色は思案の外
5 色は思案の外
最後のティッシュ
2017/08/20 (日) 15:06
No.24894
ザワついた結婚発表の翌日の朝、僕は体を揺すられ起こされた
そこに甘い言葉は無い
「起きなさい、時間よ」
「うぅ・・・ん」
時計の針は6時を指している、とりあえず起き上がりベッドの上で胡坐をかいた
この時間の起床は凛子さんと暮らし始めた二週間前から続いているから慣れてきたけどね
凛子さん曰く、脳は遅れて目覚めるから早めに起きて仕事に備えるという事らしい
朝食の声がかかるまで時間がある、ベッドの上でコンドームの呪縛を解かれた昨晩の事を振り返った
凛子さんの中には出していない、もう少し二人の新婚生活を楽しみたいからね
もう朝起ちなのか性的な勃起なのか判断できないよ 元気な愚息だ

思い返せば凛子さんが初めて僕のチンポで絶頂を迎えてくれたのは、籍を入れる前の凛子さんの部屋でのセックスだった
初めて招かれた彼女の部屋は質素で、女物の衣服や化粧品が置いてなければ男の部屋とも見れる凛子さんらしい部屋だ
慣れた自分の部屋という事でリラックスしていたのか、いつもより表情が柔らかい
オフの凛子さんに寛ぎレベルがある事を初めて知った日のセックスは、始まりのキスから少し違っていた気がした
ほんの僅かな違いだけどね
部屋は薄暗くシーツから凛子さんの香りが漂ってくる
凛子さんのベッドに裸で横たわっていると思うだけで、僕は何とも言えない達成感を感じていたけど
僕の舌の先が触れている彼女の舌が申し訳なさげに動いている
今までの完全に受け身の彼女からすれば、これは感動的な進展だ
思い切ってフェラチオをお願いすると、二呼吸ほどの間は躊躇していたけど凛子さんは僕のお願いに応えてくれた
お世辞にも上手とは言えないフェラチオだったけど
本当に経験が無かったんだなと感じたフェラチオは初々しく、僕は凛子さんの心意気に応える為に気持ちで勃起を維持した事は言うまでもない
大仕事をやってのけたというような凛子さんの安堵の表情は可愛く、直ぐにでも繋がりたい気持ちはあったけど
僕はその昂る気持ちを愛撫に向けた
いよいよ凛子さんと繋がる時がきて、コンドームを被せ終えた時に目に入った凛子さんの表情は今でも忘れられない
繋がる前にキスをしようと顔を近付けた時だった
ベッドの上は薄暗いと言ってもコンドームの装着に支障がないほどの明かりはある
ほの暗いベッドの上に浮かび上がった彼女の表情は
唇を少し開いて僕のキスを待っている、薄く開いた瞼の奥には濡れた瞳が妖しく輝いている
数秒の間だったかもしれない、僕はキスもせずに凛子さんの表情に見惚れていると
彼女は目と口を閉じて横を向いてしまった
またやってしまった、これでは初めて凛子さんの裸体に見惚れてしまった時と同じじゃないか

 でも僕は悪くない、妖艶な表情を見せた凛子さんが悪いんだよ

横を向いてしまった彼女の頬に手を当て、僕の方に顔を向かせて軽くキスをした
開いた凛子さんの脚の間に僕の腰を沈めていくと、勃起したチンポが膣の温もりに包まれていく
でも、温もりに包まれたのはチンポだけじゃない
体を前に倒すと凛子さんの腕が僕の背中に回ってきて長い腕に抱き包まれ
正上位で抱き合ったセックスには、それまでの一方的なセックスとは比べる事ができない程の感激を与えられた
凛子さんの長い腕が僕を強く抱いてきている、今夜こそ彼女にセックスで絶頂を迎えてもらう事ができるかもしれない
そうなると僕と凛子さんの間にあるゴムの薄皮が憎い

 こんなに良いセックスなのに、なんでお前がいるんだ 被せたのは僕自身の手だけど・・・

回想の途中だけど凛子さんから朝食の声が掛った
今日が主婦一日目となる凛子さんがテーブルに朝食を並べている
朝食を食べ終えて僕は仕事に出る準備をするけど、凛子さんはテーブルの上を片付けている
昨日までは一緒に家を出ていたのに今日からは僕一人なんだよね
凛子さんがいない会社に向かうのは、なんだか不思議な感じがしたが
それより、いってらっしゃいのキスが無かったのは予想外だったよ

