空白の日々に
21 Re: 空白の日々に
小田
2026/06/13 (土) 15:36
No.209940



日曜日の午後9時前でも多数の客で賑わっていますが、一番奥でトイレに近いテーブルを確保
できます。
向かい合って座ります。

「相変わらず混んでるね」
「小田さんも?」
「頻繁じゃないが、そこそこかな?はははっ」
「ほんと豪傑だわ。いずみちゃんの凄腕といい勝負じゃない?」
「そうだとしても、今は対峙できないだろ?」
「私を介してならね。そう話したでしょ?」
「じゃ、話しの続きを聞かせてもらおうか?」

平野さんが溺愛するカフェオレは、私も好きな飲み物です。

「ホント美味しいわ。小田さんも好きだなんて嬉し過ぎでしょ?」
「その気持ちで愉快に聞かせてくれないか?」
「そうね・・・そういったお話しって明るくは話せないのに、愉快にだなんていずみちゃんが
聞いたらどう思うでしょうね?」
「見方が変わる?」
「ほんとは明るく話せたらいいとは思うのよ。でもね・・・いずみちゃんならできるかもしれ
ないわ。私は難しいかな?」

少しテンションが下がってきたように感じます。
これから話す内容に気持ちが向いているとしたら、重苦しい出来事もその話しの中に出てくる
のかもしれません。

「じゃ、平野さんの言葉で聞かせてくれるかな?」
「そうね・・・いずみちゃんとの出会いから・・・ご主人様との前になるのね」
「それだけどね、彼の名前は?ご主人様で押し通すのかい?」
「あれ?話さなかったの?ほんとに?」
「嘘を言う理由も意味もないだろ?」
「よく分からないわ、小田さんの言ってることが・・・いずみちゃんなら即答なんでしょうね?」
「そこは気にせずに、いいかな?」
「焦ってる?見せないようにしてるけど、ほんとは気が気じゃないんでしょ?」
「はははっ、僕にはセオリーがあってね、いずみは理解している筈だから、そうは思っていないと
思うよ」
「じゃ、どうして?」
「見えないものを見えるようにする、かな?」
「思い出したわ。小田さんってエンジニアなんでしょ?」
「いずみから?」
「その時の事だから・・・仕切り直しね?出会いは・・・小田さんが長期の海外出張の時ね・・・」

平野さんがいずみとの端緒を話し始めた時、彼女の携帯が鳴ります。
何の躊躇もなく小ぶりのトートバッグから携帯を取り出したのは、掛かって来ることは想定済み
だったからでしょう。

「ご主人様からだわ・・・いいかしら?」

この時を逃がす訳にはいきません。

「トイレに・・・その方がいいだろ?」
「そうね・・・じゃ、後でね?」