絆のあとさき 4
91 Re: 絆のあとさき 4
小田
2024/04/13 (土) 22:02
No.191204



『・・・ほんとに?そうだろうとは思ったんだけど。いいよ、次まで溜めておくかな?』
『ほんとにごめんなさい。頑張ってくれたタクちゃんには申し訳なくて』
『もういいって・・・さっきね、戸田さんのこと、気にしていただろ?』
『いいのね?・・・戸田さん?何だった?』
『戸田さんの名前を聞いただろ?だから何かなって』

タクマさんの優しさなのでしょう、いずみのへりくだった様子から、先程の懸念に言及したのだと
思われます。
加えて、私に話しがあると言ったことにも関係があるのかと、邪推してしまいます。

考える素振りなのでしょう、直ぐに返答しません。
纏まったのか、私に顔を向けてウインクします。

『・・・気になるっていうか、あのね、オーナーのレストランに入った時ね、ほんと驚いたのよ』
『それ?話しただろ?今は無理だって』
『違うの。タクちゃんを見た瞬間よ、ほんとに驚いたのね、だから戸田さんが見えなかったの。
携帯で話しながらだったでしょ?戸田さんの肩に当たったのに、満足な謝罪もできなかったのよ。
それだけビックリしたって分かるでしょ?』
『驚愕?それとも驚天動地?』
『難しい熟語を知ってるのね?もしかしたら・・・』
『有名大卒?はははっ、話していて分からないのなら、節穴だろ?』
『やっぱり!そうじゃないかと思っていたの。タクちゃんのヘアースタイルが変わり過ぎだもの。
疑問から確信に変わったかな?だから・・・後日ね?それまでは封印しておくから、必ず教え
てね?』
『激変だろ?思うことがあって・・・いつかのいつかかな?』
『曖昧なのね?・・・ねぇ、長くなってしまったから、今夜はここまでにしたいかな?』
『いずみちゃんは忙しいから。今からも?』
『そうよ・・・聞こえる?』

傍に置いていたホテルの約款を取り上げ、ハードカバーを開いて、約款を記した用紙を携帯の
近くでパラパラとめくります。

『プレゼン用なの?』
『あるプロジェクトの計画書・・・分からないわね?』
『僕も・・・はははっ、分かる筈もないだろ?』
『そうね・・・じゃ、いいいわね?』
『いつ会えるかな?』
『いつかのいつかね?うふっ・・・一ヶ月後かしら?木下さんとの兼ね合いね?』
『そうだな・・・じゃ、連絡を待ってるよ』
『おやすみなさい・・・大好きよ、うふっ』
『同じく・・・はははっ、おやすみ』


爽やかに締めくくります。
セフレとしての資質は十分に備わっていると判断できることに加えて、粘着質な気質でもない
ことは、いずみにとっては有難いことです。
タクマさんの出自は、ある程度の推測は出来ていますが、私に話しがあるとは、皆目見当も付き
ません。

いずみの表情からは、余韻が残っている様が読み取れます。
ベッドでの後遺症ではない事は、一目瞭然です。

上手く纏められた安堵感か、ホッとした表情でベッドを降り、抱き付いてきます。