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空白の日々に

[1] スレッドオーナー: 小田 :2026/05/23 (土) 15:58 ID:kyJyjI0c No.209561



先に投稿しました「自由と束縛の狭間で」から約1年後の出来事をお話ししたいと思います。



念願だった新居もその年の春に完成します。
東京在住だった妻も娘も当地で生活することになります。

新会社立ち上げから1年を経過して、そこそこ順調に推移している様ですが、それには親会社の
楊さんのアドバイス、力添えがあっての事だろうと推測できるのですが、本人はそれには全く
言及しないどころか、こちらから聞かない限り、楊さんの名前も口にしません。
愛人関係は解消していることから、気持ちの持ち方に大きな変化があったと言わんばかりです。

彼女は羽田の会社にも在籍しているのですが、楊さん関連の会社から仕事の依頼を受ける窓口
という立場には、今後も変化はなさそうです。
東京の会社には月2回程度出社していますが、信頼できる女性社員が居るとのことで、安心できる
と公言していますが、それとて、楊さんの計らいだろうことも見え隠れします。
それに加えて、王さんの会社の社外取締役も兼任していますから、本人の弁を待たなくても、
多忙なのは隠しようもないでしょう。

私はその年の4月から、関連会社へ出向になりますが、いずれ転籍になるだろうことも暗黙の
了解です。
ただ、仕事の関連で本社に復帰することもなくはありませんが、出向は私の意向ですから、
その時が来るまでは関連会社在籍が継続する予定です。

明日香ちゃんは、本人の意向を汲んで一緒に住むことになります。
二階の一室を明日香ちゃんに、隣を娘の部屋にします。
妻の仕事の関係で、日常的に娘の面倒を見れない事も想定されることから、明日香ちゃんに
その任をお願いしたのです。
私達夫婦の寝室は同じ二階なのですが、二人の部屋とは少し離れています。
寝室の真下の一階に妻用のオフィス兼寝室を設けています。
寝室と言ってもソファーベッドの簡易的なものですから、仕事が夜中にならない限り、二階で
寝ています。


その日、9月最後の日曜日の午後、家には私一人でしたが、春に完成した家で寛ぐのも楽しい
ものです。
のびのびと言えば、妻に叱られそうですが、リビングで録画していた経済ニュースを観ながら、
コーヒーをお供に午後の一時を過ごしていました。

妻は仕事の打ち合わせで出掛けていますし、娘は昨日から彼女の実家に遊びに行っています。
彼女が送って行ったのですが、帰りはお義父さんが送って来ると聞いています。

午後4時を回った頃、携帯に着信です。
TVの音量を下げて、テーブルに置いていた携帯を手に取ると、妻からです。
夕食のことか、そうでなければ・・・と何も思い付かないまま、携帯に出ます。


『どうした?』

ほんの少しの間合いがあって、

『小田さんの携帯ですね?』

聞き慣れない女性の声です。
不審に思わないでもないのですが、慌ててる様子でもないことから、緊急だとはとても思えない
のです。


[10] Re: 空白の日々に  小田 :2026/05/30 (土) 16:28 ID:GJAcknbc No.209711



完全に二人だけの世界です。
私など全く無視ですから、声の掛けようもありません。

無言で立ち上がった彼の首に抱き付いて、キスします。
背伸びしないと、それでも届かない程の身長差ですから、いずみが小さく見えます。

「洗ったか?」
「歯磨きは・・・チュッ!チュッ〜ツ!・・・オメコはヌレヌレのままよ」

抱き抱えるように奥の椅子に坐らせます。
壁と彼とに挟まれた狭い空間が、彼女の安心できる場所、安全地帯のように感じます。
笑顔を絶やさずに彼の目を見詰めるいずみは、恋する乙女と言わんばかりです。

彼がテーブルとの隙間を空けるように少し体を後ろにずらすのですが、椅子は後ろの壁と接して
いる様で、少ししか動かすことは出来ません。
それでも、幾分低くなった彼に間髪を入れずに抱き付き、唇を舐め回すようにキスを始めます。
一分一秒でも早くそうしたい気持ちがミエミエです。

