優しい嘘
39 Re: 優しい嘘
修2
2013/07/19 (金) 23:40
No.18027

「幸せいっぱいの二人に、かんぱ〜い」
金色に輝くスパークリングワイン。何だか新婚家庭に初めてお客様を招いたみたいだ。
でも、嫌じゃない。素直に、祝福してもらえてうれしいという気持ちになる。ちょうど、今月で結婚7年だ。

殆どのことは妻に解説してもらったので、佑子さん夫妻が来てからは、ふつうに楽しい夕食会だった。
いろいろ聞きたいことはあったはずだが、もう、どうでも良かった。
私も妻もお互いのことをまだ愛しているのだということを再確認できた。それだけで十分じゃないか・・・
でも、細かいことで聞いてみたいことはあった。

「いろいろ腑に落ちないことはあったんだ。不貞の捏造写真だったら、数枚あればいいじゃない。何で・・・」
「修司さん」
「はい」
「つい最近まで、不貞の証拠写真だと思ってたんでしょ?」
「うん」
「そうじゃないってわかってから見たとしたら、どう?」
「どう、って・・・?」
「不貞とか関係なく、ひーこの写真として見たら?」
「あ・・・!」
そうだ。不貞とかじゃなければ・・・、あれは、私が見たいと思っていた妻の姿ばかりだった。
スカート姿の妻、表情がくるくる変わる、とても魅力的な妻の姿だけがそこにあった。
脚フェチと制服フェチを同時に満たす、あの写真も・・・
どれもみんな、そうだ。

「秀美」
「はい」
「綺麗に撮れてたよ」
「・・・ありがと」
妻を見る。恥ずかしそうだが、嬉しそうだ。
・・・なるほど。そうか。そうだったのか。
あの笑顔は、全て私に向けられていたのか・・・
離れて暮らす私への、プレゼントだったのか・・・

不覚にも、涙ぐんでしまった。でも、もう、いい。
これからは、全てをさらけ出そう。
欲望に蓋はしない。感動にもベールはかけない。思ったことを、妻にそのまま伝えよう。
それで夫婦関係に修復不能な溝ができても、もう後悔はしない。

「これから、毎晩使わせてもらうよ」
下を向いてしまった妻に、静かにグーで殴られた。
「新作も、送って」
さらに数発。
「秀美が自分でやってるのがいいな」
太股をばしばしと、今度は本気で叩かれた。
「痛い、痛い!痛いって!」
佑子さんは面白そうに見ていた。
妻は私を叩いた後、食卓の下で私の手をそっと握った。そして、佑子さんに聞こえないような声で言った。
「時間、ちょうだい。したこと、無いから・・・」

二本目のワインが空になっていた。みんな酔ってはいたが、まだ大丈夫だ。
「OLさんの格好はどうしたの?」
「あれは佑子の・・・」
「佑子さんはコンビニじゃなかったっけ?」
「だからぁ」
「俺の趣味っす」
和君が、何だか得意げだ。
「え・・・?だって・・・」
「修司さんのを聞いてから、目覚めたっす」
「そうなの。どこで買ってくるんだか。次から次へと・・・、ま・・・嫌いじゃないけどね〜」
(佑子さんが・・・?)
確かに、長身の佑子さんなら、どんなコスチュームでも似合うだろう。
自分の趣味でコスチュームを買ってくる和君。それに付き合う佑子さん。お互いを信頼しあっているから、だろう。
「修司さん、どんなのがいいっすか? いろいろ貸せますけど」
「どんなのが似合うかなぁ」
「ん〜・・・とりあえず、アンミラは絶対だめっすね」
「うん、駄目だね。あと、フーターズ?」
妻には何のことかわからない。
「何が駄目なの?」
「ひーこは知らなくていい。何気に失礼なこと言ってるから!」

「制服の時は何でスカート穿いてなかったの?」
「・・・壊れた、ファスナー」
「え?」
「いけると思ったのよ!」
確かに、出会った頃から全く体型は変わっていないと思うが。
「太ってないでしょ?」
「だって、あの頃はトランペット吹いてたし。・・・ほら、前に修ちゃん、あの制服着てって言ったでしょ。だから、ちゃんと着て、少しずつ脱いでいく予定だったの」
「いきなり予定が狂ったんだ」
「そのまま転んだせいもあって、もう、直せないぐらいに裂けちゃって・・・そしたら佑子が『しょうがないから路線変更!今日はハードに行くよ』って」
「佑子さんてば・・・」
「縛るのはその前にやってたから、それ以上のことって何されるんだろう、って。そしたら、『今日は道具も持ってきてるから』って」
「な、何用意して来たの?」
「そこの人、興奮し過ぎ〜」
おそらく、妻はアダルトグッズを見るのも初めてだったろうに。
「バイブ?おちんちんの形した」
(モーターの入っていない奴はディルドが正しいかと。)
「あと、もっと小さいけど、電池でぶ〜んて震えるやつ」
(色は聞かなくてもわかるぞ。)
「普通に○○○○○クの電動マッサージも持って来てた。筋肉痛になるほど何かすごいことするの、って」
(なに惚けてるんですか。あなた、それ使われたでしょ。)
「えと、あとね、あとね、・・・何だっけ?」
佑子さんは口を挟まず、笑いながら妻の説明を聞いている。同級生なのに、眼差しは姉のそれのようだ。