空白の日々に
22 Re: 空白の日々に
小田
2026/06/13 (土) 21:38
No.209942



トイレは直ぐ後ろ側ですから、そう時間をかける訳にもいきません。
ズボンのポケットから折りたたまれた小さな紙切れを、メモ用紙のようなものじゃなく、何かの
一部を、雑誌の一部かもしれないのですが、それを取り出します。

[愛してる、信じて!]

ただ、それだけです。
彼女が書いたとは到底思えない程、均整とは程遠い歪んで見にくい文字です。
走り書きと表現されることがありますが、どのような状況で書いたらこうなるのかと、理解が
追いつきません。
ボイスレコーダーを持たされていることからも、会話だけではなく行動も監視されていることも
考えられますが、その全ては客と過ごす時間に充てていると仮定すると、監視そのものは
客に委ねられていることになるでしょうから、その時間以外が本来の監視になると思えるのです。
客との会話、性行為中の嬌声、ピロートークなど、それらの再生から忠実な女の証を求められて
いると推測出来そうです。

トイレを出て席に戻ると、まだ話し中です。


『・・・帰って来たから・・・えぇ、そうするように・・・はい、分かりました』


腰を下ろした私に、

「ごめんなさい。予定が変わって・・・続きは後日にお願いできますか?」
「理由を話せるのなら・・・まぁ、納得いくとは思えないですが」
「そうよね。お呼び出ししておいて、変更だなんて人としてどうかと思うわ」
「はははっ、そのどうかでしょ?人としての行動とは到底思えないですよ」
「えっ?・・・お客様との事?」
「倫理的に人としてどうかと思ったんでしょ?」
「そんな大袈裟な事じゃなくて、変更の事なの。ご迷惑をかけるってイヤでしょ?」
「平野さんは人として出来てる人、彼とは違う、そう言いたかったんでしょ?」
「少しは・・・それはいいでしょ?理由・・・それも計画的じゃないっていうか、思い付きが
多くて、私もそうなんだけど、いずみちゃんも・・・ご主人様は気にならないのね」
「振り回される?なるほど・・・単刀直入に話せないかな?」
「そうね・・・今夜の事も今朝なの。今、いずみちゃんはラブホでしょ?・・・私も同じ予定
だったの。ホントに今朝、小田さんに会って経緯を説明するように命令されたの。
予約していた人を断らないといけないでしょ?当日なのよ、怒るでしょ?当たり前だもの。
それでも何とか宥めて小田さんと会う時間を捻出できたの。
お客様が怒ってるってご主人様には話していたの。隠し事は出来ないし、バレたら大変な事になる
から、いずみちゃんもとても気を遣ってるわ。
ご主人様は気にしてたみたいで、相手をするようにって。ホント急でしょ?
逆らえないから、直ぐにお客様に連絡して、時間が取れたからって・・・お詫びに3Pを提案しろ
なの。料金は同じで3Pなら断る人っていないでしょ?即答なの」
「3P?・・・いずみなら・・・」
「いずみちゃんね、1時間だから、もうすぐ終わるでしょ?終わったらご主人様に連絡するから、
その時に話すって。もう直ぐね?いずみちゃんから掛かってくると思うわ」

私がトイレに入ってる間に、3回も携帯で話したことになります。