遅かった出会い
96 二人の距離
東風
2021/12/10 (金) 14:19
No.29610
 多忙な生活をしていた山田だったが、繁忙期を乗り越え、生活は安定してきた。
趣味の競技スポーツは、生活のリズムとなっており、学生時代から続けられていた。
加えて、子供の成長に伴い、子供の競技スポーツのコーチも頼まれ、休日は、今まで以上に充実していた。珍しい事ではないが、このような子供の活動において、
保護者とコーチの間の不倫関係は珍しい事ではなかった。山田も子供の応援に熱心な母親との付き合いも増えて、懇親会などで明らかにそれが目的とは言わなくても、
その気になれば、何時でも不倫関係になれる母親は、一人や二人ではなかった。
 しかし、流石に子供を介してそういう関係になることには、抵抗が働いた。それが噂になれば、傷つくのは子供たちである。職場のそれとは大きく違った。
「据え膳食わぬは男の恥」と思うこともあったが、そこは思い留まった。幸か不幸か、山田の性のはけ口としては香の存在があったため、さほど思い留まることに大きな辛抱は必要なかった。
 逆言えば、香との関係を維持しながら、他の女性と遊ぶほどの時間がないことも事実だった。
 香と山田の関係は、長い付き合いの中から、互いのスケジュールや環境も理解できていて、楽な関係が出来ていた。
 そこに、香の浮気疑惑だけでなく、香にとっては、山田の活発な活動は嫉妬の対象でもあり、二人に適度な距離感をもたらしていた。