空白の日々に
72 Re: 空白の日々に
小田
2026/07/20 (月) 12:42
No.210595



「安いのか?」
「えっ?・・・コーヒーじゃなくて?」
「分るだろ?」
「そうね、若くないでしょ?テクニックでカバーしてるのね。強みはNGなしかな?」
「平野さんが言ってたね・・・今日はウィークディだろ?」
「そうよ。営業中じゃないでしょ?」
「なるほど・・・ということは?」
「小田様が観客ね?観るでしょ?」

目線がまたトートバッグに注がれます。

「ライブショー?」
「彼ね、見られて興奮するのね。喜ぶわよ、うふっ」
「マスターと?」

もう一度、トートバッグを見詰めます。

「じゃ、喜ばせてやろうか?これで借りが返せそうだね」
「嬉しいわ・・・」

テーブルの上に体を乗り出してきて、キスします。

「・・・どうかしら?いずみの唇は?」
「はははっ、何とも言えないね」
「分からないの?莉子ちゃんとは?」
「まだ何も・・・モーションを掛けられてるけどね」
「乗らないの?」
「入口が分っても出口が見えないからね」
「私なら?」
「トンネルの中じゃないか?」
「じゃ、入ってるってこと?莉子ちゃんより先に出して欲しいわ」
「入ったものの出口も見えない、戻ろうにも入口も見えない状態だよ。真っ暗で何も見えない、
夜明け前の状態かな?」

小さく頷いて、

「いくら長いトンネルでもトンネルなんだから、出口はあるのよ。そう遠くない時に一筋の光が
見えてくると思うの。
ねぇ、莉子ちゃんより先に抱いてくれない?小田様に感激の光を見せてあげられるわよ」
「有難いね・・・まぁ、考えておくよ」
「お願いね?・・・」

立ち上がって、私の隣に移動してきます。

「・・・チュッ!・・・ご主人様に掛けたいの、いいかしら?」

挨拶のような問い掛けですから、返答は不要です。


『・・・いずみです・・はい、来ています・・・まだこれからです・・・それが、小田様が
来られていて・・・コーヒーを・・・分りません・・・はい、話しました・・・そのように・・・
はい、そうします・・・はい、分かりました・・・』


小さくため息をついて、

「待っててね?呼んで来るから」