空白の日々に
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Re: 空白の日々に
小田
2026/05/24 (日) 21:11
No.209594
誰にも聞かれない様な抑えた声です。
目の前のガタイの大きな男性が、作り笑顔で大柄な雰囲気を隠そうともせずに、
「行きますか?」
そう言って、二階への階段に足を踏み出します。
振り返りもしないのですから、私への気遣いなど不要と思っているのか、そうすることで、私との
関係性を明確にしたいのか、どちらにしても親近感は全く感じられません。
いずみの夫と分かっていてこの対応ですから、今までとは毛色の変わった事態が起こっていると
推測しても大きく外れていないように感じます。
二階に上がると、薄暗い照明とピンポイントの照明が交差し、どことなく淫靡な雰囲気が漂って
いるのですが、意識的に演出していることは間違いありません。
立ち止まってその男性を探すと、窓側のテーブルの傍から口パクで手招きするのです。
声を出さない理由があるとしたら、時々聞える女性の喘ぎ声にその原因があるようです。
窓側と反対の向きに上がって来たのですから、Uターンすることになります。
テーブルを挟んで彼は窓側に坐ります。
腕時計を見ながら、
「コーヒーでいいだろ?」
「いずみは?」
「聞えただろ?仕事中だから・・・分るだろ?」
分らない訳ではありません。
昔、彼女と2度来たことがありますから、店の構造も覚えています。
店の中には床から天井まで壁が三か所設置されています。
窓側から三列のテーブルが4組並べられていますが、その真ん中のテーブルだけが、その壁で仕切
られているのです。ですから、窓側と三列目のテーブルには仕切りの壁はありません。
私達は階段の直ぐ上に位置していて、そのスペースから、他のテーブルのように窓と平行では
ありません。
「なるほど・・・見せたいモノとは、これのことかな?」
「だとしたら?」
「理由を聞かないと・・・いずみと話せるかな?」
「咥えてたら話せないだろ?」
「ん?・・・今は?」
「だろ?話す暇があったら咥える、それが仕事だろ?」
仕事と言い切る理由も聞かない訳にはいきません。
小さな足音が聞こえて、平野さんがアイスコーヒーを運んできます。
彼と私の前にグラスを置いて、彼に目線を送ってから、彼の隣に三つ目のグラスを置きます。
いずみは彼の隣に座るようです。
「莉子、時間だから、いずみを呼んでくれるか?」
「はい・・・でも、まだ・・・」
「延長はしない約束だ。やんわりと・・・あの声ならまだヤッてるな。まぁ、仕方ないか・・・
莉子、お前が相手をしろ!いいな?」
「はい・・・でも、用意が・・・次のお客さんも待ってるし・・・」
「つべこべ言わずに早くしろ!」