遅かった出会い
69 新たな風
東風
2021/10/12 (火) 14:49
No.29413
 二人が関係を持ち始めて、3年が経過した時、香は、既に転勤となり、新しい職場に移っていた。
古い体質の部署で向上心の強い香にはいら立ちを感じる日々であった。
 その1年後、山田も新しい部署となったが、新規事業のため、日々多忙を極めた。
二人の逢瀬は続いていたし、メールでの情報交換や近況の報告は続いていた。
 
 そんな時期、香は転機を迎えていた。
夫との関係は、完全に冷え切った状態の中、息子がやや不登校気味になり、思春期特有の曲がり角にあった。
本来であれば、父親がその任を果たさなければならないであろうが、消極的でその場しのぎの対応で、
母子ともに信頼できる状態ではなかった。
 こういう状況に対して、山田も理解はしていたが、非常に多忙かつストレスで胃潰瘍を患うような状態であった。
そのため、ストレスの発散で、強く香の体を求めたが、彼女に悩みに対し、上の空の部分もあった。
 また、その背景に、二人の物理的な距離から、香の浮気に対する疑念も深まっていた。

 ここから後は、後日彼女から聞いた話である。
 新しい部署は、旧態依然とした環境で向上心の高い香には仕事に遣り甲斐を感じられず、何もかもが不満だった。
それに対して、山田は新規事業の安定に向けて多忙な日々を送っていることは、社会の情報でも伝わり、
香は少なからず羨ましく思っていた。

 香の部署のそのような状況には、香だけでなく、若手の社員からも同様の不満が出ていたが、ベテラン社員の壁は厚く、少数派である香と数人の者は、表立った行動を控えつつも、悩みを共有する仲間が出来ていた。
その中でも特に同じグループの大宮は、香の愚痴を聞く良き相談相手となっていた。しかし、大宮は、香より10歳年下の男性社員、高校大学と体育会で、常に冗談を言って周りの雰囲気を和ませる存在として目立っていた。
 こんな状況でも、香は、グループ内のグループウエアのシステムの担当となり、大宮はその補佐的な立場となり、通常の業務の後に二人で残業する機会が多くなった。
この状況は、数年前の山田と香の関係にも似たものがあり、仕事上のこと以外でも互いに話をする機会が増えていった。特に、香の息子の思春期の問題は、夫が協力的でない状況で、年齢の近い山田に意見を求める中、夫婦の問題についても説明せざるを得ないこととなった。
 大宮は、香の容姿もさることながら、夫婦関係が良くないということを香から聞かされ、香に対する好意を強く持つようになった。
 
 香も夫だけでなく、過去には彼女に好意を寄せる男が少なからずいた。単純にセックスが目的で言い寄ってくる男も複数いた。そんな経験から、大宮がどのような目で自分を見ているのかは理解してたが、その好意に甘えてしまっている自分を理解しながら、流されていた。