いずみの顔を両手で挟んで、

「ヤレ!」

ゆとりのあるズボンのジッパーに指を添わし、彼の顔を覗き込むようにアイコンタクトを取ります。

「脱ぎたいのか?」
「うん・・・」

彼の返事は分かっているのでしょう、体を起こしてキャミを脱ぎ、立ち上がって彼の肩を持ち、
片脚ずつTバック抜きます。
手慣れた様子から、このような行為は日常的に行われているようです。
脱いだ下着は、躊躇することもなく丸めて床に置きます。

先程の続きですから、彼の指示もありません。
椅子に坐ると、ジッパーを降してペニスを取り出し、直ぐに咥えてしまいます。
目に焼き付ける間もなく、ペニスがいずみの口に吸い込まれていくのは、圧巻としか言いようが
ありません。
チラッと見えたペニスは勃起していないにも関わらず、相当な大きさです。
これが彼女を支配しているとしたら、ある程度は納得できるのですが、それだけじゃないのは
想像に難くありません。

「うぐぐぐっ・・・ベチョ、ブチョ・・・うううっ・・・」

くぐもった擬音が聞えるのですが、彼は何も発せず、彼女の頭を押さえつけています。

「小田さん、分かっただろ?咥えてるから話せないと言っただろ?」
「なるほど・・・聞きたいことも聞けないか」

”目は口程に物を言う”という表現がありますが、目の前の痴態は話せないのではなく、話したく
ないと拒絶しているように感じます。

「いずみから聞くのは諦めろ。見ただろ?いずみは俺しか見ていない。そのいずみが話すと
思うか?・・・いずみ!顔を上げろ!」


[11] Re: 空白の日々に  小田 :2026/05/31 (日) 14:54 ID:rhgaMG7s No.209731



押さえていた頭を上げさせます。
紅潮した顔に不安そうな表情が浮かび上がってきますが、目線は彼に向けられたままです。
左手で半勃起のペニスを持って、右手は彼の腰に廻しているようです。

顔を私に向けさせて、

「お前の前に居るのは誰だ?」
「・・・誰も・・・誰もいないの・・・ご主人様の大好きなチンポを愛してるのに、邪魔する人
っていないもの」
「小田さんでも?」
「いないもの。誰もいないの・・・ご主人様しか見えないの」
「そうか・・・仮に誰かいるとしたら、オメコを開いて見せられるか?」
「はい・・・」

