挿入捜査官・夏海
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Re: 挿入捜査官・夏海
カカオカ
2020/01/16 (木) 22:22
No.27396
「婦人警官や淫乱痴女も、ぜんぶ『私』……否定すべきことじゃないものね」
そう気付いてしまった。
『人の本性』などというものは、同じ『丸』ではあってもコインの如く裏表のハッキリしたものではなく、むしろ球体のようなものであるのだろう。
地続きの面には、善良な日常を送る天使のような自分と、そして他人には見られることも憚れる悪魔のような自分とがその表面にグラデーションを描いて存在している。夏海の中の警官も淫乱痴女もそして本来の自分も、すべては否定や肯定の概念など及ばない問題であるのだ。
「全部ひっくるめて、『私』は私ってことね……」
それに気付いてしまったこと、受け入れてしまったことが少し寂しいような悲しいような、それでもなぜか心晴れやかな開放感もまた実感している自分がいた。
やがては鼻を鳴らすようにため息を一つして公衆電話を振り切りと、夏海は背後上方の乗り継ぎ案内板を望む。
「私の飛行機が出るまで、あと2時間くらいあるわね」
自分の機のフライト時刻を確認しては、時間がまだあることになぜか安堵を覚える夏海。
そこから広大なラウンジの雑踏へ視線を巡らせると、まるで甘いもので見つけたかのよう夏海は微笑んでそこへと歩み出していた。
「ふふ、んふふふ……」
夏海の目に映る待合ラウンジの光景が追憶の一週間と重なる。
人種の坩堝には老若も種族も問わず選り取りに――
「ふふふ……あと2時間くらい、あるのね」
そこには、数多くの『男』達がいた。
【 終 】