空白の日々に
29 Re: 空白の日々に
小田
2026/06/20 (土) 13:16
No.210027



「それじゃ・・・」
「ごめんなさい。さっき話した・・・これ以上待たせられないから」
「いいよ。後日かな?」
「明日は・・・明後日なら会えると思うの。夜ならお時間は?」
「その時に話すよ」
「分かったわ・・・いずみちゃん!喜多さんと帰っちゃダメよ」

先にカフェを出ようとする二人に早足で追い掛けます。

そのカフェの前で別れます。
喜多さんはタクシーで、私は徒歩で平野さんと会った駅に向かいます。

私の目線の先を、小走りの二人が小さくなっていきます。
人通りも少なくなっていますから、視界は広く確保できているのですが、徒歩は歴然としています
から、ほどなく見えなくなります。

ところが、駅前の信号に捕まっている二人に追いつくのですが、何やら楽しそうに話している様は、
次に来る展開を彷彿させるようです。
少し距離を取っている私には全く気付かないのは、過ぎ去った時間と同じように、過去の人となって
いる想定なのでしょう。
喜多さんも私も、これから繰り広げられる性行為には関係ない存在なのですから、彼女達の意識の
中に微塵も残っているとは思えません。

信号が変わっても小走りは変わりません。
横断歩道を渡って駅前の少し東側に向かいます。
手を繋いで駆け寄った先には、ぽっちゃりした中年の男性が大きく両腕を開いて待っているのです。
辺りの様子など気にしていないのは、先程の大胆さからも理解できますから、二人が抱き付いた
ことは推測するまでもありません。
左に平野さん、右にいずみなのですが、二人の腰に腕を廻して高架下に歩いて行きます。
照明も少なくうす暗い上に、人もいないのです。
お遊びには恰好のシチュエーションなのは間違いありません。

構内に入らず、その様子を見ることにしたのですが、それは、いずみがその男性に抱き付いた時に、
振り返ったように見えたからです。
どのような痴態を見せられても、怒りも嫉妬も覚えないのですから、平野さんが指摘したような
ネトラレとは全く異質な感情です。
私が事実を事実として理解する、それをいずみは望んでいるのです。
過去の出来事も、可能な限り私に見せることで、言葉による誤解を招かない様にしていたのです。
今回の事も、そうであろうと理解出来るとしても、それについて彼女は何も口にできないのです
から、ほんの少しの接触でもそれを利用するのは自然な行為です。

距離にして10m程ですが、3人の影が重なるように見えます。
交互にキスしている様にも見えるのですが、周りの事は全く気にしていないのは、その男性も
同じです。
少し近付いても、気配を感じている様子もありません。
東に渡る信号待ちの時に、いずみがスカートの前を右手で捲り上げたようです。
それに呼応するように、いずみの腰を抱いていた彼の右手が、スカートの裾を持ち上げます。
うす暗い中に真っ白な臀部が浮かび上がってくるのですが、一瞬で終わると思ったのは先入観の
何ものでもありません。
いずみは腰に廻していた左手を彼の首に巻き付け、スカートの裾を持ったままの彼は、いずみを
抱き締めて、お互いに引き寄せられるようにキスを始めます。
二人の前に回った平野さんは、抱き合っている二人の行為が見えない様に、両手を二人に廻すの
ですが、こちらからはその様子が丸見えです。
彼は少し前屈みに、いずみは背筋を伸ばす様な体勢のまま、首筋に移動した彼の唇を受け入れて
いたのですが、彼女が体を震わせたように見えたその時に終りが来たようです。
短い時間でしたが、何をしていたのかは考えるまでもありません。

誰かに観られてもおかしくない状況を意識的に作り出しているとしたら、残念どころではなかった
と言えそうです。

渡り終えた3人の笑い声が消える前に、その場を離れます。