立ち上がった彼に続いて、通路に出て来ます。

「誰もいないな?」
「ご主人様だけ・・・誰もいないもの」

そう話すいずみは、絶えず彼から目を離しません。

「テーブルにケツを向けて前屈みになれ!」

後ろを向いて体を前に倒し、顔を上げて彼を見詰めます。

「いずみ!開いて・・・そうだな、お願いしろ!」

背中から手を廻して、オマンコを開いてるいずみの両手を掴み、強く動かします。

「お客様、いずみのヌレヌレの・・・あああっ!・・・オメコを・・・あうっ!あああっ・・・
観て下さい」

動きを止めて、

「感想を聞かないのか?」
「えっ?・・・はい、どうですか?興奮します?」

一人芝居なのですから、黙って展開を観るだけです。

「どうだ?」
「・・・イヤらしいオメコだって」
「嬉しいか?」
「とても・・・」

何か言いたげですが、彼女からは何も言えない一方通行のようです。

「したいか?」
「したい・・・」
「後があるからな・・・帰ったら天国に行かせてやる・・・」

腕時計を見て、

「そろそろ時間だな・・・用意するか?」
「はい・・・」


[12] Re: 空白の日々に  小田 :2026/05/31 (日) 16:00 ID:rhgaMG7s No.209732



床に置いていた下着を拾って、通路側で身に着けます。
一階には4人の男性が待っているようですが、どのようなシフトなのか分かりません。

「莉子の喘ぎ声が聞こえないな・・・帰らせて、次の客の相手をしろ」
「はい・・・分りました」

いずみは来た時とは反対の窓側に沿って、平野さん達が居る一番奥のテーブルに行きます。

椅子に腰を下ろして、

「小田さんはいない、いずみはそう言っただろ?」
「確かに・・・」
「俺しか見えないのが分かっただろ?」
「そう見えたが、経緯が分からないままでは帰れないね」
「莉子から説明させる、それでいいだろ?」
「納得できる説明をお願いしたいね」
「納得もクソもない。いずみは俺のオンナ、今ので分かるだろ?いずみからの説明はない、
莉子の説明が聞けないのなら、ここで終わりだ」
「なるほど・・・まぁ、聞く耳は持ってるが・・・いずみに話させない理由があるのか?」
「いずみの意思だ。小田さんとは話したくない、俺のオンナでいたいと言ってる、それ以上の
ナニがいるんだ?」
「そうなら・・・平野さんから聞くことにするが、もし、暴力的な事実が判明したら・・・
まぁ、そうじゃないことを祈ってるよ」
「俺は口が悪いが、オンナは大事にするからな。いずみのようなオンナはそういるもんじゃない。
美人でエロい、それに頭がいい。そのオンナが俺を愛してると離れない、売春でも何でもすると
言うんだから、大事にするしかないだろ?」
「ここでは?」
「ピンクサロンのようなものだな。あと二人の相手をしたら・・・裏のラブホで売春だな」
「毎日か?」
「聞くなよ。莉子が話すと言っただろ」

これ以上は、話しても無駄だと判断します。

「平野さんからは?」
「そうだな・・・莉子も二人だから・・・8時頃に連絡させる。それでいいだろ?」
「8時だな?」
「まぁ、その頃だ・・・約束は守る、人としての礼儀だろ?」

どの口が言うのか、聞き返したくなります。
礼儀の意味をはき違えていると叱責したくなるのですが、誰かの受け売りなのは間違いないで
しょう。
それが彼女なら、先程の痴態には何か隠されたサインがあったかもしれないと思うのですが、
私の目ではそれを察知することなど何も出来なかったと、少々後悔が頭をもたげます。

「じゃ、その時に・・・」

立ち上がって振り返ると、いずみが50歳代と思しき男性を階段の踊り場までエスコートしている
のです。
スポットライトに照らされた二人の様子が、鮮明に浮かび上がっています。

「どうした?・・・」

携帯をズボンから取り出したのでしょう、それを手に持ったまま、動かない私に気付いたのです。

彼の目線の先の様子に、

「・・・お帰りだな。見てろよ、キスしてチンポを咥えるからな」


[13] Re: 空白の日々に  小田 :2026/06/06 (土) 11:29 ID:9RWvaVJA No.209841



男性の後姿に見え隠れするいずみの様子から、その行為が推測できます。
彼の言う通り、客の首に両手を巻き付けて舌を絡める様なキスをし、ペニスを取り出した客の
前に跪いて、フェラを始めます。
ところが、ほんの少しで立ち上がってまたキスをするのです。
次の来店も期待しての行為だとしても、既に射精したペニスには、その力も残っていないだろうと
推測する私には、過剰なサービスのように思えるのです。
その相手がいずみなら尚更だと思う私は、常識的な考えを持っていないのかと、可笑しくなります。

「フェラは無駄だろ?」
「いずみと莉子に抜かれて勃たないだろ?そのチンポでも可愛がりますとアピールするんだな。
ハコヘルならキス止まりだろ?中年には嬉しいサービスだと思わないか?これがいずみの提案
だから堪らんだろ?」

ナニがたまらんのか、話しの中心が定まらないのは、勝手に解釈しろと言っているように聞え
ます。

「新業態か?」
「えっ?・・・どういうことだ?」
「良しなに・・・」

客と彼女は階段を下りて行きます。
私達を意識しないように、客の目線を逸らして行為に及んでいた事実をどう理解したらいいのか、
少々悩みの種でもあります。


階段を下りると、次の客の手を取って二階に上がろうとする彼女と顔を合わせます。
先程とは打って変わって私の目を見詰め、媚を売るような仕草をみせて、

「お客様、次は私を指名して下さいね?・・・」

やはり平野さんとは同伴出勤とみなされていたようです。
私の返答など必要ないと言わんばかりに、客の男性に、

「・・・じゃ、お二階に・・・」

彼の右手を腰に廻させて、

「・・・お元気かしら?」
「ちょこっとかな?」
「まぁ!いっぱい欲しいわ。頑張ってね?・・・」

その後の彼女の声は聞き取れません。


その店を出て時間を確認すると、6時前を指しています。
一度帰宅する事も考えたのですが、明日香ちゃんが6時頃に帰宅すると聞いていたことを思い出し
ます。
ひろ子も帰ってくる頃ですから、明日香ちゃんにお願いすることにします。
と言っても、私達夫婦がいない時、または忙しくて娘と接することが出来ない時などは、
明日香ちゃんが基本的に面倒を見ると取り決めています。

