絆のあとさき 4
90 Re: 絆のあとさき 4
小田
2024/04/13 (土) 16:47
No.191192



私達が窓に映っているのに、気付いたようです。

「こうして映るんだから、悪女じゃない証明みたいだね?」
「そうよ、嘘も方便でしょ?大事な人と一緒なのに、映らないなんてあり得ないでしょ?うふっ」
「タクマさんも大事だろ?」
「大事違いよ。彼となら映るのは私だけ、そうじゃない?セフレはそれだけの関係だもの。
肉欲と愛情は同じテーブルには載せれないの」
「好きでもかい?」
「うん・・・好きよ、ほんとに好きなの。でも、愛してるんじゃないもの。
話したことはないけど、彼も分っていると思うし、それ以上踏み込んでこないと思うの。
そういう関係なの、私達って。求め合う気持ちに嘘はないのよ、でもそれだけ。信じてくれる
でしょ?」

私の目を見詰めるいずみの腰に手を廻して、キスを交わします。

「バスタオルが邪魔だって怒ってるわ、いい?」

私の返事など気にならないという風に床に落として、首に両手を廻してきます。

「丸見えだぞ。カーテンを閉めろよ」

窓を覗き込む様に立っていたいずみですから、抱き寄せた時に背中が窓側になったのです。

「うん・・・」

レースカーテンと内側の遮光カーテンも開けていたのですから、近くても離れていても、
同じ高さのビルからなら、見えるかもしれません。

振り返って、カーテンを閉めます。

「・・・見て欲しいのはあなただけだもの。他の人は・・・それぞれ理由があるでしょ?
タクマさんは少し違うけど、健康維持に必要かな?うふっ」
「はははっ、潤いと癒しだろ?」
「そうかな?うふっ。あっ?いけない!彼の精神衛生に良くないわ。潤いも癒しも封印するわね?
それにしても、待たせ過ぎたかな?」
「そうだね。いずみの手腕を見せてもらうよ、はははっ」
「あなたね・・・お静かに、いい?」

先程のポジションに戻って、携帯を操作します。
タクマさんは待っていたのですから、直ぐに出ます。


『遅いなぁ。掛けようかと思っていたんだぞ』
『ごめんね?なかなか寝てくれなくて。タクちゃんの事が気になるから、急ぎ過ぎたのね。
やっとよ、ホントにごめんね』

何かにつけて”ダシ”なるものを持っているのは、かなりの強みと言えます。
その強みは、相手の弱みにもなるのですから、使い方一つで、思惑通りに進めることも不可能では
ありません。
言うまでもなく、いずみはひろ子を”ダシ”に使っているのです。

『それなら・・・続けるだろ?』
『まだ元気なの?嘘でしょ?』
『超人タクマを知らないのか?はははっ』
『信じられないわ、うふっ・・・ねぇ、もうとっくに醒めてしまったの。ごめんなさい』

語尾は、さも恐縮したようにフェードアウトさせます。
タクマさんは、一瞬言葉が出てきません。