ちははっきり、決まった。
(片桐さんの事実上の妻になろう、)
菜穂子は決心した、数々の問題は、片桐と考えれば良い、
きっと良い解決策があるだろう、こう思うと急に気が楽になり違う思いに駆られた。

そうだ、
まだ問題がある、私はまだ片桐さんに抱かれていない。
もし抱かれた後、気に入らないと思う事もあるかも知れない、
まして私と正雄はごく普通のセックスしかした事がなく、
週末に正雄が一方的に菜穂子の中に短時間で出して終わりという
夫婦生活しかした事がない、
(片桐さんの思っている私と、大きなギャップがある場合には、どうしよう?、)
と心配になってきた。

そこで菜穂子は、
隣の部屋にいる片桐にメールした。
「人生のパートナー契約にサインしても良いのですが、トライヤルしないと、
 がっかりする可能性があると思いますが?、どうリスク回避しますか、」
と、・・最近の菜穂子らしいウイットに富んだクールなメールを出した。
返事はすぐきた、
「トライヤルしなくても、君のナイトライフが未成熟である事は想像に難くない、
 だから、仕事と同じで、最初から教育するつもりだから、何も心配いらない、
 裸の状態で入社してくれれば良い、」
「入社式は、いま直ぐに行いたいが、都合はどうか?」
「了解しました、裸になってから部屋に行きますので、
 20分待って下さい、部屋は暗くしておいて下さい、」
「待っている」
互いにウイットに富んだ、知的な会話が、
初めてのセックスをする前に出来るレベルの高さがあった。