携帯に掛けると直ぐに出ます。


[14] Re: 空白の日々に  小田 :2026/06/06 (土) 15:06 ID:9RWvaVJA No.209844



『もしもし・・・』
『どこなの?今日は出掛けないと言っていたでしょ?』
『すまない・・・野暮用でね・・・ん?帰ってるのかい?』
『何も聞いていないの?』
『ん?・・・ナニかな?』
『ほんとに?・・・あれ?いずみちゃんって酷くない?』
『はははっ、意味不明だろ?』
『だって、かずちゃんに話してると思っていたんだもの』
『いずみが?』

まさか、先程の事を話すとは到底思えません。

『そうよ。いずみちゃんに頼まれてお迎えに行っていたの』
『ん?お義父さんが送ると聞いていたが、何かの行き違いかな?』
『それって、ひろ子ちゃんでしょ?』
『そうだが・・・違うのかい?』
『何かの手違いってもんじゃないわよ。ほんとに聞いていないのね?』
『恍けてる様に聞こえるかい?』
『それなら・・・どうしてなんだろ?いずみちゃんがかずちゃんに話さなかった理由が・・・
そうか!サプライズね、きっとそうよ』
『一人で納得しないで、お裾分けしてくれないか?はははっ』
『ホントのんきなんだから・・・あのね、アキさんを迎えに行ってたの』
『アキさん?東京でお世話になった、あのアキさんかい?』
『どのアキさんだと思ったの?うふふっ』
『じゃ、傍に居るのかな?』
『ひろ子ちゃんとお夕食の用意をしてるから、手が離せないと思うわ』
『アキさんが・・・いずみが呼んだんだね?』
『そう言ったでしょ?一ヶ月ほどひろ子ちゃんのお世話をするの。いずみちゃんの出張のこと
聞いていないの?』

知らないとは言えません。

『そう言えば・・・一ヶ月だったかな?』
『お惚けでしょ?愛する妻の行動を把握していないって夫失格よ。あれね、平和ボケね?・・・』

そうかもしれません。
いずみの変化に気付かなかった事は、痛恨の極みです。
セフレについては、私の了承が得られないのなら諦めると公言していたこともあって、気持ちが
緩んでいたと言われても返す言葉もありません。
あの男との実情を思い起こせば、単なるセフレとは到底言えない程、深い関係性が表出されて
います。
昨日今日に始まったとは言えない程の親密さです。

『・・・聞いてる?』
『あぁ・・・何だったかな?』
『ボケるお歳じゃないでしょ?今からでも遅くないわよ、ボケ防止の対策をしたら?』
『辛辣だね?・・・まぁ、予備軍の一歩手前かもしれないね』
『でしょ?・・・いずみちゃんね、来月末までアメリカでしょ?それまでに気持ちを切り替え
ないと、愛想を尽かされるわよ』


[15] Re: 空白の日々に  小田 :2026/06/06 (土) 20:35 ID:9RWvaVJA No.209847



”愛想を尽かされる”・・・納得の一言です。
先程のいずみの対応は、そう言っているのかもしれません。
誰にも壊されない絆なんて何処を探してもないのかと、つくづく情けなくなってきます。
ただ、私の意思も彼女は理解している筈ですから、それを乗り越えられる程の快楽が得られたと
したら、現にそのように見られるのですから、私から離れる理由に悩むこともないのでしょう。
そうであっても、私達を遥かに超える絆、ひろ子の存在を忘れているとは到底思えないのです。
それに対して、どのような折り合いをつけるのか、対応策も含めて気になるところです。

