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[30548] 魔性【番外編28】 樹氷 投稿日:2008/04/14 (月) 15:08
リビングの液晶画面からは、妻と、りょう氏の本能だけを・・肉欲だけを追い求める姿が流れ続いていた。

私は、私を内面から支えていた物の栓が抜けてしまったような不思議な感覚に襲われていた。

妻を思う気持ちも、こだわりも、執着心も、信頼感も、そして愛情までもが私の中から・・私の心から音を立てて抜け落ちて行くようだった。

その映像からも、音声からも温度は感じられず、乾いて無機質な物に感じられた。

表情を硬く強張らせたままで、私は画面を見ていた。
だが見詰める視線の焦点は合わず、そこに何が映し出されているのかも朧げにしか感じる事は出来なかった。

普段ならば興奮と刺激の対象である映像の中の【他人に抱かれ、快楽の渦に飲まれる妻の姿】が、ひたすら煩わしく感じられる。

そんな私を横目で見ながら、明美は落ち着きを取り戻した口調で

「でな・・奥さんが昼間にDVDを置きがてら着替えに戻って・・
その後で、ウチにこのキーホルダー寄越したんやで。 」

「・・・・・ 。 」


「なぁ・・・ 言われた通り全部話したんやないの。
何とか言うてや! 」

私は思考の定まらない中で、感情を抑え込みながら答えた。

「・・・で、満足したんかい?
ワシに対する恨みは晴れたんか?
オドレに言いたい事は山ほどある。
出来る事ならぶん殴ってやりたいわ・・
けどな・・今は考えらへんし、そんな気力も無いわ。」

私の気配が只事でない事を敏感に感じ取った明美は憎まれ口を叩く事も無く、再び俯いて押し黙ってしまった。

「・・・・・… 」

一体何から片付ければ良いのだろう?

どんな形になるにせよ、この問題を解決せねばならないのだ。

きっかけは単純な物であったのかも知れない。

しかし今のこの状況は、きつく絡み合った糸がグチャグチャになってしまって、何処から糸口を見つけれ良いのかも、手を付ければ良いのかも分からない、そんな感じであった。

やはり直接、妻に聞かねばならない・・。
そう・・妻本人の口から。

私は明美に向き直り、問い掛けた。

「で、アイツは今何処に居るんや?
りょう氏と一緒なんか?」

「多分一緒やと思う・・でも今は何処に居るかは分からへん。
キーホルダーを受け取った後、二人で何処かに行ってしもうた・・」

明美はテーブルの上に置かれた妻のキーホルダーを指さした。

[Res: 30548] Re: 魔性【番外編28】 樹氷 投稿日:2008/04/14 (月) 15:10
混乱と困惑が私の思考を靄がかかったように重くしている。

こんな筈では無かったのだ。

「オドレは、りょう氏との間で、この後どんな段取りになってるんや?
連絡を取るんやろ? 」
明美は、私のその問い掛けに暫く答えなかった。
視線を履いているブーツに落とし、意味無く爪先をカーペットの上で左右に滑らせるようにして押し黙る明美。

私はその態度に苛立ちを覚えたが、それを飲み込むようにして、もう一度ゆっくりとした口調で問い掛けた。

「どうなん? 」

「・・・ハァ〜ァ・・・なんだかウチの思惑と違う方に行ってしまいそうやなぁ・・
ここでアンタをいいようにしたら、その結果報告を兼ねて二人に会う段取りになってるんや。
コレに録音してナ…」

コートの右ポケットから銀色のボイスレコーダーを取り出して悪びれる事も無く、私に見せる明美。
そして

「わざわざこないなモン着て来たのになぁ…」と
明美は立ち上がり、羽織っていたコートを脱ぎ、ニットのセーターをたく上げた。

熟れたバストを包む赤と黒の光沢のある素材が見えた。

見覚えのあるボンデージ。

妻の希望で友人である山田君に頼んで製作して貰った、手の込んだ作品。
妻の為に、妻の淫靡さをより引き出す為に作られた筈のボンデージ。

妻以外の人間が肌を通す事など有り得ない筈のボンデージを明美が身に着けているのだ。

たくし上げたセーターを脱ぎ捨て、スカート越しにも分かる女性には有り得ない股間部位の盛り上がりグイッっと突き出すように強調した後で、あっという間にウエストのホックを外してスカートのファスナーを引き上げる明美。

その股間部位から起立する黒光りしたディルドが邪魔になりスカートを下ろせないでいる。

右手でディルドを下向きにして跳びはねるようにしてスカートを下ろした。
[バサッ…ッ… 。]

左脚のブーツに引っ掛かるスカートを軽く蹴りを入れるように振りほどき、その見事な姿を私に晒した。

[Res: 30548] Re: 魔性【番外編28】 樹氷 投稿日:2008/04/14 (月) 17:12
「お・おい、何、脱いどるんや?
止めんかい!!

