色は思案の外
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色は思案の外
最後のティッシュ
2017/08/31 (木) 23:38
No.24934
二日目の観光は予定通り、ネットで調べた食事処に入ったのも予定通り
昨夜の事がなかったら、僕はどんな気分で一日を過ごせていたのだろう
嗚呼、昨日の夕食からやり直したい・・・
昨夜の事は無かったかのような、いつもと変わらない凛子さんの様子だけが救いだ
競馬で得た資金にものをいわせ、夕食後から最終まで借り切った家族風呂は檜風呂で浴室は思っていたよりも広く感じた
家の風呂では一緒に入っても身体を洗うのは各々になっていたけど、僕らはお互いの身体を洗い合い
身体を洗い合った後に入った湯船は、僕ら二人だけで入るには広すぎるような感じがする
あの事を話しあうなら今しかない
「思ってたより広いね」
「そうね」
「子供ならあと二人ぐらい入っても大丈夫かな」
「ええ、そうね」
「まぁ・・・ そういう事も考えてたりするんだけど・・・」
「うん」
「あ、もしかすると昨日のセックスで出来たんじゃない?」
「どうかしら、今は妊娠し難い時期だから」
「そうか・・・」
この旅行で凛子さんと話し合いたかった事は短い会話で終わってしまったが
でも、凛子さんは僕から話を切り出す前から子作りの事は意識していた様子だった
そして、凛子さんの口から思ってもいなかった言葉が出てきた
「最近はお仕事頑張ってるみたいね」
「ん?そうかな?」
「ええ、前と比べると帰ってくる時間が早くなってるじゃない」
「それは「出来立ての料理を食べたかったら早く帰ってきなさい」って言われてるから・・・」
「ふふっ 当然よ、宗太くんに合わせて私の夕食の時間を変える気は無いわ」
「厳しいなぁ・・・」
そう答えたけど、凛子さんは僕と結婚して生活の全てを変えてくれたんだ
僕も少しぐらい変わらないと立つ瀬がない
「もっと頑張って、もっと早く帰れるようにするよ」
「頑張るのは良いけど無理しちゃダメよ」
「うん、テキトーに頑張る」
「ええ、力を抜いてる方が宗太くんらしいわ それでも仕事は出来ちゃうんだから」
(お!もしかして褒められた?)
どうやら僕は褒められたようだ、嬉しいけど凛子さんが主任だった時に頼れる部下だと思われたかった事が心残りでもある
部屋に戻ると凛子さんが隣に腰を下ろした
風呂ではお互い裸同士でも性的な興奮はなかったけど
こうして浴衣越しに肩を着け合うと変に気分が昂ってくる なんだか不思議な感覚だね
「お願いがあるんだけど・・・」
「なあに?」
(ああ・・・ 乗り気の時の凛子さんの返事だ ここでお願いしてもいいのか?機嫌を損ねないか?)
「ノーブラになって欲しいんだ・・・」
「急にどうしたの?」
「そういうシチュエーションが欲しいんだ」
「朝はパンティーも着けてなかったのよ 見てたでしょ」
「そうだったけど・・・」
「仕方ないわね いいわよ」
凛子さんが浴衣の襟に手を掛けた
どうやら僕の隣でブラジャーを外そうとしているようだが、それは僕の理想とは掛け離れた行為だ
「まって 僕から見えないところでノーブラになってきて」
「どこで脱いでも同じでしょ」
「ごめん でも、そこが大事なところなんだ」
「何が違うのよ」
「何って言われても・・・」
「もぉ・・・ 面倒ね」
凛子さんが立ち上がった 僕の要求を聞き入れてくれるようだ
(お手数おかけしますが 宜しくお願いします・・・)
凛子さんは布団が敷いてある方へ向かい襖の陰に隠れた
ほんの数秒だったと思う、僕は葛藤した
ノーブラだけでいいのか?