今回の出来事は周到に用意され、実行されたことに疑いの余地はありません。
完璧な迄に成し得たと理解したからこそ、私にいずみの現状を見せたのだと思います。
ただ、その計画をあの男が推考したとは到底思えないのです。
いずみの助言、いや、主たる案は彼女の発案であったと推測できることの一つに、客を送り出す
時のフェラなど些細な提案ですが、それを自慢げに話すこと自体、いずみが大きく関与している
証拠でもあります。
アキさんの招聘も含めて、仕事関係にも事実誤認させるような芝居を打ったと推認できそうです。


『かもね?・・・まぁ、その時だよ』
『その時になって、吠え面かかされてもしらないわよ』

現にかかされそうだと言いそうになります。

『考えるかな?・・・じゃ、少し遅くなるから、夕食は食べて帰るよ』
『分かったわ。アキさんに伝えておくわね?』
『いずみに代わって・・・まぁ、いいか?宜しくと伝えてくれるかい?』
『了解です。あまり遅くならないでね?』
『了解、じゃ・・・』


先程の駅まで戻ります。
そこからは馴染みのデパート迄数分の距離です。
8時迄は2時間弱もありますから、久し振りに階上のレストラン街に足を運ぶことにします。
このデパートは親子三人で出掛ける事もしばしばですが、ひろ子と食事となるとファミレスが
その殆どです。

一人は何となく寂しいものですが、一年前のこの季節に、彼女と入ったレストランにします。
その時に何を食べたかも覚えていないのですが、一緒に食事をしたその事実も、明るく話す彼女も
その時の温もりも、今は冷めきった空気に支配され、味気ない食事と共に私の前から忽然と消え
去った感覚に陥ります。
何度も繰り返してきた事象から判断すれば、思いのほか悩む事もないようにも思えるのです。
ただ、あの男の自信に満ちた態度、彼にひれ伏す彼女、表面的には結論が出ている様に見えるの
ですが、内面迄は見通すことが出来ません。
見えるもの全てが事実とは限りませんから、そう見せるにはそれ相応の真実に裏打ちされていな
いと、簡単に見破られるものです。
私の目には、ほころびらしいモノも何も見付けられなかったことに、小さな焦りが徐々に大きく
なってきます。
兎に角、平野さんからの説明を待つしかありません。


食事を終えて、時間潰しに南に向かいます。
考えても始まりませんが、得体の知れない生き物が心の中で蠢いている不安な心理状態が、今の私
だと言えそうです。
彼女の異変に気付かなかった事は痛恨の極みですが、強い気持ちでそれを飲み込み、平野さんの
説明を受けた後、時間を置かずに対応策を考えると自分にいい聞かせます。

海まで出ずに途中で折り返して、先程のJRの駅方面に戻ります。
待つ時間ほど時間の経つのは、遅く感じられるものです。
腕時計は、アト20分程と知らせるのですが、それに反して、気持ちは早まるばかりです。


[16] Re: 空白の日々に  小田 :2026/06/07 (日) 10:19 ID:LKPNupfo No.209853



駅前の信号待ちの時に、携帯が鳴ります。
いずみからです。

『もしもし、いずみ・・・』

直ぐに気付いて、

『・・・平野さんですね?』
『いずみちゃんじゃなくて、ごめんなさい。少し早いのですが・・・』
『えぇ、お待ちしていました。どこで・・・』
『先程と同じでいいですか?』
『それなら、直ぐに行けます。平野さんは?』
『今来たところです』
『目の前の信号待ちですから、直ぐですね』
『それじゃ、渡らずに待ってもらえますか?』

この時間帯ですから、駅からこちらに渡って来る人は多くはありません。

駆け寄ってきて、

「お食事は?」
「まだですか?」

そう言って、直ぐに思い出します。

「・・・時間がなくて・・・」
「そうでしたね・・・僕は済ませましたが、お付き合いしますよ」
「おビールは?」
「たしなむ程度ですね」
「餃子は?」
「平野さんは餃子、僕はビールですか?」
「いいですか?」