早よ脱いだモン着れや!今のワシはそんな気分ちゃう!」

明美の服を脱ぎ去る手際良さと、明美の肉体から発せられる熱を帯びたオーラが服を脱ぐ事を遮る私の言葉のタイミングを狂わた。

明美は私の言葉に蓋をするように、私に向け掌を広げて、その整形した事によってバッチリとなった二重の瞳をより大きく見開きながら言った。

「見るだけ見てぇなぁ・・アンタの奥さんとどっちが似合うてる?
どっちが感じる?」

私に向いた明美の瞳は、有無を言わせぬ力強さがあった。

この至近距離で明美のボンデージ姿を見て改めて驚き、そして感嘆した。
明美の内面に潜む、十数年の歪んだ想いがそうさせるのか、邪悪な者が身に纏ってこそなのかも知れないが似合うのだ。

これはこれで見ようによっては、明美の為にオーダーされと言っても事情を知らない人間なら違和感を感じる事すら無く納得してしまうのではないか?

妻の場合は己を覚醒させ変貌させるスイッチの一端がボンデージであるのだと思うのだが、明美の場合は、持っている有りのままの姿を、より引き立たせ、その歪んだ信念を貫く為の戦闘服のように感じてしまう。

明美の体温が上がって来たのだろうか?

強烈な牝のフェロモン臭が鼻を突き始めた。

どんよりとした私の思考を、沈んだ心を覚醒させる濃厚な香り。

妻の匂いと明美の匂いが織り混ざった睾丸の裏側を揉み上げて来るような刺激的な淫臭・・。

明美は躊躇う様子も無くソファーに座る私の前に立ち、私を見下ろすようにして、己のボンデージ姿を誇示するように腰に右手をやり、左手をボンデージから生えたディルドをグィッと掴んで見せた。

[Res: 30548] Re: 魔性【番外編28】 樹氷 投稿日:2008/04/15 (火) 05:07
50センチ・・僅か50センチ先に妻のボンデージを着た明美が、私を挑発するようにして立っている。
ラバーと体液の入り混じる刺激臭が鼻を突いた。
「どや?エロいやろ?
アンタの奥さんより似合うてるんちゃう?
しかしコレは凄いなぁ。ココに凄まじいモン入ったままなんやで。」

明美は左手で握り締めたディルドをグイッと引っ張るようにして股間部位に隙間を作り、右手をその間に滑り込ませた。

「アンタの奥さんも・・好きモンやなぁ・・
こ…こんな…ごついモン…アソコに入れたままで居るんやもの…。
あっ・ふぅ…ッ…あ…んん…
さっきからな、少し体を動かしたり、立ち上がったりする度にギュウギュゥのアソコの中でうごめいているみたいや・・
癖になるわぁ…」

頬を桜色に上気させた明美が、右手をクロッチ部分に滑らせ出来た隙間から更なる濃密なフェロモン臭が漏れてきた。


「どうなん?…
ウチのこの姿、好きなんちゃうの?
ココの匂い、メチャ好きなんやろ? 」

欲情し潤んだ瞳で、私を見詰めながら、私の鼻面に黒光りした逞しいディルドを近付けて来る。

少しでも隙を見せ、明美の肉体から放たれる色欲の芽に引き込まれては、取り返しのつかない事になってしまう。

背中にザワザワと得体の知れない物がはいずり回るような感覚がして、私は、ハッと我に返った。危うく引き込まれてしまいそうだった。
頭が熱くなり、心臓の鼓動が驚く程バクついている。

私には、アナルを責められたり掘られたりするような趣味嗜好は無いのだ。

そう、生理的にそれを受け付け無いのだ。
嫌悪感すら感じてしまう。
無理な物は無理なのだ。
私は鼻面に向けられたディルドを力任せに掴み上げて上下に動かした。

「な、な、何やのぉ…
あふぅ…あぁぁ…ん…あうっ…。」

汗ばむ内股に力を入れるようにして身をよじる明美。

「危ない、危ないわ…
ホンマに洒落にならんワ。
オドレにしてやられる所やったワ。

ワシには、ケツを責められたる趣味は無いんじゃボケっ!

エェ加減に諦めんかい!
・・・なぁ…もう・十分やろ?

行き着くとこまで行った処で、その後に何が残るんや?
ここまでやればエェんやないんか?
オドレが、これ以上を…この先を何が何でも望むならば、ワシも面倒やけど出る処に出てオドレを不法侵入と窃盗で突き出さなアカン。

なぁ…もう止めようや?」

[Res: 30548] Re: 魔性【番外編28】 チャーリー 投稿日:2008/04/15 (火) 08:35
樹氷さんへ
忙しくて、サイトを見る時間が無く、毎回感想を書くつもりができませんでした。
すみません。忙しい中、毎日のように作品を書き続けていただいているのに、読者として失格ですね。
しかし、中身の方は毎回思いもよらない展開で、わくわくするとともに樹氷さんの悲しみが伝わってくるので、ある意味辛いです。でも、心のどこかには人の不幸は蜜の味みたいなところがあるのも事実なんですね。すみません。
電車男を応援する阪神タイガースファンの人がいましたが、今はあんな気持ちで応援しています(違うかもしれないけど、笑)
これからもよろしくお願いします