仲良しのお母さんと
12 仲良しのお母さんと・・・7
もとき
2024/05/01 (水) 12:03
No.191539
「えっ?」
彼女は、驚いたように少し顔をあげた。
「初めての研究発表で緊張していた俺は、自分を落ち着かせるために資料やPCから目を離し、会場を見渡したんだ。その中に同じ高校の懐かしい顔があり、ホッとしたんだ。歴戦の強者(つわもの)のおじさん・おばさんの中に上司に連れてこられて緊張して座っている君を見つけて、俺よりも緊張した顔の君を見つけ、発表者より緊張している表情が可笑しくてね。急にリラックスできたんだよ」
10年近く前の出来事を思い出して語った。彼女が小さく笑ったのが感じられた。
「私のこと覚えてたの?」
「高校時代もちょっと他の子より可愛かったしね、話したことはなかったし、名前も知らなかったけど、印象はあったよ」
私の思いは、研究発表の更に数年前の高校時代に遡っていた。
「そんな君を保育園の上の子の運動会で家内から紹介されたときは、びっくりした。下の子をベビーカーに乗せて、上の子の手を引いて・・・しっかりしたお母さんになってて」
「恥ずかしいわ。あの頃は子育てに必死だったから、凄い表情してたよね」
「それはどこの家庭もお母さんも一緒だよ(笑)」
「上の子の時は、クラスも違ったから、私もあなたに気が付かなかったの。たぶん、周りを見る余裕がなかったのね」
「そんな感じだった(笑)」
「下の子が同じクラスになったでしょ、あなたの奥さんと話す機会が増えて、やっとあなたを思い出したの。でも、あなたはその前から気が付いていたのね。意地悪な人ね」
彼女の体から力が抜けていくの感じられた。
「変に家内に警戒されても困るしね・・・可愛い後輩を微笑ましく見ていたってところかな・・・」
私は、彼女の抱き寄せていた右手を放し、彼女の髪を撫でながら、放たれた彼女の髪の香りを大きなため息とともに吸い込んだ。
「今朝、あなたに声をかけられて嬉しくて嬉しくて・・・、ずっと遠くで憧れてみていた人が目の前にいて、私なんかに声をかけてくれて・・・、家に帰ってもドキドキが止まらなくて。また、高校時代のようにあなたを隠れてみていたいと思ったら、あんな真正面から会っちゃうなんて・・・、あとはもう・・・」
私は彼女の髪を撫でながら、彼女の言葉に自分自身が若返るような感じがした。
「ごめんね、君のいい思い出を裏切るような軽率な行動をして・・・」
そういいながら、彼女の髪の毛にキスをして、彼女の香りを深く吸い込んだ。そして、唇を赤らんだ彼女の耳に這わせたところで、
「あっ、やめて、ごめんなさい。だめ、子どものお友達のお父さんと・・・、奥さんにもあんなに良くしてもらっているのに・・・」
そう言って、彼女は再びに体に力を入れて拒もうとした。