当地では有名な餃子専門店が、この駅の南側に背中合わせに営業しています。

「この時間なら、そこのお店は終わってるわ」

振り返れば、見えるほどの距離なのです。

「じゃ、東側の?まだ営業中かな?」
「大丈夫よ、今なら空いてると思うわ。カウンターだけだから・・・私達で満席になるかも?」
「それはないでしょ?」
「冗談に聞こえますか?私達って私達だけじゃない私達かな?」
「理解できないね」
「行けば分かるでしょ?」

食事の時間帯は店の外に並ぶほどの人気ですが、平野さんが言うようにこの時間ですし、日曜日と
いうこともあって、空席があると言っているようです。
”私達で満席”は冗談としか思えないのですが、彼女に至っては真剣そのものです。
私も知らない店ではないのですが、カウンターだけで7〜8席の非常にシンプルな店だった記憶が
あります。


[17] Re: 空白の日々に  小田 :2026/06/07 (日) 11:15 ID:LKPNupfo No.209854



ドアを開けると、手前の2席が空いています。

「でしょ?」

私達が入って満席だと思い直すのですが、

「ねぇ、そうでしょ?」
「満席になったね。そういうことだろ?」
「私達じゃない私達って・・・すみません。二人前とおビールを・・・はい、それで・・・」

私達の会話など全く持って無関心なのは分かります。

「・・・一つは食べてね?」
「そうだね・・・例の話なんだが・・・」
「ここで?無理でしょ?」
「それもそうだね」
「ちょっと待ってね?」

平野さんが先に、私はドアの傍の席なのですが、急に立ち上がって奥の席の客のところに行きます。
知り合いが居るのかもと思いながら、ビールをコップに注ぎ一口飲んでから、その方に目線を
向けるのですが、その間に居る数名の客で見ることが出来ません。
ハッキリとは聞えないのですが、相手は女性のようで、時々笑い声が聞こえてきます。
いずみの声に似ていると思うのですが、あの男の話しだとラブホに居るかもしれないのですから、
女性の声だというだけど、彼女だと思う私は意識が過敏になっているのかもしれません。

ほどなくして戻って来た平野さんが、

「やっぱりだったわ」
「知り合い?」
「うふふっ・・・知りたい?」
「どちらでも・・・僕には関係ないからね」
「あったら?・・・さぁ、頂こうかな?」

ビールは直ぐにカウンターに出されたのですが、餃子はそうはいきません。
その時間を利用したと言えそうです。

私達の隣の二人が、続いてその奥の二人も、どちらもカップルですが、食べ終って店を出て行き
ます。
ぽっかり空いた空間から奥の席の二人が見えるのですが、女性は奥側ですから、男性に隠れて
見えそうで見えません。
ところが、その男性に見覚えがあるのです。

「平野さん・・・」
「えっ?どうしたの?」

目線を彼に向けて、

「彼だが・・・」
「分かった?」
「客だろ?」
「そうね・・・もう分かるでしょ?」
「僕が店を出る時に・・・その男性だから、あり得ないだろ?」
「常識が通じないのが男と女でしょ?」
「ラブホじゃないのか?」
「これからよ。精力を付けないと頑張れないでしょ?」
「ほんとに?」

”キツネにつままれる”とは、こういうことを言うのかもしれません。


[18] Re: 空白の日々に  小田 :2026/06/07 (日) 12:52 ID:LKPNupfo No.209857



「頭が真っ白?戻してあげるわね?」
「ん?・・・」
「いいわね?・・・いずみちゃん!」

大きな声ではないのですが、私には突き刺さるような響きです。
この状況になることは想定済みだったという風に、驚くこともなく、その男性の背中から顔を
出して、

「さっきの・・・またお会いしましたね」

臆する事もなく笑顔を見せるのですから、私を意識したくないのか、できない理由があると
思うしか理解できません。

「・・・そうだね・・・」

何を思ったのか、その男性の耳元でほんの少し話して、直ぐに席を立って、平野さんと私の間に
密着さすように体を入れてきます。

「莉子ちゃん、代わってくれない?」
「分ってるの?」
「うん・・・ご挨拶するだけだもの。ご主人様から言われてるでしょ?」
「ほんとね?」
「それしかないでしょ?」
「分かったわ・・・少しだけよ」

