遅かった出会い
42 疑惑
東風
2021/09/04 (土) 18:11
No.29223
確かに香の存在は、職場でも目を引く存在となってきた。
女性社員の中でも
「あの人、最近妙に綺麗になってきたよね。恋をすると女は怖いよねぇ」
と、陰口を叩かれているのを山田も耳にした。男性の若手社員が香を目で追う姿や、
年輩の管理職のおじさんが何かと香を呼びつける。 やっかむ若い女子社員が出てきたのも無理はない。
 そんな中、事件が起きた。

 山田が若手の女子社員と遅くまで残業をして、ひと仕事終わった時、おもむろに女子社員が悩みを打ち明けた。
「私、営業の洋二君と付き合ってるのしってます?」
「あ、そうだったの?中がいいのは知ってたけど・・・」
洋二は、普段から明るい男で、香よりも10歳ほど若かった。同じ部署に所属し、飲み会や接待などで夜も一緒になることも多く、山田も香も後輩として可愛がっていた。
風防もちょっとしたイケメンで、軽い男であったが、それを隠そうとはしないところが憎めない部分でもあった。
そんな洋二が何かあれば香に近づこうとしているのは、山田も知っていたし、香からも聞いていたが、彼独特のキャラクター表現かと思っていた。
「先週、彼の部屋に行ったら、香さんが髪の毛を止めている大きなコサージュみたいなものがあるじゃないですかぁ、おばさんが付けている、それが彼の部屋にあったんですよ。おまけに香さんの課のスケジュールが壁に貼って合って、絶対、あの二人出来てますよ。」
とのこと。
 山田は顔から血の気が引いた。しかし、平静を装い
「えー、まさかあ・・・、幾つ違うと思ってるんだぁ(笑)、冗談でしょ」
「山田さんは、飲み会もさらっと断るけど、結構、香さんは若い人にも付き合ってくれるのは知ってますよね、そんなときもずっとあの二人は、隣に座ってるんですよ。」
彼女が洋二に弄ばれているのは本人も感じていて、腹いせを男性職員に人気の香にぶつけたことは明らかだが、あり得ない話ではなかった。