遅かった出会い
2 入院
東風
2020/08/02 (日) 18:52
No.27640
山田との日帰り出張は、片道三時間弱のちょっとハードなスケジュール。泊まりで行きたいところだが、家庭のある香には難しいことは周囲も分かっており、先方も了解してくれていた。
仕事も順調に終え、夜の8時前には帰宅できた。母親を持ち詫びた長男を抱き上げた時、腹痛に襲われた。
切迫流産との診断。即、入院となった。流産ではないが、流産の危険性があり、安定期に入るまでは入院が必要とのことだった。

「すみません。僕が無理な日程をお願いしてしまって」
山田は、香の夫に電話で謝った。
「いやいや、流産した訳じゃないし、妊娠していたことちゃんと報告しなかったあいつが悪いんだよ。」
香の夫は、香よりは小さな会社であったが、すでにそこそこの地位にあり、普段から、大きな組織の歯車として働いている二人に同情するような目で見ていた。
3ヶ月の入院を経て、お腹の膨らみが目立つ頃、香は職場復帰し、そして、産前休暇を経て、希望通り女の子を出産して、育児休暇に入った。
そして、香の代わりに山田とコンビを組むようになった女性と山田は結婚をした。
育児休暇が終わって、復帰した直後、二人の結婚式に出席し、山田に長女が出来た時は、香がお下がりの服を届けるなど、家族ぐるみの付き合いが始まった。
しかし、山田は、妻は退職し、専業主婦となった。そして、再び山田と香は、以前のコンビとなることが多くなった。