今の凛子さんなら何を頼んでも聞き入れてくれるかもしれない
でも、ここで機嫌を損ねたら・・・
「あの・・・ もう一つお願いしてもいいですか?」
「だめよ、どうせロクな事じゃないんでしょ」
「はい・・・」
「もぉ 言ってみて」
「だけど・・・」
「聞こえなかった?言いなさい」
「はい・・・ ノーパンなんですけど・・・」
「改まって何かと思ったら お願いって、そんな事?」
「はい・・・」
「それを言うのに、何をためらってたのよ」
「はい・・・ すいません・・・」
「いいわよ」
「えっ!」
「ブラジャーを外すより簡単だわ」
(あ、そういう事か・・・)
襖の陰から凛子さんが姿を現した
相変わらず綺麗な立ち姿だけど、浴衣の下には何も身に着けていないと思うと一味違って見える
「これでいいの?」
「うん、どんな感じ?」
「んー・・・ 変な感じ・・・」
下着を脱ぎたてで意識しているのか所作も声も艶っぽく感じる
再び僕の隣に腰を下ろした凛子さんが少し長めの息を静かに吐いた
「女同士ってどうだった?」
「え?」
「昨日の事」
「話したでしょ・・・」
「良かったとかそういう事じゃなくて、僕とどう違ったのかなと思って」
「うん・・・ それは・・・」
「僕のどこが物足らないのか教えて欲しいんだけど」
「ごめんなさい、あれは・・・」
「あ、いや いいんだ、凛子さんからこういう事話してくれないから良い機会だと思って」
「うん・・・」
「僕は凛子さんとのセックスに満足してるけど、凛子さんがどう感じているのかを知りたいんだ」
「うん」
「凛子さんに満足してもらうセックスが僕にとって良いセックスだからね」
「うん」
「この先、僕ができる事で凛子さんの為になる事なら遠慮しなくていいよ」
「うん 言っていい?」
「あ、柔らかいオッパイとか無理だから僕ができる範囲で」
「ふふっ オッパイが欲しくなったら恵美さんか加奈さんにお願いするわ」
「はは・・・ それで?」
「先ず一つ目は愛撫よ」
「うん」
(先ず?一つ目?)
「一つ一つにもう少し時間をかけて欲しいの 良くなってきたと思ったら別のところに行っちゃうから気持ちが追い付かないのよ」
「うん・・・」
(ハッキリ言うね・・・ そういえば最近はチョット雑になってたかな したい事が多いから・・・)
「それに、変わった事をする時は先に言って いきなり綿棒をお尻に入れられてもビックリしただけだったわ」
「はい・・・」
「アイマスクを着けてたから何されてるのか分からなくて怖いだけだったのよ」
「ごめん・・・」
(その事に関しては既に小一時間説教されてますけど・・・ しかも、旅行の話をした日だから何週間か前の事ですよね・・・)
「それと、気が乗らない日もあるの、分かってくれてるの?」
「うん・・・」
「そういう時は少し考えて 我慢するか上手に誘って私をその気にさせて」
「はい・・・」
(難しいな・・・)
「それと」
「うん・・・」
(まだ何かあるのか・・・)
「昨日のセックスは良かったわ」
「え?」
「初めて宗太くんに抱かれた時の事を思いだしちゃった」
「ああ・・・ あの時は夢中で・・・」
「そうね、宗太くんの気持ちが凄く伝わってきたわ」
「ふ〜ん、あんな感じがいいのか」
「ええ、愛撫が良ければ満点だったわよ」
(凛子さんの好みは愛撫に時間をかけて・・・ 昨日のセックスか・・・難しいな・・・)
「よし、今日は満点目指してみるか」
「ふふっ 私の採点は厳しいわよ」
「はは・・・」
(本当に厳しそうだ・・・)
せっかく凛子さんに下着を脱いでもらったというのにエロい雰囲気は吹っ飛んだ
でも、こういう雰囲気で始めるのもいいかもしれない
ちょっとエロい話をしながら触り合ったり軽くキスをしたり、僕らは座布団の上でイチャついた
これは僕が恋焦がれていた二人の関係で、彼女もこの状況を楽しんでいるみたいだけど
毎回この状態になるとは限らない事はわかっているんだ
今までも凛子さんが僕に甘えてきているような雰囲気になった事は何度もあったけど
それは偶然の産物で、僕が意識して凛子さんをその気にさせたわけじゃない