席を立った平野さんのお尻を押すように、滑り込んできます。

「大きな声で話せないのね。聞えるかしら?」

そう言って、ショルダーバッグを少し開いて、見るように目線を落します。
そこには、偽装されていないボイスレコーダーがこちらを向いています。

「・・・聞こえるよ」

いずみの顔が近付いてきて、

「興奮しなかった?」
「どうかな?」
「お相手したいわ。ご主人様からね、セックスするように命令されてるの。時間を作ってくれ
ない?」
「あぁ・・・急だからね。魅力的な・・・はははっ・・・」
「オメコでしょ?嬉しいな・・・あのね、私から連絡出来ないから、莉子ちゃんからするわね。
それとね、避妊していないから楽しみも倍増するでしょ?早くしないと誰かに・・・あの人かも?
孕まされたくないでしょ?」
「楽しみだね」
「じゃ・・・ハハッ、ハクション!・・・ごめんなさい・・・ハンカチを・・・」

畳まれたガーゼ地のハンカチを開いて、中に包まれていた紙切れを右手の平に隠して、鼻をそっと
押さえます。

「・・・それじゃ、お待ちしていますね・・・握手ね?・・・」

それを持ったまま手を握ってきます。

「握手?」
「だって・・・オメコまで温もりを忘れないように、待たせないでね?」


[19] Re: 空白の日々に  小田 :2026/06/07 (日) 16:39 ID:LKPNupfo No.209861



以前に聞いた事のあるフレーズです。
それが何を意味するのか、現時点では全く理解できますせん。

返答を迷っていると、戻ってきた平野さんが心配そうな口調で、

「風邪なの?」
「大丈夫だと思うけど・・・」

平野さんの耳元に口を寄せるのですが、何も聞こえません。
その時、手の平に隠し持った紙切れを、ズボンのポケットに入れます。

「まぁ!それじゃない?露出し過ぎね?」
「そうでしょ?ちょこっとおじさんのお気に入りなんだもの」
「はいはい、ご馳走様!」


いずみは先程の席に戻って、彼の腕に両手を絡めて何か話したと思うと、その男性と席を立ちます。
私達の後ろを通りながら、

「・・・言ったでしょ?風邪を引いたらどうしてくれるの?うふっ」
「ちょこっと失敗かな?・・・」

私達には目もくれずに、店を出て行きます。

少し遅れて、私達も店を出ます。

「さてと・・・どこで?」
「ラブホは?」
「ん?・・・いずみと同じだね?誘うように命令されてるのかい?」
「誰にも見られる心配もないし、それに静かでしょ?2人だけなんてロマンティックだと思わ
ない?」
「意味するところが違うんじゃないか?」
「体でお話しするのが最善の伝達方法だって、いずみちゃんも推奨してるわよ」
「仮にそうだとしても、それは今じゃないね」
「堅いのね?」
「それも今じゃないだろ?」
「ラブホかな?・・・乗って来ないのなら、乗ってもらえるように仕向けないといけないのね。
いずみちゃんって凄いのよ、小田さんにお話しする事じゃないけど、オスにさせるテクニックを
知り尽くしてると思うわ。教わる事ばかりね」
「僕にも教えてくれるんだろ?」
「ほんとだ!・・・今頃、ちょこっとおじさんをオスに変身させてるんじゃない?
”凄腕のいずみ”って、ご主人様が」
「名付け親?」
「違うわよ。いずみちゃんに付けさせたの。ご主人様では難しいかな?いずみちゃんって三拍子
揃ってるから、羨ましいわ」
「飲む、打つ、買う・・・はははっ」
「のんきね?・・・違うでしょ?美人で淫乱なのに頭が良い、だから仕事もできるってご主人様が」
「仕事?知ってるのか?」
「私は分からないけど、そう言ってたから。でも、いずみちゃんからはそれとなく聞いたけど、
記憶にないかな?だって、数年前のことだもの」
「ん?・・・数ヶ月とかじゃない?」
「そうよ・・・ねぇ、ラブホでお話ししましょうよ」
「機会があればかな?話せないのなら、ここまでにするよ」
「えっ?それは困ったわ・・・いいわ、カフェに行きましょうか?」



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