 新婚さんというのは甘い生活の中に存在するものじゃないのか
 もしかして、昨日まで上司と部下の関係だったのが仇となっているのか?
 いや、そうじゃない 凛子さんは甘え下手だ、そのうち新婚らしくなるさ

不安を振り払い、とりあえず自分を納得させた

新居に引っ越してから朝は15分早く家を出なければなくなった
電車を降りて駅を出ると「おはようございます」と後輩の伊藤が声を掛けてきた
通勤の電車が変わると朝に合わせることになる顔も変わるわけだが・・・
「なぁ、僕と凛子さんが一緒に降りてくること知ってただろ」
「はい、見かけてましたけど主任が一緒だったから怖くて見なかった事にしてました」
 (正直なヤツだ・・・)
「毎朝一緒だぞ、変だと思わなかったのか?」
「たまたまかな、と」
「そうか」
 (いや、二週間毎朝だぞ、もっと深く考えろよ・・・)
「野上さんって主任の事を「凛子さん」って呼んでるんですね」
「うん、まぁ・・・ あ、凛子さんはもう主任じゃないから」
「そうですよね、あの「吉田主任」が居ないと思うと会社に向かう足が軽くなりますよ」
「はは・・・」
 (気持ちは分からんでもないが、正直すぎるのもいい加減にしろよ 僕はその「吉田主任」の夫だぞ・・・)

 まぁいい 今日は仕事中に色んな邪魔が入りそうだが構っている暇は無い
 今日は打ち合わせの予定は入ってない、思い通りに仕事が進むはずだ
 今日の出来次第で明日の土曜は休める
 明日は一日中家に居なければならない理由が僕にはある

冷やかしの声を払いのけ今までにないほどの仕事量をこなし、2時間ほど残業したが土曜の休みは確保できた
何とも言えない達成感を感じながら凛子さんが待つ家に向かう
そういえば、凛子さんは今日一日何をしていたんだろう 帰ったら聞いてみよう
「おかえり、早かったわね」
「うん」
仕事の事を理解してもらえてるとはいえ、8時前の帰宅に「早かったわね」とは・・・
「明日も仕事?」
「明日は休める」
「そう」
 (今日は頑張ったんだ 上司の立場から僕の雄姿を見てもらいたかった)
テーブルに並んだのはレンジで温め直された僕一人分だけの晩御飯だ
「早く食べてお風呂に入って」
「うん」
「食べ終わったら、お皿はお弁当箱と一緒に流しに持って行ってね」
「うん」
 (今日は愛妻弁当デビューだったのに感想は聞いてくれないのか・・・)

結婚を決めてから半年の間は色々と試食させられ、事細やかな感想を求められていたので聞く必要がなかったのだろうか
それにしても、僕が思い描いていた新婚の甘い生活とは何か違う気が・・・
僕に食事を与えた凛子さんはリビングにヨガマットを敷きヨガのポーズをとりはじめた
自律神経を整えたり疲れやストレスを解消する効果があるらしいけど、遠目に見ている僕にとっても目の保養になる
175cmの長身で高レベルのプロポーションが織り成すちょっとエロいポーズは
初めて見た時、僕の理性を破壊し愚息に活力を与えるほどの威力だった
「ふざけないで!」と一喝されてしまった二週間前の出来事が遠い昔の事のように思えるよ
今夜の僕には温め直された手料理を堪能しながら、ネットで注文したブツを受け取るイメージを膨らませる余裕がある

 その四つん這いになってお尻を上げるポーズ、お尻を撫でたら怒ったよね
 ベッドの上ではどうかな?明日の夜が楽しみだよ、凛子さん

空になった食器と弁当箱をキッチンの流しに置き、まだヨガ中の凛子さんをお風呂に誘ってみる
「お風呂一緒に入ろうか」
「片付けがあるから先に入って」
「うん・・・」
脱衣所で服を脱ぎながら「ヨガと食器を洗い終えるのを待てばよかった」と後悔の独り言を呟いた
一緒に生活し始めて二週間経つが、「いちゃいちゃ」や「甘い」といった言葉が家の中に見当たらない

