絆のあとさき 4
102 Re: 絆のあとさき 4
小田
2024/04/29 (月) 16:52
No.191510



レストランはロビーを通過せず、エレベ―ターホールから玄関前を経由して数分のところです。
夕食の時間帯ですから、客が列を成しています。
待ち時間があるのはいつもの事ですから、最後尾に並ぶのは致し方ありません。

「戸田さん、テーブルは用意していますから」
「ん?・・・それなら有難いが、ホテルに知り合いでも?」
「いえ、そうではないのですが・・・」

スッキリはしないのですが、不安定な気持ちのまま彼の後について行きます。
何度も利用していますから、このレストランが、ビュッフェスタイルなのも理解しています。

最前列の入口で待機しているウエイターに話し掛けます。

「先程お願いしたタクマです。お客さんをお連れしましたので、いいですね?」
「お伺いしています。では、ミールクーポンかお部屋番号をお聞かせいただけますか?」

振り返って、

「どちらか・・・」

飛行機とホテルを同時に予約できる航空会社系列の旅行社で予約していますが、ミールクーポンは
朝食のみを選択しています。
ですから、部屋番号を伝えて、チェックアウト時に精算することにします。

タクマさんに案内されたテーブルは、料理をピックアップするには少し不便なところですが、
話をするには最適とまでは言えないとしても、それなりに静かなエリアです。

テーブルには飲みさしのコーヒーカップが、一客置かれています。
片づけられないように依頼して、私を迎えに来たのだろうと推測できます。

レストランの入口で、”タクマ”と名乗ったことに違和感を感じるのです。
タクマさんもいずみと同じように、下の名前だと信じて疑わなかったのですが、もしかして苗字
なのか、いずみはそれを知っているのか、二つの疑問が浮かび上がってきます。

「どうぞ・・・お座りになって下さい」

レストランの入口側を背に、テーブルを挟んで向き合って座ります。

「ところで・・・」
「名前でしょ?」
「はははっ、分かるかい?」
「えぇ、戸田さんの表情に不信感が浮かび上がっていましたから」
「分かり易い?それなら注意しないといけないね」
「他の人でも同じでしょうね」
「で、話さないのかい?」
「いずみさんは下の名前です。と言っても、苗字は聞いていません。そういう交際から何を想像
しますか?」
「質問?・・・性行為を見せて興奮する性癖だとしら、そのためだけに会っている?そうかい?」
「えぇ、始まりはそうでした。今は少し踏み込んだ関係だと思っています・・・」