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　だが私達夫婦の気持ちに、会話を楽しむ余裕が残っていた。洋子が
大田黒さん夫婦を選んだ理由に、隠された内面があることもわかった。

　お互い心の不安を話し合っているうちに洋子が
”あなたが蕎麦屋のおばさんに、性教育を受けたのと同じように、洋
子も両家のお坊ちゃまを男にしてあげたいの。あなたの話を聞いてそ
んな願望を持ったのよ。あなたが私の身体で実験して得た、女を喜ば
すテクニックを、今度私が、可愛いお坊ちゃまに教えながら、そのテ
クニックで洋子、抱かれ、こね回されながらむせび泣くの”

”今の子供は性体験が早いから、教えるつもりが教えられたりしたら”
”あら、まだ高校生よ。熟女に勝てるものですか。蕎麦屋のおばさん
みたいな体験、洋子もしてみたいわ。抜かずに３回もお腹の中に出し
てくれるなんて”

”だったら、どうして１０歳以上も年上の、大田黒さんを選んだの”
”だって私、あなた以外の男性に抱かれるの、初めてだから心配なの”
”なにが”
”夫婦交換のこと、何も知らないでしょう”
”ぼくだって同じだよ”
”だから奥様の礼子さんに、教えてもらいたいの。同年代だの女性だ
と、そんなことも知らないのと、馬鹿にされそうだから。今ノートに
聞きたいことを、書き出しているところなの”
”年配の濃厚なテクニックを、求めていたのかと心配していた”
　最初夫婦交換に反対していた、あのときの洋子が今は昔に見えてく
る。

　現実に洋子を、他の男に抱かせる日が３日後に迫ってくると、身体
が敏感になりすぎて、横になっただけでペニスが勃起し、想像してし
まう。洋子は案外平然としているように見えるが、夫婦交換に対する
不安がなくなったわけでない。夫が求めてやまない、その心情を理解
してあげなければという気持ちで、接してくれているだけである。

　その夜
”夫婦交換なんてピーンときません”
　と小さな声でつぶやいていたが、布団に入ると思い出すのか
”あ～あ、どうしよう。あなた抱いて”
　洋子も同じ心境とめて、抱かれる前からシドシドに濡らして求めて
くる。

”今日は激しいじゃないか。どうしたんだい”
”今夜、助平なこと、思い切りしてよ、身体がそれを求めているの”
”そんな洋子が好きだ”

　前夜よりも今夜、更に次の夜と日を追うごとに、狂うように私を求
めてくる。不安をやわらげるために、セックスの回数が極端に増えた。
平時ならこれほど求められれると、憂鬱になるはずだが私も、他人に
抱かせる前の洋子の身体を、確認しておきたくてそれに応じていた。

　連日の寝不足と、セックスの遣りすぎからか、洋子の顔を間近で見
ると、目の下に深いクマが刻まれていた。心配と心痛で、安眠できな
い日々を過ごしていたのだろう。初めてのことだけに、夫婦交換の副
作用が強く出すぎたのかもしれない。

　いよいよ前日を迎えた。

　私の緊張の度合いも、最高潮に達していた。最終的にはどうにでも
なれ、と言う心境になったが、それでも落ち着かなかった。自分で落
ち着いていようと思うこと自体が、落ち着いていない証拠なのだろう。

　家の近くを歩いていると、いつもの通りを曲がると、見覚えのある
女性が現われた。人妻なのだろう、幸福そうな顔に生活観がある力強
さが感じられる。

”確か１度、何処かでお会いしたことがある”
　つい立ち止まって見てしまったが、思い出しそうで思い出せず
”いい奥様だな～”
　と後姿を見送った。
　家の玄関に着いたとき、フッと、さっきの女性は明日の交換相手の、
礼子に似ていたのだと思い出し、自分の思い込みに一瞬情けなくなっ
た。

　夕食を食べながら、このことを洋子に話した。
”期待しすぎからか、どうやら緊張しているらしい。女性がみんな礼
子さんに見える”
　不安が雨雲のように、心に広がった。　
”前の日になってそんなことを言っても、しょうがないわよ。なによ
自分から言い出したくせに”

　自分が言い出したことは納得している。だが一言でかたずけられて
は、せっかく悩みを打ち明けたのに、拒否されたように感じて、自分
のつらい気持ちが、誰にも分かってもらえないという、寂しい気持ち
になった。

”明日はイヤでも、ガチガチになるだろうな。大丈夫だろうか”