 まぁ、明日ぐらいから本格的な新婚生活になるんだろうな・・・

少々の不安を抱え、現状を変えようと湯船に浸かりながら思考を巡らせる
主婦初日の凛子さんは少し時間ができたのでスポーツジムに行ってきたと言っていた
他に趣味と言えるものが無い事は知っている、仕事人間だったからね
凛子さんはどんな気分だったんだろう、リフレッシュできたのか忙しくしている方が性に合っているのか
お風呂から上がると凛子さんはキッチンに立ち洗った弁当箱を拭いている
「お先」
「何か飲む?」
「うん、お茶」
後は歯を磨いて寝るだけだが、リビングでお茶を飲みながら凛子さんがお風呂から上がってくるのを待つ
「まだ寝てなかったの?」
「あ、うん」
お風呂上がりの凛子さんが湯飲みを持ってきてテーブルの向こうに腰を下ろした
寝る前のひと時に二人向い合ってお茶を飲む

 いちゃいちゃが無くても、これはこれで良いかもしれないな

「今日はジムに行っただけ?」
「ええ、どこまでお掃除すればいいのか分からなくて思うように時間が作れなくて」
「そうなんだ、時間に余裕ができたら料理教室に通ってみれば?」
「それって、どういう意味?」
 (マズイ・・・ 機嫌が悪くなった時の口調だ そうじゃないんだ・・・)
「料理してるとき楽しそうにしてるから、好きなんじゃないかなと思って・・・」
「そうね でも、パートにも出たいわ」
 (やっぱり仕事が好きなのかな?)
「両方やれば?」
「そんな時間ないわよ」
「じゃぁ、優先順位を決めるとして 何から?」
「う〜ん、パートかな・・・」
 (お、珍しく答えに迷った)
「パートの合間に料理教室だね、ジムの会費も勿体ないから時間見て通えばいいよ」
「そんなに何でもできないわよ、家の事にも慣れてないのに」
 (そんな事言いながら少し嬉しそうな顔をしてるよ、やっぱり忙しくしている方が性に合ってるのかな)
「家の事に慣れてからでいいよ、ご近所さんとの付き合いもあるから大変なんじゃない?」
「そうね、考えとくわ」
 (凛子さんがパートって勿体ない気がするな、まだフルタイムで働く主任のイメージがあるからかな)
「そろそろ寝る?」
「・・・そうね」
 (なんだ!?機嫌直ったんじゃないのか?今の感じは・・・)
「どうかした?」
「どうもしないわ、湯飲みを片付けたら直ぐに寝室に来て」
「はい・・・」
 (何なんだ・・・)
凛子さんがリビングから出て行くと、僕は二つの湯飲みを洗ってから寝室に向かった
扉を開けると凛子さんはベッドの上で背筋を伸ばして正座している
目に映っているのは気を張っている凛子さんの姿だ 僕も鈍感じゃない、これは叱られる前兆と思われる

 僕は何をやらかしたんだ・・・
 凛子さんの前に置かれている箱は まさか・・・

「何してるの 早くこっちに来なさい」
「はい・・・」
「今夜は仕事で疲れていると思ったから明日にしようと思ってたけど」
「なら明日にしよう」
「いえ、今説明して」
 (注文から四日ほどかかるって書いてあっただろ!今日はまだ三日目だぞ!)
「それは、夜の生活に刺激を与えるアイテムでして・・・」
「これは何?」
「アイマスクです・・・」
「これは?」
「ディルドです・・・」
「次は、これ」
「それはローションです」
「これ何なの?」
「それは手や足を拘束する枷ですね 何でその荷物開けたんだよ・・・」
「見られて困る物でも買ったの?」
「僕は見られて困ってるじゃないか 順番があるだろ、それとなく話題を振って一緒に箱を開けて驚いてもらうという」
「ええ、開けてみて驚いたわ」
「そこは一緒に開けて「今日はこれ使ってみる?」みたいな会話をしながら」
「座って」
「はい・・・」
開封された箱を挟んで凛子さんの正面で胡坐をかくと、背筋を伸ばし正座している彼女に見下ろされる形になる
「これで誰と楽しもうとしてたの?」
「誰って、さっき話した通り凛子さんと・・・」
「こんなもの私が受け入れると思ってるの?」
「買ってしまえば何とかなるかな・・・と」
「何ともならないわ」
「でも、お試しという事で・・・」
 (うわぁ・・・ 眉間に力が入ってきている・・・ 激怒のカウントダウンが始まったか)
「つまらない?」
「え?」
「刺激が何とかって言ったでしょ・・・」
「それは・・・」
 (あれ・・・怒ってないのか?)
「私に飽きてきたからこんな物買ったんじゃないの?」
「いやいや、違うよ 飽きてなんかないよ、そうじゃなくて」
「でも・・・ それならこんな物買う必要ないでしょ・・・」
 (そっちにいったのか!? 考えすぎだよ、こういう事にはネガティブになる所があるんだよな・・・)