彼女の怒りのツボは大体わかってるけど、甘えのツボはサッパリわからないんだよね
今日なんて叱られてたかと思えばイチャイチャできちゃったし 難しいよ
僕らは部屋の明かりを落とし、枕元の行燈の明かりだけになった布団の上に横になった
薄暗い布団の上で凛子さんの表情はよく見えているけど
それよりも僕の股間の上に置かれた、初めてとも言える積極的な凛子さんの手に気が行ってしまっている
「宗太さん・・・」
耳に入ってきた声は幻聴じゃない、目の前の少し開いた唇から出てきた言葉だ
昨夜にタイムスリップしたような感覚に襲われたが、満点を取る為には焦ってはいけない
彼女の胸元に手を置き、浴衣の襟の下へ手を入れると直ぐに指先が乳房に触れた
乳首を探そうと更に奥へ手を入れようとすると、凛子さんの手が僕の手を押さえてくる
彼女の顔に目を移すと物欲しそうな視線を向けてきていて
いつもとは違う雰囲気で興奮気味になっている僕の気持ちに油を注いでくる
しかし独り善がりになってはいけない、冷静になって凛子さんが求めている物を突き止めなければ・・・
「宗太さん」
また名前を呼ばれた
「凛子」
僕の手を押さえていた彼女の手が緩み、はだけた浴衣の下で僕の指先は乳首に辿り着いた
どうやら布団に横になる時、僕が愛撫しやすくなるように着崩してくれていたようだ
いつでも僕より一つ先を見据えている
そんな彼女には敵わないと思ったけど、その彼女の気持ちが凄く心地良く変に興奮してきた
「ごめん・・・」
「どうしたの?」
「満点は家に帰ってから目指す事にした・・・」
「え?今日は?」
「凛子・・・」
「あっ ちょっと 宗太さんっ」
「凛子!」
彼女の名を強く口にした後、少々乱暴になってしまったが彼女の浴衣を脱がせ思いのままに体を貪った
唇から足の先まで僕の愛撫を刻み込むかのように舌を這わせ
繋がった後は欲するままに快感を求めて腰を動かした
一度目の射精で冷静になった僕の耳に届いたのは「75点」という意外にも高い点数だったけど
(まさか、本当に点を付けられるとは・・・)
この時、改めて凛子さんは何事にも本気で取り組む真面目な女性だという事を確認できた
そして、採点を変に意識してしまい二度目のセックスでは55点と点数を落とし
深く反省しながら二人でシャワーを浴びる事になったが
しまった、「アイマスク」というワードが出てたのに
叱られてる途中だったから思い出す余裕がなかった・・・
アレを使っていれば高得点も・・・
カバンに忍ばせたアイマスクの事を思いだしたが、時すでに遅しで55点という点を付けられた僕には3戦目に挑む気力は無かった
色々あった新婚旅行も最終日の予定は家に帰るだけ
恵美さんと加奈さんの二人と一緒に帰宅の路についたが、相変わらず凛子さんを含めた三人は仲が良い
あんな事があった後なのに今までと変わらない様子が妙な妄想を掻き立てる
電車を待つ駅のホームで、そんな状態の僕に恵美さんが接近してきた
彼女が僕に気があると耳にしてから変に意識してしまい顔を合わせられないままでいたが
「75点と55点は厳しいですよね」
「えっ!」
思わず彼女の方に顔を向けてしまった
(凛子さん・・・ なんで話しちゃったんですか・・・)
「私なら抱いてもらえるだけで100点つけてしまいそう」
「はは・・・」
「どうです?100点欲しくありませんか?」
「あ、いや・・・」
(「どうです?」ってどういう意味なんだ・・・凛子さんの目の前でそんな事・・・ 本気か?冗談か?)
「恵美さん駄目よ 宗太くんをからかわないで、困ってるじゃない」
「うふふっ」
(そうだよね、僕はからかわれてたんだよね・・・ 早く家に帰って凛子さんと二人きりになりたい・・・)
近所では評判の恵美さんの癒しの笑顔も僕からすれば悪魔の微笑みに見え
僕を守ってくれる凛子さんの存在が守護神のようで頼もしく思える
そういえば凛子さんが上司だった頃、僕は彼女の事を仁王と揶揄したことがあったけど
あながち間違いじゃなかったようだね、凛子さんは口を開けている阿形像といったところかな
それなら仁王像にあやかって僕ら夫婦も阿吽の仲になりたいものだ