優しい嘘
38 Re: 優しい嘘
修2
2013/07/19 (金) 23:35
No.18026

<再出発の夜>

私も妻もイってはいなかった。が、妻の告白で、気持ちとしては一区切りだった。
妻から抜いて、抱き合っていた。
『失われた6年間』を取り戻すため、今晩からとても濃い日々が始まりそうな予感がしていた。

そういえば、佑子さん達がいつ頃来るのか聞いていなかったことを思い出した。
そろそろ危ないのでは、と思ってリビングの掛け時計を見る。
ふと、何かを感じて顔を向けた。
「・・・!」
リビングから玄関への扉。
ガラス窓に、見たことのある顔が二つ、口笛を吹くように口を尖らせている。
(いつからそこにいたんだよ・・・!)
背を向けている妻はまだ気付いていない。
佑子さんの口が動く。
(お・め・で・と・う)
私は秀美に気付かれないように、親指を立てて見せた。
二人が拍手をしてくれている。
佑子さんが指で何か合図をしている。入って良いかと聞いているようだ。
二人に合図をした。
音を立てずに二人が入ってきた。

「あらあら、ずいぶん激しかったのねぇ・・・」
妻がびっくりして私の腕を振りほどいて・・・勢い余ってソファから転げ落ちた。
「ゴン!」
カフェテーブルに肘をぶつけた。
「・・・痛いぃ」
床に女の子座りをして震えている。佑子さんが近付いて、頭を優しく撫でる。
「がんばったね、ひーこ・・・」
「うん・・・ゆーこぉ・・・」
「よしよし」
女同士の美しい友情に、ぐっと来るものがあった。
佑子さんには頭が上がらないな・・・

強姦被害者にしか見えない私は、ボクサーブリーフにものを仕舞いながら、佑子さんに言った。
「秀美のこと、頼めますか?」
「あら、まだあたしに世話焼かすつもり?」
いいよ、という顔だ。
「お願いします」
鍋の準備をしにキッチンに行った。シャツのボタンはどうでもいい。ジーンズとTシャツだけ直す。
カウンター越しに和君と作業を分担する。

「えーと、和君の今回の役割は?」
「ほぼ無いっす。ほとんど佑子だけで。強いて言えば、エロ顧問すかね」
「何じゃそりゃ」
「修司さんの見てたサイトにはどんなやつが集まるか、とか」

昨年秋、単身赴任直前にバーベキューをしている。会場は庭があって、隣家と離れている我が家だ。
4家族が集まった。残り二家族も夫婦どちらかが妻たちの同級生だった。
妻たちは家の中で、男は火を囲みながら、ひたすら酒を飲んでいた。
串に刺したマシュマロを弱くなった炭火で炙りながら、エロ話をした記憶がある。
「ノブが、マシュマロみたいな胸って何だとか言い始めて・・・」
「フェチ自慢が始まったんだっけ」
「修司さんが脚と制服で・・・」
「よく憶えてんな〜」
「ノブがおっぱい星人なのはみんな知ってたっすから。達也は長い黒髪、ちなみに俺は」
「長身スレンダーロングヘアー」
「そっす」
「それって、まんま佑子さんだよね」
「えへ・・・。で、修司さんが『うちの秀美だって人気あったんじゃないのか〜?』って・・・」
「ああ、何となく憶えてる」
「俺と達也はひーこちゃんと高校一緒っすから、『ひーこちゃんには隠れファンが大勢いましたよ』って言ったら、もう、食いつきのいいこと。俺にはピンと来ましたね」
「そうだった?そこら辺は良く憶えてないんだよな〜」
「自分で、『寝取られかも』って、言ってたっす」
「え、言ってた?」
「実際やられたら立ち直れないけど、想像だけなら萌えるって」
・・・そうか、言ってたのか。