眉をひそめた表情が怒りの感情ではなく別の感情を押さえているものだと感じた時
もっと上手に説明すれば良かったと深く反省した
そして、いま僕が座っているベッドは凛子さんのベッドだが
ここも僕のホームグラウンドである事を確信した
順番が変わってしまったが問題は無い
開封されてしまった箱はベッドの隅に除けた
「とりあえず横になろうか」
「そんな気分じゃないから・・・」
「いいから」
凛子さんの肩を掴んでゆっくりと後ろに倒していく
普段の僕は凛子さんに引っ張られている感が強いが、この時だけは僕が主導して進める事ができる
最初の頃は不思議な感じがした、普段の印象から僕の方が押し倒されて襲われるんじゃないのかと思っていたけど
ふたを開けてみれば凛子さんは全くの受け身で、彼女の方から誘ってきたのは一回だけ
初めて凛子さんと繋がったあの夜だけだ、あれは凛子さんが先にお風呂に入って僕を誘ったと考えてもいいよね
その後は僕から誘ってばかりで、フェラも僕からお願いした時だけしてくれる
でもセックスが嫌いってわけじゃないと思うんだ

凛子さんを腕枕に誘うと僕の肩の辺りに彼女の顔が来る
身長は僕と同じで並んで歩けば姿勢の良い彼女の頭が僕より高くなるけど
でも、この時だけは僕の背が凛子さんより高くなった気分になれるお気に入りのポジションだ
柔らかいパジャマの生地に、その下から伝わってくる凛子さんの肌の温もり
このままキスをしたいけど、我慢して話し合わなければならない事がある
凛子さんの方も、僕の腕に頭を預けてくれたところを見ると僕の話を聞きたいんだと思う
何事も最初が肝心だ
僕の正直な気持ちを彼女に聞いてもらうのなら、新しい生活が始まったばかりの今しかない

「凛子さんを拘束してみたかったんだ」
 (いや、違う! それは次の段階の話しだ・・・)
「うん・・・」
 (え?「うん」って答えたよね?いいのか!?)
「これから先の事を考えると、そういう遊びも必要かなって思ったんだけど・・・」
「うん」
「別に変わった事をしなくても満足してるんだよ、昨日は二回もイッてくれたよね?」
「うん」
「自分で言うのも何だけど、僕と凛子さんのセックスの相性は良いと思うんだ」
「うん」
「でも、マンネリ化とかセックスレスとかよく聞くし 何となく心配になって・・・」
「うん・・・」
 (「うん」しか言ってくれない・・・ さっきの「うん」も只の相槌だったのか・・・)
「箱の中身で何か気になる物あった?」
「アイマスク・・・」
 (比較的ソフトなものを選びましたね・・・)
「アイマスク使ってみる?」
凛子さんは僕の腕の上で顔を小さく振った
「今夜は・・・」
「うん、そうだね 今夜はいつも通りでいいか」
「いいの?」
「うん」
「本当に?」
「いいよ 嫌々することじゃないから」
「ふふっ 前にもそんな事言ってくれた」
「ん?いつ?」
「初めて宗太くんの部屋に泊まった時、言ってくれたでしょ」
「そうだったかな?」
「うん、キスして」
凛子さんからのキスのおねだり、相変わらず可愛いね