絆のあとさき 4
92 Re: 絆のあとさき 4
小田
2024/04/14 (日) 11:13
No.191214



「上手く纏めたね」
「うん、いつもと少し違うかな?アレ?またいつもって、うふっ」
「はははっ、完璧な再現は不可能だろ?いつもの?はははっ、雰囲気が見れればそれでいいよ」
「あなたまで。いつもはいつもじゃないのよ、話していたでしょ?聞こえなかった?」
「僕達にはいつもはいつでもいつも、分かるね?」
「うん、愛してるわ」

いずみは私の膝の上に乗って、両腕を首に巻き付けているのです。

「いずみね、タクマさんじゃないからね?」
「えっ?・・・あっ?ごめんね?重い?」
「比較はしたくないが、超人タクマじゃどうあがいても敵わないからね、はははっ」
「うふふっ、そのお話しは・・・あっ?忘れてたわ。大変だ〜!サワちゃんに叱られるわ」

言葉とは裏腹に、急いでいる様には見えません。
私の頬にソフトに唇を付けてから膝から降りたいずみは、もう一つの椅子を私の右傍に移動させ
ます。

「これでいいわ・・・サワちゃんに掛けてもいいでしょ?」
「交代の連絡?遅くなったのかい?」
「少しかな?」

全く気にしていない様に見えるのは、いずみを熟知している私だからかもしれません。


『いずみさん、遅いじゃないですか?』
『ごめんね?でも、まだ12時にはなっていないわよ』
『”11時を回るかも?”って。それを信じていたのに』
『だから謝ってるでしょ?ハッキリと約束したんじゃないでしょ?』
『そうですけど・・・いつもと同じかなって。時間には厳しいいずみさんって思っていたのに、
見方が変わりそうです』
『あのね、いつもはいつも一緒じゃないのよ。いつもそうなるように努力してても、いつもそう
なるとは限らないの。いつもとはそいうものなの、分かる?』

先程の”いつも”が独り歩きしているようです。
いずみ本人も制御できなくなっている様に見えても、押し切る強い気持ちが感じられます。
石黒さんにすれば、返答の機会を探すにも、その隙も見付けられない様に感じます。

『いつもはもういいです。何時になるんですか?』
『うふふっ、怒った?』
『体がいくつあっても足らないって言うでしょ?真剣に受け止めていませんから、怒る理由も
ないでしょ?』
『お利口さんね?それがサワちゃんだものね?・・・そうね、もう少し主人と話したいから、
遅くとも1時までには、ダメかしら?』
『小田さんの声を聞かせてくれたら、いいかな?』

以前にも同じパターンがあったことを思い出します。

『待ってね?・・・』


「あなた、出てくれない?」

携帯を差し出して、”チュッ!”と頬に唇を触れさせます。
”上手く纏めてね?”と示唆しているようです。