空白の日々に
17 Re: 空白の日々に
小田
2026/06/07 (日) 11:15
No.209854



ドアを開けると、手前の2席が空いています。

「でしょ?」

私達が入って満席だと思い直すのですが、

「ねぇ、そうでしょ?」
「満席になったね。そういうことだろ?」
「私達じゃない私達って・・・すみません。二人前とおビールを・・・はい、それで・・・」

私達の会話など全く持って無関心なのは分かります。

「・・・一つは食べてね?」
「そうだね・・・例の話なんだが・・・」
「ここで?無理でしょ?」
「それもそうだね」
「ちょっと待ってね?」

平野さんが先に、私はドアの傍の席なのですが、急に立ち上がって奥の席の客のところに行きます。
知り合いが居るのかもと思いながら、ビールをコップに注ぎ一口飲んでから、その方に目線を
向けるのですが、その間に居る数名の客で見ることが出来ません。
ハッキリとは聞えないのですが、相手は女性のようで、時々笑い声が聞こえてきます。
いずみの声に似ていると思うのですが、あの男の話しだとラブホに居るかもしれないのですから、
女性の声だというだけど、彼女だと思う私は意識が過敏になっているのかもしれません。

ほどなくして戻って来た平野さんが、

「やっぱりだったわ」
「知り合い?」
「うふふっ・・・知りたい?」
「どちらでも・・・僕には関係ないからね」
「あったら?・・・さぁ、頂こうかな?」

ビールは直ぐにカウンターに出されたのですが、餃子はそうはいきません。
その時間を利用したと言えそうです。

私達の隣の二人が、続いてその奥の二人も、どちらもカップルですが、食べ終って店を出て行き
ます。
ぽっかり空いた空間から奥の席の二人が見えるのですが、女性は奥側ですから、男性に隠れて
見えそうで見えません。
ところが、その男性に見覚えがあるのです。

「平野さん・・・」
「えっ?どうしたの?」

目線を彼に向けて、

「彼だが・・・」
「分かった?」
「客だろ?」
「そうね・・・もう分かるでしょ?」
「僕が店を出る時に・・・その男性だから、あり得ないだろ?」
「常識が通じないのが男と女でしょ?」
「ラブホじゃないのか?」
「これからよ。精力を付けないと頑張れないでしょ?」
「ほんとに?」

”キツネにつままれる”とは、こういうことを言うのかもしれません。