挿入捜査官・夏海
17 Re: 挿入捜査官・夏海
カカオカ
2020/01/16 (木) 22:20
No.27395
 一方ではそんな夏海からの返事を取りあぐねて尋ね返してくる夫に、夏海も慌てふためいては取り繕う。

「あ、ち、違うの! メンマと濃厚ラーメンって言ったのよ!」

 夏海の返事に受話器越しの夫もまた笑い声を返すと、『再会したらラーメンを食べに行こう』と約束して電話を切った。
 そうして受話器をゆっくりと戻しながら、

「なんであんなことを……」

 夏海は深くため息をつく――自問していた。
 なぜあんな台詞が口をついて出たのか?
 今回の役割である『淫乱痴女』は演技であったはずである。決して自分の本性ではない。忌むべき一週間であったはずだった。

「そんなことない……そんなことないわ」

 公衆電話に戻した受話器へなおも手をかけたまま、夏海は何度も頭(かぶり)を振っては今の自分の言動を『間違えである』と叱責とする。

「だって……楽しいわけがないじゃない。あんな男の人たちに囲まれて……」

 ふと脳裏によみがえる記憶の閃光に夏海は眉をひそめる。
 その光景の中にある自分はといえば――男達の中心で大きく口を開いては射精を待ち望む自分であり――アナルの中に挿入されていた汚物まみれのペニスを喜んで口取りしている自分であり――地に寝そべっては竹の様にペニスを立てて待機する男達の中を、片端から騎乗位に挿入しては回る自分―――その記憶の中の夏海はすべて、


『チンポ最高よぉぉぉッッ!!』


 嗤っていた。

「うそ……違うわ。違う! あんなの気持ち良くなんかなかった……私は愉しんでなんてない……」

 しかしながら、自分を輪姦した男達を誰一人として忘れることなく追憶される任務の記憶は――その全てが甘美なものとして脳内に再生されていた。
 むせ返るような精液の青臭さや舌上に広がるペニスの強い塩気と酸味――そして膣を直腸を問わずに粘膜を刺激しては夏海の肉を突きえぐったペニス達の熱と感触とを思い出すと、

「んん……んあぁぁぅぅぅぅッ!」

 その回想に夏海は、公共の場であることの憚りもなく絶頂を迎えてしまうのだった。
 そんな声に周囲の目も夏海へと集まるがそれも一時のこと、

「はぁはぁはぁ………」

 場のラウンジを行き交う人の流れが一巡すると、もはや公衆電話にすがり付いては絶頂の余韻に震える夏海など誰も注視はしなかった。
 そしてその場に一人、夏海は熱に浮かされた肉体と頭とを持て余してはただただ呼吸を荒げるばかり……。双頭に先太りした受話器の形状に何やら思いを馳せては、カラカラに乾いた喉に生唾を大きく呑み込む。

 自分の中の境界が曖昧になり出したのはいつの頃からだろう?
 婦人警官として任務に就きだした頃か、結婚して出産を果たした頃か、あるいはもっとずっと前から、既に自分というものを見失なっていたのか……。
 もはや記憶すらたどれないはるか昔の自分に思いを馳せる夏海は、そんな曖昧な『本当の自分の人生』よりも、今日までの『淫乱痴女』として過ごしたペルソナの記憶の方が憶えも鮮明に頭の中に残っていることに気付いてしまった。
 そうして小さくため息をつく。